JP3978127B2 - 故障診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス器具の故障を診断する故障診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、給湯器等のガス器具においては、高機能化に伴って修理作業も複雑化しサービスマンが適切な対応をとることが困難になってきた。
そこで、ガス器具の故障診断を行うためのメンテナンス装置として、例えば、特許文献1では、汎用ノートパソコンで構成された故障診断装置が開示されている。この故障診断装置は、給湯器に通信ケーブルを介して接続され、故障診断装置から所定の検査用指令情報を与え、それに対応して動作した給湯器内の動作状態やセンサ出力を収集する。これにより、検査作業を単純化することができる。
【0003】
また、給湯器等のガス器具では、燃焼制御中に部品の故障等で燃焼が適切に行われなかった場合に、エラー番号を出力して不揮発性メモリに記憶し故障診断に役立てることが行われている(例えば、特許文献2)。
故障診断装置は、不揮発性メモリに記憶されたエラー番号とその異常が発生した際の状態を示す燃焼シーケンス番号とを読み込んで故障部位を特定し、予め記憶させた診断順序で構成された診断シーケンスをモニターに表示してサービスマンに診断箇所及び診断の順序を示す。
例えば、火が付かないといった不着火異常の時に出力される「11」というエラー番号が読み込まれると、図7に示すような、不着火異常用の診断シーケンスに従って診断手順を順次モニターに表示する。サービスマンは、この診断シーケンスに従って、故障診断装置やテスターを用いてステップ1から順に故障診断を行っていく。そして、故障箇所を発見するとその部品を修理したり交換したりして作業を終了する。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−305843号公報
【特許文献2】
特許第3336222号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、同じような不具合現象であっても、故障箇所の発生確率は、その器具の使用状況によって異なる。このため、上述したように出力されたエラー番号に応じて、常に一定の診断順序となる診断シーケンスしか記憶していないと、後の方にくる診断箇所で故障が発生し易い使用状況だった場合には、正常部である確率が大きい部位から診断作業を行ってしまうことになり、無駄な作業が多くなって効率が悪かった。
本発明の故障診断装置は上記課題を解決し、効率よく故障診断を行うことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の請求項1記載の故障診断装置は、
ガス器具の故障を診断する故障診断装置であって、
上記ガス器具の複数の故障診断項目を記憶した記憶手段と、
上記ガス器具の故障の種類を入力し、該故障の種類に応じて上記記憶手段から診断すべき故障診断項目を選択する項目選択手段と、
上記故障が生じた際の上記ガス器具の使用状況を入力する使用状況入力手段と、
この使用状態入力手段により入力されたガス器具の使用状況に応じて上記診断項目の診断順序を決定する順序決定手段と
を備え、
上記ガス器具の使用状況は、ガス器具の設置環境、ガス器具の故障時における気象状況、ガス器具の使用時期のうちの少なくとも一つを含むことを要旨とする。
【0007】
上記構成を有する本発明の請求項1記載の故障診断装置は、項目選択手段によって故障の種類に応じて選択された診断すべき故障診断項目の診断順序を順序決定手段がガス器具の使用状況に応じて決定する。つまり、特定の使用状況下において故障が発生し易い箇所の故障診断項目を前半に配置し、故障しにくい箇所の故障診断項目を後半に配置する。従って、使用状況に応じて故障しやすい箇所から診断を行うことができるため、故障診断の無駄を省いて効率的な診断作業を行うことができる。
ここで、ガス器具の使用状況は、ガス器具の設置環境、ガス器具の故障時における気象状況、ガス器具の使用時期のうちの少なくとも一つを含むものであるが、ガス器具の設置環境とは、ガス器具が設置される地理的環境をいい、例えば海浜地区、山間部、温暖地、寒冷地、都市部などを表すものである。また、ガス器具の故障時における気象状況とは、故障が生じた際の天候(大雨、強風、寒暖、雷)を表すものであり、使用時期は、使用される季節の偏り、例えば、夏季に使用されることが多いか、冬季に使用されることが多いか、通年して平均的に使用されることが多いかを表すものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の故障診断装置の好適な実施形態について説明する。
【0009】
図1は、一実施形態としての故障診断装置を用いた給湯器の故障診断システムの概略構成図である。
給湯器1は、燃料ガスと一次空気との混合気を燃焼するバーナ2と、燃焼熱により水を加熱する熱交換器3と、熱交換器3とバーナ2間で燃焼空間を形成する燃焼室4と、バーナ2に二次空気を供給するファン5とを備える。
バーナ2へのガス供給経路には、下流側から順に、ガス流路を開閉する元ガス電磁弁6と、ガス供給量を調節する比例弁7と、ガス流路を開閉するメイン電磁弁8とが設けられる。
バーナ2近傍には、点火用の点火電極9及び炎検出用のフレームロッド10が設けられる。点火電極9は、イグナイター11と接続される。
【0010】
また、給湯器1には、主要部をマイコンによって構成されたコントローラ12が備えられており、コントローラ12は、元ガス電磁弁6、比例弁7、メイン電磁弁8、フレームロッド10、イグナイター11、ファン5や図示しない入水温度センサ、出湯温度センサ等にそれぞれ接続され、熱交換器3を通過する水をバーナ2の燃焼熱で設定温度に加熱して出湯する周知の給湯制御を行う。
コントローラ12は、不揮発性メモリ12a(例えば、E2PROM)を備え、この不揮発性メモリ12aに、各種センサによる検出出力値や各種電磁弁6,7,8やファン5等の各種アクチュエータの動作に基いて給湯器1の運転状態を運転情報として記憶させる。
この運転状態としては、具体的には、トータル給湯燃焼回数やトータル燃焼時間、エラー番号で示される異常の種類及びそのエラーが発生した時の処理を表す燃焼シーケンス番号の履歴等のデータからなり、このデータは給湯器1の使用開始からメンテナンス状態の点検時までにおいて順次記憶される。
また、コントローラ12には、故障診断装置20と接続するための専用の接続コネクタ12bが設けられる。
【0011】
故障診断装置20(例えば、汎用のノートパソコン)は、主要部をマイコンによって構成されており、各種情報を表示するモニター21と、各種情報を入力するキーボード22と、通信ポートとしてのコネクタ23とを備える。また、故障診断装置20は、故障診断を行うための故障診断項目と診断順序を示す診断シーケンスを複数記憶した図示しない記憶媒体(例えば、ROM)を備える。
給湯器1と故障診断装置20とは、通信ケーブル25によって接続されるが、給湯器1と故障診断装置20との通信仕様が異なるためにその間にアダプタ24を接続する。
【0012】
故障診断装置20は、給湯器1の不揮発性メモリ12aに記憶された運転情報や、お客様からの聞き取り情報に基いてサービスマンがキーボード22から入力した問診コードを読み込む。そして、それらの情報に基いて、故障診断を行うための診断項目と診断順序を示す診断シーケンスを記憶媒体から読み出してモニター21に表示すると共に、給湯器1を試験するためのテスト信号や動作指令信号を出力し、給湯器1の動作を確認するための動作応答信号を読み込む。
【0013】
上述した構成の故障診断装置20を用いた給湯器1の故障診断作業について説明する。
お客様からの修理依頼が入ると、サービスマンが故障診断装置20と通信ケーブル25とアダプタ24とを持って現地へ行く。そして、サービスマンは、給湯器1の前面パネルをはずし、通信ケーブル25によって、給湯器1の接続コネクタ12bと故障診断装置20のコネクタ23とを接続した後に、故障診断装置20を起動して故障診断を開始する。
【0014】
故障診断装置20は、給湯器1の不揮発性メモリ12aに記憶されたエラー番号や異常が発生した時の燃焼シーケンス番号を読み込んで、それらの情報に基づいて、複数記憶された診断シーケンスの内から最適なものを記憶媒体から読み出してモニター21に表示する。
また、不具合が生じているにもかかわらず、エラー番号が出力されなかった場合には、お客様から聞いた不具合情報に基いた問診コードをサービスマンがキーボード22から打ち込むと、その情報に基いて、複数記憶された診断シーケンスの内から最適なものを記憶媒体から読み出してモニター21に表示する。
【0015】
ここでは、エラー番号として、バーナ2に点火しない不着火異常を示す「11」が読み込まれた場合について説明する。
故障診断装置20は、給湯器1からエラー番号「11」を読み込むと、記憶媒体からその不具合に対応する診断シーケンスを読み出して、その診断シーケンスに従って診断手順を順次モニター21に表示する。
不着火異常の場合、故障している部位、すなわち診断すべき故障診断項目としては、イグナイター11、ファン5、比例弁7、元ガス電磁弁6、メイン電磁弁8、フレームロッド10の6項目が考えられる。
また、同じ不具合現象であっても、器具の使用状況によって、故障しやすい箇所というものがある。そして、このような使用状況による故障が発生する箇所の確率というのは今までの経験から分かっている。そこで、本実施形態の故障診断装置20では、特定の使用状況に応じて故障が発生する確率が高い順に診断項目を並び替えた複数の診断シーケンスを記憶媒体に記憶させておき、お客様との問診結果から得られた不具合発生時の器具の使用状況をキーボード22から入力し、その結果に基づいて、所定の診断シーケンスを呼び出すようにしている。
【0016】
不着火異常の場合における問診結果から診断順序を最適化するフローチャートを図2に示す。尚、このフローチャートに基く診断手順がモニター21に表示されるので、サービスマンはモニター21を見ながらお客様に問診しその結果をキーボード22から入力する。
不具合発生時に、雨が降っていたり、急激に温度が上昇していた場合は(S1:YES)、点火電極9やフレームロッド10に水滴が付着することによる短絡が原因と考えられるため、イグナイター11やフレームロッド10の検査をする診断項目を前半に配置した診断シーケンス▲1▼を読み出す。
【0017】
診断シーケンス▲1▼を図3のフローチャートに示す。
この診断シーケンスは、まずステップ11でイグナイター11が故障しているかどうかを検査する。故障診断装置20からイグナイター11に動作指令信号を出力し、点火電極9から正常に放電しているかをサービスマンが目視すると共に、イグナイター11の電圧が正常かどうかをテスターで手動検査する。
イグナイター11が正常だった場合には、ステップ12に進み、フレームロッド10を検査する。フレームロッド10が短絡していないかどうかを目視で確認すると共に、故障診断装置20からフレームロッド10に動作指令信号を出力し、フレームロッド10の電圧が正常かどうかをテスターで検査する。
フレームロッド10が正常だった場合には、ステップ13に進み、ファン5を検査する。ファン5を駆動させるための動作指令信号を出力し、その信号に応じて回転したファン5の回転数を読み込み、回転数が設定値に対して適切かどうかをチェックする。
【0018】
ファン5が正常だった場合には、ステップ14に進み、比例弁7を検査する。故障診断装置20から比例弁7に動作指令信号を出力し、比例弁7の電圧が正常かどうかをテスターで検査し、動作指令信号を停止した後に比例弁7の抵抗値が正常かどうかをテスターで検査する。
比例弁7が正常だった場合には、ステップ15に進み、元ガス電磁弁6を検査する。故障診断装置20から元ガス電磁弁6に動作指令信号を出力し、元ガス電磁弁6の電圧が正常かどうかをテスターで検査し、動作指令信号を停止した後に元ガス電磁弁6の抵抗値が正常かどうかをテスターで検査する。
【0019】
元ガス電磁弁6が正常だった場合には、ステップ16に進み、メイン電磁弁8を検査する。故障診断装置20からメイン電磁弁8に動作指令信号を出力し、メイン電磁弁8の電圧が正常かどうかをテスターで検査し、動作指令信号を停止した後にメイン電磁弁8の抵抗値が正常かどうかをテスターで検査する。
メイン電磁弁8も正常であった場合には、他の要因をチェックする。
尚、故障箇所が発見されたらその部分を修理又は交換して故障診断を終了する。
【0020】
また、問診結果から長期間使用せずに久しぶりに使用した時に不着火異常が発生したという情報が得られた場合には(S2:YES)、電磁弁の摺動部或いは弁部が固着して動きにくくなっていることが原因と考えられるため、比例弁7や元ガス電磁弁6やメイン電磁弁8の検査をする診断項目を前半に配置した診断シーケンス▲2▼を読み出す。
具体的には、図4のフローチャートに示したように、比例弁7、元ガス電磁弁6、メイン電磁弁8、イグナイター11、ファン5、フレームロッド10の順で検査する。
【0021】
また、問診結果から、雨が降っていたことや長期間未使用だったという情報が得られなかった場合には(S1:NO,S2:NO)、給湯器1が点火動作する際に動作する構成要素の順に検査を行う通常の診断シーケンス▲3▼を読み出す。
具体的には、図5のフローチャートに示したように、イグナイター11、ファン5、比例弁7、元ガス電磁弁6、メイン電磁弁8、フレームロッド10の順で検査する。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の故障診断装置20によれば、給湯器1から読み込んだエラー番号や燃焼シーケンス番号、あるいはお客様からの不具合情報を読み込んで最適な診断シーケンスを表示するので、不慣れなサービスマンであっても質の高い修理を行うことができる。
更に、お客様からの問診結果から得た器具の使用状況に応じて、故障が発生しやすいと考えられる部位から検査するように各診断ステップを並び替えた診断シーケンスを複数備えるため、使用状況に応じて故障しやすい箇所から診断を行うことができ、故障診断の無駄を省いて効率的な診断作業を行うことが可能となる。この結果、作業時間を短縮して、一人のサービスマンでより多くの修理作業をこなすことが可能となり、アフターサービスにかかるコストを低減できる。
【0023】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
例えば、本実施形態では、故障箇所を特定するための故障診断項目は、エラー番号のみに基いて決定されているが、これに限ったものではなく、その異常が発生した際の燃焼シーケンス番号やお客様からの不具合情報も利用するようにしてもよい。この場合には、診断項目を更に絞り込むことができ、より一層効率的な診断作業を行うことが可能となる。
【0024】
本実施形態では、給湯器の使用状況を特定するためのお客様への問診項目として、「雨が降っていたり、急激に温度が上昇していた場合」と「長期間使用しなかった場合」の二通りの例しか示していないが、他にも多くの問診項目が考えられる。問診項目の他の例を示した説明図を図6に示す。
例えば、使用環境が海浜地区であり、使用期間が三年以上であり、使用時期が夏季だけという問診結果が得られた場合は、錆びたことによる固着が故障原因と考えられるため、ファンモーターや電磁弁の診断順序を上位に配置する。
また、故障時気象状況が大雨であり、故障時異常現象として異臭がしたり火、煙がでたというという問診結果が得られた場合は、漏電が疑われるから配線部のチェックを上位に配置する。
また、使用環境が山間部や海浜地区であり、使用時期が夏季だけの使用となると、器具内部に虫や鳥が巣をつくっていることが疑われるため、給排気系統のチャックを上位に配置する。
【0025】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の請求項1記載の故障診断装置によれば、ガス器具の使用状況に応じて故障しやすい箇所から診断を行うことが可能となり、故障診断の無駄を省いて効率的な診断作業を行うことができる。この結果、アフターサービスのコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態としての故障診断装置を用いた給湯器の故障診断システムの概略構成図である。
【図2】不具合現象が不着火の場合における問診結果から診断順序を最適化するフローチャートである。
【図3】本実施形態としての不着火用(降雨時)の診断シーケンスを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態としての不着火用(長期間未使用時)の診断シーケンスを示すフローチャートである。
【図5】本実施形態としての不着火用(通常)の診断シーケンスを示すフローチャートである。
【図6】器具の使用状況を特定するための問診項目の例を示した説明図である。
【図7】従来例としての不着火用の診断シーケンスを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…給湯器、12…コントローラ、12a…不揮発性メモリ、12b…接続コネクタ、20…故障診断装置。
Claims (1)
- ガス器具の故障を診断する故障診断装置であって、
上記ガス器具の複数の故障診断項目を記憶した記憶手段と、
上記ガス器具の故障の種類を入力し、該故障の種類に応じて上記記憶手段から診断すべき故障診断項目を選択する項目選択手段と、
上記故障が生じた際の上記ガス器具の使用状況を入力する使用状況入力手段と、
この使用状態入力手段により入力されたガス器具の使用状況に応じて上記診断項目の診断順序を決定する順序決定手段と
を備え、
上記ガス器具の使用状況は、ガス器具の設置環境、ガス器具の故障時における気象状況、ガス器具の使用時期のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする故障診断装置。
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