JP3976973B2 - サスペンション構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタビライザの配置に特徴を有するサスペンション構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のフロントサスペンションは、例えば図5に示すような構成となっている。すなわち、サスペンションメンバ50が、左右のサイドメンバ51と、その左右のサイドメンバ51の後端間を連結するクロスメンバ52とから構成される。上記各サイドメンバ51に、それぞれ略L字型のAアームからなるロアリンク53が上下方向へ揺動可能に取り付けられ、そのロアリンク53の外端部がボールジョイントを介してナックル54の下部に取り付けられている。また、上記クロスメンバ52に、車幅方向に延びるステアリングラック55が支持され、そのステアリングラック55の両端部に連結した左右のタイロッド56が、それぞれナックル54から車両前後方向後方に突設するナックルアームの先端部に連結している。
【0003】
また、上記ステアリングラック55の下側にスタビライザ57が配置されている。スタビライザ57は、車幅方向に延在するスタビライザ本体57aと、そのスタビライザ本体57aの両端部に連続して車両前後方向前方に延びる左右のアーム部57bとから構成される。そして、スタビライザ本体57aが、上記ステアリングラック55の下側で車幅方向に延在して、左右のサイドメンバ51上面に支持される。また、前方に延びた左右のアーム部57aの先端部は、それぞれコネクティング・ロッド58を介してロアリンク53に取り付けられている。
【0004】
なお、従来、スタビライザ本体57aの端部をよりも車幅方向外方に配置するなどのために、上記アーム部57bの先端部を、ロアリンク53の代わりにストラット59に取り付けることもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成のサスペンション構造では、サイドメンバ51とステアリングラック55との間にスタビライザ57が配置されているため、上記スタビライザ57の存在によって、その分だけタイロッド56の高さをロアリンク53の高さに近づけることができないという問題がある。その結果、その分、トーチェンジ特性の調整に制限が生じる。
【0006】
ここで、ロアリンク53とタイロッド56との関係におけるトーチェンジ特性について説明する。
ロアリンク53とタイロッド56の長さが等しく、且つ車両後方からみて、両者53,56が平行配置の場合にはホイールストロークによってトー角変化が発生しない。しかし、アライメント等の関係からロアリンク53とタイロッド56の長さが異なる場合や非平行配置となる場合も多いが、この場合には、ホイールストロークに伴いトー角変化が発生する。そして、タイロッド56が、アッパリンク(若しくはストラット59上端部)とロアリンク53との中間的な高さに配置される場合には、タイロッド56は当該上下のリンクに影響され中間的特性を示す。従って、ホイールストロークに伴うトー角変化を小さくするために、タイロッド56の高さをロアリンク53の高さに近づけることが考えられる。しかし、上記従来のサスペンション構造にあっては、スタビライザ57の存在によってタイロッド56をロアリンク53に接近させることに制限が生じる。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、タイロッドの高さをロアリンクの高さに更に接近可能なサスペンション構造を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、左右のサイドメンバとその左右のサイドメンバの後端部側を連結するクロスメンバとによってサスペンションメンバが構成され、上記各サイドメンバとナックルとがAアームからなるロアリンクで連結されると共に、上記ナックルよりも車両前後方向後方にステアリングタイロッドが配置されるサスペンション構造において、
スタビライザを、上記タイロッドよりも車両前後方向後方でサスペンションメンバに支持させると共に、そのスタビライザは、車幅方向に延在してサスペンションメンバに支持されるスタビライザ本体と、スタビライザ本体の左右両端部にそれぞれ連続して車両前後方向前方に延びる左右のアーム部とを備え、上記アーム部は、上記タイロッドの下方を通り、当該タイロッドとの交差位置では平面視でロアリンクとサイドメンバとの間の空間に位置し、かつ上下方向においてロアリンクとサイドメンバとの間の空間に入ることを特徴とするものである。
【0010】
次に、請求項に記載した発明は、請求項に記載した発明に対して、上記各アーム部の先端部は、コネクティング・ロッドを介してストラットに連結することを特徴とするものである。
【0011】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、スタビライザを、上記タイロッドよりも車両前後方向後方でサスペンションメンバに支持させることにより、サスペンションメンバに支持されるステアリングラック等のステアリング部品よりも後方にスタビライザ本体が配置される。この結果、ステアリングラック等の下側にスタビライザ本体が配置される場合に比べてステアリングラック等のステアリング部品、さらにはタイロッドを下側に配置可能となる。すなわち、トーチェンジ特性の調整範囲が広くなり、タイロッドの高さをロアリンクの高さに近づけることで車両の直進安定性を改善することも可能となる。
【0012】
さらに、スタビライザ本体を後方にずらすことで、アーム部の長さがその分長くなり、スタビライザ効率も向上する。
また、スタビライザのアーム部をタイロッドの下側を通すと共に、平面視で、当該アーム部がタイロッドと交差する部分の下方に他の部品が無いようにロアリンク及びサイドメンバの少なくとも一方を設計することで、アーム部におけるタイロッドと交差する部分を、サスペンションメンバ及びロアリンクと干渉することなく下方に逃がして当該アーム部に必要な揺動ストローク代を確保可能となる。この結果、スタビライザのアーム部に制限を受けることなく、タイロッドの高さをロアリンクの高さに近づけることができて上記規制した効果を確実に得ることが可能となる。
【0013】
なお、アーム部がタイロッドの上側を通過するように設定すると、上側に配置される部品との干渉を考慮する必要がある。例えば、アーム部がタイロッドと干渉しないように当該アーム部を上側に逃がす必要があり、且つアーム部がストロークするための空間を確保する必要性から上方に配置される車体のサイド部材と干渉するおそれがある。サイド部材と干渉する場合には、サイド部材の断面減少等の対策が要求されることになる。
【0014】
また、請求項に係る発明によれば、アーム部がタイロッドの下側を通過することで、アーム部の下端部がその分だけ下側に配置される結果、アーム部とストラットとを連結するコネクティング・ロッドに、スタビライザのストロークを吸収するのに必要が長さを確保できるという効果がある。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態のサスペンション構造を示す斜視図である。
本実施形態のサスペンションは、車両前後方向に延在する左右のサイドメンバ1の各後端部間がクロスメンバ2によって連結されることで、サスペンションメンバ3が構成されている。上記各サイドメンバ1には、ロアリンク4(右側は不図示)を介してナックル5(右側は不図示)が連結している。すなわち、上記ロアリンク4は、略L字形状のAアームから構成されて、車幅方向内側が、サイドメンバ1に対して前後方向に離れた2点で取り付けられると共に、車幅方向外端部がボールジョイント6を介してナックル5の下部に連結している。符号7,8が、ロアリンク4をサイドメンバ1に取り付けるためのブラケットを示す。
【0016】
本実施形態では、図2に示すように、サイドメンバ1におけるロアリンク4を取り付ける2つのブラケット7,8の位置をできるだけ車幅方向外方に配置すると共に、その2つのブラケット7,8の取付け位置の間に位置するサイドメンバ部分1aを車幅方向内側にへこますように湾曲させて、平面視で上記サイドメンバ1とロアリンク4との間に、スタビライザ9のアーム部9bを下方に逃がすことができるだけの大きさの空間Sを確保している。なお、上記ブラケット7,8の位置及びサイドメンバ部分1aの一方の設計変更によって、スタビライザ9のアーム部9bが通過するだけの空間Sを確保可能な場合には、一方の対処だけで構わない。
【0017】
また、上記クロスメンバ2の上に、ステアリングラック10が搭載されている。上記ステアリングラック10の両端部に連結するタイロッド11は、それぞれ車幅方向外方に延び、そのタイロッド11の外端部が、ナックル5から後方に突設するナックルアーム12先端部に連結している。
また、上記ステアリングラック10の後方に、スタビライザ本体9aが、車幅方向に延在して、左右のサイドメンバ1に支持されている。符号Bはスタビライザ9のサスメンバ3への支持部を示す。
【0018】
そのスタビライザ本体9aの端部は、上記サイドメンバ1とロアリンク4との間の空間Sに位置し、その端部に車両前後方向前方に延びるアーム部9bが連続している。
アーム部9bは、上記空間S位置において、下側に凸となるように湾曲しながら車両前後方向前方に延びた後に、延び方向を変更してストラット13下方位置に向けて延び、その先端部がコネクティング・ロッド14を介してストラット13に連結されている。
【0019】
次に、上記構成のサスペンション構造の作用や効果等について説明する。
上記構成のサスペンション構造では、スタビライザ9のサスペンションメンバ3への支持点をステアリングラック10よりも後方にオフセットさせた結果、スタビライザ本体9aの配置に影響を受けることなく、ステアリングラック10をサスペンションメンバ3の上面に近づけて搭載することが可能となる。すなわち、ステアリングラック10から左右に延びるタイロッド11の高さをロアリンク4の高さに近づけることができる。
【0020】
また、スタビライザ9のアーム部9bを車両前後方向前方に延ばす関係から、タイロッド11とスタビライザ9のアーム部9bとを交差させる必要があるが、アーム部9bをタイロッド11の下側を通過させることで、タイロッド11よりも上方にスタビライザ9のアーム部9bがストロークするために必要な空間Sを確保する必要が無く、しかも、当該アーム部9bにおけるとタイロッド11の下側を通過する部分9cを下方に逃がすことで、アーム部9bに必要な上下ストロークするための空間が確保できると共に、タイロッド11をアーム部9bの配置に制限を受けることなくロアリンク4に近づけて配置可能となる。
【0021】
このように、スタビライザ9の配置に制限を受けることなく、タイロッド11をロアリンク4の高さに近づくように下げることができる結果、ロアリンク4の長さとタイロッド11の長さが異なっていたり、後面視でロアリンク4とタイロッド11とが平行配置となっていなくても、ホイールストロークに伴うトー角変化を小さくし、車両の直進安定性を向上することができる。
【0022】
ここで、上記実施形態の配置の場合と、ステアリングラック10の高さだけを、ステアリングラック10の下側にスタビライザ本体9aを配置できるだけ上記ステアリングラック10の位置よりも上方に設定した場合とで、ホイールストロークに伴うトー角変化について実験したところ、図4に示すような結果が得られた。図4中、実線が本実施形態の場合におけるトー角変化を示すもので、破線がステアリングラック10の位置を、上記実施形態よりも高くレイアウトした場合のトー角変化である。この図4から分かるように、本実施形態のように、タイロッド11をロアリンク4に近づけることで、ホイールストロークに伴うトー角変化が小さくなり直進安定性が向上することが分かる。
【0023】
また、スタビライザ9をステアリングラック10つまりタイロッド11よりも車両前後方向後方に配置することで、その分だけスタビライザ9のアーム長が稼げることからスタビライザ効率が向上する。
また、アーム部9bをタイロッド11の下側を通すことで、アーム部9bの先端部の先端部の高さを低く抑えられる結果、アーム部9bのストロークを吸収するだけのコネクティング・ロッド14の長さを確保することができる。
【0024】
ここで、スタビライザ9のアーム部9bをタイロッド11の上側を通過するように配置しても良い。この場合であっても、タイロッド11がロアリンク4の高さに近づく結果、車両の直進安定性が向上する。但し、タイロッド11の上方にスタビライザ9のアーム部9bが上下ストロークするだけの空間を確保する必要がある。また、アーム部9bの先端部が高く設定される傾向となるので、当該アーム部9bの先端部は、コネクティング・ロッド14を介してロアリンク4に連結してコネクティング・ロッド長を稼ぐことができて好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく実施形態に係るサスペンション構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係るサイドメンバ、ロアリンク、及びスタビライザの位置関係を示す平面図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係るサイドメンバ、ロアリンク、及びスタビライザの位置関係を示す車幅方向外方からみた側面図である。
【図4】ホイールストロークに伴うトー角変化を示す図である。
【図5】従来のサスペンション構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 サイドメンバ
2 クロスメンバ
3 サスペンションメンバ
4 ロアリンク
5 ナックル
7,8 ブラケット
9 スタビライザ
9a スタビライザ本体
9b アーム部
10 ステアリングラック
11 タイロッド
12 ナックルアーム
13 ストラット
14 コネクティング・ロッド

Claims (2)

  1. 左右のサイドメンバとその左右のサイドメンバの後端部側を連結するクロスメンバとによってサスペンションメンバが構成され、上記各サイドメンバとナックルとがAアームからなるロアリンクで連結されると共に、上記ナックルよりも車両前後方向後方にステアリングタイロッドが配置されるサスペンション構造において、
    スタビライザを、上記タイロッドよりも車両前後方向後方でサスペンションメンバに支持させると共に、そのスタビライザは、車幅方向に延在してサスペンションメンバに支持されるスタビライザ本体と、スタビライザ本体の左右両端部にそれぞれ連続して車両前後方向前方に延びる左右のアーム部とを備え、上記アーム部は、上記タイロッドの下方を通り、当該タイロッドとの交差位置では平面視でロアリンクとサイドメンバとの間の空間に位置し、かつ上下方向においてロアリンクとサイドメンバとの間の空間に入ることを特徴とするサスペンション構造。
  2. 上記各アーム部の先端部は、コネクティング・ロッドを介してストラットに連結することを特徴とする請求項に記載したサスペンション構造。
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