JP3976413B2 - 希ガス放電灯の点灯装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は希ガス放電灯の点灯装置に関し、特に、内面に発光層を有するガラスバルブの外周面に一対の帯状の外部電極を配置した希ガス放電灯を高周波電圧発生回路に接続してなる点灯装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、先に、図16〜図18に示す希ガス放電灯Lを提案した。同図において、1は例えばガラスバルブにて密閉状に構成された直管状の外囲器であって、その内面には希土類蛍光体,ハロリン酸塩蛍光体などの蛍光体よりなる発光層2が形成されている。特に、この発光層2には所定の開口角を有するアパ−チャ部2aがほぼ全長に亘って形成されている。そして、外囲器1の封着構造はガラスバルブの端部にディスク状の封着ガラス板を封着して構成されているが、例えば単にガラスバルブを加熱しながら縮径加工し溶断するいわゆるトップシ−ルによって構成することもできる。尚、この外囲器1の密閉空間には水銀などの金属蒸気を含まないキセノンを主成分とする希ガスが所定量封入されている。
【0003】
この外囲器1の外周面にはシ−ト構体3が密着するように巻回されている。このシ−ト構体3は、例えば外囲器1の全長とほぼ同程度の長さを有する絶縁性の透光性シ−ト4と、この透光性シ−ト4の一方の面に互いに所定の間隔だけ離隔配置して接着された金属部材よりなる帯状の一対の外部電極5,6と、この外部電極5,6の端部から導出された端子51,61と、透光性シ−ト4の一方の面に付与された接着層9とから構成されている。尚、シ−ト構体3の外囲器1への装着状態において、外部電極5,6の一方の側縁部5a,6aの間には第1の開口部7が、外部電極5,6の他方の側縁部5b,6bの間には第2の開口部8がそれぞれ形成されており、発光層2からの光は主としてアパ−チャ部2aから第1の開口部7を介して外部に放出される。又、シ−ト構体3において、透光性シ−ト4は、例えばポリエチレンテレフタレ−ト(PET)樹脂が好適するが、ポリエステル樹脂など他の樹脂も利用できる。
【0004】
又、上述のシ−ト構体3は外囲器1の外周面に、外部電極5,6が外囲器1と透光性シ−ト4との間に位置するように装着(巻回)されている。このシ−ト構体3の外囲器1への装着は、例えば図19に示すように行われる。まず、シ−ト構体3をステ−ジ10に展開状態で配置する。次に、このシ−ト構体3における透光性シ−ト4の一端4aに外囲器1を配置すると共に、外囲器1が一対の従動ロ−ラ11,11にて透光性シ−ト4に押しつけられるようにセットした上で、ステ−ジ10を若干M方向に移動させた後、N方向に移動させる。すると、シ−ト構体3は透光性シ−ト4の上において相対的に転動し、その外周面にはシ−ト構体3が巻回されることにより装着が行われる。尚、シ−ト構体3において、外部電極5,6はその表面に形成された接着層を利用して外囲器1の外周面に接着されており、透光性シ−ト4はそれの一方に形成された接着層9を利用して巻回時に外囲器1の外周面に接着されると共に、それぞれの端部4a,4bは第2の開口部8で重ね合わされて接着されている。
【0005】
この希ガス放電灯Lは、例えば図20に示す点灯装置によって点灯される。この点灯装置は、例えば周波数が30KHzで電圧が2500V0-P 程度の高周波電圧を発生し、かつ出力波形がほぼ正弦波であるインバ−タ回路Hと、インバ−タ回路Hへの直流電力の供給をコントロ−ルするトランジスタなどのスイッチング素子Qと、平滑用のコンデンサCとから構成されており、インバ−タ回路Hは、例えば一次コイルTRa,TRb、二次コイルTRc及び励磁コイルTRdを有する発振トランスTRと、一次コイルTRa,TRbの中点とスイッチング素子Qとの間に接続されたチョ−クコイルCHと、一次コイルTRa,TRbに接続された第1,第2のスイッチング素子例えば第1,第2のトランジスタQa,Qbと、第1,第2のトランジスタQa,Qbのベ−スと励磁コイルTRdとの間に接続された抵抗Ra,Rbとから構成されている。そして、インバ−タ回路Hの出力側(二次コイルTRc)には希ガス放電灯Lの外部電極5,6が接続される。
【0006】
この点灯装置において、端子Ta,Tb間に例えば商用電源を全波整流した直流電源を接続した上で、端子Tcに駆動信号を適時の間隔で付与すると、スイッチング素子QがONとなり、第1,第2のトランジスタQa,Qbが適時にON,OFFすることにより、発振トランスTRの二次コイルTRcには上述の高周波高電圧が発生して希ガス放電灯Lの外部電極5,6に印加される。これにより、この希ガス放電灯Lは、熱陰極や冷陰極を用いた放電灯のように外囲器の長手方向に沿った1つの放電路によって点灯するものとは異なり、外部電極5,6の間(外囲器1の長手方向に対してほぼ直角方向)に無数の放電路が形成されることによって縞状の状態で点灯する。この状態において、希ガスの励起線によって発光層2が励起されて発光し、光はアパ−チャ部2aから第1の開口部7を介して外部に放出される。
【0007】
特に、この希ガス放電灯Lには水銀が用いられていないために、点灯後における光量の立ち上がりが急峻であり、点灯と同時に光量がほぼ100%近くにまで達するという特徴を有している。このために、ファクシミリ,イメ−ジスキャナ,複写機などのOA機器の原稿読取用の光源として好適するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のように、この希ガス放電灯Lを原稿照射装置に適用した場合には、アパ−チャ部構造の採用により発光層2の放射光の高密度化が可能となることから、原稿面照度を高めることができ、原稿の読み取りを確実に行うことができるものである。
【0009】
しかしながら、近時、OA機器は、その処理能力を高め、事務処理の効率化を図るために、原稿の送り速度をさらに高速化する傾向にあり、上述の希ガス放電灯Lをそのまま適用すると、原稿の読み取り精度(解像度)が損なわれるようになる。
【0010】
従って、原稿の高速化に対応するには、原稿面の照度をさらに高めるように希ガス放電灯の光出力(光量)を増加すればよい。例えば外囲器1の管径を太くすると共に管入力(電力)を増加させれば、比較的に容易に光量を増加させることができるものの、この種装置では原稿面と希ガス放電灯との間隔が6〜12mm程度と狭いために、かかる間隔以上に太い管径の希ガス放電灯は配置が難しくなるという問題がある。
【0011】
かといって、サイズを変更しないで希ガス放電灯の管入力を増加させれば、ある程度の光量の増加は期待できるものの、管入力を増加させる割りには光量の増加割合は少なく、十分な読み取り精度が期待できないのみならず、管入力の増加によりインバ−タ回路Hの負荷が大きくなる分、点灯装置のコストが高騰するようになる。
【0012】
それ故に、本発明の目的は、希ガス放電灯の外囲器サイズを変更したり、管入力を高めたりしなくても、希ガス放電灯の光量をさらに高めることができる希ガス放電灯の点灯装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の希ガス放電灯の点灯装置は、希ガス放電灯の点灯装置であって、
出力トランスの入力側に設けられたスイッチング素子を含む定電力化回路と、
駆動信号の付与・停止によるスイッチング素子のスイッチング動作に基づいて出力トランスの出力側にパルス状の高周波電圧を発生する高周波電圧発生回路とを具備し、
前記希ガス放電灯を高周波電圧発生回路の出力側に、一対の外部電極にパルス状の高周波電圧が印加されるように接続し、かつ希ガス放電灯の点灯状態における高周波電圧発生回路の入力側の電力を、定電力化回路によってほぼ一定となるように制御を行い、
前記定電力化回路は、少なくとも、出力トランスの一次コイルに直列接続したスイッチング素子と、スイッチング素子に直列接続した電流検出回路と、電流検出回路にて検出した電流に対応する出力電圧と基準電圧とを比較する比較回路と、比較回路において電流検出回路の出力電圧が基準電圧より高くなった時に出力される信号に基づいてスイッチング素子をオフ動作させた後、予め設定された一定時間後にスイッチング素子をオン動作させる駆動信号を出力する駆動回路とから構成され、
前記スイッチング素子のオフ期間を、出力トランスの二次コイル側の実効インダクタンスと希ガス放電灯が点灯した状態の実効静電容量とにより発生するランプ電流の自由振動の最初の1周期以内であり、自由振動の最初のピ−ク点からランプ電流の反転する跳ね返り期間の間に設定したことを特徴とする。
【0014】
この場合、前記高周波電圧発生回路は、少なくとも、一次,二次コイルを有する出力トランスと、出力トランスの一次コイルに直列接続したスイッチング素子を含む定電力化回路と、出力トランスの一次コイルと定電力化回路との直列回路にほぼ並列的に接続したコンデンサとから構成するとしてもよい。
【0015】
また、前記定電力化回路は、少なくとも、出力トランスの一次コイルに直列接続したスイッチング素子と、スイッチング素子に直列接続した電流検出回路と、電流検出回路にて検出した電流に対応する出力電圧と基準電圧とを比較する比較回路と、電流検出回路と比較回路との間に接続したコンデンサ,抵抗を含む進相回路と、比較回路において電流検出回路の出力電圧が基準電圧より高くなった時に出力される信号に基づいてスイッチング素子をオフ動作させた後、予め設定された一定時間後にスイッチング素子をオン動作させる駆動信号を出力する駆動回路とから構成してなり、比較回路,駆動回路などでの信号の遅延を進相回路にて補正するとしてもよい。
【0016】
また、前記スイッチング素子のオフ期間が一定となる駆動信号を付与する駆動回路を、単安定マルチバイブレ−タにて構成するとしてもよい。
【0017】
また、前記定電力化回路の比較回路を主としてオペアンプにて構成してなり、オペアンプの非反転入力端子に基準電圧を、反転入力端子に電流検出回路の出力電圧をそれぞれ印加するとしてもよい。
【0018】
また、前記定電力化回路におけるオペアンプの反転入力端子に電源電圧の分配電圧をバイアス電圧として印加するとしてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明にかかる希ガス放電灯の点灯装置の第1の実施例について図1〜図3を参照して説明する。尚、図16〜図20に示す先行技術と同一部分には同一参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。同図において、この実施例の特徴部分は、希ガス放電灯DLにおける第2の開口部8を形成する外部電極5,6の側縁部5b,6bに異形部5A,6Aを形成すると共に、それ以外の外部電極5,6の側縁部5a,6aをストレ−ト状に形成したことと、高周波電圧発生回路をパルス状の高周波電圧を発生する高周波電圧発生回路HAにて構成すると共に、高周波電圧発生回路HAの入力側の電流が、予め設定された値を越えた時にスイッチング素子をオフ動作させ、その後、予め設定された一定時間後にスイッチング素子をオン動作させることにより、入力側の電力を定電力化する定電力化回路を付加したことと、高周波電圧発生回路HAの出力側に接続された希ガス放電灯DLにおける外部電極5,6のうち、異形部5A,6Aの形成されたいずれか一方の外部電極(6)を接地したことである。
【0020】
上述の希ガス放電灯DLにおいて、外部電極5,6には三角状の異形部5A,6Aが周期性を有するように形成されている。例えば外囲器1の外径が8mmの場合には異形部5A,6Aを含めた幅が8mm,異形部5A,6Aのピッチが4mm,異形部5A,6A(三角部分の頂点)の高さが1.5mm程度の寸法に設定することが望ましいが、希ガス放電灯,点灯装置の仕様によっては適宜に変更できる。尚、外部電極5,6の側縁部5b,6bに形成された異形部5A,6Aのそれぞれの頂点部間の間隔は全長に亘ってほぼ同一となるように設定されている。又、第1の開口部7の開口幅(間隔)も全長に亘ってほぼ同一となるように設定されている。
【0021】
この希ガス放電灯DLの外囲器1の構成部材としては、誘電率が大きく、かつ気密性が確実に保持でき、透光性を有する材料であれば一応適用が可能であるが、例えばガラスの中でも比較的に誘電率の大きい鉛ガラス,鉛を含まないバリウムガラスなどが推奨される。これの肉厚は0.2〜0.7mmの範囲(好ましくは0.4〜0.7mmの範囲)に設定されており、この範囲では所望の生産性,光特性が得られる。しかしながら、肉厚が0.4mm未満、特に0.2mm未満になると、外囲器1の機械的な強度が極端に低下するために、量産設備による生産工程でのガラス破損に伴う不良率が増加するようになるし、逆に、肉厚が0.7mmを超えると、縞状の放電状態が目視され、アパ−チャ部2aから放出される光にチラツキが生ずるようになる。従って、外囲器1の肉厚は上記範囲内に設定することが望ましい。
【0022】
又、この外囲器1の内部空間にはキセノンガスを主成分とする希ガスが封入されており、その封入圧力は例えば83〜200トルの範囲に設定されている。この範囲では始動特性,光出力(原稿面照度),チラツキに関する改善効果が得られる。しかしながら、封入圧力が83トル未満になると、光出力に対する改善効果が不十分になるし、逆に、封入圧力が200トルを超えると、始動特性が損なわれるのみならず、縞状の放電状態が目視され、アパ−チャ部2aから放出される光にチラツキが生ずるようになる。従って、希ガスの封入圧力は上記範囲内に設定することが望ましい。
【0023】
又、発光層2は、希ガス放電灯の用途によって、使用する蛍光体が1種のみにて構成されたり、2種以上を混合して構成されたりする。例えば三波長域発光形の場合には、例えば青色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体,緑色領域に発光スペクトルを有するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体,赤色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体を混合してなる混合蛍光体にて形成され、その付着量は1cm2 当たり5〜30mgの範囲に設定されている。この範囲では十分の光量(光出力)が得られるものの、その付着量が5mg未満になると、光量不足によって原稿面照度が不十分になるし、逆に、付着量が30mgを超えると、均質な発光層の形成が困難になる。従って、発光層2の付着量は上記範囲内に設定することが望ましい。
【0024】
さらに、外部電極5,6のそれぞれの離隔部分には第1,第2の開口部7,8が形成されており、それぞれの開口角θ1 ,θ2 はθ1 >θ2 の関係に設定されている。第1の開口部7の開口角θ1 は60〜90°の範囲が、第2の開口部8の開口角θ2 は55°程度がそれぞれ望ましい。しかしながら、第1の開口部7の開口角θ1 は用途によっては上記範囲外に設定することも可能であり、第2の開口部8は絶縁破壊しない程度に狭いことが望ましく、例えば最低2mm程度の離隔距離を確保することが推奨される。尚、上述のアパ−チャ部2aの開口角は第1の開口部7の開口角θ1 とほぼ同程度に設定されている。
【0025】
一方、パルス状の高周波電圧を発生する高周波電圧発生回路HAは、例えば一次コイルTRa,二次コイルTRcを有する出力トランスTRAと、出力トランスTRAの一次コイルTRaに直列接続された電界効果形トランジスタ(FET)などのスイッチング素子QAを含む定電力化回路PSTとから構成されている。この高周波電圧発生回路HAの入力側(一次コイルTRa側)にはコンデンサCA,直流電源EBが、出力側(二次コイルTRc側)には希ガス放電灯DLがそれぞれ接続されており、希ガス放電灯DLの外部電極6は接地されている。
【0026】
上述の高周波電圧発生回路HAの定電力化回路PSTは、例えば出力トランスTRAの一次コイルTRaに直列接続したスイッチング素子QAと、スイッチング素子QAに直列接続した抵抗R1 よりなる電流検出回路30と、電流検出回路30に接続されたコンデンサC1 及び抵抗R2 ,R3 よりなる進相回路40と、オペアンプOP及びヒステリシス用の抵抗R4 ,R5 よりなり、オペアンプOPの非反転入力端子(+)に抵抗R4 を介して基準電圧Vref が、 反転入力端子(−)に進相回路40の出力端が接続された比較回路50と、単安定マルチバイブレ−タM及びスイッチング素子QAのオフ時間設定用のコンデンサC2 ,抵抗R6 よりなり、比較回路50において電流検出回路30にて検出した電流に対応する出力電圧が基準電圧Vref より高くなった時に出力される信号に基づいてスイッチング素子QAをオフ動作させた後、コンデンサC2 ,抵抗R6 によって設定された一定時間後にスイッチング素子QAをオン動作させる駆動信号(ゲ−ト信号)を出力する駆動回路20Aとから構成されている。尚、駆動回路20Aからスイッチング素子QAのゲ−トにはほぼ方形波の駆動信号が付与される。
【0027】
そして、高周波電圧発生回路HAの出力側には希ガス放電灯DLが、その外部電極5,6にパルス状の高周波電圧が印加されるように接続されており、外部電極5,6のうち一方の外部電極6が接地されている。特に、駆動回路20Aからの駆動信号に基づくスイッチング素子QAのオフ期間は、出力トランスTRAの二次コイルTRc側の実効インダクタンスと希ガス放電灯DLが点灯した状態の実効静電容量とにより発生するランプ電流の自由振動の最初の1周期以内(t1 +t2 期間内)、好ましくは自由振動の最初のピ−ク点からランプ電流の方向が反転する跳ね返り期間(t2 )の間に設定されている。
【0028】
このように構成された点灯装置は次のように動作する。まず、高周波電圧発生回路HAの入力側に直流電源EBを接続すると、コンデンサCAは充電される。この状態で、駆動回路20Aからスイッチング素子QAのゲ−トには図4(a)及び図5(b)に示すように方形波の駆動信号(スイッチング素子QAのゲ−トに浮遊容量を有するために立ち上がりが鈍った波形になる)が印加される結果、スイッチング素子QAはオン動作する。このオン動作によって、コンデンサCA,直流電源EBから出力トランスTRAの一次コイルTRa,スイッチング素子QA,電流検出回路30には、図4(b)に示すように、ほぼ直線的に増加する一次電流(ドレイン電流Ip)が流れ、出力トランスTRAには電磁エネルギ−が蓄積されると同時に、電流検出回路30に抵抗R1 とドレイン電流Ipとによる電圧降下(出力電圧)が生じる。この出力電圧は進相回路40を介して比較回路50におけるオペアンプOPの反転入力端子(−)に印加される。このオペアンプOPの非反転入力端子(+)にはドレイン電流Ipが予め設定された値に対応する電圧(Ip・R1 )が基準電圧Vref として印加されており、電流検出回路30の出力電圧はこの基準電圧Vref と比較される。電流検出回路30の出力電圧が時間の経過と共に高くなり、基準電圧Vref より高くなると、オペアンプOPの出力側にはハイレベルからロ−レベルに変化する信号が出力される。この出力信号は駆動回路20Aの単安定マルチバイブレ−タMに入力される。これによって、単安定マルチバイブレ−タMの出力側はハイレベルからロ−レベルに反転するために、スイッチング素子QAのゲ−トにはゲ−ト信号が付与されなくなり、スイッチング素子QAはオフ状態になる。
【0029】
次に、スイッチング素子QAがオフ状態になると、出力トランスTRAの一次コイルTRaに蓄積された電磁エネルギ−の作用に基づき、二次コイルTRcには一次コイルTRaと二次コイルTRcとの卷線比によるパルス状の高周波電圧が発生し、希ガス放電灯DLの外部電極5,6に印加される。そして、外部電極5,6の異形部5A,6Aに電界が集中することによって、外部電極間には放電が生起され、希ガス放電灯DLは点灯状態になり、図4(c)及び図5(a)に示すように繰り返し周期におけるそれぞれの1周期(T)の前半部分の期間t1 でランプ電流Ibが流れると共に、希ガス放電灯DLがコンデンサを形成する関係で同放電灯に電荷が蓄積される。ランプ電流Ibが0になると、希ガス放電灯DLに蓄積された電荷がランプ電流Ibとして跳ね返り期間t2 に、期間t1 の方向とは逆方向に流れるようになる。
【0030】
一方、スイッチング素子QAがオフ状態に反転した後、駆動回路20AはコンデンサC2 と抵抗R6 によって設定される一定時間後に、スイッチング素子QAに再びゲ−ト信号が付与される。この時間が上述の跳ね返り期間t2 の前半に設定されていることから、このタイミングでスイッチング素子QAはオン動作し、図5(a)において斜線で示すランプ電流Ibjが、期間t2 に流れるランプ電流に重畳されて流れる。尚、スイッチング素子QAへの駆動信号の付与タイミングが跳ね返り期間t2 より遅れると、ランプ電流Ibは図5(a)において点線で示すような減衰振動となり、斜線で示すランプ電流Ibjは流れなくなる。このようにランプ電流Ibjの重畳によって、希ガス放電灯DLは図4(d)及び図5(c)に示すように発光(φ)し、ランプ電流Ibjの増加に対応して明るさφも図5(c)において斜線(φj)で示すように増加される。尚、スイッチング素子QAへの駆動信号の付与タイミングは跳ね返り期間t2 の早い時期ほど、点灯装置への入力をことさらに増やさなくても斜線で示すランプ電流Ibjを効果的に増加させることができる。
【0031】
この点灯装置において、定電力化回路PSTによる高周波電圧発生回路HAの入力側の電力の定電力化は、基本的にはスイッチング素子QAのオン動作時に流れるドレイン電流Ipが予め設定された値に達する毎に、スイッチング素子QAをオフ動作することによって行われる。ここで、出力トランスTRAの一次コイルTRaのインダクタンスをLp、ドレイン電流をIp、スイッチング周波数をfとすると、入力側の電力Pは P=0.5Lp・Ip2 ・f なる式で表される。この電力Pは出力トランスTRAの一次コイルTRaのインダクタンスLpがほぼ一定であることから、ドレイン電流Ip,スイッチング周波数fに依存することになる。従って、この定電力化回路PSTでは、例えば直流電源EBの電圧VINが変動し、ドレイン電流が図6(a)において実線,点線,二点鎖線で示すように変化しても入力側の電力Pはほぼ一定となるように制御される。
【0032】
例えば直流電源EBが正常電圧の場合には、ドレイン電流Ipは図6(a)において実線で示すように流れ、予め設定された値(Ip・R1 =Vref )に達すると、スイッチング素子QAには同図(b)に示す駆動信号(ゲ−ト信号)が付与される結果、スイッチング素子QAはT時点においてオフ動作されることによって、電力P(=0.5Lp・Ip2 ・f)は一定に維持される。又、直流電源EBが高くなった場合には、ドレイン電流Ip1 は同図(a)において点線で示すようにT時点より早いT1 時点で設定値(Ip1 ・R1 =Vref )に達し、この時点でスイッチング素子QAには同図(c)に示すようにオン期間の短縮されたゲ−ト信号が付与される結果、スイッチング素子QAはT1 時点においてオフ状態となる。従って、1周期当りのエネルギ−量(0.5Lp・Ip1 2 )は同図(a)においてT時点でオフ状態となる場合と同等になるが、スイッチング周波数f1 がfよりも高くなるために、結果的に電力P(=0.5Lp・Ip1 2 ・f1 )はfが高くなった分だけ高くなる。又、逆に直流電源EBが低くなった場合には、ドレイン電流Ip2 は同図(a)において二点鎖線で示すようにT時点より遅いT2 時点で設定値(Ip2 ・R1 =Vref )に達し、この時点でスイッチング素子QAには同図(d)に示すようにオン期間の伸長されたゲ−ト信号が付与される結果、スイッチング素子QAはT2 時点においてオフ状態となる。従って、1周期当りのエネルギ−量(0.5Lp・Ip2 2 )は同図(a)においてT時点でオフ状態となる場合と同等になるが、スイッチング周波数f2 がfより低くなるために、結果的に電力P(=0.5Lp・Ip2 2 ・f2 )はfが低下した分だけ低くなる。
【0033】
又、上述の定電力化回路PSTにおける進相回路40は例えば駆動回路20Aなど回路内での信号の遅延を補正する回路であり、次のように動作する。スイッチング素子QAがオン動作すると、図7(a)において実線で示すように、ドレイン電流Ipが出力トランスTRAの一次コイルTRa,電流検出回路30に流れる。電流検出回路30の出力電圧は進相回路40を介して比較回路50におけるオペアンプOPの反転入力端子に付与され、基準電圧Vref と比較される。T時点においてドレイン電流が予め設定された値(Ip・R1 =Vref )を越えると、オペアンプOPの出力はハイレベルとなり、駆動回路20Aの出力はロ−レベルになるために、スイッチング素子QAに付与されていた同図(b)において実線で示すゲ−ト信号がオフ状態になる。従って、スイッチング素子QAはT時点でオフ状態に反転される。
【0034】
しかしながら、比較回路50では電流検出回路30の出力電圧がT時点で基準電圧Vref を越えたと判断しても、その判断結果が駆動回路20Aに付与されても、直ちにスイッチング素子QAへのゲ−ト信号の付与が停止されることはない。即ち、駆動回路20Aに付与された信号に基づき所定の信号が出力されるまでに一定の処理時間を要することから、実際にスイッチング素子QAへのゲ−ト信号の付与が停止されるのは、同図(b)において点線で示すように、T時点よりもTd時間だけ遅れたTd時点となる。このために、電流検出回路30に流れるドレイン電流Ipは、同図(a)において点線で示すように、予め設定された値(Ip・R1 =Vref )よりも大きくなってしまい、定電力化機能に支障が生ずるようになる。従って、このような時間遅れは進相回路40におけるコンデンサC1 による進相機能に基づいて補正される。さらに、コンデンサC1 の進相機能は前述の直流電源EBの変化による周波数の変化分を抑える働きもある。
【0035】
この実施例によれば、高周波電圧発生回路HAには出力トランスTRAの一次コイルTRaに直列接続されたスイッチング素子QAを含む定電力化回路PSTが組み込まれているために、高周波電圧発生回路HAの入力側の電力を直流電源の電圧変動に影響されることなくほぼ一定に制御できる。従って、希ガス放電灯DLの光量を安定化できる。
【0036】
又、希ガス放電灯DLの点灯状態において、スイッチング素子QAのオフ期間は出力トランスTRAの二次コイルTRc側の実効インダクタンスと希ガス放電灯DLが点灯した状態の実効静電容量とにより発生するランプ電流の自由振動の最初の1周期以内に設定されており、しかも、その長さは駆動回路20AのコンデンサC2 ,抵抗R6 によって一定に設定されているために、スイッチング素子QAのオフ期間(オフ状態になってから再びオン状態になるまでの時期)を常に一定にできる。従って、ランプ電流の増加による明るさ(光量)の増加する時期が一定となり、変動の少ない安定した明るさが得られる。
【0037】
特に、スイッチング素子QAのオフ期間を、ランプ電流の方向が反転する跳ね返り期間t2 に設定すれば、高周波電圧発生回路HAの入力電流をことさらに増加させなくても、跳ね返り期間t2 に流れるランプ電流をIbj分だけ増加させることができ、これに伴って、明るさ(光量)φもφj分だけ増加させることができる。従って、希ガス放電灯DLの光量を増加できるのみならず、点灯装置の効率も高めることができ、例えばOA機器における原稿の送り速度の高速化にも対応が可能となる。
【0038】
又、電流検出回路30と比較回路50におけるオペアンプOPの反転入力端子との間にはコンデンサC1 及び抵抗R2 ,R3 を含む進相回路40が接続されているために、駆動回路20Aなどの回路内で信号遅延が生じても、スイッチング素子QAを適切なタイミングにてオフ動作させることができ、望ましい定電力化機能を奏することが可能になる。
【0039】
又、希ガス放電灯DLにおける第2の開口部8を形成する外部電極5,6の側縁部5b,6bには三角状の異形部5A,6Aが周期性を有するように形成されているために、高周波電圧発生回路HAから外部電極5,6にパルス状の高周波電圧を印加した場合、異形部5A,6Aにおける三角部分の頂点部分に電界が集中し、希ガス空間を介して外部電極間で容易に放電する。従って、電源変動によって外部電極5,6への印加電圧が少々低くなったりしても確実に点灯させることができる上、チラツキの発生を抑制できる。特に、点灯装置への組み込み状態において、異形部6Aの形成された外部電極6が接地されているために、異形部の形成と相俟って、放電状態の安定性を向上でき、チラツキの発生を効果的に抑制できる。
【0040】
しかも、希ガス放電灯DLにおける外囲器1の肉厚は0.2〜0.7mmの範囲に設定されており、外部電極5,6に高周波高電圧を印加した場合、肉厚の厚い範囲では抵抗成分の増加に伴う外囲器自身への電圧分配の増加に関連してチラツキが発生し易くなるものの、上述のように外部電極5,6に異形部5A,6Aが形成され、かつ外部電極6が接地されていることと相俟って肉厚の厚い領域においてもチラツキの発生を効果的に抑制できるし、アパ−チャ部2aを介して第1の開口部7から放出される光出力も効果的に改善できる。
【0041】
特に、希ガスの封入圧力を高くすると、光出力は増加する反面、始動特性は損なわれるようになるが、外部電極5,6の側縁部5b,6bに三角状の異形部5A,6Aを形成することによって、希ガスの封入圧力の上限を200トルにまで拡大しても、実用に供し得る始動特性が確保でき、移動縞(チラツキ)の発生も効果的に抑制でき、その上、光出力を有効に改善できる。従って、原稿照射装置に適用した場合には、安定した放電状態が得られる上に、原稿面照度を高めることができることから、読み取り品位の向上が期待できる。
【0042】
又、発光層2の付着量が1cm2 当たり5〜30mgの範囲に設定すれば、外囲器1の肉厚を0.2〜0.7mmの範囲に設定すること及び希ガスの封入圧力を83〜200トルに設定することと相俟ってアパ−チャ部2aを介して第1の開口部7から放出される光出力を効果的に増加できる。
【0043】
この発光層2の付着量は通常の照明用蛍光ランプに比較すると2〜10倍程度に設定されており、通常の照明用蛍光ランプでは特性的に好ましいものではないと考えられている量であるにも拘らず、希ガス放電灯では光出力が有効に増加している。この原因については明らかではないが、外部電極5,6の間(外囲器1の長手方向に対してほぼ直角方向)における希ガス空間部に無数の放電路が形成されることによって縞状の状態で点灯する希ガス放電灯に特有の現象と考えられる。
【0044】
さらには、外囲器1の肉厚及び外部電極の構造を、好ましくは発光層2の付着量,希ガスの封入圧力をも上述の範囲に設定した上で、第1の開口部7の開口角θ1 を60〜90°の範囲に設定すれば、パルス状の高周波高電圧の印加による点灯と相俟って第1の開口部7から放出される光出力を一層に増加させることができる。この際に、第2の開口部8の離隔長さ(異形部5A,6Aの先端間の間隔)を2mm程度に設定すれば、第2の開口部8からの光の漏洩が抑制され、第1の開口部7から放出される光出力の一層の改善効果が期待できる。
【0045】
図8は本発明の第2の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯の点灯装置と同じである。異なる点は、進相回路40の出力端に直流電源EBからの分配電圧をバイアス電圧として印加したことである。具体的には直流電源EBと進相回路40の出力端(比較回路50におけるオペアンプOPの反転入力端子)との間にはツェナ−ダイオ−ドZD1 と抵抗R7 との直列回路が接続されている。
【0046】
この点灯装置の動作は基本的には図1に示す点灯装置と同じであり、異なる点について説明する。スイッチング素子QAのオン動作によって出力トランスTRAの一次コイルTRa及び電流検出回路30には一次電流(ドレイン電流Ip)が流れ、電流検出回路30にはドレイン電流Ipによる電圧降下が生じ、進相回路40を介して比較回路50に付与される。この際に、直流電源EBの電圧が電源変動によって高くなると、直流電源EBからツェナ−ダイオ−ドZD1 を介して抵抗R7 ,抵抗R3 に電流が流れ、抵抗R7 ,抵抗R3 の抵抗比による分配電圧がバイアスとして電流検出回路30の出力電圧に付加される。従って、比較回路50に付与される出力電圧と基準電圧Vref との相対的な電圧差は小さくなり、出力電圧の僅かな増加によって比較回路50が作動することになる。
【0047】
この実施例によれば、電流検出回路30の出力電圧に直流電源EBの分配電圧をバイアスとして付加することによって、電流検出回路30の出力電圧と基準電圧Vref との相対的な電圧差を小さくできることから、比較回路50の基準電圧Vref を実質的に可変したと同等の機能を奏することになる。従って、電源変動時におけるスイッチング素子QAのスイッチング動作を適切に制御することができる。
【0048】
図9は本発明の第3の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯の点灯装置と同じである。異なる点は、出力トランスTRAの一次コイルTRaとスイッチング素子QAとの接続点CNに基準電圧降下回路60を接続したことと、比較回路50Aの非反転入力端子への基準電圧Vref の印加に変更を加えたことである。
【0049】
この基準電圧降下回路60は抵抗R8 〜R14と、コンデンサC3 と、トランジスタQ1 〜Q2 と、ダイオ−ドD1 と、ツェナ−ダイオ−ドZD2 とから構成されている。具体的には、接続点CNには抵抗R8 ,R9 とが直列に接続されており、その中点から抵抗R10がトランジスタQ1 のベ−スに接続されている。このトランジスタQ1 のコレクタには直流電源EBの電圧VINが、エミッタには抵抗R11及びダイオ−ドD1 とコンデンサC3 との直列回路がそれぞれ接続されている。ダイオ−ドD1 の出力側にはツェナ−ダイオ−ドZD2 を介して抵抗R12,R13が接続されており、抵抗R13はトランジスタQ2 のベ−スに接続されている。このトランジスタQ2 のコレクタには抵抗R14が接続されており、エミッタは設置されている。
【0050】
一方、比較回路50AはオペアンプOPと、ヒステリシス用の抵抗R4 〜R5 と、抵抗R15〜R16と、ツェナ−ダイオ−ドZD3 とから構成されている。具体的には、オペアンプOPの反転入力端子(−)には電流検出回路30の出力が付与されており、非反転入力端子(+)には抵抗R4 ,抵抗R15〜R16の直列回路を介して直流電源EBが接続されている。そして、抵抗R15と抵抗R16との接続点にはツェナ−ダイオ−ドZD3 が接続されており、この接続点の電圧は常にツェナ−ダイオ−ドZD3 によるツェナ−電圧に維持され、基準電圧Vref として作用する。又、抵抗R4 と抵抗R15との接続点Pには基準電圧降下回路60における抵抗R14の一端が接続されている。
【0051】
この点灯装置の動作は基本的には図1に示す点灯装置と同じである。異なる点は、基準電圧降下回路60は高周波電圧発生回路HA2の出力側に希ガス放電灯DLが接続されていなかったり、或いは接続されていても点灯しない場合にのみ動作し、希ガス放電灯DLが正常に点灯する場合には動作しないことであり、又、比較回路50Aに付与される基準電圧Vref は基準電圧降下回路60の動作に応じて変化(降下)させることができることである。
【0052】
例えば高周波電圧発生回路HA2の出力側に希ガス放電灯DLが接続されていない無負荷状態で動作させると、スイッチング素子QAのオン・オフ動作に関連して出力トランスTRAの一次コイルTRaには(Na/Nc)・Vfなる高い電圧Vdが発生する。ここで、Na,Ncは一次コイルTRa,二次コイルTRcの卷線数、Vfは二次コイルTRcに発生した電圧である。この電圧Vdは抵抗R8 と抵抗R9 との抵抗比によって分圧され、抵抗R10を介してトランジスタQ1 のベ−スに印加される。尚、この分圧電圧はトランジスタQ1 がシリコントランジスタの場合、0.6V程度となり、高い電圧Vdが発生しない正常状態では0.3V程度以下となるように設定されている。トランジスタQ1 に0.6V程度の電圧が印加されると、トランジスタQ1 はオン動作し、直流電源EBからトランジスタQ1 ,抵抗R11に電流が流れ、抵抗R11に電圧(例えば2〜4V程度の電圧)が発生する。この電圧はダイオ−ドD1 を介してコンデンサC3 に充電され、この電圧がツェナ−ダイオ−ドZD2 のツェナ−電圧を越えると、抵抗R12に電圧(例えば1〜2V程度の電圧)が発生し、抵抗R13を介してトランジスタQ2 のベ−スに印加される結果、トランジスタQ2 はオン動作する。一方、オペアンプOPの非反転入力端子にはツェナ−ダイオ−ドZD3 のツェナ−電圧によって決定される基準電圧Vref が印加されているのであるが、上述のように、トランジスタQ2 のオン動作によって抵抗R15,抵抗R14に電流が流れ、抵抗R15に電圧降下が生ずる。この結果、オペアンプOPの非反転入力端子にはツェナ−ダイオ−ドZD3 のツェナ−電圧から抵抗R15の電圧降下分を減算したかなり低い電圧が基準電圧として印加されることになる。従って、電流検出回路30の出力電圧は電圧降下した基準電圧と比較されるものの、比較回路50Aからは直ちにハイレベルの信号が出力され、駆動回路20Aからはスイッチング素子QAにゲ−ト信号が付与されなくなるために、スイッチング素子QAがオフ動作状態になる。このために、出力トランスTRAの二次コイルTRcから一次コイルTRaに誘起される高い電圧Vdは解消され、スイッチング素子QAの破壊も免れることができる。
【0053】
この実施例によれば、高周波電圧発生回路HA2には定電力化回路PST1の他に基準電圧降下回路60が追加されているために、高周波電圧発生回路HA2の出力側に希ガス放電灯DLが接続されていなかったり、接続されていても点灯しなかったりした場合でも、直ちに基準電圧降下回路60及び比較回路50Aの協働作用によって基準電圧を降下させることによって、出力トランスTRAの一次コイルTRaに発生する不所望に高い電圧Vdが抑制される。従って、スイッチング素子QAの破壊を未然に防止することができる。
【0054】
図10〜図11は本発明の第4の実施例を示すものであって、基本的な構成は図2〜3に示す希ガス放電灯DLと同じである。異なる点は、外部電極6の側縁部6bにのみ三角状の異形部6Aを形成し、それ以外の外部電極5の側縁部5a,6b,外部電極6の側縁部6aはすべてストレ−ト状に形成したことである。尚、異形部6Aは三角状の他、半円状,矩形状などに形成することもできる。
【0055】
特に、この構造の希ガス放電灯DLが図1(図8又は図9でも可)に示す点灯装置に組み込まれた場合には、すべての外部電極がフロ−ティングの状態で点灯されると、電源ラインが定格電圧に維持されていても放電が不安定であり、縞状の放電状態が目視されることもある上、チラツキも発生することがある。しかしながら、図1に示すように、異形部6Aの形成された側の外部電極6を接地することによって、仮に電源電圧が10%程度低下したとしてもチラツキの抑制された安定した放電状態が得られる。
【0056】
又、この実施例によれば、外部電極5,6にパルス状の高周波電圧が印加された場合、側縁部6bの異形部6Aとストレ−ト状の側縁部5bとの間で放電が生ずるのであるが、一方の側縁部(5b)がストレ−ト状に構成されているために、両者のピッチ合わせ(位置合わせ)の必要がなく、組立性を改善できる。
【0057】
図12は本発明の第5の実施例を示すものであって、基本的な構成は図2〜図3に示す希ガス放電灯と同じである。尚、この希ガス放電灯DLの組み込まれる点灯装置は図1の他、図8,図9に示す希ガス放電灯の点灯装置であってもよい。異なる点は、外部電極5,6の側縁部5b,6bに、軸方向の端部を除く中央部分(例えば全長の20〜70%、好ましくは30〜50%の範囲)に三角状の異形部5A,6Aを形成し、それ以外の外部電極の側縁部はすべてストレ−ト状に形成したことである。尚、外部電極6は接地されている。
【0058】
この実施例によれば、上述の実施例と同様の効果が得られる上、外部電極5,6の中央部分は異形部5A,6Aの形成によって電極としての面積が縮小されているために、点灯時における電流密度が低くなり、軸方向における外囲器1の中央部分と端部との温度差が緩和される。従って、点灯初期から安定状態に至るまでに生ずる照度の減衰を近似させることができ、軸方向の照度分布を均一化する方向に改善できる。
【0059】
又、外部電極5,6における異形部5A,6Aの形成領域が第1,第4の実施例に比較して狭いにも拘らず、同様の始動特性が得られる上に、異形部5A,6Aの形成されていない部分にも異形部分と同様な放電が生成され、安定した放電状態が得られる。
【0060】
図13は本発明の第6の実施例を示すものであって、基本的な構成は図12に示す希ガス放電灯と同じである。尚、この希ガス放電灯DLの組み込まれる点灯装置は図1の他、図8,図9に示す希ガス放電灯の点灯装置であってもよい。異なる点は、外部電極6の側縁部6bにおける異形部6Aを省略し、ストレ−ト状に構成したことである。
【0061】
図14は本発明の第7の実施例を示すものであって、基本的な構成は図2〜図3に示す希ガス放電灯と同じである。尚、この希ガス放電灯DLの組み込まれる点灯装置は図1の他、図8,図9に示す希ガス放電灯の点灯装置であってもよい。異なる点は、外囲器1の外周面に異形部5A,6Aを有する外部電極5,6を、第1,第2の開口部7,8が形成されるように互いに離隔して貼着すること及び外囲器1の外周面に透光性シ−ト4Aを、貼着した外部電極5,6が被覆されるように巻回して装着したことである。尚、この透光性シ−ト4Aの一方の面には接着層が形成されており、巻回によって接着される。
【0062】
図15は本発明の第8の実施例を示すものであって、基本的な構成は図10〜図11に示す希ガス放電灯と同じである。異なる点は、外囲器1の外周面に異形部5A,6Aを有する外部電極5,6を、第1,第2の開口部7,8が形成されるように互いに離隔して貼着した後に、外囲器1の外周面に熱収縮性樹脂よりなる保護チュ−ブ12を、貼着した外部電極5,6が被覆されるように装着し、熱収縮させて密着させたことである。尚、この保護チュ−ブ12としては、例えば熱収縮性の付与されたPET樹脂などが好適し、例えば150〜200°C程度に加熱することによって熱収縮して外囲器1に密着される。
【0063】
この実施例によれば、上述の各実施例のように透光性シ−ト(外装用の絶縁部材)に重ね合わせ部分が存在しないために、どのような条件下で使用しても、保護チュ−ブ12が外囲器1から剥がれることはなく、外部電極5,6の露出を確実に防止でき、安全性を高めることが期待できる。
【0064】
尚、本発明は、何ら上記実施例にのみ制約されることなく、例えば電流検出回路と比較回路との間に接続された進相回路は点灯装置に対する要求精度によっては省略することもできる。又、駆動回路はスイッチング素子にオフ期間が一定の駆動信号を付与できれば、単安定マルチバイブレ−タ以外の回路素子を適用することもできる。又、基準電圧降下回路は高周波電圧発生回路の出力側における実質的な無負荷を速やかに回避できれば、図示例の回路に制約されない。特に、スイッチング素子のオフ期間はランプ電流の跳ね返り期間内に設定することが最も望ましいが、自由振動の最初の1周期以内、又は最初のピ−ク点から跳ね返り期間の終了する期間内のいずれかに設定することもできる。又、点灯装置に組み込まれる希ガス放電灯において、それの発光層はアパ−チャ部を省略して外囲器の内面全体に形成することもできる。又、外部電極における異形部のピッチ,高さなどは希ガス放電灯のサイズに応じて適宜に変更できるし、異形部を有する外部電極の接地は省略することもできるし、さらには異形部を省略することもできる。さらには、外部電極の形態において、帯状とは全体としての形態が帯状であることを意味し、側縁部や側縁部でない部分に異形部,孔などが存在したりするものも含まれるものとする。
【0065】
【実施例】
次に、実験例について説明する。まず、青色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体,緑色領域に発光スペクトルを有するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体,赤色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体をそれぞれ65,15,20重量%の割合で混合してなる水溶性の蛍光体塗布液を外径が8mm,長さが300mmの鉛ガラスよりなる外囲器の内面に塗布し発光層を形成する。次に、スクレ−パを用いて発光層の一部を強制的に剥がすことによって開口角75°のアパ−チャ部を形成する。尚、発光層の付着量は12mg/cm2 である。次に、外囲器をトップシ−ル法によって封止し、内部空間にキセノンガスを120トルの圧力で封入する。然る後、この外囲器の外周面にシ−ト構体を巻回し図10〜図11に示す構造の希ガス放電灯を製造した。尚、一対の外部電極には幅が8mmのアルミニウム箔を用い、第2の開口部を形成する外部電極の一方の側縁部にのみピッチが4mmで頂点の高さが1.5mmの三角状の異形部を形成し、対向する他方の側縁部はストレ−ト状に形成した。
【0066】
この希ガス放電灯を図1に示す点灯回路に組み込み、異形部を有する外部電極を接地し、高周波電圧発生回路におけるスイッチング素子のオフ期間を、ランプ電流の跳ね返り期間の前半に設定すると共に、高周波電圧発生回路の出力電圧を定格値(周波数が30KHzで、パルス電圧が2000V0-P )に設定して希ガス放電灯を点灯させ、希ガス放電灯の中央部分から8mm離れた部所に照度計を配置して照度を測定したところ、38000Lxであり、高周波電圧発生回路の入力電流は620mAであった。尚、スイッチング素子のオフ期間を跳ね返り期間外に遅らせたものは、38000Lxの照度を得るために入力電流を790mAに増加しなければならなかった。従って、本発明装置においては、入力電流を790mAにまで増加させれば、照度をさらに高めることができるものである。又、点灯状態でのチラツキの発生はなく、安定した放電状態が観察された。
【0067】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、高周波電圧発生回路には出力トランスの一次コイルに直列接続されたスイッチング素子を含む定電力化回路が組み込まれているために、高周波電圧発生回路の入力側の電力を電源変動に影響されることなくほぼ一定に制御できる。従って、希ガス放電灯の光量を安定化できる。
【0068】
又、希ガス放電灯の点灯状態において、スイッチング素子のオフ期間は出力トランスの二次コイル側の実効インダクタンスと希ガス放電灯が点灯した状態の実効静電容量とにより発生するランプ電流の自由振動の最初の1周期以内に設定されており、しかも、その長さもほぼ一定に設定されているために、スイッチング素子がオフ状態になってから再びオン状態になるタイミングを常に一定にできる。従って、ランプ電流の増加による明るさ(光量)の増加する時期が一定となり、変動の少ない安定した明るさが得られる。
【0069】
特に、スイッチング素子のオフ期間を、ランプ電流の方向が反転する跳ね返り期間内に設定すれば、高周波電圧発生回路の入力電流をことさらに増加させなくても、跳ね返り期間に流れるランプ電流を有効に増加させることができ、これに伴って、光量も電流増加分に応じて増加させることができる。従って、希ガス放電灯の光量を増加できるのみならず、点灯装置の効率も高めることができ、例えばOA機器における原稿の送り速度の高速化にも対応が可能となる。
【0070】
又、電流検出回路と比較回路との間にコンデンサを含む進相回路を接続すれば、駆動回路などの回路内で信号遅延が生じても、スイッチング素子を適切なタイミングにてオフ動作させることができ、望ましい定電力化機能を奏することが可能になる。
【0071】
さらには、希ガス放電灯における第2の開口部を形成する外部電極のいずれかの側縁部に異形部を形成すれば、高周波電圧発生回路から外部電極にパルス状の高周波電圧を印加した場合、異形部に電界が集中し、希ガス空間を介して外部電極間で容易に放電する。従って、電源変動によって外部電極への印加電圧が少々低くなったりしても確実に点灯させることができる上、チラツキの発生も抑制できる。特に、点灯装置への組み込み状態において、異形部の形成された外部電極を接地すれば、異形部の形成と相俟って、放電状態の安定性を向上でき、チラツキの発生も効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す点灯装置の電気回路図。
【図2】図1に示す希ガス放電灯の縦断面図。
【図3】図2に示す希ガス放電灯の外囲器及び外部電極の展開図。
【図4】図1の動作説明図であって、同図(a)はゲ−ト信号の波形図、同図(b)はスイッチング素子に流れるドレイン電流の波形図、同図(c)はランプ電流の波形図、同図(d)は発光波形図。
【図5】ランプ電流とスイッチング素子の駆動タイミングとの関係を示す拡大図であって、同図(a)はランプ電流の波形図、同図(b)はゲ−ト信号の波形図、同図(c)は発光波形図。
【図6】図1に示す定電力化回路の動作説明図であって、同図(a)は第1〜第3のドレイン電流の波形図、同図(b)は第1のドレイン電流に対応するゲ−ト信号の波形図、同図(c)は第2のドレイン電流に対応するゲ−ト信号の波形図、同図(d)は第3のドレイン電流に対応するゲ−ト信号の波形図。
【図7】図1に示す定電力化回路における進相回路の動作説明図であって、同図(a)はドレイン電流の波形図、同図(b)はドレイン電流に対応するゲ−ト信号の波形図。
【図8】本発明の第2の実施例を示す点灯装置の電気回路図。
【図9】本発明の第3の実施例を示す点灯装置の電気回路図。
【図10】本発明の第4の実施例を示す縦断面図。
【図11】図10に示す希ガス放電灯の外囲器及び外部電極の展開図。
【図12】本発明の第5の実施例を示す希ガス放電灯の外囲器及び外部電極の展開図。
【図13】本発明の第6の実施例を示す希ガス放電灯の外囲器及び外部電極の展開図。
【図14】本発明の第7の実施例を示す縦断面図。
【図15】本発明の第8の実施例を示す縦断面図。
【図16】先行技術にかかる希ガス放電灯の縦断面図。
【図17】先行技術にかかるシ−ト構体の展開図。
【図18】図17のX−X断面図。
【図19】先行技術にかかる希ガス放電灯の製造方法を説明するための縦断面図。
【図20】先行技術にかかる希ガス放電灯の点灯装置の電気回路図。
【符号の説明】
1 外囲器
2 発光層
2a アパ−チャ部
3 シ−ト構体
4,4A 透光性シ−ト(絶縁部材)
5,6 外部電極
5a,5b,6a,6b 側縁部
5A,6A 異形部
7 第1の開口部
8 第2の開口部
12 保護チュ−ブ(絶縁部材)
20A 駆動回路
30 電流検出回路(抵抗)
40 進相回路
50,50A 比較回路
60 基準電圧降下回路
DL 希ガス放電灯
HA,HA1,HA2 高周波電圧発生回路
TRA 出力トランス
TRa 一次コイル
TRc 二次コイル
QA スイッチング素子
CA コンデンサ
PST,PST1 定電力化回路
OP オペアンプ
M 単安定マルチバイブレ−タ
R1 〜R16 抵抗
C1 〜C3 コンデンサ
ZD1 〜ZD3 ツェナ−ダイオ−ド
Q1 〜Q2 トランジスタ
Claims (6)
- 希ガス放電灯の点灯装置であって、
出力トランスの入力側に設けられたスイッチング素子を含む定電力化回路と、
駆動信号の付与・停止によるスイッチング素子のスイッチング動作に基づいて出力トランスの出力側にパルス状の高周波電圧を発生する高周波電圧発生回路とを具備し、
前記希ガス放電灯を高周波電圧発生回路の出力側に、一対の外部電極にパルス状の高周波電圧が印加されるように接続し、かつ希ガス放電灯の点灯状態における高周波電圧発生回路の入力側の電力を、定電力化回路によってほぼ一定となるように制御を行い、
前記定電力化回路は、少なくとも、出力トランスの一次コイルに直列接続したスイッチング素子と、スイッチング素子に直列接続した電流検出回路と、電流検出回路にて検出した電流に対応する出力電圧と基準電圧とを比較する比較回路と、比較回路において電流検出回路の出力電圧が基準電圧より高くなった時に出力される信号に基づいてスイッチング素子をオフ動作させた後、予め設定された一定時間後にスイッチング素子をオン動作させる駆動信号を出力する駆動回路とから構成され、
前記スイッチング素子のオフ期間を、出力トランスの二次コイル側の実効インダクタンスと希ガス放電灯が点灯した状態の実効静電容量とにより発生するランプ電流の自由振動の最初の1周期以内であり、自由振動の最初のピ−ク点からランプ電流の反転する跳ね返り期間の間に設定したことを特徴とする希ガス放電灯の点灯装置。 - 前記高周波電圧発生回路は、少なくとも、一次,二次コイルを有する出力トランスと、出力トランスの一次コイルに直列接続したスイッチング素子を含む定電力化回路と、出力トランスの一次コイルと定電力化回路との直列回路にほぼ並列的に接続したコンデンサとから構成したことを特徴とする請求項1記載の希ガス放電灯の点灯装置。
- 前記定電力化回路は、少なくとも、出力トランスの一次コイルに直列接続したスイッチング素子と、スイッチング素子に直列接続した電流検出回路と、電流検出回路にて検出した電流に対応する出力電圧と基準電圧とを比較する比較回路と、電流検出回路と比較回路との間に接続したコンデンサ,抵抗を含む進相回路と、比較回路において電流検出回路の出力電圧が基準電圧より高くなった時に出力される信号に基づいてスイッチング素子をオフ動作させた後、予め設定された一定時間後にスイッチング素子をオン動作させる駆動信号を出力する駆動回路とから構成してなり、比較回路,駆動回路などでの信号の遅延を進相回路にて補正することを特徴とする請求項1に記載の希ガス放電灯の点灯装置。
- 前記スイッチング素子のオフ期間が一定となる駆動信号を付与する駆動回路を、単安定マルチバイブレ−タにて構成したことを特徴とする請求項1又は3に記載の希ガス放電灯の点灯装置。
- 前記定電力化回路の比較回路を主としてオペアンプにて構成してなり、オペアンプの非反転入力端子に基準電圧を、反転入力端子に電流検出回路の出力電圧をそれぞれ印加したことを特徴とする請求項1又は3に記載の希ガス放電灯の点灯装置。
- 前記定電力化回路におけるオペアンプの反転入力端子に電源電圧の分配電圧をバイアス電圧として印加したことを特徴とする請求項5に記載の希ガス放電灯の点灯装置。
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