JP3976255B2 - プレライニング用急結セメントコンクリート及びそれを用いたプレライニング工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル外周面を先受けするセメントコンクリート覆工体を切羽の前方に構築するためのプレライニング工法において採用される急結セメントコンクリート、その製造方法、及びそれを用いたプレライニング工法に関する。
【0002】
なお、本発明のセメントコンクリートとは、モルタルやコンクリートを総称するものである。また、本発明における部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
【0003】
【従来の技術とその課題】
従来より、トンネルの構築等、地下を掘削する際の工法の一つとして、プレライニング工法と呼ばれる工法が用いられている。プレライニング工法とは、通常、トンネル等の外周面を先受けするコンクリート覆工体を切羽の前方に形成し、このコンクリート覆工体に覆われた部分を掘削しつつトンネル等をその掘削方向に順次構築していく工法である。
【0004】
かかるコンクリート覆工体は、例えば、チェーンカッタ等の細溝掘削機械を用いて、トンネル外周に沿って所定幅の掘削溝を順次形成するとともに、当該掘削溝にコンクリート圧送管を通じてコンクリート組成物を充填打設する工程を、トンネル外周面の円周方向に沿って順次行い、一体なコンクリート覆工体として形成される。(特開平5-25995号公報、特開2002−47049号公報等)。
【0005】
プレライニング工法において、セメントコンクリートを打設してコンクリート覆工体とする方法としては、現場プラント又は工場プラントで、あらかじめ急硬材や凝結調整剤等を添加したセメントコンクリートを調製し、該セメントコンクリートを生コン車等で運搬し、コンクリートポンプにより該セメントコンクリートを生コン車等から打設現場までコンクリート圧送管を介して圧送し、切羽の直前においてこの圧送中のセメントコンクリートに急結剤を合流混合して打設する方法が用いられていた(特開平06−212877号公報、特願平2002-30741号等)。
【0006】
しかしながら、このような方法で形成されたコンクリート覆工体は、トンネルの施工に際し大きな荷重が発生する用途では、初期の荷重に対する強度が不足する場合があった。また、このような大きな荷重は、例えば超大断面、扁平断面のトンネル等において特に起こりやすく、初期の圧縮強度を改善してほしいとの要望があった。
【0007】
このような、トンネルの施工に際し大きな荷重が発生することが予想される工事、すなわち超大断面、扁平断面、又は高深度のトンネル工事では、プレライニング工法を効率よく速やかに行うためのセメントコンクリート材料に必要とされる条件として、(1)流動性が高く、掘削溝やスリットへの隙間ない充填作業や圧送等が容易であること、(2)強度発現性が速やかであること、(3)硬化した際の初期強度が十分に高いことが挙げられる。
【0008】
すなわち、コンクリート覆工体を形成するセメントコンクリートは、掘削溝に隙間なく充填打設することが可能な流動性を備えることが要求される。
【0009】
また、コンクリート覆工体の形成後、該コンクリート覆工体によって覆われた部分を速やかに掘削できるよう、例えば、打設後4〜6時間程度で外周地山の土圧に耐え得る強度を発現できることが要求される。
【0010】
さらに、コンクリート覆工体は、掘削溝を形成し、これに充填打設する工程を円周方向に繰り返して一体形成されるので、このような工程を順次連続して繰り返すことができるよう、打設したセメントコンクリートが、充填打設したセメントコンクリートの切羽側の端面を押さえる型枠である妻型枠を外せる程度の自立性を打設後5〜10分程度の短時間で速やかに発現できることが好ましいとされている。
【0011】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、特定の配合のプレライニング用急結セメントコンクリートが、(1)流動性が高く掘削溝やスリットへの隙間ない充填作業や圧送等が容易である、(2)強度発現性が速やかで、しかも(3)硬化した際の初期強度が十分に高いということを知見して本発明を完成するに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、カルシウムアルミネート及び硫酸カルシウムからなる急硬材、並びに凝結調整剤を含有してなるプレライニング用急硬セメントコンクリートにおいて、急硬材及びセメントの合計100部中、急硬材量が25〜35部であり、水100部に対して、アルカリ金属炭酸塩及び有機酸類からなる凝結調整剤が10〜95部である液状凝結調整剤を、セメントと急硬材の合計100部に対して、固形分換算で1.0〜1.6部含有してなることを特徴とするプレライニング用急硬セメントコンクリートであり、該プレライニング用急硬セメントコンクリート及び液体急結材を含有してなるプレライニング用急結セメントコンクリートであり、該プレライニング用急硬セメントコンクリートを圧送し、切羽手前で液体急結材を合流混合し、打設箇所にて硬化させる工程を含んでなる、プレライニング工法によるトンネルの施工方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0014】
本発明で使用するプレライニング用急硬セメントコンクリート(以下、急硬コンクリートという)は、セメント、急硬材、液状凝結調整剤を含有するものである。
【0015】
本発明で用いる急硬材は、セメントの反応を促進して短時間に硬化させるために用いるもので、カルシウムアルミネート及び硫酸カルシウムからなるものである。また、カルシウムアルミネートの代わりにカルシウムサルホアルミネートを用いてもよい。
【0016】
カルシウムアルミネートとは、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をして得られるもので、CaOとAl2O3を主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称であり、CaO及び/又はAl2O3の一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいは、CaOとAl2O3を主成分とするものに、これらが少量固溶した物質である。鉱物形態としては、結晶質、非晶質いずれであってもよい。
【0017】
また、CaOとAl2O3の比率は、CaO/Al2O3モル比で1〜3が好ましく、1.5〜2.5がより好ましい。CaO/Al2O3モル比が1未満又は3を超えると急結性が低下することがある。
【0018】
また、これらの中では、反応活性の面で、12CaO・7Al2O3(以下、C12A7という)組成に対応する熱処理物を急冷した非晶質カルシウムアルミネートが最も好ましい。
【0019】
カルシウムアルミネートの粒度は、初期強度発現性の面で、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で4,000cm2/g以上が好ましく、5,000〜8,000cm2/g以上がより好ましい。4,000cm2/g未満では初期強度発現性が低下する場合があり、8,000cm2/gを超えると過剰な粉砕動力が必要となる場合がある。
【0020】
また、硫酸カルシウムとしては、無水、半水、及び2水の石膏が挙げられ、そのうち、強度発現性が大きい面で、無水石膏、特にII型無水石膏や天然無水石膏が好ましい。
【0021】
硫酸カルシウムの粒度は、ブレーン値で3,000cm2/g以上が好ましく、4,000〜7,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では初期強度発現性が低下する場合があり、7,000cm2/gを超えると過剰な粉砕動力が必要となる場合がある。
【0022】
硫酸カルシウムの使用量は、結晶水を除いた無水石膏換算値で、カルシウムアルミネート100部に対して、70〜150部が好ましく、90〜110部がより好ましい。70部未満では急硬コンクリートのフロー保持やスランプ保持が困難となり、初期強度発現性が低下する場合があり、150部を超えると短期強度発現性が悪くなる場合がある。
【0023】
硫酸カルシウム及びカルシウムアルミネートからなる急硬材の使用量は、セメント100部に対して、20〜40部である必要があり、25〜35部が好ましい。20部未満では施工条件に十分な初期強度発現性が顕著でない場合があり、40部を超えると長期強度が低下する場合がある。
【0024】
液状凝結調整剤とは、急硬コンクリートのハンドリングを調整するものであり、アルカリ金属炭酸塩と有機酸類を含有してなる凝結調整剤の水溶液又はスラリーをいう。
【0025】
また、液状凝結調整剤としては、急硬コンクリートの混練水にアルカリ金属炭酸塩と有機酸類を添加したものを使用することも可能である。
【0026】
ここで、アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び重炭酸ナトリウムなどが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。これらの中では、急硬コンクリートの可使時間が長く、初期強度発現性が良く、急硬コンクリートが硬化しやすい面で、炭酸カリウムが好ましい。
【0027】
また、有機酸類としては、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、及び乳酸又はこれらの塩等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。これらの中では、急硬コンクリートのフロー保持やスランプ保持が容易で、初期強度発現性が良い面で、クエン酸やグルコン酸又はこれらの塩が好ましい。
【0028】
アルカリ金属炭酸塩の使用量は、凝結調整剤100部中、50〜85部が好ましく、60〜80部がより好ましい。50部未満では急硬コンクリートの可使時間は長くなるが、初期強度発現性が低下し、急硬コンクリートが硬化しにくい場合があり、85部を超えると急硬コンクリートのフロー保持やスランプ保持が困難となったり、初期強度発現性が低下する場合がある。
【0029】
また、有機酸類の使用量は、凝結調整剤100部中、50〜15部が好ましく、40〜20部がより好ましい。15部未満では急硬コンクリートのフロー保持やスランプ保持が困難となる場合や初期強度発現性が低下する場合があり、50部を超えると急硬コンクリートの可使時間は長くなるが、初期強度発現性が低下し、急結コンクリートが硬化しにくい場合がある。
【0030】
液状凝結調整剤中の水の配合割合は、水100部に対して、アルカリ金属炭酸塩及び有機酸類からなる凝結調整剤が10〜95部であることが好ましく、35〜50部がより好ましい。凝結調整剤が10部未満では急硬コンクリートのフローを保持したり、スランプを保持するために必要とする液状凝結調整剤の使用量が多くなるために、水/セメント比が高くなり、急結コンクリートの強度発現性が低下する場合がある。また、凝結調整剤が95部を超えると凝結調整剤が析出する場合がある。
【0031】
液状凝結調整剤の使用量は、施工温度(環境温度)により変わるので一義的には決定できるものではないが、セメントと急硬材の合計100部に対して、固形分換算で0.1〜2.0部が好ましく、1.0〜1.6部がより好ましい。0.1部未満では流動性の確保が難しい場合があり、2.0部を超えると初期強度発現性が低下する場合がある。
【0032】
本発明では、急硬コンクリートの凝結や硬化を促進するために、急硬コンクリートと液体急結材とを圧送し、合流混合してプレライニング用急結セメントコンクリート(以下、急結コンクリートという)として打設する。
【0033】
急結コンクリートにおける水の合計の使用量は、特に制限されないが、セメントと急硬材の合計100部に対して、20〜60部となるように配合することが好ましい。水が20部未満では流動性が不十分となる場合があり、水が60部を超えると強度が低下することがある。
【0034】
本発明で使用する液体急結材は、あらかじめ急結材と水を混合したもので、急硬コンクリート中に均一に分散しやすいものである。
【0035】
急結材としては、アルミン酸ナトリウムやアルミン酸カリウムなどのアルミン酸塩、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、及びケイ酸ナトリウム(水ガラス)などが挙げられ、本発明ではこれらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。これらの中では、強度発現性と流動性が確保できる面で、アルミン酸カリウムが好ましい。
【0036】
液体急結材の固形分濃度は、30〜55%が好ましく、40〜50%がより好ましい。30%未満では強度発現性が低下する場合があり、55%を超えると自立時間が短すぎて流動性が確保しにくい場合がある。
【0037】
液体急結材の使用量は、セメントと急硬材の合計100部に対して、固形分換算で0.5〜5部が好ましく、1〜2.5部がより好ましい。0.5部未満では急結性が不足し初期強度発現性が低下する場合があり、5部を超えると強度が不足する場合がある。
【0038】
本発明で使用するセメントとしては、特に制限されないが、ポルトランドセメントを含むセメントが好ましく、たとえば、通常市販されている普通、早強、中庸熱、及び超早強等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントにフライアッシュ又は高炉スラグなどを混合した各種混合セメント、各種混合セメントを微粉末化したもの、並びに、市販の微粒子セメントなどが挙げられる。
【0039】
本発明の急結コンクリートは、トンネル外周面を先受けすべく、切羽の外周に沿って形成した掘削溝に充填打設して、切羽の前方にコンクリート覆工体を構築するプレライニング工法に採用されるものである。
【0040】
さらに、本発明は、セメント、急硬材、液状凝結調整剤等からなる、本発明の急硬コンクリートを圧送し、さらに切羽手前で液体急結材と合流混合して本発明の急結コンクリートとし、該急結コンクリートを打設箇所へ充填打設するプレライニング工法である。
【0041】
本発明では、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、又はシリカヒューム等の混和材料、安定化剤、防凍剤、AE剤、減水剤、AE減水剤、凝結遅延剤、増粘剤、又は各種微粉等の添加剤を本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
【0042】
【実施例】
以下、実験例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実験例に限定されるものではない。
【0043】
実験例1
パン型強制ミキサを用いて、セメント、急硬材、細骨材、粗骨材、水、及び液状凝結調整剤を配合し、表1に示す急硬コンクリートを調整した。
【0044】
急硬コンクリートの各成分の配合は、セメント及び急硬剤の合計の単位量を400kg/m3(100部)、単位細骨材量795kg/m3(199部)、単位細骨材量905kg/m3(266部)、単位凝結調整剤量4.8kg/m3(1.2部)、単位水量200kg/m3(50部)とした。セメント及び急硬剤の比率は表1に示した通りである。
【0045】
さらに、調製した急硬コンクリートに、単位量16kg/m3(4部)の液体急結材を添加し、急結コンクリートを調製した。
【0046】
急硬コンクリートや急結コンクリートの練混ぜや測定は、20℃、相対湿度80%の恒温室内で行った。
【0047】
また、従来の急結コンクリートの標準的な配合の1つを実験No.1-1(比較例)とし、その評価結果を表1に併記する。
【0048】
<使用材料>
セメント :普通ポルトランドセメント、比表面積3,200cm2/g、密度3.16g/cm3
急硬材 :非晶質カルシウムアルミネートC12A7及び無水石膏を主体(商品名「デンカPLS-P」、電気化学工業株式会社製)。
凝結調整剤:アルカリ炭酸塩及びクエン酸を主体(商品名「デンカセッターD-300」、電気化学工業株式会社製)。
急結剤 :アルミン酸ナトリウムを主体(商品名「デンカPLS-L」、電気化学工業株式会社製)。
細骨材 :田川産、密度2.56g/cm3、吸水率1.97%、F.M.;2.34
粗骨材 :足柄産、密度2.58g/cm3、吸水率2.97%、最大粒径15mm
水 :水道水
【0049】
<測定方法>
スランプ:JIS A 1101に従って行い、急硬コンクリートの混練直後から30分おきに180分までの経時変化を測定した。
圧縮強度:急結コンクリートでφ10cm×20cmの円柱形の成形体を作製し、JIS A 1108に従い圧縮強度を測定した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表2より、表1の配合割合にて配合した急硬コンクリートは、圧送等を容易に行うことができるスランプ値17cm程度以上の高流動性を長時間維持することが可能であることが分かる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の急結コンクリートは、流動性が高く圧送及び掘削溝への隙間ない充填作業等が容易にでき、強度発現が速やかで、しかも硬化した際の強度、特に初期強度が十分高いので、超大断面、扁平断面、高深度トンネルにおけるプレライニング工法に適用が可能である。
Claims (3)
- カルシウムアルミネート及び硫酸カルシウムからなる急硬材、並びに凝結調整剤を含有してなるプレライニング用急硬セメントコンクリートにおいて、急硬材及びセメントの合計100部中、急硬材量が25〜35部であり、水100部に対して、アルカリ金属炭酸塩及び有機酸類からなる凝結調整剤が10〜95部である液状凝結調整剤を、セメントと急硬材の合計100部に対して、固形分換算で1.0〜1.6部含有してなることを特徴とするプレライニング用急硬セメントコンクリート。
- 請求項1に記載のプレライニング用急硬セメントコンクリート及び液体急結材を含有してなるプレライニング用急結セメントコンクリート。
- 請求項1に記載のプレライニング用急硬セメントコンクリートを圧送し、切羽手前で液体急結材を合流混合し、打設箇所にて硬化させる工程を含んでなる、プレライニング工法によるトンネルの施工方法。
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