JP3974795B2 - ディスクロータの製造装置及び製造方法 - Google Patents

ディスクロータの製造装置及び製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のブレーキ等に用いられるディスクロータの製造装置及び製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ディスクブレーキ装置に用いられるディスクロータは、鋳造(重力鋳造)により製造される。また、車両の軽量化が要求される昨今においては、ディスクロータ用の素材として、旧来使用されていた鋳鉄からアルミニウムへの移行が進められ、各種開発が行われている。
【0003】
ところで、ディスクロータをアルミニウム単体で形成した場合には、強度が低い、或いは、摩耗しやすいといった問題が生じる。かかる問題を解消するべく、アルミナ粒子等を加圧固化又は焼成固化等することにより得られたリング状のプリフォームを用いるという技術が開発されている。かかるプリフォームを用いたディスクロータの製造に際しては、金型内の所定部位にプリフォームが支持された状態で、金型によって形成されたキャビティ内に金属溶湯(アルミニウム溶湯)が充填され加圧される。このとき、プリフォームの微細な空隙内に溶湯が含浸するため、溶湯の固化後にあっては、プリフォーム及びアルミニウムが一体となった鋳造品が得られる。そして、最終製品たるディスクロータのうちのパッドとの摺動面に相当する部分が、プリフォームの露出した部分とされる。つまり、プリフォームによって耐摩耗性の向上が図られ、しかも、プリフォームが補強材としての機能を発揮し、ディスクロータ全体の強度の向上が図られることとなる。
【0004】
上記のようなディスクロータの製造に際しては、金型の所定部位にプリフォームを支持固定し、注湯中においてもその支持状態を維持する必要がある。このように支持状態を確保するための技術として、特開平1−272725号公報(第1の技術)及び特開昭63−56347号公報(第2の技術)に開示されたものが挙げられる。第1の技術では、繊維成形体(プリフォーム)を金型に対して圧縮して嵌合することによりセットし、位置ずれを防止する旨が記載されている。また、第2の技術では、砂中子の表面にコーティング剤を塗布し、該コーティング剤が半乾燥状態にあるときに繊維成型体(プリフォーム)を砂中子に装着する旨が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第1の技術を上記ディスクロータの製造に適用した場合には、プリフォームを金型に圧縮状態で嵌合固定することから、プリフォームが前記圧縮応力に耐えきれず、破損してしまうおそれがある。また、第2の技術を適用した場合には、別途の作業工程が必要となり、作業効率が低下してしまうといった問題がある。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、プリフォームを用いたディスクロータの製造に際し、プリフォーム支持状態の安定化を図るとともに、作業効率の悪化及びコスト増の抑制を図ることの可能なディスクロータの製造装置及び製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、相対的に接離可能に設けられた第1及び第2の金型により形成されるキャビティ内にプリフォームを支持固定した状態で、前記キャビティ内に金属溶湯を充填し加圧することに基づいてディスクロータを製造するためのディスクロータの製造装置において、前記第1及び第2の金型のうち、少なくとも一方は、該第1及び第2の金型が前記相対的に接離する方向と交差するラジアル方向に移動して、前記プリフォームの端縁部分を支持するための支持部を有する支持手段を具備しており、前記支持手段が、前記プリフォームを所定部位に案内可能な第1の状態と、前記キャビティを形成可能な第2の状態とをとるよう構成するとともに、前記支持手段が前記ラジアル方向に移動して第2の状態をとることで前記支持部が前記プリフォームの端縁部分を金属溶湯が固化するまで支持するよう構成したことをその要旨としている。
【0008】
上記請求項1に記載の発明によれば、相対的に接離可能に設けられた第1及び第2の金型により形成されるキャビティ内にプリフォームが支持固定された状態で、キャビティ内に金属溶湯が充填され加圧されることに基づいてディスクロータが製造される。特に、本発明では、第1及び第2の金型のうち、少なくとも一方はプリフォ一ムの端縁部分を支持するための支持部を有する支持手段を具備しており、前記支持手段が第1の状態及び第2の状態をとる。つまり、支持手段が第1の状態をとることで、プリフォームを所定部位に案内することができる。また、支持手段が第2の状態をとることで、キャビティが形成可能となる。これとともに、支持手段が第2の状態をとることで、支持部によってプリフォームの端縁部分が支持される。このため、プリフォームを圧縮したり、コーティングを施したりする必要のあった従来技術とは異なり、プリフォームに何らかの加工等を施さなくても、プリフォームを所定部位に安定的に支持固定することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、相対的に接離可能に設けられた第1及び第2の金型により形成されるキャビテ内にプリフォームを支持固定した状態で、前記キャビティ内に金属溶湯を充填し加圧することに基づいてディスクロータを製造するためのディスクロータの製造装置において、前記第1及び第2の金型のうち、少なくとも一方は、該第1及び第2の金型が前記相対的に接離する方向に沿って少なくとも第1の位置と第2の位置との間で移動可能な金型本体と、前記金型本体の移動に伴って該移動方向に交わるラジアル方向にスライド可能な支持手段とを具備しており、前記金型本体が第1の位置にあるときには、前記プリフォームを所定部位に案内できるよう構成するとともに、前記金型本体が第2の位置にあるときには、前記第1及び第2の金型が前記相対的に接離する方向と交差するラジアル方向に移動した前記支持手段によって前記キャビティの一部が形成され、かつ、前記プリフォームの端縁部分が金属溶湯が固化するまで支持されるよう構成したことをその要旨としている。
【0010】
上記請求項2に記載の発明によれば、第1及び第2の金型のうち、少なくとも一方に具備された金型本体が、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で移動し、その移動に伴って該移動方向に交わる方向に支持手段がスライドしうる。そして、金型本体が第1の位置にあるときには、プリフォームを所定部位に案内することができ、金型本体が第2の位置にあるときには、支持手段によってキャビティの一部が形成され、かつ、プリフォームの端縁部分が支持される。このように、金型本体を移動させることによってプリフォームの支持固定及び支持解除を行うことができる。従って、プリフォームを圧縮したり、コーティングを施したりする必要のあった従来技術とは異なり、プリフォームに何らかの加工等を施さなくても、プリフォームを所定部位に安定的に支持固定することができる。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明では、第1の金型と、前記第1の金型に対して接離可能に設けられた第2の金型とを備え、両金型により形成されるキャビティ内にプリフォームを支持固定した状態で、前記キャビテ内に金属溶湯を充填し加圧することに基づいてディスクロータを製造するためのディスクロータの製造装置において、前記第1の金型は、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で前記接離方向へ移動可能な金型本体と、前記金型本体の移動方向に対し傾斜して交わる方向に支持固定された複数本の傾斜ガイドと、前記各傾斜ガイドに沿った挿通孔を有し該挿通孔に前記傾斜ガイドが挿通され前記接離方向と交差するラジアル方向に移動可能な複数個の支持手段とを具備しており、前記金型本体が第1の位置にあるときには、前記プリフォームを所定部位に案内できるよう前記支持手段が第1の状態をとり、前記金型本体が第2の位置にあるときには、前記支持手段が前記ラジアル方向に移動して前記キャビティの一部を形成し、かつ、前記プリフォームの端縁部分を金属溶湯が固化するまで支持する第2の状態をとるよう構成したことをその要旨としている。
【0012】
上記請求項3に記載の発明によれば、第1の金型に具備された金型本体が少なくとも第1の位置と第2の位置との間で両金型の接離方向へ移動しうる。また、第1の金型には、金型本体の移動方向に対し傾斜して交わる方向に支持固定された複数本の傾斜ガイドに沿った挿通孔を有し該挿通孔に傾斜ガイドが挿通されてなる複数個の支持手段が具備されており、金型本体が第1の位置にあるときには、支持手段が傾斜ガイドに沿って移動し、第1の状態をとる。これにより、プリフォームを所定部位に案内できる。また、金型本体が第2の位置にあるときには、支持手段が傾斜ガイドに沿って移動し、第2の状態をとる。これにより、キャビティの一部が形成され、金属溶湯の充填が可能となるとともに、プリフォームの端縁部分が支持される。従って、プリフォームを圧縮したり、コーティングを施したりする必要のあった従来技術とは異なり、プリフォームに何らかの加工等を施さなくても、プリフォームを所定部位に安定的に支持固定することができる。
【0013】
併せて、請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれかに記載のディスクロータの製造装置において、前記支持手段は、互いに離間状態にある2枚のプリフォームの端縁部分を支持可能となっていることをその要旨としている。
【0014】
上記請求項4に記載の発明によれば、上記各発明により奏される作用に加えて、支持手段により、互いに離間状態にある2枚のプリフォームの端縁部分が支持される。従って、アウタ側及びインナ側についてプリフォームの露出したディスクロータを製造することができる。
【0015】
加えて、請求項5に記載の発明では、第1の金型に対し第2の金型を離間させた状態で、前記第1の金型の所定部位にプリフォームを支持固定するプリフォーム支持工程と、前記第1の金型に対して第2の金型を接触させ型締めした状態で、両金型により形成されるキャビティ内に金属溶湯を充填し加圧する成形工程とを備えたディスクロータの製造方法において、前記第1の金型は、移動可能に設けられた金型本体と、該金型本体に接触した状態で前記金型本体とともにキャビティを形成しうる第2の状態、及び、該第2の状態に対し前記第1及び第2の金型を離間及び型締めさせる方向と交差する方向であって外周方向へスライドした第1の状態をとりうる支持手段とを具備しており、前記プリフォーム支持工程に際しては、前記金型本体を所定位置に位置せしめることで、前記支持手段を前記第1の状態とした上で前記プリフォームを所定部位に案内し、その後、前記金型本体を別の所定位置に位置せしめることで、前記支持手段を前記第1及び第2の金型を離間及び型締めさせる方向と交差するラジアル方向に移動させて第2の状態とし、かつ、該第2の状態にあっては、前記ディスクロータの端縁部が前記支持手段によって金属溶湯が固化するまで支持固定されるようにしたことをその要旨としている。
【0016】
上記請求項5に記載の発明によれば、プリフォーム支持工程においては、第1の金型に対し第2の金型が離間された状態で、第1の金型の所定部位にプリフォームが支持固定される。また、成形工程では、第1の金型に対して第2の金型が接触され型締めされた状態で、両金型により形成されるキャビティ内に金属溶湯が充填され加圧されることでディスクロータが製造される。さて、本発明における第1の金型は金型本体と支持手段とを備えており、プリフォーム支持工程に際しては、前記金型本体を所定位置に位置せしめることで、支持手段が外周方向へスライドした第1の状態とされる。これにより、プリフォームの案内が可能となり、プリフォームは、所定部位に案内される。その後、金型本体が別の所定位置に位置されることで、支持手段が第2の状態とされる。これにより、金型本体とともにキャビティが形成され、その後の成形が可能となる。また、これとともに、第2の状態にあっては、ディスクロータの端縁部が支持手段によって支持固定されることとなる。従って、プリフォームを圧縮したり、コーティングを施したりする必要のあった従来技術とは異なり、プリフォームに何らかの加工等を施さなくても、金型本体を移動させるだけでプリフォームを所定部位に安定的に支持固定することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、相対的に接離可能に設けられた第1及び第2の金型により形成されるキャビティ内にプリフォームを支持固定した状態で、前記キャビテ内に金属溶湯を充填し加圧することに基づいてディスクロータを製造するためのディスクロータの製造装置であって、環状に配列され前記第1及び第2の金型が前記相対的に接離する方向と交差するラジアル方向に沿って移動可能な分割された複数の中子要素、から構成される中子を有し、前記中子要素の内周側に、前記複数の中子要素が前記ラジアル方向外方に移動された前記中子の開状態において、少なくとも一枚の前記プリフォームを、該複数の中子要素によって囲まれた空間に挿入可能であり、且つ、前記複数の中子要素をラジアル方向内方に向かって所定部位まで移動させた前記中子の閉状態において、前記少なくとも一枚のプリフォームの外周部を金属溶湯が固化するまで保持可能な支持部が形成されたことをその要旨としている。
【0018】
上記請求項6に記載の発明によれば、複数の中子要素のラジアル方向内方にプリフォームを保持した状態で、該複数の中子要素をラジアル方向内方に向かって移動操作ないし集合させることにより、集合した中子要素の各支持部にてプリフォームの外周部を支持させることができる。したがって、この発明によれば、予め、プリフォームを中子又は金型に嵌合固定しておく必要がないため、作業効率が改善される。加えて、この発明によれば、中子は、プリフォームの外周部に比較的小さな力を及ぼすことによって、プリフォームを支持できるため、プリフォームの破損が防止される。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のディスクロータの製造装置において、前記支持部が、前記ラジアル方向内方に突出して、円板状に形成された前記プリフォームの両側面を挟持可能な第1突部及び第2突部を有することをその要旨としている。
【0020】
上記請求項7に記載の発明によれば、中子に形成された第1突部及び第2突部によって、プリフォームが比較的小さな力で支持される。また、第1突部及び第2突部が中子のラジアル方向に沿って突出していることによって、プリフォームの、中子のラジアル方向に直交する方向に沿ったガタツキが防止される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をアルミMMCディスクロータの製造装置及び製造方法に具体化した一実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施の形態において製造されるアルミMMCディスクロータ(以下「ディスクロータ」という)の構成について説明する。図2に示すように、ディスクロ一タ1は全体として略円盤形状をなし、本体部2とプリフォーム部4,5とを備えている。本体部2は、アルミニウム又はアルミニウム合金よりなり、略円柱状の部分と、該部分の中間位置から外周に延びるフランジ状の部分とから構成されている。本体部2のうち、前記フランジ状の部分には、外周方向に閉口するようにして所定間隔毎に複数のフィン(空間部)6が形成されている。
【0023】
プリフォーム部4,5は、ディスクロータ1の使用時において図示しない車両側のインナ及びアウタ側の各パッドが、それぞれ当接(摺動)する部分に露出状態で設けられている。プリフォーム部4,5は、アルミナ粒子により形成されたインナプリフォーム4A及びアウタプリフォーム5A(図3参照)を原料としている。より詳しくは、本実施の形態におけるプリフォーム4A,5A(アルミニウム含浸前)は、アルミナ粒子を水中に分散させた上で、フィルターを備えた吸引濾過装置を用いて吸引濾過し、リング状のアルミナ粒子体を得た後、アルミナ粒子体を乾燥、焼成することにより得られる。これら両プリフォーム4A,5Aの当初の体積率(Vf)は例えば30%程度となっている。そして、本実施の形態におけるプリフォーム部4,5は、前記プリフォーム4A,5Aの微細な空隙内に、本体部2を構成するアルミニウム又はアルミニウム合金が含浸されることによって形成されている。かかるプリフォーム部4,5の存在により、ディスクロータ1の強度の向上及び耐摩耗性の向上が図られている。
【0024】
次に、前記ディスクロータ1を得るためのディスクロータ製造装置(以下「製造装置」という)の構成について説明する。図3に示すように、製造装置10は、第1の金型としての下型11と、該下型11に対して接離可能に設けられた第2の金型としての上型12とを備えている。
【0025】
前記下型11は、支持台13、下型本体14、傾斜ピン15、中子要素16及びスライダ17等を備えている。支持台13の下方にはシリンダ18が設けられている。シリンダ18には、ロッド19が出没可能に設けられており、該ロッド19の先端部が、前記支持台13の下部に連結されている。また、支持台13に形成された凹部13aには下型本体14が載置固定されている。下型本体14の中央上部には、外周に段差部14aを有する成形凹部14bが形成されており、該段差部14aにアウタプリフォーム5Aが設置されるようになっている。
【0026】
前記下型本体14の上面には、複数個(本実施の形態では36個)の中子要素16が環状かつ放射状に載置されている。また、中子要素16の外側にはスライダ17が固着されており、中子要素16及びスライダ17が一体となって、下型本体14の上面をスライド可能となっている。なお、本実施の形態では、中子要素16及びスライダ17によって支持手段が構成されている。
【0027】
中子は、環状に配列されラジアル方向に沿って移動可能な分割された複数の中子要素16から構成されている。前記中子要素16の内周側に、前記複数の中子要素16が前記ラジアル方向外方に移動された前記中子の開状態において、少なくとも一枚の前記プリフォーム(後述のインナプリフォーム4A)を、該複数の中子要素16によって囲まれた空間に挿入可能であり、且つ、前記複数の中子要素16をラジアル方向内方に向かって所定部位まで移動させた前記中子の閉状態において、前記少なくとも一枚のプリフォームの外周部を保持可能な支持部が形成されている。後述するように、前記支持部は、前記ラジアル方向内方に突出して、円板状に形成されたプリフォーム(4A)の両側面を挟持可能な第1突部22及び第2突部23を有している。
【0028】
さらに、傾斜ガイドとしての傾斜ピン15は、前記各中子要素16に対応して複数本(本実施の形態では36本)設けられており、図示しない固定具によって外方に傾斜した状態でそれぞれ移動不能に支持固定されている。前記スライダ17には、前記傾斜ピン15に対応する挿通孔17aが形成されており、該挿通孔17aに傾斜ピン15が挿通されている。なお、前記支持台13のうち、傾斜ピン15に対応する部位には比較的大きな長孔(図示略)が形成されており、この長孔の存在により、支持台13の上下動が傾斜ピン15によって妨げられることがないよう構成されている。
【0029】
上記のような構成下にあっては、シリンダ18を作動させてロッド19を上動させると、図3に示すように、支持台13及び下型本体14が上動する。このとき、スライダ17は、固定状態にある傾斜ピン15に沿って上動することとなる。すなわち、スライダ17及び中子(中子要素16)は、支持台13及び下型本体14の上動に伴って、これら13,14に対し相対的に外方へスライドさせられるようになっている。一方、ロッド19が没入させられた場合には、図1に示すように、支持台13及び下型本体14が下動し、スライダ17は傾斜ピン15に沿って下動させられる。すなわち、スライダ17及び中子(中子要素16)は、支持台13及び下型本体14の下動に伴って、これら13,14に対し相対的に内方へスライドさせられるようになっている。
【0030】
ここで、前記中子要素16の構成についてより詳しく説明する。図4は、本実施の形態で用いられる1個の中子要素16を示す拡大斜視図である。同図に示すように、中子要素16はブロック状の本体部21と、本体部21の内側面(図4の右側)に突設された第1突部22と、第1突部22の下方において所定間隔を隔てて内側に突設された第2突部23とを備えている。前記所定間隔は、インナプリフォーム4Aの厚みとほぼ同等に設定されている。また、第2突部23には、さらに内側に向かって延びるフィン形成用突部24が一体形成されている。
【0031】
次に、上記のように構成された製造装置10を用いてディスクロータ1を製造する方法について説明する。まず、下型11から上型12を離間した型開き状態において、下型11及び上型12の温度を所定温度(200〜500℃)に昇温させておく。
【0032】
次いで、予め加熱したプリフォーム4A,5Aを所定位置にセットする。すなわち、図3に示すように、シリンダ18を作動させることでロッド19を上動させ、支持台13及び下型本体14を上動させる。このとき、上述したように、スライダ17は固定状態にある傾斜ピン15に沿って上動するため、スライダ17及び中子(中子要素16)は、下型本体14に対し相対的に外方へスライドさせられる。
【0033】
そして、この状態で、前記下型本体14の段差部14a上に図示しないアームを用いてアウタプリフォーム5Aを載置した後、そのアームをアウタプリフォーム5Aから離間させるようにして上方へ移動させる。一方で、インナプリフォーム4Aについては、同図に示すように、図示しないアームにて所定高さに保持せしめる。そして、インナプリフォーム4Aが所定高さに保持された状態で、ロッド19を没入させる。すると、図1に示すように、支持台13及び下型本体14が下動し、スライダ17が傾斜ピン15に沿って下動させられる。そして、スライダ17及び中子(中子要素16)は、下型本体14等の下動に伴って、下型本体14に対し相対的に内方へスライドさせられる。
【0034】
このスライドにより、アウタプリフォーム5Aの上面端縁部が中子要素16によって押さえ付けられる格好となり、アウタプリフォーム5Aが支持固定されることとなる。また、これと同時に、インナプリフォーム4Aの端縁部が中子要素16の第1突部22の下面及び第2突部23の上面で挟持される格好となり、これによりインナプリフォーム4Aが支持固定されることとなる。このようにしてインナプリフォーム4Aを支持固定した場合には、アームをインナプリフォーム4Aから離間させるようにして上方へ移動させる。
【0035】
プリフォーム4A,5Aが支持固定された後、図1に示した状態からキャビティ内に図示しない注湯機構によって、アルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯をキャビティに注湯する。図5に示すように、注湯した後に上型12を下動させて、下型11に対し当接させて型締めを行う。この上型12の型締めにより、キャビティ内を加圧する。
【0036】
その後、溶湯が固化するまで加圧を継続させた後、上型12を下型11から離間させ(型開きをする)、更に、再度シリンダ18を作動させて支持台13及び下型本体14を上動させ、中子要素16等を外方へとスライドさせることで、図2に示すディスクロータ1が得られることになる。
【0037】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、下型11を、上記構成を有する支持台13、下型本体14、傾斜ピン15、中子要素16及びスライダ17等で構成することとした。そして、シリンダ18を作動させることで支持台13及び下型本体14を上動させ、この上動に際し、中子要素16及びスライダ17を傾斜ピン15に沿って相対的に外方へスライドさせることとした。このため、この状態にあっては、インナプリフォーム4A及びアウタプリフォーム5Aを、中子要素16等によって阻害されることなく、所定部位へ案内することができる。また、プリフォーム4A,5Aの案内後は、支持台13及び下型本体14を下動させ、この下動に際し、中子要素16及びスライダ17を傾斜ピン15に沿って相対的に内方へスライドさせることとした。このため、この状態にあっては、両プリフォーム4A,5Aが安定的に支持固定されることとなり、しかも、キャビティの大部分を形成することができる。
【0038】
従って、プリフォームを圧縮したり、コーティングを施したりする必要のあった従来技術とは異なり、プリフォーム4A,5Aに何らかの加工等を施さなくても、シリンダ18の駆動制御を行うだけでプリフォーム4A,5Aを所定部位に安定的に支持固定することができる。その結果、作業効率が悪化してしまったり、製造コストが増大してしまったりするといった不具合を抑制することができる。
【0039】
尚、前記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0040】
(a)中子要素16の形状は、上記実施の形態のものに限定されるものではなく、少なくとも1枚のプリフォームを支持固定できるものであればよい。また、中子要素16における第1突部22や第2突部23等を着脱可能に構成し、プリフォーム4A,5Aやディスクロータ1の大きさや形状に応じて適宜交換可能としてもよい。
【0041】
(b)前記実施の形態では、インナ側及びアウタ側にそれぞれプリフォーム4A,5Aを設ける構成としたが、1枚のみ、つまり片側のみに設けることとしてもよい。
【0042】
(c)前記実施の形態では、所定間隔毎にフィン6を有するディスクロータ1について具体化したが、フィン6を有しないタイプのディスクロータにも適用することができる。なお、この場合、中子形成用突部24等は省略される。
【0043】
(d)前記実施の形態では、傾斜ピン15の傾斜角度を一定としたが、そのときどきの要請に応じて角度を変更できるような構成としてもよい。また、プリフォーム4A,5Aやディスクロータ1の大きさや形状等に応じて傾斜ピン15を交換したり本数を増減したりできるような構成としてもよい。
【0044】
(e)前記実施の形態では、傾斜ガイドとしてピン形状を有する直線状の傾斜ピン15を採用したが、必ずしも直線状でなくてもよく、例えば湾曲形状をなしていてもよい。また、他の部材、例えばワイヤ等により傾斜ガイドを構成してもよい。
【0045】
(f)前記実施の形態では、支持台13と下型本体14とを別部材としたが、これらを一体的に構成するようにしてもよい。また、中子要素16とスライダ17とを一体的に構成するようにしてもよい。
【0046】
(g)支持台13等を上下動させる手段としては、上記実施の形態で例示したシリンダ18以外のアクチュエータ(例えばモータ等)を採用することもできる。
【0047】
(h)中子要素16及びスライダ17、並びに、傾斜ピン15の数は、上記実施の形態に記載の数値に何ら限定されるものではなく、複数よりなっていればよい。
【0048】
(i)金属溶湯を構成する素材としては、アルミニウム又はアルミニウム合金以外にも、アルミニウム又はアルミニウム合金に炭化珪素を混入した複合材料等を用いてもよい。
【0049】
(j)プリフォーム4A,5Aとしては、上記実施の形態において説明した製法によって製造されたものに限定されるものではなく、例えばアルミナ粒子を加圧固化或いは焼成固化することにより得ることとしてもよい。また、強度向上、耐摩耗性の向上を図ることのできる素材であれば、セラミック繊維等の他の素材により形成することとしてもよいし、アルミナ粒子以外のセラミック粒子(例えば炭化珪素やアルミナ)により形成することとしてもよい。また、プリフォームの体積率についても、上記実施の形態の数値に何ら限定されるものではなく、種々の体積率を有するプリフォームを採用しうる。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のディスクロータの製造装置及び製造方法によれば、プリフォームを用いたディスクロータの製造に際し、プリフォーム支持状態の安定化を図るとともに、作業効率の悪化及びコスト増の抑制を図ることができるという従来にはない優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態におけるディスクロータ製造装置を示す断面図である。
【図2】ディスクロータを示す斜視図である。
【図3】プリフォームを支持する際のディスクロータ製造装置を示す断面図である。
【図4】中子要素を示す拡大斜視図である。
【図5】キャビティ内に溶湯を充填した状態を示すディスクロータ製造装置の断面図である。
【符号の説明】
1 ディスクロータ
4,5 プリフォーム部
4A インナプリフォーム
5A アウタプリフォーム
10 製造装置
11 第1の金型としての下型
12 第2の金型としての上型
13 支持台
14 金型本体としての下型本体
15 傾斜ガイドとしての傾斜ピン
16 支持手段を構成する中子要素
17 支持手段を構成するスライダ
17a 挿通孔
18 シリンダ
22 支持部を構成する第1突部
23 支持部を構成する第2突部。

Claims (7)

  1. 相対的に接離可能に設けられた第1及び第2の金型により形成されるキャビティ内にプリフォームを支持固定した状態で、前記キャビテ内に金属溶湯を充填し加圧することに基づいてディスクロータを製造するためのディスクロータの製造装置において、
    前記第1及び第2の金型のうち、少なくとも一方は、該第1及び第2の金型が前記相対的に接離する方向と交差するラジアル方向に移動して、前記プリフォームの端縁部分を支持するための支持部を有する支持手段を具備しており、前記支持手段が、前記プリフォームを所定部位に案内可能な第1の状態と、前記キャビティを形成可能な第2の状態とをとるよう構成するとともに、前記支持手段が前記ラジアル方向に移動して第2の状態をとることで前記支持部が前記プリフォームの端縁部分を金属溶湯が固化するまで支持するよう構成したことを特徴とするディスクロータの製造装置。
  2. 相対的に接離可能に設けられた第1及び第2の金型により形成されるキャビティ内にプリフォームを支持固定した状態で、前記キャビティ内に金属溶湯を充填し加圧することに基づいてディスクロータを製造するためのディスクロータの製造装置において、
    前記第1及び第2の金型のうち、少なくとも一方は、該第1及び第2の金型が前記相対的に接離する方向に沿って少なくとも第1の位置と第2の位置との間で移動可能な金型本体と、前記金型本体の移動に伴って該移動方向に交わるラジアル方向にスライド可能な支持手段とを具備しており、前記金型本体が第1の位置にあるときには、前記プリフォームを所定部位に案内できるよう構成するとともに、前記金型本体が第2の位置にあるときには、前記第1及び第2の金型が前記相対的に接離する方向と交差するラジアル方向に移動した前記支持手段によって前記キャビティの一部が形成され、かつ、前記プリフォームの端縁部分が金属溶湯が固化するまで支特されるよう構成したことを特徴とするディスクロータの製造装置。
  3. 第1の金型と、前記第1の金型に対して接離可能に設けられた第2の金型とを備え、両金型により形成されるキャビティ内にプリフォームを支持固定した状態で、前記キャビティ内に金属溶湯を充填し加圧することに基づいてディスクロータを製造するためのディスクロータの製造装置において、
    前記第1の金型は、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で前記接離方向へ移動可能な金型本体と、前記金型本体の移動方向に対し傾斜して交わる方向に支持固定された複数本の傾斜ガイドと、前記各傾斜ガイドに沿った挿通孔を有し該挿通孔に前記傾斜ガイドが挿通され前記接離方向と交差するラジアル方向に移動可能な複数個の支持手段とを具備しており、前記金型本体が第1の位置にあるときには、前記プリフォームを所定部位に案内できるよう前記支持手段が第1の状態をとり、前記金型本体が第2の位置にあるときには、前記支持手段が前記ラジアル方向に移動して前記キャビティの一部を形成し、かつ、前記プリフォームの端縁部分を金属溶湯が固化するまで支持する第2の状態をとるよう構成したことを特徴とするディスクロータの製造装置。
  4. 前記支持手段は、互いに離間状態にある2枚のプリフォームの端縁部分を支持可能となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のディスクロータの製造装置。
  5. 第1の金型に対し第2の金型を離間させた状態で、前記第1の金型の所定部位にプリフォームを支持固定するプリフォーム支持工程と、
    前記第1の金型に対して第2の金型を接触させ型締めした状態で、両金型により形成されるキャビティ内に金属溶湯を充填し加圧する成形工程と
    を備えたディスクロータの製造方法において、
    前記第1の金型は、移動可能に設けられた金型本体と、
    該金型本体に接触した状態で前記金型本体とともにキャビティを形成しうる第2の状態、及び、該第2の状態に対し前記第1及び第2の金型を離間及び型締めさせる方向と交差する方向であって外周方向へスライドした第1の状態をとりうる支持手段と
    を具備しており、
    前記プリフォーム支持工程に際しては、前記金型本体を所定位置に位置せしめることで、前記支持手段を前記第1の状態とした上で前記プリフォームを所定部位に案内し、その後、前記金型本体を別の所定位置に位置せしめることで、前記支持手段を前記第1及び第2の金型を離間及び型締めさせる方向と交差するラジアル方向に移動させて第2の状態とし、かつ、該第2の状態にあっては、前記ディスクロータの端縁部が前記支持手段によって金属溶湯が固化するまで支持固定されるようにしたことを特徴とするディスクロータの製造方法。
  6. 相対的に接離可能に設けられた第1及び第2の金型により形成されるキャビティ内にプリフォームを支持固定した状態で、前記キャビテ内に金属溶湯を充填し加圧することに基づいてディスクロータを製造するためのディスクロータの製造装置であって、
    環状に配列され前記第1及び第2の金型が前記相対的に接離する方向と交差するラジアル方向に沿って移動可能な分割された複数の中子要素、から構成される中子を有し、
    前記中子要素の内周側に、前記複数の中子要素が前記ラジアル方向外方に移動された前記中子の開状態において、少なくとも一枚の前記プリフォームを、該複数の中子要素によって囲まれた空間に挿入可能であり、且つ、前記複数の中子要素をラジアル方向内方に向かって所定部位まで移動させた前記中子の閉状態において、前記少なくとも一枚のプリフォームの外周部を金属溶湯が固化するまで保持可能な支持部が形成されたことを特徴とするディスクロータの製造装置。
  7. 前記支持部が、前記ラジアル方向内方に突出して、円板状に形成された前記プリフォームの両側面を挟持可能な第1突部及び第2突部を有することを特徴とする請求項6記載のディスクロータの製造装置。
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