JP3974213B2 - 骨疾患治療剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨疾患に対する治療剤に関し、更に詳しくは、アセキサム酸亜鉛を有効成分とする骨疾患に対する治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
骨代謝、骨形成不全により、骨中のカルシウム量の減少などが生じて、種々の骨疾患が起こると考えられている。骨疾患の代表として骨折、骨軟化症、骨減少症、骨粗鬆症、腰背痛等がある。近年これらの疾患が増加しており、なかでも骨折の発生頻度が高く、老齢者が骨折に罹患した場合は、多くの場合寝たきり患者となり、医療上は勿論、社会的にも大きな問題となりつつある。また、若年層においても食生活の偏重によりカルシウム不足などから生じる同様の疾患が増加しており治療に対する対応が迫られている。骨疾患の一つである骨粗鬆症に対する治療剤としては現在ではカルシトニン、活性型ビタミンD3剤、その他ホルモン剤、カルシウム製剤が投薬されている。カルシトニンは骨粗鬆症における疼痛に対して優れた効果を示すが、ペプチドであるため経口投与で効果を示さず、注射剤としてのみ使用されており、投与の不便さ、投与の苦痛が問題である。活性型ビタミンD3剤は骨形成作用、疼痛改善作用などの効果が十分でなく、また、高カルシウム血症を引き起こし、臨床上でも副作用として消化器(嘔気、下痢、食欲不振など)、精神神経系(いらいら感、不眠など)および循環器(動悸など)、腎臓および皮膚に対して広範囲に影響することが認められている。そこで、投薬時に苦痛がなく、副作用の少ない医薬品の開発が求められている。
【0003】
一方、亜鉛が骨形成の刺激及び石灰化の活性化因子として重要な役割を果たしていることがin vivo(Metabolism, 35, 1044-1047, 1986, Pharmacol., 35, 773-777, 1986) およびin vitro(Biochem. Phermacol., 36, 4007-4012, 1987, ibid., 37, 4075-4080, 1988)の各試験で認められており、さらに亜鉛が骨タンパク質合成を刺激することが報告されている(Biochem. Pharmacol., 37, 4075-4080 1988) 。しかし、亜鉛自体の経口投与では吸収、消化管障害などを惹起させるし、また非経口投与では排泄、毒性などの問題があった。
上記問題を解決するものとして、特開平3−120257号公報が提案されている。これは有機亜鉛化合物であるL-カルノシン亜鉛を有効成分とするもので、毒性、副作用が少なく、経口投与で効果を示す骨疾患の治療剤である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらL-カルノシン亜鉛は水および有機溶媒にほとんど溶解しないため、注射剤、特に静脈内注射剤や点鼻剤などの水溶性製剤の調整の場合に溶解補助剤や安定化剤などを用いる必要があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、骨形成促進作用が優れ、経口投与で効果を示し、副作用も少なく、水および有機溶媒にも溶解する骨疾患治療剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明はアセキサム酸亜鉛を有効成分とする骨疾患治療剤である。
【0006】
本発明におけるアセキサム酸亜鉛はアセキサム酸と亜鉛を2:1の濃度割合で配合し、室温下で反応させて得られる無色、無臭の結晶粉末であり、融点は193〜196℃で、水溶液のpH値は6.5付近、水、アンモニア水およびピリジン等に溶けやすい薬剤であり、下記化学式で表される。
【化1】
Figure 0003974213
【0007】
次に、本発明で使用されるアセキサム酸亜鉛の製造の一例を示す。
1g水酸化ナトリウムを10mlのメタノールに溶解し、この溶液に2.6gのアセキサム酸を加えて溶解させた(A液)。1.5gの酢酸亜鉛を10mlのメタノール溶液に溶解させた(B液)。このB液をマグネチックスタラーで攪拌しているA液に滴下すると、液は白濁しアセキサム酸亜鉛が析出してきた。滴下終了後も2〜3時間攪拌を続けた。その後、反応液を濾過し、残査をメタノール液およびアセトン液で洗浄後、60℃で乾燥してアセキサム酸亜鉛2.9gを得た。この製法で得られたアセキサム酸亜鉛の元素分析を行い、理論値と比較した結果を下記に示す。
Figure 0003974213
元素分析での測定値は理論値と一致していた。
【0008】
本発明のアセキサム酸亜鉛は、補助剤を配合して経口投与または非経口投与用の製剤として用いられる。経口投与の製剤化の補助剤としては、賦形剤として乳糖、マンニット、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、デキストリン、無水リン酸カルシウム、白糖などが挙げられる。結合剤としてはデンプン、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース誘導体などが挙げられる。崩壊剤としてはデンプン、セルロース誘導体、炭酸塩などが挙げられる。滑沢剤としてマグネシウム、カルシウムのステアリン酸塩、タルク、マクロゴールなどが挙げられる。そしてこれらを1種または2種以上を適宜組み合わせることにより錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などにして使用することができる。前記固形製剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシナート、セルロースアセテートフタレート、メタアクリレートコーポリマーなどの被覆用基剤を用いてフィルムコーティング製剤とすることができる。また、前記固形製剤は中級油脂酸、トリグリセライド、サフラワー油、ダイズ油、各種のポリエチレングリコールに溶解して、軟カプセル剤とすることもできる。さらにまた、水性溶媒などに溶解または油性溶媒などに懸濁して水剤とすることもできる。非経口投与剤としては、水性溶媒などに溶解して注射剤とすることができ、挫剤用基剤を用いて挫剤とすることもできるし、軟骨基剤を用いて軟膏とすることもできる。さらに、ハイドロキシアパタイトなどと共に溶解または懸濁して、骨に直接注射できる。
投与量は、年齢、体重、症状、投与経路および投与期間によって異なるが、経口投与の場合、通常1 〜2000mg/日、好ましくは100 〜600mg /日を1 日1 〜4 回の範囲でおこなう。
【0009】
【発明の実施の形態】
つぎに試験例および処方例をあげて本発明を説明する。
〔試験例1〕
老齢ラットの大腿骨骨幹端部の骨組織のアルカリ性ホスファターゼ活性は、若年ラット(4 週齢) の場合と比べて38% にに減少していた。そこで、老齢ラットの大腿骨骨幹端部の骨組織に、骨に対する治療剤および骨に対する作用の知られている化合物を添加して組織培養を行い、アルカリ性ホスファターゼ活性に及ぼす作用について調べた。
材料および方法
Wistar系雌性ラット(50周齢)をエーテル麻酔下に大腿骨を摘出した。大腿骨は0.25M 蔗糖液で洗浄後、骨幹端部の組織を採取して断片とし、ダルベッコ変法イーグル培養液に加え、表1に示す被検化合物を一定濃度添加した。これを5%二酸化炭素、37℃の条件下で48時間インキュベーションした。
アルカリ性ホスファターゼ活性の測定
インキュベーション後、組織片を0.25M 蔗糖液で洗浄し、6.5mM バルビタール緩衝液(pH7.4)3ml中で破砕し、超音波処理した。この液を遠心分離して上清を酵素液としてWalter及びSchuttの方法(in Method of Enzymatic Analysis, Vol1-2, p856, Academic Press, New York, 1965) に従って測定した。即ち、p-ニトロフェニール燐酸を基質として、ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)2mlに酵素液0.05mlを添加し、37℃で30分間インキュベーションし、0.05N NaOH 10ml を添加した後、分光光度計を用いて吸光度(405nm) を測定し、骨に対する治療剤および骨に対する作用の知られている化合物の骨アルカリ性ホスファターゼ活性を調べた。その結果を表1に示す。なおそれぞれの試験群は6回づつ測定し、平均値および標準誤差で示した。また、有意差検定にはStudent's t-testを用いて求め、P値が0.01以下であれば統計学的に有意差ありとした。
【0010】
【表1】
Figure 0003974213
【0011】
骨の石灰化の促進に関する最も重要な酵素であるアルカリ性ホスファターゼ活性に対する作用は、アセキサム酸亜鉛、硫酸亜鉛およびL-カルノシン亜鉛などの亜鉛化合物において有意な活性促進作用が認められた。特にアセキサム酸亜鉛はアルカリ性ホズファターゼ活性を著しく高める作用が認められた。このことから、亜鉛を含有する化合物は骨石灰化に対して強い作用を有することが認められた。
【0012】
〔試験例2〕
亜鉛化合物に関して、老齢ラット大腿骨骨端部の組織培養系における骨アルカリ性ホスファターゼ活性に及ぼす効果を調べるために、添加濃度の範囲を広げて調べた。
材料および方法
Wistar系雌性ラット(50周齢)をエーテル麻酔下に大腿骨を摘出した。大腿骨は0.25M 蔗糖液で洗浄後、骨幹端部の組織を採取して断片とし、ダルベッコ変法イーグル培養液に加え、この培養培地に表2に示すように亜鉛化合物を濃度を変えて添加した。これを5%二酸化炭素、37℃の条件下で48時間インキュベーションし、試験例1と同様な方法で骨アルカリ性ホスファターゼ活性の測定を行った。
その結果を表2に示す。それぞれの試験群は6回づつ測定し、平均値および標準誤差で示した。また、有意差検定にはStudent's t-testを用いて求め、P値が0.01以下であれば統計学的に有意差ありとした。
【0013】
【表2】
Figure 0003974213
【0014】
10-7M において硫酸亜鉛およびL-カルノシン亜鉛は対照群と比較して有意な活性促進作用は認められなかったが、アセキサム酸亜鉛は有意な活性促進作用を示した。さらに、10-5M では、アセキサム酸亜鉛が硫酸亜鉛およびL-カルノシン亜鉛と比較して極めて有意な活性促進作用を示した。このことから、有機亜鉛化合物の中でもアセキサム酸亜鉛は骨組織中で強い石灰化促進作用を有し、広い濃度範囲においてその効果が認められた。
【0015】
〔試験例3〕
老齢ラット大腿骨骨幹端部組織培養系において、亜鉛化合物が骨カルシウム量に及ぼす作用について調べた。
材料および方法
Wistar系雌性ラット(50周齢)をエーテル麻酔下に大腿骨を摘出した。大腿骨は0.25M 蔗糖液で洗浄後、骨幹端部の組織を採取して断片とし、ダルベッコ変法イーグル培養液に加え、この培養培地に表3に示すように亜鉛化合物を濃度を変えて添加した。これを5%二酸化炭素、37℃の条件下で48時間インキュベーションした。
カルシウムの測定
インキュベーション後、組織片を0 .25M蔗糖溶液で洗浄、乾燥後、骨重量を測定した。その後、組織片に濃硝酸を加え120 ℃で12時間灰化し、原子吸光度を用いて骨カルシウム量を定量した。その結果を表3に示す。それぞれの試験群は6回づつ測定し、平均値および標準誤差で示した。また、有意差検定にはStudent's t-testを用いて求め、P値が0.01以下であれば統計学的に有意差ありとした。
【0016】
【表3】
Figure 0003974213
【0017】
老齢ラットは一般的に骨代謝が低下し、骨中のカルシウム量は減少している。亜鉛化合物の投与によってカルシウム含量は増加し、10-5M 濃度の添加において、アセキサム酸亜鉛の効果はL-カルノシン亜鉛および硫酸亜鉛と比較して有意に強いことが認められる。この結果からアセキサム酸亜鉛が骨のカルシウム含量を最も高める作用を有することが認められる。
【0018】
〔試験例4〕
骨組織中のDNA含量は細胞数や蛋白質合成能と関係のあることが知られている。そこで老齢ラット大腿骨骨幹端部の組織培養系における骨DNA含量に及ぼすアセキサム酸亜鉛の作用を調べた。
材料および方法
Wistar系雌性ラット(50周齢)をエーテル麻酔下に大腿骨を摘出した。大腿骨は0.25M 蔗糖液で洗浄後、骨幹端部の組織を採取して断片とし、ダルベッコ変法イーグル培養液に加え、この培養培地に表4に示すように亜鉛化合物を濃度を変えて添加した。これを5%二酸化炭素、37℃の条件下で48時間インキュベーションした。
DNA量の定量
インキュベーション後、組織片を0.25M 蔗糖溶液で洗浄し、湿重量を測定した。その後、0.1N NaOH 4ml 中で粉砕して、4 ℃で24時間浸透させた。この液を遠心分離し、上清を試料としてCeriottiらの方法(J.Bool.Chem.,241:34-77, 1955)に従って定量した。即ち、試料2ml に濃塩酸1ml 及び0.04% インドール溶液1ml を添加し沸騰水中で100 ℃に加熱後、急冷して、クロロホルム4ml で抽出し、クロロホルム層を採取して、分光光度計(490nm) を用いて骨中のDNA量を測定した。その結果を表4に示す。それぞれの試験群は6回づつ測定し、平均値および標準誤差で示した。また、有意差検定にはStudent's t-testを用いて求め、P値が0.01以下であれば統計学的に有意差ありとした。
【0019】
【表4】
Figure 0003974213
【0020】
10-7M では硫酸亜鉛及びL-カルノシン亜鉛は対照群と比較して有意なDNA量の増加作用は認められなかったが、アセキサム酸亜鉛は有意な増加促進作用が認められた。更に、10-6M 濃度でも、アセキサム酸亜鉛は硫酸亜鉛およびL-カルノシン亜鉛と比較して有意な増加促進作用が認められた。この結果から、アセキサム酸亜鉛は蛋白質合成を最も促進させる化合物であることが認められた。
【0021】
〔試験例5〕
老齢ラット大腿骨骨幹部の組織培養系における骨亜鉛含量に及ぼすアセキサム酸亜鉛の作用について検討を行った。
材料および方法
Wistar系雌性ラット(50周齢)をエーテル麻酔下に大腿骨を摘出した。大腿骨は0.25M 蔗糖液で洗浄後、骨幹端部の組織を採取して断片とし、ダルベッコ変法イーグル培養液に加え、この培養培地に表5に示すように亜鉛化合物を濃度を変えて添加した。これを5%二酸化炭素、37℃の条件下で48時間インキュベーションした。
骨中の亜鉛含量の測定
インキュベーション後、組織片を0 .25M蔗糖溶液で洗浄、乾燥後、骨重量を測定した。その後、組織片に濃硝酸を加え120 ℃で12時間灰化し、原子吸光度を用いて骨中の亜鉛含量を定量した。その結果を表3に示す。それぞれの試験群は6回づつ測定し、平均値および標準誤差で示した。また、有意差検定にはStudent's t-testを用いて求め、P値が0.01以下であれば統計学的に有意差ありとした。
【0022】
【表5】
Figure 0003974213
【0023】
骨組織中の亜鉛含有量は亜鉛化合物の使用により上昇することが認められた。特にアセキサム酸亜鉛はその作用が強く、10-5M でL-カルノシン亜鉛と比較しても有意に増加することが認められた。このことは亜鉛化合物の中でも特にアセキサム酸亜鉛は、細胞中への亜鉛の取り込み量が高いことが認められる。
【0024】
〔試験例6〕
アセキサム酸亜鉛の骨に対する作用の生理学的活性元素の検討を行った。
材料および方法
Wistar系雌性ラット(50周齢)をエーテル麻酔下に大腿骨を摘出した。大腿骨は0.25M 蔗糖液で洗浄後、骨幹端部の組織を採取して断片とし、ダルベッコ変法イーグル培養液に加え、この培養培地に10-6M シクロヘキシイミドと10-5M アセキサム酸亜鉛との混合物、並びに10-3M ジピコリネートと10-5M アセキサム酸亜鉛との混合物を添加し、これを5%二酸化炭素、37℃の条件下で48時間インキュベーションした。この骨組織を用いて、カルシウム含量およびアルカリ性ホスファターゼ活性の測定を試験例2および3と同様の方法で行った。その結果を表6に示す。それぞれの試験群は6回づつ測定し、平均値および標準誤差で示した。また、有意差検定にはStudent's t-testを用いて求め、P値が0.05以下であれば統計学的に有意差ありとした。
【0025】
【表6】
Figure 0003974213
【0026】
蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシイミドの存在下では、アセキサム酸亜鉛のカルシウム含量およびアルカリ性ホスファターゼ活性は亜鉛無添加の対照群と比較して有意差は認められず、これらに対する増強作用は消失した。このことはアセキサム酸亜鉛は骨の蛋白合成を促進することでアルカリ性ホスファターゼなどの合成を促進し、その結果骨のカルシウム含量を増加させると推察される。また、キレート剤であり、亜鉛イオンの除去作用を有するジピコリネートを培養培地に添加したものは、アセキサム酸亜鉛のカルシウム含量およびアルカリ性ホスファターゼ活性は、亜鉛無添加の対照群と比較して有意差は認められず、これらに対するに対する増強作用は消失した。この結果からアセキサム酸亜鉛の骨に対する作用を示す基本元素は亜鉛であることが推察される。
【0027】
〔試験例7〕
次に、老齢ラットに亜鉛化合物を経口投与して大腿骨骨幹端部組織の骨成分について検討を行った。
材料および方法
Wistar系雌性ラット(50周齢)に、硫酸亜鉛、L-カルノシン亜鉛およびアセキサム酸亜鉛を1回/日、7日間経口投与した。なお、投与量は亜鉛量に換算して5.5mg/kgとした。即ち、硫酸亜鉛は19.5mg/kg 、L-カルノシン亜鉛は25mg/kg 、アセキサム酸亜鉛は34.7mg/kg とした。化合物の最終投与24時間後に大腿骨を摘出し、前述の試験例の方法に従って、骨内の亜鉛量、カルシウム量、アルカリ性ホスファターゼ活性およびDNA量を測定した。その結果を表7に示す。それぞれの試験群は6回づつ測定し、平均値および標準誤差で示した。また、有意差検定にはStudent's t-testを用いて求め、P値が0.05以下であれば統計学的に有意差ありとした。
【0028】
【表7】
Figure 0003974213
【0029】
亜鉛化合物は動物への経口投与でも骨中の成分を増加させる作用が認められた。特にアセキサム酸亜鉛ではその作用が強く、カルシウム量およびアルカリ性ホスファターゼ活性では硫酸亜鉛およびL-カルノシン亜鉛と比較して有意に増加促進作用が認められ、亜鉛化合物の中では最も有効な骨形成促進剤であることが動物試験においても確認された。
【0030】
〔試験例8〕
毒性試験
Fisher系ラット雌雄を用いて、飼料に0%(対照群とした)または1%アセキサム酸亜鉛を添加し、14日間この飼料を与えて飼育した。アセキサム酸亜鉛の平均摂取量は雄で1014.5mg/kg/日、雌で953mg/kg/ 日となった。投与期間中死亡例はみられず、対照群と比較して体重増加および臨床症状においても特記すべき変化は観察されなかった。他方、アセキサム酸亜鉛は胃や十二指腸に対する治療臨床試験でヒトに1800mg/ 日を7 日間、経口投与しても20例中にこの化合物による副作用は認められず(Digestion, 45:121-129,1990)、また、胃や十二指腸に900mg/日を4 週間経口投与しても副作用は認められなかった(Med.Clin.(Barc);85:831-834,1985) 。これらの結果から、アセキサム酸亜鉛は極めて安全な化合物である。
【0031】
〔試験例9〕
有機亜鉛化合物の水に対する溶解性について検討した。
溶解度試験
アセキサム酸亜鉛2.5gを遠心分離管に採取し、30mlの蒸留水を加え、20±5 ℃で30分間振蘯して飽和させた。この液を遠心分離後、上清を濾過し、既知濃度の秤量瓶にその濾液20mlを正確に量り取り、蒸発乾固する。乾固後、減圧下で40℃、3 時間乾燥させた後、デシケーター内に30分以上置いて放冷後、残量分の分量を求め、アセキサム酸亜鉛1gを溶解するのに必要な蒸留水量(ml)を算出した。その結果を表8に示す。
【0032】
【表8】
Figure 0003974213
【0033】
アセキサム酸亜鉛は、L-カルノシン亜鉛と比較して、より少量の水に溶解することから、L-カルノシン亜鉛より水溶性の高い有機亜鉛化合物であることが認められた。
【0034】
〔処方例1〕
下記処方の成分を均一に混合した後、常法に従って、混合し、圧縮して顆粒を製造した。
アセキサム酸亜鉛 50-100g
乳糖 120g
トウモロコシデンプン 適量
結晶セルロース 25g
ヒドロキシプロピルセルロース 15g
【0035】
〔処方例2〕
下記処方の成分を均一に混合した後、常法に従って、混合し、単発打錠機にて直径4-9mm の杵で打錠した。1錠当たりの重量を概ね200mg (内アセキサム酸亜鉛10-40mg /錠)とした。次いで、この錠剤に下記組成のコーティング液をスプレーコーティングし、1錠当たり10mgの被覆を施し、腸溶性フィルムコーティング錠剤とした。
アセキサム酸亜鉛 10-40g
乳糖 適量
トウモロコシデンプン 35g
結晶セルロース 30g
カルボキシメチルセルロース 10g
ステアリン酸マグネシウム 4g
(コーティング液組成)
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート 6.0(W/W)%
グリセリン脂肪酸エステル 0.8(W/W)%
塩化メチレン 50.0(W/W)%
サラシミツロウ 0.2(W/W)%
イソプロパノール 43.0(W/W)%
【0036】
〔処方例3〕
下記処方の成分を均一に混合した後、常法に従って、混合し、溶解し、シロップ剤を製造した。
アセキサム酸亜鉛 10g
単シロップ 75ml
安息香酸バトリウム 1g
精製水 適量
【0037】
〔処方例4〕
下記処方の成分を均一に混合した後、常法に従って、混合し、溶解し、1アンプルに1ml を充填して注射剤を製造した。
アセキサム酸亜鉛 2g
注射用水 適量
【0038】
【発明の効果】
本発明の骨疾患治療剤は、骨組織におけるカルシウム濃度、DNA濃度、亜鉛濃度およびアルカリ性フォスファターゼ活性を増強させることができ、優れた骨形成促進作用を有している。そして、毒性や副作用が極めて低く、水および有機溶剤等にも溶解するため経口投与または非経口投与の幅広い製剤にも適応できる。そのため、骨粗鬆症、骨軟化症および骨代謝異常によって生じる疾患等の治療剤として有用である。

Claims (2)

  1. アセキサム酸亜鉛を有効成分とする骨疾患治療剤。
  2. 注射剤である、請求項1記載の骨疾患治療剤。
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