JP3973886B2 - セリシン抽出方法、その抽出液及び繊維または布帛の改質加工方法 - Google Patents

セリシン抽出方法、その抽出液及び繊維または布帛の改質加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、セリシン抽出方法、その抽出液及び繊維又は布帛の改質加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蚕が吐糸する繊維、すなわち繭糸は、タンパク質の一種であるフィブロイン及びセリシンからなり、その構造は、二条の繊維を構成するフィブロインを核として、その周囲を被覆するセリシンの層からなることが知られている。家蚕の繭糸では、通常セリシンが20〜30重量%の割合で含まれている。フィブロインは、主にグリシン、アラニン、セリンといったアミノ酸を多く含み、セリシンは、主にセリン、グリシン、アスパラギン酸を多く含む。ここでは、フィブロイン及びセリシンを絹タンパク質と称する。また、本発明で用いる「繭糸」は、繭を形成する繭糸自体の他に、繭自体、切繭、毛羽等の養蚕や製糸の際に生じる繭由来の副産物及び繭糸を複数本まとめた生糸を含むものとする。
【0003】
絹糸の精錬工程では、繭糸のセリシンを除去するため、炭酸ソーダ、珪酸ソーダなどのアルカリ性溶液にマーセル石鹸などの界面活性剤を加えて、例えば100℃で数時間かけて処理を行う。これは、セリシンが常温では水に対して難溶性であるため、こうした処理によりセリシンを加水分解して低分子量化し溶出させている。これに対して、フィブロインは、水又は希アルカリ溶液に不溶であるため、セリシンが大部分除去されることで、その表面が露出し、絹特有の光沢及び風合いが得られるようになる。
【0004】
ところで、こうした絹タンパク質は、繊維として用いられる以外に、適度な吸湿性及び放湿性を有する点、人間に必要なアミノ酸を含んでいる点などの特性に着目して、例えば、化粧品、医療品、食品などの素材、または繊維、布帛などの改質加工にも用いられている。そのため、絹タンパク質を分離する方法がいろいろと試みられている。
【0005】
特開平11−92564号公報では、高分子量のセリシンを抽出して取得する方法として、繭糸などのセリシンを含有する原料を尿素水溶液に100℃を超える温度で浸漬して、セリシンを抽出し、この抽出液からクロマトグラフィー法などにより高分子量のセリシンを選択的に回収する方法が記載されている。特開平10−29909号公報では、イオン水生成装置で得られたイオン水に繭糸などの原料を約90℃で浸漬して、セリシンを加水分解しセリシンペプチド溶液を得ることが記載されている。特開平9−241399号公報では、フィブロインを銅エチレンジアミン溶液を用いて溶解してフィブロイン溶液を作成し、その後不溶化処理によりフィブロイン膜を調製する方法が記載されている。特開平8−27186号公報では、絹フィブロインを、150℃〜250℃の高圧水中で処理して加水分解させて絹フィブロインペプチドを得る方法が記載されている。特開平4−202435号公報では、化学精錬による絹精錬廃液から、限外濾過や逆浸透膜などの方法により所定の範囲の分子量を有するセリシン溶液を得る方法が記載されている。
【0006】
以上の従来技術をみると、絹タンパク質の分離を行う場合に、人体に影響を与える物質をできるだけ加えないようにするために、人体に無害な物質のみ用いたり、人体に影響を与えるような物質を使用する場合は処理後除去するようにしている。また、絹タンパク質を加水分解し低分子量化することで易溶化して抽出効率を向上するとともに、透析膜などへの目詰まり防止、保存時の濁りやオリの発生防止を図っている。また、高分子量のセリシンを得る場合にも、溶液からクロマトグラフィー法などの分離工程により高分子量のものを選択的に分離して得ている。
【0007】
こうして得られた絹タンパク質を繊維の改質加工に用いる場合、染色や洗濯などに対して耐久性に劣る欠点があることから、固着剤を加えたり(特開平2−277886号公報、特開平4−202855号公報)、繊維に絹タンパク質を付着処理した後水不溶化処理をしたり(特開平7−258973号公報)、樹脂により絹タンパク質を定着処理する(特開平11−247068号公報)など繊維への付着力を強化するため別途物質を加える加工方法が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、絹タンパク質を低分子量化してしまうと、水に溶けやすくなるため、上述したように繊維の改質剤として用いる場合単独では用いることができず、固着剤などが別途必要になる。さらに、低分子量化するために、加熱処理、高圧処理、加水分解のための処理剤の添加及びその処理剤の除去といったさまざまな処理工程を追加する必要があり、量産のためにはより複雑な製造工程が必要とならざるを得ない。
【0009】
また、セリシン溶液から濾過などにより高分子量のセリシンだけ回収することは可能であるが、高分子量のものだけを選択的に分離する工程が必要になるとともに回収率も減少するためコストアップ要因になる。そして、精密な分離工程が必要となるため、量産には向いていない。
【0010】
本発明は、このように低分子量化するための処理を行うことなく、セリシンを抽出する方法を提供するとともに、その抽出液を用いて繊維または布帛を簡単かつ確実に加工する方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るセリシン抽出方法は、結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解することで生成した強電解水に、常温状態で繭糸を浸漬することでセリシンを抽出することを特徴とする。さらに、繭糸を浸漬した状態において、繭糸に強電解水の浸透を促進する浸透促進処理を行うことを特徴とする。さらに、前記浸透促進処理は、減圧処理を含むことを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明のセリシン抽出液は、結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解することで生成した強電解水に、常温状態で繭糸を浸漬することで抽出された分子量3万以上で平均分子量6万7千のセリシンを含むことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の繊維の改質加工方法は、前記セリシン抽出液により常温状態で繊維を処理することを特徴とする。さらに、本発明の布帛の改質加工方法は、前記セリシン抽出液により常温状態で布帛を処理することを特徴とする。
【0014】
ここで、電解水とは、一般に電解質(その一部が溶媒に溶けて正・負イオンを生成する溶質)を含む水に電流を流して生じる電気化学反応により水の物性が変化したもので、変化する物性としては、pH、酸化還元電位、クラスターの構造及び大きさ、表面張力などが挙げられる。強電解水は、強く電解されたもので、一般にpH3程度以下の強酸性のもの及びpH11程度以上の強アルカリ性のものを総称している。
【0015】
本発明で用いる強電解水は、結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解することで生成したもので、例えば特許第2949322号公報に記載された製造方法が挙げられる。同公報に記載されているように、この強電解水は強酸性または強アルカリ性のpH値を長期にわたって安定的に維持することができる。
【0016】
電解水は、一般に製造後からの経過時間、空気接触、露光、攪拌、振動、接触材料といった要因によりpH値が変化し、中性化する欠点がある。強電解水を製造したとしても、数時間〜数日で中性化してしまい、攪拌を行うとその変化は早くなることが知られている。また、接触材料として例えば繭糸を電解水に浸漬すると、電解水のpH値が変化し、弱酸性化または弱アルカリ化する点が特開平10−29909号公報に記載されている。
【0017】
本発明者らは、結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解することで生成した強電解水が、上述のようにpH値を安定的に維持するだけでなく、強電解水にいろいろな材料を入れて接触させたとしてもそのpH値がほとんど変化しないこと、常温状態において物質を抽出する作用が非常に強くかつその作用が継続すること−といった新たな特性を種々の実験結果を通して知得することができた。実験結果の一例としては、この強電解水に朝鮮人参を浸漬した状態でガラス瓶に密封して3年程度が経過しているが、pH値は当初のpH12からほとんど変化しておらず、朝鮮人参から種々の成分が抽出されている。ここでいう「常温状態」とは、タンパク質が分解せずに自然の状態で存在する温度状態で、一般に約45℃以下の温度状態であるといわれている。従来のセリシン抽出方法は、特開平10−29909号公報では、90〜95℃の温度で抽出を行っていること、特開平11−92564号公報では、80℃の温度ではセリシンの抽出ができなかったことなどが記載されていることからみても、常温状態でのセリシンの抽出は非常に困難であり、高温状態で低分子量に分解してセリシン抽出を行っていた。
【0018】
ところが、本発明によれば、上述した強電解水の特性に関する新たな知見に基づいて、繭糸からセリシンを常温状態において抽出することができ、加熱や高圧による物理的な処理、加水分解のための化学的な処理は一切必要がない。そして、常温状態での抽出なので、セリシンを強制的に加水分解することがなく、より自然に近い状態でセリシンが抽出される。このことは、抽出液中のセリシンの分子量が3万以上で、平均分子量6万7千であることから、本発明に係る抽出液がほぼ自然の状態のセリシンを含んでいることを裏付けている。さらに、人体に無害な水を用いているため、抽出後に有害物質の除去といった処理を何らする必要がなく、安全なセリシン抽出液を得ることができる。また、セリシンを抽出した状態で抽出液を保存しても、強電解水の特性がほとんど変化しないので、凝集物または沈殿物などがほとんど生じることがなく、安定した状態で抽出液を保存することができる。
【0019】
また、本発明で用いる強電解水は、繭糸を浸漬して静置した状態でセリシンを抽出することが可能であるが、減圧処理といった浸透促進処理を加えることで抽出効率を向上させることができる。浸透促進処理としては、これらの処理以外にも、繭糸を強電解水の流水中に置くこと、強電解水中で繭糸を振動させたり、圧縮させたり、揺動させたりすることでも浸透を促進させることができる。従来の電解水は、振動などの物理的操作に対してpHが大きく変化するが、本発明の強電解水は、こうした物理的操作に対しても安定しているため、繭糸に浸透してセリシンの抽出効率を高めることができる。
【0020】
この抽出液を繊維の改質加工に用いた場合、浸漬、塗布又は噴霧により繊維に常温状態で抽出液を付着させた後乾燥することでセリシンが強固に繊維に固着される。これは、セリシンが自然に近い状態で抽出されているため、高分子量のセリシンが多く存在し、繊維の表面に吸着する作用が強く働くことが要因の1つになっているものと考えられる。
【0021】
なお、本発明に係る繊維の改質加工方法は、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維、アクリル繊維あるいはこれらの混合繊維に適用することができ、また、本発明に係る布帛の改質加工方法は、これらの繊維を用いて製造された織物、編物又は不織布に適用できる。
【0022】
こうして、改質加工された繊維または布帛は、衣料、インテリア製品、雑貨はもとより医療用の創傷被覆材料(ガーゼ等)など人体に接触する部分に用いる場合に好適である。セリシンが付着することで染料の発色性が改善されるとともに、セリシンが人間に必要なアミノ酸を含んでいることから、人体に接触することで肌に好ましい影響を与えることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる強電解水は、結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解する工程を陽極側または陰極側のいずれか一方の極側において複数回行うことで生成されるが、具体的にその製造方法を説明すると、図1に示すように、電解槽10内に電解セル11を6個配列し、槽内を食塩水(濃度10%)で満たしておく。電解セル11は、図2に示すように、円筒容器状の電解隔膜2の内面及び外面に、ステンレス鋼からなる円筒状の電極1及び3を同心円状に配置して構成されている。電解隔膜2は、褐色森林土85%程度、沖積土10%程度、火山灰土2%程度及びその他の粘土成分3%程度の混合割合の粘土を1025℃で焼成して作成されている。
【0024】
左端の電解セル11には、注水管12が円筒状電極1内に挿入され、地下水などの原料水が供給されるようになっている。各電解セル11には、隣り合う電解セルの円筒状電極1内にそれぞれ開口端を挿入する通水管13が設けられている。右端の電解セル11には、排水管14が円筒状電極1内に挿入され、生成される強電解水を外部に排出するようになっている。
【0025】
注水管12より原料水を供給しながら、各電解セル11の電極1及び3の間に全体で4.5A・h/リットルの通電量で直流電流を供給すると、左端の電解セル11で電解隔膜2より結晶性粘土鉱物が溶解しながら電気分解されて電解水が生成し、その電解水が順次右側の電解セル11に通水管13を通して送水され、さらに結晶性粘土鉱物が溶解しながら電気分解されて最終的に排水管14より強電解水が排水される。円筒状電極1が陰極となるように通電すれば、pH12の強電解水を得ることができる。こうして製造された強電解水は、従来の電解水に比べ以下の点で優れた特性を備えている。
(1)pHの経時変化
特許第2949322号公報にも記載されているように、6ヶ月〜2年を経過してもpHの値はほとんど変化しない。これに対して、従来の電解水は数時間〜数日でpHが中性化してしまう場合がほとんどである。
(2)攪拌、振動等の物理的操作による影響
後述するように、減圧処理や繭糸の圧縮処理等強電解水に物理的な影響を与えてもpHの変動はほとんどみられない。これに対して、従来の電解水はこうした物理的操作の影響を受けやすい。
(3)材料の浸漬による影響
後述するように、繭糸を浸漬したとしてもpHの中性化はみられないが、従来の電解水は、特開平10−29909号公報にも記載されているように、pH11〜12程度のアルカリイオン水により繭糸のセリシンを加水分解した結果pHが8程度のアルカリ性の溶液になることが示されている。
(4)抽出液の経時変化
上述したように、本発明で用いる強電解水により朝鮮人参から種々の成分が抽出した抽出液はpHに関してほとんど変化していない。また、後述するように、セリシンを抽出した抽出液もpHに関して変化は見られないことがわかる。一方、従来の電解水による抽出液は、特開平10−29909号公報にも記載されているように、抽出直後からpHが中性化している。
【0026】
以上のように、両者の特性に大きな相違が認められる。これは、強電解水中に溶解した結晶性粘土鉱物(硅酸4面体、アルミナ8面体など)が永久荷電状態で安定したコロイド粒子となって浮遊しており、この帯電したコロイド粒子に電気分解により発生したイオンが結合することで、強アルカリ性または強酸性の状態が維持されると考えられる。さらに、こうしたコロイド粒子の存在により水分子のクラスターが縮小した状態に維持されるため、非常に強い抽出作用が生じているのであろう。いずれにしても、上述した対比から両者の特性の違いは量的なものだけではなく、質的に大きく異なっていることは明らかである。
【0027】
タンパク質の抽出作用に関して付言すれば、タンパク質は、温度が45℃を超えると加水分解による抽出作用が進むことから、例えば105℃の水道水に繭糸を30分浸漬した場合でも17%程度のセリシンが抽出できる。すなわち、タンパク質の抽出には温度が大きな影響を及ぼすことから、温度が上昇すれば従来の電解水でもある程度の抽出は可能である。しかしながら、温度の上昇により抽出したセリシンは当然ながら低分子量のものがほとんどである。したがって、本発明に用いる強電解水のように45℃以下の常温状態では、セリシンの加水分解がほとんど進まずその抽出が非常に困難であった。こうしたことからも、タンパク質の抽出作用に関して本発明に用いる強電解水と従来の電解水とは質的に大きな違いがあることは明らかである。
【0028】
浸透促進処理として、減圧処理を用いるのは、減圧により繭糸が膨らみ、繭糸を構成する繊維の間の空間が広がることから、強電解水が浸透しやすくなるためである。特に、上述したように水分子のクラスターが縮小した状態なので、より広範囲に浸透しやすくなっている。そして、減圧状態を解除し常圧に戻せば、浸透した水分子が繭糸から排出されるが、その際セリシンの抽出が促進されるようになる。また、強電解水に浸漬した状態で繭糸を圧縮し解除すると、水分子が繭糸に入り込んだり押し出されたりして強電解水の流動が生じることで、徐々に繭糸に浸透していき、セリシンの抽出が促進される。
【0029】
【実施例】
図1に記載の製造装置において、常温の原料水を注水管に供給しながら、電極隔膜の内面に位置する電極が陰極となるように、4.5A・h/リットルの直流電流を通電して、pH12の強電解水を10リットル/分で生成した。
【0030】
こうして生成された強電解水を用いて、表1の試料A〜Fに示すような条件設定で繭糸からセリシンの抽出を行った。抽出処理は45℃以下の常温状態で行っており、具体的な数値は、開始時温度及び終了時温度として表記している。タンパク質濃度は、ローリー法により濃度測定を行った。
【0031】
また、減圧処理は、吸引ポンプにより0.075気圧まで減圧を3分間行い1気圧に戻す処理を20回繰り返すことで行った。
【0032】
【表1】
Figure 0003973886
【0033】
試料A〜Cを比較すると、繭の使用量が増加してもタンパク質濃度はそれほど増加しないが、浸漬時間が増加するとタンパク質濃度が大きく増加している。その傾向は、試料D〜Fのように浸漬時間の増加とともにタンパク質濃度が大きく増加していることからも確認できる。また、減圧処理を行わない試料Cと減圧処理を行っている試料D〜Fを比較すると、減圧処理をしたほうが抽出効率が向上していることがわかる。
【0034】
また、pHに着目すると、抽出により若干のpHの低下はあるものの、試料D〜Fにみられるように浸漬時間が長くなってもpHはほぼ一定に維持されていることがわかる。
【0035】
従来のセリシンの抽出においては、特開平10−29909号公報では、90〜95℃の温度で抽出を行っていること、特開平11−92564号公報では、80℃の温度ではセリシンの抽出ができなかったことなど、従来は常温ではセリシンの抽出は非常に困難だったことと比較すれば、その差異は明らかである。
【0036】
以上のことから、本発明で用いる強電解水の抽出作用は非常に強く、特に浸漬時間が長くなってもpHが維持されるため、時間とともにタンパク質濃度が大きく増加していく。
【0037】
次に、以下の3つの条件で繭糸よりセリシンを抽出して得られた抽出液をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によりその分子量分布を測定した。
試料1;強電解水2,000mlに繭16gを1時間浸漬後上述した減圧処理を20回
試料2;強電解水1,000mlに水道水1,000mlを加えて繭16gを1時間浸漬後上述した減圧処理を20回
試料3;強電解水を600mlに水道水1,400mlを加えて繭16gを1時間浸漬後上述した減圧処理を20回
試料1〜3についてローリー法によるタンパク質の濃度測定を行ったところ、それぞれ34.7μg/ml、23.8μg/ml、25.8μg/mlであった。水道水を加えた場合には、タンパク質の濃度が低下することから、強電解水の抽出作用が大きく影響していることがわかる。また、分子量については、試料1では、分子量が43,000〜67,000の範囲に分布しており、平均分子量が67,000であることがわかった。試料2及び3でもこの範囲の分子量のタンパク質存在することを明瞭に示しており、試料3では分子量30,000付近にもタンパク質が存在することが示された。以上の分析結果から、高分子量のセリシンの抽出がなされたことは明らかであり、具体的には分子量3万以上で、平均分子量6万7千のセリシンがほぼ自然の状態で抽出されていることが明確に示されている。
【0038】
比較例として、カネボウシルクの5%水溶液を用いてSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によるタンパク質組成の測定試験を行った。ローリー法によるタンパク質の濃度測定では、83.2mg/mlという高濃度であったためそのままでは測定できなかったことから、4倍〜32倍にそれぞれ希釈した水溶液で測定を行った。測定結果をみると、分子量15,100、24,800、37,100の3種類のタンパク質が含まれており、上述のような高分子量のタンパク質は含まれていないことがわかった。
【0039】
以上のことから、本発明のセリシン抽出方法を用いると、高分子量のセリシンが抽出されるとともに、その分子量分布からみても、より自然に近い状態で抽出されていることがわかる。
【0040】
次に、上述のように作成したセリシン抽出液を用いた布帛の改質加工処理について説明する。綿繊維からなる糸により織成された布片を複数用意し、この布片をまず図1の製造装置で製造した強電解水(pH12)で煮沸して、布片の汚れ等を落とす。その後布片を十分乾燥させてから、抽出液に180分浸漬した。ここで用いた抽出液は、強電解水(pH12)1,000mlに繭45gを常温状態で48時間浸漬して作成したものである。浸漬した布片は自然状態で乾燥させて、改質加工した布片を作成した。こうして作成した各布片は、所定の洗濯方法(JIS L−0217 103に定められた方法)で、洗濯回数をそれぞれ0回、1回、5回、10回、15回、20回と設定して行った。
【0041】
そして、改質加工した布片のセリシンの付着程度をニンヒドリン法により分析した。ニンヒドリン溶液をベースに4種類の薬品(クエン酸・一水和物、苛性ソーダ、塩化スズ・二水和物、2−メタキシエタノール)を調合した試薬を布片とともに沸騰水浴中で20分間加熱すると、タンパク質類の付着部分に茶褐色の呈色反応が生じる。呈色反応が濃色であればあるほどタンパク質類の付着量が多いことがわかる。洗濯を所定回数行った各布片のニンヒドリン反応を肉眼で確認したところ、いずれの布片にも均一な呈色反応が認められ、洗濯回数が増加しても呈色反応に差異は認められなかった。また、浸漬した状態で上述の減圧処理を20回行って作成した布片についても上記静置した場合と同様の試験を行ったが、同様の分析結果が得られた。
【0042】
さらに、ポリエステル繊維からなる糸により織成された布片を用いて上記と同様の改質加工処理を行ったが、洗濯を所定回数行った各布片についてニンヒドリン反応を肉眼で確認したところ、いずれの布片にも均一な呈色反応が認められ、洗濯回数が増加しても呈色反応に差異は認められなかった。
【0043】
以上のことから、本発明のセリシン抽出液による布帛の改質加工を行うと、セリシンが均一に布帛に付着するとともにその付着力が強固なものであることがわかる。特筆すべきは、セリシンの濃度が低い(0.1〜0.2%程度)にもかかわらず、実用に耐えるだけの改質加工が可能となっていることである。このことは、本発明のセリシン抽出液には、高分子量のセリシンが含まれるためと考えられ、低濃度の少ない量のセリシンでも効率よく改質加工に用いることができる。さらに、綿繊維のような親水性の強い天然繊維でも洗濯に対して十分なセリシンの付着量が保持されていることから、その他のさまざまな繊維の改質加工についても対応することが可能である。また、ここでは布帛の状態で試験を行ったが、繊維の状態で行っても同様の結果が得られた。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るセリシン抽出方法は、本発明で用いる強電解水の非常に強い抽出力により常温状態で繭糸からセリシンを抽出することが可能となり、より自然に近い状態のセリシン抽出液を得ることができる。また、従来のように加熱などの物理的処理、加水分解のための化学的処理を行うことがないので、工程管理が単純化されるとともに、人体に無害な水を用いているので、抽出後の後処理も不要である。さらに、繭糸を浸漬した状態で減圧処理を行うとセリシンの抽出効率を格段に向上させることができる。
【0045】
本発明に係るセリシン抽出方法により作成されたセリシン抽出液は、pHがそのまま維持されるため長期間保存しても濁りや沈殿物が生じることがほとんどない。また、分子量が3万以上で、平均分子量が6万7千のセリシンが含まれていることから、本発明に係るセリシン抽出液を用いて繊維または布帛を改質加工すると、セリシンが均一に付着して絹の風合いを有する繊維または布帛を得ることができる。特に、低濃度のセリシン抽出液でも十分に効果を発揮できるので、少ない量のセリシンでも効率よく改質加工処理に用いることが可能となる。さらに、高分子量のセリシンを用いていることから繊維または布帛へのタンパク質の付着力が強固となり、洗濯などに対しても十分な耐久性を有するものとなる。洗濯回数に対する耐久性は、綿繊維のような親水性の強い天然繊維でも維持されるとともにポリエステル繊維のような合成繊維でも維持され、その他のさまざまな繊維の改質加工処理に対応することができる。また、セリシンが均一に付着しているため発色性が改善されるとともに、セリシンが人間に必要なアミノ酸成分を多く含んでいることから、人体に接触する部分に用いることで肌に対して好ましい影響を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる強電解水を製造する装置に関する説明図
【図2】図1中の電解セルに関する説明図
【符号の説明】
1 内面側の円筒状電極
2 電解隔膜
3 外面側の円筒状電極
10 電解槽
11 電解セル
12 注水管
13 通水管
14 排水管

Claims (6)

  1. 結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解することで生成した強電解水に、常温状態で繭糸を浸漬することでセリシンを抽出することを特徴とするセリシン抽出方法。
  2. 繭糸を浸漬した状態において、繭糸に強電解水の浸透を促進する浸透促進処理を行うことを特徴とする請求項1記載のセリシン抽出方法。
  3. 前記浸透促進処理は、減圧処理を含むことを特徴とする請求項2記載のセリシン抽出方法。
  4. 結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解することで生成した強電解水に、常温状態で繭糸を浸漬することで抽出された分子量3万以上で平均分子量6万7千のセリシンを含むことを特徴とするセリシン抽出液。
  5. 請求項4に記載のセリシン抽出液により常温状態で繊維を処理することを特徴とする繊維の改質加工方法。
  6. 請求項4に記載のセリシン抽出液により常温状態で布帛を処理することを特徴とする布帛の改質加工方法。
JP2001363542A 2001-11-29 2001-11-29 セリシン抽出方法、その抽出液及び繊維または布帛の改質加工方法 Expired - Lifetime JP3973886B2 (ja)

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