JP2004353117A - セリシン抽出液及び天然成分を用いた素材の改質加工方法 - Google Patents

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Tsukasa Hasegawa
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Abstract

【課題】本発明は、セリシン抽出液及び天然物のみを用いて簡単かつ確実に素材の改質加工を行うことができるとともに、天然物の特性をほとんど損なうことがない方法を提供するものである。
【解決手段】結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解することで生成した強電解水に、繭糸を浸漬しセリシンを常温状態で抽出する。抽出して得られたセリシン抽出液に、素材を浸漬したり、あるいは抽出液を塗布又は噴霧した後乾燥させて素材表面にセリシンを付着させる。セリシンの付着した素材に、天然物から抽出された天然成分を含む溶液を付着させて乾燥させることで、素材を天然物のみで改質加工することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、セリシン抽出液及び天然成分を用いた素材の改質加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年環境問題への高まりやアレルギー等の人体への影響を考慮して、衣食住においてできるだけ天然の素材を使用する−といった天然物志向の製品開発に対する関心が高まっている。こうした天然の素材の代表的なものとして絹糸がある。絹糸は、古代から衣料の素材として用いられてきており、蚕が吐出する繭糸から作成される。
【0003】
蚕が吐糸する繊維、すなわち繭糸は、タンパク質の一種であるフィブロイン及びセリシンからなり、その構造は、二条の繊維を構成するフィブロインを核として、その周囲を被覆するセリシンの層からなることが知られている。家蚕の繭糸では、通常セリシンが20〜30重量%の割合で含まれている。フィブロインは、主にグリシン、アラニン、セリンといったアミノ酸を多く含み、セリシンは、主にセリン、グリシン、アスパラギン酸を多く含む。ここでは、フィブロイン及びセリシンを絹タンパク質と称する。また、本発明で用いる「繭糸」は、繭を形成する繭糸自体の他に、繭自体、切繭、毛羽等の養蚕や製糸の際に生じる繭由来の副産物及び繭糸を複数本まとめた生糸を含むものとする。
【0004】
絹糸の精錬工程では、繭糸のセリシンを除去するため、炭酸ソーダ、珪酸ソーダなどのアルカリ性溶液にマーセル石鹸などの界面活性剤を加えて、例えば100℃で数時間かけて処理を行う。これは、セリシンが常温では水に対して難溶性であるため、こうした処理によりセリシンを加水分解して低分子量化し溶出させている。これに対して、フィブロインは、水又は希アルカリ溶液に不溶であるため、セリシンが大部分除去されることで、その表面が露出し、絹特有の光沢及び風合いが得られるようになる。
【0005】
ところで、こうした絹タンパク質は、繊維として用いられる以外に、適度な吸湿性及び放湿性を有する点、人間に必要なアミノ酸を含んでいる点などの特性に着目して、例えば、化粧品、医療品、食品などの素材、または繊維、布帛などの改質加工にも用いられている。そのため、絹タンパク質を分離する方法がいろいろと試みられている。
【0006】
特許文献1では、高分子量のセリシンを抽出して取得する方法として、繭糸などのセリシンを含有する原料を尿素水溶液に100℃を超える温度で浸漬して、セリシンを抽出し、この抽出液からクロマトグラフィー法などにより高分子量のセリシンを選択的に回収する方法が記載されている。特許文献2では、イオン水生成装置で得られたイオン水に繭糸などの原料を約90℃で浸漬して、セリシンを加水分解しセリシンペプチド溶液を得ることが記載されている。こうして得られた絹タンパク質を繊維の改質加工に用いる場合、染色や洗濯などに対して耐久性に劣る欠点があることから、固着剤を加えたり(特許文献3参照)、樹脂により絹タンパク質を定着処理する(特許文献4参照)など繊維への付着力を強化するため別途物質を加える加工方法が提案されている。
【0007】
また、天然の素材として、天然色素成分を用いた染色方法も草木染め等で古来より用いられているが、こうした天然色素成分を合成繊維の染色に直接用いることはできない。そこで、こうした問題に対処するため、特許文献5では、天然タンパク質をホルマリン等による架橋処理やアクリル系樹脂中に包括させて合成繊維上に定着処理し、天然色素で染色する点が記載されている。また、特許文献6では、テルピネン、フェランドレン又はリモネンといった植物の精油等から得られる天然物をポリエステル系繊維を染色するためのキャリアーに含有する点が記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−92564号公報
【特許文献2】
特開平10−29909号公報
【特許文献3】
特開平2−277886号公報
【特許文献4】
特開平11−247068号公報
【特許文献5】
特開平8−260361号公報
【特許文献6】
特開2000−248475号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の絹タンパク質を得るための方法は、加熱処理等により絹タンパク質の低分子量化が避けられないが、絹タンパク質を低分子量化してしまうと、水に溶けやすくなるため、上述したように繊維の改質剤として用いる場合単独では用いることができず、固着剤や定着のための処理などが別途必要になる。このように、天然物を取り扱う場合、それに含まれるタンパク質が加熱処理等により変質してしまうことが多く、天然物の特性をそのまま保持して用いるためには、その取り扱いを慎重に行う必要がある。
【0010】
また、天然色素を合成繊維に用いる場合上述のように別途樹脂を用いて定着処理を行う等の処理が必要となり、天然物のみから染色を行うことができないのが現状である。
【0011】
本発明は、セリシン抽出液及び天然物のみを用いて簡単かつ確実に素材の改質加工を行うことができるとともに、天然物の特性をほとんど損なうことがない方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る素材の改質加工方法は、常温状態において強電解水に繭糸を浸漬することで抽出されたセリシン抽出液を素材表面に付着させて乾燥させた後、天然物から抽出された天然成分を含む溶液を付着させて乾燥させることを特徴とする。さらに、前記素材は、合成樹脂材からなることを特徴とする。さらに、前記合成樹脂材は合成繊維であり、前記天然成分は天然色素成分であることを特徴とする。さらに、前記合成樹脂材は合成繊維からなる布帛であり、前記天然成分は天然色素成分であることを特徴とする。さらに、前記合成繊維は、ポリエステル系合成繊維であることを特徴とする。さらに、前記セリシン抽出液は、分子量3万以上で平均分子量6万7千のセリシンを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る素材の改質加工方法によれば、後述するように常温状態でセリシンをほぼ天然の状態で抽出できるため、天然に存在する高分子量のセリシンの特性をほぼ損なうことなく用いることができ、浸漬、塗布又は噴霧により素材表面に常温状態で抽出液を付着させた後乾燥することでセリシンが強固に素材に固着される。これは、セリシンが天然に近い状態で抽出されているため、高分子量のセリシンが多く存在し、素材表面に吸着する作用が強く働くことが要因の1つになっているものと考えられる。こうしてセリシンが強固に固着した素材には、様々な天然成分を付着させることができる。そして、セリシン及び天然成分といった天然物のみで素材表面に簡単に定着処理できることから、環境や人体に対して悪影響を及ぼすことのない素材の改質加工方法ということができる。
【0014】
本発明に係る素材の改質加工方法は、繊維素材に用いることができ、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維、アクリル繊維あるいはこれらの混合繊維に適用することができ、また、これらの繊維を用いて製造された織物、編物又は不織布に適用できる。特に、ポリエステル系合成繊維は、上述したように天然色素成分により直接染色することができないが、本発明の改質加工処理を行うことで、絹糸と同様の染色処理を行うことができる。したがって、現在衣料等に広く用いられているポリエステル系合成繊維で作られた布帛を絹織物同様に天然色素成分で染色でき、セリシンが人間に必要なアミノ酸を含んでいることから、人体に接触することで肌に好ましい影響を与えることができる。衣料以外にも、インテリア製品、雑貨はもとより医療用の創傷被覆材料(ガーゼ等)など人体に接触する部分に用いる場合に好適である。
【0015】
本発明で用いるセリシン抽出液は、結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解することで生成した強電解水により製造するもので、その製造方法としては特願2001−363542号の明細書に記載されている方法が挙げられる。
【0016】
電解水とは、一般に電解質(その一部が溶媒に溶けて正・負イオンを生成する溶質)を含む水に電流を流して生じる電気化学反応により水の物性が変化したもので、変化する物性としては、pH、酸化還元電位、クラスターの構造及び大きさ、表面張力などが挙げられる。強電解水は、強く電解されたもので、一般にpH3程度以下の強酸性のもの及びpH11程度以上の強アルカリ性のものを総称している。
【0017】
電解水は、一般に製造後からの経過時間、空気接触、露光、攪拌、振動、接触材料といった要因によりpH値が変化し、中性化する欠点がある。強電解水を製造したとしても、数時間〜数日で中性化してしまい、攪拌を行うとその変化は早くなることが知られている。また、接触材料として例えば繭糸を電解水に浸漬すると、電解水のpH値が変化し、弱酸性化または弱アルカリ化する点が特許文献2に記載されている。
【0018】
本発明者らは、結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解することで生成した強電解水が、pH値を安定的に維持するとともに、強電解水にいろいろな材料を入れて接触させたとしてもそのpH値がほとんど変化しないこと、常温状態において物質を抽出する作用が非常に強くかつその作用が継続すること−といった新たな特性を種々の実験結果を通して知得することができた。実験結果の一例としては、この強電解水に朝鮮人参を浸漬した状態でガラス瓶に密封して3年程度が経過しているが、pH値は当初のpH12からほとんど変化しておらず、朝鮮人参から種々の成分が抽出されている。ここでいう「常温状態」とは、タンパク質が分解せずに自然の状態で存在する温度状態で、一般に約45℃以下の温度状態であるといわれている。従来のセリシン抽出方法は、特許文献2では、90〜95℃の温度で抽出を行っていること、特開平11−92564号公報では、80℃の温度ではセリシンの抽出ができなかったことなどが記載されていることからみても、常温状態でのセリシンの抽出は非常に困難であり、高温状態で低分子量に分解してセリシン抽出を行っていた。
【0019】
ところが、本発明に用いるセリシン抽出液は、上述した強電解水の特性に関する新たな知見に基づいて、繭糸からセリシンを常温状態において抽出することができ、加熱や高圧による物理的な処理、加水分解のための化学的な処理は一切必要がない。そして、常温状態での抽出なので、セリシンを強制的に加水分解することがなく、より自然に近い状態でセリシンが抽出される。このことは、抽出液中のセリシンの分子量が3万以上で、平均分子量6万7千であることから、本発明に係る抽出液がほぼ自然の状態のセリシンを含んでいることを裏付けている。さらに、人体に無害な水を用いているため、抽出後に有害物質の除去といった処理を何らする必要がなく、安全なセリシン抽出液を得ることができる。また、セリシンを抽出した状態で抽出液を保存しても、強電解水の特性がほとんど変化しないので、凝集物または沈殿物などがほとんど生じることがなく、安定した状態で抽出液を保存することができる。
【0020】
以上のように、本発明に用いるセリシン抽出液は、環境及び人体に対して安全であるとともに、それのみで天然成分を素材に強固に付着させることができ、天然物のみで素材の改質加工を行うことが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る実施形態について、以下に詳述する。まず、本発明に用いるセリシン抽出液の製造に使用する強電解水は、結晶性粘土鉱物を溶解させながら電気分解する工程を陽極側または陰極側のいずれか一方の極側において複数回行うことで生成されるが、具体的にその製造方法を説明すると、図1に示すように、電解槽10内に電解セル11を6個配列し、槽内を食塩水(濃度10%)で満たしておく。電解セル11は、図2に示すように、円筒容器状の電解隔膜2の内面及び外面に、ステンレス鋼からなる円筒状の電極1及び3を同心円状に配置して構成されている。電解隔膜2は、褐色森林土85%程度、沖積土10%程度、火山灰土2%程度及びその他の粘土成分3%程度の混合割合の粘土を1025℃で焼成して作成されている。
【0022】
左端の電解セル11には、注水管12が円筒状電極1内に挿入され、地下水などの原料水が供給されるようになっている。各電解セル11には、隣り合う電解セルの円筒状電極1内にそれぞれ開口端を挿入する通水管13が設けられている。右端の電解セル11には、排水管14が円筒状電極1内に挿入され、生成される強電解水を外部に排出するようになっている。
【0023】
注水管12より原料水を供給しながら、各電解セル11の電極1及び3の間に全体で4.5A・h/リットルの通電量で直流電流を供給すると、左端の電解セル11で電解隔膜2より結晶性粘土鉱物が溶解しながら電気分解されて電解水が生成し、その電解水が順次右側の電解セル11に通水管13を通して送水され、さらに結晶性粘土鉱物が溶解しながら電気分解されて最終的に排水管14より強電解水が排水される。円筒状電極1が陰極となるように通電すれば、pH12の強電解水を得ることができる。こうして製造された強電解水は、pHの経時変化がほとんどない点、攪拌、振動等の物理的操作による影響をほとんど受けない点、材料の浸漬による影響をほとんど受けない点及び抽出液の経時変化がほとんどない点で従来の電解水に比べ優れた特性を備えている。
【0024】
こうした両者の特性の相違は、強電解水中に溶解した結晶性粘土鉱物(硅酸4面体、アルミナ8面体など)が永久荷電状態で安定したコロイド粒子となって浮遊しており、この帯電したコロイド粒子に電気分解により発生したイオンが結合することで、強アルカリ性または強酸性の状態が維持されると考えられる。さらに、こうしたコロイド粒子の存在により水分子のクラスターが縮小した状態に維持されるため、非常に強い抽出作用が生じているのであると推測される。
【0025】
本発明に用いるセリシン抽出液を製造する場合には、繭糸を浸漬して静置した状態でセリシンを抽出することが可能であるが、減圧処理といった浸透促進処理を加えることで抽出効率を向上させることができる。浸透促進処理としては、これらの処理以外にも、繭糸を強電解水の流水中に置くこと、強電解水中で繭糸を振動させたり、圧縮させたり、揺動させたりすることでも浸透を促進させることができる。従来の電解水は、振動などの物理的操作に対してpHが大きく変化するが、本発明の強電解水は、こうした物理的操作に対しても安定しているため、繭糸に浸透してセリシンの抽出効率を高めることができる。 次に、本発明に用いる天然成分としては、植物色素、動物色素、鉱物色素などの染色に用いられる天然色素成分がある。植物色素としては、アカネ、ヨモギ、スオウ、シコン、キハダ、といった従来より草木染めとして用いられているものが挙げられる。こうした植物色素による染色処理の場合、各植物色素に応じて例えば染色時の温度設定や媒染剤の添加等が個別に決められているが、いったんセリシン抽出液を付着して乾燥させた布帛に対しては、従来どおりの染色処理を行っても問題はない。
【0026】
天然色素成分以外にも、熊笹からの抽出液やラベンダー等のハーブ類のように薬効成分として用いられているものも使用することができ、これらに特に限定されることはなく、自然界に存在する天然成分であれば使用可能である。そして、本発明では、こうした天然成分の特性をほとんど損なうことなく、素材に付加して改質加工することができる。
【0027】
また、本発明が適用化可能な素材としては、繊維、布帛、シート体等様々な形態のものに適用可能であり、合成樹脂材に関しては、天然物によりその改質加工が行えることから、環境及び人体に対してより好ましい影響を与えることができ、特に好適である。ポリエステル系合成繊維は、高強度で耐熱性も高く優れた特性を有しているが、直接天然色素成分で染色することはできない。しかしながら、本発明の改質加工方法によりポリエステル系合成繊維に天然色素成分による染色が可能となるとともに、天然色素成分以外の天然成分についてもその表面に付着させることができ、天然成分の特性を付加することもできる。
【0028】
【実施例】
図1に記載の製造装置において、常温の原料水を注水管に供給しながら、電極隔膜の内面に位置する電極が陰極となるように、4.5A・h/リットルの直流電流を通電して、pH12の強電解水を10リットル/分で生成した。
【0029】
こうして生成された強電解水2,000mlに繭16gを1時間浸漬した後減圧処理を20回繰り返した。減圧処理は、吸引ポンプにより0.075気圧まで減圧を3分間行い1気圧に戻す方法で行った。以上の抽出処理は、45℃以下の常温状態の中で行った。製造された抽出液のタンパク質濃度をローリー法により濃度測定したところ、34.7μg/mlであった。また、その分子量は、ほぼ30,000〜67,000の範囲に分布しており、平均分子量は67,000であった。以上の分析結果から、高分子量のセリシンの抽出がなされたことは明らかであり、具体的には分子量3万以上で、平均分子量6万7千のセリシンがほぼ自然の状態で抽出されていることがわかる。また、pHに着目すると、抽出により若干のpHの低下はあるものの浸漬時間が長くなってもpHはほぼ一定に維持されていることから、本発明で用いる強電解水の抽出作用は非常に強く、特に浸漬時間が長くなってもpHが維持されており、時間とともにタンパク質濃度−すなわち抽出されるセリシンの濃度が高くなっていく。
【0030】
次に、上述のように作成したセリシン抽出液を用いた布帛の改質加工処理について説明する。ポリエステル繊維からなる糸により織成された布片を用意し、この布片をまず図1の製造装置で製造した強電解水(pH12)で煮沸して、布片の汚れ等を落とす。その後布片を十分乾燥させてから、上記の方法で作成したセリシン抽出液に常温状態で180分浸漬した。浸漬した布片は自然状態で乾燥させて、セリシンが付着した布片を作成した。
【0031】
次に、天然色素成分として、布片の重量と同量の西洋アカネを水1リットルに分散させて煮沸抽出して作成した抽出液を染料として用いた。セリシンが付着した布片をこの抽出液に約60℃で60分間染色処理(浸漬−乾燥)を行い、この染色処理を4回繰り返した。染色した結果ピンク色の均一な染色が認められ、絹糸からなる布片に同様の染色処理を行ったものとほぼ同程度の濃さの色であった。
【0032】
こうして作成した布片を、摩擦試験機(JIS L−0849 II形)で染色の堅牢度を測定したところ、乾燥3−4級及び湿潤3級であった。従来の綿布に染色した場合とほぼ同程度の堅牢度で、実用に十分耐えるものであることがわかった。
【0033】
以上のことから、セリシン抽出液及び天然色素成分によりポリエステル繊維からなる布帛を改質加工すると、セリシンが均一に布帛に付着するとともにそのセリシンに天然色素成分が均一に付着していると考えられる。さらに、それらの付着力が強固なものであることは上述した染色堅牢度から実証される。特筆すべきは、セリシンの濃度が低い(0.1〜0.2%程度)にもかかわらず、従来の絹糸からなる布帛と染色では同程度の改質加工が可能となっていることである。このことは、本発明に使用されるセリシン抽出液には、高分子量のセリシンが含まれるためと考えられ、低濃度の少ない量のセリシンでも天然成分とともに均一に素材の改質加工を行うことができると考えられる。
【0034】
また、ポリエステル繊維以外の合成樹脂材に対しても同様に改質加工が可能であり、繊維以外にも、シート体であっても、浸漬、塗布又は噴霧といった方法により容易にセリシンを付着させて天然成分を均一に付着させることが可能となる。その際に天然成分の特性を損なうような加熱処理等の処理は行うことがないため、セリシン及び天然成分の天然物のみで改質加工を行うことが可能となる。そして、実用に耐えるだけの耐久性を備えた改質加工ができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る素材の改質加工方法によれば、常温状態でセリシンをほぼ自然の状態で抽出できるため、天然に存在する高分子量のセリシンの特性をほぼ損なうことなく用いることができ、浸漬、塗布又は噴霧により素材表面に常温状態で抽出液を付着させた後乾燥することでセリシンが強固に繊維に固着される。これは、セリシンが自然に近い状態で抽出されているため、高分子量のセリシンが多く存在し、繊維の表面に吸着する作用が強く働くことが要因の1つになっているものと考えられる。こうしてセリシンが強固に固着した素材には、様々な天然成分を付着させることができる。そして、セリシン及び天然成分といった天然物のみで素材表面に簡単に定着処理できることから、環境や人体に対して悪影響を及ぼすことのない素材の改質加工方法ということができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いるセリシン抽出液の製造に使用する強電解水を製造する装置に関する説明図
【図2】図1中の電解セルに関する説明図
【符号の説明】
1 内面側の円筒状電極
2 電解隔膜
3 外面側の円筒状電極
10 電解槽
11 電解セル
12 注水管
13 通水管
14 排水管

Claims (6)

  1. 常温状態において強電解水に繭糸を浸漬することで抽出されたセリシン抽出液を素材表面に付着させて乾燥させた後、天然物から抽出された天然成分を含む溶液を付着させて乾燥させることを特徴とする素材の改質加工方法。
  2. 前記素材は、合成樹脂材からなることを特徴とする請求項1に記載の素材の改質加工方法。
  3. 前記合成樹脂材は合成繊維であり、前記天然成分は天然色素成分であることを特徴とする請求項2に記載の素材の改質加工方法。
  4. 前記合成樹脂材は合成繊維からなる布帛であり、前記天然成分は天然色素成分であることを特徴とする請求項2に記載の素材の改質加工方法。
  5. 前記合成繊維は、ポリエステル系合成繊維であることを特徴とする請求項3又は4に記載の素材の改質加工方法。
  6. 前記セリシン抽出液は、分子量3万以上で平均分子量6万7千のセリシンを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の素材の改質加工方法。
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