JP3973427B2 - プラスチックパイプの接続方法及び接続構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチックパイプの接続方法及び接続構造に関し、さらに詳しくは、繊維補強材で補強された2本のプラスチックパイプの管端同士を強固に連結する接続方法および接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックパイプは金属パイプに比べて種々の点で利点があるため流体の輸送手段として広く使用されている。例えば、金属に比べて軽量であるため施工性に優れ、酸化しにくいため耐蝕性に優れ、かつ可撓性であるため耐震性に優れている。また、金属に比べて可撓性であるため、製造工場で製造したパイプをリールに連続的に巻き上げることができ、それを施工現場に運搬することにより長距離を継目無しの状態に敷設することができる。
【0003】
しかし、例えば口径50cm以上の大口径プラスチックパイプの場合には、リールに巻き上げることが不可能になるため、5〜20m程度の長さに切断した状態にして施工現場に運搬し、1本ずつ管端同士を融着接合するようにしなければならない。しかし、繊維補強材で補強されているプラスチックパイプの場合には、管端同士を単に融着接合するだけでは接合箇所の引張り強度が不足することがある。また、繊維補強材が融着部に介在することにより、接続部のシール性が悪化するということがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を実質的に管軸方向に配列するように挿入したプラスチックパイプの管端同士を接続するに際し、接続部の強度をパイプ本体と同等以上にすると共に良好なシール性を達成するプラスチックパイプの接続方法及び接続構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明のプラスチックパイプの接続方法は、樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を実質的に管軸方向に配列するように挿入したプラスチックパイプの管端同士の接続方法であって、両管端からそれぞれ前記外層を切除すると共に、前記繊維補強材を反転させて前記内層を露出させ、該内層同士をバット融着した後、前記反転させた繊維補強材を再び前記内層の外周に戻す際に該繊維補強材の内側及び外側の方に、樹脂を含浸した繊維補強材を管軸方向に配列したシート層をそれぞれ両管端に跨がるように配置することを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明のプラスチックパイプの接続構造は、樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を実質的に管軸方向に配列するように挿入したプラスチックパイプの管端同士の接続構造であって、両管端からそれぞれ前記外層を切除すると共に、前記内層同士をバット融着し、前記繊維補強材の内側及び外側の方に、樹脂を含浸した繊維補強材を管軸方向に配列したシート層をそれぞれ両管端に跨がるように配置した構成からなることを特徴とするものである。
【0007】
上記のように接続を行うプラスチックパイプの管端から外層を切除すると共に、繊維補強材を反転させて内層を露出状態にし、繊維補強材を遠ざけた状態で内層同士だけでバット融着するため、融着部に繊維補強材を混入させることなく確実にシールすることができる。さらに、内層同士をバット融着した後は、反転させた繊維補強材を再び前記内層の外周に戻す際にその内側及び外側の方に、樹脂を含浸した繊維補強材を管軸方向に配列したシート層をそれぞれ両管端に跨がるように配置するため、その接続部をプラスチックパイプの本体部(非接続部)と同等以上に大きな強度にすることができる。
【0008】
さらに好ましくは、接続部の最外周に樹脂層を被覆するとよく、この樹脂層の被覆により接続部の強度とシール性を一層向上すると共に、外観を良好にすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、管端同士を接続する対象とするプラスチックパイプは、樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を実質的に管軸方向に配列するように挿入した構成からなる。ここで繊維補強材を実質的に管軸方向に配列とは、繊維補強材の繊維の長手方向が管軸方向に対して0°〜30°の角度範囲にあることを意味する。このプラスチックパイプは水深300m以上の深海から深層水を汲み上げるための輸送管として有効である。
【0010】
2本のプラスチックパイプの管端同士を接続する方法は、まずプラスチックパイプの管端から外層を管軸方向に一定長さ除去する。さらに、外層を除去した領域を被覆している繊維補強材の部分を剥離するように反転させ、内層端部を露出状態にする。
【0011】
両管端の内層を露出状態にしたら、それぞれの内層の端部を溶融し、互いに接圧することによりバット融着する。このように内層端部を露出状態にし、繊維補強材を反転させた状態にしてバット融着するため、融着部に繊維補強材を混入させることなく良好なシール性を有するように融着させることができる。
【0012】
内層の端部同士をバット融着した後は、反転状態にしてある上記の繊維補強材を元の内層の外周を覆うように戻す。このように繊維補強材を元の位置に戻す際に、戻す前の内層表面および戻した後の繊維補強材の外側の方に、樹脂を含浸した繊維補強材を実質的に管軸方向に配列したシート層をそれぞれ両管端に跨がるように配置する
【0013】
ここでシート層を形成する繊維補強材が実質的に管軸方向とは、繊維補強材の繊維の長手方向が管軸方向に対して0°〜30°の角度範囲にあることを意味する。このシート層の繊維補強材の配列方向と反転状態を戻した繊維補強材の配列方向とは一致していることが好ましいが、それぞれが管軸方向に対して0°〜30°の範囲内にあれば互いに異なっていてもよい。
【0014】
このように反転状態から戻した繊維補強材の内側および外側の方にシート層を配置することにより、内層端部の融着接続部をプラスチックパイプの本体部(非接続部)と同等以上に大きな強度にすることができる。
【0015】
上記シート層は、作業現場において繊維補強材に樹脂を含浸させながら施工されるが、これに代えて、予め未硬化樹脂が含浸されているプリプレグシートを使用するようにしてもよい。プリプレグシートの場合は、仮止めをしておき、その状態で加熱処理することにより加熱硬化させるようにすればよい。
【0016】
上記のように樹脂を含浸したシート層の配置による補強が完了したら、その最外周に樹脂層を被覆するとよい。樹脂層を被覆することにより、バット融着した内層同士の接続部の強度向上と共にシール性も向上し、かつ外観を良好にすることができる。
【0017】
樹脂層を設ける方法としては、樹脂パイプ又は樹脂チューブで外側補強層の外周を覆ったのち、ヒータ加熱により融着させるとか、接着剤を利用して接着するとか、或いは熱収縮により密着させるなどがある。また、樹脂テープを螺旋状に巻き付けて接着剤で接着するとか、加熱により融着してもよい。
【0018】
本発明において、プラスチックパイプの内層、外層および樹脂層を構成する樹脂としては、熱融着が可能な熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステルなどを使用することができる。中でもポリエチレンが好ましい。
【0019】
本発明において、プラスチックパイプの内層と外層の間に補強用に挿入する繊維補強材や、補強用に挿入されるシート層に使用される繊維補強材には、連続する繊維フィラメント束が好ましく使用される。例えば、複数本の繊維フィラメント束を平行に引き揃え、これら繊維フィラメント束を保持シートにより面状に支持するようにしたものが好ましい。保持シートとしては、図8に例示するように、経糸と緯糸とを粗い密度で係合させたメッシュ状又はネット状のシートのほか、片面に接着剤を塗布した合成樹脂フィルム或いは合成繊維不織布などであってもよい。この場合の保持シートは片面でもよいが、繊維フィラメント束を両側から挟むように両面に使用するようにしてもよい。
【0020】
繊維補強材を構成する繊維としては、補強効果を有するものであれば特に種類は限定されない。例えば、パラ系全芳香族ポリアミド繊維、ポリ−P−フェニレンベンズビスオキサゾール繊維(PBO繊維)、液晶性ポリエステル繊維、炭素繊維、ガラス繊維などを挙げることができ、これらの中でも特にパラ系全芳香族ポリアミド繊維が好ましい。
【0021】
また、上記シート層やプリプレグシートに含浸させる樹脂には熱硬化性樹脂が使用され、その熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などを使用するとよい。この樹脂は施工時は未硬化状態であり、施工後の熱処理により硬化させられる。
【0022】
本発明の接続方法が適用されるプラスチックパイプの口径(呼び径)は特に限定されない。しかし、好ましくは、リールに連続的に巻き上げることが難しい大口径のプラスチックパイプ、特に口径50cm以上のプラスチックパイプに適用する場合に好適である。
【0023】
以下、本発明のプラスチックパイプの接続方法を、図を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1において、30,30' は、互いに管端同士を接続しようとするプラスチックパイプである。これらプラスチックパイプ30,30' は、それぞれ内層31と外層32が樹脂から管状に成形され、同心状に配置されている。この内層31と外層32との間の環状空間にシート状の繊維補強材10が実質的に管軸方向に挿入されて補強層33を形成している。この繊維補強材10の管軸方向に対する配列角度は0°〜30°の範囲である。
【0025】
2本のプラスチックパイプ30,30' の管端同士を接続する方法は、まず図2に示すように、各プラスチックパイプ30,30' の管端から外層32,32を一定長さL,L’ずつを切除する。この外層32が切除された領域を被覆していた繊維補強材10を内層31の表面から剥離するようにラッパ状に反転させ、その内層31を露出状態にする。
【0026】
外層32を切除する長さL,L’は特に限定されないが、内層31を十分な長さ露出させて、バット融着の際に繊維補強材10が融着部に及ばないようにする長さであればよい。また、長さLとL’とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0027】
次いで、上記のように露出状態にした内層31,31の端部をそれぞれ溶融したのち、いずれか一方を他方に押圧するか、或いは両方を同時に突き合わせ押圧することにより、図3のように端部同士をバット融着する。このようにバット融着する際、内層31の端部を露出状態(裸状態)にし、端部に繊維補強材10が侵入しないようにしているため、シール性に優れた融着を行うことができる。
【0028】
内層31,31の端部同士のバット融着が終了すると、反転させていた繊維補強材10,10を、再び内層21,21の外周に戻して被覆するようにするが、その戻し作業の前に、図4に示すように、内層31,31同士のバット融着部の外周に、両管端に跨がるように繊維補強材10aに樹脂を含浸させたシート層34を配置する。シート層34の繊維補強材10aは管軸方向に配列しており、管軸方向に対して0°〜30°の角度範囲になっている。
【0029】
次いで、図5に示すように、シート層34の上に上記の反転させていた繊維補強材10,10を戻し、そのシート層34の外周を覆うようにする。そして、更に図6に示すように、上記のように戻した繊維補強材10,10の外側を別のシート層35で覆うようにする。シート層35はシート層34と同様に、実質的に管軸方向に配列した繊維補強材10aに樹脂を含浸させ、かつ両管端に跨がるように形成されている。このシート層35の繊維補強材10aも、管軸方向に対して0°〜30°の角度範囲になっている。
【0030】
本発明において、シート層35の繊維補強材10aの管軸方向とシート層34の繊維補強材10aの管軸方向とは必ずしも一致している必要はなく、それぞれ管軸方向に対し0°〜30°の角度範囲であれば、互いに同一角度であっても、異なっていてもよい。また、これらシート層34,35は、プリプレグシートに置き換えるようにしてもよい。
【0031】
上述のように接続されたプラスチックパイプ20,20' の管端同士の接続部は、図7に示すように最外層に樹脂層36を被覆するように設けるのがよい。樹脂層36の形態は特に限定されないが、例えば、樹脂チューブ又は樹脂パイプを被覆するか、樹脂テープを螺旋状に巻き付けたものがよい。接着は融着でもよく、接着剤でもよい。前者の樹脂チューブや樹脂パイプの場合は熱収縮による密着であってもよい。
【0032】
図8は、本発明において、プラスチックパイプ本体の補強用、シート層の補強用などに使用される繊維補強材を例示したものである。
【0033】
この繊維補強材10,10aは、撚り糸又は組紐からなる経糸6aと、無撚りマルチフィラメント糸からなる緯糸6bとからネット状又はメッシュ状に保持シート6を構成し、この保持シート6に対して、40回/m以下の甘撚が施された繊維フィラメント束5を2本毎の経糸6a,6a間に平行に、かつ緯糸6bの無撚りマルチフィラメント糸を上下に振り分けるように挿通して構成されている。このような構成により、繊維フィラメント束5が2本の経糸6a,6aの間で左右に位置ずれできるようになっている。
【0034】
なお、図8に示す例では、保持シートとしてネット状又はメッシュ状のシートが使用されているが、これに代えて樹脂シート又は不織布シートを使用し、その表面に複数本の繊維フィラメント束5を平行に引き揃えて貼り付けるようにしてもよい。また、樹脂シートや不織布シートの保持シートは、片側だけに使用してもよく、また2枚の間に繊維フィラメント束5を挟むようにしたものであってもよい。
【0035】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、接続を行うプラスチックパイプの管端から外層を切除すると共に、繊維補強材を反転させて内層を露出状態にし、繊維補強材を遠ざけた状態で内層同士だけでバット融着するため、融着部に繊維補強材を混入させることなく確実にシールすることができる。さらに、内層同士をバット融着した後は、反転させた繊維補強材を再び前記内層の外周に戻す際にその内側及び外側の方に、樹脂を含浸した繊維補強材を管軸方向に配列したシート層をそれぞれ両管端に跨がるように配置するため、その接続部をプラスチックパイプの本体部(非接続部)と同等以上に大きな強度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の接続方法に適用されるプラスチックパイプの接続前の管端部を一部断面にして示す側面図である。
【図2】図1の工程から、管端の一部を処理した状態を一部断面にして示す側面図である。
【図3】図2の工程から内層同士を融着した状態を示す側面図である。
【図4】図3の工程から、バット融着した内層の表面に最初のシート層を配置した状態を示す側面図である。
【図5】図4の工程から、反転させてあった繊維補強材を元に戻す状態を示す側面図である。
【図6】図5の工程から、戻した繊維補強材の外側に2番目のシート層を配置した状態を示す側面図である。
【図7】図6の工程ののち、樹脂層を被覆した状態を示す側面図である。
【図8】本発明に使用される繊維補強材の一例を一部断面にして示す斜視図である。
【符号の説明】
10,10a 繊維補強材
30,30' プラスチックパイプ
31 内層
32 外層
33 補強層
34,35 シート層
36 樹脂層

Claims (8)

  1. 樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を実質的に管軸方向に配列するように挿入したプラスチックパイプの管端同士の接続方法であって、両管端からそれぞれ前記外層を切除すると共に、前記繊維補強材を反転させて前記内層を露出させ、該内層同士をバット融着した後、前記反転させた繊維補強材を再び前記内層の外周に戻す際に該繊維補強材の内側及び外側の方に、樹脂を含浸した繊維補強材を管軸方向に配列したシート層をそれぞれ両管端に跨がるように配置するプラスチックパイプの接続方法。
  2. 前記接続箇所の最外周に樹脂層を被覆した請求項1に記載のプラスチックパイプの接続方法。
  3. 前記内層及び外層が熱可塑性樹脂からなる請求項1又は2に記載のプラスチックパイプの接続方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂がポリエチレンである請求項3に記載のプラスチックパイプの接続方法。
  5. 前記繊維補強材が、パラ系全芳香族ポリアミド繊維、ポリ−P−フェニレンベンズビスオキサゾール繊維、液晶性ポリエステル繊維、炭素繊維又はガラス繊維である請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチックパイプの接続方法。
  6. 前記プラスチックパイプの口径が50cm以上である請求項1〜5のいずれかに記載のプラスチックパイプの接続方法。
  7. 樹脂からなる管状の内層と外層との間に繊維補強材を実質的に管軸方向に配列するように挿入したプラスチックパイプの管端同士の接続構造であって、両管端からそれぞれ前記外層を切除すると共に、前記内層同士をバット融着し、前記繊維補強材の内側及び外側の方に、樹脂を含浸した繊維補強材を管軸方向に配列したシート層をそれぞれ両管端に跨がるように配置した構成からなるプラスチックパイプの接続構造。
  8. 前記接続箇所の最外周に樹脂層を被覆した請求項7に記載のプラスチックパイプの接続構造。
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