JP3973300B2 - 非水系二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型、軽量の電気機器や電気自動車の電源として好適な、非水系二次電池、特にリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化に伴い高容量の二次電池が求めれている。そのためニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池に比べ、よりエネルギー密度の高い非水系リチウム二次電池が注目されている。
【0003】
負極材料としては、最初、リチウム金属を用いることが試みられたが、充放電を繰り返すうちにデンドライト状のリチウムが析出し、セパレータを貫通して、正極にまで達し、短絡して発火事故を起こす可能性があることが判明した。
【0004】
また、特開昭57−208079には、リチウムを負極活物質とし、電極板として結晶化度が高い黒鉛を使用することが提案された。しかしながら、黒鉛は充放電の原理にリチウムイオンの黒鉛結晶中へのインターカレーションを利用するため、常温、常圧下では最大リチウム導入化合物のLiC6から算出される黒鉛の理論容量である372mAh/gを超える放電容量が得られないという問題があった。しかも、電解液との黒鉛材料の濡れ性の低さは、充放電初期のリチウム脱ドープ容量が、本来黒鉛材料が発現できるはずの350mAh/g以上の容量よりも低くなるという問題があった。
【0005】
そこで、黒鉛性炭素質物の表面を炭素化可能な有機物で被覆、焼成した炭素質物を用いることが知られているが、この材料は、充放電時の電位が、黒鉛のそれと同様リチウム金属の酸化還元電位に近く、しかも黒鉛性炭素質物より高容量を得られるという利点があるが、やはり黒鉛の理論容量である372mAh/gを超える容量は得られていない。
【0006】
更に、高容量を発現できる負極材料として、Al、Siなどリチウムのドープ、脱ドープが可能な金属を用いることが知られているが、この材料は電極表面での電解液の分解や、充放電サイクルに対する容量の低下に問題がある。
【0007】
これらの問題を解決するために、特開平1−298645、特開平1−255165などには、炭素質物で金属粉末を被覆した負極材料を用いたリチウム二次電池が開示されている。炭素質物で金属材料を被覆することにより、充放電に伴う金属部分の構造的劣化を抑制できる作用があるものと考えられる。また、特開平5−286763には、結晶性の異なる二種類の炭素質物と金属質物からなる電極材料が開示されており、一種類の炭素質物と金属質物をもう一種の炭素質物で被覆した材料の概念が提示されている。特開平10−3920には、炭素質物に混合する金属粒子の粒径を500nm以下とすることが開示されている。炭素質物中の金属粒子の粒径を小さくすることで、充放電時に生じる金属部分の大きな体積変化が抑制され、サイクル効率の向上に寄与することが考えられるが、炭素質物に金属微粒子を混合した後焼成しているため、金属の融解、凝集が起こり易く、制御が難しい。更に特開平8−241715には、金属酸化物などを炭素化又は黒鉛化可能な有機物を非酸化性雰囲気中で焼成した、炭素質物/金属複合負極材料が開示されているが、このときの焼成後の炭素質物に対する金属の割合は、40重量%以下に限られており、具体的に製造されたものは約20重量%以下のものである。更に、特開平9−213335には、無定型領域を持つ炭素質物と黒鉛構造領域を有す炭素質物中に、Mg、Al、Si、Ca、Snを含有させた負極を持つリチウム二次電池が提案されているが、金属質物の前駆体として、金属カーバイド、炭酸塩、蓚酸塩を用いている。金属カーバイドの中には高温でないと還元されにくい物が多く、また電極活物質中に残留すると容量の低下を引き起こす場合がある。また、炭酸塩、蓚酸塩は、マトリックスとなる炭素質物前駆体の炭素化が行われる以前に、低温で分解、金属に還元される物が多く、還元後金属同士が凝集、会合し大きな金属粒子に成長する場合がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、リチウムの充放電を行った場合に、従来の黒鉛系電極材料よりも高容量を発現でき、かつ負極活物質全重量に対する金属質物の含有率が大きいにも関わらず、従来の炭素質物/金属質物複合負極材料よりサイクル劣化が小さく、かつ高容量を発現できる負極を備えた非水系二次電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極、負極及び非水系溶媒中に電解質を溶解した電解液からなる非水系二次電池であって、
正極又は負極活物質が、金属質物a、炭素質物b及び黒鉛質物cからなり、
(イ)金属質物aは、Ia族、IIa族、チタン、バナジウム、タンタル、VIa族、マンガン、VIII族、Ib族、IIb族、IIIb族、IVb族、ヒ素、アンチモン及びビスマスから選ばれる元素の酸化物、硫化物、窒化物、セレン化物、テルル化物、硝酸塩、硫酸塩、該化合物を主成分とする複合化合物、及びこれら化合物の混合物から選ばれる熱処理後には電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出することができるようになる化合物を熱処理したものであり、
(ロ)該化合物粒子の二次粒子の平均粒径が10μm以下か、又は一次粒子の平均粒径が500nm以下である、
非水系二次電池である。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の詳細を述べる。
【0011】
「金属質物a」
本発明の金属質物aは、
(イ)Ia族、IIa族、チタン、バナジウム、タンタル、VIa族、マンガン、VIII族、Ib族、IIb族、IIIb族、IVb族、ヒ素、アンチモン及びビスマスから選ばれる元素の酸化物、硫化物、窒化物、セレン化物、テルル化物、硝酸塩、硫酸塩、該化合物を主成分とする複合化合物、及びこれらの混合物から選ばれる、熱処理後には電気化学的にリチウムを吸蔵及び放出することができるようになる化合物を熱処理したものであり、
(ロ)該化合物粒子の二次粒子の平均粒径が10μm以下か、又は一次粒子の平均粒径が500nm以下のものを選択する。
【0012】
上記化合物としては、上記要件を満たす限り限定なく用いることができるが、具体的には、Ag2O、Al2O3、Bi2O3、CdO、CrO2、Cr2O3、Cu2O、Fe2O3、In2O3、IrO2、MgO、MnO2、Mn2O3、OsO2、OsO4、PbO、Pb3O4、PbO2、PdO、PtO、RuO2、SnO、SnO2、SiO、SiO2,TaO2、TiO、Ti2O3、TiO2、V2O3、V2O4、V2O5、VO2、V2O3、WO、WO2、WO3、ZnO等の金属酸化物;Bi2S3、CdS、In2S3、PbS、PtS、SnS、SnS2、TaS2、TiS2、V2S3、V2S2、WS2、ZnS等の金属硫化物;Bi2Te3、SnTe、SnTe2、WTe2、ZnTe等の金属テルル化物;Si3N4、TaSi2、TiSi2、V3Si、V2Si、WSi2等の金属ケイ化物;AlN、TaN、W2N、WN等の金属窒化物;これら前述の金属化合物から選択されるものの複合金属化合物;又はこれらとアルカリ金属の複合酸化物;アルカリ土類金属との複合酸化物;前述のいずれかの金属化合物同士の複合金属化合物である。更には、これらのものから選択された化合物の混合物である。
【0013】
該化合物粒子の二次粒子の平均粒径が10μm以下、特に10〜0.01μm、好ましくは7〜0.05μm、更に好ましくは5〜0.1μm、又は一次粒子の平均粒径が500〜1nm、好ましくは400〜1nm、更に好ましくは400〜3nmのものを用いることができる。平均粒径が該範囲より大きいと、(1)熱処理後においても完全に金属質物まで還元されにくい、(2)粒径が大きい物を全量還元できるような温度まで熱処理温度を引き上げるか、あるいは熱処理時間を長くする等の工程を行うと、絶縁性の炭素質物が多量に形成され、負極容量の低下につながる、(3)炭素質物前駆体と混合する場合には、不均一な混合形態となるおそれある、等の問題が生じる可能性がある。また、前述したような化合物の代わりに、金属そのものを炭素質物前駆体と混合し、熱処理すると、金属の融点が、炭素質物前駆体の炭素化が始まる温度以下の物質が多いため、金属同士の融着がおこり、熱処理後には炭素質物と分離したり、たとえ炭素質物中に取り込まれても大きく粒成長してしまい、負極としたときサイクルの維持率が悪くなる。
【0014】
本発明に使用される該化合物粒子は、例えば平均一次粒子の平均粒径10nmのシリカ超微粒子、アルミナシリカの超微粒子、酸化錫、又は酸化錫と酸化アンチモンの複合金属酸化物の一次粒子の平均粒径5nmの超微粒子が特に好ましい。またこれらの粒子を溶媒に分散させたゲル、更には酸化錫の表面を有機物で被覆した一次粒子の平均粒径10nmの酸化錫ゾル、これを溶媒に分散させたゲル等は特に好ましい。
【0015】
特に上記の化合物から、異なる金属種を含む二種類以上の化合物を選択し、加熱処理後、使用することで、負極活物質内で共融金属あるいは金属間化合物を作らせることも可能である。適当な金属種を選択すると、単一種の金属化合物を用いた場合よりも、充放電サイクルに伴う容量の維持や高容量の発現に対し好ましい影響を生じさせることができる。化合物の組み合わせについては、従来公知の組み合わせが可能であるが、該化合物の熱処理後の態様を、例えばBinary alloy phase diagrams, Ternary alloy phase diagramsに掲載されているような合金種を参考に選択することができる。具体的には錫、シリコン、アルミニウム、亜鉛、鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、金、銀、銅、ニッケル、白金、アンチモン、ヒ素を含む金属化合物から二種類以上の組み合わせとして用いることが好ましく、熱処理後、錫アンチモン、錫銅、錫ニッケル、錫シリコン、錫カルシウム、錫ストロンチウム、アルミニウムシリコン等となるような組み合わせは特に好ましい。
【0016】
「炭素質物bの前駆体」
本発明で述べる「炭素質物bの前駆体」とは、熱処理された後は、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な性質を有する有機物である。
【0017】
具体的には、炭素化可能な有機物としては、液相で炭素化が進行する軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチや、乾留液化油などの石炭系重質油や、常圧残油、減圧残油等の直流系重質油、原油、ナフサなどの熱分解時に副生するエチレンタール等分解系重質油等の石油系重質油、あるいは以上のものを炭素化が進む以下の温度で蒸留、溶媒抽出等の手段を経て固化したもの;更にアセナフチレン、デカシクレン、アントラセンなどの芳香族炭化水素、フェナジンやアクリジンなどの窒素含有環状化合物、チオフェンなどの硫黄含有環状化合物;30MPa以上の加圧が必要となるがアダマンタンなどの脂環があげられる。炭素化可能な熱可塑性高分子としては、炭素化に至る過程で液相を経るビフェニルやテルフェニルなどのポリフェニレン;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラールなどのポリビニルエステル類;ポリビニルアルコール等が挙げられる。また、以上に列挙した有機物や高分子に適量のリン酸、ホウ酸、塩酸等の酸類、水酸化ナトリウム等のアルカリ類を添加したものでもよい。更にこれらのものを100〜600℃、好ましくは200〜400℃で、酸素、硫黄、窒素及び/又はホウ素から選ばれる元素により、適度に架橋処理したものでもよい。適度な架橋構造を炭素質物又は炭素質物前駆体中に形成することにより、後述する金属質物を安定に系内に保持することができ、更に熱処理中に起こる金属質物の凝集を妨げる効果も生じる。
【0018】
これらの炭素質物の前駆体を熱処理した後の炭素質物の性質は、学振法によって規定されたX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が3.38Å以上、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が100Å以下のものを選択するとよい。
【0019】
「黒鉛質物c」
黒鉛質物である限り、限定なく用いることが可能であるが、炭素質物の前駆体を2,000℃以上の高熱で熱処理して得られた黒鉛質物、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、キッシュ黒鉛、これらの高純度精製品、加熱処理品、薬液酸化品、気相酸化品、これら黒鉛質物を1,800〜3,200℃程度の高温で再加熱処理したもの、黒鉛の周りを炭素質物で覆った構造を持つ多相黒鉛品、あるいはこれらのものの混合物が好ましい。これらの黒鉛質物のうち、その平均粒径が1〜25μmのものは、初期サイクルでの効率及び充放電サイクルの維持に良好に寄与するので好ましい。特に該粒子径が2〜20μmのものは好ましく、2〜15μmのものは更に好ましい。黒鉛質物は、リチウムを充放電することにより負極容量の増加に寄与するが、前述した黒鉛質物の粒子径がこれ以上小さいと、黒鉛質物の比表面積が増大し、初回の不可逆容量の増加につながり、また、粉砕歪みから生じると思われる容量減少が生じる。粒子径がこれ以上であると長期の充放電サイクルの維持に対し、効果が小さくなる。
【0020】
また、学振法で定められたX線回折法から導かれる(d002)が3.45Å未満、及びc軸方向の結晶子の大きさである(Lc)が100Å以上であり、かつ波長5,143Åのアルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトルにおいて、1,580〜1,620cm-1の範囲に現れるピークの強度をIA;1,350〜1,370cm-1の範囲に現れるピークの強度をIBとしたときの;ピーク強度比R(=IB/IA)が0.5以下になるように、炭素質物前駆体を200℃以上の高温で熱処理して得られた黒鉛質物、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、キッシュ黒鉛、これらの高純度精製品、あるいはこれらのものの混合物からなるものは好ましい。特に上述の(Lc)が1,000Å以上であるもの、上述のピーク強度比Rが0.25以下であるものは更に好ましい。
【0021】
金属質物aを生成する化合物、炭素質物bの前駆体である有機化合物、及び黒鉛質物cの混合方法としては、従来の方法を限定なく用いることが可能であるが、具体的な方法としては、例えば、先に金属質物aを生成する化合物及び炭素質物bの前駆体である有機化合物を混合し、熱処理したものに、黒鉛質物cの粉体を上記の範囲内で添加してもよいし、金属質物aを生成する化合物と黒鉛質物cを十分に混合し、最後に炭素質物bの前駆体を添加してから熱処理を行ってもよい。更には、最初から上述した三成分すべてを一度に混合し、熱処理を行ってもよい。これら混合過程では、手作業や、撹拌子とスターラー等を用いた単純な混合では、原材料を十分均質に混ぜることが難しい場合が生じるが、それぞれの原材料の状態(固体、液体も含め)に合わせ、「マイクロス」R分散機、アキシャルミキサー、ホモジェナイザー、ホモディスパーザー、ペイントシェーカー、加熱式二軸混練機、加熱式ブレードニーダー、メカノヒュージョン、ボールミル、ジェットミル、ハイブリダイゼーションマシン、レディゲミキサーあるいはVブレンダー等の混合機、粉砕機、あるいは分級機などを用いると、原材料を均質に混合することが可能となる場合があるので、使用することが好ましい。これらの混合方法は、適宜二種類以上を組み合わせて用いてもよい。混合方法によっては、混合と同時に解砕や粉砕を行える装置もあり、それらを用いた場合には、混合前の金属質物aの原料化合物の一次粒子径又は二次粒子径、及び/又は黒鉛質物cの平均粒径が上記の範囲外にあっても、混合作業終了時に所定の粒径条件の範囲内に収まっていれば、これらも使用可能である。
【0022】
以上の原材料を熱処理する場合には、600〜2,000℃、より好ましくは700〜1,500℃、更に好ましくは800℃〜1,300℃で、好ましくは還元的雰囲気下で熱処理し、その後、解砕、あるいは粉砕を行い、平均粒径1〜100μm、好ましくは5〜50μmの平均粒径をもつ電極活物質として使用する。
【0023】
熱処理、解砕、粉砕等の工程を経て、最終調製された電極材料粉体において、粉体全体を100重量%としたとき、金属質物は、10〜65重量%、好ましくは20〜50重量%、更には30〜50重量%であると好ましい。なお、上記範囲は原料仕込み比ではなく、最終的な調製段階での含有量である。そのため、仕込み時には、最終段階での組成比を考慮して、原料の配合量を決定する必要がある。これより金属質物の含有量が少ないと、正極、セパレーター、電解液、その他電池部材とともにリチウム電池としたときに、実電池レベルでの大きな容量増加は見込めず、またこれ以上の含有量であると、金属質物を炭素質物で被覆することが難しく、これにより熱処理段階で金属質物同士が融解、凝集するなどして粒子径が大きく成長してしまうため、充放電サイクルに伴う容量の維持が難しくなる。
本発明の電極活物質は、負極活物質としての使用が好ましい。
【0024】
次に本発明の負極の製造方法について説明する。
本発明の負極の製造方法は、上記金属質物aを生成する化合物、炭素質物bの前駆体、及び黒鉛質物cを使用する限り、限定なく、従来公知の方法が採用可能である。例えば、有機化合物と、上記の粒径範囲にある金属酸化物とともに、上記範囲に平均粒径がある天然黒鉛を、加熱手段がある混合機で、最終組成が上記範囲内となる仕込み比で混合し、脱気・脱揮処理を行いつつ、600〜2,000℃で0.1〜12時間、好ましくは500〜1,500℃で0.5〜5時間ほど熱処理を行い、冷却後、この熱処理物を好ましくは1〜100μm、更に好ましくは平均粒径5〜50μmの範囲に、解砕又は粉砕して、活物質を得る。
【0025】
次に、この負極活物質を用いて電池を製造する方法について説明をする。
上記該電極粉体に結着剤、溶媒等を加えて、スラリー状とし、銅箔等の金属製の集電体の基板にスラリーを塗布・乾燥することで電極とする。また、該電極材料をそのままロール成形、圧縮成形等の方法で電極の形状に成形することもできる。
【0026】
上記の目的で使用できる結着剤としては、溶媒に対して安定な、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン、特にリチウムイオンのイオン伝導性を有する高分子組成物が挙げられる。
【0027】
上記のイオン伝導性を有する高分子としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル化合物の架橋体高分子、ポリエピクロルヒドリン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等の高分子化合物に、リチウム塩、又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩を複合させた系、あるいはこれにプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の高い誘電率を有する有機化合物を配合した系を用いることができる。
【0028】
本発明に用いる該電極粉体と上記の結着剤との混合形態としては、各種の形態をとることができる。即ち、両者の粒子が混合した形態、繊維状の結着剤が電極粒子に絡み合う形で混合した形態、又は結着剤の層が粒子表面に付着した形態などが挙げられる。該電極粉体と上記結着剤との混合割合は、電極粉体100重量部に対し、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは、0.5〜10重量部である。これ以上の量の結着剤を添加すると、電極の内部抵抗が大きくなり、好ましくなく、これ以下の量では集電体と電極粉体の結着性に劣る。
【0029】
こうして作製した負極板と以下に説明する電解液及び正極板を、その他の電池構成要素であるセパレータ、ガスケット、集電体、封口板、セルケース等と組み合わせて二次電池を構成する。作成可能な電池は筒型、角型、コイン型等特に限定されるものではないが、基本的にはセル床板上に集電体と負極材料を乗せ、その上に電解液とセパレータを、更に負極と対向するように正極を乗せ、ガスケット、封口板とともにかしめて二次電池とする。
【0030】
電解液用に使用できる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の有機溶媒の単独、又は二種類以上を混合したものを用いることができる。
【0031】
これらの溶媒に0.5〜2.0M程度のLiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiCl、LiBr等の電解質を溶解して電解液とする。
【0032】
また、リチウムイオン等のアルカリ金属カチオンの導電体である高分子固体電解質を用いることもできる。
【0033】
正極体の材料は特に限定されないが、リチウムイオンなどのアルカリ金属カチオンを充放電時に吸蔵、放出できる金属カルコゲン化合物からなることが好ましい。そのような金属カルコゲン化合物としては、バナジウムの酸化物、バナジウムの硫化物、モリブデンの酸化物、モリブデンの硫化物、マンガンの酸化物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、チタンの硫化物及びこれらの複合酸化物、複合硫化物等が挙げられる。好ましくは、Cr3O8、V2O5、V5O13、VO2、Cr2O5、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2V2S5MoS2、MoS3VS2、Cr0.25V0.75S2,Cr0.5V0.5S2等である。また、LiMY2(Mは、Co、Ni,Fe等の遷移金属、YはO、S等のカルコゲン化合物)、LiM2Y4(MはMn、YはO)、あるいはこれらの酸化物の不定比化合物、WO3等の酸化物、CuS、Fe0.25V0.75S2、Na0.1CrS2等の硫化物、NiPS3、FePS3等のリン、硫黄化合物、VSe2、NbSe3等のセレン化合物等を用いることもできる。これらを負極体と同様、結着剤と混合して集電体の上に塗布して正極体とする。
【0034】
電解液を保持するセパレーターは、一般的に保液性に優れた材料であり、例えば、ポリオレフィン系樹脂の不織布や多孔性フィルムなどを使用して、上記電解液を含浸させる。
【0035】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0036】
電極材料の評価方法
評価は以下のように行った。結着剤を用いペレット状に成形した上記の負極体を、セパレーター、電解液と共に、対極をリチウム金属とした半電池とし、2016コインセル中に組み立て、充放電試験機で充放電容量を評価したが、正極体とともに組んだ全電池でも同様な効果が期待できる。
【0037】
(参考例1)
二次粒子の平均粒径0.6μm(一次粒子の平均粒径400nm)の酸化錫(IV)(SnO2;福井新素材(株)製)微粒子粉と、コールタールピッチを熱処理して得た揮発分(以下、VMと称す)が22.1%で、ガンマーレジン量が25.0%で、かつ原子比O/Cが0.009である原料(以下、ピッチAと称す)を、空気の存在下で機械的エネルギーを付与しながら、280℃で1時間処理して得られた固体を粉末化した。得られた粉体を、回分式加熱炉で不活性雰囲気下にて、900℃に保ち、1時間熱処理した。不活性雰囲気下で放冷後、得られた粉体を解砕し、10〜25μmに整え、サンプル粉体とした。該粒子の炭素質物部分の粉末X線による(002)面の面間隔(d002)は3.47Å、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が23Åであった。また、元素分析から算出された該粉体内の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき47重量%であった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素質物により被覆された微分散された金属質物が観察された。
次いでこの粉体に、平均粒子径4.7μmの人造黒鉛粉体(d002:3.35Å;Lc:1,000Å以上;ラマンR値:0.21)を等量添加した。黒鉛混合後の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき24重量%であった。
なお、揮発分(VM)は、JIS−M8812に従って求め、ガンマーレジン量は、JIS−K2425に従ってトルエン不溶分量を測定して求めた。
また、酸素含有量(原子比O/C)は、炭素及び酸素の重量含有率からそれぞれの原子量を用いて計算した。炭素の含有量は、全自動元素分析装置(パーキンエルマー社製「CHN計240C」)で測定した。酸素含有量は、酸素窒素分析装置(LECO社製「TC436」)を用い、試料10mgをニッケルカプセルに封入し、ヘリウム気流下において300Wで300秒、続いて5500Wで100秒加熱し、発生ガス中の二酸化炭素を赤外吸収より定量して求めた。
この電極材料サンプル2gに対し、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)のジメチルアセトアミド溶液を固形分換算で10重量%加えたものを撹拌し、スラリーを得た。このスラリーを銅箔上に塗布し、80℃で予備乾燥した。更に圧着したのち、直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、110℃で減圧乾燥をして電極とした。
得られた電極に対し、電解液を含浸させたポリプロピレン製セパレーターをはさみ、リチウム金属電極に対向させたコイン型セルを作製し、充放電試験を行った。電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを容量比1:1の比率で混合した溶媒に過塩素酸リチウムを1.0mol/Lの割合で溶解させたものを用いた。
基準充放電試験は、電流密度0.16mA/cm2で極間電位差が0Vになるまでドープを行い、電流密度0.33mA/cm2で極間電位差が1.5Vになるまで脱ドープを行った。
容量値は、コイン型セル3個について各々充放電試験を行い、初回充放電時の脱ドープ容量の平均で評価した。また、サイクルの維持については、第4回目、第15回目、及び第30回目の脱ドープ容量を初回の脱ドープ容量で割った値の100分率で評価した。
【0038】
【数1】
【0039】
(n=4,30)
結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(参考例2)
二次粒子の平均粒径2μmの酸化錫(IV)(SnO2;和光純薬試薬)粉を、石油系ピッチであるエチレンヘビーエンド(三菱化学製)とともに、室温で「マイクロス」R分散機により撹拌、均一混合した。得られたスラリー状の混合物を回分式加熱炉で窒素/酸素混合雰囲気下にて350℃で1時間熱処理し、その後1,100℃に保ち、更に1時間熱処理した。不活性雰囲気下で放冷後、得られた粉体を粉砕し、10〜25μmに整えサンプル粉体とした。該粒子の炭素質物部分の粉末X線による(002)面の面間隔(d002)は3.46Å、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が34Åであった。元素分析から算出された該粉体内の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき83重量%であった。これを平均粒子径2.3μmの天然黒鉛粉体(d002:3.35Å;Lc:1,000Å以上;ラマンR値:0.19)と等量混合し評価した。黒鉛混合後の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき42重量%であった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素質物により被覆された微分散された金属質物が観察された。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例1)
二次粒子の平均粒径10μmの一酸化ケイ素(SiO;高純度化学)粉と、石油系ピッチであるエチレンヘビーエンド(三菱化学製)を、常温でペイントシェーカーにより撹拌、均一混合した以外は、参考例1と同様に操作した。元素分析から算出された該粉体内の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき55重量%であった。これを参考例1で用いた人造黒鉛粉体と等量混合し、評価した。黒鉛混合後の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき28重量%であった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素質物により被覆された微分散された金属質物が観察された。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0043】
(参考例3)
硫酸錫(II)(SnSO4;和光純薬試薬)19gを純水100gに溶解させ、これを界面活性剤であるポリプロピレンオキシド(平均分子量1,000)20g、及び石油系ピッチであるエチレンヘビーエンド(三菱化学製)、及び参考例1で用いた人造黒鉛を添加し、常温でペイントシェーカーによりに振とう、撹拌し、均一混合した。得られたスラリー状の混合物を回分式加熱炉で還元雰囲気下にて1,100℃に保ち、1時間熱処理した。放冷後、得られた粉体を粉砕して10〜25μmに整え、サンプル粉体とした。熱処理後に元素分析から算出された該粉体内の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき25重量%、黒鉛の含有量は51重量%であった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素質物により被覆された微分散された金属質物及び黒鉛が観察された。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0044】
(参考例4)
酸化錫(IV)微粒子の表面を有機物で被覆した一次粒子の平均粒径5nmのものを、石油系ピッチであるエチレンヘビーエンド(三菱化学製)に添加し、室温で「マイクロス」R分散機により、均一混合した。得られたスラリーを、回分式加熱炉で不活性雰囲気下にて900℃に保ち、1時間熱処理した。不活性雰囲気下で放冷後、得られた粉体を解砕し、10〜25μmに整え、サンプル粉体とした。該粒子の炭素質物部分の粉末X線による(002)面の面間隔(d002)は3.46Å、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)は23Åであった。また、元素分析から算出された該粉体内の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき62重量%であった。次いでこの粉体に、平均粒径4.7μmの人造黒鉛粉体(d002:3.35Å;Lc:1,000Å以上;ラマンR値:0.21)を等量添加した。黒鉛混合後の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき31重量%であった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素質物により被覆された微分散された金属質物が観察された。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0045】
(参考例5)
参考例1で用いた二次粒子の平均粒径0.6μmの酸化錫(IV)微粒子粉と、前記ピッチA、及び平均粒径1.5μmの人造黒鉛(d002:3.36Å;Lc:970Å;ラマンR値:0.25)を加熱加圧式ニーダーにより250℃、大気中で撹拌、均一混合しつつ粉体化した。得られた粉体を、回分式加熱炉で不活性雰囲気下にて900℃に保ち、1時間熱処理した。不活性雰囲気下で放冷後、得られた粉体を解砕して10〜25μmに整え、サンプル粉体とした。該粒子の炭素質物部分の粉末X線による(002)面の面間隔(d002)は3.47Å、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)は23Åであった。また、熱処理後に元素分析から算出された該粉体内の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき29重量%、黒鉛の含有量は51重量%であった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素質物により被覆された微分散された金属質物及び黒鉛が観察された。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0046】
(参考例6)
参考例1における金属質物部分が、酸化錫(IV)・酸化アンチモン分子混合酸化物の微粒子の表面を有機物で被覆した一次粒子の平均粒径5nmのものを、熱処理後のアンチモンと錫の重量比がSn:Sb=9:1となるように調整し、熱処理後に元素分析から算出された炭素質物/金属質物複合粉体内の金属質物部分の含有量が、粉体全体を100重量%としたとき53重量%である以外は、同様に操作した。該粒子の炭素質物部分の粉末X線による(002)面の面間隔(d002)は3.47Å、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)は23Åであった。次いでこの粉体に、参考例1で用いた平均粒径4.7μmの人造黒鉛粉体(d002:3.35Å;Lc:1,000Å以上;ラマンR値:0.21)を等量添加した。黒鉛混合後の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき27重量%であった。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0047】
(参考例7)
一次粒子の平均粒径5nmの酸化錫(IV)・酸化アンチモンの分子状混合酸化物の微粒子を、アンモニア性水溶液(pH10.8)に分散したのものを、水溶性フェノールエマルジョン(群栄化学製)に添加し、ホモディスパーザーにより室温で撹拌した。得られたスラリー状の物を不活性ガス雰囲気下、100℃で3時間熱処理し、固化させた。これを軽く解砕し、得られた粉体を回分式加熱炉で不活性雰囲気下で900℃に保ち、1時間熱処理した。熱処理後のアンチモンと錫の重量比がSn:Sb=93:7となるように調整した。熱処理後に元素分析から算出された炭素質物/金属質物複合粉体内の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき57重量%であった。該粒子の炭素質物部分の粉末X線による(002)面の面間隔(d002)は3.49Å、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)は16Åであった。次いでこの粉体に、参考例1で用いた平均粒径4.7μmの人造黒鉛粉体(d002:3.35Å;Lc:1,000Å以上;ラマンR値:0.21)を等量添加し、Vブレンダーにより混合した。黒鉛混合後の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき29重量%であった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素質物により被覆された微分散された金属質物が観察された。電極製造方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0048】
(参考例8)
一次粒子径10nmのアルミノシリカケゲルと、石油系ピッチであるエチレンヘビーエンド(三菱化学製)を常温で「マイクロス」R分散機により撹拌、均一混合した。得られたロウ状スラリーを、加熱式二軸混練機により150℃で加熱しながら、平均粒径4.7μmの人造黒鉛粉体(d002:3.35Å;Lc:1,000Å以上;ラマンR値:0.21)と混合、均一撹拌した。得られた半固体状固形物を、回分式加熱炉で不活性雰囲気下にて1,300℃に保ち、1時間熱処理した。不活性雰囲気下で放冷後、得られた粉体を解砕して10〜25μmに整え、サンプル粉体とした。該粒子の炭素質物部分の粉末X線による(002)面の面間隔(d002)は3.46Å、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)は46Åであった。また、熱処理後の、元素分析から算出された該粉体内の金属質部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき23重量%、黒鉛の含有量は53重量%であった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素質物により被覆された微分散された金属質物及び黒鉛が観察された。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
二次粒子の平均粒径0.6μm(一次粒子の平均粒径400nm)の酸化錫(IV)(SnO2;福井新素材(株)製)微粒子粉と、前記ピッチAを、空気の存在下で機械的エネルギーを付与しながら、280℃で1時間処理して得られた固体を粉体化した。得られた粉体を、回分式加熱炉で不活性雰囲気下にて900℃に保ち、1時間熱処理した。不活性雰囲気下で放冷後、得られた粉体を解砕し、10〜25μmに整えサンプル粉体とした。該粒子の炭素質物部分の粉末X線による(002)面の面間隔(d002)は3.47Å、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)は23Åであった。また、元素分析から算出された該粉体内の金属質部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき47重量%であった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素質物により被覆された微分散された金属質物が観察された。しかし、いずれの黒鉛も一切添加しなかった。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例2)
参考例1と同じ炭素質物前駆体を用い、金属質物部分が二次粒子の平均粒径20μmの酸化錫(IV)であり、元素分析から算出された熱処理後の炭素質物/金属質物複合粉体内の金属質物部分の含有量が、粉体全体を100重量%としたとき65重量%である以外は、添加した人造黒鉛粉体(d002:3.35Å;Lc:1,000Å以上;ラマンR値:0.21)の添加量も同様にした。黒鉛混合後の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき22重量%であった。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0051】
(比較例3)
金属質物部分が、平均粒径10μmの錫金属である以外は、比較例1と同様に行った。得られた粉体を解砕しようとしたところ、錫粒子の大きな成長(最大500μm程度)がみられ、電極には成形できなかった。元素分析から算出された熱処理後の炭素質物/金属質物複合粉体内の、金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき50重量%であった。
【0052】
(比較例4)
参考例1で、炭素質物前駆体を熱処理した炭素質物の水素/炭素の原子比が0.02、学振法によって規定されたX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が3.41Å、及びc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が280Åであり、元素分析から算出された熱処理後の炭素質物/金属質物複合粉体内の、金属質物部分の含有量が、粉体全体を100重量%としたとき51重量%である以外は、参考例1と同様に行った。得られた粉体を解砕しようとしたところ、錫粒子の大きな成長(最大200μm程度)がみられ、電極には成形できなかった。
【0053】
(比較例5)
参考例1で、平均粒径4.7μmの人造黒鉛粉体(d002:3.35Å;Lc:1,000Å以上;ラマンR値:0.21)に換え、平均粒径40.7μmの天然黒鉛粉体(d002:3.35Å;Lc:1,000Å以上;ラマンR値:0.03)を等量添加した以外は、同様に行った。黒鉛混合後の金属質物部分の含有量は、粉体全体を100重量%としたとき24重量%であった。電極作成方法及び評価方法は、参考例1と同様に行った。結果を表1に示す。
Claims (6)
- 金属質物aを生成する一酸化ケイ素粒子と、黒鉛質ではない炭素質物b前駆体と、黒鉛質物cとの混合物を、不活性雰囲気下で、800〜1300℃の温度範囲で熱処理して得られる、金属質物a、黒鉛質ではない炭素質物b、黒鉛質物cからなる非水系二次電池用負極活物質であって、
(i)一酸化ケイ素粒子の二次粒子の平均粒径が10μ m 以下か、又は一次粒子の平均粒径が500 nm 以下であり、
( ii )黒鉛質ではない炭素質物bの、学振法によって規定されたX線広角回折法によるc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が100Å以下であり、
( iii )黒鉛質物cの平均粒径が、1〜25μ m であり、
( iv )黒鉛質ではない炭素質物bと黒鉛質物cに対する金属質物aの割合が、全負極活物質を100重量%としたとき28〜65重量%であり、かつ
(v)金属質物aが炭素質物bに微分散している、
ことを特徴とする負極活物質。 - 金属質物aを生成する一酸化ケイ素粒子と黒鉛質ではない炭素質物b前駆体との混合物を、不活性雰囲気下で、800〜1300℃の温度範囲で熱処理した後、さらに黒鉛質物cを添加して得られる、金属質物a、黒鉛質ではない炭素質物b、黒鉛質物cからなる非水系二次電池用負極活物質であって、
(i)一酸化ケイ素粒子の二次粒子の平均粒径が10μ m 以下か、又は一次粒子の平均粒径が500 nm 以下であり、
( ii )黒鉛質ではない炭素質物bの、学振法によって規定されたX線広角回折法によるc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が100Å以下であり、
( iii )黒鉛質物cの平均粒径が、1〜25μ m であり、
( iv )黒鉛質ではない炭素質物bと黒鉛質物cに対する金属質物aの割合が、全負極活物質を100重量%としたとき28〜65重量%であり、かつ
(v)金属質物aが炭素質物bに微分散している、
ことを特徴とする負極活物質。 - 黒鉛質ではない炭素質物bが、学振法によって規定されたX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が、3.38Å以上である、請求項1又は2に記載の負極活物質。
- 黒鉛質物cが、黒鉛質ではない炭素質物b前駆体を2000℃以上の高温で熱処理して得られた黒鉛質物、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、キッシュ黒鉛、これらの高純度精製品、又はこれらの混合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の負極活物質。
- 黒鉛質物cが、X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が3.45Å未満であり、結晶子の大きさ(Lc)が100Å以上であり、かつ波長5143Åのアルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において、1580〜1620cm-1の範囲に現れるピークの強度をIA、1350〜1370cm-1の範囲に現れるピークの強度をIBとしたときの、ピーク強度比R(=IB/IA)が0.5以下になるように、黒鉛質ではない炭素質物b前駆体を熱処理して得られた黒鉛質物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極活物質。
- 負極活物質が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の負極活物質であることを特徴とする、正極、負極及び非水系溶媒中に電解質を溶解した電解液からなる非水系二次電池。
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