JP3972523B2 - カーボンペースト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可変抵抗器の低抵抗皮膜またはエンコーダ、配線回路の導電皮膜等の高導電性の印刷皮膜を形成するために用いられるカーボンペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の高機能化および低価格化が進むにつれて、可変抵抗器およびエンコーダ等の電子部品においても高性能で安価なものが要望されるようになっており、安価に製作できるカーボンペーストを用いて形成される印刷皮膜についてもその特性向上を要求されるようになっている。
【0003】
従来のカーボンペーストは、例えば、グリコール系、エーテル系等の所定の有機溶剤で溶解したフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、またはポリイミド樹脂等の合成樹脂バインダに、鱗片状グラファイトとカーボンブラックとの混合導電粉を混練分散しているものが一般的であった。
【0004】
この混合導電粉に配合される鱗片状グラファイトは、カーボンブラックよりも導電粒子径が大きいものであり、通常は、導電粉の粒子間に発生する接触抵抗成分を少なくするように、上記導電粒子径の大きい鱗片状グラファイトを配合し導電粉どうしの接触ポイント数を少なくすることによって、導電性が高い、つまり低抵抗の印刷皮膜を形成できるカーボンペーストを得るようにするものであった。
【0005】
そして、このカーボンペーストを、主として紙フェノール積層板、ガラスエポキシ積層板、セラミック基板、樹脂フィルムまたは樹脂成形体等の基板上に、スクリーン印刷等の厚膜形成法で所定パターンに印刷し、これを加熱・硬化させることによって所望の導電性の高い印刷皮膜を形成するものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来のカーボンペーストにより得られる導電性の高い印刷皮膜は、導電粉として配合された導電粒子径の大きい鱗片状グラファイトがその表面にも分散されて存在しているために、表面平滑性に劣るものとなり、その表面上に可動接点を弾接摺動させると、印刷皮膜の表面の凹凸によって可動接点と印刷皮膜との接触状態が不安定となりノイズが発生することがあるという課題があった。
【0007】
そこでこの課題を解決するために、配合する鱗片状グラファイトの導電粒子径を小さくするか、または一般的に導電粒子径の小さいカーボンブラックを多く配合する等の方法を用いると、印刷皮膜の表面平滑性は改善できるが導電性が悪くなってしまい、この構成においては導電性が良い。つまり低抵抗の印刷皮膜を形成することができるカーボンペーストを得ることは難しかった。
【0008】
一方、カーボンブラック協会発行のカーボンブラック便覧<第三版>(平成7年4月15日発行)には、所定の高温でカーボンブラックを熱処理することによりカーボンブラック自身の導電性を向上させることができる旨は記載されているが、その活用方法についてはこれからの研究課題となっていた。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、1200℃で1時間の熱処理されたカーボンブラックを用い、皮膜表面の平滑性がよくて高導電性の印刷皮膜を形成できるカーボンペーストを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のカーボンペーストは、1200℃で1時間の熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックとを重量比50:50〜80:20で配合した導電粉を所定の樹脂中に混練分散させるようにするものである。
【0011】
この発明によるカーボンペーストは、導電粉として導電粒子径が小さいカーボンブラックのみを用いたものとすることができ、しかもその中に高導電性のものを所定量で配合したものであるために、皮膜表面の平滑性がよくて高導電性の印刷皮膜を形成できるカーボンペーストを得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、1200℃で1時間の熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックとの重量比が50:50〜80:20で配合された導電粉を、樹脂中に混練分散したカーボンペーストとしたものであり、導電粉として導電粒子径が小さい二種類のカーボンブラックのみを用い、しかもその中の一種類が高導電性のものであるために、導電粒子径の大きい鱗片状グラファイトが配合された従来のカーボンペーストで得られる印刷皮膜と同等以上の高い導電性を有すると共に、かつ表面平滑性に優れた印刷皮膜を形成することができるカーボンペーストを得ることができ、その印刷皮膜の表面上を可動接点で弾接摺動させる場合において、ノイズ発生を容易に低減させることができるという作用を有する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、カーボンブラックの導電粒子径が100nm以下であるものであり、カーボンブラックの導電粒子径を小さいものに特定しているために、このカーボンペーストにより形成された印刷皮膜は、さらに表面平滑性に優れたものにでき、その印刷皮膜の表面上を可動接点で弾接摺動させる場合において、ノイズ発生をさらに容易に低減させることができるものを得られるという作用を有する。
【0014】
以下、本発明の一実施の形態としてのカーボンペーストについて説明する。
【0015】
まず、本実施の形態によるカーボンペーストを得るために、合成樹脂バインダとして所定の有機溶剤で溶解したフェノール樹脂を用い、これに導電粉として所定の高温で熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックを重量比40:60〜90:10で配合したもの、および熱処理されたカーボンブラックを単独で配合したものを混練して実施例のカーボンペーストを数種類製作した。
【0016】
なお、上記所定の高温で熱処理されたカーボンブラックの熱処理条件としては、1200℃の高温で1時間処理されたものを用いている。
【0017】
そして、上記のように作製されたカーボンペーストを、紙フェノール積層板の上面の両側部に形成された電極間にスクリーン印刷して、遠赤外併用熱風循環炉にて200℃で10分間加熱硬化させて印刷皮膜を形成し、そのシート抵抗及び表面粗度を測定した。
【0018】
これらのカーボンペーストの組成および、その特性の測定結果を(表1)に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
なお、表面粗度は表面粗度計にて測定した10点平均粗さである。
【0021】
また、比較例として鱗片状グラファイトと熱処理されていないカーボンブラックを所定量で配合した混合導電粉を用いた従来のカーボンペーストも数種類、さらに熱処理されていないカーボンブラックのみを配合したカーボンペーストを製作して、同様に印刷皮膜を形成し、その特性を調べた結果についても(表1)に示す。
【0022】
(表1)から明らかなように、従来の技術による比較例1及び2の導電粒子径が10000nmの鱗片状グラファイトを所定量配合したカーボンペーストで形成した印刷皮膜では、従来の技術にも説明したように、導電粉どうしの接触ポイント数が少なくなることに起因して、シート抵抗が25及び22Ω/Sqと低くなるが、表面粗度は10.9及び11.4μmと粗いものとなることが判る。
【0023】
次に、同じく比較例3及び4の導電粒子径5000nmの鱗片状グラファイトを所定量配合したカーボンペーストで形成した印刷皮膜については、比較例1及び2に比べて、シート抵抗が35及び30Ω/Sqと少し高くなると共に、その表面粗度は多少の良化が見られたが、まだ7.6及び7.8μmという粗いものとなっているものであった。
【0024】
また、比較例5の熱処理されていないカーボンブラックを単独で配合しているカーボンペーストで形成した印刷皮膜では、導電粉として鱗片状グラファイトよりも導電粒子径の小さいカーボンブラックのみを混練しているために、表面粗度が3.8μmと小さなものとなったが、シート抵抗は116Ω/Sqと高くなるという結果が得られた。
【0025】
これは、導電粉として導電粒子径の小さい通常の導電性のカーボンブラックのみを使用しているために、導電粉どうしの接触ポイント数が増えてその間の接触抵抗成分が増えたためにシート抵抗が上昇したと考えられるものである。
【0026】
また、導電粉として鱗片状グラファイトを配合せず熱処理されたカーボンブラックを単独で配合している実施例1のカーボンペーストによるものの場合についても、表面粗度は4.2μmと小さなものとなったが、シート抵抗が98Ω/Sqと高くなる結果が得られた。
【0027】
これは、カーボンブラックを熱処理すると、カーボンブラックの表面官能基の離脱及び残留重縮合炭化水素が少なくなることによりカーボンブラック自身の導電性は向上するが、この官能基の離脱により、このカーボンブラックはフェノール樹脂とのなじみが悪くなって樹脂中に均一に分散し難くなり、結果として導電路が十分形成されなかったためであると推測される。
【0028】
そこで、実施例2及び3に示すように、熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックを重量比50:50及び80:20で配合してカーボンペーストをそれぞれ製作し、これにより印刷形成した印刷皮膜の特性を測定した。
【0029】
その結果、シート抵抗は25及び28Ω/Sqと、従来の鱗片状グラファイトと熱処理されていないカーボンブラックを配合したカーボンペーストによる印刷皮膜と同等以上に低くできて、さらに表面粗度については3.6及び4.1μmという滑らかなものが得られることが判った。
【0030】
この実施例2及び3のカーボンペーストにより形成された印刷皮膜のシート抵抗が実施例1によるものよりも低下した要因は、樹脂となじみのよい熱処理されていないカーボンブラックが樹脂中に均一に分散し、それに伴って導電性の高い熱処理されたカーボンブラックも樹脂中に均一に分散するために、複数の導電路が印刷皮膜内に均一に形成されたためであると推測できるものである。
【0031】
更に実施例4及び5において熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックの導電粒子径を変えて同様に評価したところ、シート抵抗はその導電粒子径に関係なくほぼ同じ値が得られるが、導電粒子径を大きくするにつれてその表面粗度は大きくなり、その導電粒子径が100nmを越えると、鱗片状グラファイトを配合したものとほぼ同じレベルにまで劣化していくことが判った。
【0032】
そして、さらに熱処理したカーボンブラックと熱処理しないカーボンブラックの配合比率を変えて実施例6〜8のカーボンペーストを製作して、上記同様に特性を測定してみた。
【0033】
結果として、実施例6のように熱処理されていないカーボンブラックの配合量が60wt%、または、実施例7のように熱処理されたカーボンブラックの配合量が90wt%としたものについては、共にシート抵抗が上がっていく傾向が得られた。
【0034】
また、実施例8は、上記実施例2または3の中間的な配合比で形成されたカーボンペーストであり、この特性は、(表1)にも示すように、シート抵抗が21Ω/Sq、表面粗度が3.9μmとなり、最も良好な印刷皮膜が得られるものであることが判った。
【0035】
上記のように、本実施の形態によるカーボンペーストによって得られた印刷皮膜は、表面粗度はカーボンブラックの導電粒子径に依存し、シート抵抗は熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックの配合比で決定されることが判り、本発明の実施例における熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックの配合比を変化させた場合のシート抵抗の変化を図1に示す。
【0036】
同図からも明らかなように熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックの配合において重量比50:50〜80:20の範囲においてシート抵抗を低くでき、その表面粗度についても3.6〜4.1μmと小さくできる最適な配合比であるという結果が得られた。
【0037】
さらに上記最適な配合比のもので印刷形成した印刷皮膜の表面に可動接点等を弾接させてノイズ発生を確認すると、この印刷皮膜は上記のごとく表面平滑性に優れシート抵抗が低いものであるために、ノイズ発生が少なく高導電性のものにできることが確認できた。
【0038】
なお、上記配合比は、所望のシート抵抗のレベルに応じて適宜選択すればよいことは言うまでもないが、導電性の高い印刷皮膜を形成する場合は、上記比率とすることが最適であることは勿論である。
【0039】
【発明の効果】
以上のように本発明によるカーボンペーストは、樹脂中に混練する導電粉として1200℃で1時間の熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックを所定比率で配合したものを用いているために、表面平滑性がよくて、シート抵抗の低い高導電性の印刷皮膜を印刷形成することができ、この印刷皮膜においては、可動接点等をその表面に弾接摺動させた場合に、ノイズの発生を低減させることも可能となるという効果も奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるカーボンペーストを用いて形成された印刷皮膜のシート抵抗の特性図
Claims (2)
- 1200℃で1時間の熱処理されたカーボンブラックと熱処理されていないカーボンブラックとの重量比が50:50〜80:20で配合された導電粉を、樹脂中に混練分散したカーボンペースト。
- カーボンブラックの導電粒子径が100nm以下である請求項1記載のカーボンペースト。
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