JP3972477B2 - 電子機器部品およびそれに用いる耐熱性低誘電率化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はPWB(Printed wiring board)、MCM(Multi-chip module) 、T−BGA(Tape ball grid array)、TAB(Tape automated bonding)などのうちクロック周波数が500MHzを超えるものや表面保護膜、層間絶縁材料など電子部品に広く用いられる、耐熱性低誘電率化合物とそれを用いた電子機器部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年半導体素子の高周波化が進み、これに使用されるPWB、MCM、T−BGA、TABなどの周辺機器に使用される樹脂に、高耐熱性で低誘電率、低誘電正接が要求されている。また、電子機器部品用樹脂として考慮される主な特性として、成形性、吸水性、熱膨張率、弾性率、電気絶縁性などがある。
【0003】
しかし、従来から電子機器部品用絶縁樹脂として広く用いられてきたエポキシ樹脂やフェノール樹脂は高周波領域での誘電特性が悪く、高周波用樹脂として満足な特性が得られていない。シリコーン樹脂は電気特性は良いものもあるが、ガラス転移温度が低い。高耐熱性樹脂として知られているポリイミドは成形性が悪く、電気特性が非常に優れていることで知られているフッ素樹脂は加工性が悪い。このように高周波数化に対応した電子部品用絶縁樹脂として特に考慮される耐熱性、電気特性、取り扱い性すべての面で満足のいく樹脂は得られていない。
【0004】
さらに、電子機器部品用絶縁樹脂の誘電率が高いと、クロック周波数が500MHzを超えると、信号の遅延や誘電損失の増大といった問題が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、取り扱いが容易で耐熱性に優れた、低誘電率、低誘電正接の化合物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1に記載の発明は、(化1)で示される構造から構成されることを特徴とする耐熱性低誘電率化合物(Aは芳香環、R1〜R2は炭素数1〜8の鎖状アルキル基および炭素数3〜8の環状アルキル基、R3はエチレン性二重結合を含む基を表す。)である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、電子機器用導体パターンを備えた配線回路が1層または複数層に設けてあって、1層の場合であれば支持体もしくは支持体と該配線回路との境界部分に、複数層の場合であれば支持体もしくは該配線回路の層間に、電気絶縁層が備えられた電子機器部品において、該電気絶縁層に請求項1に記載の耐熱性低誘電率化合物を用いることを特徴とする電子機器部品。
【0008】
請求項3に記載の発明は、電子機器部品が、 PWB、MCM、T−BGA、TABのうち何れかであることを特徴とする請求項2記載の電子機器部品である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明における耐熱性誘電率化合物としては、電気特性に優れ、かつ柔軟性をもつシロキサン構造を用い、これに芳香環を組み込むことにより剛直性を増大させガラス転移温度の向上を図り、また二重結合を反応性基として導入することにより架橋による剛直性増大を図った。
【0010】
一般的に極性基の割合が高いと誘電率も高くなるといわれているが、接着剤等を用いずに他の樹脂や金属などと組み合わせて使うためにはぬれ性を確保しなければならず、ある程度の極性基も必要となってくる。最小限の極性基を構造に組み込みつつこれらの考えをもとに鋭意検討を重ねた結果、耐熱性に富む低誘電正接、低誘電率を示す化合物を見いだした。
【0011】
本発明における耐熱性低誘電率化合物中の芳香環Aとしては、
【0012】
【化2】
【0013】
などを挙げることができる。
【0014】
またR1、R2としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル等の炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数3〜8の環状アルキル基を挙げることができる。
【0015】
R3としては、
【0016】
【化3】
【0017】
などを挙げることができる。この中でも以下の
【0018】
【化4】
【0019】
が耐熱性および電気特性において好適である。
【0020】
本発明の化合物は、スピンコート法、浸漬法などの塗布方法により、金属板やガラスエポキシ板、フィルム、ガラス板、樹脂上などに塗布することで、PWBおよびT−BGA、TAB、MCM、表面保護膜、層間絶縁材料として使用することができる。
【0021】
【実施例】
<実施例1>
[プロペニルオキシ−2,4−ジブロモベンゼン(以下(1)とする)の合成]冷却管を備えた1Lの3つ口フラスコに2,4−ジブロモフェノール 25.19g (0.1mol)、アリルブロマイド 12.5g (0.103mol) 、炭酸カリウム 28g (0.203mol) 、ヨウ化ナトリウム 1.5g (0.01mol) 、アセトン 500mLを加え撹拌、環流させながら5時間反応を行った。これを蒸留にて精製することにより(1)を得た。
【0022】
[プロペニルオキシ−2,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(以下(2)とする)の合成]
メカニカルスターラー、滴下ろうと、冷却管を備えた500mL の4つ口フラスコに切削状Mg 6.08g (0.25mol)およびヨウ素を少量加え、ゆっくり撹拌しながら加熱した後、テトラヒドロフラン(THF)30mL を加え、さらにジメチルクロロシラン 28.39g (0.3mol)を加えた。そこにTHF35mL に(1)を32.35g(0.11mol) 溶解した溶液をゆっくりと約1時間かけて滴下し、その後環流させながら5時間反応を行うことにより(2)を得た。
【0023】
[プロペニルオキシ−2,4−ビス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼン(以下(3)とする)の合成]
窒素雰囲気下、冷却管、滴下ろうと、バブラーを備えた200mL の3つ口フラスコに無水エタノール20mL、ナトリウム0.28g (0.012mol)を加え、撹拌、環流させながら約1時間かけてゆっくりと(2)を22.5g(0.09mol)加えた。水素の発生が終わったら水酸化ナトリウム10.4g (0.26mol) 、水15mL、メタノール65mLの入った容器に激しく撹拌しながら加え、15分間放置した。その後水70mLに溶解した水酸化ナトリウム10.4g (0.26mol) を加え、ときどき撹拌しながら30分放置した。これを激しく撹拌した、リン酸二水素カリウム91.18g (0.67mol)、過剰の氷、水(total vol.450mL) の入った容器に加え、ろ過することにより(3)を得た。
【0024】
[耐熱性低誘電率化合物の合成]
100mL のなす形フラスコに、(3)を10g(0.035mol) およびトルエン50mLを加え、冷却管を備えたDean−Stark トラップを接続し、5時間加熱環流することにより、以下に示す構造の耐熱性低誘電率化合物を得た。
【0025】
【化5】
【0026】
<実施例2>
実施例1の場合のジメチルクロロシランの代わりにn−オクチルメチルジクロロシランを用い、そのほかの合成方法は実施例1と同様にして以下に示す構造の耐熱性低誘電率化合物を得た。
【0027】
【化6】
【0028】
<実施例3>
実施例1の場合のアリルブロマイドの代わりにアクリロイルクロライドを、ジメチルクロロシランの代わりにエチルメチルジクロロシランを用い、そのほかの合成方法は実施例1と同様にして以下に示す構造の耐熱性低誘電率化合物を得た。
【0029】
【化7】
【0030】
<実施例4>
実施例1の場合の2,4−ジブロモフェノールのかわりに2,6−ジブロモナフタレンを用い、アリルブロマイドの代わりにアクリロイルクロライドを用い、そのほかの合成方法は実施例1と同様にして以下に示す構造の耐熱性低誘電率化合物を得た。
【0031】
【化8】
【0032】
<実施例5>
実施例1の場合のアリルブロマイドの代わりにメタクリロイルクロライドを用い、ジメチルクロロシランの代わりにジエチルジクロロシランを用い、そのほかの合成方法は実施例1と同様にして以下に示す構造の耐熱性低誘電率化合物を得た。
【0033】
【化9】
【0034】
以上の実施例1〜5で得られた化合物を用い、以下のような特性評価を行った。
【0035】
銅板上に実施例1〜5の化合物をスピンコートし、150〜200℃で1時間加熱を行うことにより硬化膜を作製した。そして、JIS6481に規定された方法に準じて比誘電率および誘電正接の測定を行った。
【0036】
ポリイミドフィルムを貼った銅板上に、化合物をスピンコートし、150〜200℃で1時間加熱を行うことにより硬化膜を作製した。硬化膜をフィルムから剥離し、動的粘弾性測定法に従って硬化膜のガラス転移点を測定した。測定条件は10Hzとした。
【0037】
実施例1〜5のいづれにおいても高ガラス転移点を示し、低比誘電率、低誘電正接であった。これらをまとめた結果を以下の表1に示す。
【0038】
なお、比較例としてエポキシ樹脂(比較例1)
【0039】
【化10】
【0040】
フェノール樹脂(比較例2)
【0041】
【化11】
【0042】
ポリイミド(比較例3)の結果も併せて示す。
【0043】
【表1】
【0044】
以上の方法で、銅板上に作製した硬化膜上に、スパッタリング法により約3000Åの銅膜を作製し、更に電気メッキを行うことにより40〜50μmの銅膜を得た。そしてJIS6481に規定された方法に準じて、銅箔引き剥がし強さの測定を行ったところ、いずれも600gf/cm以上を示し、十分実用に耐えうることが分かった。
【0045】
次に、上記の実施例1〜5で得られた化合物を用い、PWBを製造した。
【0046】
ガラスエポキシ銅張積層板(FR4、日立化成工業製)の銅箔上にフォトレジスト(PMER、東京応化工業製)を塗布し、所定の温度でプリベークを行って約5μmの感光層を形成した。該感光層に内部配線層のパターンを有するフォトマスクを介して500J/cm2 の露光量で露光後、現像液にて現像を行うことによりレジストパターンを形成した。これを所定の温度でポストベークを行った後、50℃の塩化第二鉄液にてレジストパターン以外の銅箔をエッチングして、導体配線パターン形成した。
【0047】
導体配線パターンが形成された基板上に、実施例1〜5に記載の耐熱性低誘電率化合物を約20μm厚に塗布し、180℃にて硬化させ絶縁樹脂層を形成した。
【0048】
さらに、絶縁樹脂層の所定の位置にエキシマレーザ加工機にて50μmφのビアホールの形成孔を形成した。次に、スパッタリング法により薄膜導体層を形成した後、電気メッキにて約12μm厚の導体層を形成し、パターニング処理して導体配線パターンを形成した。
【0049】
以上の方法により得られたPWBは十分な半田耐熱性とメッキ密着性を示した。
【0050】
【発明の効果】
以上に示すように、本発明の耐熱性低誘電率化合物は、耐熱性に優れた低誘電率、低誘電正接材料であり、硬化は付加反応によって行われるため硬化時にガスや水を発生せず、平坦な膜が得られやすい。従って本発明の材料は誘電材料、耐熱性材料、絶縁材料等電子機器部品へ広く使用することが可能であり、実際にこれを用いたPWBは、半田耐熱性およびメッキ密着性を示しいる。したがって、この耐熱性低誘電率化合物は電子機器部品用樹脂として優れている。
Claims (3)
- 配線回路が1層または複数層に設けてあって、1層の場合であれば支持体もしくは支持体と該配線回路との境界部分に、複数層の場合であれば支持体もしくは該配線回路の層間に、電気絶縁層が備えられた電子機器部品において、該電気絶縁層に請求項1に記載の耐熱性低誘電率化合物を用いることを特徴とする電子機器部品。
- 電子機器部品が、 PWB、MCM、T−BGA、TABのうち何れかであることを特徴とする請求項2記載の電子機器部品。
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