JP3971935B2 - 四光波混合による伝送品質劣化を低減可能な光伝送装置および光伝送システム - Google Patents
四光波混合による伝送品質劣化を低減可能な光伝送装置および光伝送システム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバを用いた波長多重光伝送システムで生じる四光波混合(FWM:Four Wave Mixing)に起因する伝送品質劣化を低減可能な光伝送装置および光伝送システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光伝送システムの大容量化の手段として、波長の異なる複数の光信号を一本の光ファイバを用いて伝送する波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送システムが実用化されている。また、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)等の光ファイバアンプ(以下、光アンプ)は広い波長範囲に対して一括に増幅し得る特性を持つ。このため、WDMと光アンプとを組み合わせることにより、波長の異なる複数の光信号を一括して増幅するので、簡素な構成で、経済的、大容量かつ長距離伝送が実現可能である。
【0003】
しかしながら、このようなWDM光増幅伝送方式ではファイバへの光入力レベルが高くなるため、非線型効果という伝送特性を劣化させる問題が顕著化することとなった。そのような非線形効果として相互波長変調(XPM:Cross Phase Mudulation)、FWM、誘導ラマン散乱(SRS:Stimulatted Raman Scatering)による伝送品質劣化の問題がある。
【0004】
XPMは光ファイバへの2波以上の光入力信号が相互に位相変調し合い、さらに光伝送路が有する波長分散の影響を受けることによって、伝送波形の劣化を発生させるものである。ただしこのXPMに関しては、特開平7−74699に示すように分散補償器を光伝送路上に適当に配置することによって、XPMの発生に関与する波長分散を抑圧することが可能であり、波形劣化を回避することができる。
【0005】
一方、SRSは光ファイバへの波長多重入力信号光の一部が励起光として作用し、ファイバ中のより低周波数側の信号光と相互作用することによって、高周波数側の信号光から低周波数側の信号光へとエネルギーが移動する。このため、波長帯域によって光信号対雑音比(OSNR)の偏差が生じることがある。しかし、伝送路に入力される波長毎の信号光強度を適当に制御することにより、波長間のOSNRを均一化することができる(例えば、特願2001−167609)。
【0006】
FWMは2波長以上の波長多重された入力信号光が光ファイバへ入力した際に、非線形光学効果によって新たに光が発生し、信号光に対する干渉雑音となる。FWMは各種の光ファイバで発生し、その強さ(FWM光強度)は光ファイバの種類や光ファイバへの入力強度、あるいはポンプ光として作用する信号の波長間隔などに依存する。また、FWM光強度は光ファイバに収容されている波長多重数に比例して大きくなるため、WDM装置に収容される波長数が多く、入力される光強度が強いほど発生するFWMの光強度が増加することとなり、それによる影響が顕著に現れる。さらに、伝送距離が長くなると中継点が増加し、その結果FWM発生量が増加するため、現れる影響は一層顕著になる。
【0007】
従来のWDM装置における運用稼動状態は、収容される光信号の波長多重数や伝送距離が比較的少なかったため、FWMによる影響もそれほど大きくなかった。しかし、近年の通信トラヒックの増大に従い、WDM装置に対しても収容波長数の増加、および伝送距離の拡大が要求されるようになった。このため、FWMによる影響が軽視できないようになり、WDM装置において設計当初の想定収容波長を全て収容するとFWMによる影響が増大し、伝送不可能な状態になることが報告されている。
【0008】
従来、WDM装置を用いた伝送システムでは、FWMによって新たに発生する光の波長がどの信号光波長にも一致しないようにする方法が文献1(F. Forghieri、“Reduction of Four−Wave Mixing Crosstalk in WDM Systems Using Unequally Spaced Channels“、IEEE Photonics Technology Letters、6、pp.754−756、1994)に記載されている。
【0009】
また伝送路に励起光を入力し、信号光に分布定数型ラマン増幅利得を与えることで光ファイバに対する信号光の入力強度を低減し、FWMの発生効率を低減する方法が文献2(N. Takachio、“32x10 Gbps distributed Raman amplification transmission with 50GHz channel spacing in the zero dispersion wavelength region over 640km of 1.55μm dispersion shifted fiber”、1999年光ファイバ交際会議、Postdeadline Paper 9)や特開2001−217781に記載されている。
【0010】
また、これらの非線型効果による伝送品質劣化を最小化する設計法が文献3(J. Kani “Inter−wavelength−band nonlinear interaction and their suppression inmulti−wavelength−band WDM transmission systems”、IEEE Journal of Lightwave Technology、vol.17、November、1999)に記載されている。この方法によると、FWMによる伝送品質劣化が予想される信号光に対しては、それぞれの波長間隔が不等間隔になるように配置したり、一本の光ファイバ中を互いに逆向きに伝搬させることにより発生する非線形相互作用が低減するように設計する。これによって、前述の非線型効果による伝送特性劣化のうち、特にFWMに起因するものが最小化されることが記載されている。また、特開平8−97771には伝送ファイバの波長分散値が適当な組合わせとなるようにすることで、FWM光の発生を低減できることが示されている。
【0011】
しかしながら、これらの文献や発明に記された技術では、分布ラマン増幅用のポンプ光や光カプラが必要なため、システムのコストが高価なものとなる。また、波長毎に信号光強度偏差が発生するため、OSNRの偏差が発生する可能性がある。さらに、文献3の不等間隔配置法では、波長多重密度に制限を加えるため大容量伝送には不向きであるといった問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、波長分割多重伝送を行う光伝送装置において光ファイバ中で発生するFWMに起因する伝送品質劣化の低減方法を提供するとともに、波長多重密度に制限を受けない波長多重光伝送システムを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明はWDM光伝送装置において光ファイバ中で発生するFWMに起因する伝送品質劣化を低減するため、各スパン毎の光ファイバ伝送路で発生したFWM光強度を受信側で観測し、送信側における当該スパンを伝送するための光出力光強度を決定するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、FWMによる影響を説明するための図である。横軸は周波数、縦軸は光強度を示している。ここで、100(100−1〜5)は信号光と雑音光の和、101(101−1〜3)は発生したFWM光と雑音光の和、102は雑音光を示している。また、信号光とそれに最も隣接して発生しているFWM光との光強度の差分をFWMクロストークと定義する。例えば、103は信号光と雑音光の和100−2とFWM光と雑音光の和101−2とのFWMクロストークである。
【0015】
図1に示すFWM光の発生は、光ファイバへの波長多重光の入力光強度が大きく、また波長間隔が狭い、すなわち波長多重密度が高いほど光ファイバ伝送後の発生が顕著となり、さらに、発生したFWM光が信号光波長と重なると干渉雑音となる。また、発生するFWM光は伝送ファイバの分散値に大きく依存する。
【0016】
図2はFWMと伝送品質劣化との関係を示したものであり、横軸はFWMクロストーク量、縦軸はFWMによる受信感度劣化量を示す。ここでFWMによる伝送品質劣化は、信号波長の位相や偏波状態に大きく依存し、さらに、これらは時間的に変動することもあるため、伝送品質劣化も時間的に変動することとなる。従って、FWMクロストーク量が一定であっても、それによって生じる伝送品質劣化は変動することがある。例えば、図2において200は受信感度劣化の最悪状態であり、201は最良状態である。202はあるFWMクロストーク時における受信感度劣化最悪値と最良値との差分(変動量)である。
【0017】
図3はFWM発生量に影響を与える光ファイバの波長分散を説明するための図であり、アンプと光ファイバによって多段構成された光伝送路と、その各部位における光強度を模式的に示したものである。横軸は伝搬軸方向の距離、縦軸は光強度を示している。信号光強度300は伝送路302で失われた光強度を補償するために周期的に配置された光アンプ301(301−1〜4)で光増幅される。FWM光は光ファイバの分散値に大きく依存するが、一般的に光ファイバの分散値は伝搬軸方向に変動する。これは、アンプ301−1と301−2との間隔が数百キロメートルの伝送路であっても、実際には数キロメートルの短いファイバ302−1〜nが多段に接続されて構成されたものが多く、その接続された各光ファイバの特性が一様でないためである。従って、信号光強度300がファイバ入力後次第に減衰し、非線型効果が発生しなくなる地点310までの伝送路の分散値を把握しておくことが望ましい。
【0018】
しかし、伝搬軸方向の分散値を測定する際に、現状では十分な精度が得られていないことや、伝搬軸方向の分散値が把握できたとしても伝送路自体は既に敷設されている場合が多いため、それに対してもはや有効な対策を講じることができないこともある。
【0019】
そこで本発明では、光ファイバ伝搬後に発生するFWM光がある一定量になるように光ファイバへの入力信号光強度を制御し、時間変動を伴ったFWMによる伝送品質劣化が十分小さくなるような手段を提供する。
【0020】
図4は本発明の実施例における波長分割多重光伝送システムの基本的な装置構成である。図4において400は送信端局、401は中継局、402は受信端局を、また403は光ファイバ伝送路を示す。416はシステム全体の監視や制御を行うため、別途設けられた監視制御装置である。本構成では、4つの波長帯域毎(1530nm〜1545nm、1545nm〜1560nm、1570nm〜1585nm、1585nm〜1600nm)に別個の光アンプで増幅しており、それぞれBバンド、Rバンド、L1バンド、L2バンドと称する。また、各光アンプには、いずれもn個の別波長の光信号が多重されて入力するものとする。送信端局400の光送信器405(1)〜405(n)は、それぞれBバンド内の異なる波長にて光信号を送出する。送出された光信号は波長合波器406(1)にて波長多重された後、プリアンプ407(1)にて増幅され、波長合波器408へ入力される。同様にして、光送信器405(n+1)〜405(2n)から送出されたRバンドの波長信号光は波長合波器406(2)、プリアンプ407(2)にて、また、光送信器405(2n+1)〜405(3n)から送出されたL1バンドの波長信号光は波長合波器406(3)、プリアンプ407(3)にて、そして、L2バンドの波長信号光は波長合波器406(4)、プリアンプ407(4)にて波長多重および光増幅がなされる。波長合波器408では各プリアンプ407(1)〜407(4)から送出された光信号を波長多重して、光ファイバ伝送路403(1)へ送出する。
【0021】
中継局401では、入力した波長多重光を波長分波器409にて、前記の4つの帯域(B、R、L1、L2)へ分波し、各ラインアンプ410(1)〜410(4)で、帯域毎に光ファイバ403(1)における伝送損失を補償すべく光増幅する。増幅後の光信号は波長合波器4111にて再度波長多重され、光ファイバ伝送路403(2)へ送出される。
【0022】
この後、不図示の複数の中継局にて同様に光増幅された後、最終スパンの光ファイバ403(N)を経て、多重光信号は受信端局402へ到達する。受信端局402では、入力した波長多重光を波長分波器412にて前記の4つの帯域(B、R、L1、L2)へ分波した後、各ポストアンプ413(1)〜413(4)でそれらの帯域毎に光増幅する。増幅された光信号は、各光分波器414(1)〜414(4)にて個々の光波長信号へ分波された後、各々光受信器415にて受信される。
【0023】
次にFWMによる伝送品質劣化を低減する方法を図5を用いて説明する。図5は光ファイバ403によって接続された光伝送装置401−1および401−2内部の光アンプ410−1および410−2相互間で行う制御方法を説明するための最小限の構成要素や信号を簡略化して示したものである。例えば、光伝送装置401−1と401−2および光アンプ410−1と410−2は、いずれもそれぞれ図4における中継局401および光アンプ410(1)に相当する。
【0024】
なお、図5では光伝送装置401中の1つのアンプ410についてのみ示しているが、図4に示すような帯域毎に複数の個別のアンプで増幅する場合には、各帯域毎のアンプ相互間で以下に説明する制御機構を有することとなる。
【0025】
以下、具体的な制御方法を説明する。
(1)図2に示したような、FWMクロストークと受信感度劣化の変動特性を予め理論的あるいは実験的に算出しておく。なお、理論的な算出方法としては、例えば文献4(Kyo. Inoue、“Crosstalk and PowerPenalty Due to Fiber Four−Wave Mixing in Multichannel Transmissions”、IEEE Journal of Lightwave Technology、vol. 12、August、1994)等に記されたものがある。
(2)上記特性より、受信端におけるFWMクロストークの許容値を決定する。具体的には、FWMによる伝送品質劣化やその時間変動を考慮した上で、許容値としてのFWMクロストークレベル203を決定する。ここでは、図4の光受信器415各々において、例えば−30dBと規定する。
(3)上記で規定した受信端におけるFWMクロストーク値(FWM(END))を中継スパン数(N)で分割し、1スパン当たりに割り当てるFWMクロストーク値(FWM(MID))を次の(数1)式から算出する。
【0026】
【数1】
FWM(MID)=FWM(END)−10*Log(N)
(4)図5において、監視制御装置416にて算出された、上記の1スパン当たりに割り当てられるFWM(MID)504−1は、送信側装置401−1の監視制御部404−1へFWM(MID)504−1として送信される。
(5)受信側装置401−2では、波長多重信号光が光ファイバ伝送路403を伝送中に発生したFWM光強度500−2、雑音光強度501−2、信号光強度502−2を不図示のモニタ機構にて観測し、演算器405−2に送信する。
(6)演算器405−2では、前述の受信した観測値から、次の(数2)式を用いてFWMクロストーク503−2を算出する。
【0027】
【数2】
FWMクロストーク[dB]=(信号光強度−雑音光強度)[dBm]−(FWM光強度−雑音光強度)[dBm]
(数2)式は雑音成分を除いた信号光とFWM光の差分をFWMクロストークとするものであるが、デシベル[dB]計算であることに注意する必要がある。
(7)上記算出されたFWMクロストーク503−2は監視制御部404−2を介して監視制御装置416へ送信され、さらに送信側装置401−1の監視制御部404−1に対しても503−1として送信される。
(8)監視制御部404−1では、観測されたFWMクロストーク503−1と割り当てられたFWMクロストーク504−1とを比較し、FWMクロストーク503が許容値、すなわち割り当てられたFWMクロストーク504−3と一致するように、アンプ410−1へ出力レベル制御信号505−1を送出する。ここで、FWM光の強度は、送信側における光ファイバへの入力光強度の2乗に比例して大きくなるため、送信側アンプ410−1の出力レベルを調整することでFWMクロストーク504−3の値を可変制御することが可能である。
【0028】
以上(1)〜(8)に説明した手段を送信局、受信局および全ての中継局に適用することによって、最終的な受信局におけるFWMクロストークを許容値以下に抑制することが可能となる。ただし、上述の手段は光伝送路を介して対向する装置間でのフィードバック制御を基本とするため、例えば図4に示したような波長多重システム全体の内、一部の装置が故障等によって動作していない場合や、あるいは伝送路で発生するFWMが極端に小さい、もしくは大きい場合には不安定動作を起こすこともあり得る。
【0029】
従って、通常は各アンプ410において、それぞれ個別に出力光強度を一定とする制御を行い、FWM光が観測された場合に上記のFWMクロストーク制御動作へ移行するよう構成する。
【0030】
また、監視制御装置416では伝送システム全体の全てのアンプ410に設定される出力光強度を監視し、その強度が予め定めた一定範囲に収まっていることを監視することによって、システムの動作を一層安定化させることが可能となる。
【0031】
図6は上記説明した実施例における光伝送装置の光アンプの周辺部を詳細に示したものである。光アンプ入力部600−1を介して受信した波長多重光は、光カプラ610−1によって分岐され、波長解析部680によってFWM光強度500−60、信号光強度502−60、雑音光強度501−60が観測される。波長解析部680は上記の各光強度を観測する市販の光スペクトルアナライザ等を使用してもよい。
【0032】
演算部690では(数2)を用いてFWMクロストーク503−60を計算し、上流に位置する伝送装置に対し送信される。また、通常動作においては、エルビウムドープファイバ(EDF)等の光アンプ630から出力された信号光は光カプラ610−2にて分岐された後、光電気変換器650を用いて出力光強度を示す電気信号に変換され、その強度が予め定めた一定の値となるように、出力光制御部655およびセレクタ660を介して励起ポンプレーザ640−1および640−2へ駆動信号を送信する。励起ポンプレーザ640−1および640−2は前記駆動信号を受け、多重部620−1および620−2を介して光アンプ630に対して相応の励起光を送信することで、出力光強度一定制御が実施される。
【0033】
ここで、下流側装置から、ある一定量以上の大きさのFWMクロストーク504−60が入力されると、前述の出力強度一定制御からFWMクロストーク一定制御に切り替わる。すなわち、FWMクロストーク503−60と割り当てられたFWMクロストーク504−60と一致するよう、FWM制御部670からセレクタ660を介して励起ポンプレーザ404へ駆動信号を送信される。励起ポンプレーザ404からは励起光が多重部408を介して光アンプ601−10に対して入力されることによって、前述のFWMクロストーク一定制御が実行される。
【0034】
なお、図6は励起ポンプレーザ640を光アンプ630の前後に備えた双方向励起方法を示したものであるが、前後のいずれか一方に備えた前方励起あるいは後方励起でも構わない。
【0035】
また、FWMクロストークの値は、伝送路である光ファイバで発生する量が支配的であり、光増幅器で発生する量はほぼ無視できため、光アンプ630にて増幅後の信号を用いても観測することが可能である。すなわち、図7に示すように、波長解析部780および演算部790を光アンプ730の後段に配置した構成を採ることも可能である。
【0036】
次に本実施例における各種光信号強度の具体的な観測方法を図8を用いて説明する。図7において800は信号光、801はFWM光、802は雑音レベル、横軸は周波数、縦軸は光信号強度を表す。
【0037】
FWM光は、波長多重された複数の光信号の相互作用で発生するため、その発生個数や発生波長は不確定である。したがって、図7に示すようにFWM光801−2が信号光800−3と同一波長に重なり合って発生すると、その存在が確認できず、当然その強度を測定することも不可能となる。したがって、各信号光800を順次消光して、その際に観測されたFWM光をその強度とする。
【0038】
より具体的には、図4記載の光送信器405を順次1つずつ消光して測定を行っていく。例えば、ある波長の信号光800−3を消光した際に観測されたFWM光801−2の強度を測定する。信号光強度800−3は該当光送信器を発光させることによって測定する。実際に観測を行う上で、信号光800−3およびFWM光801−2の雑音成分を把握することは困難であるため、近似的に、例えば隣接する信号波長と1/2だけ隔てた両側の光強度802−1および802−2を測定し、その平均値を信号光800−3およびFWM光801−2の雑音光強度として読み取る。
【0039】
以上のような光信号の消光によるFWM光の観測を全ての光信号に対して順次行っていき、FWM光が観測された際には前述の(数2)式を用いてFWMクロストーク量を算出する。そして算出された中で最大のFWMクロストークを対象として、前述のクロストーク一定制御を行う。光ファイバ入力強度を制御する際、収容する全ての波長帯に渡って同じ量の制御(減衰、もしくは増幅)を加えることで、波長毎の偏差が発生しない様に制御可能である。もしくは、予め目標となる光ファイバ入力強度にセットしておき、本アルゴリズムにて制御される量を極力少なくすることにより、制御により発生する波長間の偏差を無視することが出来る。上記により、最初に最大FWMクロストークが得られる波長として設定した、目標波長が制御によって変わることは無い。また、収容される波長数が十分多い(5〜6波程度以上)状態で上記アルゴリズムに乗っ取りFWMクロストークを解析することで、該当チャネルを消光したことによる影響は、その他の収容チャネルによる影響に比べて十分小さく、無視することが出来る。
上述の観測方法は、波長多重装置に収容している光送信器405のうち、特定の送信器を発光あるいは消光させる必要が有るため、装置を設置等(セットアップ等)する際には問題ないが、システムとして顧客の信号を収容して稼動している際には用いることができない。
【0040】
次に、図9を用いて他の観測方法を説明する。本観測方法では、当該光アンプに収容されている波長多重光の波長帯域910の両端に発生するFWM光901−1および901−2のみを観測対象とする。そして、それらのうち光強度の大きい方、すなわちここでは901−2を制御対象のFWM光とする。信号光強度はもっとも近い位置にある信号波長900−6の信号光強度を観測する。また、雑音光強度は上記FWM光901−2から波長多重間隔の1/2だけ隔てた両側の光強度902−1および902−2の平均値を信号光900−6およびFWM光901−2雑音光強度とする。
【0041】
以上説明した観測方法は、一部のFWM光のみを観測するため、FWMクロストーク一定制御において、先に説明した観測方法が、より高精度となる場合があるものの、光送信器405を消光する手順が不要であるため、システム稼動状態においても実施することができる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、光ファイバを用いた波長多重光伝送システムで生じるFWMに起因する伝送品質劣化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 FWM光およびFWMクロストークを説明するスペクトルである。
【図2】 FWMクロストークと受信感度劣化の関係を説明する図である。
【図3】 ファイバ伝送中の光信号の伝播距離と光強度との関係を説明する図である。
【図4】 波長多重伝送システムの一般的構成を示すブロック図である。
【図5】 本発明の実施例の基本構成図である。
【図6】 本発明の実施例のにおける光アンプ周辺の構成図である。
【図7】 本発明の実施例のにおける光アンプ周辺の構成図である。
【図8】 本発明の実施例におけるFWMクロストークの観測方法を説明する図である。
【図9】 本発明の実施例におけるFWMクロストークの他の観測方法を説明する図である。
【符号の説明】
400・・・送信端局、401・・・中継局、402・・・受信端局、403・・・光ファイバ伝送路、404・・・監視部、405・・・光送信器、406・・・波長合波器、407・・・プリアンプ、408・・・波長合波器、409・・・波長分波器、410・・・ラインアンプ、411・・・波長合波器、412・・・波長分波器、413・・・ポストアンプ、414・・・光分波器、415・・・光受信器、416・・・監視制御装置、500・・・FWM光強度、501・・・雑音光強度、502・・・信号光強度、503・・・FWMクロストーク、504・・・許容値、600・・・光アンプ入力部および出力部、610・・・光分岐部、620・・・光合波部、630・・・ドープファイバ、640・・・励起ポンプレーザ、650・・・光電気変換器、660・・・セレクタ、670・・・FWM制御部、680・・・スペクトラム解析部、690・・・演算部
Claims (10)
- 第1の光ファイバから受信した波長多重光を増幅する光アンプと、
前記光アンプからの波長多重光の強度を制御する励起光源と、
前記励起光源からの励起光を前記光アンプへ入力する多重部と、
前記光アンプにて増幅された波長多重光を第2の光ファイバへ出力する光伝送装置であって、
前記第2の光ファイバによって接続された受信側の光伝送装置にて、
前記第2の光ファイバを介して受信した前記波長多重光に含まれる少なくとも1つの光信号の強度と、当該光信号のFWM光強度とを観測し、
前記観測した光信号の強度とFWM光強度を用いてFWMクロストークを算出し、
送信側の前記光伝送装置は、前記算出されたFWMクロストークが予め定めた目標値以下となるよう、前記励起光源から出力される励起光の前記光アンプに対する作用量を制御することを特徴とする光伝送装置。 - 請求項1記載の光伝送装置であって、さらに、
前記光アンプからの波長多重光の光強度を観測するモニタ部とを有し、
前記FWMクロストークが予め定めた閾値より小さい場合は、前記モニタ部で観測された光強度が予め定めた第1の目標値と一致するよう、前記励起光源から出力される励起光の前記光アンプに対する作用量を制御し、
前記FWMクロストークが予め定めた閾値以上の場合は、予め定めた第2の目標値以下となるよう、前記励起光源から出力される励起光の前記光アンプへの作用量を制御することを特徴とする光伝送装置。 - 請求項1または2記載の光伝送装置であって、
前記励起光源は、
前記光アンプの入力側から前記光アンプへ入力される第1の励起光を出力する第1の励起光源と、
前記光アンプの出力側から前記光アンプへ入力される第2の励起光を出力する第2の励起光源とからなることを特徴とする光伝送装置。 - 請求項1に記載の光伝送装置であって、
前記FWMクロストークの予め定めた目標値は、予め算出しておいたFWMクロストークと受信感度劣化との変動特性から、許容する受信感度劣化に対応するFWMクロストークとして選択された値であることを特徴とする光伝送装置。 - 光ファイバから受信した波長多重光のFWMクロストークを観測する手段と、
前記観測したFWMクロストークを他の装置へ送信する手段とを有し、
前記FWMクロストークを観測する手段は、
前記波長多重光における各波長の信号光を出力する複数の光送信器からの出力を順次停止させることによって当該信号光と同一波長域に発生したFWM光を検出し、
前記検出したFWM光の光強度と前記同一波長の信号光の光強度とを用いて算出したFWMクロストークのうち、最大のものを前記送信の対象とすることを特徴とする光伝送装置。 - 光ファイバから受信した波長多重光のFWMクロストークを観測する手段と、
前記観測したFWMクロストークを他の装置へ送信する手段とを有し、
前記FWMクロストークを観測する手段は、
前記波長多重光の波長帯域の長波長側あるいは短波長側の帯域外かつ最も前記波長帯域の近傍で発生したFWM光のうち光強度が大きい方のFWM光の光強度と、
前記波長多重された信号光のうち、前記FWM光の最も近傍に存在する信号光の光強度と
を用いて算出したFWMクロストークを前記送信の対象とすることを特徴とする光伝送装置。 - 波長多重信号を増幅して光ファイバへ送信する第1の光伝送装置と、
前記光ファイバを介して前記波長多重信号を受信する第2の光伝送装置と
からなる光伝送システムであって、
前記第2の光伝送装置は、前記光ファイバから受信した波長多重光に含まれる光信号の強度と、当該光信号のFWM光強度とを観測する手段と、
前記観測した光信号の強度とFWM光強度を用いてFWMクロストークを算出する手段と、
前記観測したFWMクロストークを他の監視制御装置へ送信する手段と
を有するものであり、
前記第1の光伝送装置は、
前記波長多重光を増幅する光アンプと、
前記光アンプからの波長多重光の強度を制御する励起光源と、
前記励起光源からの励起光を前記光アンプへ入力する多重部と、を有し、
前記光アンプにて増幅された波長多重光を前記光ファイバへ出力し、
前記第2の光伝送装置にて算出されたFWMクロストークを前記監視制御装置を介して受信し、その値が予め定めた目標値以下となるよう、前記励起光源から出力される励起光の前記光アンプに対する作用量を制御することを特徴とする光伝送システム。 - 請求項7記載の光伝送システムであって、
前記第1の光伝送装置は前記光アンプからの波長多重光の光強度を観測するモニタ部を有し、
前記受信したFWMクロストークが予め定めた閾値より小さい場合は、前記モニタ部で観測された光強度が予め定めた第1の目標値と一致するよう、前記励起
光源から出力される励起光の前記光アンプに対する作用量を制御し、
前記FWMクロストークが予め定めた閾値以上の場合は、予め定めた第2の目標値以下となるよう、前記励起光源から出力される励起光の前記光アンプへの作用量を制御することを特徴とする光伝送システム。 - 光ファイバによって接続された伝送装置間で波長多重信号の送受信を行う伝送方法であって、
受信側の伝送装置により前記波長多重光に含まれる少なくとも1つの光信号の強度と、当該光信号のFWM光強度とを観測するステップと、
前記観測した光信号の強度とFWM光強度を用いてFWMクロストークを算出するステップと、
前記算出したFWMクロストークを送信側の伝送装置に送信するステップと、
送信側の伝送装置において前記FWMクロストークが予め定めた目標値以下となるよう、光アンプから前記光ファイバへ出力される波長多重光の強度を調整するステップとからなることを特徴とする波長多重信号の伝送方法。 - 光ファイバによって接続された伝送装置間で波長多重信号の送受信を行う伝送方法であって、
受信側の伝送装置により前記波長多重信号に含まれる少なくとも1つの光信号の強度と、当該光信号のFWM光強度とを観測するステップと、
前記観測した光信号の強度とFWM光強度を用いてFWMクロストークを算出するステップと、
前記算出したFWMクロストークを送信側の伝送装置に送信するステップと、
送信側の伝送装置において前記FWMクロストークと予め定めた閾値と比較するステップと、
前記比較した結果、前記FWMクロストークが前記閾値以上の場合に予め定めた第1の目標値以下となるよう、光アンプから前記光ファイバへ出力される波長多重光の強度を調整するステップと、
前記比較した結果、前記FWMクロストークが前記閾値より小さい場合に、光アンプから前記光ファイバへ出力される波長多重光の強度を予め定めた目標値となるよう調整するステップとからなることを特徴とする波長多重信号の伝送方法。
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