JP3971219B2 - ペットの健康診断方法及びペット健康診断用キット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペットの健康診断方法及びペット健康診断用キットに関する。さらに詳しくは、犬やネコ等のペットの尿の成分を容易にかつ簡便に検出することができ、家庭でペットの健康状態を管理することが可能となるペットの健康診断方法及びペット健康診断用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
核家族化が進む現代社会では、家庭における犬やネコ等のペットの位置付けは高く、飼い主にとってペットの健康状態は極めて重要なものである。ペットの健康状態は、ペットの尿や血液の検査を行い管理することができれば理想的であるが、実際には、一般の家庭でペットから採尿や採血及びそれらの検査を行うことは非常に困難であった。
【0003】
このため、家庭ではペットの健康状態が管理できない場合が多く、ペットの病気の発見はどうしても遅れがちとなり、ペットの健康状態が悪化してから動物病院等で診察を受けることが多かった。従って、ペットの病気の処置は、病気が悪化してから行われることがほとんどであり、場合によっては手遅れとなってしまっていた。このようなことから、病気の早期発見に繋がるペットの健康状態の管理を家庭で簡便に行いたいという要望が、ペットの飼い主の間に挙がっていた。
【0004】
以上の要望に対し、特に、尿による健康管理を一般家庭で簡便に行う方法として、動物の尿に含まれる特定成分と呈色反応し色調が変化する発色試薬を、いわゆるペット用トイレ砂等の尿吸収材に含浸させ、ペットが排尿すると同時に該試薬が発色することを利用して尿中の成分を検出して健康管理を行う方法が多数報告されている(特開昭61−202637号公報、特開平4−114066号公報、特開平05−223812号公報、特開平07−264948号公報、特開平10−257832号公報、特開平11−295306号公報、特開2000−333547号公報等)。
【0005】
しかしながら、これらの公報で報告されている方法は、その操作自体は、簡便ではあるものの、ペットの尿と反応してもほとんど色調の変化が無かったり、僅かに変化しても経時的に色調が変化する等の問題があり、定量的な尿の検査はできず、実用的なものではなかった。
【0006】
この原因としては、変化した色調を尿吸収材に保持させるためには、発色試薬を多量に吸収材に含浸させなくてはならないが、ペットに違和感なく該吸収材を使用させるためには、発色試薬の含有量を極力低減させなければならず、このバランスを取るために、発色試薬の量が減らされるという点が挙げられる。また、尿に含まれる特定成分と発色試薬との呈色反応は短時間で終了することが多いが、その色調が持続しない場合があったり、経時的に色調が変化してしまう場合あるいは尿中の水分が乾燥することで色調が変化する場合がある等、ペットが排尿した時に居合わせない限り、定量的な尿の成分の検出ができないことがある点も原因に挙げられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ペットの尿を用いた従来のペットの健康診断方法の問題点を改善するものであり、飼い主がペットが排尿した時に居合わせなくとも、飼い主がその尿の成分を容易にかつ簡便に検出することができ、ペットの健康状態を適宜把握できる実用的なペットの健康診断方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ペットの尿を用いたペットの健康診断方法に関して鋭意研究した結果、ペットの尿を吸収させた尿吸収材を試料として用い、これから溶媒中に溶出した尿の成分を、尿中の特定成分と呈色反応する試薬を用いて検出すれば、いつでもペットの尿成分を容易にかつ簡便に検出することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ペットの尿を吸収させた尿吸収材を溶媒に入れ、該溶媒中に溶出した尿の成分を検出することを特徴とするペットの健康診断方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、尿成分を溶解可能な溶媒と、尿の成分を検出可能な試薬からなるペット健康診断用キットを提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のペットの健康診断方法(以下、単に「診断方法」という)は、ペットの尿を吸収させた尿吸収材を溶媒に入れ、該溶媒中に溶出した尿の成分を検出するものである。
【0012】
まず、本発明の診断方法に用いられる尿吸収材としては、ペットの尿を吸収でき、かつ、吸収した尿の成分を溶媒内で放出可能なものであれば特に制限なく使用することができる。例えば、ベントナイトを主成分とする鉱物質の破砕粒や、パルプ繊維、オカラ、木粉、豆類の殻等の植物質を造粒したものなど、一般にペット用トイレ砂等の名称で市販されているものを、尿吸収材として用いることができる。
【0013】
しかし、本発明の診断方法をより簡便に実施するためには、尿吸収材として、尿を吸収した部分と、吸収していない部分が容易に区別できるものを利用することが好ましい。このような尿吸収材としては、例えば、尿を吸収した時に塊状に固まり、溶媒中に尿中の成分を溶出させる際には粒子が容易に崩壊し、さらに尿検査薬と反応する他成分を含有しない等の性能を有するものが好ましい。このような性能を有する尿吸収材としては、例えば、パルプ繊維を造粒したものや、木粉、ケナフ( Hibiscus cannabinus Linn. / Hibiscus Sabdariffa Linn. )粉等の植物質あるいはベントナイト、クレー、アタパルジャイト、セピオライト、ガレオナイト等の鉱物質を主成分として造粒した尿吸収材が挙げられる。特に、ケナフの粉末を含有する造粒物の表面にベントナイトを被覆して成る尿吸収材を使用することが、1粒当たりに吸収する尿の量が多く、少量の尿吸収材で尿中の成分を検出できるという点で好ましい。
【0014】
本発明の診断方法は、尿を吸収させた尿吸収材を溶媒に入れ、該剤に吸収された尿の成分を溶媒中に溶出させ、溶出した尿の成分を検出し、その結果によりペットの健康状態を診断するものである。
【0015】
本発明で使用することができる溶媒としては、例えば、水や、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩類物質を水に溶かした塩類水溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトニトリル等の水溶性有機溶媒水溶液が挙げられる。
【0016】
一般に、尿を吸収した尿吸収材が速やかに崩壊する場合は、溶媒として水を使用することができるが、例えば、膨潤性物質であるベントナイトを含有する尿吸収材の場合には、溶媒として水を使用すると、崩壊に時間がかかることになるので、塩類溶液あるいは水溶性有機溶媒の水溶液を利用することが好ましい。
【0017】
また、後記尿検査薬中に酵素を含む場合は、pHの緩衝作用を有さない上記塩類の水溶液を用いることが好ましい。なお、上記塩類は、通常、1%から10%程度の水溶液として使用するが、所定量の塩類が存在するところに水を加える方法を用いてもよい。
【0018】
本発明の診断方法における溶媒の使用量は、尿吸収材中の尿の濃度や量及び成分等より適宜決定されるが、一般に、試料として用いる尿吸収材の重量に対し、重量比で1から500倍量程度を用いることが好ましい。
【0019】
上記のようにして溶媒中に溶出した尿の成分は、当該特定成分と呈色反応する試薬(以下、「尿検出薬」という)を用いて検出される。
【0020】
本発明で用いられる尿検出薬は、例えば、ペットの尿中のpH、ブドウ糖、蛋白質、潜血、ケトン体等を検出する試薬であり、これら以外でも、尿中の特定成分を色調の変化により検出できる試薬であれば、特に制限なく使用することができる。
【0021】
尿検出薬のうち、pH検出用としては、pH指示薬を主成分とするものが挙げられ、pH指示薬の例としては、pH値が4から10の範囲に色調変化のpH域を有するpH指示薬として、チモールブルー、フェノールフタレイン、トロペオリンOOO、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、p−ニトロフェノール、メチルレッド、ブロモクレゾールグリーン、テトラブロモフェノールブルー、クロロフェノールレッド、メチルオレンジ、エチルオレンジ、ブロモフェノールブルー、ブリリアントイエロー、コンゴーレッドブロモクレゾールブルー等の指示薬が挙げられる。これらの指示薬は、1種を単独で、あるいはを二種以上を組み合わせて使用してもよい。上記の指示薬を組み合わせて使用する例としては、メチルオレンジとブロモクレゾールグリーンの混合指示薬、メチルレッドとブロモチモールブルーの混合指示薬、ブロモクレゾールパープルとブロモチモールブルーの混合指示薬等が挙げられる。
【0022】
また、ブドウ糖検出用の例としては、酵素反応によるブドウ糖の反応を利用したものが挙げられ、例えば、グルコースオキシダーゼ及びパーオキシダーゼの酵素群に、4−アミノアンチピリン及びクロロフェノールを組み合わせたものや、該酵素群に4−アミノアンチピリン及びナフトールジスルホン酸を組み合わせたものが挙げられる。これらの酵素群に4−アミノアンチピリン及びクロロフェノールを組み合わせたものは、検体中にブドウ糖が存在することにより色調がピンク色に変化する。また、上記酵素群に4−アミノアンチピリン及びナフトールジスルホン酸を組み合わせたものは、ブドウ糖の存在で紫色に色調が変化する。さらに、o−トリジンも上記酵素群と組み合わせて使用できるが、この場合は、ブドウ糖の存在で緑色に色調が変化する。
【0023】
更に、蛋白質検出用の例としては、蛋白誤差法により蛋白質の有無を識別する指示薬を主成分とするものが挙げられ、この指示薬の例としては、例えば、テトラブロモブルーやテトラブロモチモールブルー、テトラブロモフェノールブルー等が挙げられる。テトラブロモブルーは、検体中に蛋白質が存在すると複合体を形成し、酸性色である黄色から塩基性色である青色に色調が変化する。
【0024】
更にまた、潜血検出用の例としては、被酸化性指示薬、有機過酸化物等を主成分とするものが挙げられる。被酸化性指示薬の例としてはo−トリジンやベンジジン等が挙げられ、有機過酸化物の例としては、クメンヒドロペルオキシド等が挙げられる。尿中に潜血が存在すると、この潜血が上記したクメンヒドロペルオキシド等と化合して発生期の酸素を発生し、この酸素は直ちにo−トリジンやベンジジン等に反応してこの指示薬を発色させる。
【0025】
ケトン体検出用の例としては、例えば、塩化ニッケルとニトロプルシュドナトリウムの組み合わせ等が挙げられる。この組み合わせにおいては、検体中のアセト酢酸存在下で、色相が淡黄色から赤紫色に変化する。
【0026】
上記した尿検出薬は、各検出薬をそのまま用いても、また、予め水溶液として用いてもよい。さらに、液状または水溶液とした尿検出薬を、パルプ製やガラス繊維性のろ紙等の紙片に含浸させ、試験紙片とした形態で用いてもよい。尿検出薬を試験紙片とする形態をとる場合には、1種類の尿検出薬を1枚の紙片に含浸させてもよいし、異なる尿検出薬を含浸させた複数の紙片を、別途用意された台紙やプラスチック板等に貼り付けて用いてもよい。このようにすれば、同時に複数種の尿成分の検出を行うことが可能となり、複数成分の検出データを同時に得ることができるので好ましい。
【0027】
また本発明においては、上記の尿検出薬の他、ウロビリノーゲン、ビリルビン、亜硝酸塩等の検査薬を含有した数種の試験紙片を、台紙やプラスチックの板に貼り付けた市販の尿検査試験紙(例えば、プレテストマルチ:和光純薬社製)や、市販されている各種の水質検査薬を尿検査薬として用いることもできる。これらのうち前者は、採取した尿に直接浸して引き上げ、紙片の色調変化調べるものであり、後者は、採取した水を加えた時の水の色調変化を調べるものであるが、本発明方法に転用可能である。
【0028】
本発明の診断方法を実施するには、例えば、次に挙げる手段を用いればよい。まず、尿吸収材をペット用のトイレに敷置し、ペットの尿を吸収した尿吸収材の所定量、例えば1粒から数粒を採取する。次に、この尿吸収材を、透明ないしは半透明の容器に入れ、適量の溶媒を加えて尿吸収材を崩壊・分散させた後、尿検出薬を加える方法が挙げられる。また、別の方法としては、予め尿検出薬が入れられた透明ないしは半透明の容器に、所定量の尿吸収材を入れ、これに適量の溶媒を加える方法も挙げられる。このようにすることにより、溶媒に溶解した尿の成分と、尿検出薬が反応するので、この変化を観察することにより、特定の尿成分が検出される。なお、尿成分の検出を呈色反応により行う場合は、呈色する数秒から数分の間に、溶液全体の色調を標準比色表に記載される色調と対比して、尿中の特定成分を検出するという方法が例として挙げられる。
【0029】
また、採取した尿吸収済みの尿吸収材を容器に入れ、適量の溶媒を加えて尿吸収剤を崩壊させた溶液に、尿検出薬を含浸させた試験紙片や、異なる尿検出薬を含浸させた複数の紙片を台紙等に貼り付けたものや、市販される尿検査試験紙等を溶液に含浸させてすぐに引き上げて、数秒から数分の間に、試験紙片の色調を標準比色表に記載される色調と対比するという方法を用いてもよい。
【0030】
以上の方法に従って尿中の成分の検出を行い、例えば、表1に挙げる各成分の正常値と対比することにより、ペットの健康状態を把握することができる。
【0031】
【表1】
【0032】
これらの項目のうち、例えばpHについては、結果が平常値より高い場合には、特にペットがネコ、さらに若齢の雄ネコである場合には、尿路結石を発症しやすい。この尿路結石は、発見が遅れると重篤な状態になり得ることからも、ペットの健康診断方法においてはpHの検出を必須の項目とすることが好ましい。
【0033】
以上説明した本発明の診断方法を実施するにあたっては、予め、標準比色表を作成しておくことが好ましい。この「標準比色表」は、尿吸収材の種類や、採取する吸収材の粒数、また尿の成分を溶解させるために用いる溶媒の種類及び液量などの基本的な試験条件(基本条件)を決めておき、尿中の特定成分濃度が判明している尿を、特定成分をある濃度ごとに、基本条件で検出した場合における色調をそれぞれ確認しておき、例えば、その結果を一覧表にすることにより調製される。この標準比色表にある色調と、本発明の診断方法により呈色された色調とを対比することにより、尿中の成分を正確に検出することができ、また、濃度範囲を細かくして作成しておけば、検出結果の定量化も可能となる。この標準比色表は、尿検出薬ごとに作成しておくことが好ましい。
【0034】
また、尿検出薬と尿中の特定成分との呈色反応は、通常は瞬時ないしは数分で終了し、それ以後は成分が変質し、呈色した色調が変化するものが多いので、各尿検出薬の呈色反応の終了時及び呈色した色調が変化する時を予め把握しておき、呈色した色調が変化しないうちに、該色調と標準比色表に記載された色調とを対比して、尿中の特定成分を正確に検出しておくことが好ましい。
【0035】
なお、本発明方法を容易に実施するために、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩類物質と尿検出薬を組み合わせたり、尿成分を溶解可能な溶媒と尿検出薬を組み合わせて、必要に応じ標準比色表等を添えたペット健康診断用キットを用いることが好ましい。また、これらに、ペット用トイレ砂等の尿吸収材を併せ組合せれば、尿吸収材の種類による測定誤差が少なくなるので、より好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例および調製例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例等において、「部」とは重量部を示す。
【0037】
調 製 例 1
尿吸収剤の調製:
アオイ科フヨウ属植物のケナフ( Hibiscus cannabinus Linn. / Hibiscus Sabdariffa Linn. )の粉末(目開きが150μmの篩を50%通過する粒度)20部とベントナイト(クニゲルV1:クニミネ工業(株)製)13部の混合粉体に水40部を加えて混練し、3mmの孔を開けたプレートより押し出して造粒物を得た。得られた造粒物を回転するドラム(コンクリートミキサー:堀鉄工所社製)に入れ、転がしながらベントナイト(クニゲルV1:クニミネ工業(株)製)67部を加えて3分間混合し、ベントナイトを造粒物の表面に被覆させた後、80℃の温風で流動乾燥し、尿吸収材(調製品1)を得た。
【0038】
調 製 例 2
尿成分検出用紙片の調製:
下記の(a)から(c)により、3種の尿検出用紙片(調製品2−aから調製品2−c)を調製した。これを、5mm×30mmの厚さ1mmの濾紙に、1種当り1枚を貼り付け、ブドウ糖、蛋白質及びpH検査用の尿成分検出用紙片(調製例2)を得た。
【0039】
(a)ブドウ糖検出用紙片の調製:
EDTA−2ナトリウム 2mg、4−アミノアンチピリン 5mg、1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸ナトリウム 16mg、パーオキシダーゼ 6mg、グルコースオキシダーゼ 25mg、リン酸2水素ナトリウム 8mg、リン酸水素2ナトリウム 4mgを、水 50mlに溶解して検出薬溶液を調製した。この溶液中に、サイズ50mm×50mm、厚さ1mmの濾紙を10秒間浸漬させた後引き上げ、水切りを行い、30℃でデシケーターにて減圧乾燥させた。この検出薬を浸漬させた濾紙を5mm角の正方形に裁断して、ブドウ糖検出用紙片(調製品2−a)を得た。
【0040】
(b)蛋白質検出用紙片の調製:
1Mクエン酸緩衝液とテトラブロムフェノールブルー0.1%のメタノール溶液を等量混合して検出薬溶液を調製した。この溶液中に、サイズ50mm×50mm、厚さ1mmの濾紙を10秒間浸漬させた後引き上げ、水切りを行い、30℃でデシケーターにて減圧乾燥させたた。この検出薬を浸漬させた濾紙を5mm角の正方形に裁断して、蛋白質検出用紙片(調製品2−b)を得た。
【0041】
(c)pH検出用紙片の調製:
メチルレッド2.5mgとブロムチモールブルー48mgを100mlのメタノールに溶解させて検出薬溶液を調製した。この溶液中に、サイズ50mm×50mm、厚さ1mmの濾紙を10秒間浸漬させた後引き上げ、水切りを行い、30℃でデシケーターにて減圧乾燥させたた。この検出薬を浸漬させた濾紙を5mm角の正方形に裁断して、pH検出用紙片(調製品2−c)を得た。
【0042】
実 施 例 1
ペット(ネコ)の健康診断(1):
尿吸収材として、市販されるパルプ繊維が造粒されたトイレ砂(ペーパーキャットスーパーハード:スーパーキャット社製)5リットルを、サイズ約400mm×400mm、深さ約150mmのペット用トイレに敷き、ネコが尿をしてから3時間後、固まったところから尿吸収材1粒を採取した。これを、10ml容の透明のプラスチック製容器に入れ、水3mlを入れて振り、尿吸収材を崩壊・分散させた。
【0043】
次いで、この容器中に調製品2の尿成分検出用紙片を浸して瞬時に引き上げ、予め作成しておいた標準比色表を用いて、試験紙片の色調と標準比色表に記載される色調を肉眼で比較した。その結果、このネコの尿中のブドウ糖は10mg/dL以下、蛋白質は10mg/dL以下、pHは6.2と検出され、健康なネコと診断した。
【0044】
実 施 例 2
ペット(ネコ)の健康診断(2):
尿吸収材として、木粉を造粒して調製した市販のトイレ砂(スーパーウッディー:常陸化工社製)5リットルを、ペット用トイレに敷き、実施例1で診断したネコが尿をしてから3時間後、固まったところから尿吸収材1粒を採取した。これを、市販のpH検査水質キット(パックテスト(WAK−BTB型:約10ml容の透明のプラスチック製容器にpH指示薬が入ったもの):共立理化学研究所製)に入れた。このキットに、さらに、5%塩化ナトリウム水溶液3mlを入れて振り、尿吸収材を崩壊、分散させた。
【0045】
次いで、この容器中の液の色調を、予め作成しておいた標準比色表の色調を肉眼で比較した。その結果、このネコの尿のpHは6.2と検出され、健康なネコと診断した。
【0046】
実 施 例 3
ペット(ネコ)の健康診断(3):
調製品1の尿吸収材5リットルをペット用トイレに敷いた。次いで、このペット用トイレで、過去に尿路結石で外科的処置をしたが、現在も頻尿症状が認められるネコが尿をしてから5時間後に、塊状に固化した尿吸収材1粒を採取した。採取した該材を、実施例2で使用したものと同仕様のpH検査水質キットに入れ、5%塩化ナトリウム水溶液3mlを入れて振り、該剤を崩壊・分散させた。
【0047】
この容器中の液の色調を、予め作成しておいた標準比色表の色調を肉眼で比較した。その結果、このネコの尿のpHは7.2と検出され、ネコの正常値(6.0〜6.5)を若干越えていることから、何らかの健康改善が必要なネコと考えられ、獣医による治療が必要であると診断した。
【0048】
実 施 例 4
ペット(ネコ)の健康診断(4):
調製例1の尿吸収剤5リットルをペット用トイレに敷き、腎臓疾患と診断されたネコが尿をしてから2時間後、塊状に固化した該材を1粒採取した。採取した尿吸収材を、10ml容の透明のプラスチック製容器に入れ、溶媒として5%塩化ナトリウム水溶液3mlを入れて振り、該剤を崩壊・分散させた。
【0049】
次いでこの容器中に、市販の尿検査試験紙(プレテストマルチ(ウロビリノーゲン、潜血、ビリルビン、ケトン体、ブドウ糖、蛋白質、pH、比重、亜硝酸塩、白血球用の検査薬を含有した試験紙片が一枚のプラスチック板に貼り付けられた尿検査試験紙):和光純薬社製)を浸して瞬時に引き上げ、試験紙の色調と標準比色表の色調を肉眼で比較した。その結果、このネコの尿中のブドウ糖は10mg/dL以下、蛋白質は30mg〜100mg/dL、pHは6.4、ウロビリノーゲンは1mg/dL以下、潜血は赤血球0個/μL、ビリルビンは0mg/dL以下、ケトン体はアセト酢酸として0mg/dLと検出され、蛋白質が正常値(0〜30mg/dL)を超えていることが確認できた。
【0050】
比 較 例 1
ペット(ネコ)の健康診断(5):
メチルレッド2.5mgとブロムチモールブルー48mgを100mlのメタノールに溶解して、pH検出用の尿検出薬を調製した。この検査薬と、市販のパルプ繊維が造粒されたトイレ砂(ペーパーキャットスーパーハード:スーパーキャット社製)500mlを混合して、トイレ砂に検出薬を吸着させた後、暗所で風乾させpH用尿検出薬含有トイレ砂を調製した。このトイレ砂を調製品1の尿吸収剤5リットルと混合して、ペット用トイレに敷いた。
【0051】
このペット用トイレに、実施例3で診断されたネコが尿をした直後および5時間後に、固まった部分の尿検出薬含有トイレ砂を肉眼で観察した。この結果、色調の変化はほとんど見られなかった。
【0052】
また、このpH用尿検出薬含有トイレ砂を用いて、各pHごとの色調を確認して、標準比色表の作成することを試みたが、各pHでの該トイレ砂の色調変化が明確には現れず、標準比色表を作成することはできなかった。以上より、このpH用尿検出薬含有トイレ砂を用いて、ネコの尿のpHを検出することはできなかった。
【0053】
比 較 例 2
ペット(ネコ)の健康診断(6):
EDTA−2ナトリウム 10mg、4−アミノアンチピリン 25mg、1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸ナトリウム 80mg、パーオキシダーゼ 30mg、グルコースオキシダーゼ 125mg、リン酸2水素ナトリウム 40mg及びリン酸水素2ナトリウム 20mgを水 50mlに溶解させて、ブドウ糖検出用の尿検出薬を調製した。この検出薬と、市販のパルプ繊維が造粒されたトイレ砂(ペーパーキャットスーパーハード:スーパーキャット社製)500mlを混合して、トイレ砂に検出薬を吸着させた後、暗所で風乾してブドウ糖用尿検出薬含有トイレ砂を調製した。このトイレ砂を、ペット用トイレに敷いた。
【0054】
このペット用トイレに、実施例1で診断したネコが尿をした直後、固まった部分の尿検出薬含有トイレ砂を肉眼で観察したが、色調の変化は明確でないものの極僅かに紫色を呈していた。3時間後に再度肉眼観察したところ、先ほどの紫色は消えてしまっており、ブドウ糖の検出はできなかった。以上より、ネコが尿をする時に居合わせない限り、ペット尿中のブドウ糖検出は不可能ということが確認できた。
【0055】
【発明の効果】
本発明のペットの健康診断方法は、ペットの尿を吸収させた尿吸収材を溶媒に入れ、該溶媒中に溶出した尿の成分を検出することにより行われるので、ペットの尿の成分を容易にかつ簡便に検出することができ、かつ、飼い主がペットの排尿時に居合わせる必要としないものである。また、その検出態様も、例えば、尿検出薬が尿中の特定成分と反応した際の色調変化を肉眼で確認するものとすれば、ペットの健康状態が容易に判断できる。
【0056】
さらに、尿検出薬を紙等に含浸させた形態をとれば、検出がより簡便になり、かつ、異なる尿検出薬を含浸させた複数の紙片を台紙等に貼り付けて用いれば、同時に複数種の尿成分の検出を行うことが可能となり、複数成分の検出データを同時に得ることができるものである。
【0057】
従って、本発明のペットの健康診断方法及びペット健康診断キットは、極めて実用的に、ペットの健康状態を必要なときに適宜把握することができ、家庭でペットの健康状態の管理に有利に使用しうるものである。
以 上
Claims (15)
- パルプ繊維、植物質または鉱物質から選ばれる少なくとも1種を含有し、かつそれらを造粒した尿吸収材にペットの尿を吸収させ、次いで該尿吸収材を溶媒に入れ、該溶媒中に溶出した尿の成分を検出することを特徴とするペットの健康診断方法。
- 尿の成分の検出が、尿中の特定成分と呈色反応する試薬を用いて行われる請求項第1項記載のペットの健康診断方法。
- 尿中の特定成分と呈色反応する試薬が、pH指示薬である第2項記載のペットの健康診断方法。
- 尿中の特定成分と呈色反応する試薬が紙に含浸されている請求項第2項または第3項記載のペットの健康診断方法。
- 尿吸収材が、アオイ科フヨウ属植物のケナフ( Hibiscus cannabinus Linn. / Hibiscus Sabdariffa Linn. )の粉末を含有する造粒物の表面にベントナイトを被覆してなるものである請求項第1項ないし第4項のいずれかの項記載のペットの健康診断方法。
- 溶媒が水または塩類の水溶液から選ばれるものである第1項ないし第5項のいずれかの項記載のペットの健康診断方法。
- 尿吸収材がベントナイトを含むものであり、溶媒が塩類の水溶液または水溶性有機溶媒の水溶液である請求項第1項ないし第5項のいずれかの項記載のペットの健康診断方法。
- 尿中の特定成分と呈色反応する試薬が酵素を含むものであり、溶媒が塩類の水溶液である請求項第2項及び第4項ないし第7項のいずれかの項記載のペットの健康診断方法。
- パルプ繊維、植物質または鉱物質から選ばれる少なくとも1種を含有し、かつそれらを造粒した尿吸収材、塩類物質、および尿の成分を検出可能な試薬からなるペット健康診断用キット。
- パルプ繊維、植物質または鉱物質から選ばれる少なくとも1種を含有し、かつそれらを造粒した尿吸収材、尿成分を溶解可能な溶媒、および尿の成分を検出可能な試薬からなるペット健康診断用キット。
- 尿の成分を検出可能な試薬が、尿中の特定成分と呈色反応する試薬である請求項第9項または第10項記載のペット健康診断用キット。
- 尿中の特定成分と呈色反応する試薬が、pH指示薬である請求項第11項記載のペット健康診断用キット。
- 尿中の特定成分と反応して呈色反応する試薬が紙に含浸されている請求項第11項または第12項記載のペット健康診断用キット。
- 尿吸収材が、アオイ科フヨウ属植物のケナフ( Hibiscus cannabinus Linn. / Hibiscus Sabdariffa Linn. )の粉末を含有する造粒物の表面にベントナイトを被覆してなるものである請求項第9項ないし第13項のいずれかの項記載のペット健康診断用キット。
- 尿吸収材がベントナイトを含むものであり、溶媒が塩類の水溶液または水溶性有機溶媒 の水溶液である請求項第10項ないし第13項のいずれかの項記載のペット健康診断用キット。
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