JP3970597B2 - 無機顔料用分散剤及び紙塗工顔料分散液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機顔料を水に分散させてスラリーを得る際に好適に用いられる無機顔料分散剤及び、これを用いてなる紙塗工用顔料分散液に関するものである。更に詳しくは高スラリー濃度でも低粘度であり、スラリー静置時に形成する沈降層の固化を防止し、経時的にも安定な紙塗工用顔料分散液を得ることが出来る分散剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭酸カルシウムは安価であり他の無機顔料と比べて優れた白色度、インキ受理性、光沢、印刷適性を有するため、製紙業界で賞用されている顔料の1つである。また中性抄紙の普及によりその使用量は急激に増えてきている。従来、炭酸カルシウムは平均粒子径1μm前後のいわゆる重質炭酸カルシウムが多用されてきたが、近年紙質の高級化に伴い平均粒子径0.1〜0.3μmの沈降性膠質炭酸カルシウムの使用比率が増大しつつある。しかるに、平均粒子径が小さくなればなるほど水性媒体中への分散が困難になり、また凝集しやすく、水分散液の経日安定性にも問題が生じやすくなる。従来使用されている炭酸カルシウム用分散剤には、無機系ではピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、トリメタリン酸塩、テトラメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩などの縮合リン酸塩、亜鉛塩、珪酸塩などがある。しかし、これら無機系分散剤は、得られた水分散液の経日安定性に問題があり、また微粒子状の沈降性膠質炭酸カルシウムの分散には多量の添加を必要とする欠点があった。一方、有機系の分散剤ではポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリマレイン酸塩などのポリカルボン酸塩が公知である。しかし、ポリカルボン酸塩、例えばポリアクリル酸ナトリウムは、平均粒子径1μm前後の重質炭酸カルシウムの分散には比較的良好な評価を得ているが、0.1〜0.3μm前後の極めて粒径の細かい炭酸カルシウムの分散には、得られた水分散液の粘度が高くまた経日安定性などに問題があった。このような公知の分散剤の欠点を克服するため、特公昭54−36166号、特公昭56−47131号、特開昭53−144499号、特開昭57−168906号などにマレイン酸共重合体を使用する方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
無機顔料を水に分散させることによって得られる無機顔料分散体に、用途に応じてカゼインや澱粉、ビニル系合成ラテックス等のバインダーを適宜含んでいる紙塗工用顔料分散液を紙の表面に塗布することにより、紙の白色度や隠ぺい性向上、また紙表面に光沢性や平滑性等を付与することが行われている。上記の無機顔料分散体は、均一にかつ容易に塗布することができるように、或いは他の無機顔料との混合を行い易いように、高濃度でかつ粘度ができるだけ低いことが望ましい。しかしながら、高濃度になるとスラリー粘度は急激に上昇し、取り扱いが困難になるばかりではなく、スラリー静置時に形成する沈降層が固化し易くなるといった問題があり、こういった課題を解決する分散剤が求められていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定のオキシアルキレングリコールエーテル系構造からなる繰り返し単位(I)と、特定のカルボン酸系構造からなる繰り返し単位(II)を有しており、オキシアルキレングリコールエーテル系構造中のオキシアルキレン基の平均付加モル数が10〜300であって、(I)の繰り返し単位が1〜35mol%の範囲にある共重合体を含有する無機顔料分散剤を用いることにより、高スラリー濃度でも低粘度であり、スラリー静置時に形成する沈降層の固化を防止し、経時的にも安定な紙塗工用顔料分散液が得られることを見出した。
【0005】
即ち、本発明は、下記(1)、(2)に示す構成からなる。
(1)下記の一般式(A)
【0006】
【化3】
【0007】
(但し、式中R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。但し、R1、R2及びR3は、同時にすべてメチル基となることはない。R4は、−CH2−、−(CH2)2−又は−C(CH3)2−を表し、R1、R2、R3及びR4中の合計炭素原子数は、2又は3である。R6は水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、R5Oは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表し、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。)で表される繰り返し単位(I)と、下記の一般式(B)
【0008】
【化4】
【0009】
(但し、式中R7及びR8はそれぞれ独立に水素、メチル基又は―COOM2を表し、R9は水素、メチル基又は―CH2COOM3を表し、M1、M2及びM3はそれぞれ独立に水素、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。)で示される繰り返し単位(II)からなる共重合体において、繰り返し単位(I)中のオキシアルキレン基の平均付加モル数mが10〜100の範囲にあり、かつ繰り返し単位(I)が1〜35mol%の範囲にある共重合体を含有することを特徴とする無機顔料分散剤。
(2)上記(1)に記載の無機顔料分散剤を含む紙塗工用顔料分散液。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。繰り返し単位(I)は前記一般式(A)で示されるものであるが、このような繰り返し単位を与える単量体としては、例えば3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、メタアリルアルコール(2−メチル−2−プロペン−1−オール)等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを付加した不飽和アルコール系単量体を挙げることができる。一般式(A)中のオキシアルキレン基R5Oの炭素原子数としては、2〜18が適当であるが、2〜8が好ましく、2〜4がより好ましい。又、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物については、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。尚、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。一般式(A)におけるオキシアルキレン基R5Oの平均付加モル数mは、10〜300であることが必要である。好ましくは10〜200、より好ましくは10〜100、さらに好ましくは10〜50である。mが10未満では、スラリー静置時に形成する沈降層の固化を防止する性能が不足し、一方300を超えると、繰り返し単位(I)を構成するために重合する不飽和アルコール系単量体の共重合反応性が低下する傾向となる。尚、平均付加モル数とは、単量体1モル中における、オキシアルキレン基R5Oの構成原料となる化合物の付加モル数の平均値を意味する。
【0011】
上記一般式(A)におけるR6は、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基であればよく、該炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基又は脂環式アルキル基)、炭素原子数6〜30のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基等が挙げられる。R6においては、炭化水素基の炭素原子数が増大するに従って疎水性が大きくなり分散性が低下するため、R6が炭化水素基の場合の炭素原子数としては、1〜22が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、1〜4が特に好ましく、そしてR6が水素原子の場合が最も好ましい。
繰り返し単位(II)は前記一般式(B)で示されるものである。このような繰り返し単位を与える不飽和カルボン酸系単量体の例として、不飽和モノカルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸系単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、更にこれらの無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸及びこれらの塩、マレイン酸及びその塩、並びに、無水マレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の単量体を必須とするのが好ましく、アクリル酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、並びに、無水マレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の単量体を必須とするのがより好ましい。尚、これら単量体は2種類以上併用してもよい。
【0012】
共重合体の繰り返し単位(I)は、1〜35mol%であることが必要である。好ましくは3〜30mol%、より好ましくは5〜20molである。繰り返し単位(I)が1mol%未満では、共重合体中に存在する(I)由来のオキシアルキレン基の割合が少なすぎて、スラリー静置時に形成する沈降層の固化を防止する性能が不足し、繰り返し単位(I)が35mol%以上では、共重合体中に存在する(II)由来のカルボキシル基の割合が少なくなり、充分な分散性を発揮し得なくなる。
【0013】
本発明の効果を損なわない範囲内において、繰り返し単位(I)、(II)以外の繰り返し単位(III)を導入することができる。繰り返し単位(III)を与える単量体の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
上記共重合体の重量平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう)によるポリエチレングリコール換算で2,000〜200,000が適当であるが、3,000〜150,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。このような重量平均分子量の範囲を選ぶことで、より高い分散性能を発揮する無機顔料分散剤が得られる。
【0015】
本発明の共重合体を得るには、重合開始剤を用いて前記単量体成分を共重合させれば良い。共重合は、溶液重合や塊状重合などの公知の方法で行うことができる。溶液重合は回分式でも連続式でも行なうことができ、その際に使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物等が挙げられるが、原料単量体及び得られる共重合体の溶解性から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが脱溶剤工程を省略できる点で更に好ましい。
水溶液重合を行なう場合は、重合開始剤として、アンモニア又はアルカリ金属の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、等の水溶性の重合開始剤が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族或いは脂肪族炭化水素、エステル化合物、或いはケトン化合物を溶媒とする溶液重合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、等が重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。更に、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤或いは重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。塊状重合は、重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用いて行うことができる。
重合方法は、特に限定されるものではないが、反応の制御が容易となるように、予め、単量体成分を溶媒に溶解してなる溶液と、重合開始剤を溶媒に溶解してなる溶液(または溶媒に懸濁してなる懸濁液)とを調製し、これら溶液を反応器に仕込んだ溶媒に滴下しながら、該単量体成分を重合させる方法が特に好ましい。単量体成分を重合させる際の反応温度や反応時間等の反応条件は、単量体成分の組成、溶媒の種類や使用量、重合開始剤の種類や使用量、反応液の撹拌条件等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、反応温度は、30℃〜120℃の範囲内がより好ましく、反応時間は、0.5時間〜8時間の範囲内がより好ましい。反応圧力は、常圧(大気圧)、減圧、加圧の何れであってもよいが、常圧がより好ましい。
【0016】
単量体成分を重合してなる共重合体は、アルカリ金属水酸化物等のアルカリ性物質によって完全に中和されている完全中和物であることがより好ましい。尚、重合体を完全中和する方法は、特に限定されるものではない。単量体が完全中和物である場合には、得られる重合体を中和する必要は無い。また、重合体が完全中和されたか否かは、例えば、反応液のpHを測定することによって確認すればよい。
【0017】
上記の共重合体からなる顔料分散剤、即ち、本発明にかかる顔料分散剤を用いて水に分散すべき無機顔料としては、具体的には、例えば、カオリン、クレー、天然炭酸カルシウムや合成炭酸カルシウムである各種炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、サチンホワイト、ベンガラ、亜鉛華、水酸化アルミニウム等が挙げられるが、特に限定されるものではない。尚、サチンホワイトとは、水酸化カルシウム水懸濁液に硫酸アルミニウム水溶液を添加・反応させることによって得られる、一般式「3CaO−Al2O3−3CaSO4−31H2O」で表される白色顔料である。
【0018】
これら無機顔料は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。本発明にかかる顔料分散剤は、上記例示の無機顔料のうち、炭酸カルシウム、カオリン及びサチンホワイトに対して特に顕著な作用・効果を奏する。無機顔料に対する顔料分散剤の配合量は、無機顔料の種類や平均粒子径、顔料分散剤の種類、両者の組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、無機顔料に対して、0.01〜5%の範囲内とすることがより好ましく、0.05〜3%の範囲内とすることが更に好ましい。顔料分散剤の配合量が0.01%よりも少ない場合には、無機顔料を水に分散させる能力、即ち分散性能が乏しくなるので、分散性および経時安定性に優れたスラリーを得ることができないことがある。また顔料分散剤の配合量を5%よりも多くしても、上記範囲内で配合した場合と比較して、分散性能の更なる向上は殆ど認められない。
顔料分散剤を用いて無機顔料を水に分散させる方法、即ち、分散液である紙塗工用顔料分散液の調製方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の方法を採用することができる。本発明にかかる顔料分散剤は、従来の顔料分散剤と比較して分散性能に優れており、特にスラリーの経時安定性に優れている。従って、本発明にかかる顔料分散剤を用いた顔料水分散体は、スラリー粘度が低いため取り扱いが容易であり、スラリー静置時に形成する沈降層の固化が起こりにくいため、紙塗工時における生産性の向上が期待できる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。尚、下記実施例、比較例及び表中、特にことわりのない限り、「%」は質量%を表すものとする。
【0020】
実施例及び比較例における各単量体の反応率及び得られた共重合体の重量平均分子量は、下記の条件で測定した。
<各原料単量体の反応率測定条件>
機 種:日本分光社 Borwin
検出器:示差屈折計(RI)検出器(HITACHI 3350 RI MONITOR)
溶離液:種類 アセトニトリル/0.1%リン酸イオン交換水溶液=50/50(vol%)
流量 1.0ml/分
カラム:種類 東ソー(株)製、「ODS−120T」+「ODS−80Ts」各 4.6×250mm
温度 40℃
<共重合体の重量平均分子量測定条件>
機 種:Waters LCM1
検出器:示差屈折計(RI)検出器(Waters410)
溶離液:種類 アセトニトリル/0.05M酢酸ナトリウムイオン交換水溶液=40/60(vol%)、酢酸でpH6.0に調整
流量 0.6ml/分
カラム:種類 東ソー(株)製、「TSK−GEL G4000SWXL」+「G3000SWXL」+「G2000SWXL」+「GUARD COLUMN」各 7.8×300mm、6.0×40mm
温度 40℃
検量線:ポリエチレングリコール基準
<製造例1>
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水198g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを10モル付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−10と称す)400gを仕込み、65℃に昇温した。反応容器を65℃に保った状態で過酸化水素10%水溶液116gを添加した。次いで、アクリル酸251gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に反応容器内に、3−メルカプトプロピオン酸4.5gを3時間、L−アスコルビン酸10%水溶液150gを3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量38,500の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(1)を得た。
<製造例2>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水72g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを25モル付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−25と称す)128gを仕込み、60℃に昇温した。反応容器を60℃に保った状態で過酸化水素30%水溶液0.9gを添加した。次いで、アクリル酸21gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に反応容器内に、3−メルカプトプロピオン酸1.05gを3時間、L−アスコルビン酸10%水溶液150gを3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量20,000の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(2)を得た。
<製造例3>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水72g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−50と称す)128gを仕込み、60℃に昇温した。反応容器を60℃に保った状態で過酸化水素30%水溶液1.2gを添加した。次いで、アクリル酸130gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に反応容器内に、3−メルカプトプロピオン酸3gを3時間、L−アスコルビン酸2%水溶液21gを3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量27,500の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(3)を得た。
<製造例4>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水72g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを100モル付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−100と称す)128gを仕込み、60℃に昇温した。反応容器を60℃に保った状態で過酸化水素30%水溶液0.3gを添加した。次いで、アクリル酸16gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に反応容器内に、3−メルカプトプロピオン酸0.5gを3時間、L−アスコルビン酸10%水溶液12gを3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量25,000の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(4)を得た。
<製造例5>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水276g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−50と称す)400gを仕込み、65℃に昇温した。反応容器を65℃に保った状態で過酸化水素5%水溶液10.3gを添加した。次いで、アクリル酸35gと2−ヒドロキシエチルアクリレート11.4gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に反応容器内に、3−メルカプトプロピオン酸1.6gを3時間、L−アスコルビン酸5%水溶液13.4gを3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量27,000の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(5)を得た。
<製造例6>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水280g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを10モル付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−10と称す)400g、マレイン酸176gを仕込み、65℃に昇温した後、過酸化水素5%水溶液7.2gを添加した。そこへ、L−アスコルビン酸5%水溶液9.4gを1時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量18,000の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(6)を得た。
<製造例7>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水280g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−50と称す)400g、マレイン酸42gを仕込み、65℃に昇温した後、過酸化水素5%水溶液7.2gを添加した。そこへ、L−アスコルビン酸5%水溶液9.4gを1時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量27,000の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(7)を得た。
<製造例8>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水280g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−50と称す)400g、マレイン酸34gを仕込み、65℃に昇温した後、過酸化水素5%水溶液9.8gを添加した。次いで、アクリル酸18gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、L−アスコルビン酸5%水溶液12.7gを1時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量29,000の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(8)を得た。
<製造例9>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水117g、メタリルアルコール(2−メチル−2−プロペン−1−オール)に平均10モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(以下、MAL−10と称す)400g、マレイン酸193gを仕込み、65℃に昇温した後、過酸化水素10%水溶液67gを添加した。そこへ、L−アスコルビン酸10%水溶液86gを1時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量21,000の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(9)を得た。
<製造例10>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水280g、メタリルアルコール(2−メチル−2−プロペン−1−オール)に平均50モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(以下、MAL−50と称す)400g、マレイン酸41gを仕込み、65℃に昇温した後、過酸化水素5%水溶液7.2gを添加した。そこへ、L−アスコルビン酸5%水溶液9.4gを1時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量30,500の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(10)を得た。
<製造例11>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水273g、メタリルアルコール(2−メチル−2−プロペン−1−オール)に平均100モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(以下、MAL−100と称す)400g、マレイン酸22gを仕込み、65℃に昇温した後、過酸化水素5%水溶液3.8gを添加した。そこへ、L−アスコルビン酸5%水溶液4.9gを1時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量34,800の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(11)を得た。
<製造例12>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水280g、メタリルアルコール(2−メチル−2−プロペン−1−オール)に平均50モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(以下、MAL−50と称す)400g、マレイン酸34gを仕込み、65℃に昇温した後、過酸化水素5%水溶液9.8gを添加した。次いで、アクリル酸18gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、L−アスコルビン酸5%水溶液12.7gを3.5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量32,000の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(12)を得た。
<製造例13>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水284g、メタリルアルコール(2−メチル−2−プロペン−1−オール)に平均50モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(以下、MAL−50と称す)400g、マレイン酸34gを仕込み、65℃に昇温した。反応容器を65℃に保った状態で過酸化水素5%水溶液8.8gを添加した。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート12gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、L−アスコルビン酸5%水溶液11.4gを3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量31,500の重合体水溶液からなる、本発明の分散剤(13)を得た。
<比較製造例1>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水198g、3−メチル−3−ブテン−1−オールに平均5モルのエチレンオキシドが付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−5と称す)400gを仕込み、65℃に昇温した。反応容器を65℃に保った状態で過酸化水素10%水溶液115gを添加した。次いで、アクリル酸251gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に反応容器内に、3−メルカプトプロピオン酸4.5gを3時間、L−アスコルビン酸10%水溶液150gを3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量29,000の重合体水溶液からなる、比較分散剤(1)を得た。
<比較製造例2>
製造例1と同様の装置に、イオン交換水72g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール系単量体(以下、IPN−50と称す)200gを仕込み、65℃に昇温した。反応容器を65℃に保った状態で過酸化水素30%水溶液1.2gを添加した。次いで、アクリル酸8gを反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に反応容器内に、3−メルカプトプロピオン酸0.3gを3時間、L−アスコルビン酸2%水溶液7gを3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量32,000の重合体水溶液からなる、本発明の比較分散剤(2)を得た。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
<顔料分散性試験>上記製造例1〜13及び比較例1、2で得られた分散剤を用いて、無機顔料分散液を調製した。また比較例3にポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量10,000)を比較分散剤(3)として用いて評価を行った。無機顔料分散液の調製は、600mlの容器に分散剤1.5g(無機顔料に対して0.5wt%)と、イオン交換水128.6gとを入れ、ホモミキサーを用いて低速で撹拌しながら、無機顔料として軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業株式会社製:タマパール121)300gを少量づつ添加した。炭酸カルシウム全量添加後、撹拌翼を回転数3000rpmで回転させて内容物を15分間撹拌することにより、濃度70%の炭酸カルシウム水分散液を得た。分散性の評価は、上記分散液の粘度をB型粘度計で測定することにより行った。14日静置後の沈降層の固さは、ホモミキサーにより、沈降層を再度分散させる時の難易度により評価した。すなわち、沈降層がホモミキサーによる撹拌により直ぐにほぐれたスラリーを○とし、沈降層が固く、ホモミキサーでの撹拌が困難であったスラリーを×とした。測定結果を表3に示す。本発明の分散剤(1)、(2)、(4)〜(13)では何れも分散直後のスラリー粘度は低く、14日静置後の沈降層も柔らかく、ホモミキサーによる分散も容易であった。一方、比較分散剤(1)と比較分散剤(3)は分散直後の粘度は低いが、14日静置後の沈降層は固く、比較分散剤(2)では分散直後のスラリー粘度が高かった。
【0024】
【表3】
【0025】
【発明の効果】
本発明の分散剤を用いることにより、高スラリー濃度でも低粘度であり、スラリー静置時に形成する沈降層の固化を防止し、経時的にも安定な紙塗工用顔料分散液が得られ、当該の紙塗工用顔料分散液を塗工した紙は表面平滑性に優れる。
Claims (2)
- 下記の一般式(A)
- 請求項1に記載の無機顔料分散剤を含む紙塗工用顔料分散液。
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