JP3969687B2 - スタンプ台用インキ組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスタンプ台用インキ組成物に関するものであり、特にスタンプ台パッド面へのインキ浸透性優れ、印影の乾燥性が良好で、温度や湿度などの外部環境の変化に強いスタンプ台用インキ組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
スタンプ台パッド面へのインキの充填性については、生産効率並びにユーザーの補充液の使い勝手などを考えるとスタンプ台としては重要な性能の一つである。
インキの充填性については、特開平9−52417号公報などに提案されているようなパッド構造面から検討されている例はいくつかあるが、インキ面からの検討は特開平6−228485号公報に示された高蒸気圧溶剤を補充液に添加する方法が提案されている程度である。
【0003】
スタンプ台用インキ組成物には水性と油性の2通りのインキが知られている。水性インキについては、比較的インキ粘度を低く設計できることから、インキ充填性における問題は少ないが、油性インキとなると粘度設定が高くなることが多くなるので充填性の問題が重要となってくる。
【0004】
従来は上記のような問題点よりも印影の乾燥性ならびに印材適性を克服することの課題が重要であり、その点を目的として提案されたものに特開平7−247453号公報や特開平10−140053号公報などがあり、ポリオキシアルキレングリコールのような低蒸気圧溶剤とそれらよりもやや蒸気圧が高く粘度も低いグリコールやグリコールエーテル類などを添加するという提案がなされている。これらのグリコールやグリコールエーテル類の溶剤の添加によって、結果としてインキの浸透性改善にもある程度の効果は発揮されるものの、温度・湿度などの環境変化、特に空気中の水分を吸ってしまいスタンプ台表面がべとべとになってしまう吸湿を生じやすい上、インキ組成物全量に対し比較的多く使用しないと上記問題点を解決することができないため、インキ組成物自体の性能に影響を与えてしまい、インキ充填性もさることながら長期安定性という点で不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
スタンプ台用インキ組成物には、鮮やかな印影を得るという基本的な性能以外にも、良好な印影乾燥性を持つことや周囲の環境変化に影響されないこと、インキ充填性に優れ工程上容易に作製でき、さらにユーザーが容易にインキ補充できることなどの諸性能をバランスよく兼ね備えることが必要とされる。上記提案のような従来のインキ組成物では、これらの性能をバランスよく兼ね備えるものはなかった。よって、本発明の目的は、これらの性能をバランスよく兼ね備えるスタンプ台用インキ組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、スタンプ台用インキ組成物にグリコールやグリコールエーテル類を混合することによってインキ充填性を上げるのではなく、特定成分を比較的少量配合することにより、上記性能のバランスをとり、顕著な性能向上をすることができ、本発明の目的が達成されることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
即ち本発明は、
「1.少なくとも色材、有機溶剤、アセチレングリコール又はアセチレングリコールの誘導体を含有し、該有機溶剤が蒸気圧0.01mmHg(25℃)以下の低蒸気圧有機溶剤であることを特徴とする、スタンプ台用インキ組成物。
2.アセチレングリコール又はアセチレングリコールの誘導体の配合量が0.1〜10.0重量%である第1項に記載のスタンプ台用インキ組成物。」を特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明のスタンプ台用インキ組成物は、スタンプ台に配設されたパッド材に含浸させて使用する。スタンプ台は、その一例を挙げると外装材でケースを形成し、その中にフェルト材などのインキ含浸体を設け、表面を綿布などで被覆したパッド材を収納したものなどが使用される。
【0009】
インキ含浸体としては、連続気泡を有するフォーム材や羊毛などの天然繊維またはポリエステル、アクリル、ポリアミドなどの合成繊維により単独または混合して形成されたフェルト材などが上げられる。インキをより表面方向に導くために繊維密度やインキとの濡れ性の違うフェルト材を積層し形成されたインキ含浸体を用いるとインキの使用効率等が向上し好適である。
【0010】
インキパッドの表面を覆う表布としては、綿、絹等の天然繊維やポリエステル、アクリル等の合成繊維を用いた繊編物や直径が数μm以下の超極細繊維を用いて繊編物としたもの等がある。超極細繊維はインキの浸透性が比較的良好であるが高価であるのでインキに良好な浸透性を持たせるのであれば綿布のような安価な表布を用いるのがよい。
【0011】
本発明に使用される有機溶剤としては、本発明のスタンプ台用インキ組成物の主要成分となるもので、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリアルキレングリコール類やポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類などの蒸気圧0.01mmHg(25℃)以下の低蒸気圧溶剤などが挙げられる。もちろん、諸性能のバランスに影響を与えない範囲でその他の有機溶剤を使用することも可能である。使用する有機溶剤のうち分子量が200〜900のポリプロピレングリコールは蒸気圧が0.01mmHg(25℃)以下であり、なおかつ吸湿性が少ないので、好ましい。配合量は60〜90重量%が好ましい。
また、主溶剤としての有機溶剤は、各種印の基材となる天然ゴムや感光性樹脂などを溶かしたり、変質させたりしないものが選ばれる。
【0012】
本発明に使用される色材は、上記有機溶剤に溶解あるいは分散するものであればよく、従来公知の染料や顔料を使用することができる。染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、などの油溶性染料が用いられる。顔料としては、カーボンブラック、群青、紺青、弁柄、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、インダスロンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、レーキレッド、リソールレッド、ハンザイエロー、酸化チタン、蛍光顔料などの有機顔料や無機顔料が使用できる。また、顔料の分散性などを改善するため合成樹脂、ワックス等で処理した加工顔料を用いることもできる。色材は1種または2種以上混合して用いられ、その使用量は、スタンプ台用インキ組成物全量に対して 3〜20重量%が適当である。
【0013】
従来のように紙上やパッド面での浸透性、印影の乾燥性を向上させるために、グリコールやグリコールエーテル類などの溶剤を使用したものもあるが、スタンプ台パッド面での蒸発や吸湿を生じやすく、フタを長期間開放した状態で使用している際に周囲の温度が上昇すると、表面でインキの乾燥が生じ、印影の濃度が低下したり、湿度が上昇した場合には、インキが水分を吸ってスタンプ表面がべとべとになり、印影がつぶれ、汚くなってしまったりするなどの不具合があり、環境変化に対応する安定性という面で不十分であった。しかも、パッド面での浸透性や印影の乾燥性を向上するためには10〜30重量%程度の比較的多い量の配合が必要である。そのためスタンプ台用インキ組成物全体に与える影響が大きく、上記問題が生ずる原因となっていた。
【0014】
インキ充填性に優れ、印影の乾燥性が良好で、外部環境の変化に強いバランスの良い性能を持つスタンプ台用インキ組成物とするために、本発明のスタンプ台用インキ組成物には、アセチレングリコール又はアセチレングリコール誘導体を配合する。アセチレングリコール又はアセチレングリコール誘導体を用いることにより、パッド面・紙面などへのインキの浸透性がよくなり、インキ充填性、印影の乾燥性が向上するため、従来例のような上記溶剤を積極的に用いることなくインキ充填性、印影の乾燥性が良好で、外部環境の変化に強いスタンプ台用インキ組成物を得ることができる。
【0015】
本発明のスタンプ台用インキ組成物は、パット部材への浸透性を向上させることができることから、生産時のインキ充填や使用によりインキを消費した場合のユーザーによるインキの再充填も容易になり、良好なインキ充填性を示すものである。
また、インキのパッド面への浸透性を上げることはパッド面からスタンプ材へインキを転写する際に過剰なインキをパッド内へ引き戻す効果も付与されるため、過剰なインキがスタンプ材の印面に付着しにくくなるため、結果として紙上でのインキの乾燥性に、より有利な方向へ働く相乗効果ももたらす。
さらに、色材に顔料を用いた場合は、アセチレングリコールやアセチレングリコール誘導体が顔料の分散安定剤としても作用し、たいへん好ましい。
【0016】
アセチレングリコール又はアセチレングリコール誘導体としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシンー4,7−ジオールや2,4,7,9−テトラメチル−5−デシンー4,7−ジオール−ジ(ポリオキシエチレン)エーテルなどが挙げられる。
【0017】
スタンプ台用インキ組成物全体に対するアセチレングリコール又はアセチレングリコール誘導体の配合量は、0.1〜10.0重量%がよく、0.1〜3.0重量%がさらに好ましい。この範囲より少ないと、その効果が得られにくくなり、この範囲を超えて配合しても、その効果はそれ以上変わらない上、スタンプ台用インキ組成物全体の物性に大きな影響を与えてしまうおそれが発生し、特にアセチレングリコールの吸湿により吸湿時の印影が劣化する傾向があり、好ましくない。また、コスト面でも比較的高価なので、安価な主溶剤をより多く用いることが好ましい。
【0018】
アセチレングリコールおよびアセチレングリコール誘導体はそれぞれ単独で配合してもよいが、混合して配合してもかまわない。
【0019】
その他、必要に応じて、界面活性剤や防腐剤などの添加剤も適宜配合することができる。
【0020】
【実施例】
次に実施例、比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
下記表1に記載したスタンプ台用インキ組成物のうち、はじめにポリプロピレングリコールとポリビニルブチラールを60℃オイルバスにて撹拌溶解し、その後アセチレングリコールとカーボンブラックを添加、撹拌した後、3本ロールにて顔料を分散し、スタンプ台用インキ組成物を得た。
その後、このスタンプ台用インキ組成物を、羊毛/アクリルからなるフェルト材をインキ含浸体、綿布を表布としたインキパッドに充填して、各種試験を行った。結果は表1に記載した。
【0021】
実施例2〜4および比較例1、2
表1に示した組成のインキ組成物を実施例1と同様に調製し、スタンプ台用インキ組成物を得たのち、スタンプパッドに含浸させ、各種試験を行った。結果は表1に記載した。
【0022】
実施例5および比較例3
下記表1に記載したスタンプ台用インキ組成物のうち、はじめにポリプロピレングリコールとポリビニルブチラールを60℃オイルバスにて撹拌溶解し、その後アセチレングリコールと油溶性染料を添加し60℃オイルバスにて4時間撹拌し、スタンプ台用インキ組成物を得た。
その後、このスタンプ台用インキ組成物を、羊毛/アクリルからなるフェルト材をインキ含浸体、綿布を表布としたインキパッドに充填して、各種試験を行った。結果は表1に記載した。
【0023】
Figure 0003969687
【0024】
インキ充填性試験
インキ未充填のパッドと10000回連続捺印後のパッドを用意し、インキをパッド表面へ滴下したときのインキ充填の様子を目視にて観察した。
(25℃/50%RH)
Figure 0003969687
※パッドとしては羊毛/アクリルからなるフェルト材をインキ含浸体、綿布を表布としたインキパッドを使用した。
【0025】
耐吸湿性試験
各インキ組成物を充填したインキパッドを20℃90%RHの条件で4週間開放放置し、その後ゴム印にてPPC用紙(XEROX社P紙)に捺印したときの印影を目視評価した。また、同条件下でφ30mmのインキ瓶に各インキ組成物を10gづつ入れ、蓋をせずに放置し、インキ自体の変化も評価した。
Figure 0003969687
※パッドとしては羊毛/アクリルからなるフェルト材をインキ含浸体、綿布を表布としたインキパッドを使用した。
【0026】
耐蒸発性試験
各インキ組成物を充填したインキパッドを60℃乾燥機中に4週間開放放置し、その後ゴム印にてPPC用紙(XEROX社P紙)に捺印したときの印影を目視評価した。また、同条件下でφ30mmのインキ瓶に各インキ組成物を10gづつ入れ、蓋をせずに放置し、インキ自体の変化も評価した。
Figure 0003969687
※パッドとしては羊毛/アクリルからなるフェルト材をインキ含浸体、綿布を表布としたインキパッドを使用した。
【0027】
印影乾燥性
ゴム印にてPPC用紙(XEROX社P紙)に捺印し、手で擦過したときの印影の汚れの程度を目視にて評価した。
Figure 0003969687
【0028】
インキ保存安定性
各インキ組成物をインキ瓶に充填し、蓋をして50℃乾燥機に12週間放置した。その後インキ組成物の流動性を、E型粘度計で評価した。
Figure 0003969687
【0029】
表1により、本発明のスタンプ台用インキ組成物は、インキ充填性に優れ、印影の乾燥性が良好で、外部環境の変化に強いスタンプ台用インキ組成物であることが判る。
【0030】
比較例1および3のインキは、低蒸気圧溶剤のみの溶剤構成であるので、インキの耐環境性能は良好なものの、インキ充填性、印影乾燥性に劣るものであった。
【0031】
比較例2は、ジプロピレングリコールを配合したことで、インキ充填性、印影乾燥性などは良好であるが、蒸発しやすく、インキ耐吸湿性能に問題があり、耐環境性能が劣るものであった。
【0032】
【発明の効果】
本発明のスタンプ台用インキ組成物は、アセチレングリコール又はアセチレングリコール誘導体を比較的少量配合することにより、顕著な性能向上をすることができ、特にパッド面へのインキの浸透性がよいことから、インキの充填性に優れ、さらに印影の乾燥性が良好で、温度や湿度などの外部環境の変化に強いバランスのとれたスタンプ台用インキ組成物を得ることができた。

Claims (2)

  1. 少なくとも色材、有機溶剤、アセチレングリコール又はアセチレングリコール誘導体を含有し、該有機溶剤が蒸気圧0.01mmHg(25℃)以下の低蒸気圧有機溶剤であることを特徴とする、スタンプ台用インキ組成物。
  2. アセチレングリコール又はアセチレングリコール誘導体の配合量が0.1〜10.0重量%である請求項1に記載のスタンプ台用インキ組成物。
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