JP3753818B2 - 油性染料インキ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、主にスタンプ台に用いられる油性染料インキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のスタンプ台はインキの乾燥を防止するために、気密性のある容器と表面を密閉できる蓋を有している。そして、使用の際は蓋を開けて用い、使用後はすみやかに元にもどしてインキの乾燥を防いでいる。
しかし、使用頻度の高い場所では、実際はこのような行為は行われず、蓋やキャップを開け放したままにされることが多い。また通常に使用されている場合でも、蓋のもどし忘れによるインキ乾燥によって、押印不可能になることが多かった。
このようなことを踏まえて揮発することのないインキを用いたスタンプ台が公知となっており、これには水性のものと油性のものが知られている。
水性のものは、水単独では蒸発乾燥してしまうので、通常グリセリン等の保湿剤を混合して乾燥を防いでいる。しかし、外界が乾燥している時期には、インキがかすれ、外界の湿度が高い時期は、吸湿しすぎてべとついてしまう欠点があった。
一方、油性のものは、グリセリン、ひまし油、ひまし油誘導体などによる不揮発性有機溶剤を用いたインキが知られている。グリセリンは前記の通り吸湿性があるので、外界の湿度が高い時期は、吸湿しすぎてべとついてしまう欠点があったし、ひまし油は吸湿・乾燥はしないものの、粘度が高すぎて、押印後の印影の乾燥速度が極めて遅く、他の書類や手を汚す欠点があった。また、ひまし油誘導体、例えば、リシノール酸メチルエステルなどは、天然ゴムで作られているゴム印を膨潤させてしまうし、特開昭50−41606、特開昭50−155322等に開示されているような感光性樹脂印を膨潤してしまう欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者はインキ自体が吸湿、乾燥せず、天然ゴム製ゴム印や感光性樹脂印を変質させない新規な油性染料インキを見い出し本発明を完成した。
【0004】
【課題を解決するための手段】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体とグリセリンの三官能基がエーテル結合したポリオキシエチレンオキシプロピレントリオール、または、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体とグリセリンの三官能基がエーテル結合したポリオキシエチレンオキシプロピレントリオールと、染料と、アクリル樹脂粉末、アクリル樹脂水溶液、水分散性アクリル樹脂コロイダルディスパージョン、水分散性アクリル樹脂エマルジョンから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする油性染料インキ。
【0005】
【化1】
【0006】
本発明に用いられる溶剤は、式(1)で表される化合物である。
これは、グリセリンをベースにしたポリオキシエチレンオキシプロピレントリオールであって、更に詳しくは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体とグリセリンの三官能基がエーテル結合したもの、または、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体とグリセリンの三官能基がエーテル結合したものである。本発明では、平均分子量が200〜6200のものが好ましく使用される。
特に、オキシエチレンの数平均重合度が1〜60、かつ、オキシプロピレンの数平均重合度が1〜60のものが好ましく用いられ、オキシエチレンの数平均重合度/オキシプロピレンの数平均重合度=1〜2となるものが最も好ましい結果を与える。例えば、
オキシエチレンの数平均重合度:オキシプロピレンの数平均重合度=60:45
オキシエチレンの数平均重合度:オキシプロピレンの数平均重合度=30:25
オキシエチレンの数平均重合度:オキシプロピレンの数平均重合度=15:15
などを挙げることができ、これらはいずれも良好な結果を与える。
なぜ、この割合のものが最も好ましい結果が得られるのかは定かではないが、親水性基であるオキシエチレン基と親油性基であるオキシプロピレン基がバランスよく共重合しているので、天然ゴム印や感光性樹脂印を侵さないといった水性溶剤の利点と吸湿・乾燥しないといった油性溶剤の利点を併せ持つことができたためと思われる。
この溶剤は、インキ全量に対して50〜95重量%を配合することができるが、特に好ましい範囲は60〜80重量%である。
また、本発明では、一般に市販されている平均分子量が200〜6200のポリプロピレングリコール、及び/又は、一般に市販されている平均分子量が200〜6200のポリエチレングリコールを、前記式(1)の化合物に混合し、溶剤として用いることもできる。この場合、式(1)で表される化合物50重量%以上とポリプロピレングリコ−ル及び/又はポリエチレングリコ−ル50重量%以下を混合して用いると理想的な溶剤となる。
【0007】
本発明に用いられる染料は、モノアゾ系、ジスアゾ系、金属錯塩型モノアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系など従来公知の油溶性染料を特に制限されることなく使用することができる。
これらの油溶性染料は色合いを勘案しながら単独又は混合して使用でき、インキ全量に対し1〜30重量%を使用することができる。また、特に好ましい範囲は3〜25重量%である。
【0008】
他に本発明には、チキソトロピー性付与剤としてアクリル樹脂粉末、アクリル樹脂水溶液、水溶性アクリル樹脂コロイダルディスパージョン、水溶性アクリル樹脂エマルジョンから選ばれる少なくとも一種が用いられる。
本発明で用いることのできるアクリル樹脂粉末は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体等の樹脂、及び、それらのアルカリ金属塩・アンモニウム塩・アミン塩からなる樹脂の粉末であって、酸価80以下、ガラス転移温度(Tg)が80℃以下のものが特に好ましく用いられる。
本発明で用いることのできるアクリル樹脂水溶液は、前記アクリル樹脂粉末を水に溶解させて水溶液としたもの用いることができ、固形分20〜60%とするのが好ましい。
本発明で用いることのできる水溶性アクリル樹脂コロイダルディスパージョンは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体などのアルカリ金属塩・アンモニウム塩・アミン塩を水溶液中で分散安定化したコロイド溶液であって、固形分20〜60%、酸価80以下、ガラス転移温度(Tg)が80℃以下のものが特に好ましく用いられる。
本発明で用いることのできる水溶性アクリル樹脂エマルジョンは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体などをアルカリ金属・アンモニウム・アミン等によって水溶性とした自己乳化型アクリル酸樹脂を水溶液中で分散安定化した乳化液であって、固形分20〜60%、酸価80以下、ガラス転移温度(Tg)が80℃以下のものが特に好ましく用いられる。
本発明に用いられるアクリル樹脂粉末を具体的に列挙すると「ジョンクリルJ−683・J−68・J−586(以上、ジョンソン(株)製)、ウルトラホールド8・ルビマー100P(以上、BASFジャパン(株)製)、レオジック830L・835H・250H・ジュリマーAC−10P(以上、日本純薬(株)製)」 等を挙げることができ、本発明に用いられる水溶性アクリル樹脂コロイ ダルディスパージョンを具体的に列挙すると「ジョンクリルJ−61J・354・501(以上、ジョンソン(株)製)」等を挙げることができ、本発明に用いられる水溶性アクリル樹脂エマルジョンを具体的に列挙すると「ジョンクリル J−61・J−62・J−68・J−537(以上、ジョンソン(株)製)、Carboset XL−30(BF Goodrich(株)製)、ジュリマーET−410・ET−510(以上、日本純薬(株)製)、APPRETAN3700、モビニール 771H(以上、ヘキスト(株)製)、プライマル(ロ−ム(株)製)」 等を挙げることができる。
これらのアクリル樹脂粉末、アクリル樹脂水溶液、水溶性アクリル樹脂エマルジョン、水溶性アクリル樹脂コロイダルディスパージョンは、前記溶剤との相溶性に極めて優れており、例えば両者を混合攪拌後80℃の状態で5日間放置した場合や30℃の状態で5日間放置した場合においても、樹脂が析出することは全くなく、顔料を完全に分散させたままの状態を長期に渡って保つことができる。その上、チキソトロピー性も付与するため、通常の静止状態においてインキ粘度を10000mPa・s以上となし、顔料の沈降防止に寄与する。また、インキ粘度は印判等の押し付けの力によって、1000〜2000mPa・s程度に低下するため、スタンプ台使用時はスタンプインキとして理想的な粘度となる。
上記アクリル樹脂粉末、アクリル樹脂水溶液、水溶性アクリル樹脂エマルジョン、水溶性アクリル樹脂コロイダルディスパージョンは、少なくとも一種を用いればよく、もちろん複数種を混合して用いてもよく、インキ全量に対して2〜30重量%が使用できる。
【0009】
本発明では、上記物質以外にも押印後の印影の浸透乾燥を若干早めるため、浸透補助剤として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテルを配合してもよい。
【0010】
以上の添加物の他に、防腐防かび剤を使用することができるが、できれば使用しない、又は、使用しても極く少量にすることが好ましい。
【0011】
【作用】
本発明の溶剤は、水性と油性の利点を併せもっており、吸湿乾燥をしない、天然ゴム等の印材を侵さない、紙等の被捺印物に対して浸透力がある、といった性質があり、この溶剤に適したチキソトロピー性付与剤を配合することによって、スタンプインキとして有用なインキが得られる。
【0012】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
尚、単に「部」とあるのは「重量部」を示す。
【0013】
(実施例1)
C.I.Solvent Black 27 4部
スチレン−アクリル酸共重合体 11部
オキシエチレンの数平均重合度60、オキシプロピレンの数
平均重合度45であるポリオキシエチレンオキシプロピレン
ブロック共重合体とグリセリンとのポリエーテルポリオール 74部
水溶性アクリル樹脂エマルジョン 6部
(ジョンクリル J−61:ジョンソン(株)製)
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 5部
上記の材料をプロペラ攪拌機にて混合して、100r.p.m.で5000mPa・s(25℃)の黒色インキを得た。
【0014】
(実施例2)
C.I.Solvent Red 124 5部
スチレン−アクリル酸共重合体 15部
オキシエチレンの数平均重合度30、オキシプロピレンの数
平均重合度25であるポリオキシエチレンオキシプロピレン
ブロック共重合体とグリセリンとのポリエーテルポリオール 75部
水溶性アクリル樹脂エマルジョン 5部
( Carboset XL−30:BF Goodrich(株)製)
上記の材料をプロペラ攪拌機にて混合して、100r.p.m.で4000mPa・s(25℃)の赤色インキを得た。
【0015】
(実施例3)
C.I.Solvent Blue 5 4部
スチレン−アクリル酸共重合体 11部
オキシエチレンの数平均重合度15、オキシプロピレンの数
平均重合度15であるポリオキシエチレンオキシプロピレン
ランダム共重合体とグリセリンとのポリエーテルポリオール 75部
水溶性アクリル樹脂コロイダルディスパージョン 6部
(ジョンクリル J−61J:ジョンソン(株)製)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 4部
上記の材料をプロペラ攪拌機にて混合して、100r.p.m.で4000mPa・s(25℃)の青色インキを得た。
【0016】
(比較例1)
ローダミン 5部
ポリビニルピロリドン 14部
水 25部
グリセリン 55部
ジアルキルスルホコハク酸ソーダ 1部
上記成分からなる従来の水性インキ。
【0017】
(比較例2)
ニグロシン 5部
ポリビニルピロリドン 5部
ケトン樹脂 5部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 25部
エチレングリコール 60部
上記成分からなる従来の揮発性油性インキ。
【0018】
各実施例、及び、各比較例のインキをスタンプ台に含浸させ、市販の天然ゴム印、市販の感光性樹脂印(商品名:クリアソフト(旭化成社製ARP樹脂印))をもって上質紙に押印した。その結果を以下に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
(試験方法及び評価基準)
▲1▼天然ゴム印の変化
…スタンプ台盤面に印面を接触させたまま、室温中で10日間放置した後、上質紙に押印して、その印影を観察した。
○:全く変化なし。△:文字の周囲がややぼやけていた。
×:文字の周囲がぼやけており、細かい文字がつぶれた。
▲2▼感光性樹脂印の変化
…スタンプ台盤面に印面を接触させたまま、室温中で10日間放置した後、上質紙に押印して、その印影を観察した。
○:全く変化なし。△:文字の周囲がややぼやけていた。
×:文字の周囲がぼやけており、細かい文字がつぶれた。
▲3▼印影の乾燥時間
…温度20℃、湿度65%の状態で、上質紙に押印後、上質紙を重ねて1Kg/cm2の力を加え、転写しなくなるまでの時間を計測した。
▲4▼吸湿・乾燥性の試験
…湿度80%・温度50℃、湿度80%・温度30℃、湿度40%・室温の条件下でそれぞれ1ヶ月間放置した後、上質紙に押印して、その印影を観察した。
A:鮮明。 B:べとつきがある。 C:かすれる。
【0021】
【効果】
本発明は、インキが乾燥・吸湿しないのでスタンプ台の蓋を閉め忘れても盤面が乾燥して使用不能となったり、逆に空気中の水分を吸収してべとついてしまうことがなく、1年を通して使用状態が変化しない。また、天然ゴム製ゴム印や感光性樹脂印等を変質させることがなく、更に、紙等の吸収紙に対する浸透力が優れているので、押印後の印影の浸透乾燥が早い。
その上、本発明は油性インキでありながらアルコールのみならず水にも容易に溶解するので、捺印作業終了後のゴム印の洗浄が容易であり、また、同じゴム印を使用する所謂「色替え」もスムーズにできる効果もある。
Claims (1)
- エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体とグリセリンの三官能基がエーテル結合したポリオキシエチレンオキシプロピレントリオール、または、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体とグリセリンの三官能基がエーテル結合したポリオキシエチレンオキシプロピレントリオールと、染料と、アクリル樹脂粉末、アクリル樹脂水溶液、水分散性アクリル樹脂コロイダルディスパージョン、水分散性アクリル樹脂エマルジョンから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする油性染料インキ。
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JP31310596A JP3753818B2 (ja) | 1996-11-07 | 1996-11-07 | 油性染料インキ |
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JP31310596A Expired - Fee Related JP3753818B2 (ja) | 1996-11-07 | 1996-11-07 | 油性染料インキ |
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- 1996-11-07 JP JP31310596A patent/JP3753818B2/ja not_active Expired - Fee Related
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