JP3865873B2 - 消去性着色剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は消去性着色剤組成物に関する。さらに詳しくは、着色剤の消去性をさらに向上させた消去性着色剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、着色剤組成物は色彩表現を与えるため、顔料又は染料を着色剤として用いていたが、誤って衣服に付いた場合などシミや汚れが残ってしまう問題を有していた。この問題を解決すべく消去性に優れた着色剤組成物について多くの技術が開示されており、着色剤自体の消去性を向上させたウォッシャブルマーカー用インキ、繊維選別用着色剤などが公知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの消去性着色剤は、従来のものよりは消去性において向上しているものの、洗濯により完全に消去できるほどの消去性を有していなかった。すなわち、それらが通常上市されている形態である40%水溶液をそのままあるいは希釈させてインキ、絵具、墨汁などに使用した場合、衣服に付いたものの色、濃度、付着量などによっては、一般に家庭でなされているような洗濯で完全に消去するのが困難な場合があり、洗濯温度を極端に上げるか、長時間かけて洗濯するなどの処置が必要となる。
【0004】
また、これらの着色剤を用いて着色剤組成物とした場合、含有する定着剤を減らす等、着色剤組成物の組成を変化させることによっても消去性を向上させることができる。しかしながら、この場合は滲みが生じやすくなるなど、目的の被塗物に塗布した場合において安定した塗膜を得られにくくなり、着色剤組成物としての本来の目的を発揮することができなくなるといった問題を引き起こしていた。
【0005】
以上のように、着色剤組成物としての本来の目的を十分に発揮でき、かつ一般に家庭で行われている洗濯で消去可能な着色剤組成物は、未だ開発されていなかったのが現状である。
【0006】
本発明の課題は、かかる問題を解決すべく、着色剤組成物としての目的を損なうことなく、衣服に誤って付着した場合でも、家庭で一般に行われている簡便な洗濯で完全に消去することができる消去性着色剤組成物を提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題を解決すべく、消去性着色剤組成物の組成について鋭意検討した結果、着色剤に消去剤を配合することにより、着色剤の色、濃度、付着量にとらわれず、一般で家庭で行われている洗濯で消去可能な消去性を実現できることを見いだした。請求項1の発明は、少なくとも着色剤及び消去剤を含有する消去性着色剤組成物である。
【0008】
本発明の着色剤組成物が消去性において優れているのは、着色剤として分子鎖の長いものを使用することにより、繊維への浸透を抑制し、さらに消去剤を添加することにより繊維上での湿潤状態を作り、繊維のミセルが絞るのを防止し、繊維に浸透した染料ポリマーを流れ出しやすくするためである。なお、本発明でいう消去剤とは、水溶性であり、水溶液にした場合でも低粘度であり、界面活性効果又は湿潤効果を有する物質が該当する。
【0009】
水溶性であることが必要な理由は、下記に示す着色剤が、一般に水溶性のものとして提供されていること、一般家庭では水を溶媒として洗濯することに基づく。また、界面活性効果又は湿潤効果を有するものは、洗濯時において溶媒である水と着色剤微粒子との結合を促進させるためであると推測できる。なお、低粘度であることが必要な理由は、本発明の着色剤組成物を墨汁やマーカー用インキとして用いる場合にその筆記特性を確保するために必要だからであって、着色剤組成物自体の消去性を向上させるための直接的な理由ではない。
【0010】
上記消去剤として好適なものにポリエチレングリコール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸ナトリウム及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンビタミンモノラウレート等のポリオキシエチレン誘導体が挙げられる。これらの化合物は上記消去剤に必要とされる条件に関して優れた性質を有しており、着色剤に添加して着色剤組成物とした場合、優れた消去性を実現させる。
【0011】
本発明の着色剤組成物における着色剤とは、その消去性を向上させ、繊維への染着力が少ない易消去性着色剤を意味し、一般に、ウォッシャブルマーカー用インキや繊維選別用インキとして提供されている。したがって、本発明にいう着色剤とは色彩的表現を与えるために添加される染料や顔料などのすべてを意味するものではない。本発明に用いるのに特に好適な着色剤として、下記の化学式の一般式で表わされる着色剤が例示できる。
【化2】
(但し、Rは染料基、nは15以上 、Xは1〜16、nとXの積が30〜200)
【0012】
すなわち、分子中に少なくとも15反復単位を有する水溶性の重合体界面活性剤であり、分子量は少なくとも1000であり、重合鎖に結合した染料基Rを有している化合物である。染料基Rは発色部に相当するが、例えば以下の化学式で表されるものが例示できる。
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
具体的な着色剤としては、元来繊維選別用染料として用いられていたMilliken Chemical社製、商品名「VERSATINT」や、同じくMilliken Chemical社製のマーカー用インキ 商品名「PALMER」をいう。本発明においてはこれらの着色剤の使用が望ましいが、特に限定されるものではない。
【0016】
本発明の消去性着色剤組成物は、その用途において特に限定されるものではなく、広く描画材等として使用することができる。例えば、墨汁、マーカー用インキ、絵具としての使用においても優れており、この用途に好適に用いることができるように公知の各種添加剤を配合した場合でも、その消去性は損なわれることがない。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は少なくとも着色剤及び消去剤を含有する消去性着色剤組成物である。
【0018】
着色剤としては特に限定されるものではないが、発色効果を有するものであって、繊維への染着力が少なく、水溶性でありかつ水溶液が低粘度であることは必要である。具体的には既述のように元来繊維選別用染料として用いられていたMilliken Chemical社製、商品名「VERSATINT」や、同じくMilliken Chemical社製のマーカー用インキ 商品名「PALMER」が好適に用いられる。
【0019】
着色剤の配合量は着色剤組成物全体に対して5〜95重量%(以下単に%と略記する。)であることが好ましい。これらの着色剤は通常40%水溶液として提供されているため、固形分に換算すると2〜38%となる。これらの範囲の中で10〜95%(固形分4〜48%)が最適である。この範囲より過剰に配合すると高粘度となり、場合によっては他の品質に影響を及ぼすことがあり、これらの範囲より少ない場合は、濃度不足となる。具体的な配合量は着色剤の濃度と、着色剤の用途に応じて個別的に決定すればよい。
【0020】
着色剤は、単一の色彩を有するものを単独で用いる必要はなく、2以上を調合して、各種の色を作り出してもよい。具体的には例えば、赤と黄色のものを混ぜて用いれば、橙の着色剤組成物を作ることができる。
【0021】
消去剤としては、上記のように水溶性であり、水溶液にした場合でも低粘度であり、界面活性効果又は湿潤効果を有するものであることが必要である。具体的には、ポリエチレングリコール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸ナトリウム及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンビタミンモノラウレート等のポリオキシエチレン誘導体が好適である。これらのうちでも特に重量平均分子量600以上7000以下のポリエチレングリコールが最適である。なお、7000を超える分子量のポリエチレングリコールは水溶液の粘性が高く使用用途によっては筆記特性に欠けるため好ましくない。
【0022】
これらの消去剤の配合量としてはおよそ5%以上であることが必要である。具体的には、消去性の効果を向上させるためには、着色剤(固形分)の1/2の配合量以上が好ましい。配合量の上限は特に限定されるものではないが、着色剤(固形分)の配合量に対して150%までにすることが好ましい。これより過剰に配合すると、高粘度となり、用途によっては他の品質に悪影響を及ぼすことが考えられるため好ましくない。
【0023】
本発明の着色剤組成物は、消去剤の溶解のため必要に応じて水で希釈しても良い。水の配合量は90%以下であることが好ましい。この範囲より過剰に配合すると、濃度不足となり、着色剤として好ましくない。ただし、既述の染料(商品名「VERSATINT」 Milliken Chemical社製)は通常は40%水溶液で取り引きされているため、製造時においては特に水を添加する必要がない場合もある。
【0024】
本発明の消去性着色剤組成物には、必要に応じて、定着剤、増量剤、、防腐剤、防カビ剤、香料、アルコール、粘度調整剤、湿潤剤、消泡剤、レベリング剤等の一般にマーカー、墨汁、絵具に使用される添加物を配合しても良い。なお、防腐剤としては「プロクセルXL−2」(ゼネカ社製)が好適に使用でき、添加量は0〜1%の範囲が好ましい。防カビ剤としては「デンシルP」(ゼネカ社製)が好適なものとして例示でき、添加量は0〜1%程度が好適である。
【0025】
本発明の消去性着色剤組成物は例えば次のような手順により製造することができる。まず、水に消去剤、各種添加剤を溶解させ、15分間攪拌する。このとき各種添加剤、消去剤を溶解する目的での範囲内で加熱しても良い。その後着色剤を必要量添加し、30分攪拌する。
【0026】
また、水を添加しない場合は、市販の着色剤の40%水溶液に直接消去剤及び添加剤を配合し、15分間攪拌する。このとき各種添加剤、消去剤を溶解する目的での範囲内で加熱しても良い。
【0027】
【実施例】
以下本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。但し、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
【0028】
(消去剤の配合量)
着色剤としてMelliken Chemical社製商品名「PALER」40%水溶液(表中の数値は固形分に換算)を水で希釈し、消去剤としてポリエチレングリコール(重量平均分子量3000)を表1に示す配合量でママコができないように攪拌しながら少しずつ添加し、完全に溶解させて、消去性着色剤組成物を得た。
【0029】
【表1】
【0030】
(消去剤の分子量)
着色剤としてMelliken Chemical社製商品名「PALER」40%水溶液(表中の数値は固形分に換算)水で希釈し、20%としたものに、消去剤として分子量を変えた表2のポリエチレングリコール20%をママコができないように攪拌しながら少しずつ添加し、完全に溶解させて、消去性着色剤組成物を得た。
【0031】
【表2】
【0032】
(消去性試験)
綿ブロードの試験布に実施例、比較例の着色剤組成物を直接塗布し、室温で指触乾燥するまで放置し、乾燥後、洗濯機で合成洗剤(花王社製、商品名「アタック」)を使用(メーカー指定濃度になるように調整)して20℃で15分間洗濯を行い15分水洗い後、綿ブロードの状態を目視試験により評価した。評価は、完全に消去できた場合に○、消去性向上の効果はあるが完全には落ちない場合に△、着色剤のみでの消去性と同等の場合、に×として表し、その結果を前記表1及び表2に示した。
【0033】
(筆記性試験)
上記実施例5乃至9及び比較例4乃至6の着色剤組成物を用いて、下記の割合で各種添加物を用いて墨汁を製造し、筆で習字用半紙に筆記して、その筆記特性を検討した。評価方法としては筆跡に滲みが生じるか否か、粘性が高すぎて筆記特性が損なわれないか否かについて行い、双方を満足すると判断したものについては○、どちらかが一方でも満足できないものについては×として表し、その結果を上記表2に示した。なお、防カビ剤としてはゼネカ社製、商品名「デンシルP」を使用した。なお、部とは重量部を示す。
実施例、比較例の着色剤組成物 65部
水 100部
重量平均分子量3000のポリビニルアルコール 8部
防カビ剤 1部
【0034】
表1の結果より着色剤の配合量に応じて消去剤であるポリエチレングリコールの添加量を増量する必要があることが判明した。特に、実施例4より、消去剤を着色剤の1/2量以下とした場合は完全には消去することができず、着色剤の量に応じて消去剤の配合量を考慮する必要があることが判明した。
【0035】
また、表2の結果より消去剤にポリエチレングリコールを用いた場合は、その分子量に応じて消去性が変化することが判明した。分子量が600以下の比較例4では消去性に効果を奏するものの、完全には消去することができず、分子量600以上の実施例5乃至9及び比較例6において消去性が向上した。但し、分子量が7000を超える比較例6においては、消去性は確保されるものの、筆記特性が損なわれ、インキ組成物としての用途には好ましくない結果を得た。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、少なくとも着色剤及び消去剤を含有する消去性着色剤組成物であるので、衣服などに誤って付着しても、一般に家庭で行われている洗濯により完全に消去することができる。
Claims (6)
- 前記着色剤が固形分に換算して消去性着色組成物全量に対して2〜38重量%含まれる請求項1記載の消去性着色剤組成物。
- 前記消去剤の配合量を、前記着色剤の配合量(固形分換算)の1/2以上含まれている請求項1又は2記載の消去性着色剤組成物。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の消去性着色剤組成物を含有する墨汁。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の消去性着色剤組成物を含有する絵具。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の消去性着色剤組成物を含有するマーキングペン用インキ。
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