JP3876047B2 - 墨汁組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、墨汁組成物に関する。さらに詳しくは、滲みなどの問題を生ずることなく、誤って衣服などに付着した場合でも家庭で一般に行われているような簡単な洗濯により完全に消去することができる墨汁組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、墨汁はカーボンブラックなどの着色剤に、膠やポリビニルアルコールなど定着剤を加えることによって製造されている。かかる定着剤は墨汁に粘度を与え、紙への滲みなどを防止するために加えられるものであり、紙などの被塗物に対する定着性をも向上させるものである。
【0003】
したがって、誤って衣服に付いた場合などは、カーボンブラック等の墨汁の着色剤の微粒子が繊維の目に引っかかりやすくなることから、きれいに消去できるものではなく、衣服にシミや汚れが付着してしまうという問題を有していた。また、この問題を解決するため原料、組成などを調整することも考えられるが、紙などへの滲みがひどくなるなどの問題を併発し、完全に解決されるには至っていなかった。
【0004】
この問題を解決すべく消去性に優れた着色剤組成物について多くの技術が開示されており、着色剤自体の消去性を向上させたウォッシャブルマーカー用インキ、繊維選別用着色剤などを用いて墨汁とする技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの消去性着色剤は、従来のものよりは消去性において向上しているものの、洗濯により完全に消去できるほどの消去性を有していなかった。すなわち、それらが通常上市されている形態である40%水溶液をそのままあるいは希釈させて墨汁に使用した場合、衣服に付いたものの色、濃度、付着量などによっては、一般に家庭でなされているような洗濯で完全に消去するのが困難な場合があり、洗濯温度を極端に上げるか、長時間かけて洗濯するなどの処置が必要となる。
【0006】
また、これらの着色剤を用いて墨汁組成物とする際に、含有する定着剤を減らす等、墨汁組成物の組成を変化させることによっても消去性を向上させることができる。しかしながら、この場合は書写後に造膜させることができず、滲みが生じやすくなるなど、目的の被塗物に塗布した場合において安定した塗膜を得られにくくなり、墨汁組成物としての本来の目的を発揮することができなくなる問題を引き起こしていた。
【0007】
さらに、従来一般に定着剤として用いられてきたポリビニルアルコールでは墨汁としての性能を発揮するため等に用いる各種添加剤の組み合わせによっては、ポリビニルアルコールがゲル化したりして、経時的安定性に問題を有していた。
【0008】
以上のように、墨汁としての本来の目的を十分に発揮でき、かつ一般に家庭で行われている洗濯で消去可能な墨汁組成物は、未だ開発されていなかったのが現状である。
【0009】
本発明の課題は、滲みなどの問題を生ずることなく、誤って衣服などに付着した場合でも家庭で一般に行われているような簡単な洗濯により完全に消去することができる墨汁組成物を提供する点にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる問題を解決すべく鋭意検討した結果、定着剤を用いた墨汁組成物において、一定の性質を有する消去剤を配合することにより、墨汁としての性能を維持したまま、消去性を向上できることを見出した。請求項1の発明は、易消去性着色剤、消去剤、定着剤及び水を含有する墨汁組成物である。
【0011】
本発明の着色剤組成物が消去性において優れているのは、着色剤として分子鎖の長いものを使用することにより、繊維への浸透を抑制し、さらに消去剤を添加することにより繊維上での湿潤状態を作り、繊維のミセルが絞るのを防止し、繊維に浸透した染料ポリマーを流れ出しやすくするためである。なお、本発明でいう消去剤とは、水溶性であり、水溶液にした場合でも低粘度であり、界面活性効果又は湿潤効果を有する物質が該当する。
【0012】
水溶性であることが必要な理由は、一般的に易消去性着色剤が水溶性のものとして提供されていること、及び一般家庭では水を溶媒として洗濯するためである。さらに、界面活性効果又は湿潤効果を有するものは、洗濯時において溶媒である水と着色剤微粒子との結合を促進させるためであると推測される。なお、低粘度であることが必要な理由は、本発明の着色剤組成物を墨汁やマーカー用インキとして用いる場合にその筆記特性を確保するために必要だからであって、着色剤組成物自体の消去性を向上させるための直接的な理由ではない。
【0013】
上記消去剤として好適なものにポリエチレングリコール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンビタミンモノラウレート等のポリオキシエチレン誘導体が挙げられる。これらの化合物は上記の消去剤に必要とされる条件に関して優れた性質を有しており、易消去性着色剤に添加して着色剤組成物とした場合、優れた消去性を実現させる。
【0014】
本発明における易消去性着色剤とは、その消去性を向上させ、繊維への染着力が少ないものが該当し、一般にウォッシャブルマーカー用インキ、繊維選別用インキとして上市されている。好適に用いられる易消去性着色剤としては、下記の化2の化学式の一般式で表わされる易消去性着色剤がある。
【0015】
【化2】
(但し、Rは染料基、nは15以上 、Xは1〜16、nとXの積が30〜200)
【0016】
すなわち、分子中に少なくとも15反復単位を有する水溶性の重合体界面活性剤であり、重量平均分子量は少なくとも1000であり、重合鎖に結合した染料基Rを有している化合物である。染料基Rは発色部に相当するが、例えば以下の化3又は化4の化学式で表されるものが例示できる。
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
【0019】
具体的な易消去性着色剤としては、元来繊維選別用染料として用いられていたMilliken Chemical社製、商品名「VERSATINT」や、同じくMilliken Chemical社製のマーカー用インキ、商品名「PALMER」が例示できる。本発明においては、これらの易消去性着色剤の使用が望ましいが、特に限定されるものではない。
【0020】
本発明で用いられる定着剤としては、ポリビニルピロリドンが好適に使用できる。ポリビニルピロリドンは、墨汁組成物の定着剤として用いた場合でもその他の添加剤、特に本発明で用いる消去剤との組み合わせにおいて、ポリビニルアルコールを使用したときに見られるようなゲル化を引き起こすこともなく、安定した塗膜を得ることができる。
【0021】
ポリビニルピロリドンは墨汁組成物に適度な粘度を与え、墨汁組成物が紙などに滲むのを防止すると共に、着色剤組成物を塗膜から離れにくくすることによって、紙面上での定着性を向上させるものである。一般に高分子化合物の水溶液はその分子量例えば重量平均分子量に応じて粘度が変化することから、ポリビニルピロリドンの配合量はその分子量に応じて決定することが好ましい。具体的には後述の実施例において詳しく説明するが、重量平均分子量10000のポリビニルピロリドンの使用した場合は、7〜15重量%、重量平均分子量40000のポリビニルピロリドンを使用した場合は、2〜7重量%の配合量が好ましい。
【0022】
本発明において使用する定着剤として、さらに好適なものとしてアニオン性又はノニオン性の水溶性ポリマーが挙げられる。特に、必須の官能基として水酸基を有しており、更にカルボキシアルキルオキシ基又はその塩、アミノカルボニルアルキルオキシ基、スルホニルアルキルオキシ基又はその塩のうちの少なくとも1以上の官能基を有し、重量平均分子量が2万以上25万以下であるアニオン性又はノニオン性の水溶性ポリマーが好適に用いられる。この化合物は例えば次の化学式の単位を有する構造をしており、分散性能、フィルム形成能、バインダー性能を有するポリマーである。また、下記化学式においてRは特に限定されるものではないが、重量平均分子量が2万〜25万に収まる範囲で決定すればよく、また、Rはすべて同一のものである必要はない。
【0023】
【化5】
(k+l+m+nは95モル%以上)
【0024】
上記化合物として好適なものとして、第一工業製薬株式会社製、商品名「KEPS」シリーズが例示できる。特に「KEPS 1205A」及び「KEPS N−1205」が水溶液にした場合に粘度が低く最適である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明は、易消去性着色剤、消去剤、定着剤及び水を含有する墨汁組成物である。
【0026】
易消去性着色剤としては、発色効果を有するものであって、繊維への染着力が少なく、水溶性でありかつ水溶液が低粘度であることが必要である。具体的には既述のように元来繊維選別用染料として用いられていたMilliken Chemical社製、商品名「VERSATINT」や、同じくMillikenChemical社製のマーカー用インキ 商品名「PALMER」が好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
易消去性着色剤の配合量は着色剤組成物全体に対して15〜95重量%(以下単に%と略記する。)であることが好ましい。これらの着色剤は通常40%水溶液として提供されているため、固形分に換算すると6〜38%となる。これらの範囲の中で15〜70%(固形分4〜28%)が最適である。この範囲より過剰に配合すると高粘度となり、場合によっては他の品質に影響を及ぼすことがある。また、消去性を確保するために消去剤の配合量を増やす必要があり、筆記性に問題を生じる場合がある。一方、これらの範囲より少ない場合は、濃度不足となる。
【0028】
易消去性着色剤は、一の色彩を有するものを単独で用いる必要はなく、2以上を調合して、各種の色を作り出してもよい。具体的には例えば、赤と黄色のものを混ぜて用いれば、橙の墨汁組成物を作ることができる。
【0029】
消去剤としては、上記のように水溶性であり、水溶液にした場合でも低粘度であり、界面活性効果又は湿潤効果を有するものであることが必要である。具体的には、ポリエチレングリコール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸ナトリウム、若しくはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンビタミンモノラウレート等のポリオキシエチレン誘導体が好適である。これらのうちでも特に重量平均分子量600以上7000以下のポリエチレングリコールが最適である。
【0030】
これらの配合量としてはおよそ10%以上であることが必要である。特に好ましい範囲としては10〜30%が最適である。これより過剰に配合すると、高粘度となり、用途によっては他の品質に悪影響を及ぼすことが考えられるため好ましくない。一方、これより配合量が少ない場合は、消去性が低下する。
【0031】
定着剤としては水又は温水に可溶で、水溶液が低粘度であること、定着性、造膜性を有するものであること、ポリエチレングリコールなどの消去剤の水溶液に可溶であって、安定であることが必要である。具体的にはポリビニルピロリドン、又は水酸基、カルボキシアルキルオキシ基又はその塩、アミノカルボニルアルキルオキシ基、スルホニルアルキルオキシ基又はその塩が組み合わされて配合し、重量平均分子量が2万以上25万以下のアニオン〜ノニオン性水溶性ポリマーであることが好ましい。
【0032】
定着剤としてポリビニルピロリドンを用いる場合は、水溶液が低粘度であることが必要となることから、重量平均分子量が40000以下のものであることが好ましい。また、その配合量は配合するポリビニルピロリドンの分子量によって多少変動するが、例えば重量平均分子量10000のものを用いた場合は7〜15%、重量平均分子量が40000のものを用いた場合は2〜7%が好適である。特に10000の場合は8〜12%、40000のものは2〜5%が最適である。この範囲より過剰に配合した場合は高粘度となり、筆文字特性が失われる点で好ましくなく、この範囲より少ない場合は滲みが生じる点で好ましくない。
【0033】
定着剤として用いるアニオン性又はノニオン性の水溶性ポリマーであって、必須の官能基として水酸基を有しており、更にカルボキシアルキルオキシ基又はその塩、アミノカルボニルアルキルオキシ基、スルホニルアルキルオキシ基又はその塩のうちの少なくとも1以上の官能基を有し、重量平均分子量が2万以上25万以下の化合物としては、特に限定されるものではないが、好適なものとして、第一工業製薬社製、商品名「KEPS」シリーズが挙げられる。中でも水溶液が低粘度であること、具体的には4%水溶液が6mpa・s以下の粘度であることが好ましく「KEPS 1205A」又は「KEPS N−1205」が最適である。これらの配合量は3〜15%、特に4〜10%が最適である。この範囲より過剰に配合した場合は、ポリビニルピロリドンと同様に高粘度となり、筆文字特性が失われる点で好ましくなく、この範囲より少ない場合は滲みが生じる点で好ましくない。
【0034】
本発明の着色剤組成物は、消去剤の溶解のため必要に応じて水で希釈しても良い。水の配合量は75%以下であることが好ましい。この範囲より過剰に配合すると、濃度不足となり、着色剤として好ましくない。ただし、既述の染料(商品名「VERSATINT」 Milliken Chemical社製)は通常は40%水溶液で取り引きされているため、製造時においては特に水を添加する必要がない場合もあり、墨汁組成物の粘度調整のために添加する程度でよい。
【0035】
本発明の消去性着色剤組成物には、必要に応じて、増量剤、防腐剤、防カビ剤、香料等の一般に墨汁に使用される添加物を配合しても良い。なお、防腐剤としては「プロクセルXL−2」(ゼネカ社製)が好適に使用でき、添加量は0〜1%の範囲が好ましい。防カビ剤としては「デンシルP」(ゼネカ社製)が好適なものとして例示でき、添加量は0〜1%程度が好適である。
【0036】
本発明の墨汁組成物は例えば、次のような手順で製造することができる。まず、水に消去剤を添加し、15分間攪拌し溶解させる。その後定着剤を添加し、30分間攪拌し、完全に溶解させる。なお、これらの手順においては定着剤、消去剤を溶解する目的での範囲内で加熱しても良い。これらが完全に溶解した後、着色剤を添加し、30分攪拌する。その後必要に応じて各種添加剤を加え、完全に溶解させる。
【0037】
また、水を添加しない場合は、市販の易消去性着色剤の40%水溶液に直接消去剤及び定着剤、必要な各種添加剤を配合し、15分間攪拌する。このときこれらの成分を溶解する目的での範囲内で加熱しても良い。
【0038】
【実施例】
定着剤として重量平均分子量10000のポリビニルピロリドンを用いて下記の表1に示す配合量(重量%、以下同じ。)で墨汁組成物を製造した。製造手順は水に消去剤であるポリエチレングリコール、次いでポリビニルピロリドンを添加溶解をママコができないよう添加溶解させ、着色剤(固形相当分に変換)を添加溶解させることにより行った。なお、本実施例の記載において表中の表示は次の化合物を示す(以下同じ。)。
Palmer・・・・ウォッシャブルマーカー用インキ、商品名「Palmer」(固形分40%)MILIKEN CHEMICAL社製
PEG4000・・・・消去剤、ポリエチレングリコール(重量平均分子量約3000)
PVP・・・・定着剤、ポリビニルピロリドン
KEPS・・・・定着剤、商品名「KEPS 1205A」第一工業製薬社製
PVA・・・・定着剤、ポリビニルアルコール(重量度500、けん化度87%)
【0039】
【表1】
【0040】
定着剤として重量平均分子量40000のポリビニルピロリドンを用いて下記の表2に示す配合量で墨汁組成物を製造した。製造手順は水に消去剤であるポリエチレングリコール、次いでポリビニルピロリドンを添加溶解をママコができないよう添加溶解させ、着色剤を添加溶解させることにより行った。
【0041】
【表2】
【0042】
定着剤として第一工業製薬社製、商品名「KEPS 1205A」を用いて下記の表3に示す配合量で墨汁組成物を製造した。製造手順は水に消去剤であるポリエチレングリコール、次いで「KEPS 1205A」を添加溶解をママコができないよう添加溶解させ、着色剤を添加溶解させることにより行った。
【0043】
【表3】
【0044】
(比較例)
定着剤として重量度500、けん化度87%のポリビニルアルコールを用いて下記の表4に示す配合量で墨汁組成物を製造した。製造手順は水に消去剤であるポリエチレングリコール、次いでポリビニルアルコールを添加溶解をママコができないよう添加溶解させ、着色剤を添加溶解させることにより行った。
【0045】
【表4】
【0046】
上記実施例及び比較例の消去性、筆記性などを次の手順により評価した。
(消去性試験)
綿ブロードの試験布に実施例、比較例の墨汁を塗布し、室温で指触乾燥するまで放置、乾燥後、洗濯機で合成洗剤(花王社製、商品名「アタック」)を使用して(0.2%になるように調整)25度で15分間洗濯を行い、15分間水洗いした。乾燥後下記の基準で評価をした。
◎・・・・完全に消去
○・・・・ほぼ消去
×・・・・完全に塗布跡が残る
(滲み性試験)
書道用紙に実施例、比較例の墨汁を用いて書写し、目視により評価した。評価基準は次のように行った。
◎・・・・全く滲みなし
○・・・・多少滲むが許容できる範囲
×・・・・滲みがひどく墨汁として使用できない
(粘度試験)
上記実施例、比較例の墨汁をE型粘度計で20℃における粘度を測定し、次の評価を行った。
◎・・・・25mpa・s未満
○・・・・25以上45mpa・s未満
×・・・・45mpa・s以上
(安定性試験)
上記実施例及び比較例の墨汁組成物を目視により判断し、定着剤がゲル化していないか沈殿を生じていないか等の墨汁組成物の安定性を評価した。
◎・・・・安定性良
×・・・・沈殿析出、ゲル化
(濃度試験)
図面用紙(白糸ケント紙)に無希釈で塗布した試験紙と、水で3倍に希釈した(水:墨汁組成物=2:1)試験紙を作成し、それぞれのHVCを測定し明度の差を比較した。評価は次のように行った。
◎・・・・明度差1.5未満
○・・・・明度差1.5以上2.5未満
×・・・・明度差2.5以上
(定着性試験)
書道用紙に書写乾燥後、上に半紙を置きその上に転写用重り(直径40mm、重さ500g)を置き、約15cm/secの速さで引き、半紙への転写の様子を目視評価した。評価基準は次の通り行った。
◎・・・・全く転写しない
○・・・・かすかに転写する
×・・・・転写跡がはっきりと確認できる
【0047】
上記試験の結果を表5乃至表8に示す。この結果より、墨汁組成物に添加する定着剤の分子量によってその墨汁組成物の筆記特性に差が生じることが判明し、ポリビニルピロリドンの場合は重量平均分子量10000のものの場合は7〜15%、特に8〜12%が最適であり、重量平均分子量40000のものの場合は2〜7%、特に5程度が最適であることが判明した。これらの範囲では消去性試験においては完全に消去可能であり、その他の墨汁組成物の筆記特性も高い評価を得ることができた。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】
また、定着剤として「KEPS」を用いた場合は、3〜15%、特に4〜10%程度の配合量が最適であり、これらの場合はいずれも消去性試験、その他の筆記特性試験において高い評価が得られた。
【0053】
定着剤としてポリビニルアルコールを使用した場合は、その配合量にかかわらず、消去剤であるポリエチレングリコールとの組み合わせにおいて、ゲル化、沈殿析出が見られ、墨汁組成物としての性質を満足し得ないものとなった。このため消去性試験などのその他の評価は行わなかった。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、易消去性着色剤、消去剤、定着剤及び水を含有する墨汁組成物であるので、滲みなど筆記特性に悪影響を与えることなく、誤って衣服などに付着した場合でも家庭で一般に行われているような簡単な洗濯により完全に消去することができる。
Claims (8)
- 易消去性着色剤、消去剤、定着剤及び水を含有し、
前記易消去性着色剤が下記の一般式〔化1〕で表わされる化合物であり、
前記消去剤が、重量平均分子量600以上の水溶性のポリエチレングリコール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン誘導体のうち1以上であり、
前記定着剤が、下記一般式〔化2〕で表される構造を含む、アニオン性又はノニオン性の水溶性ポリマーであって、当該水溶性ポリマーは、必須の官能基として水酸基を有しており、更にカルボキシアルキルオキシ基又はその塩、アミノカルボニルアルキルオキシ基、スルホニルアルキルオキシ基又はその塩のうちの少なくとも1以上の官能基を有し、重量平均分子量が2万以上25万以下の化合物である、墨汁組成物。
- 前記定着剤として、重量平均分子量40000以下のポリビニルピロリドンを含有する請求項1記載の墨汁組成物。
- 前記定着剤として、重量平均分子量10000のポリビニルピロリドンを7〜15重量%含有する請求項1に記載の墨汁組成物。
- 前記定着剤として、重量平均分子量40000のポリビニルピロリドンを2〜7重量%で含有する請求項1に記載の墨汁組成物。
- 前記消去剤がポリエチレングリコール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン誘導体のうち1以上である請求項1乃至5のいずれかに記載の墨汁組成物。
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