JP3913851B2 - 油性マーキングペン用黒色インキ組成物 - Google Patents

油性マーキングペン用黒色インキ組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、黒色インキ組成物に関し、詳しくは、塗膜の非吸収面に対する定着性が優れ、経時安定性が高い油性マーキングペン用黒色インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、油性マーキングペン用インキ組成物における溶剤としては、キシレンなどの非極性溶剤が用いられてきたが、近年、安全性などの点からアルコール系やグリコールエーテル系の極性溶剤の使用へと移行している。
【0003】
しかし、非極性溶剤から極性溶剤への使用移行に伴い、油性マーキングペンに要求される、金属、プラスチックなどの非吸収面に筆記した際の塗膜(印字や画像などの筆跡)の定着性が低下する傾向にある。これは、非極性溶剤を用いていた際には塗膜の定着性において作用していたと考えられる非吸収面へのエッチング作用や水素結合などが、極性溶剤の使用により弱まったため、非吸収面表面に対する塗膜の密着性、定着性が損なわれることに起因すると考えられる。
【0004】
そこで、極性溶剤を含有する油性マーキングペン用インキ組成物に、樹脂などを添加することにより、非吸収面に対する塗膜の定着性向上を図っている。しかし、これらのインキ組成物は、塗膜(印字や画像などの筆跡)と、金属やプラスチックなどの非吸収面との定着性が低い。
【0005】
また、着色剤としてC.I.ソルベントブラック7で表される染料を用いると、この染料は極性有機溶剤に対する溶解性が低いため、可溶化剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、脂肪酸など)を用いて染料の溶解性を向上させて、インキ組成物の経時安定性を高めている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ドデシルベンゼンスルホン酸や脂肪酸などの可溶化剤を用いると、非吸収面に対して、インキ組成物による塗膜の定着性が低下する。また、この定着性は、キシレンなどの非極性有機溶剤を用いたインキ組成物による塗膜の定着性と比べると、著しく低い。そのため、C.I.ソルベントブラック7で表される染料及び極性有機溶剤を用いた黒色インキ組成物では、非吸収面に対する塗膜の定着性と、インキ組成物の経時安定性とを高いレベルで両立するのは極めて困難である。
【0007】
従って、本発明の課題は、C.I.ソルベントブラック7で表される染料と極性有機溶剤とを含む黒色インキ組成物であっても、非吸収面に対してインキ組成物による塗膜の定着性が優れた油性マーキングペン用黒色インキ組成物を提供することにある。
本発明の他の課題は、C.I.ソルベントブラック7で表される染料と極性有機溶剤とを含む黒色インキ組成物であっても、前記特性を有するとともに、インキ組成物の経時安定性が高い油性マーキングペン用黒色インキ組成物を提供することにある。
本発明の他の課題は、C.I.ソルベントブラック7で表される染料を含むインキ組成物において、極性有機溶剤を有していても、キシレン等の非極性有機溶剤を使用した場合と同等又はそれ以上の塗膜の定着性を、金属やプラスチック等の非吸収面で確保できるとともに、インキ組成物の経時安定性が改善された油性マーキングペン用黒色インキ組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
従来のアルコール系やグリコールエーテル系溶剤を用いたマーキングペン用インキ組成物では、塗膜中の樹脂や染料等の固形分と、非吸収面表面との密着性及び定着性を改善することを主として検討していたため、インキ組成物による塗膜(筆跡)と、非吸収面との定着性の改善が十分でない。もちろん、塗膜中の樹脂や染料などの固形分と非吸収面表面との密着性及び定着性は塗膜の定着性向上に重要な役割を果たしていることに相違はない。しかし、非吸収面表面に対する塗膜の密着性及び定着性の向上は、同時に塗膜表面に接触する他の物質が塗膜表面に付着するし易さにつながる。従って、塗膜と非吸収面との定着性、密着性の向上対策として、様々な樹脂との組み合わせなどを行うと、塗膜と非吸収面との密着性、定着性は向上するが、同時に塗膜表面の他の物質の付着性も強くなり、手指、布、紙などで擦過された場合に塗膜が付着しやすくなり、実質的な定着性の向上にならない。
【0009】
そこで、本発明者は、かかる知見に基づき鋭意検討した結果、着色剤、極性有機溶剤及び油溶性樹脂を含むインキ組成物に、シリコーン系高分子界面活性剤を含有させると、塗膜と非吸収面との定着性を改善できることを見いだした。シリコーン系高分子界面活性剤は、極性有機溶剤と完全には相溶せず、またシリコーン系高分子界面活性剤の特異的な界面活性のため、インキとして非吸収面へ筆記された際には、シリコーン系高分子界面活性剤は塗膜表面に移行する。その結果、シリコーン系高分子界面活性剤は、塗膜と非吸収面表面との定着性には影響をほとんど及ぼさず、塗膜表面においてその特徴である他の物質への難付着性を発現する。したがって、塗膜が手指、布、紙などで擦過された場合にも塗膜が付着しにくく、その結果として、実質的な非吸収面上の定着性が向上する。すなわち、シリコーン系高分子界面活性剤を含有させたインキ組成物による塗膜は、塗膜と非吸収面表面との密着性、定着性と塗膜表面の他の物質への難付着性とを同時に高いレベルで有する。
【0010】
しかし、着色剤として、C.I.ソルベントブラック7で表される染料を含むインキ組成物では、この染料は極性有機溶剤に対する溶解性が低いため、可溶化剤を使用しなければ、インキ組成物の経時安定性が低い。一方、可溶化剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸や脂肪酸などの慣用の可溶化剤を用いると、非吸収面に対して、このインキ組成物による塗膜の定着性が低下する。
【0011】
そこで、本発明者は、C.I.ソルベントブラック7で表される染料及び極性有機溶剤を含む黒色インキ組成物であっても、このインキ組成物による塗膜の非吸収面に対する定着性及びインキ組成物の経時安定性を改善すべく、さらなる鋭意検討を重ねた結果、C.I.ソルベントブラック7で表される染料と、プロピレングリコールモノメチルエーテルとを含むインキ組成物に、油溶性樹脂、ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤及びシリコーン系高分子界面活性剤を配合すると、塗膜の定着性及び経時安定性が高い油性マーキングペン用黒色インキ組成物が得られることを見いだし本発明を完成した。すなわち、本発明の油性マーキングペン用黒色インキ組成物は、C.I.ソルベントブラック7で表される染料と、プロピレングリコールモノメチルエーテルと、油溶性樹脂と、ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤と、シリコーン系高分子界面活性剤とを含んでいる。
【0012】
前記インキ組成物は、C.I.ソルベントブラック7で表される染料及び極性有機溶剤を含んでいるにもかかわらず、油溶性樹脂、ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤及びシリコーン系高分子界面活性剤が前記染料の可溶化剤としてそれぞれ作用しているためか、インキ組成物の経時安定性を著しく向上できる。さらに、これらの成分、特にシリコーン系高分子界面活性剤は、前述のように、非吸収面に対して筆跡の塗膜の定着性を高める作用を有している。なお、このインキ組成物による塗膜は、溶剤としてキシレンなどの非極性溶剤を用いた場合と同等又はそれ以上の定着性を、金属、プラスチックなどの非吸収面で確保できる。
【0013】
前記シリコーン系高分子界面活性剤には、ポリオキシプロピレン変性シリコーンやカルボキシ変性シリコーンなどが含まれる。また、ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸から選択された少なくとも一種が例示できる。油溶性樹脂(以下、単に「樹脂」と称する場合がある)としては、ケトン系樹脂、フェノール系樹脂及びキシレン系樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂を用いることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
(着色剤)
着色剤として用いられているC.I.ソルベントブラック7で表される染料(以下、単に「C.I.ソルベントブラック7」と称する場合がある)とは、C.I.Name、すなわち、カラー インデックス(Colour Index)の染料命名法により分類された染料である。このような分類方法は、有機合成化学協会編、「染料便覧」、丸善株式会社発行(1970年)などに記載されている。
【0015】
C.I.ソルベントブラック7の使用量は、インキ全量に対して1〜15重量%、好ましくは3〜12重量%である。前記使用量が多すぎると粘度が上昇し、筆記性が低下する。一方、少なすぎると筆跡濃度(発色性)が低い。
【0016】
(極性有機溶剤)
本発明では、極性有機溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いている。極性有機溶剤のなかでもプロピレングリコールモノメチルエーテルは、本発明における他の成分(例えば、後述する樹脂、ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤やシリコーン系高分子界面活性剤など)と組み合わせると、C.I.ソルベントブラック7の溶解性を顕著に改善できる。
【0017】
プロピレングリコールモノメチルエーテルの使用量は、インキ全量に対して50〜95重量%、好ましくは50〜90重量%程度である。極性有機溶剤の使用量が多すぎると、筆跡の濃度が低下する。一方、少なすぎると粘度が上昇して筆記性が低くなり、また、着色剤、油溶性樹脂などの溶解性が低い。
【0018】
本発明では、プロピレングリコールモノメチルエーテルは、他の極性有機溶剤(例えば、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤)と併用できる。極性溶剤中のプロピレングリコールモノメチルエーテルの割合は、極性有機溶剤全量に対して60重量%以上であるのが好ましい。プロピレングリコールモノメチルエーテルの割合が過小であると、染料の溶解性が低下する。なお、前記アルコール系溶剤には、特に炭素数が1〜4の脂肪族アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャルブチルアルコールなどが含まれる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0019】
(樹脂)
樹脂は、プロピレングリコールモノメチルエーテルに可溶な樹脂であれば特に限定されない。好ましくは安全であることが求められる。樹脂には、例えば、ケトン系樹脂、フェノール系樹脂(例えば、アルキルフェノール樹脂、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂など)、キシレン系樹脂(例えば、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、ロジン変性キシレン樹脂など)、スチレン−有機酸共重合体(例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体など)、ポリアクリル酸エステルなどが含まれる。樹脂としては、前記樹脂の中でも、ケトン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に使用される。樹脂は、単独でまたは複数混合して用いることができる。樹脂の使用量は、例えば、インキ全量に対して0.5〜25重量%、好ましくは1〜15重量%程度である。樹脂の使用量がこれらの範囲を越えると粘度が上昇し、筆記性が低下する。一方、これらの範囲より少ないと塗膜(筆跡)の塗面に対する密着性が低い。
【0020】
(ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤)
ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ジ(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)リン酸、トリ(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)リン酸など)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸系界面活性剤など)などが好適に使用できる。ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤としては、より具体的には、例えば、下記式(1a)〜(1c)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
Figure 0003913851
(式中、Pはリン原子を示し、R〜Rはアルキル基又はアルキル−アリール基を示す。n〜nは1以上の整数である)
【0022】
〜Rのアルキル基には、例えば、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル基などの炭素数6〜25(好ましくは7〜20)のアルキル基が含まれる。アルキル−アリール基におけるアリール部としては、フェニル基などが挙げられる。また、アルキル−アリール基におけるアルキル部としては、前記炭素数6〜25のアルキル基(好ましくは炭素数7〜20のアルキル基)が挙げられる。なお、RとRとは、それぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、R〜Rは、それぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
〜nは、1以上の整数(例えば、1〜20の整数)、好ましくは2〜12の整数である。なお、nとnとは、それぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、n〜nは、それぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。n(n〜n)は、通常、2、4、6、8、10である場合が多い。
【0024】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸系界面活性剤には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ジ(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)リン酸、トリ(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)リン酸などなどが含まれる。好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸系界面活性剤には、ジ(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)リン酸、トリ(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)リン酸が含まれる。
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸系界面活性剤には、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸、ジ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸、トリ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸など)などが含まれる。好ましいポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸には、ジ(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)リン酸、トリ(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)リン酸が含まれる。
【0025】
ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤は、市販の界面活性剤を使用できる。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸系界面活性剤としては、例えば、日光ケミカルズ社から、商品名:DDP−2、DDP−4、DDP−6、DDP−8、DDP−10、TDP−2、TDP−6、TDP−8、TDP−10などが市販されている。また、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸系界面活性剤のうちポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸系界面活性剤は、商品名:DNPP−4(日光ケミカルズ社製)として入手できる。
【0026】
ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤の使用量は、特に制限されず、例えば、インキ全量に対して0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは1〜8重量%である。前記使用量が過多であると、筆記後のインキ組成物の乾燥性が低下し、また、塗膜と非吸収面との密着性が低下する。一方、過小であると、C.I.ソルベントブラック7の溶解性が低下し、そのためインキ組成物の経時安定性が低下する。
【0027】
(シリコーン系高分子界面活性剤)
シリコーン系高分子界面活性剤としては、特に制限されず、ポリエーテル変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーンを用いることができる。好ましいシリコーン系高分子界面活性剤には、ポリエーテル変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーンが含まれる。シリコーン系高分子界面活性剤は単独で又は複数混合して使用できる。
【0028】
ポリエーテル変性シリコーンの中でも、ポリエーテルとしてポリオキシプロピレンの含有量が多い変性シリコーン(例えば、ポリエーテル中のポリオキシプロピレンの含有量が50重量%以上(好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上)であるポリエーテル変性シリコーン)、特にポリエーテルがポリオキシプロピレンのみで構成されているポリエーテル変性シリコーン(「ポリオキシプロピレン変性シリコーン」と称する)が好適に使用できる。
【0029】
ポリオキシプロピレン変性シリコーンやカルボキシ変性シリコーンは極めて高い難付着性を発現できる。これらの変性シリコーン含有インキ組成物により筆記すると、極性有機溶剤の蒸発又は揮発に伴い、前記変性シリコーン(ポリオキシプロピレン変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン)が塗膜表面に移行し易いためである。
【0030】
シリコーン系高分子界面活性剤としては、市販の変性シリコーンオイルを使用できる。ポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルとしては、例えば、東芝シリコーン社から商品名「TSF4460」が市販されており、また、共栄社化学社から商品名「グラノール115」が市販されている。カルボキシ変性シリコーンとしては、例えば、東芝シリコーン社から商品名「TSF4770」が市販されており、また、信越化学工業社から商品名「X−22−3710」、「X−22−162A」、「X−22−3701E」が市販されている。
【0031】
シリコーン系高分子界面活性剤の分子量(数平均分子量)は、特に制限されず、例えば、1,000〜30,000、好ましくは2,000〜20,000、さらに好ましくは5,000〜20,000程度である。分子量が低すぎると耐水性が低下し、高すぎると塗膜表面に移行しにくくなり、難付着性が低く、定着性が低下する場合がある。
【0032】
シリコーン系高分子界面活性剤の使用量は、その種類や他の成分(着色剤、樹脂など)の種類に応じて、例えば、インキ全量に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.2〜4.0重量%程度である。これらの範囲を越えると、シリコーン系高分子界面活性剤は塗膜の表面のみならず、塗面近くにも移行し、かえって塗面に対する付着性の阻害などの副次的作用が生じる。一方、これらの範囲より少ないと、塗膜の難付着性が低く、定着性が低下する。
【0033】
その他、油性マーキングペン用黒色インキ組成物には、着色剤(例えば、油溶性青色染料などの油溶性染料など)、充填剤、レベリング剤、粘度調整剤、構造粘性付与剤、乾燥性付与剤などの各種の添加剤などが配合されていてもよい。各種添加剤は特に限定されず、公知の添加剤を広く利用できる。
【0034】
(製造方法)
前記インキ組成物は、前記成分(着色剤、極性有機溶剤、樹脂、ポリオキシエチレン、シリコーン系高分子界面活性剤など)を混合して調製できる。インキ組成物の調製方法としては、特に限定されないが、例えば、極性有機溶剤と樹脂とを、加熱下で(例えば、50℃で)で攪拌して混合し、続けて、着色剤と、必要に応じて各種の添加剤を加え、加熱下で(例えば、50℃で)攪拌混合する。攪拌混合後、加熱をやめて、シリコーン系高分子界面活性剤を加え、攪拌混合して調製する方法等が例示できる。
【0035】
本発明のインキ組成物は、経時安定性が高く、インキとして非吸収面(ブリキ板などの金属板、ポリエチレンやポリプロピレンなどで形成されたフィルムやシートなどのプラスチックフィルムやシートなどの筆記面であって、油性インキをほとんど吸収しない面)に筆記された際の塗膜の定着性が優れているので、油性マーキングペン用インキ組成物として有用である。また、このインキ組成物では、溶剤としてアルコール系やグリコールエーテル系の極性有機溶剤(主としてプロピレングリコールモノメチルエーテル)を用いているため、従来のキシレンなどの非極性有機溶剤を使用しているインキ組成物に比べて、人体に対してだけでなく、使用方法や製造方法などにおいても、安全性が極めて高い。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(原料)
原料として、以下の着色剤、極性有機溶剤、油溶性樹脂、ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤、シリコーン系高分子界面活性剤などを用いた。(着色剤)
・C.I.ソルベントブラック7
・油溶性青色染料:
商品名「ネオザポンブルー807」(BASF社製)
(極性有機溶剤)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:
商品名「ダワノールPM」(ダウ・ケミカル社製)
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:
商品名「ダワノールDPM」(ダウ・ケミカル社製)
・エタノール
(油溶性樹脂)
・アルキルフェノール樹脂:
商品名「タマノル510」(荒川化学工業社製)
・アルキルフェノール変性キシレン樹脂:
商品名「ニカノールHP−100」(三菱瓦斯社製)
・フェノール樹脂:
商品名「タマノル100S」(荒川化学工業社製)
・ケトン樹脂
商品名「ハロン80」(本州化学工業社製)
(ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤)
・ジポリオキシエチレン(4)アルキルエーテルリン酸:
商品名「DDP−4」(日光ケミカルズ社製)
・ジポリオキシエチレン(10)アルキルエーテルリン酸:
商品名「DDP−10」(日光ケミカルズ社製)
・トリポリオキシエチレン(8)アルキルエーテルリン酸:
商品名「TDP−8」(日光ケミカルズ社製)
・ジポリオキシエチレン(4)ノニルフェニルエーテルリン酸:
商品名「DNPP−4」(日光ケミカルズ社製)
(シリコーン系高分子界面活性剤)
・ポリオキシプロピレン変性シリコーン1:
ポリオキシプロピレン変性シリコーン
商品名「グラノール115」(共栄社化学社製)
・ポリオキシプロピレン変性シリコーン2:
ポリオキシプロピレン変性シリコーン
商品名「TSF4460」(東芝シリコーン社製)
・カルボキシ変性シリコーン1:カルボキシ変性シリコーン
商品名「TSF4770」(東芝シリコーン社製)
・カルボキシ変性シリコーン2:カルボキシ変性シリコーン
商品名「X−22−3710」(信越化学工業社製)
(その他)
・オレイン酸
【0037】
(実施例1〜5及び比較例1〜2)
各実施例および各比較例では、それぞれ表1に示す割合(表1中の各種成分の配合量はいずれも重量%である)で配合して油性マーキングペン用黒色インキ組成物を得た。具体的には、各実施例および各比較例について、極性有機溶剤と、油溶性樹脂と、ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤とを50℃で1時間加熱攪拌混合し、続けて、着色剤(油溶性染料)と、各種の添加剤(オレイン酸)を投入し、さらに50℃、1時間加熱攪拌混合する。混合後、加熱をやめて、シリコーン系高分子界面活性剤を投入し、10分間攪拌混合して油性マーキングペン用黒色インキ組成物を得た。
【0038】
【表1】
Figure 0003913851
【0039】
(定着性試験)
実施例1〜5および比較例1〜2で得られた油性マーキングペン用黒色インキ組成物を、フェルトをペン先として使用した筆記具(サクラクレパス社製油性マーカー、商品名「ペンタッチ」)に充填し、これを用いて非吸収面(ブリキ板、ポリエチレン板)に直線を筆記して、30分乾燥した後、塗膜を綿棒で500g荷重にて擦過した。擦過により完全に非吸収面が露出するものを×、塗膜にきずが付く程度のものを△、全く塗膜に変化が生じないものを○として塗膜の定着性を評価した。評価結果をそれぞれ表1に示す。
【0040】
(経時安定性試験)
実施例1及び比較例1で得られたインキ組成物を、40℃で30日間放置後、インキ組成物の経時安定性を評価した。その結果、実施例1のインキ組成物では、染料の析出はほとんど起こらなかったが、比較例1のインキ組成物では、染料の析出が観察された。
【0041】
本発明の油性マーキングペン用黒色インキ組成物(実施例のインキ組成物)は、比較例のインキ組成物より、塗膜(筆跡)の非吸収面に対する定着性が高い。また、経時安定性が高い。
【0042】
【発明の効果】
本発明のインク組成物は、C.I.ソルベントブラック7と、特定の極性有機溶剤と、油溶性樹脂と、ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤と、シリコーン系高分子界面活性剤とを含有する油性マーキングペン用黒色インキ組成物であるので、特定の着色剤及び極性有機溶剤を含有しているにもかかわらず、塗膜と非吸収面との定着性が高い。さらに、インキ組成物の経時安定性が高い。また、キシレンなどの非極性溶剤を用いた場合と同等以上の塗膜の定着性を、金属、プラスチックなどの非吸収面で確保できる。そのため、塗膜の非吸収面に対する定着性、およびインキ組成物の経時安定性が優れるとともに、安全性が高いインキ組成物を提供できる。

Claims (3)

  1. C.I.ソルベントブラック7で表される染料と、
    プロピレングリコールモノメチルエーテルと、
    油溶性樹脂と、
    ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤と、
    シリコーン系高分子界面活性剤
    とを含み、
    前記プロピレングリコールモノメチルエーテルが溶剤としてインキ全量に対して50重量%以上含まれ、
    前記ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤がインキ全量に対して0.5〜20重量%
    含まれ
    前記シリコーン系高分子界面活性剤が、ポリオキシプロピレン変性シリコーン及びカルボキシ変性シリコーンのうち少なくとも一種である
    油性マーキングペン用黒色インキ組成物。
  2. ポリオキシエチレン型エーテルリン酸系界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸から選択された少なくとも一種である請求項1記載の油性マーキングペン用黒色インキ組成物。
  3. 油溶性樹脂がケトン系樹脂、フェノール系樹脂及びキシレン系樹脂から選択された少なくとも一種である請求項1記載の油性マーキングペン用黒色インキ組成物。
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