JP5224662B2 - 消去性着色材組成物 - Google Patents

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本発明は、墨汁、インキ、絵具等に用いることができる着色材組成物に関する。さらに詳しくは、紙に塗布した場合に、滲みなどの問題がなく、また衣服などに誤って付着した場合でも家庭で一般に行われている簡単な洗濯により完全に消去することができる消去性着色材組成物に関する。
従来の墨汁、インキ、絵具等は、衣服などの繊維に誤って付着した場合、乾燥してしまうと洗濯で消去することが困難であった。そこで、洗濯で消去できる着色材組成物を墨汁等に用いることが提案されている。
特開平9−316379 特開平10−7957
しかし、これらの着色材組成物は色材として染料を使用したものであり、そのため紙に塗布した場合に、高湿度下での滲みの問題があった。
一方、用途は異なるが、色材として顔料との複合物や樹脂粒子を使用した裁縫のマーキング用の消去性着色材組成物も提案されている。
特開平7−3197 特開平9−176539
しかし、これらの着色材組成物では、色材の粒子が繊維中に入り込んで消去性が低下することを防ぐために、顔料等の色材の粒子径を大きく(例えば1μm以上)設計している(特許文献4)。したがって、これらの着色剤組成物を比較的低粘度の墨汁やインキに使用した場合には、経時で沈殿等の問題が生じると考えられる。
本発明の課題は、紙に塗布した場合、滲みなどの問題がなく、また布、不織布などの繊維集合体に付着した場合に、簡単な洗濯により消去することができ、さらに分散安定性に優れた着色材組成物を提供するところにある。
本発明者は、上記課題のひとつである消去性の向上について、顔料の再分散性に着目し、解決手段を検討した。すなわち、衣類に付着している乾燥した墨汁等の色を水洗で消去するためには、繊維に付着している顔料を水中に再分散させることが必要である。したがって、水への分散力を顔料に付与する水溶性樹脂を、顔料に対して高い比率で含ませることで、水消去性が向上すると考えられる。一方、当該比率が高くなると、系全体が高粘度化するなど他の性状への悪影響が考えられることから、これらの影響と消去性のバランスについて検討を行い、当該比率を決定した。
次にもうひとつの課題である顔料の沈降防止については、その解決手段として沈降を遅延させる目的で、色材に微細な顔料を用いることとした。さらに顔料分散の経時安定性を確保するために湿潤剤を添加し、分散媒である水に顔料が程良く濡れて、樹脂が顔料に吸着し易くなるようにした。しかし、湿潤剤は墨汁等が衣類などの繊維に付着した際に、顔料の繊維中への浸透を促すため、着色剤組成物の水消去性を低下させる恐れもある。そこで、本発明者は、湿潤剤が影響を与える水消去性と経時安定性のバランスを検討し、最適な添加量を規定することにより、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、少なくとも着色顔料、水溶性樹脂、湿潤剤及び水を含む消去性着色材組成物であって、前記着色顔料Pが水溶性樹脂Rにより分散されており、前記着色顔料Pと前記水溶性樹脂Rの重量比(P/R比)が1/1〜1/30であり、前記湿潤剤を0.5〜15重量%含有することを特徴とする消去性着色材組成物である。前記湿潤剤は、多価アルコールであることが好ましく、さらに好ましくは、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の湿潤剤であり、最も好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコールからなる群から選ばれる1種又は2種の湿潤剤である。また前記水溶性樹脂が、スチレンアクリル酸共重合体、スチレンマレイン酸共重合体の群から選ばれる1種又は2種の水溶性樹脂であることが好ましい。さらに本発明の消去性着色剤組成物は、前記着色顔料Pと前記水溶性樹脂Rを重量比(P/R比)=10〜1.5の割合で配合したものに、少なくとも湿潤剤と水を配合し、分散して顔料分散体を得た後、さらに当該顔料分散体に前記水溶性樹脂Rを添加し、前記着色顔料Pと前記水溶性樹脂Rの重量比(P/R比)を1/1〜1/30とすることにより製造することが好ましい。
また本発明は、着色材組成物で構成された墨汁に適用することが特に好ましいが、前記着色材組成物で構成されたインキ、前記着色材組成物で構成された絵具に適用することも可能である。
本発明により、誤って衣服などに付着した場合でも家庭で一般に行われている簡単な洗濯により完全に消去することができ、また経時の分散安定性に優れ、紙に塗布した場合に滲みにくい着色材組成物を得ることができる。これらの着色材組成物は、墨汁等に用いることができる。
<着色顔料P>
本発明で用いられる着色顔料は、粒径が細かく、着色効果を有することが求められる。具体的には粒径0.01〜0.1μmのカーボンブラック、アニリンブラック、鉄黒、モノアゾ、アンスラキノン、キナクリドン、フタロシアニン、群青、紺青が好ましいが、これに限定されるものではない。
着色顔料の配合量は、着色材組成物全量に対して1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%である。着色顔料が着色材組成物全量に対して1重量%未満の場合は、発色が低下する。着色顔料が着色材組成物全量に対して10重量%を超える場合は、粘度が上がって筆記や描画し難くなるほか、繊維に付着した後、落ちにくくなる。
<水溶性樹脂R>
本発明で用いられる水溶性樹脂は、着色材組成物の経時的安定性を得る為に、着色顔料の分散性に優れ、かつ得られた顔料分散体の分散安定性に優れる性能が必要である。さらに、着色剤組成物が衣服などの繊維上で乾燥した際洗濯による消去性を担保する為に、乾燥後の水に対する溶解性が高いこと、粘度が適度に低いことが求められる。
特に好ましいのは、アルカリで中和されることにより水に可溶となるアニオン性樹脂であるスチレンアクリル酸共重合体、スチレンマレイン酸共重合体である。その他アラビヤガム、グアーガム、キサンタンガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
また水溶性樹脂の配合量は、着色材組成物全量に対して、1.1〜37.0重量%であり、好ましくは10.2〜28.5重量%である。当該水溶性樹脂は、製造時に二度に分けて添加されることが好ましい。一度に全量の水溶性樹脂を添加して顔料の分散を行うと、粘度が高くなりすぎて、分散が困難となるからである。従って、最終的に製造される着色材組成物全量に対して、0.1〜7.0重量%、好ましくは0.3〜3.5重量%の水溶性樹脂(以後「分散用水溶性樹脂」という)が、製造の第一段階である顔料分散体(少なくとも着色顔料、水溶性樹脂、湿潤剤、水からなる分散体)の作製時に用いられる。0.1重量%未満の場合には、経時による顔料の凝集が起こり、7.0重量%を超える場合には、分散時にゲル化が生じるからである。
次に、最終的に製造される着色材組成物全量に対して、1〜30.0重量%、好ましくは10〜25重量%の水溶性樹脂(以後「後添加用水溶性樹脂」という)が、前記顔料分散体(少なくとも着色顔料、水溶性樹脂、湿潤剤、水からなる分散体)に後添加され、着色材組成物が製造される。1.0重量%未満の場合、洗濯消去性が低下し、30.0重量%を超える場合、粘度が高くなり、使用感が低下するからである。
また、水溶性樹脂Rは、前記着色顔料Pとの重量比(P/R)を1/1〜1/30とすることにより、良好な洗濯消去性着色材組成物を得ることができる。1/1を超える場合は、洗濯による消去性が低下し、前記着色顔料と前記水溶性樹脂の重量比(P/R比)が1/30未満となる場合は、粘度が高くなり、使用感が低下するからである。
ここで、上記アニオン性樹脂を中和する前記アルカリとは、水に溶解し、アルカリ性を示すものであり、例えば、アルキルアミン類のモノエチルアミン、インプロピルアミンジメチルアミン、ジエチルアミンや、無機塩類である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが好適に用いられ、その他アルカノールアミン類のモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、またジアミン類のエチレンジアミン、プロピレンジアミンなどが用いられるが、これに限定されるものではない。
<湿潤剤>
本発明で用いられる湿潤剤は、着色顔料、水溶性樹脂、水との相溶性が良いことが必要である。顔料分散の効率を上げる為に添加するものだからである。具体的には、プロピレングリコール、エチレングリコールが好適に用いられ、その他、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコールなどの多価アルコールを用いることができるが、これに限定されるものではない。
湿潤剤の配合量は、着色材組成物全量に対して0.5〜15重量%、好ましくは1.0〜5.0重量%である。着色顔料が着色材組成物全量に対して0.5重量%未満の場合は、顔料分散時に濡れ剤としての役割が不十分となり、分散効率、経時での分散安定性が低下する。着色顔料が着色材組成物全量に対して15重量%を超える場合は、衣服に着色剤が付着した際に顔料が繊維の中に浸透していくことを促進してしまう為、消去性が低下することとなる。
<水>
本発明で用いられる水は、慣用的に用いられる水、例えばイオン交換水や蒸留水、超純水など不純物を含まないものが好ましいが特に限定されるものではない。水の量は、広い範囲、例えば着色材組成物全量に対して50〜90重量%の範囲から選択できる。好ましい水の量は60〜80重量%である。
<その他の添加剤>
その他必要に応じて、防錆剤(例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトレートなど)、防腐防黴剤(例えば、ベンゾイソチアゾリン系防腐防黴剤、ペンタクロロフェノール系防腐防黴剤、クレゾール系防腐防黴剤など)、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、凝集防止剤、pH調整剤、擬塑性付与剤等の慣用の添加剤を添加することができる。
<製造方法>
本発明の着色材組成物の製造方法においては、まず着色顔料及び分散用水溶性樹脂、湿潤剤、水、を配合したものを分散し、顔料分散体を作製する。次に当該水性顔料分散体に後添加用を添加し、さらに各種の添加剤を添加し、均一になるまで攪拌することにより、水消去性着色剤組成物を得る。得られたインキ組成物は公知の脱泡工程、濾過工程を経ることが好ましい。濾過は、通常の濾紙による濾過、減圧濾過等、公知の濾過方法を挙げることができるが、工業生産的には加圧濾過が効率がよいと考えられる。
上記水性顔料分散体製造時の分散工程においては公知の分散機や攪拌機を用いることができる。具体的にはビーズミル、ボールミル、サンドミル、ロールミル、ニーダー等の分散機、またターボミキサーなどの攪拌機などが挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
<着色剤組成物の製造>
表1の注に記載の顔料分散体(1)〜(4)の組成成分をビーズミル(商品名「ダイノーミル」、シンマルエンタープライゼス社製)にて分散を1時間行うことにより、実施例及び比較例に使用する顔料分散体(1)〜(4)を各々調製した。
<墨汁又はインキの作製>
前記顔料分散体(1)〜(4)を用いて表1記載の配合比(単位:重量部)により配合し、これをディスパーにて30分攪拌し、実施例1〜4及び比較例1〜3の着色剤組成物を製造した。
<評価>
1.消去性試験
〔試験サンプルの作製〕
綿ブロード(晒)の試験布に水を含まない画筆(平筆4号)を用いて、作製した着色剤組成物を塗布し、室温で指触乾燥するまで放置した。
〔洗濯〕
乾燥後の試験サンプルを洗濯機で弱アルカリ性合成洗剤を使用して(0.2重量%量)20℃で15分間洗濯し、その後、15分間水洗し、乾燥後に試験サンプルを目視で観察し、以下の基準により評価した。評価結果を表1に示す。
〔消去性評価基準〕
○ :汚れが除去されている。
△ :色、筆跡がはっきりわかる。
× :全く汚れが落ちていない。
2.分散安定性試験
各試験サンプルを、50℃高温槽で1ヶ月保存後、スパチュラで容器底面からサンプルをすくい上げた状態を目視で観察して、以下の評価基準により、分散安定性を評価した。

○ :容器底面に沈殿物はなく、分散に異常は見られなかった。
× :容器底面に沈殿物があり、顔料の凝集、分散状態の変化が観察された。
Figure 0005224662

本発明の着色材組成物は、墨汁(墨液)等の着色材組成物として用いることができる。

Claims (1)

  1. 着色顔料と分散用水溶性樹脂を重量比(着色顔料/分散用水溶性樹脂)=10〜1.5の割合で配合したものに、少なくとも湿潤剤と水を配合し、分散して顔料分散体を得た後、さらに当該顔料分散体に後添加用水溶性樹脂を添加し、着色顔料Pと水溶性樹脂Rの重量比(P/R比)が0.6〜0.3である着色剤組成物を得ることを特徴とする消去性着色材組成物の製造方法。

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