JP3969536B2 - ヒュームフード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学実験や生物実験等の各種の実験や作業に使用するヒュームフード(ドラフトチヤンバー)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
流し台を備えたヒュームフードにおいては、有害ガスや臭気を排除することが必要である。そこで、一般には、作業空間を左右側板と背板と天板と前扉とからなるフードで囲うことにより、有害ガスや臭気が外部に漏洩することを阻止すると共に、天板に吸気ダクトを設けてガスを外部に排除している。
【0003】
このように前扉を備えたタイプのヒュームフードの使用態様としては、前扉の全体を上方に上げることによって作業を行う態様と、前扉に小窓を左右に複数個設け、小窓を空けて作業を行う使用態様とがある。
【0004】
しかし、このように前扉を備えたヒュームフードにおいては、一々前扉や小窓を空ける作業が面倒であるという問題や、前扉が使用者の身体の邪魔になって作業性が悪いという問題、或いは製造コストが嵩むという問題があった。
【0005】
他方、特許文献1には、作業空間を囲うフードを前向きに開口した形態として、フードの後部でかつ下部に排気口を設けると共に、フードの上部から下方に向けて空気を噴出させるようにしたヒュームフードが開示されている。この特許文献1の構成では、フードの前面は常に開口しているため、作業性の問題を解消できると考えられる。
【0006】
【特許文献1】
特許第2852662号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、有害ガスや臭気性ガスの殆どは比重が空気より軽いものであるため、上方に立ち昇ることになる。しかるに、前記特許文献1のように空気を下向きに噴出させると、上昇しようとするガスと下向きに噴出した空気とが干渉する傾向を呈するため、ガスが拡散し勝手になってスムースな排気が損なわれることが懸念される。
【0008】
本発明は、このような現状を改善することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係るヒュームフードは、「上向きに開口した流し槽を有する流し台の上方の作業空間を、左右側板と背板と天板とを備えて前扉がないフードで囲うことにより、前記作業空間を常に前向きに開口せしめ、更に、前記フードの上部に、作業空間内に発生したガス類を吸引排除する吸気口を設けている、」という構成において、前記流し台の流し槽は平面視で略四角形に形成されており、この流し槽の周板のうち少なくとも前面板の上部外面に、流し台の支持用又は補強用の中空ダクトが重なっており、この中空ダクトと前記流し槽の前面板とに、両者に連通した噴気口を水平方向に沿って適宜間隔で複数個形成し、更に、中空ダクトと送風ファンの送風口とを管路で接続している。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1において、前記天板の前端縁が流し台の前端縁よりも後ろ側にずれている一方、前記流し台における流し槽の内周面のうち前部に、空気を作業空間の奥側に向けて噴出させる噴気口を開口している。
【0011】
【0012】
【発明の作用・効果】
本発明によると、フードの前面は常に開口しているため、作業者の邪魔になるものがなくて、作業性に優れている。また、構造が簡単になるために製造コストも抑制できる。
【0013】
そして、作業空間に発生したガス類は、上方に立ち昇りつつフードの上部から吸引されるため、フードの前面が開口したままのオープンタイプのヒュームフードでありながら、ガス類の吸引・除去をスムースに行うことができる。
【0014】
ところで、従来の前扉付きのヒュームフードでは、扉を全開にすると吸気量を増大しないと十分な排気ができず、このため、排気装置の容量を大きなものにしなければならないという問題があった。
【0015】
これに対して本発明の請求項2のように構成すると、ガス類は、流し台に設けた噴気口から噴き出される空気の圧送作用によって吸気口に押しやられるため、過大な吸気能力を備えていなくてもガス類を的確に吸引・排除することができる。この場合、噴気口は流し槽の内面に開口しているため、作業の邪魔になることとはない。
【0016】
また、特許文献1のヒュームフードの場合、作業空間の全体が天板で隠れているため、作業空間が暗くなって作業しにくいという問題があるが、請求項2のように天板の前端を流し台の前端よりも後方にずらすと、フードに灯具を設けていない場合であっても、室内の天井に設けた灯具の光を作業空間に採光し易くなるため、作業環境を一層向上できる利点がある。
【0017】
また、特許文献1ではフードの上部が作業者に被さるような状態になるため、作業者に圧迫感を与える虞があったが、本願発明の請求項2のように構成すると、作業者の頭と天板との間隔を広げることができるため、作業者に解放感を与えて作業環境をより一層改善することができる。
【0018】
請求項1の発明では、流し台の支持用又は補強用の中空ダクトを送気手段に兼用できるため、構造を複雑化することなく、ガス類の吸引排除を確実ならしめることができる。
【0019】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(1).第1実施形態(図1〜図8)
先ず、図1〜図8に基づいて第1実施形態を説明する。図1は全体の斜視図、図2は正面図、図3は図2の III-III視平断面図、図4は図2のIV−IV視断面図、図5は図2の V-V視断面図、図6は図3のVI−VI視断面図、図7は図3の VII-VII視断面図、図8は要部の破断斜視図である。
【0021】
(1)-1.全体構成
ヒュームフードは、ステンレス製等の流し台1と、これを支持する台枠2と、流し台1の上方の作業空間を囲う左右側板3及び背板4並びに天板5とを備えている。左右側板3と背板4と天板5とでフード6が構成されている。
【0022】
流し台1は上面板7と平面視略四角形の流し槽8とを備えており、上面板7の後部には蛇口9その他の備品・設備類を取付けている。台枠2は中空になっており、前面は扉10で塞がれている。符号11は試験管立てである。
【0023】
本実施形態では、台枠2と右側板3との間に、廃液タンク収納部12(詳しくは後述する)を形成している。廃液タンク収納部12には、ワゴン13をセットすることができる。廃液タンク収納部12の上方には板材14で囲われた補助ユニット15を設けている。言うまでもないが、廃液タンク収納部12や補助ユニット15は必ずしも設ける必要はない。
【0024】
天板5の上方の空間は隔壁16で略2等分されており、左側の空間は、扉付きの収納部17と成している。また、隔壁16の右側の空間はホース類の接続部となしており、この接続部において天板5に排気穴17を空けて、排気穴17に排気ダクト(メインダクト)18を接続している。排気ダクト18には内蔵したダンパーを回転させて吸気風量を調節するためのモータ19を取付けている。
【0025】
天板5は前後に分割されている。かつ、天板5の前端は流し台1の前端よりもある程度の寸法(例えば150〜250mm程度)だけ後方にずらしている。このように天板5の前面が後方にずれていることに起因して、側板3の前面は中途高さ位置において後方に段違い状となるように切欠かれている(切欠き部を符号20で示す)。
【0026】
このように天板5の前端が後方にずれていることと、側板3の前面が切欠かれていることとにより、フード6に灯具を設けなくても室内の灯具からの採光を効率的に行うことができると共に、作業者への圧迫感をなくして(開放感を与えて)、作業環境を向上することができる。
【0027】
側板3は合板のような不透明板製でも良いし、アクリル板のような透明板製でも良い。透明板製とすると、採光性と開放性とにおいてより優れていると言える。
【0028】
天板5の前端部は斜め下向きに傾斜した庇部5aになっており、この庇部5aの上面に、人検知センサー22を取り付けている。天板5に庇部5aを設けているのは、ガスの漏洩を防止するためである。
【0029】
例えば図4に示すように、流し台1における上面板7の後端は上向きに起立している。また、背板4の手前側には、若干の間隔を空けた状態で仕切り板23を配置し、仕切り板23と背板4との間の空間を排気通路23と成している。仕切り板23には、横長の通気穴24が適宜本数空けられている。また、仕切り板23はスペーサ部材26にねじ等で固定されている。
【0030】
仕切り板23の上端は天板5のより可成り下方に位置しており、仕切り板23の上端部と天板5の手前側部位とに、ガイド板27を着脱自在に配置している。ガイド板27と仕切り板23との間、及び、天板5とガイド板27との間にも通気可能な空間が空いている。
【0031】
(1)-2.廃液タンク収納部及び補助ユニット
図5に示すように、廃液タンク収納部12にセットしたワゴン13にはタンク28が搭載されている。そして、廃液タンク収納部12の上面板29に大漏斗30をセットし、この大漏斗30から、小漏斗31を介して廃液がタンク28に流し込まれる。上面板29の上方には、悪臭が立ち昇るのを抑制するため、大漏斗30を隠す開閉自在な蓋32を設けている。
【0032】
補助ユニット15の内部には、廃液の悪臭を吸引するための補助吸引ダクト33が引き込まれている。補助吸引ダクト33は、上面板7に接続した下向き開口の集気枠34に接続されている。補助吸引ダクト33からは常時吸引しても良いし、例えば1時間当たり数秒ずつ500回程度間欠的に吸引するというように間欠的に吸引しても良い。
【0033】
詳細は省略するが、補助ユニット15の内部には、水やガス等の配管類35、、或いは、電源又は通信用のケーブル類などを引き込んでいる。図2に示すように、補助ユニット15の前面板14には、運転状態を表示する表示器36や風量調節用摘まみ37など、表示部材や操作部材を取付けることができる。言うまでもないが、補助ユニット15の前面板14も開閉又は着脱することができる。
【0034】
(1)-3.流し台
流し台1の上面板7のうち左右両側部と前部とは角形の中空ダクト39で支持されている。従って、中空ダクト39は平面視で後ろ向きコ字状に形成されている。また、図示していないが、中空ダクト39は台枠2に直接に又はブラケット(図示せず)を介して取付けられている。
【0035】
例えば図6に示すように、台枠2で囲われた空間内にターボファンやシロッコファンのような送風ファン40を配置し、送風ファン40の送風口41と中空ダクト39の左右後端部とを、管路の一例としてのホース42で接続している。
【0036】
そして、図7及び図8に示すように、中空ダクト39のうち横長の前部と、流し台1における流し槽8の前板8aとに、両者に連通した噴気口43を左右方向に沿って適宜間隔で多数形成している。
【0037】
敢えて説明するまでもないが、中空ダクト39のうち少なくともその前部と流し台1における流し槽8の前面板8aとは空気が漏れないように密着させている。本実施形態では送風ファン40は床に設置しているが、台枠2に棚を設けてこれに載せたり固定したりしても良い。また、補助ユニット15の内部に配置することも可能である。
【0038】
多数のヒュームフードを並設する場合、共通の送風装置を共用して、送風装置の送気口に接続されたメイン送気ダクトから枝ダクトを分岐し、枝ダクトを各ヒュームフードの中空ダクト39に接続することも可能である。また、実験室に送ダクト(或いはエアコンプレッサ)が存在する場合は、これを利用しても良い
。
【0039】
(1)-4. まとめ
以上の構成において、図4から明瞭に把握できるように、作業空間に発生したガスは、噴気口43から噴出した空気によって作業空間の奥側に向けて押されつつ、吸気通路24等からの吸引作用により、最終的には吸気ダクト18に吸引・除去される。
【0040】
そして、殆どのガス類は上向きに立ち昇る性質があるため、噴気口43から噴出した空気の押し作用により、吸気通路・に向かうような方向性が付与されて、スムースに吸引・除去されるのである。
【0041】
更に、ガス類は作業空間の下部においてはその全面にわたって発生し得るので、ガスがフード6の左右外側に漏洩することを防止するためには、左右側板3の下部は流し台1の前後幅と同じ幅寸法に設定する必要があるが、本実施形態では、ガスは上昇しながら奥側に押されるため、側板3の前部にある程度の高さよりも上方に位置した切欠き部20を形成しても、ガスが漏洩することはない。
【0042】
このため、オープンタイプのヒュームフードの特徴である開放感の付与と採光性の向上とを的確に保持しつつ、ガスの吸引除去を確実ならしめることができるのである。
【0043】
(2).第2実施形態(図9)
図9に示す第2実施形態では、噴気口43に風向保持部材44を装着している。この風向保持部材44は、噴気口43の内部に嵌まる爪44aを設けており、上下から指で摘むと上下の爪44aは互いに接近するため、噴気口43に着脱することができる。
【0044】
(3).第3実施形態(図10)
ところで、噴気口43を流し槽8に開口させると、飛び散った液体が噴気口43から中空ダクト39に入り込むことが予想される。この点について、図10に示す第3実施形態では、中空ダクト39の例えば端部に、バルブ付きのドレンパイプ45を設けている。
【0045】
一点鎖線で示すように、中空ダクト39をその端部が僅かながら低くなるように傾斜させると、廃液をより確実に行える。
【0046】
(4).第4実施形態(図11)
図11に示す第4実施形態では、中空ダクト39に侵入した液体を除去する手段の別例として、中空ダクト39の下端と流し槽8の前板8aとに、噴気口43とは別の廃液穴46を空けている。中空ダクト39の内圧は高くなっているため、侵入した液体は廃液穴46から流し槽8に押し戻されると言える。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
(5). 第5実施形態(図12)
ところで、作業空間で発生したガス類を仕切り板23の通気穴25から排気通路24に吸引するにおいて、最適の排気状態を実現するための通気穴25の面積や高さ位置は作業内容によって相違するものである。
【0051】
しかるに、通気穴25の面積や高さ位置、或いは個数が固定的であると、作業条件が変わった場合に最適の排気条件を実現できなくなる虞がある。図12に示す第5実施形態では、この点に対する配慮を成している。
【0052】
すなわち、図12のうち(A)に示す例は、仕切り板23を、通気穴25が空いた穴付き単位板23aと、通気穴25が空いていない穴無し単位板23bとの群に分離構成して、最適の排気状態が実現できるように、穴付き単位板23aと穴無し単位板23bとを選択して取付けるようにしたものである。
【0053】
他方、図12のうち(B)に示す例は、穴無し単位板23bの群のみで仕切り板23を構成し、上下に隣合った穴無し単位板23bの間に隙間を空けて通気穴25を形成したり、互いに密着させたりすることにより、通気穴25の高さ位置や面積を自在に調節できるようにしている。このような排気調節手段は、本願の請求項とは関係なくヒュームフード一般に広く適用することができる。
【0054】
(6).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化することができる。例えば流し台に複数の流し槽を設けることも可能である。また、流し台の上面のうち流し槽の手前側の部位に送気用ダクトを配置することも可能である。
【0055】
また、第1実施形態に形成しているガイド板27を透明又は半透明板製として、ガイド板27と天板5との間の空間に灯具を配置することも可能である。このようにすると、ガイド板27が灯具に対する保護部材の役割を果たすため、簡素な構造で照明できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るヒュームフードの全体の斜視図である。
【図2】正面図である。
【図3】図2の III-III視平断面図である。
【図4】図2のIV−IV視断面図である。
【図5】図2の V-V視断面図である。
【図6】図3のVI−VI視断面図である。
【図7】図3の VII-VII視断面図である。
【図8】要部の破断斜視図である。
【図9】第2実施形態を示す図である。
【図10】第3実施形態を示す図である。
【図11】第4実施形態を示す図である。
【図12】第5実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1 流し台
2 台枠
3 側板
4 背板
5 天板(天蓋部)
6 フード
8 流し槽
8a 流し槽の前面板
18 吸気ダクト(メインダクト)
20 切欠き部
23 仕切り板
39 中空ダクト
40 送風ファン
43 噴気口
Claims (2)
- 上向きに開口した流し槽を有する流し台の上方の作業空間を、左右側板と背板と天板とを備えて前扉がないフードで囲うことにより、前記作業空間を常に前向きに開口せしめ、更に、前記フードの上部に、作業空間内に発生したガス類を吸引排除する吸気口を設けている、
という構成において、
前記流し台の流し槽は平面視で略四角形に形成されており、この流し槽の周板のうち少なくとも前面板の上部外面に、流し台の支持用又は補強用の中空ダクトが重なっており、この中空ダクトと前記流し槽の前面板とに、両者に連通した噴気口を水平方向に沿って適宜間隔で複数個形成し、更に、中空ダクトと送風ファンの送風口とを管路で接続している、
ヒュームフード。 - 前記天板の前端縁が流し台の前端縁よりも後ろ側にずれている一方、前記流し台における流し槽の内周面のうち前部に、空気を作業空間の奥側に向けて噴出させる噴気口を開口している、
請求項1に記載したヒュームフード。
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