JP3969120B2 - 車両の操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエータの制御により車両の操舵特性を変更可能な車両の操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
操作部材の操作に応じた操舵用モータの動きを車輪に舵角が変化するように伝達する際に、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比を変化させることで操舵特性を変更可能な車両の操舵装置が提案されている。そのような操舵装置として、操作部材を車輪に機械的に連結しない所謂ステアバイワイヤシステムを採用したものと機械的に連結したものとがある。ステアバイワイヤシステムを採用した操舵装置においては、ステアリングホイールを模した操作部材を車輪に機械的に連結することなく、操舵用モータの動きを、その動きに応じて舵角が変化するように車輪に伝達し、その伝達に際して操舵用モータを制御することで操作量と転舵量との比を変更している。また、操作部材を車輪に機械的に連結した操舵装置においては、ステアリングホイールの操作に応じた入力シャフトの回転を出力シャフトに遊星ギヤ機構等の伝達比可変機構を介して伝達し、その伝達に際して遊星ギヤ機構を構成するリングギヤ等を駆動する操舵用モータを制御することで操作量と転舵量との比を変更している。
【0003】
ステアバイワイヤシステムを採用した操舵装置においては、車輪と路面との間の摩擦に基づく操舵抵抗やセルフアライニングトルクは操作部材に伝達されない。また、ステアリングホイールと車輪とが伝達比可変機構を介して機械的に連結されている操舵装置においては、その操舵抵抗やセルフアライニングトルクは操作部材の操作量に対応しない。そのため、ドライバーに適正な操舵フィーリングを与える手段が必要になる。
【0004】
そこで、その操作部材を中立位置へ復帰させる方向に作用する反力を発生する操作用アクチュエータを設け、ドライバーに操舵フィーリングを与えている。すなわち、車輪に路面側から作用する力に対応する値を求め、その力に対応する操作反力が発生するように操作用アクチュエータを制御している(特開平10−217988)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、操作用アクチュエータの操作反力を路面側から作用する力にのみ対応させた場合、車両運転条件を操作反力に直接的に反映させることができないため、操縦性能の向上を十分に図ることができないという問題がある。
【0006】
また、操作用アクチュエータにより付与される操作反力を、舵角のような車両運転条件に応じて設定することが提案されている。しかし、操作反力を車両運転条件にのみ対応させた場合、悪路における凹凸、障害物、突起、段差の存在により路面から車輪に作用する路面反力の変動を操作反力に反映させることができない。そのため、ドライバーが路面状況を把握できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決することのできる車両の操舵装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、操作部材と、その操作部材の操作に応じて駆動される操舵用モータと、その操舵用モータの動きを舵角変化が生じるように車輪に伝達する機構と、その操作部材の中立位置復帰方向へ作用する操作反力を発生する操作用アクチュエータと、その操舵用モータと操作用アクチュエータの制御系とを備え、その操舵用モータは、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比が変化するように制御可能とされ、その操作用アクチュエータは、操作反力が車両運転条件に応じて変化するように制御可能とされている車両の操舵装置において、車両運転条件に相関する基本操作反力目標値を求める手段と、その操舵用モータのモータ電流を検出する手段と、その検出されたモータ電流の変化加速度に比例する付加操作反力目標値を求める手段とが設けられ、その求めた基本操作反力目標値と付加操作反力目標値との和に対応する操作反力を発生するように、前記操作用アクチュエータが制御可能とされていることを特徴とする。
この構成によれば、操作用アクチュエータが発生する操作反力は、車両運転条件に相関する基本操作反力目標値と、路面から車輪に作用する力の変動に対応して変動するモータ電流の変化加速度に比例する付加操作反力目標値との和に対応する。これにより、操作反力を路面から車輪に作用する力の変動に応じて変動させてドライバーに路面状況を把握させることができ、且つ、車両運転条件を直接的に反映した操作反力を付与できる。さらに、その付加操作反力目標値は操舵用モータのモータ電流の変化加速度に比例するので、車輪に路面から作用する力の路面状況に応じた変動を的確かつ迅速に反映することができる。
【0009】
その付加操作反力目標値の大きさは基本操作反力目標値の大きさよりも小さく設定されるのが好ましい。これにより、操作反力に対する路面から車輪に作用する力の変動の影響が過大になるのを防止し、車両運転条件を反映した操作反力を付与できる。
【0010】
その付加操作反力目標値は、設定周波数を超える高周波成分を除去されたモータ電流の変化加速度に比例するのが好ましい。これにより、モータ電流の高周波成分の変化加速度に比例する操作反力がドライバーに作用することはなく、ドライバーに不快感を与えるのを防止できる。
その設定周波数を変更する手段を備えるのが好ましい。その設定周波数を高くすることで、路面上の石や穴等の障害物が小さい場合でも、その障害物を反映した操作反力を作用させることができる。一方、その設定周波数を低くすることで、路面上の石や穴等の障害物が大きい場合にのみ、その障害物を反映した操作反力を作用させることができる。すなわち、ドライバーに操作反力として認識させる路面の障害物の大きさを好みや道路状況に応じて変化させることができる。
その車輪に路面側から作用する力の変動量に対応する値を求める手段を備え、その求めた力の変動量に対応する値に応じて、その設定周波数を変更する請求項3に記載の車両の操舵装置。これにより、車輪に路面側から作用する力の変動量に応じて、その設定周波数を自動的に変更することができる。すなわち、路面から車輪に作用する力の変動量が設定値よりも大きい時は路面状況が悪いことから設定周波数を低くし、一方、その力の変動量が設定値よりも小さい時は設定周波数を高くすることができる。
【0011】
そのモータ電流の変化加速度に対する付加操作反力目標値の比を変更する手段を備えるのが好ましい。その比を大きくすることで操作反力を大きくし、その比を小さくすることで操作反力を小さくすることができる。すなわち、道路状況や好みに応じてドライバーに認識させる操作反力の大きさを変化させることができる。
その車輪に路面側から作用する力の変動量に対応する値を求める手段を備え、その求めた力の変動量に対応する値に応じて、そのモータ電流の変化加速度に対する付加操作反力目標値の比を変更するのが好ましい。これにより、車輪に路面側から作用する力の変動量に応じて、その比を自動的に変更することができる。すなわち、その力の変動量が設定値よりも大きい時は路面状況が悪いことからその比を大きくし、一方、その力の変動量が設定値よりも小さい時はその比を小さくする。
【0012】
その検出されたモータ電流は設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた検出電流の平均変化速度としてモータ電流の変化速度が求められ、その求められたモータ電流の変化速度は設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた変化速度の平均変化速度としてモータ電流の変化加速度が求められ、その前者の設定数を変更する手段が設けられているのが好ましい。そのサンプリングする検出電流の設定数を少なくすることで、路面上の石や穴等の障害物が小さい場合でも、その障害物を反映した操作反力を作用させることができ、また、操作反力を比較的大きくすることができる。一方、そのサンプリングする検出電流の設定数を多くすることで、路面上の石や穴等の障害物が大きい場合にのみ、その障害物を反映した操作反力を作用させることができ、また、操作反力を比較的小さくすることができる。すなわち、ドライバーに操作反力として認識させる路面の障害物の大きさと、道路状況に応じて認識させる操作反力の大きさを、好みや道路状況に応じて変化させることができる。
その車輪に路面側から作用する力の変動量に対応する値を求める手段を備え、その求めた力の変動量に対応する値に応じて、そのサンプリングする検出電流の設定数を変更するのが好ましい。これにより、車輪に路面側から作用する力の変動量に応じて、そのサンプリングする検出電流の設定数を変更することができる。すなわち、その力の変動量が設定値よりも大きい時は路面状況が悪いことからサンプリングする検出電流の設定数を多くし、一方、その力の変動量が設定値よりも小さい時はサンプリングする検出電流の設定数を少なくする。
【0013】
その検出されたモータ電流は設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた検出電流の平均変化速度としてモータ電流の変化速度が求められ、その求められたモータ電流の変化速度は設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた変化速度の平均変化速度としてモータ電流の変化加速度が求められ、その前者の設定数を変更する手段が設けられているのが好ましい。そのサンプリングする変化速度の設定数を少なくすることで、路面上の石や穴等の障害物が小さい場合でも、その障害物を反映した操作部材の操作反力を作用させることができ、また、操作反力を比較的大きくすることができる。一方、そのサンプリングする変化速度の設定数を多くすることで、路面上の石や穴等の障害物が大きい場合にのみ、その障害物を反映した操作反力を作用させることができ、また、操作反力を比較的小さくすることができる。すなわち、ドライバーに操作反力として認識させる路面の障害物の大きさと、道路状況に応じて認識させる操作反力の大きさを、好みや道路状況に応じて変化させることができる。
その車輪に路面側から作用する力の変動量に対応する値を求める手段を備え、その求めた力の変動量に対応する値に応じて、そのサンプリングする変化速度の設定数を変更するのが好ましい。これにより、車輪に路面側から作用する力の変動量に応じて、そのサンプリングする変化速度の設定数を変更することができる。すなわち、その力の変動量が設定値よりも大きい時は路面状況が悪いことからサンプリングする変化速度の設定数を多くし、一方、その力の変動量が設定値よりも小さい時はサンプリングする変化速度の設定数を少なくする。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1に示す車両の操舵装置は、ステアリングホイールを模した操作部材1と、その操作部材1の操作に応じて駆動される操舵用モータ2と、その操舵用モータ2の動きを、その操作部材1を前部左右車輪4に機械的に連結することなく、舵角変化が生じるように前部左右車輪4に伝達する機構としてステアリングギヤ3とを備える。
【0015】
操舵用モータ2は、例えば公知の直流ブラシレスモータ等の電動モータにより構成できる。そのステアリングギヤ3は、その操舵用モータ2の出力シャフトの回転運動をステアリングロッド7の直線運動に変換する例えばボールネジ機構等の運動変換機構により構成されている。そのステアリングロッド7の動きがタイロッド8とナックルアーム9を介して車輪4に伝達され、車輪4のトー角が変化する。そのステアリングギヤ3は、公知のものを用いることができ、操舵用モータ2の動きを舵角が変化するように前部左右車輪4に伝達できれば構成は限定されない。操舵用モータ2が駆動されていない状態では、前部左右車輪4はセルフアライニングトルクにより直進位置に復帰できるようにホイールアラインメントが設定されている。
【0016】
操作部材1は、車体側により回転可能に支持される回転シャフト10に連結されている。その回転シャフト10に操作用アクチュエータ19の出力シャフトが一体化されている。その操作用アクチュエータ19は操作部材1の中立位置復帰方向へ作用する操作反力を発生する。その操作用アクチュエータ19は直流ブラシレスモータ等の電動モータにより構成できる。
【0017】
操作部材1の操作量として中立位置からの操作角δhを検出する角度センサ11が設けられている。車輪4の転舵量として舵角δを検出する舵角センサ13が設けられ、本実施形態では、その舵角δとして車輪4の転舵量に対応するステアリングロッド7の移動量を検出する。車速Vを検出する速度センサ14が設けられている。操舵用モータ2のモータ電流を検出する電流センサ18が設けられている。操作部材1の操作反力に対応する操作トルクThとして回転シャフト10により伝達されるトルクを検出するトルクセンサ44が設けられている。その角度センサ11、舵角センサ13、速度センサ14、電流センサ18、およびトルクセンサ44は、コンピュータにより構成される制御装置20に接続される。その電流センサ18と制御装置20との間にはローパスフィルタ17が介在し、モータ電流の設定周波数を超える検出値が除去される。
【0018】
制御装置20は駆動回路22を介して操舵用モータ2を制御する制御系を構成する。例えば制御装置20は、操作部材1の操作角δhと車速Vと目標舵角δ* との間の予め定められた関係を記憶し、目標舵角δ* と検出舵角δとの偏差をなくすように駆動回路22を介して操舵用モータ2の駆動信号を出力する。その操作角δhと車速Vと目標舵角δ* との間の関係は、例えば車速Vが大きくなる程に目標舵角が小さくなるものとされる。これにより、操舵用モータ2の動きを車輪4に舵角が変化するように伝達する際に、操作部材1の操作量と車輪4の転舵量との比を変化させることが可能とされている。操作部材1の操作量に対する車輪4の転舵量の比を低車速で大きくすることで旋回性能を向上し、高車速で小さくすることで走行安定性を向上できる。なお、操舵用モータ2の制御方法は、操作部材1の操作量と車輪4の転舵量との比が変化するように制御可能であれば特に限定されるものではない。
【0019】
制御装置20は、操作反力が車両運転条件に応じて変化するように駆動回路23を介して操作用アクチュエータ19を制御する制御系を構成する。本実施形態では、その運転条件は操作角δhとされ、制御装置20は操作角δhに相関する基本操作反力目標値として目標操作トルクTh* を演算する。例えば図2に示す操作角δhと目標操作トルクTh* との関係を制御装置20は記憶し、その記憶した関係と検出操作角δhとから目標操作トルクTh* を演算する。なお、車両運転条件は操作角δhに限定されず、例えば操作角δhと車速Vとに目標操作トルクTh* が相関するようにしてもよく、車両運転条件に応じて操作反力が変化することでドライバーに適正な操作反力を付与できればよい。
【0020】
制御装置20は、操舵用モータ2のモータ電流の変化加速度に比例する付加操作反力目標値を求める。すなわち、電流センサ18による検出電流Iは設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた検出電流Iの平均変化速度としてモータ電流の変化速度dI/dtが求められる。その求められたモータ電流の変化速度dI/dtは設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた変化速度dI/dtの平均変化速度としてモータ電流の変化加速度d2 I/dt2 が求められる。そして、付加操作反力目標値として目標付加トルクδTh* がδTh* =K・d2 I/dt2 の関係式から求められる。そのサンプリングする検出電流Iの設定数は、制御装置20に接続された調節スイッチ40の操作により変更可能とされている。ここでKは比例定数である。比例定数Kは制御装置20に接続された調節スイッチ41の操作により無段階あるいは多段階に変更可能とされている。すなわち、モータ電流の変化加速度に対する付加操作反力目標値の比が変更可能とされている。また、ローパスフィルタ17が電流センサ18と制御装置20との間に介在することから、その目標付加トルクδTh* は、設定周波数を超える高周波成分を除去されたモータ電流の変化加速度に比例する。その設定周波数は、制御装置20に接続された調節スイッチ42の操作により無段階あるいは多段階に変更可能とされている。その目標付加トルクδTh* の大きさは目標操作トルクTh* の大きさよりも小さくなるように設定され、目標操作トルクTh* の大きさの例えば数%程度になるように設定される。制御装置20は、目標操作トルクTh* と目標付加トルクδTh* との和に対応する操作反力を発生するように操作用アクチュエータ19を制御する。
【0021】
図3のフローチャートを参照して制御装置20による操舵用モータ2と操作用アクチュエータ19の制御手順を説明する。
まず、各センサによる検出値を読み込み(ステップS1)、検出車速Vと検出操作角δhと記憶した関係とから目標舵角δ* を演算し(ステップS2)、その目標舵角δ* と検出舵角δとの偏差を低減するように操舵用モータ2を制御する(ステップS3)。また、操作角δhに相関する目標操作トルクTh* を演算し(ステップS4)、目標付加トルクδTh* を演算し(ステップS5)、その目標操作トルクTh* と目標付加トルクδTh* との和と検出操作トルクThとの偏差を低減するように操作用アクチュエータ19を制御する(ステップS6)。そして制御を終了するか否かを判断し(ステップS7)、終了しない場合はステップS1に戻る。
【0022】
上記実施形態の車両の操舵装置によれば、操作用アクチュエータ19の発生する操作反力は、車両運転条件に相関する目標操作トルクTh* と、路面から車輪4に作用する力の変動に対応して変動する操舵用モータ2のモータ電流の変化加速度d2 I/dt2 に比例する目標付加トルクδTh* との和に対応する。これにより、操作部材1の操作反力を路面から車輪4に作用する力の変動に応じて変動させてドライバーに路面状況を把握させることができ、且つ、車両運転条件を直接的に反映した操作反力を付与できる。さらに、その目標付加トルクδTh* は操舵用モータ2のモータ電流の変化加速度d2 I/dt2 に比例するので、車輪4に路面から作用する力の路面状況に応じた変動を的確かつ迅速に反映することができる。また、ローパスフィルタ17によりモータ電流の設定周波数を超える検出値が除去されるので、モータ電流の高周波成分の変化加速度に比例する操作反力がドライバーに作用することはなく、ドライバーに不快感を与えるのを防止できる。その設定周波数を高くすることで、路面上の石や穴等の障害物が小さい場合でも、その障害物を反映した操作部材の操作反力を作用させることができる。一方、その設定周波数を低くすることで、路面上の石や穴等の障害物が大きい場合にのみ、その障害物を反映した操作反力を作用させることができる。すなわち、ドライバーに操作反力として認識させる路面の障害物の大きさを好みや道路状況に応じて変化させることができる。また、目標付加トルクδTh* を演算するための比例定数Kを変更することで、その操作反力の大きさを好みや道路状況に応じて変化させることができる。さらに、その目標付加トルクδTh* の演算のためにサンプリングする検出電流Iの設定数を少なくすることで、路面上の石や穴等の障害物が小さい場合でも、その障害物を反映した操作反力を作用させることができ、また、操作反力を比較的大きくすることができる。一方、そのサンプリングする検出電流Iの設定数を多くすることで、路面上の石や穴等の障害物が大きい場合にのみ、その障害物を反映した操作反力を作用させることができ、また、操作反力を比較的小さくすることができる。
【0023】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では制御装置20に接続された調節スイッチ40の操作により、目標付加トルクδTh* を演算するためにサンプリングする検出電流Iの設定数を変更可能としている。これに代えて、変形例として、サンプリングするモータ電流の変化速度dI/dtの設定数を変更可能としてもよい。そのサンプリングする変化速度dI/dtの設定数を少なくすることで、路面上の石や穴等の障害物が小さい場合でも、その障害物を反映した操作部材の操作反力を作用させることができ、また、操作反力を比較的大きくすることができる。一方、そのサンプリングする変化速度dI/dtの設定数を多くすることで、路面上の石や穴等の障害物が大きい場合にのみ、その障害物を反映した操作反力を作用させることができ、また、操作反力を比較的小さくすることができる。
【0024】
また、上記実施形態や変形例では調節スイッチ40の操作によりサンプリングする検出電流Iあるいはモータ電流の変化速度dI/dtの設定数が変更可能とされ、調節スイッチ41の操作により比例定数Kが変更可能とされ、調節スイッチ42の操作によりモータ電流から除去する高周波成分の設定周波数が変更可能とされている。これに代えて、制御装置20により検出電流Iの設定数、変化速度dI/dtの設定数、比例定数K、および設定周波数の中の少なくとも一つを自動的に変更可能としてもよい。すなわち、車輪4に路面側から作用する力の変動量に対応する値を求める手段を備え、その求めた力の変動量に対応する値に応じて、その検出電流Iの設定数、変化速度dI/dtの設定数、比例定数K、および設定周波数の中の少なくとも一つを変更する。その路面側から作用する力の変動量に対応する値としては、例えば直近のモータ電流Iや舵角δの設定値からの変動量を用いることができる。また、車輪4と車体との間のサスペンションを構成する吸振部材の振幅を検出する変位センサを設け、その変位センサにより検出した直近の振幅の設定値からの変動量を、路面側から作用する力の変動量に対応する値として用いてもよい。そして制御装置20により、その路面から車輪4に作用する力の変動量が設定値よりも大きい時は路面状況が悪いことからその設定周波数を低くし、比例定数Kを大きくし、サンプリングする検出電流Iの設定数を多くし、サンプリングする変化速度dI/dtの設定数を多くする。一方、その力の変動量が設定値よりも小さい時はその設定周波数を高くし、比例定数Kを小さくし、サンプリングする検出電流Iの設定数を少なくし、サンプリングする変化速度dI/dtの設定数を少なくする。
【0025】
図4の変形例に示すように、操作部材であるステアリングホイールHが車輪(図示省略)に機械的に連結され、且つ、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比を変化させることができる操舵装置101に本発明を適用してもよい。そのステアリングホイールHの操作に応じた入力シャフト102の回転は、回転伝達機構130により出力シャフト111に伝達され、その出力シャフト111の回転が車輪に舵角が変化するようにステアリングギヤ(図示省略)により伝達される。そのステアリングギヤはラックピニオン式ステアリングギヤやボールスクリュー式ステアリングギヤ等の公知のものを用いることができる。その回転伝達機構130の構成要素を操舵用モータ139により駆動することで、そのモータ139の動きが車輪に舵角が変化するように伝達される。その入力シャフト102と出力シャフト111は互いに同軸心に隙間を介して配置され、ベアリング107、108、112、113を介してハウジング110により支持されている。その回転伝達機構130は、本変形例では遊星ギヤ機構とされ、サンギヤ131とリングギヤ132とに噛み合う遊星ギヤ133をキャリア134により保持する。そのサンギヤ131は、入力シャフト102の端部に同行回転するように連結されている。そのキャリア134は、出力シャフト111に同行回転するように連結されている。そのリングギヤ132は、入力シャフト102を囲むホルダー136にボルト362を介して固定されている。そのホルダー136は、入力シャフト102を囲むようにハウジング110に固定された筒状部材135によりベアリング109を介して支持されている。そのホルダー136の外周にウォームホイール137が同行回転するように嵌め合わされている。そのウォームホイール137に噛み合うウォーム138がハウジング110により支持されている。そのウォーム138がハウジング110に取り付けられたモータ139により駆動される。そのステアリングホイールHの中立位置復帰方向へ作用する操作反力を発生する操作用アクチュエータ119が設けられている。その操舵用モータ139の制御系と操作用アクチュエータ119の制御系を上記実施形態と同様の制御装置とセンサとにより構成することで、本発明を適用することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の車両の操舵装置によれば、アクチュエータにより操作部材の操作反力を付与する際にドライバーに路面状況を把握させ、且つ、車両運転条件に適した操作反力の付与による操縦性能の向上を図ることができ、しかも、路面状況の変動を的確かつ迅速に反映した操作反力を付与でき、さらにドライバーに操作反力として認識させる路面の障害物の大きさや路面状況の操作反力への反映の程度をドライバーの好みや道路状況に応じて調整できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の車両の操舵装置の構成説明図
【図2】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作角と目標操作トルクとの関係を示す図
【図3】本発明の実施形態の車両の操舵装置における制御装置による操舵用モータと操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図4】本発明の変形例の車両の操舵装置の構成説明図
【符号の説明】
1 操作部材
2 操舵用モータ
3 ステアリングギヤ
4 車輪
18 電流センサ
19、119 操作用アクチュエータ
20 制御装置
40、41、42 調節スイッチ
139 モータ
H ステアリングホイール
Claims (10)
- 操作部材と、
その操作部材の操作に応じて駆動される操舵用モータと、
その操舵用モータの動きを舵角変化が生じるように車輪に伝達する機構と、
その操作部材の中立位置復帰方向へ作用する操作反力を発生する操作用アクチュエータと、
その操舵用モータと操作用アクチュエータの制御系とを備え、
その操舵用モータは、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比が変化するように制御可能とされ、
その操作用アクチュエータは、操作反力が車両運転条件に応じて変化するように制御可能とされている車両の操舵装置において、
車両運転条件に相関する基本操作反力目標値を求める手段と、
その操舵用モータのモータ電流を検出する手段と、
その検出されたモータ電流の変化加速度に比例する付加操作反力目標値を求める手段とが設けられ、
その求めた基本操作反力目標値と付加操作反力目標値との和に対応する操作反力を発生するように、前記操作用アクチュエータが制御可能とされていることを特徴とする車両の操舵装置。 - その付加操作反力目標値は、設定周波数を超える高周波成分を除去されたモータ電流の変化加速度に比例する請求項1に記載の車両の操舵装置。
- その設定周波数を変更する手段を備える請求項2に記載の車両の操舵装置。
- その車輪に路面側から作用する力の変動量に対応する値を求める手段を備え、
その求めた力の変動量に対応する値に応じて、その設定周波数を変更する請求項3に記載の車両の操舵装置。 - そのモータ電流の変化加速度に対する付加操作反力目標値の比を変更する手段を備える請求項1〜4の中の何れかに記載の車両の操舵装置。
- その車輪に路面側から作用する力の変動量に対応する値を求める手段を備え、
その求めた力の変動量に対応する値に応じて、そのモータ電流の変化加速度に対する付加操作反力目標値の比を変更する請求項5に記載の車両の操舵装置。 - その検出されたモータ電流は設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた検出電流の平均変化速度としてモータ電流の変化速度が求められ、その求められたモータ電流の変化速度は設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた変化速度の平均変化速度としてモータ電流の変化加速度が求められ、その前者の設定数を変更する手段が設けられている請求項1〜6の中の何れかに記載の車両の操舵装置。
- その車輪に路面側から作用する力の変動量に対応する値を求める手段を備え、
その求めた力の変動量に対応する値に応じて、そのサンプリングする検出電流の設定数を変更する請求項7に記載の車両の操舵装置。 - その検出されたモータ電流は設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた検出電流の平均変化速度としてモータ電流の変化速度が求められ、その求められたモータ電流の変化速度は設定周期でサンプリングされ、設定数のサンプリングされた変化速度の平均変化速度としてモータ電流の変化加速度が求められ、その前者の設定数を変更する手段が設けられている請求項1〜6の中の何れかに記載の車両の操舵装置。
- その車輪に路面側から作用する力の変動量に対応する値を求める手段を備え、
その求めた力の変動量に対応する値に応じて、そのサンプリングする変化速度の設定数を変更する請求項9に記載の車両の操舵装置。
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JP2002049839A JP3969120B2 (ja) | 2002-02-26 | 2002-02-26 | 車両の操舵装置 |
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