JP3968563B2 - 電圧形pwmインバータの電流検出装置 - Google Patents

電圧形pwmインバータの電流検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直流電圧から交流電圧を得る電圧形PWMインバータの交流出力電流成分を検出するための電流検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電圧形PWMインバータの交流出力電流を直流側電流から検出する方法としては、特開2000−354380号公報に記載されたモータ制御装置のように、インバータの直流側に接続したシャント抵抗を平滑して第1の電圧平滑値を得ると共に、制御演算器から発生されるインバータ出力電圧を表す電圧を平滑して第2の平滑電圧値を求め、これら第1,第2の平滑電圧値と直流電圧とを用いた演算によりインバータの直流側電流を検出する方法がある。
また、図示されていないが、インバータ主回路の接続方法を変更し、インバータの下アーム全ての還流ダイオードのアノードと下アーム全ての半導体スイッチング素子(IGBT等)のエミッタとの間の電流のピーク値や平均値等を検出する方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の電流検出方法は、何れもインバータの直流側電流の平均値やピーク値を検出するものであり、PWMインバータの交流出力電流成分(振幅値、相電圧に対する位相角)を検出することはできなかった。
そこで本発明は、電圧形PWMインバータの直流側電流等を用いて交流出力電流の振幅値や位相角を検出するようにした電流検出装置を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
まず、三相PWMインバータでは、出力電圧ベクトル(上下アームのスイッチング素子のオンまたはオフ(PWMパルスパターン)に応じた瞬時空間電圧ベクトル)V,V,V,V,V,V,V,Vの状態に応じて、直流側電流idcに各相の出力電流i,i,iが現れ、その関係は表1のようになることが知られている。
なお、表1の「PWMパルスパターン」において、「0」は各相の下アームの半導体スイッチング素子がオン(上アームのスイッチング素子はオフ)の状態、「1」は各相の上アームの半導体スイッチング素子がオン(下アームのスイッチング素子はオフ)の状態を示している。
【0005】
【表1】
Figure 0003968563
【0006】
一方、PWMインバータの出力電流基本波が正弦波であり、かつ定常状態であるという前提のもとで、直流側電流のサンプリング間隔をΔt(時間)とすると、数式1、数式2の関係が成り立つ。
【0007】
[数1]
(0)=A・sin(ω(0)−α−φ)
【0008】
[数2]
Figure 0003968563
【0009】
数式1,数式2において、i(0):第1回目のサンプリング時(t=t(0))における直流側電流検出値、i(1):第1回目から時間△tを隔てた第2回目のサンプリング時(t=t(1))における直流側電流検出値、A:基本波成分の電流振幅値、ω:基本波成分の角周波数、φ:相電圧に対する電流位相角、α:各相電流の位相差(U相電流検出時:α=0°、V相電流検出時:α=120°、W相電流検出時:α=240°)である。
【0010】
ここで、PWMパルスパターンからその時点で出力されている電圧ベクトルが判明し、前述した表1から、その時点の直流側電流がどの相の出力電流に相当するかが判明する。
このことを利用して、直流側電流のサンプリング値を2つ用い、数式1、数式2から基本波成分の電流振幅値及び電流位相角を求めることができる。
【0011】
すなわち、請求項1記載の発明は、電圧形PWMインバータの直流側電流を検出する電流検出手段と、
前記インバータの半導体スイッチング素子に対するパルスパターンから前記インバータの出力電圧ベクトルを検出する電圧ベクトル検出手段と、
二つのサンプリング時点における前記直流側電流と、二つのサンプリング時点の間の時間と、前記電圧ベクトル検出手段により特定の出力電圧ベクトルが検出されたときの前記直流側電流から判定した前記インバータの出力相電流のある相を基準とした位相差と、前記インバータの出力周波数相当値を用いて、前記インバータの交流出力電流の基本波成分の振幅値と相電圧に対する位相角とを演算する振幅値・位相演算手段と、を備えたものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、電圧形PWMインバータのアーム電流を検出する電流検出手段と、
前記インバータの半導体スイッチング素子に対するパルスパターンから前記インバータの出力電圧ベクトルを検出する電圧ベクトル検出手段と、
二つのサンプリング時点における前記アーム電流と、二つのサンプリング時点の間の時間と、前記電流検出手段が接続された前記インバータの出力相電流のある相を基準とした位相差と、前記インバータの出力周波数相当値を用いて、前記インバータの交流出力電流の基本波成分の振幅値と相電圧に対する位相角とを演算する振幅値・位相演算手段と、を備えたものである。
【0013】
請求項3記載の発明は、電圧形PWMインバータのアーム電流を検出する第1の電流検出手段と、
前記アーム電流を検出していない他のアームにより構成される回路の直流電流を検出する第2の電流検出手段と、
前記インバータの半導体スイッチング素子に対するパルスパターンから前記インバータの出力電圧ベクトルを検出する電圧ベクトル検出手段と、
二つのサンプリング時点における前記第1または第2の電流検出手段の直流電流検出値と、二つのサンプリング時点の間の時間と、前記電圧ベクトル検出手段により特定の出力電圧ベクトルが検出されたときの第2の電流検出手段による直流電流検出値から判定した前記インバータの出力相電流のある相を基準とした位相差と、前記インバータの出力周波数相当値を用いて、前記インバータの交流出力電流の基本波成分の振幅値と相電圧に対する位相角とを演算する振幅値・位相演算手段と、を備えたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は請求項1に相当する本発明の第1実施形態を示す回路図である。
図1において、100は三相の電圧形PWMインバータであり、環流ダイオードが逆並列接続されたIGBT等の半導体スイッチング素子101〜106をu,v,w相の上下アームにそれぞれ備えている。107は直流電圧Edcを有する直流電源、P,Nは直流端子、108はスイッチング素子102と直流端子Nとの間に設けられた電流検出器である。また、前記上下アームの各相出力端子には、誘導電動機等の三相の交流電動機200が接続されている。
【0016】
一方、インバータ100の出力電圧の角周波数指令値ωが電圧指令発生器301に入力されており、周波数と振幅が変化する電圧指令値が生成されて出力される。なお、角周波数指令値ωは、後述する出力電流振幅値・位相演算器305にも入力されている。
【0017】
上記電圧指令値と、キャリア波発生器302から出力されたキャリア波とがPWM変調器303に入力され、両者の比較によってPWMパルスが演算される。このPWMパルスはインバータ100の各スイッチング素子101〜106に与えられて電圧を発生し、その出力電圧により交流電動機200が駆動される。
【0018】
先の表1に示したように、インバータ100の直流側電流idcは、電圧ベクトルすなわちPWMパルスパターンに従って、電圧ベクトルV,V以外は何れかの相の電流に等しい。
ここで、PWM変調器303から出力されるPWMパルスからPWMパルスパターンが判明し、電圧ベクトル検出器304により電圧ベクトルV〜Vが検出されることになる。
【0019】
そして、電流検出器108により検出した直流側電流と電圧ベクトル検出器304により検出した電圧ベクトルとを角周波数指令値ωと共に出力電流振幅値・位相演算器305に入力し、前述の数式1、数式2の関係から、基本波成分の電流振幅値Aと相電圧に対する位相角(電流位相角)φとを演算により検出する。
【0020】
すなわち、電流検出器108による電流検出値がゼロでない限り、第1回目のサンプリング時に検出した直流側電流i(0)がu相電流、v相電流、w相電流の何れであるかは電圧ベクトルに基づいて判定でき、これがu相電流の場合には、数式1におけるα=0°、v相電流の場合にはα=120°、w相電流の場合にはα=240°と置くことにより、数式1は電流振幅値A及び電流位相角φに関する2元1次方程式となる。
同様にして、第2回目のサンプリング時に検出した直流側電流i(1)に関しても、この電流i(1)とそのときの電圧ベクトル及び角周波数指令値ωを用いることにより、数式2は電流振幅値A及び電流位相角φに関する2元1次方程式となる。
【0021】
よって、これらの数式1、数式2を解けば、基本波成分の電流振幅値A及び電流位相角φを求めることができる。
なお、角周波数指令値ωの代わりに角周波数検出値や定常状態における交流電動機200の速度検出値を用いても良い。
【0022】
次に、図2は請求項2に相当する本発明の第2実施形態を示す回路図である。
この実施形態では、電流検出器をアーム電流検出器108Aとして電圧形PWMインバータ100Aのアーム(例えばu相アーム)に接続し、そのアームの電流検出値を出力電流振幅値・位相演算器305に取り込むようにした点である。なお、他の構成は図1と同様であるため、説明を省略する。
【0023】
本実施形態によれば、アーム電流検出器108Aにより検出される電流の相が固定されるので、出力電流振幅値・位相演算器305によって演算される数式1、数式2のαを固定することができ、第1実施形態よりも演算処理を簡略化できる利点がある。
【0024】
図3は、請求項3に相当する本発明の第3実施形態を示す回路図である。
本実施形態では、電圧形PWMインバータ100Bが、1相のアームに設けられた第1の電流検出手段としてのアーム電流検出器108Aと、アーム電流が検出されていない他の2相のアームを有する回路の直流電流を検出する第2の電流検出手段としての電流検出器108Bとを備えている。
【0025】
第2実施形態ではスイッチング素子102がオフの期間はアーム電流検出器108Aから電流が検出されないため、結果的に検出応答性や精度が悪くなるおそれがある。
そこで本実施形態では、2つの電流検出器108A,108Bにより常時、電流を検出可能にしてサンプル数を増やし、検出応答性や精度を向上させるようにした。
なお、出力電流振幅値・位相演算器305における演算内容は第1,第2実施形態と同様である。
【0026】
なお、第1実施形態または第3実施形態では、出力電流振幅値・位相演算器305で電流振幅値A及び電流位相角φを演算する際に、特定の相電流が検出できる電圧ベクトルが発生している時に検出した電流を演算に用いることとする。
【0027】
例えば、図1または図3の構成において、電圧ベクトル検出器304により電圧ベクトルVまたはVが検出される場合、そのときの電流検出器108または108Bによる検出電流は前述の表1からu相電流に相当することが明らかであり、これによって出力電流振幅値・位相演算器305が前記数式1、数式2の演算を行う時にα=0°に固定することができる。
同様にして、電圧ベクトルにより直流側電流がv相電流またはw相電流に相当する場合にもα=120°または240°に固定することができる。
このため、数式1、数式2の演算処理を簡略化することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、電圧形PWMインバータのパルスパターンや直流側電流、アーム電流等を用いることにより、インバータの交流出力電流の振幅値や位相角を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す回路図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す回路図である。
【符号の説明】
100,100A,100B 電圧形PWMインバータ
101〜106 半導体スイッチング素子
107 直流電源
108,108A,108B 電流検出器
301 電圧指令発生器
302 キャリア波発生器
303 PWM変調器
304 電圧ベクトル検出器
305 出力電流振幅値・位相演算器

Claims (3)

  1. 電圧形PWMインバータの直流側電流を検出する電流検出手段と、
    前記インバータの半導体スイッチング素子に対するパルスパターンから前記インバータの出力電圧ベクトルを検出する電圧ベクトル検出手段と、
    二つのサンプリング時点における前記直流側電流と、二つのサンプリング時点の間の時間と、前記電圧ベクトル検出手段により特定の出力電圧ベクトルが検出されたときの前記直流側電流から判定した前記インバータの出力相電流のある相を基準とした位相差と、前記インバータの出力周波数相当値を用いて、前記インバータの交流出力電流の基本波成分の振幅値と相電圧に対する位相角とを演算する振幅値・位相演算手段と、
    を備えたことを特徴とする電圧形PWMインバータの電流検出装置。
  2. 電圧形PWMインバータのアーム電流を検出する電流検出手段と、
    前記インバータの半導体スイッチング素子に対するパルスパターンから前記インバータの出力電圧ベクトルを検出する電圧ベクトル検出手段と、
    二つのサンプリング時点における前記アーム電流と、二つのサンプリング時点の間の時間と、前記電流検出手段が接続された前記インバータの出力相電流のある相を基準とした位相差と、前記インバータの出力周波数相当値を用いて、前記インバータの交流出力電流の基本波成分の振幅値と相電圧に対する位相角とを演算する振幅値・位相演算手段と、
    を備えたことを特徴とする電圧形PWMインバータの電流検出装置。
  3. 電圧形PWMインバータのアーム電流を検出する第1の電流検出手段と、
    前記アーム電流を検出していない他のアームにより構成される回路の直流電流を検出する第2の電流検出手段と、
    前記インバータの半導体スイッチング素子に対するパルスパターンから前記インバータの出力電圧ベクトルを検出する電圧ベクトル検出手段と、
    二つのサンプリング時点における前記第1または第2の電流検出手段の直流電流検出値と、二つのサンプリング時点の間の時間と、前記電圧ベクトル検出手段により特定の出力電圧ベクトルが検出されたときの第2の電流検出手段による直流電流検出値から判定した前記インバータの出力相電流のある相を基準とした位相差と、前記インバータの出力周波数相当値を用いて、前記インバータの交流出力電流の基本波成分の振幅値と相電圧に対する位相角とを演算する振幅値・位相演算手段と、
    を備えたことを特徴とする電圧形PWMインバータの電流検出装置。
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