JP3968171B2 - ピール性包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はピール性包装体に関し、さらに詳しくは指の不自由な人でも簡単に開封することができるピール性包装体に関する。
【0002】
【従来技術】
従来から、錠剤などの包装体として、ヒートシールフィルムを使用したものが知られている。この薬剤包装体はシートフィルムのシール部で囲まれた袋部内に錠剤などを収容し、開口側の未シール領域で構成された摘み代部を指先でつまんでシール部を引き剥がすことにより、袋部内の錠剤などを取り出すようにしたものである。
上記摘み代部の長さは薬剤包装体をコンパクトにするために、指先でつまめることができる最小限の幅、例えば、5mm程度に設定してあることが多い。
【0003】
また、ピール開封タイプの包装体の従来技術として、特開平3−111267号に開示された包装体がある。この包装体は、物品を取り出す開封部分のシール強度を開封部分に隣設するシール部分のシール強度より小さく設定することにより、開封部分から開封部分に隣設するシール部分に移る際に、その位置で開封を止め、開封しすぎて収容物を落したりすることを防止するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では下記のような課題がある。
(A)5mm程度に設定された前記摘み代部を指先でつまんで開封することは、指先の細かい動きや、指先に力を込めて物を引っ張ることが難しい患者、例えばリウマチ患者にとっては容易なことではない。
(B)上記特開平3−111267号の方法は、試験具などの比較的大きい物品を対象とし、その物品の一部を露出させ、その露出された物品の一部をつかむことで包装体から物品を取り出す場合に採用されるものである。
一方、錠剤のように小さくかつ軽いものは、袋部の一部を開いたとしても必ず全ての錠剤が取り出せる状態になるとは限らず、また指先の不自由な人は袋部の一部が開いた状態から錠剤を落とさずに取り出すことは難しい作業となるので、結果的に袋部の大部分又は全てを開封することが必要になる。したがって、袋部の大部分又は全てを開く動作中に錠剤などが飛び跳ねたりしないように工夫することが望まれていた。
【0005】
【発明の目的】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、上記課題を解決できる、ピール性包装体を提供することにある。
具体的な目的の一例を示すと、以下の通りである。
(a)リウマチ患者など、指先で物をつまむことの難しい指の不自由な人でも、特に負担をかけることなく簡単に開封することができるピール性包装体を提供する。
(b)小さく、軽い収容物を収めたピール性包装体の開封操作において、袋部を完全に開封した場合でも、収容物がシート上から飛出して落ちたりすることを抑制する。
(c)小さく、軽い収容物を収めたピール性包装体の開封操作において、袋部の大部分を開封した場合に、収容物がシート上から飛出して落ちたりすることを抑制する。
(d)簡単に開封することができるピール性包装体を複数個まとめて保管する場合又は携帯する場合に、使い勝手のよいピール性包装体を提供する。
なお、上記に記載した以外の発明の課題及びその解決手段は、後述する明細書内の記載において詳しく説明する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のピール性包装体を、例えば、本発明の実施の形態を示す図1から図12に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
第1発明は、シート(1・1)間に複数の収容物(2)を挟み、前記シート(1・1)にそれぞれ摘み代部(3)となる領域を残した状態で、個々の収容物(2)を囲むようにシール部(4,…)を設けることにより複数の袋部(5,…)を形成し、一つの袋部 ( 5 ) とその袋部 ( 5 ) 用の摘み代部 ( 3 ) を備えた個別包装体 (16 ,… ) を個々に切り離せるようにシート上 ( 1・1 ) に切離し線 (17 ,… ) を形成し、個別包装体 (16 ,… ) の摘み代部 ( 3 ) 内に前記切離し線 (17 ,… ) に沿って摘み代部 ( 3 ) の剥がれ防止用シール部 (18 ,… ) を形成しておき、前記切離し線 (17 ,… ) に沿って個別包装体 (16) を切り離したときに、その個別包装体 (16) のシール部(4)と摘み代部(3)の境界線(21)上の点から垂線(22,…)をたてた場合に、摘み代部外縁(3a)により切り取られる垂線(22,…)の最大の長さが10mm以上の領域(23)を有するように前記摘み代部(3)の形状を設定したことを特徴とする。
【0007】
第2発明は、前記袋部 ( 5 ) が未シール領域 ( 6 ) 内に収容物 ( 2 ) を収めており、前記切離し線 (17 ,… ) に沿って切り離した個別包装体 (16) の前記摘み代部(3)を持って引っ張ることにより、シール部(4)を引き剥がして袋部(5)内の収容物(2)を取り出せるようにし、袋部(5)の後部にいくにしたがって、未シール領域(6)が徐々に先が狭い形状となるように前記シール部(4)の形状が構成してあることを特徴とする。
第3発明は、前記袋部(5)の所定位置以後のピール強度を、それ以前のシール部(4)のピール強度よりも大きく設定したことを特徴とする。
【0008】
第4発明は、上記摘み代部 ( 3 ) の先端部から上記剥がれ防止用シール部 (18 ,… ) までの長さ ( K ) を、所定長さ以上に設定したことを特徴とする。
第5発明は、上記剥がれ防止用シール部 (18 ,… ) のシール強度を弱く設定したことを特徴とする。
【0009】
ここで、上記第1発明〜第5発明についてさらに説明する。
第1発明は、リウマチ患者など指先の細かい動きが難しい患者にとっては、指先で摘み代部をつまむ動作に比べて、図2に示すように親指と人差し指の側面同士(親指を動かせない人では人差し指と中指の側面同士)で挟む動作の方が簡単であるということに着眼してなされたものであり、さらにピール性包装体を連設型にして、摘み代部内に切離し線に沿って剥がれ防止用シール部を形成すると、複数個まとめて保管する場合又は携帯する場合に使い勝手のよいうえ、摘み代部が動くことによるシール部の剥がれを防止できることに着目してなされたものである。
第1発明において、前記した10mm以上の領域は、100mm以下であることが好ましい。
【0010】
第1発明において、「前記シール部(4)と摘み代部(3)の境界線(21)上の点から垂線(22,…)をたてた場合に、摘み代部外縁(3a)により切り取られる垂線(22,…)の最大の長さが10mm以上の領域(23)を有するように前記摘み代部(3)の形状を設定する」ということを、例えば、図6で説明すれば、シール部(4)と摘み代部(3)の境界線(21)上の点P1〜点Pnにおいて、その各点において境界線(21)と直交する垂線(221)〜(22n)を考えた場合に、点Pi〜点Pkと摘み代部外縁(3a)との間において切り取られる垂線(22i)〜(22k)の長さ( M )が10mm以上となれば、その点Pi〜点Pkの間の垂線(22i)〜(22k)を含む領域(23)が摘み代部(3)として機能できるということである。
【0011】
要するに図2のようにシール部(4)を引き剥がすことによりピール性包装体を開封する動作において、患者が、特に意識することなく摘み代部(3)をつまんだときに、図2の動作を実質的に行える10mm以上の長さの領域(23)が摘み代部(3)にあるということである。但し、予め想定する、シール部の開封方向(図6において矢印(24)で示す)を考慮して、前記摘み代部(3)の領域(23)を配置した方が開封操作が行いやすくなる。なお、図1に示すように、シール部(4)の摘み代部側の部分が尖った先端部(9a)となっている場合は、その先端部(9a)を僅かに丸めた状態で垂線を想定すればよい。
【0012】
第2発明において、「袋部の後部にいくにしたがって、未シール領域が徐々に先が狭い形状となるようにシール部の形状が構成してある」とは、袋部の後部をV字形、U字形、半円形にすることなどが含まれる。また、未シール領域が徐々に先が狭くなる形状には、階段のように段階的に狭くなっていく形状も採用できる。但し、段階的に狭くなっていく形状よりも、V字形、U字形、半円形のようになだらかに連続的に先が狭くなる方がより好ましい。
【0013】
さらに、図6に示すように、未シール領域(6)が徐々に先が狭い形状になるようにシール部(4)の形状を構成する場合、シール部(4)の後部が、袋部(5)の開封方向(24)に対して傾斜する2つの辺(26・26)を備えたもので構成されることが好ましい。
さらに、図6に示すように、袋部(5)の中心線(33)を袋部(5)の開封方向(24)と一致させ、袋部(5)の中心線(33)に対して左右対称形となるようにシール部(4)の後部を構成することが好ましい。その理由は、左右対称形に構成することにより、シール部(4)を引き剥がすときに、左右同じ状態でシール部(4)の後部が引き剥がされるので、シート面が安定した状態となるからである。上記したV字形、U字形、半円形は全て左右対称形となっている。
【0014】
また、第2発明のように、「袋部の後部にいくにしたがって、未シール領域が徐々に先が狭い形状となるようにシール部の形状を構成する」ことにより、袋部を全て開封した場合でも、シートの変動を抑えて収容物の飛出しを防げる利点がある。
図11はその理由を説明するための図であり、図11(A)(B)は前記未シール領域を徐々に先が狭い形状にしたものの一例としてシール部(4)の後部を後V字形シール部(11)にした場合を示す図であり、図11(C)(D)は従来のピール性包装体としてシール部(4)の後部をコ字形シール部(30)にした場合を示す図である。
【0015】
図11(A)(B)に示す構成では錠剤(2)が入った袋部(5)の未シール領域(6)は先が狭い形状になっているのに対して、図11(C)(D)に示す構成では未シール領域(6)はシール部(4)の後端部まで同じ幅になっている。
図11(C)に示すように、シール部(4)の後部をコ字形シール部(30)にした場合において、その後部を開封する前の状態では、錠剤(2)は垂直方向に立ったシート(1・1)間に挟まれ、各シート(1・1)は錠剤(2)の分だけ横に膨らみ(29)を有した状態となっている。この状態から開封が進み、図11(D)に示すように底辺(31)まで達すると、シート(1・1)は水平方向に開いた状態になる。つまり、図11(C)の状態から図11(D)の状態に至るどこかの位置で前記シート(1・1)の膨らみ(29)は解消されて平面状態に移行することになる。この膨らみ(29)が解消される過程で、シート(1・1)上の錠剤(2)は力を受けて不安定になりやすい。
このように従来の構成であると、シート(1・1)の膨らみ(29)が解消される過程で、錠剤(2)はシート(1・1)から反動を受けたように飛び出すことが多くなる。
【0016】
これに対して、シール部(4)の後部を後V字形シール部(11)にすると、図11(A)に示すように錠剤(2)が入っていることでシート(1・1)は横に膨らみ(29)を有した状態になることは上記従来の構成と同じであるが、後V字形シール部(11)は先にいくにしたがって、未シール領域(6)が先が狭くなる形状になっているので、シート部(4)が引き剥がされるにつれて袋部(5)内で自由に動ける未シール領域(6)は次第に狭くなっていく。したがって、図11(A)に示す状態から、図11(B)に示すようにV字の底点(32)に達する位置までシール部(4)を剥がしていく過程において、シート(1・1)の膨らみ(29)が解消されることにより錠剤(2)が力を受けて不安定になる現象はほとんど起こらない。
このように袋部(5)の後部にいくにしたがって、未シール領域(6)が徐々に先が狭い形状になるようにシール部(4)の形状を構成することにより、シール部(4)を最後端部まで開いたとしても、収容物の飛出しを抑えることができる。
なお、上記第2発明の利点は、図11に示すように作られたそれぞれのピール性包装体を実際に開封してみれば、実感として良く理解できるものである。
【0017】
また、第2発明の構成に加えて、シール部(4)の後部に行くにしたがってシール部(4)の面積を大きくするように構成すれば、以下の利点がある。
まず、従来のコ字形シール部(30)であれば、図11(D)に示すように、コ字形シール部(30)の底辺(31)に達するとシール部(4)の面積が急激に増加するので、底辺(31)の位置で急に引き剥がし操作が止まることになる。このとき、シート(1・1)はストレスを受け、上下に振動しやすくなり、錠剤(2)は落ちやすくなる。
これに対して、図11(A)(B)に示す後V字形シール部(11)であれば、V字の底点(32)に達するまで、徐々にシール部(4)の面積が増えていくので、引き剥がし操作を続けるには徐々に大きな力が必要になり、引き剥がし速度は自然に低下していく。したがって、シール部(4)の開封操作の終了時にゆっくりとしたシート(1・1)の動きが確保されることになり、錠剤(2)が飛出る恐れが小さくなる。
なお、第2発明は、袋部(5)の後部においてシール部(4)の面積が大きくならない構成を除くものではない。
図12は袋部(5)の後部においてシール部(4)の面積が大きくならない構成の一例を示す図であり、シール部(4)の面積、即ち、この場合で言えばシール部(4)の幅W=W1+W2は、シール部(4)の後部において一定になっている。そして、袋部(5)が全開する位置(35)以後に横帯状に分離防止シール部(36)が形成してある。図12ではシール部(4)と分離防止シール部(36)は隔離しているが、必要に応じて連続させてもよい。なお、シール部(4)は袋部(5)を構成するために設けるものであるのに対して、分離防止シール部(36)は袋部(5)の全開後に2枚のシート(1・1)が離れてしまわないように設けるものである。
この構成であれば、上記開封の速度が徐々に遅くなる効果は得ることができないが、シート(1・1)の膨らみ(29)が解消される過程で錠剤(2)が不安定になることを抑制できる効果はある。
また、第2発明に加えて第3発明を採用した構成では、未シール領域が徐々に先が狭い形状となっているので、図7に示すようにシール部の引き剥がし中に先が狭い窪み部(13)が形成される。
そのような先が狭い窪み部(13)の形状としては、図7(A)に示すように底の浅い円錐に似た形状、図7(B)に示すように底の浅い角錐に似た形状、図7(C)に示すような寄せ棟形の屋根に似た形状が例示できる。
なお、第4発明において上記所定長さとは、指先の不自由な人でも剥がれ防止用シール部を容易に開封できる長さをいう。
【0018】
【作用及び効果】
第1発明であれば、前記切離し線に沿って個別包装体をそれぞれ切り離した後に、摘み代部をつまんで剥がれ防止用シール部をはがす。その後、シール部を引き剥がすことにより袋部を開封して収容物を取り出す。このとき、前記10mm以上の領域を有するように摘み代部の形状を設定したことにより、親指と人差し指の間、人差し指と中指の間など、指の側面間において摘み代部を挟むことができるようになるので、リウマチ患者など、指先で物を摘まむことの難しい、指の不自由な人でも、特に負担をかけることなく、ピール性包装体を簡単に開封することができる。
なお、切離し線により個別包装体をそれぞれ切り離す処理と、摘み代部をつまんで剥がれ防止用シール部をはがす処理は、患者にピール性包装体を提供する前に、例えば、病院側で行ってもよく、また、患者自身が行ってもよい。
さらに、この第1発明であれば、複数のピール性包装体をまとまった状態で保持できるので携帯性が良くなる利点がある。また、剥がれ防止用シール部を設けているので、摘み代部が動くことによりシール部が剥がれたりすることを防止できる。さらに、前記切離し線に沿って剥がれ防止用シール部を形成するようにしたので製造時において切離し線を形成する場合に、シートの動きを抑制して切離し線の形成処理を行いやすくすることができる。
【0019】
第2発明であれば、袋部の後部にいくにしたがって、未シール領域が徐々に先が狭い形状になるようにシール部の形状が構成してあるので、シール部の後部を引き剥がす操作が進むにつれて、袋部内でシートの動ける範囲が狭くなるので、開封操作に伴うシート上の動きが抑えられ、収容物が落ちたりすることを抑制することができる。
なお、この第2発明であれば、袋部を完全に開封する場合でもシートの動きを抑えることができ、従来のように収容物が落ちるという問題を解決することができる。
【0020】
第3発明では、袋部の所定位置以後のピール強度を、それ以前のシール部のピール強度よりも大きく設定したので、所定の大きさの力でシール部を引き剥がす操作を行えば、ピール強度が強くなった位置で、一旦、開封操作を停止させることができる。したがって、袋部内の好ましい開封位置において収容物の取り出しを行えるようになる。
さらに、第2発明に加えて第3発明を採用した構成では、未シール領域が徐々に先が狭い形状となっているので、袋部の開封操作中に先が狭い窪み部が形成される。そして、好ましい窪み部が形成される所定位置でピール強度を大きくしておけば、開封操作を、その位置で一旦、停止させることができる。その停止位置では、窪み部の存在によりシート上の収容物の動きが規制されているので、シートから収容物が落ちたりすることをさらに抑制することができる。
【0021】
第4発明であれば、上記摘み代部の先端部から上記剥がれ防止用シール部までの長さを所定長さ以上に設定してあるので、指先の不自由な人でも剥がれ防止用シール部を容易に開封することができる。
第5発明であれば、上記剥がれ防止用シール部のシール強度を弱く設定してあるので、指先の不自由な人でも剥がれ防止用シール部を容易に開封することができる。
【0022】
【実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1(A)は本発明の第1実施形態を示し、後述する連設型包装体の切離し線に沿って切り離した後さらに剥れ防止用シール部を剥がした状態の、個別の薬剤包装体を示す斜視図であり、図1(B)はその使用状態の一例を示す図である。
この薬剤包装体は、一対の矩形状シート(1・1)間に少なくとも1個の錠剤(2)を挟み、前記シート(1・1)にそれぞれ摘み代部(3)を残した状態で、前記錠剤(2)の周囲を囲むようにシール部(4)を設けることにより錠剤(2)を収容する袋部(5)を形成してある。
この実施形態では、各シート(1・1)として、透明な耐熱性基材フィルムにピール性樹脂フィルムを積層したシートが使用してある。なお、必ずしも各シート(1・1)の両方にピール性樹脂フィルムを積層する必要はなく、各シート(1・1)の少なくとも一方がピール性樹脂フィルムを含んでおれば、本発明のピール性包装体を構成できる。
【0023】
前記耐熱性基材フィルムは、例えば、セロハン、ポリエチレンテレフタレートなどで構成してあり、ピール性樹脂フィルムは、例えば、東レ合成フィルム株式会社製、トレファン(登録商標)CF9501で構成してある。
シール部(4)は、矩形状シート(1・1)の一端側に六角形の未シール領域(6)を残して、その未シール領域(6)を囲むように外形がホームベース形のシール領域(7)を設けることにより形成してある。前記未シール領域(6)が上記袋部(5)に対応する。
シール部(4)は、図1(A)に示すように開封側から順に前V字形シール部(9)、平行シール部(10)、後V字形シール部(11)を備えている。前V字形シール部(9)のように開封始め側のシール部(4)の面積を小さくすることにより、開封を円滑に始めることができる。また、後V字形シール部(11)はシール部(4)の後部に行くにしたがってシール部(4)の面積が広くなるように、2つの傾斜辺(26・26)を備え、その傾斜辺(26・26)以後のシート(1)の後端部領域を全てシールした構成となっている。
【0024】
又、シール部(4)が形成されていない他端側の未シール領域(8)が摘み代部(3)として形成してある。上記前V字形シール部(9)の先端部(9a)から摘み代部(3)の端部までの長さ(L)は、10mm以上に設定し、必要なら15mm程度、好ましくは20mm程度、余裕を持って設定すれば30mm程度にする。
図1に示す構成では、シール部(4)と摘み代部(3)の境界線(21)上の各点から垂線(図示せず)をたてた場合に、摘み代部外縁(3a)により切り取られる垂線の最大の長さが10mm以上になる領域(23)は、摘み代部(3)のほとんどの領域を占めることになる。
また、図1(A)において区切線(12)で示す、後V字形シール部(11)の位置において、そのシール強度が前V字形シール部(9)と平行シール部(10)のシール強度に比べて大きくなるように設定してあり、シール部を剥がすときに急に大きな力が必要になるように構成してある。なお、この区切線(12)の位置は、後V字形シール部(11)の位置のみならず、平行シール部(10)の領域に設けてもよい。
【0025】
シール強度をある位置から大きくする方法としては、一般の接着性樹脂フィルムを使用する場合、前記区切線(12)位置より前のシール部分をパートコートすることにより、その前の部分のシール強度を低く抑える方法がある。さらに、シート間に接着剤を介在させその接着剤の層でピール性を持たせる場合には接着面積などを変えることにより、接着強度を大きくする方法が考えられる。
【0026】
次に、この薬剤包装体の動作について説明する。
この薬剤包装体をリウマチ患者などの指の不自由な人が開封するときは、図1(B)に示すように机などの平面の上に一方のシート(1)の摘み代部(3)を例えば左手の親指で固定し、他方のシート(1)の摘み代部(3)を右手の親指と人差し指の側面同士で挟んで持って引き剥がすことにより、錠剤などを落としたりすることなく開封することができる。この場合、摘み代部(3)の長さが上記のように大きく設定されているので、指の不自由な人でも開封操作が簡単に行える。
【0027】
薬剤包装体を置く机などの平行な面がない場合は、図2に示すように、2つのシート(1・1)の摘み代部(3・3)をそれぞれ右手、左手の親指と人差し指の側面同士で挟んで固定して、その状態で両手の間隔を広げることで開封する。
このような操作を行う場合、例えば、前V字形シール部(9)の開口側先端部(9a)から摘み代部(3)の端部までの長さ(L)は、少なくとも親指と人差し指の側面同士で挟むことができる長さが必要になる。具体的には、成人の親指の厚さはほぼ20mmであり、親指と人差し指の側面接触位置は、親指の厚さのほぼ半分の位置、即ち、約10mmのところであるから、少なくとも摘み代部(3)の長さ(L)が10mm以上あれば、図2に示す開封操作が行えると予想できる。但し、年齢,人種による指幅のサイズを考慮して15mm程度となることもある。また、親指の側面全体でシートを挟んだ方が安定するので20mm程度あれば好ましく、さらに余裕を考えれば30mm程度あった方が、開封操作は行いやすくなる。
【0028】
一方、摘み代部(3)の長さが長くなり過ぎると、開封前に摘み代部(3)がねじれたり、折れたりする可能性が高くなるとともに、開封操作も逆に行いにくくなるので、摘み代部(3)の長さは100mm以下にすることが良く、好ましくは60mm以下、さらに好ましくは50mm以下にするのが良い。
【0029】
次に、本実施形態において、錠剤の飛び跳ねを抑制するための工夫について説明する。
図2に示すように一対のシート(1・1)を開いていくと、前V字形シール部(9)が開いて、次に平行シール部(10)が開いて、最後に後V字形シール部(11)が開いていく。このとき、平行シール部(10)あるいは後V字形シール部(11)を開いて行く過程で図3に示すような略錐形の窪み部(13)ができる。この立体的な窪み部(13)ができることにより、シート(1・1)は引き剥がし位置において安定した姿勢を維持することができる。また錠剤(2)は窪み部(13)に向かって傾斜した状態となりその動きが規制される。したがって、開封操作に伴うシート(1・1)の動きが多少あっても錠剤(2)が飛び跳ねたりすることが少なくなる。
【0030】
そして、錠剤(2)の大きさ、数などに応じて最も安定する窪み部(13)の大きさ、形を実験により選定して、その窪み部(13)ができるように後V字形シール部(11)の形を決定するとともに、最も安定する窪み部(13)が形成される位置でシール強度を大きくしておけば、確実にその位置で、一旦、開封操作を止めることができ、錠剤(2)の取り出しが簡単に行える。
つまり、図1で示したような区切線(12)の位置でピール強度を急に大きく設定しておけば、その最も好ましい窪み部(13)が形成される位置で開封を確実に止めることができるのである。
なお、窪み部(13)を先が狭いものとし、その窪み部(13)をシール部(4)の後部位置に設けることにより、図3及び図7に示すように、シート(1・1)の大部分を開封した状態で、2つのシート(1・1)面を安定した状態に維持できる。
【0031】
図4はこの発明の第2実施形態を説明するための個別薬剤包装体の正面図である。
この第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、袋部(5)の容積を大きくして5〜8個程度の錠剤(2)を収容できるようにした点と、袋部(5)の未シート領域(6)を扇状に形成した点である。つまり、この第2実施形態ではシール部(4)に第1実施形態のような平行シール部(10)は存在せず、前V字形シール部(9)と後V字形シール部(11)とが直接に接続した構成になっている。また、前記窪み部(13)を形成するための後V字形シール部(11)の先が広い形状は曲線形にしてある。なお、図4に示す薬剤包装体の袋部(5)の面積は大きいものでは25cm2になる。
【0032】
図5(A)(B)はそれぞれこの発明の第3実施形態を示す個別薬剤包装体の斜視図、図5(C)は第4実施形態を説明するための個別薬剤包装体の斜視図である。
これらの第3、第4実施形態はいずれも第1実施形態の摘み代部(3)を変形させたものであり、第3実施形態は各摘み代部(3)の先部域を左右に互い違いになるように切り欠いて、その切り欠いたシート(1a・1a)により、各摘み代部(3)を指間で挟む場合に扱いやすくしてある。即ち、2枚のシート(1a・1a)がぴったり引っ付いた場合には、各シート(1a)を指間に挟むことが難しいが、この第3実施形態ではそのような不都合はなくなる。また、図5(B)に示す構成では、各摘み代部(3)の先部域を左右に互い違いになるように切り欠いていることでは同じであるが、前V字形シール部(9)の二つの斜辺(25・25)から垂線(22)をたてた場合に、その垂線(22)が摘み代部外縁(3a)により切り取られる長さ( M )が10mm以上になる領域を含むように摘み代部(3)を構成してある。
第4実施形態は、各摘み代部(3)に所定形状の開口(14)を設けておき、その開口(14)に指先を引っかけることで2つのシート(1・1)を扱いやすくしたものである。また、患者の指先の状態によっては、各開口(14)に指先を通した状態で各シート(1)を引っ張ることもできる。
【0033】
図8はこの発明の第5実施形態を説明するための連設型包装体の正面図である。
この第5実施形態は、図1に示すようなピール性包装体を複数個連設したもので、ピール性包装体のシール部(4)の構成は第1実施形態とほぼ同様の構成としてある。
この連設型包装体(15)は、シート(1・1)間に複数の錠剤(2)を挟み、前記シートにそれぞれ摘み代部(3)となる領域を残した状態で、個々の錠剤(2)を囲むようにシール部(4)を設けることにより複数の袋部(5,…)を形成し、一つの袋部(5)とその袋部(5)用の摘み代部(3)を備えた個別包装体(16,…)を個々に切り離せるようにシート上(1・1)に切離し線(17,…)を形成し、個別包装体(16,…)の摘み代部(3)内に前記切離し線(17,…)に沿って摘み代部(3)の剥がれ防止用シール部(18,…)が形成してあることを特徴としている。
【0034】
このように切離し線(17,…)に沿って剥がれ防止用シール部(18,…)を形成することにより、連設型包装体(15)の製造時に切離し線(17,…)が形成しやすくなる。これは、切離し線(17)として通常、ミシン目が採用されるが、シール部(4)を形成した後にミシン目を形成することになるので、剥がれ防止用シール部(18)を形成しておくと、摘み代部(3)となるシートの部分が動かないので、ミシン目の形成が行いやすくなるためである。
さらに、連設型包装体(15)の摘み代部(3)に剥がれ防止用シール部(18)を形成することにより、連設型包装体(15)の保管時に摘み代部(3)が折れたり、捩れたりすることを抑制することができる利点もある。
また、個別包装体(16)の摘み代部(3)の先端部から剥がれ防止用シール部(18)までの長さ( K )は、指先の不自由な人でも剥がれ防止用シール部(18)を開封できるような長さ、例えば、10mm以上に設定することが好ましく、剥がれ防止用シール部(18)のシール強度は弱く設定しておくことが好ましい。なお、切り離し線(17)により個別包装体(16)を切り離した後、さらに剥がれ防止用シール部(18)を剥がした状態では、個別包装体(16)の全体構成は図1に示す構成とほぼ同じになるように構成してある。
【0035】
図9はこの発明の第6実施形態を説明するための連設型包装体の正面図である。
この第6実施形態が前記第5実施形態と比べて特徴的な点は、切離し線(17)の一方側にのみ、剥がれ防止用シール部(18)を設けることにより、切離し線(17)で切り離した個別包装体(16)が、剥がれ防止用シール部(18)の横にある領域(23)をつまんで開くことができるようにした点である。この実施形態でも摘み代部(3)となるシートの部分が動かない効果が得られるとともに、剥がれ防止用シール部(18)を引き剥がすために、個別包装体(16)の摘み代部(3)の先端部から剥がれ防止用シール部(18)までの長さ( K )(図8参照)を設ける必要がなくなり、よりコンパクトにすることができる。
【0036】
図10はこの発明の第7実施形態を説明するための連設型包装体の正面図である。
この第7実施形態は、切離し線(17)を使用して個別包装体(16)を連設型包装体(15)から分離できるようにした点は前記第5実施形態と同様であるが、袋部(5)を構成する開封側のシール部(4)を前記切離し線(17)に沿って延設することにより、剥がれ防止用シール部(18)をシール部(4)の一部で兼用できるようにした点を特徴としている。
この第7実施形態であれば、切離し線(17)の形成が楽になるとともに、袋部(5)を構成する開封側のシール部(4)で剥がれ防止用シール部(18)を兼用できるので、剥がれ防止用シール部(18)を設ける手間が不要になる。また、図10に示す構成であれば、三角形状の摘み代部(3)を持って開封が可能となるので、図9示した構成と同様に個別包装体(16)の全長を短くできる利点がある。
【0037】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を変更しない範囲において種々の設計変更を施すことが可能である。以下、そのような実施形態を説明する。
(1)前記第1実施形態において、区切線(12)でシール強度を急激に大きくする構成を採用しなくても、平行シール部(10)から後V字形シール部(11)に移行するときは、後V字形シール部(11)のシール部が徐々に大きくなるので、引き剥がすのに自然に大きな力が必要になる。このようにシール強度を大きくする形態としては、第1実施形態で示したように区切線(12)の前後でシール強度を急激に大きくする方法や、徐々にシール強度を大きくする方法が例示できる。
(2)前記各実施形態ではシートの基本形が矩形であるものを例示したが、その他、円形、楕円形など各種のものを採用することができる。
【0038】
(3)前記各実施形態では収容物を錠剤を例にとり説明したが、ピール性包装体を剥がすときに、飛び跳ねるような粒状体、顆粒などにも本発明は適用できる。
(4)前記第5、第6実施形態では、連設型包装体の切離し線はそれそれの切離し線が平行なものを例示したが、個別包装体の外形が変化すれば、その外形に応じて切り離し線の形態はそれぞれ変化することは明らかである。
(5)一対のシートがぴったりと引っ付いて引き剥がし操作が行いにくくなることを防止する方法としては、図5に示した構成の他に、一方のシートの端部に、折り目をつけて折り返しておく方法や、一方のシートを他方より短くしておく方法がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(A)(B)はそれぞれ本発明の第1実施形態を示す、連設型包装体から切り離した後さらに剥れ防止用シール部を剥がした状態の、個別のピール性包装体の斜視図である。
【図2】図2は第1実施形態に係るピール性包装体の開封操作の一例を説明する斜視図である。
【図3】図3は開封時にできる窪み部の作用を説明するための斜視図である。
【図4】 図4は本発明の第2実施形態を示す、連設型包装体から切り離した個別薬剤包装体の正面図である。
【図5】 図5(A)(B)はそれぞれ本発明の第3実施形態を示す個別薬剤包装体の斜視図、図5(C)は第4実施形態を示す個別薬剤包装体の斜視図である。
【図6】図6は摘み代部の長さの設け方を説明するための図である。
【図7】図7(A)〜(C)はそれぞれ窪み部の形状を説明するための図である。
【図8】図8は本発明の第5実施形態を示す連設型包装体の正面図である。
【図9】図9は本発明の第6実施形態を示す連設型包装体の正面図である。
【図10】図10は本発明の第7実施形態を示す連設型包装体の正面図である。
【図11】図11(A)〜(D)はそれぞれ本発明の第2発明の作用を説明するための図である。
【図12】図12は本発明の第2発明の変形例を示す図である。
【符号の説明】
1…シート、2…錠剤、3…摘み代部、3a…摘み代部外縁、4…シール部、5…袋部、6…未シール領域、16…個別包装体、17…切離し線、18…剥がれ防止用シール部、21…境界線、22…垂線、23…最大の長さが10mm以上の領域。
Claims (5)
- シート(1・1)間に複数の収容物(2)を挟み、前記シート(1・1)にそれぞれ摘み代部(3)となる領域を残した状態で、個々の収容物(2)を囲むようにシール部(4,…)を設けることにより複数の袋部(5,… )を形成し、一つの袋部 ( 5 ) とその袋部 ( 5 ) 用の摘み代部 ( 3 ) を備えた個別包装体 (16 ,… ) を個々に切り離せるようにシート上 ( 1・1 ) に切離し線 (17 ,… ) を形成し、個別包装体 (16 ,… ) の摘み代部 ( 3 ) 内に前記切離し線 (17 ,… ) に沿って摘み代部 ( 3 ) の剥がれ防止用シール部 (18 ,… ) を形成しておき、前記切離し線 (17 ,… ) に沿って個別包装体 (16) を切り離したときに、その個別包装体 (16) のシール部(4)と摘み代部(3)の境界線(21)上の点から垂線(22,…)をたてた場合に、摘み代部外縁(3a)により切り取られる垂線(22,…)の最大の長さが10mm以上の領域(23)を有するように前記摘み代部(3)の形状を設定したことを特徴とする、ピール性包装体。
- 前記請求項1に記載のピール性包装体において、前記袋部 ( 5 ) は未シール領域 ( 6 ) 内に収容物 ( 2 ) を収めており、前記切離し線 (17 ,… ) に沿って切り離した個別包装体 (16) の前記摘み代部(3)を持って引っ張ることにより、シール部(4)を引き剥がして袋部(5)内の収容物(2)を取り出せるようにし、袋部(5)の後部にいくにしたがって、未シール領域(6)が徐々に先が狭い形状となるように前記シール部(4)の形状が構成してあることを特徴とする、ピール性包装体。
- 前記請求項1又は請求項2に記載のピール性包装体において、前記袋部(5)の所定位置以後のピール強度を、それ以前のシール部(4)のピール強度よりも大きく設定したことを特徴とするピール性包装体。
- 前記請求項1から3のいずれか1項に記載のピール性包装体において、上記摘み代部 ( 3 ) の先端部から上記剥がれ防止用シール部 (18 ,… ) までの長さ ( K ) を、所定長さ以上に設定したことを特徴とする、ピール性包装体。
- 前記請求項1から4のいずれか1項に記載のピール性包装体において、上記剥がれ防止用シール部 (18 ,… ) のシール強度を弱く設定したことを特徴とする、ピール性包装体。
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