JP3967820B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はブロックパターンを有する空気入りタイヤに係り、特に、ブロック剛性を確保しつつ、排水性効率を向上させた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ウエット路面走行時の排水効率を向上させたブロックパターンとして、図10(A)に示すように、複数の周方向溝106とタイヤ幅方向(矢印L方向及び矢印R方向)に対して傾斜させた複数の傾斜溝108とによって区画された菱形のブロック100を有するブロックパターンが知られている。
【0003】
従来より、ブロック100の鋭角隅部の角度αを、より鋭角にすると排水効率が上がることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、排水効率を向上しようとしてブロック100の鋭角隅部をより鋭角にしようとすると、先端部分の剛性が低下してしまい、接地する際に先端部分が捩じれて倒れ込んだりするため、偏摩耗が顕著になったり、操縦安定性が低下する問題がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ブロック剛性を確保しつつ、排水性効率を向上させることのできる空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、タイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向溝と、タイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延びる複数の傾斜溝とによって区画された複数のブロックを有する空気入りタイヤであって、前記ブロックの鋭角隅部付近は、鋭角隅分先端に向けてそのブロック高さが除々に漸減される一つの平面状傾斜面を有し、前記ブロックの踏面と前記傾斜面との間にはブロック内部に曲率中心を有する第1の円弧状面取り部が形成され、前記傾斜面とブロック側壁面との間にはブロック先端に向かうに従って半径が小化する第2の円弧状面取り部が形成され、前記第1の円弧状面取り部と前記第2の円弧状面取り部が滑らかに接続している、ことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、ブロックの鋭角隅部付近が、鋭角隅分先端に向けてそのブロック高さが除々に漸減される一つの平面状傾斜面を有し、ブロックの踏面と傾斜面との間にはブロック内部に曲率中心を有する第1の円弧状面取り部が形成され、傾 斜面とブロック側壁面との間にはブロック先端に向かうに従って半径が小化する第2の円弧状面取り部が形成され、第1の円弧状面取り部と第2の円弧状面取り部が滑らかに接続しているので、鋭角隅部付近の溝内の水の流れがスムーズになり、鋭角隅部の角度を更に鋭角にすることなく排水効率が向上させることができる。
【0008】
また、排水効率を上げるために鋭角隅部の角度を更に鋭角にしなくても良いため、鋭角隅部付近の偏摩耗性が悪化することもなく、操縦安定性が低下することもない。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10のトレッド12には、タイヤ周方向(矢印S方向及び矢印S方向とは反対方向)に沿って延びる周方向溝14,16,18及びタイヤ幅方向(矢印L,R方向)に対して傾斜する傾斜溝20,22,24,26によって略菱形のブロック28,30,32,34が区画形成されている。
【0011】
ここで、タイヤ赤道面CLを境にして図面の左側の傾斜溝20,22は左上がりに傾斜し、タイヤ赤道面CLを境にして図面の右側の傾斜溝24,26は右上がりに傾斜している。
【0012】
この空気入りタイヤ10は、図面の矢印S方向で示す方向に回転するように車両に装着される。
【0013】
なお、トレッド12を平面視したときのブロック28,30,32,34の鋭角隅部の角度α(周方向溝と傾斜溝との交差角度)は、20°〜75°の範囲内に設定されている。
【0014】
図2(A),(B)に示すように、ブロック32の鋭角隅部付近は、先端に向かうにしたがってその高さHが漸減される平面状の傾斜面36を有し、踏面38と傾斜面36との間には、ブロック内部へ曲率中心を有した半径R1の円弧状面取り部40が形成されている。
【0015】
更に、傾斜面36とブロック側壁面42との間には、踏面38の部分で半径R2とされ、ブロック先端に向かうに従って半径R2が小化する円弧状面取り部44が形成されている。
【0016】
なお、他のブロック28,30,34の鋭角隅部付近も、ブロック32と同様に、傾斜面36を有し、踏面38と傾斜面36との間には円弧状面取り部40が形成され、傾斜面36とブロック側壁面42との間には円弧状面取り部44が形成されている。
【0017】
なお、円弧状面取り部40と円弧状面取り部44とは滑らかな円弧曲線で滑らかに接続している。
【0018】
本実施形態の空気入りタイヤ10では、ブロック28,30,32,34の鋭角隅部付近に傾斜面36が設けられ、かつ踏面38と傾斜面36との接点部分に円弧状面取り部40が形成され、更に傾斜面36とブロック側壁面42との間に円弧状面取り部44が形成されているので、各ブロック28,30,32,34の鋭角隅部付近の溝内の水の流れがスムーズになり、鋭角隅部の角度αを更に鋭角にすることなく排水効率を向上させることができる。
【0019】
例えば、図3(A),図4(A)に示すように、鋭角隅部に円弧状面取り部の形成されていないブロック100では、溝内の水の流れAが乱れるが、図3(B),図4(B)に示すように、本実施形態のブロック32(28,30,34も同様)では、溝内の水の流れAがスムーズになる。
【0020】
また、水の流れをスムーズにするためにブロック28,30,32,34の鋭角隅部の角度αを極端に鋭角にする必要が無いので、鋭角隅部の剛性が低下することは無く、鋭角隅部付近の偏摩耗性が悪化したり、操縦安定性が低下する等の不具合が生じない。
【0021】
ここで、排水効率を向上させるためには、円弧状面取り部40の半径R1を5〜30mmに設定することが好ましく、円弧状面取り部44の半径R2(踏面38において)を3〜8mmに設定することが好ましい。
【0022】
なお、図5に示す比較例では、ブロック32(28,30,34も同様)の鋭角隅部に、半径R3からなる単一の円弧状面取り部46が形成されている。この半径R3は踏面38で最大値をとり、先端部に向かうに従って小化する。
【0023】
円弧状面取り部46の半径R3(踏面38において)を5〜10mmに設定することが好ましい。
【0024】
なお、図6(A)に示すように、ブロック102の鋭角隅部に円弧でない直線状の面取り104が形成されていると、ブロック102が路面48に接地する際に、直線状の面取り104が一度に当たってしまい、打撃音が大きくなる。
【0025】
一方、鋭角隅部に単一の円弧状面取り部46を形成すると、図6(A)に示すように、ブロック32(28,30,34も同様)が路面48に接地する際(踏み込む際)には、円弧状面取り部46が路面48に点当たりしてから接地するため、路面48と当接したときの打撃音を低減することができ、パターンノイズを低減することができる。
【0026】
また、図7,8は比較例であり、ブロック32(28,30,34も同様)の鋭角隅部は、図7の例では円弧状面取り部40の半径R1が大化されており、図8の例では、ブロック基部側にブロック外側に曲率中心を有する逆円弧部50が形成されている。
(試験例)
本発明の適用された実施例のタイヤを装着した車両と、従来のタイヤを装着した車両とを用意し、この車両を水深5mmの水たまりを設けた半径100mのコーナーに5km/hステップで進入させて速度毎の横加速度を測定した。なお、横加速度が0になったときは、完全にタイヤが路面から浮き上がった状態である。
【0027】
従来例のタイヤ及び実施例のタイヤは共にパターンは同じであるが、鋭角隅部の形状が異なっている。
【0028】
従来例のタイヤは、図10(A),(B)に示すように、鋭角隅部が一定高さで面取りされていないブロックを有したタイヤである。
【0029】
実施例のタイヤは、鋭角隅部が図5に示すような形状とされたブロックを有したタイヤである。ちなみに、図5(A)に示すように踏面における円弧状面取り部の半径R3は5mm、図5(B)に示すように半径R1は10mm、角度θが35°である。
【0030】
また、従来例及び実施例のタイヤのブロックの高さHは8.1mmである。
図9のグラフで示すように、本発明の空気入りタイヤは、従来の空気入りタイヤに比較して横加速度が大きく、滑りが少ないことが分かる。これは、実施例のタイヤが排水性に優れていることの証明である。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の空気入りタイヤは上記の構成としたので、偏摩耗性の悪化、操縦安定性の低下を招くことなく、排水効率を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図2】 (A)は実施形態のブロックの鋭角隅部付近の斜視図であり、(B)は図2(A)の2(B)−2(B)線断面図である。
【図3】 (A)は円弧状面取り部の形成されていないブロックの近傍の水の流れを示すブロック斜め上方から見た説明図であり、(B)は実施形態のブロックの近傍の水の流れを示すブロック斜め上方から見た説明図である。
【図4】 (A)は円弧状面取り部の形成されていないブロックの近傍の水の流れを示すブロック側面から見た説明図であり、(B)は実施形態のブロックの近傍の水の流れを示すブロック側面から見た説明図である。
【図5】 (A)は比較例に係るブロックの斜視図であり、(B)は図5(A)の5(B)−5(B)線断面図である。
【図6】 (A)は円弧状面取り部の形成されていないブロックが路面に当接する際の状態を示す斜視図であり、(B)は円弧状面取り部の形成されたブロックが路面に当接する際の状態を示す斜視図である。
【図7】 他の比較例に係るブロックの断面図である。
【図8】 さらに他の比較例に係るブロックの断面図である。
【図9】 試験タイヤの速度と横向き加速度との関係を示すグラフである。
【図10】 (A)は従来例のタイヤのトレッドの平面図であり、(B)は図10(A)の10(B)−10(B)線断面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
14 周方向溝
16 周方向溝
18 周方向溝
20 傾斜溝
22 傾斜溝
24 傾斜溝
26 傾斜溝
28 ブロック
30 ブロック
32 ブロック
34 ブロック
40 円弧状面取り部
44 円弧状面取り部
46 円弧状面取り部
Claims (1)
- タイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向溝と、タイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延びる複数の傾斜溝とによって区画された複数のブロックを有する空気入りタイヤであって、
前記ブロックの鋭角隅部付近は、鋭角隅分先端に向けてそのブロック高さが除々に漸減される一つの平面状傾斜面を有し、前記ブロックの踏面と前記傾斜面との間にはブロック内部に曲率中心を有する第1の円弧状面取り部が形成され、前記傾斜面とブロック側壁面との間にはブロック先端に向かうに従って半径が小化する第2の円弧状面取り部が形成され、前記第1の円弧状面取り部と前記第2の円弧状面取り部が滑らかに接続している、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
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