JP3967478B2 - ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝撃強度と剛性のバランスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系樹脂は、一般に耐薬品性、機械的特性に優れており、機械部品、自動車部品から家庭用品、各種容器などの広範囲の用途に使用されている。しかしながら、耐衝撃強度、特に低温時における衝撃強度が不足していることが指摘されており、この問題を改良する目的で、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のゴム成分を添加する試みが数多くなされている(例えば、特公昭42−19935号公報、特公昭46−8585号公報、特公昭47−26396号公報などを参照)。ところが、ポリオレフィン系樹脂にスチレン−ブタジエンブロック共重合体等のゴム成分を添加した場合、ポリオレフィン系樹脂が本来有している剛性が損なわれることがあるため、さらにタルクなどの無機充填剤を配合して剛性を補うという試みが広く行われている(特開平6−172593号公報、特開平4−170452号公報などを参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のように無機充填剤を配合する場合、十分な剛性を示すように無機充填剤の配合量を多くすると、逆に耐衝撃性の低下が著しくなるという問題が浮上してしまうので、剛性と耐衝撃性のバランスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物を得ることは容易ではない。
本発明は、上記の問題点に鑑み、耐衝撃性と剛性のバランスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物を容易に得ることを目的としてなされたものであって、同樹脂組成物の改良された製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記した従来技術においては、ポリオレフィン系樹脂、スチレンと共役ジエンからなるブロック共重合体および無機充填剤からなるポリオレフィン系樹脂組成物は、一般に各構成成分を一括して混練するという手順で製造されているが、本発明者らが検討した結果、ブロック共重合体として特定のものを使用し、かつ各構成成分の混練を特定の順序で行うと、従来法で得られる樹脂組成物に比して、無機充填剤の配合量が同じであっても剛性がより向上し、その結果、耐衝撃性と剛性のバランスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物が容易に得られることが見出された。そして、本発明者らは、かかる知見に基づき、さらに検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち本発明は、ポリオレフィン系樹脂(イ)、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックを2個以上、および共役ジエンからなる重合体ブロックを1個以上有し、ビニル芳香族化合物の含有量が15〜45重量%、数平均分子量が3万〜20万であるブロック共重合体またはその水素添加物(ロ)、および無機充填剤(ハ)からなるポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法であって、該ブロック共重合体またはその水素添加物(ロ)と無機充填剤(ハ)を混練して組成物(a)を調製した後、該組成物(a)にポリオレフィン系樹脂(イ)を混練することからなるポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においてポリオレフィン系樹脂組成物の構成成分(イ)として使用されるポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンを主たる構成成分とする樹脂であればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレンブロック共重合体などが挙げられるが、これらの中でも、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、一種類のものを使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0007】
また、ポリオレフィン系樹脂組成物の構成成分(ロ)としては、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上、および共役ジエンからなる重合体ブロックBを1個以上有し、ビニル芳香族化合物の含有量が15〜45重量%、数平均分子量が3万〜20万であるブロック共重合体またはその水素添加物(以下、これらをスチレン系ブロック共重合体と略称する)が使用される。
【0008】
スチレン系ブロック共重合体における重合体ブロックAを構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられるが、これらの中でも、スチレンが好ましい。
ビニル芳香族化合物は、一種類のものを使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0009】
また、スチレン系ブロック共重合体における重合体ブロックBを構成する共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、これらの中でも、イソプレン、1,3−ブタジエンまたはこれらの混合物が好ましい。
共役ジエンは、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0010】
スチレン系ブロック共重合体における重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合様式は、線状、分岐状あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0011】
スチレン系ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物の含有量は、15〜45重量%の範囲内である。ビニル芳香族化合物の含有量が15重量%未満の場合、ポリオレフィン系樹脂組成物から得られる成形品の剛性が低くなり実用的ではない。また、従来のように一括して構成成分を混練して得られた組成物と比べて剛性の向上が十分には認められない。一方、ビニル芳香族化合物の含有量が45重量%を越える場合、ポリオレフィン系樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃強度が低下する。スチレン系ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物の含有量は、15〜40重量%の範囲内であることが好ましい。
【0012】
スチレン系ブロック共重合体の数平均分子量は3万〜20万の範囲内にある必要がある。ここで言う数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の分子量である。スチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が3万未満の場合、ポリオレフィン系樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃強度が低下する。一方、スチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が20万を越えると、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形性が低下する。スチレン系ブロック共重合体の数平均分子量は、3万〜15万の範囲内にあることが好ましい。
【0013】
スチレン系ブロック共重合体としては、水素添加物を使用することもできる。この場合、水素添加率には特に制限はないが、耐熱性の観点から、重合体ブロックB中の、共役ジエンに基づく炭素−炭素二重結合の80%以上が水素添加されていることが好ましい。なお、スチレン系ブロック共重合体における水素添加率は、重合体ブロックB中の共役ジエンに基づく炭素−炭素二重結合の含有量を、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、核磁気共鳴等によって測定し、該測定値から求めることができる。
【0014】
また、スチレン系ブロック共重合体は、本発明の趣旨を損なわない限り、分子鎖中に、または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物、アミノ基、エポキシ基などの官能基を有していてもよい。
【0015】
スチレン系ブロック共重合体は、例えば、次のような公知のアニオン重合法によって製造することができる。すなわち、アルキルリチウム化合物等を開始剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物、共役ジエンを逐次重合させてブロック共重合体を形成する。また、得られたブロック共重合体を、公知の方法に従って不活性有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加することにより、ブロック共重合体の水素添加物を製造することができる。
【0016】
次にポリオレフィン系樹脂組成物の構成成分(ハ)として使用される無機充填剤としては、従来から一般的にフィラーとして使用されているものが使用可能であり、材質、形状等には特に制限はない。無機充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、カーボンブラック、カーボン繊維、水酸化マグネシウム、マイカ、クレー、硫酸バリウム、シリカ、酸化チタン、塩基性硫酸マグネシウム、ガラス粉末、アルミナ、ガラス繊維等を使用できる。これらの中でも、タルクが好ましい。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂組成物において、各構成成分の割合は特に制限されるものではなく、樹脂組成物の使用目的に応じて適宜決定すればよいが、剛性と耐衝撃強度のバランスのよい成形品を得るという観点から、ポリオレフィン系樹脂(イ)、ブロック共重合体またはその水素添加物(ロ)、および無機充填剤(ハ)の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂(イ)/〔ブロック共重合体またはその水素添加物(ロ)+無機充填剤(ハ)〕=90/10〜40/60(重量比)、かつブロック共重合体またはその水素添加物(ロ)/無機充填剤(ハ)=50/50〜80/20(重量比)であることが好ましい。
【0018】
また、ポリオレフィン系樹脂組成物には、その改質を目的として他の添加剤、例えば、熱老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤などを添加してもよい。
【0019】
本発明によれば、上記の各構成成分を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を、i)スチレン系ブロック共重合体(ロ)と無機充填剤(ハ)を混練して組成物(a)を作製した後、ii)該組成物(a)にポリオレフィン系樹脂(イ)を混練するという手順によって製造する。
【0020】
スチレン系ブロック共重合体(ロ)と無機充填剤(ハ)の混練は、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどの従来から使用されている混練機を用いて実施することができる。また、混練は、通常180〜270℃の範囲の温度で実施される。
【0021】
上記で得られるスチレン系ブロック共重合体(ロ)と無機充填剤(ハ)の組成物(a)には、続いてポリオレフィン系樹脂(イ)が混練される。オレフィン系樹脂(イ)の混練は、上記と同様に、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどの従来から使用されている混練機を用いて実施することができる。また、オレフィン系樹脂(イ)の混練は、通常180〜270℃の範囲の温度で実施される。
なお、ポリオレフィン系樹脂(イ)の混練は、一旦ペレット、ストランド等の形状として取得したスチレン系ブロック共重合体(ロ)と無機充填剤(ハ)の組成物(a)に対して行ってもよいし、溶融状態にあるスチレン系ブロック共重合体(ロ)と無機充填剤(ハ)の組成物(a)に対して行ってもよい。後者の場合、スチレン系ブロック共重合体(ロ)と無機充填剤(ハ)の混練を行っている混練機に、サイドフィーダー等を用いてポリオレフィン系樹脂(イ)を添加する方法が簡便である。
【0022】
上記の方法で得られたポリオレフィン系樹脂組成物は、各種成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形、カレンダー成形などにより成形が可能であり、特に、ハイサイクルの射出成形に適している。そして、得られた成形品は、日用部品、包装材料、自動車内外装品等の自動車部品(大型のバンパー、インスツルメントパネル等)などの広範囲の用途に利用できる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
なお、以下の実施例および比較例における物性の測定方法は以下のとおりである。
曲げ弾性率
JIS K7203に規定された方法に従って測定し、剛性の指標とした。
耐衝撃試験
JIS K7110に規定された方法に従い、25℃および−20℃でのIZOD衝撃強度を測定した。
【0025】
参考例(スチレン系ブロック共重合体の製造)
s−ブチルリチウムを重合開始剤とし、シクロヘキサン中でスチレンとイソプレンまたはブタジエンをアニオン重合することにより、ブロック共重合体を合成し、得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Ziegler系触媒を用いて、8kg/cm2の水素圧力雰囲気下、75℃で5時間水素添加反応を行って、表1に示す物性を有するスチレン系ブロック共重合体I〜IIIを得た。
【0026】
【表1】
Figure 0003967478
【0027】
実施例1〜3
参考例で得られたスチレン系ブロック共重合体I〜IIIとタルクを、表2に示した割合で二軸押出機により230℃で混練し、ペレット化した。得られたペレットにポリプロピレンを表2に示す割合となるように加えて、再び二軸押出機により230℃の温度で混練を行い、ペレット化して、ポリオレフィン系樹脂組成物を得た。得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて上記の方法により物性を測定した。結果を表2に併せて示す。
【0028】
比較例1〜3
ポリプロピレン、スチレン系ブロック共重合体I〜IIIおよびタルクを表2に示した割合でドライブレンドし、二軸押出機により230℃の温度で混練してペレット化し、ポリオレフィン系樹脂組成物を得た。得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて上記の方法により各種物性を測定した。結果を表2に併せて示す。
【0029】
比較例4〜6
ポリプロピレンおよびスチレン系ブロック共重合体I〜IIIを表2に示した割合でドライブレンドし、二軸押出機により230℃の温度で混練してペレット化し、ポリオレフィン系樹脂組成物を得た。得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて上記の方法により各種物性を測定した。結果を表2に併せて示す。
【0030】
比較例7
ポリプロピレンを単独で使用し、上記の方法に従って各種物性を測定した。結果を表2に併せて示す。
【0031】
【表2】
Figure 0003967478
【0032】
表2から明らかなように、本発明の製造方法によって得られたポリオレフィン系樹脂組成物は、各構成成分を一括して混練して得られる組成物に比べて剛性が向上しており、剛性と耐衝撃性のバランスが改良されている。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、耐衝撃性と剛性のバランスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物を容易に製造することができる。

Claims (2)

  1. ポリオレフィン系樹脂(イ)、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上、および共役ジエンからなる重合体ブロックBを1個以上有し、ビニル芳香族化合物の含有量が15〜45重量%、数平均分子量が3万〜20万であるブロック共重合体またはその水素添加物(ロ)、および無機充填剤(ハ)からなるポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法であって、該ブロック共重合体またはその水素添加物(ロ)と無機充填剤(ハ)を混練して組成物(a)を調製した後、該組成物(a)にポリオレフィン系樹脂(イ)を混練することからなるポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  2. ブロック共重合体またはその水素添加物(ロ)として、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上、および共役ジエンからなる重合体ブロックBを1個以上有し、ビニル芳香族化合物の含有量が15〜45重量%、数平均分子量が3万〜20万であるブロック共重合体の水素添加物であって、水素添加率が80%以上であるものを使用する請求項1記載の方法。
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