JP3966813B2 - サスペンション装置のアライメント調整構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体側に前後方向に離間した第1、第2支持部で支持されて車輪側に第3支持部で支持されたサスペンションアームを備え、前記第1、第2の支持部の位置を移動させることで車輪のアライメントを調整するサスペンション装置のアライメント調整構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車輪のアライメントを調整可能なサスペンションアームの取付構造が下記特許文献により公知である。
【0003】
このものは、いわゆるA型のサスペンションアームの基端側の第1、第2支持部を車体側に設けたブラケットに対して車幅方向に移動可能に支持するものであり、第1、第2支持部の位置を独立に、あるいは相互に関連して移動させることにより車輪のキャンバ、キャスタ、トーイン等のアライメントを調整可能にしている。
【0004】
【特許文献】
特許第3081587号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献に記載されたものは、サスペンションアームの基端側を移動させるべく、第1、第2支持部の各々に、軸部に対して偏心したカム部を備えたカムボルトを使用しているため、アライメントの調整が面倒で多くの時間を要するという問題があった。しかも、例えばキャンバを調整するには第1、第2支持部を正確に同量だけ車幅方向に移動させる必要があり、第1、第2支持部の移動量が不均一であると意図せぬキャスタの変化が発生してしまうため、アライメントの調整に熟練を要するという問題があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車輪のキャンバキャスタ独立して調整することができ、しかもその調整作業が容易なアライメントの調整構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車体側に前後方向に離間した第1、第2支持部で支持されて車輪側に第3支持部で支持されたサスペンションアームを備え、前記第1、第2支持部の位置を移動させることで車輪のアライメントを調整するサスペンション装置のアライメント調整構造において、前記第1支持部は、車体に前後方向及び車幅方向の両方向同時に移動可能に支持されていて、その移動位置を固定可能であり、前記第2支持部は、車体に前後方向に移動可能に設けられることを特徴とする、サスペンション装置のアライメント調整構造が提案される。
【0008】
上記構成によれば、サスペンションアームを車体側に支持する前後方向に離間した第1、第2支持部のうち、第1支持部が車体に前後方向及び車幅方向の両方向同時に移動可能であり、サスペンションアームを車輪側に支持する第3支持部が前後方向あるいは車幅方向に移動可能であるため、先ず第1支持部を前記車体の前後方向及び車幅方向に両方向同時に移動させてキャンバを所望の値に調整し、その結果として発生したキャスタのずれを、第2支持部を移動させることでキャンセルすることができるので、キャンバだけを独立して調整することが可能となる。このようにキャンバおよびキャスタの相互干渉がないので、キャンバの調整作業が容易で熟練を必要とせず、作業に要する労力および時間を節減することができる。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて前記第1支持部に連結したスライダに設けた複数の長孔と、それら長孔を摺動可能にそれぞれ貫通し該スライダを車体に固定可能な複数のボルトとにより、前記第1支持部を車体に対し前後方向および車幅方向の両方向同時に移動可能とし且つその移動位置を固定可能としたサスペンション装置のアライメント調整構造が提案される。
【0010】
上記構成によれば、第1支持部に連結したスライダに設けた複数の長孔と、それら長孔を摺動可能にそれぞれ貫通し該スライダを車体に固定可能な複数のボルトとにより、前記第1支持部を車体に対し前後方向および車幅方向の両方向同時に移動可能とし且つその移動位置を固定可能としたので、スライダは支障なくスライドすることができるとともに、該複数のボルトを締結して車体側のブラケットに容易に固定できる。
【0011】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第1支持部はスライダに設けられており、前記スライダは車体側に設けたガイド面に沿って移動可能であることを特徴とするサスペンション装置のアライメント調整構造が提案される。
【0012】
上記構成によれば、第1支持部を有するスライダを車体側に設けたガイド面に沿って移動可能に設けたので、第1支持部の移動方向をガイド面で規制することで調整作業の精度を高めることができる。
【0013】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1,2又は3の構成に加えて、前記第2支持部は車体側あるいはサスペンションアーム側に設けた長孔によって移動可能であることを特徴とするサスペンション装置のアライメント調整構造が提案される。
【0014】
上記構成によれば、第2支持部が車体側あるいはサスペンションアーム側に設けた長孔によって移動可能であるため、簡単な構造で第2支持部の移動方向を規制することができる。
【0015】
尚、実施例のロアアーム13は本発明のサスペンションアームに対応し、実施例のブラケット28,32は本発明の車体に対応する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図5は本発明の一実施例を示すもので、図1は車両用サスペンション装置の後面図、図2は図1の2−2線拡大矢視図、図3は図2の3部拡大図、図4はキャンバの説明図、図5はキャスタの説明図である。
【0018】
図1に示すように、ナックル11がアッパーアーム12およびロアアーム13を介して車体に上下動自在に支持されており、ナックル11にボールベアリング14を介して回転自在に支持されたアクスルハブ15に、外周にタイヤ16が装着されたホイール17がボルト18…およびナット19…で固定される。タイヤ16およびホイール17は車輪Wを構成する。 図2に示すように、ロアアーム13は基端側(車幅方向内端側)が二股になったいわゆるA型アームであって、二股になった基端側のうち車体後方側には第1支持部21が形成されるとともに、車体前方側には第2支持部22が形成され、先端側(車幅方向外端側)には第3支持部23が形成され、更に第3支持部23の近傍に第4支持部24が形成される。
【0019】
図3を併せて参照すると明らかなように、第1支持部21は二股になっており、そこを前後方向に貫通するボルト25によってゴムブッシュジョイント26が支持される。スライダ27は板状部27aと円筒部27bとを備えており、円筒部27bの内周面にゴムブッシュジョイント26の外周面が圧入により固定される。板状部27aはガイド面aおよび一対のストッパ面b,cを備えた概略台形状であり、その板状部27aを支持する車体側のブラケット28には、前記ガイド面aおよび一対のストッパ面b,cにそれぞれ当接可能なガイド面a′および一対のストッパ面b′,c′が形成される。更に、板状部27aにはガイド面aと平行な3個の長孔27c…が形成されており、これらの長孔27c…を貫通する3本のボルト29…で板状部27aがブラケット28に固定される。
【0020】
板状部27aはそのガイド面aがブラケット28のガイド面a′にガイドされて後外方から前内方に移動可能であり、そのストッパ面bがブラケット28のストッパ面b′に当接することで前内方への移動端が規制され、そのストッパ面cがブラケット28のストッパ面c′に当接することで後外方への移動端が規制される。
【0021】
図2に戻り、第2支持部22は円筒状になっており、その内周面にゴムブッシュジョイント30の外周面が圧入により固定される。ゴムブッシュジョイント30の中心には前後方向に延びる長孔30aが形成されており、この長孔30aを貫通するボルト31で車体側のブラケット32に固定される。ロアアーム13の先端側の第3支持部23はボールジョイント33を介してナックル11の下面に支持される。また第4支持部24はゴムブッシュジョイント34を介して図示せぬダンパーの下端に支持される。後側のゴムブッシュジョイント26のボルト25および前側のゴムブッシュジョイント30の長孔30aは、略車体前後方向に延びるロアアーム13の揺動軸線L上に配置されている。
【0022】
図4に示すように、車輪Wのキャンバとは車体前後方向から見たときの鉛直線に対する車輪Wの回転面Pの傾きをいい、図示したように車輪Wの上端が下端よりも外側に傾斜しているときにキャンバが正になり、逆方向に傾斜しているときにキャンバが負になる。
【0023】
図5に示すように、車輪Wのキャスタとは車体横方向から見たときの鉛直線に対するキングピン軸Kの傾きをいい、図示したようにキングピン軸Kの上部が下部よりも後方に傾斜しているときにキャスタが正になり、逆方向に傾斜しているときにキャスタが負になる。
【0024】
従って、図2において、ロアアーム13の先端の第3支持部23が矢印Y方向(車体内側)に移動すると車輪Wの上端が車体外方に倒れてキャンバが増加し、反矢印Y方向(車体外側)に移動するとキャンバが減少する。またロアアーム13の先端の第3支持部23が矢印X方向(車体後方)に移動するとキングピン軸Kが立ち上がってキャスタが減少し、反矢印X方向(車体前側)に移動するとキャスタが増加する。
【0025】
本実施例のサスペンション装置では、ロアアーム13を車体内外方向に移動させてキャンバを調整し、その際にキャスタが変化するのを防止することができる。一例として、ロアアーム13を図2の矢印Y方向に移動させてキャンバを増加させる場合について説明する。図3において、3本のボルト29…を緩めてスライダ27の板状部27aのガイド面aをブラケット28のガイド面a′に沿って矢印A方向に所定距離だけスライドさせる。このとき、ガイド面a,a′の作用でスライダ27を所定の方向に正確に移動させることができ、しかも長孔27c…がボルト29…に沿って移動することで、板状部27aは支障なくスライドすることができる。またロアアーム13の第1支持部21の移動に伴って第2支持部22も移動するが、ゴムブッシュジョイント30のゴムブッシュ30bが弾性変形することで第2支持部22は支障なく移動することができる。
【0026】
上述したスライダ27の板状部27aのスライドにより、ロアアーム13の第3支持部23は、第2支持部22を中心として図2の矢印B方向に移動し、その移動量の矢印Y方向の成分によりキャンバが所望の大きさに調整されると、前記3本のボルト29…を締結してスライダ27をブラケット28に固定する。
【0027】
ところで、図2に矢印Bで示した第3支持部23の移動に伴い、その移動量が矢印X方向の成分を持つため、意図せぬキャスタの減少が発生してしまう。これを補正するために、第2支持部22に設けたゴムブッシュジョイント30の長孔30aを貫通するボルト31を緩めると、変形したゴムブッシュ30bが元の形状に復帰することで長孔30aがボルト31に対して移動し、第2支持部22が揺動軸線Lに沿って矢印C方向に移動する。この移動に伴って第3支持部23の位置も反矢印X方向に移動し、スライダ27を移動させる前の位置に戻るため、キャスタは調整前の状態に復帰する。このとき、軸線Lの方向と矢印X方向とは略平行であるため、第3支持部23の矢印Y方向の位置は殆ど変化せず、調整済みのキャンバが狂う心配はない。このとき、第2支持部22の移動方向をゴムブッシュジョイント30の長孔30aを用いて規制するので、簡単な構造で第2支持部22を所定の方向に移動させることができる。
【0028】
以上のように、ロアアーム13の第1支持部21側に設けたスライダ27の位置を移動させるだけで車輪Wのキャンバを調整することができ、その際にキャスタが変化してもロアアーム13の第2支持部22側に設けたゴムブッシュジョイント30の位置を調整することで前記キャスタの変化を元に戻すことができ、しかも前記ゴムブッシュジョイント30の位置の調整に伴って調整済みのキャンバにずれが発生することがない。従って、キャスタに影響を与えずにキャンバだけを調整することが可能となり、特に熟練を要することなくキャンバの調整作業を容易かつ正確に行うことができる。
【0029】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0030】
例えば、実施例ではスライダ27をロアアーム13の第1支持部21側に設け、長孔30aを有するゴムブッシュジョイント30を第2支持部22側に設けたが、その位置関係を逆にすることができる。
【0031】
また実施例ではボルト31が相対移動する長孔30aをゴムブッシュジョイント30側(ロアアーム13側)に設けたが、それを車体側に設けても良い。
【0032】
また実施例では本発明をロアアーム13に適用したが、それをアッパーアーム12に適用することもできる。
【0033】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、サスペンションアームを車体側に支持する前後方向に離間した第1、第2支持部のうち、第1支持部が車体に前後方向及び車幅方向の両方向同時に移動可能であり、サスペンションアームを車輪側に支持する第3支持部が前後方向あるいは車幅方向に移動可能であるため、先ず第1支持部を前記車体の前後方向及び車幅方向に両方向同時に移動させてキャンバを所望の値に調整し、その結果として発生したキャスタのずれを、第2支持部を移動させることでキャンセルすることができるので、キャンバだけを独立して調整することが可能となる。このようにキャンバおよびキャスタの相互干渉がないので、キャンバの調整作業が容易で熟練を必要とせず、作業に要する労力および時間を節減することができる。
【0034】
また請求項2に記載された発明によれば、第1支持部に連結したスライダに設けた複数の長孔と、それら長孔を摺動可能にそれぞれ貫通し該スライダを車体に固定可能な複数のボルトとにより、前記第1支持部を車体に対し前後方向および車幅方向の両方向同時に移動可能とし且つその移動位置を固定可能としたので、スライダは支障なくスライドすることができるとともに、該複数のボルトを締結して車体側のブラケットに容易に固定できる。
【0035】
また請求項に記載された発明によれば、第1支持部を有するスライダを車体側に設けたガイド面に沿って移動可能に設けたので、第1支持部の移動方向をガイド面で規制することで調整作業の精度を高めることができる。
【0036】
また請求項に記載された発明によれば、第2支持部が車体側あるいはサスペンションアーム側に設けた長孔によって移動可能であるため、簡単な構造で第2支持部の移動方向を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 車両用サスペンション装置の後面図
【図2】 図1の2−2線拡大矢視図
【図3】 図2の3部拡大図
【図4】 キャンバの説明図
【図5】 キャスタの説明図
【符号の説明】
13 ロアアーム(サスペンションアーム)
21 第1支持部
22 第2支持部
23 第3支持部
27 スライダ
28 ブラケット(車体)
30a 長孔
32 ブラケット(車体)
a′ ガイド面
W 車輪

Claims (4)

  1. 車体(28,32)側に前後方向に離間した第1、第2支持部(21,22)で支持されて車輪(W)側に第3支持部(23)で支持されたサスペンションアーム(13)を備え、前記第1、第2支持部(21,22)の位置を移動させることで車輪(W)のアライメントを調整するサスペンション装置のアライメント調整構造において、
    前記第1支持部(21)は、車体に前後方向及び車幅方向の両方向同時に移動可能に支持されていて、その移動位置を固定可能であり、
    前記第2支持部(22)は、車体に前後方向に移動可能に設けられることを特徴とする、サスペンション装置のアライメント調整構造。
  2. 前記第1支持部(21)に連結したスライダ(27)に設けた複数の長孔(27c)と、それら長孔(27c)を摺動可能にそれぞれ貫通し該スライダ(27)を車体に固定可能な複数のボルト(29)とにより、前記第1支持部(21)を車体に対し前後方向および車幅方向の両方向同時に移動可能とし且つその移動位置を固定可能としたことを特徴とする、請求項1に記載のサスペンション装置のアライメント調整構造。
  3. 前記第1支持部(21)はスライダ(27)に設けられており、前記スライダ(27)は車体(28)側に設けたガイド面(a′)に沿って移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載のサスペンション装置のアライメント調整構造。
  4. 前記第2支持部(22)はサスペンションアーム(13)側あるいは車体(32)側に設けた長孔(30a)によって移動可能であることを特徴とする、請求項1,2又は3に記載のサスペンション装置のアライメント調整構造。
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