JP3966623B2 - N−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物の製造方法 - Google Patents

N−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱アシル化剤などとして有用なN−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
N−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸誘導体は、実質的に中性の条件下、有機溶媒中でエステル類を脱アシル化するのに有用な高選択的反応剤である(有機合成化学協会誌 第47巻,795 (1989)、 Tetrahedron Lett., 30, 207 (1989)、特開昭63−316755号公報、特公平6−99382号公報、特開昭63−316743号公報)。特公平6−99382号公報には代表例としてN−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸の製造方法が記載されており、該明細書は水とメタノールからなる混合溶媒中、N,N−ジメチルグリシンメチルエステルに水酸化ナトリウムの存在下N−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩を反応させる方法を記載している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の製造方法では室温での反応時間が7日と長く、製造を行う場合のコストアップ要因となるため満足すべき方法とは言い難い。さらに本発明者らの検討によれば、上記反応条件では、原料であるN,N−ジメチルグリシンメチルエステルの加水分解が副反応として起こり、問題をひき起こすことが明らかとなった。すなわち、副生したN,N−ジメチルグリシンを除去するには特定の操作が必要であり、処理量、所要人員、時間、目的物の収率低下などを考慮すると有利な方法とは言えず、そのため副反応を起こさない効率的かつ有利な製造方法の開発が望まれていた。
従って本発明の目的は、反応時間が短かく、副生物の生成が抑制され、目的物が収率良く得られるN−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物の製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の事情に鑑み、N−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物の工業的製造法について鋭意研究した結果、予想外にも水とある特定のエーテル系有機溶媒からなる混合系中で反応を行うことによって、所望のN−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物が効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、(1)一般式(1):
【0005】
【化3】
Figure 0003966623
【0006】
[ 式中、R1 、R2 、R3 は、互いに同一または異なっていてもよいアルキル基を表わす]
で表わされるα−ジアルキルアミノ酢酸エステル化合物にN−アルキルヒドロキシルアミンを反応せしめて一般式(2):
【0007】
【化4】
Figure 0003966623
【0008】
[ 式中、R1 、R2 は上記と同じ意味をもち、R4 はアルキル基を表わす]
で表わされるN−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物を製造する方法であって、前記反応を水とエーテル系有機溶媒からなる混合系中で行うことを特徴とする方法、
(2)エーテル系有機溶媒が、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする(1)項に記載の方法、
(3)エ−テル系有機溶媒が、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、メトキシベンゼン、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする(1)または(2)項のいずれか1項に記載の方法、
(4)反応温度が20〜80℃の範囲であることを特徴とする(1)から(3)項のいずれか1項に記載の方法、及び
(5)一般式(2)で表わされる化合物がN−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸またはN−メチル−α−ジエチルアミノアセトヒドロキサム酸である(1)から(4)項のいずれか1項に記載の方法
を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記一般式で表される化合物を詳細に説明する。式中、R1 、R2 、R3 は好ましくは炭素数1から6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基を表わし、より好ましくはメチル基またはエチル基である。R1 、R2 の好ましい組み合わせとしては、これら2つが共にメチル基あるいはエチル基である場合を挙げることができる。R3 はメチル基、エチル基のいずれであっても良いが、好ましくはメチル基である。
またR4 は好ましくは炭素数1から7のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基を表わし、より好ましくはメチル基である。
次に、一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0010】
【化5】
Figure 0003966623
【0011】
次に本発明の製造方法における反応条件等について詳述する。本発明方法は水とエーテル系有機溶媒からなる混合系中で反応が実施されることを特徴とする。ここでエーテル系有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンが挙げられる。これらの溶媒のうちでも、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、メトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンが好ましく使用される。使用する溶媒の量は、反応成分を溶解しうる範囲で適宜定めることができ、特に制限はないが、通常α−ジアルキルアミノ酢酸エステル化合物に対し重量比で0.3〜100倍、好ましくは0.5〜20倍、より好ましくは0.5〜5倍である。反応を行わせる際の水との混合比率は、結晶の析出で攪拌不能になる等の工程操作上の問題等を引き起こさず、かつ反応の進行を妨げない限りは任意であるが、有機溶媒/水の混合比率(体積比)は1/2〜1/20、好ましくは1/5〜1/20である。例えば有機溶媒としてメトキシベンゼンを使用する場合の有機溶媒/水の混合比率(体積比)は1/3〜1/20、好ましくは1/5〜1/20、有機溶媒として1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランまたは1,4−ジオキサンを使用する場合の有機溶媒/水の混合比率(体積比)は1/2〜1/20、好ましくは1/5〜1/20である。
【0012】
反応は20〜80℃の範囲で実施されるが、好ましくは30〜70℃、より好ましくは30〜50℃の範囲で実施される。反応剤であるN−アルキルヒドロキシルアミンとしては遊離のものの他その塩類でも良く、具体的にはN−メチルヒドロキシルアミン、N−メチルヒドロキシルアミン硫酸塩、N−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩、N−エチルヒドロキシルアミン塩酸塩、N−ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩などが挙げられるが、N−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩の使用が好ましい。N−アルキルヒドロキシルアミン硫酸塩、N−アルキルヒドロキシルアミン塩酸塩を使用する場合は、中和のため0.9〜1.2当量、好ましくは1当量のアルカリ、具体的には水酸化ナトリウムの共存下で反応は実施される。一般式(1)で表わされるα−ジアルキルアミノ酢酸エステル化合物に対するN−アルキルヒドロキシルアミンの当量数は、例えば0.9〜6.0当量、好ましくは0.9〜3.0当量、より好ましくは0.9〜1.5当量である。反応時間は仕込み量、反応温度により異なるが、通常6〜15時間である。
【0013】
以上説明した水とエーテル系有機溶媒からなる混合系中で反応を実施することにより、反応が促進され、かつ好ましくない加水分解反応が大幅に抑制される。エーテル系有機溶媒のみでは反応はまったく進行しない。水のみを溶媒とすると、加水分解体であるN,N−ジアルキルグリシン、例えばN,N−ジメチルグリシンがかなりの量副生するため不利である。
【0014】
本発明の方法により製造される一般式(2)で表わされるN−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物としては、例えばN−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸、N−メチル−α−ジエチルアミノアセトヒドロキサム酸、N−エチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸、N−ベンジル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸、N−ベンジル−α−ジn−プロピルアミノアセトヒドロキサム酸、N−シクロヘキシル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸、N−エチル−α−ジn−ブチルアミノアセトヒドロキサム酸、N−メチル−α−ジシクロヘキシルアミノアセトヒドロキサム酸などが挙げられるが、なかでもN−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸、N−メチル−α−ジエチルアミノアセトヒドロキサム酸が本発明の方法により好ましく製造される。
【0015】
以下実施例、比較例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
【実施例】
実施例1
水酸化ナトリウム137.5 g およびN−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩281.2 g を水(180 ml)に溶解し、この溶液にテトラヒドロフラン(18ml)を加えた。引き続きN,N−ジメチルグリシンメチルエステル358 g を加えた。反応混合物を40℃で合計9時間攪拌すると、ガスクロマトグラフィー上原料の残存率8.8%、N−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸の生成率88.2% 、N,N−ジメチルグリシンの副生率2.1%となった。反応混合物を室温まで冷却の後、不溶物を濾過して除去した。濾液を濃縮し、残留物にイソプロピルアルコール(750 ml)を加えて十分に攪拌した後、不溶物を濾過して除去した。濾液を濃縮し、残留物をイソプロピルアルコール/ヘキサン(1/1)から再結晶して275 g (収率69.4% )の純粋なN−メチル−α−ジメルチルアミノアセトヒドロキサム酸を得た。各種物性データは特公平6−99382号公報記載のそれと一致した。
反応分析、生成物の純度検定に使用したガスクロマトグラフィー条件は以下の通りである。
カラム :50 %(シアノプロピルフェニル)メチルポリシロキサン 0.53 mm × 30 m
キャリアーガス:ヘリウム
流速 :33.9 ml
検出 :FID
カラム温度 :100 ℃→ 200℃(昇温 10 ℃/分)
【0017】
実施例2
実施例1に記載の方法に従い、水(55ml)とメトキシベンゼン(5.5 ml)からなる混合溶媒中、N−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩47.5g 、水酸化ナトリウム23g 、N,N−ジメチルグリシンメチルエステル60g を45℃で10時間反応させた。ガスクロマトグラフィー分析の結果、原料の残存率10.1% 、N−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸の生成率86.2% 、N,N−ジメチルグリシンの副生率3.3%であった。以下実施例1に記載の方法とほぼ同様の操作により、40g (収率66.2% )の純粋なN−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸を得た。各種物性データは特公平6−99382号公報記載のそれと一致した。
【0018】
実施例3
実施例1に記載の方法に従い、水(55ml)と1,2−ジメトキシエタン(5.5ml)からなる混合溶媒中、N−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩47.5g、水酸化ナトリウム23g、N,N−ジエチルグリシンメチルエステル66gを45℃で12時間反応させた。ガスクロマトグラフィー分析の結果、原料の残存率12.0%、N−メチル−α−ジエチルアミノアセトヒドロキサム酸の生成率84.9%、N,N−ジエチルグリシンの副生率2.9%であった。以下実施例1に記載の方法とほぼ同様の操作により、42.9g(収率59.0%)の純粋なN−メチル−α−ジエチルアミノアセトヒドロキサム酸を得た。
【0019】
比較例1
水酸化ナトリウム88g を水(440 ml)に溶解し、この溶液に氷冷しながらN−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩184 g のメタノール(220 ml)溶液を加えた。白濁した反応混合物を氷冷下30分撹拌ののち、N,N−ジメチルグリシンメチルエステル257.7 g を加えた。反応混合物を室温で計7日撹拌すると、ガスクロマトグラフィー上原料が消失した。減圧下大部分の溶媒を留去し、残留物にメタノールを加えて十分に振り混ぜた後不溶物を濾過して除去した。濾液を濃縮し、ペースト状物質を得た。このものはガスクロマトグラフィーで分析したところ約36 %のN,N−ジメチルグリシンが混入していたため、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。クロロホルム/メタノール(9/1)で溶出し、148 gの固形物を得た。アセトンから再結晶し、129.7 g (44.6 %)の一番晶を得た。また濾液から得られた固形物についても同様にアセトンから再結晶し、9.4 g の二番晶を得た。よって得られた純粋なN−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸は139.1g(収率47.8%)であった。
【0020】
比較例2
水酸化ナトリウム131 g を水(400 ml)に溶解し、この溶液に氷冷しながらN−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩273 g の水(400 ml)溶液を加えた。引き続きN,N−ジメチルグリシンメチルエステル384 g を加えた。反応混合物を室温で3日撹拌すると、ガスクロマトグラフィー上原料の残存率2.3 % 、N−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸の生成率51.5 %、N,N−ジメチルグリシンの副生率45.1 %となった。減圧下大部分の溶媒を留去し、残留物にクロロホルム、ついで無水硫酸マグネシウムを加えて十分に振り混ぜた後、不溶物を濾過して除去した。濾液を濃縮し、残留物をアセトン/メタノール(50/1 )から再結晶して186 g の結晶を得た。このものはガスクロマトグラフィー、1H-NMRで分析したところ、それぞれ数% のN,N−ジメチルグリシンおよびN−メチルヒドロキシルアミンが混入していたため、再度クロロホルム(3L)に溶解し、不溶物を濾過して除去した。濾液を濃縮し、残留物をアセトン/メタノール(12/1 )から再結晶して111 g (収率25.6 %)の純粋なN−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸を得た。
【0021】
以上説明した実施例および比較例より、水とエーテル系有機溶媒からなる混合系中で反応を実施する本発明の製造方法は反応時間が短く、副生物が少ないため目的物の収率もよく、また製造工程も簡略化されていることがわかる。本発明の製造方法の優位性、有用性は明白である。
【0022】
【発明の効果】
本発明の方法により、脱アシル化剤として有用なN−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物を効率よく製造することができる。

Claims (5)

  1. 一般式(1):
    Figure 0003966623
    [ 式中、R1 、R2 、R3 は、互いに同一または異なっていてもよいアルキル基を表わす]
    で表わされるα−ジアルキルアミノ酢酸エステル化合物にN−アルキルヒドロキシルアミンを反応せしめて一般式(2):
    Figure 0003966623
    [ 式中、R1 、R2 は上記と同じ意味をもち、R4 はアルキル基を表わす]
    で表わされるN−アルキル−α−ジアルキルアミノアセトヒドロキサム酸化合物を製造する方法であって、前記反応を水とエーテル系有機溶媒からなる混合系中で行うことを特徴とする方法。
  2. エーテル系有機溶媒が、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. エ−テル系有機溶媒が、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、メトキシベンゼン、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
  4. 反応温度が20〜80℃の範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 一般式(2)で表わされる化合物がN−メチル−α−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸またはN−メチル−α−ジエチルアミノアセトヒドロキサム酸である請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
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