JP3964098B2 - 情報配信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,音楽,画像,文字などのディジタル情報を各ユーザの携帯端末に配信する情報配信システム及びその携帯端末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年,ディジタル処理技術の進展や情報通信/再生機器の小型・高性能化,通信手段の多様化などにより,音楽,映像,文字情報などを通信回線を通じて個人の端末に配信する情報配信システムが実用化されつつある。このような情報配信システムのうち,既に実用化段階にあるものとして,例えばJR西日本によって1999年9月1日から実証実験が開始されている自動販売機による情報配信サービスや,衛星を用いた放送型のディジタル情報配信などがある。
上記自動販売機による情報配信サービスは,駅などに設置された自動販売機に音楽コンテンツなどのディジタルデータを蓄積しておき,購入希望者のメモリカードに所望の情報を直接書き込むサービスである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,これらの既存の情報配信サービスには次のような問題点があった。
まず,上記自動販売機による情報配信サービスでは,自動販売機に挿入されたユーザのメモリカードに情報を直接ダウンロードするため,ユーザの希望通りの情報を配信できるというメリットはあるものの,1台の自動販売機では一時に一人のユーザにしかサービスができないという問題点があった。従って,例えば複数のユーザが同一の情報を望んでいたとしても全員に同時に配信することはできず,待ち行列を形成した上で順次配信を行う必要があった。これでは,たとえどんなに高速でデータをダウンロードできたとしても短時間で多数のユーザに情報を提供することはできず,実用面で問題がある。また,ユーザがわざわざ自動販売機の前に行ってメモリカードの抜き差しなどの煩わしい操作をしなければならないという点も問題であった。更に,メモリカードとのコネクタ部分の接触不良など,機械的な不具合が発生し易いという問題点もあった。
一方,上記衛星を用いた放送型のディジタル情報配信では,同時に広い範囲の多数のユーザに対して情報を送信できるというメリットがあるものの,情報の配信は予め決められた配信スケジュールに従って行われるため,受信した情報が必ずしもユーザの希望にかなったものとならないという問題点があった。即ち,ユーザは好きなときに自分の希望通りの情報を得ることができない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,各ユーザの希望に合った情報を,煩わしい操作なしで,効率よく配信することが可能な情報配信システム及びその情報の受信に用いる携帯端末を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,1つの基地局から複数の携帯端末に対して無線により情報を配信する情報配信システムであって,上記携帯端末が,上記基地局の無線通信エリア内に入ったことを検知したときに自動的に上記基地局に対して当該携帯端末若しくはその所有者の識別情報を含む所定の情報を無線送信する情報送信手段を具備し,上記基地局若しくは該基地局と通信可能なサーバが,上記携帯端末毎若しくはその所有者毎の好み情報を予め記憶する好み情報記憶手段を具備し,上記基地局が,上記携帯端末から受信した上記識別情報に基づいて上記無線通信エリア内に入った上記携帯端末を認識し,それら認識された携帯端末若しくはその所有者に対応する上記好み情報に基づいて情報の配信スケジュールを編成する配信スケジュール編成手段と,上記配信スケジュール編成手段により編成された上記配信スケジュールに従って,上記無線通信エリア内の各携帯端末に対して一斉に情報を無線送信する一斉送信手段と,を具備してなることを特徴とする情報配信システムとして構成されている。
【0005】
このように,無線を用いた放送形式の情報配信を行うことによって,同一のコンテンツを要求する複数のユーザに対しては従来の1対1の情報配信のような待ち行列を伴うことなく情報を同時に複数のユーザに配信することが可能であると共に,基地局の無線通信エリア内に存在する携帯端末の好み情報に基づいて編成された配信スケジュールに従って情報を配信するため,放送形式の情報配信でありながら,その時々に基地局との通信エリア内に存在する個々のユーザのニーズに合った情報配信を行うことが可能となる。また,通信手段として無線を用いており,携帯端末は基地局の無線通信エリアに入ったことを検知して自動的に情報の受信を行うため,ユーザは情報の受信に先立ってコネクタによる機器の接続など煩わしい操作を行う必要がない。
なお,上記好み情報の登録は,例えば上記携帯端末,インターネット,公衆回線等を介して行うことが可能である。
【0006】
また,上記基地局は,特定の携帯端末若しくはその所有者からの要求に基づいて,特定の情報を上記特定の携帯端末の識別情報を付加して送信し,上記携帯端末は,自分自身の識別情報と上記特定の情報に付加された上記識別情報とが一致した場合にのみ上記特定の情報を再生可能に構成すれば,特定の携帯端末に向けて配信される特定の情報が,その他の携帯端末に再生されることを防止できる。これにより,放送型の情報配信の形をとりながら,1対1の情報配信と同様の機能も同時に達成することができる。
この時,上記携帯端末は,上記特定の情報に付加された上記識別情報と自分自身の識別情報とが一致しない場合には,例えば受信した上記特定の情報を破棄するように構成すればよい。
ここで,上記特定の情報の要求を,予めインターネット若しくは公衆回線を介して入力可能とし,上記基地局は,上記特定の情報の要求が入力された状態でその要求の対象である携帯端末が無線通信エリア内に入った時,上記特定の情報の送信を行うようにすれば,ユーザは予め上記特定の情報の要求を設定しておくことで,次に基地局の無線通信エリア内に入った時には特に何の操作も行うことなく自動的にその情報が取得でき,便利である。
【0007】
また,上記基地局に上記特定の情報の要求を入力する入力手段を搭載し,上記基地局は,上記入力手段から上記特定の情報の要求が入力された時点で上記特定の情報の送信を行うように構成するか,或いは上記特定の情報の要求を上記携帯端末を介して入力可能とし,上記基地局は上記携帯端末を介して上記特定の情報の要求が入力された時点で上記特定の情報の送信を行うように構成すれば,ユーザは基地局或いは携帯端末から欲しい情報を入力すればその時点ですぐにその欲しい情報を受信することができ,従来の自動販売機を用いた情報配信と同様の機能も実現できる。但し,無線を用いて情報を受信するため,従来のようにコネクタによる機器の接続などの煩わしい操作を行う必要はない。
【0008】
また,各携帯端末への課金情報については,上記基地局が上記携帯端末から受信した上記所定の情報と,該所定の情報に対応して送信した情報の送信実績とに基づいて生成することが考えられるが,正確な課金を行うためには送信した情報が携帯端末で正常に受信されていることを確認する必要がある。
そこで,上記携帯端末が,上記基地局から受信した情報を再生した実績を表す再生実績情報を記憶する再生実績情報記憶手段を具備し,上記携帯端末における上記情報送信手段が,上記所定の情報に上記再生実績情報を含めて送信してなり,上記基地局若しくは該基地局と通信可能なサーバが,上記情報送信手段を通じた上記携帯端末への情報送信の実績に応じた送信実績情報を記憶する送信実績情報記憶手段と,上記送信実績情報記憶手段に記憶された上記送信実績情報と上記携帯端末から受信した上記所定の情報に含まれる上記再生実績情報との照合に基づいて,上記携帯端末若しくはその所有者に対する課金情報を生成する課金情報生成手段と,を具備することが考えられる。これにより,基地局から送信された情報が携帯端末側で正常に受信されたか否かを確認できないという従来の放送形式の情報配信の欠点を解消し,正しく課金処理を行うことが可能となる。
【0009】
なお,上記携帯端末は,上記基地局から受信した情報のメモリへの保存の優先順位を,予め設定された好み情報と上記情報の属性情報とに基づいて,例えばそれらの距離が小さいものほど高く設定するようにすれば,ユーザの好み情報に合致しない情報を自動的に排除することができ,情報再生の際のユーザの利便性が向上すると共に,限りある記憶容量を有効に利用することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下,添付図面を参照して本発明の実施の形態及び実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態及び実施例は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係る情報配信システムZ1の概略構成図,図2は上記情報配信システムZ1を構成する基地局1と携帯端末2の概略構成を示すブロック図,図3は上記情報配信システムZ1における情報配信処理手順を示すフローチャート,図4は送信データの構成図,図5は上記送信データのフレーム構成図,図6は配信要求データの構成図,図7は配信スケジュール生成部13による配信スケジュールの決定処理手順を示すフロー図,図8は配信スケジュール生成部13による配信スケジュールの決定処理の具体例の説明図,図9は一時データ記憶部22内の送信データから各コンテンツデータのコンテンツ管理情報を取り出す際の処理手順を示すフローチャート,図10は図9に示す処理によって生成されたコンテンツテーブルの一例,図11は課金情報管理サーバ3cにおける配信コンテンツに関する管理情報の一例である。
【0011】
本実施の形態に係る情報配信システムZ1は,図1に示すように,携帯端末2,基地局1,及びサーバ3により構成されている。また,上記携帯端末2及び上記基地局1は更に図2に示すような概略構成を有している。
図1に示すように,サーバ3には,駅などの人が集まる場所に設置される複数の基地局1が,例えば専用通信線4によって接続されている。
上記基地局1は,ISM(Industrial,Scientific,Medical) バンド(産業科学医療用の機器に開放された周波数帯,2.4GHz,10mW以下)を用いた無線通信機能を有し,それぞれ半径50m程度の無線通信エリアを有している。
上記携帯端末2は,予め登録されたユーザによって携帯される端末で,上記基地局1の無線通信エリア内においてその基地局1との間で高速の無線通信が可能である。
上記サーバ3,基地局1,及び携帯端末2の構成を更に詳しく説明する。
【0012】
(サーバ3)
図1に示すように,上記サーバ3は,ユーザ情報管理サーバ3a,コンテンツサーバ3b,及び課金情報管理サーバ3cにより構成されている。上記サーバ3は,物理的に1つのコンピュータで構成しても複数のコンピュータで構成してもよい。
ここで,上記コンテンツサーバ3bには,ユーザに配信するための各種コンテンツデータが,所定の方式にて圧縮された状態で蓄積される。蓄積されるコンテンツデータの種類としては,例えば静止画,動画などの画像コンテンツ,音楽コンテンツやそれらの複合コンテンツ,ニュース等の文字/音声コンテンツなどが考えられる。これらのコンテンツデータの情報源は,インターネットや音楽CD,FM放送などのアナログ音声をディジタル化したものなど様々なものが考えられる。また,例えばText-to-speechを用いてテキスト文書から音声コンテンツを生成することも可能である。尚,上記コンテンツデータが音楽などの音声情報の場合,上記エンコード装置4で用いる圧縮方式としては,TwinVQ,MP3,AAC,WAVなどを用いることができる。また,上記コンテンツサーバ3bには,各コンテンツデータと共に,それら各コンテンツデータの属性情報が格納される。ここで,上記属性情報とは,各「属性」に対する該当度で設定される。また,上記「属性」とは,「ニュースである」,「クラシック音楽である」といった,コンテンツの内容に関する命題であり,属性値とは,その命題との該当度を示し,例えば0から100までの整数で与えられる。スポーツニュースのコンテンツデータであれば,例えば「ニュース」,「スポーツ」といった属性の属性値が例えば60,40などと設定される。
【0013】
また,上記ユーザ情報管理サーバ3aには,全登録ユーザの好み情報が予め格納されている。上記好み情報は,上記コンテンツデータの属性情報と同様,複数の「属性」に対する該当度で設定される。例えば,「ニュース」と「クラッシック音楽」を希望するユーザの好み情報は,「ニュース」と「クラッシック音楽」が例えばそれぞれ50,50に,その他の「JPOP」,「洋POP」等は0に設定される。また,上記ユーザ情報管理サーバ3aには,更に個別のコンテンツデータの配信を希望するユーザからの個別配信要求情報が格納される。この個別配信要求情報は,上記好み情報のようなジャンル(属性)別ではなく,例えばある歌手の所定の楽曲などの形で具体的に設定される。ここで,上記好み情報や上記個別配信要求情報は,例えばインターネット等を介してユーザの自宅等から事前に行えるようにすることが望ましい。
また,上記課金情報管理サーバ3cには,各ユーザ毎の課金情報が管理されている。ユーザへの課金は,例えば上記好み情報に基づく通常の配信については定額の範囲内で行い,上記個別配信要求による個別の配信については配信されたコンテンツデータ毎に追加料金を加算することが考えられる。課金処理についての詳細は後述する。
【0014】
(基地局1)
上記基地局1は,図2に示すように,通信制御部11,コンテンツデータ記憶部12,配信スケジュール生成部13,及び送受信ユニット14を具備して構成されている。
上記通信制御部11は,上記サーバ3との通信を制御する。
上記コンテンツデータ記憶部12は,上記コンテンツサーバ3bから例えば定期的に転送されるコンテンツデータ及びその属性情報が格納される。上記コンテンツサーバ3bからこのコンテンツデータ記憶部12に転送されるコンテンツデータは,例えば基地局毎の配信実績等を考慮して選択される。例えば,クラシック音楽の配信が多く,ポップスの配信が少ない基地局には,その配信実績に応じてクラシック音楽に属するコンテンツデータが多めに,ポップスに属するコンテンツデータが少なめに送信され,コンテンツデータ記憶部12に格納される。
【0015】
また,上記配信スケジュール生成部13は,当該基地局1の無線通信エリア内に入った携帯端末2から送信される識別ID(詳細は後述する)に基づいて現時点で情報の受信が可能な状態にある携帯端末2を認識すると共に,その識別IDに該当するユーザの好み情報を上記ユーザ情報管理サーバ3aより取得する。そして,上記コンテンツデータ記憶部12内に格納されている各コンテンツデータの属性情報と,上記ユーザの好み情報とに基づいて,コンテンツデータの配信スケジュールを生成する。このように,半径約50mという限られた無線通信エリア内に存在する携帯端末を認識し,それら携帯端末毎に予め設定された好み情報に基づいてコンテンツデータの配信スケジュールを生成するため,生成される配信スケジュールは従来の広域での放送型情報配信のものと比べて各携帯端末のユーザの嗜好に合ったものとなる。また,上記ユーザ情報管理サーバ3aに,受信した識別IDに対応する上記個別配信要求情報が登録されている場合には,上記好み情報に優先して,上記個別配信要求情報に設定されているコンテンツデータを上記配信スケジュールに組み込む。この配信スケジュールの生成処理の具体例は後述する。
配信スケジュールが決定すると,配信スケジュール生成部13はその配信スケジュールに従って送信データを生成する。この送信データは,図4に示すように,コンテンツデータとそのコンテンツの管理情報とで構成される。上記コンテンツ管理情報は,そのコンテンツのタイトル,上記属性情報,その送信データを受け取り可能な携帯端末の識別ID等により構成されている。ここで,その送信データを受け取り可能な携帯端末の識別IDは,そのコンテンツデータが上記個別配信要求情報に基づくものであればその個別配信要求を登録したユーザの携帯端末の識別IDが,例えば”AX0123”,”BG5590”のように設定される。また,そのコンテンツデータが上記個別配信要求情報に基づくものでない場合,全ての携帯端末で受信可能であることを示す特別な識別ID,例えば”XX0000”が設定される。
【0016】
また,上記送受信ユニット14は,携帯端末2との間の無線通信を制御する。携帯端末2が当該基地局1の無線通信エリア内に入った時に送信される配信要求データ(図6参照,詳細は後述する)を受信すると,上記送受信ユニット14は割り込みを発生させて上記配信要求データ中の識別IDを上記配信スケジュール生成部13に,再生実績記録を上記課金情報管理サーバ3cにそれぞれ送信する。また,上記配信スケジュール生成部13から送出された送信データを各携帯端末2に向けて送信する。ここで,上記送信データは,図5に示すように,固定長のフレームに分割され,それぞれフレーム情報(全何フレームの何番目か)やCRCなどの誤り検出符号等よりなるヘッダ部が付加されて送出される。
尚,送信データを送信すると,その配信実績(例えば配信相手の携帯端末ID,配信したコンテンツデータのID,配信日時等)が上記課金情報管理サーバ3cに記憶され,後述する課金処理に於いて用いられる。
上記コンテンツデータは上述したようにTwinVQなどを用いて圧縮されており,更に基地局1から携帯端末2へのデータ送信はISMバンドを用いて高速(例えば5Mbps,最大11Mbps程度)で行われるため,例えば30分のニュース音声等を4秒程度で,5分の音楽を5秒程度で携帯端末に送信できる。従って,携帯端末2は,半径50m程度の無線通信エリア内に滞在している間に十分な量のコンテンツデータを受信することが可能である。もちろん,放送形式で各携帯端末に一斉に配信されるため,待ち時間が発生することもない。
【0017】
(携帯端末2)
上記携帯端末2は,図2に示すように,送受信ユニット21,一時データ記憶部22,データ保存メディア23,再生モジュール24,ID記憶部25,コンテンツ保存モジュール26,好み情報記憶部27,及び再生実績記録記憶部28を具備して構成されている。ここで,上記データ保存メディア23としては,スマートメディアやコンパクトフラッシュなどの着脱可能な不揮発性メモリを用いることが望ましいが,例えば内蔵のフラッシュメモリやDRAMなどを用いることも可能である。また,上記一時データ記憶部22は,受信データバッファ,コンテンツテーブルデータバッファの2つの領域で構成されている。
上記送受信ユニット21は,基地局1との間の無線通信を制御する。後述する受信データの復元,再生等の処理が行われていないとき,送受信ユニット21は電波待ち受け状態となる。この待ち受け状態で基地局1からの電波を検出すると(即ち,当該携帯端末2が基地局1の無線通信エリア内に入ったことを検知すると),上記ID記憶部25に予め記憶されている当該携帯端末(若しくはそのユーザ)の識別IDと,上記再生実績記録記憶部28に記憶されている再生実績記録(後述する)とで構成される配信要求データ(図6参照)を上記基地局1に対して送信した後,上記基地局1から送信される上記送信データの受信を開始し,それを順次一時データ記憶部22の受信データバッファに格納する。
尚,上記基地局1の無線通信エリア内に入ったことを検知する方法としては,例えば電界強度検出回路によって電界強度のディジタル値を監視し,一定期間の電界強度値やその統計値(平均,分散等)に基づく所定の評価値が閾値を越えた時点で上記基地局1の無線通信エリア内に入った(即ち上記基地局1と通信可能)と判断することが考えられる。更に,上記基地局1から受信したデータのヘッダ部分に埋め込まれたCRCフラグなどの誤り検出符号によってエラーチェックを行い,エラー無しと判断された段階で上記基地局1と通信可能と判断するようにしてもよい。
【0018】
上記コンテンツ保存モジュール26は,上記一時データ記憶部22の受信データバッファに順次格納される送信データから,全てのフレームが正常に受信された各コンテンツデータについて,予め上記好み情報記憶部27に設定されているユーザの好み情報と上記各コンテンツデータの属性情報とに基づいて保存の優先順位を決定し,その優先順位に従って上記コンテンツデータをデータ保存メディア23に保存する。上述したように,基地局1から送信されるコンテンツデータは,その基地局1の無線通信エリア内に存在する携帯端末2の好み情報に基づいて決定された配信スケジュールに従って配信されるが,ユーザの個別配信要求によって特別に配信されるコンテンツデータ以外は,配信される全てのコンテンツデータがその携帯端末2のユーザの好みを完全に満足しているとは限らない。一方,携帯端末2にセットされるデータ保存メディア23の記憶容量にも限りがある。そこで,上記コンテンツ保存モジュール26は,上記データ保存メディア23の記憶容量の範囲内で,ユーザの好み情報になるべく合致したコンテンツデータを優先的に保存する処理を行う。その際,自分自身の識別IDが,コンテンツ管理情報内に設定されている受け取り可能な携帯端末の識別IDに含まれていない場合には,そのコンテンツデータは保存されず,破棄される。これにより,上記個別配信要求に基づいて特定の携帯端末に向けて配信されるコンテンツデータが,その他の携帯端末に保存され,再生されることを防止できる。即ち,このようなしくみにより,放送型の情報配信の形をとりながら,1対1の情報配信と同様の機能も同時に達成することができる。
上記コンテンツデータの保存処理手順の具体例については後述する。
【0019】
また,再生モジュール24は,ユーザからの再生要求に応じて,データ保存メディア23内に保存されたコンテンツデータの復元と再生を行う。コンテンツデータの再生が終了すると,上記再生モジュール24は,そのコンテンツデータのIDを再生実績記録として再生実績記録記憶部28に書き込む。即ち,上記再生実績記録記憶部28にIDが記録されているコンテンツデータは,この携帯端末2によって正常に受信され,再生されたコンテンツデータである。上述したように,携帯端末2が基地局1の無線通信エリア内に入った時,識別IDと共にこの再生実績記録を上記基地局1に送信することにより,上記基地局1側では,送信したコンテンツデータが正常に受信され,再生されたことを認識することができる。上記課金情報管理サーバ3cは,この再生実績記録に基づいて課金処理を行う。課金処理の具体例については後述する。
【0020】
引き続き,上記配信スケジュール生成部13による配信スケジュール生成手順,コンテンツ保存モジュール26による処理手順,課金処理のそれぞれの具体例について詳述する。
(配信スケジュール生成部13による配信スケジュール生成手順の具体例)
上記配信スケジュール生成部13によるユーザの好み情報に基づく配信スケジュールの生成処理手順を,図7を参照しつつ説明する。
配信スケジュール生成部13は,上記ユーザ情報管理サーバ3aに設定されているユーザの好み情報と,現在無線通信エリア内に入っている携帯端末(若しくはユーザ)の識別IDとに基づいて,現在のニーズ分布を計算する(S53)。ここで,現在無線通信エリア内に入っているユーザ(過去一定時間内に無線通信エリア内に入ったユーザをこれと見做す)の識別IDは,送受信ユニット14によって所定の識別IDバッファに格納されている(S51,S52)。
一方で,配信スケジュール生成部13は,課金情報管理サーバ3cに格納されている過去一定時間内に配信されたコンテンツのIDを獲得し(S61),コンテンツデータ記憶部12内に格納されている各コンテンツデータの属性情報を参照して放送実績分布を計算する(S62)。
続いて,上記ユーザのニーズ分布と上記放送実績分布との差を求め,これを最小にする番組を選択し,以後所定時間内に配信する番組予定を生成する(S71)。
【0021】
以上説明した情報配信スケジュールの決定処理の具体例を図8を用いて説明する。なお,図中,属性値としては1/20の値が示されている。即ち,0から100までの整数で表す場合は,表中の値を20倍することで与えられる。また,エリア内のユーザの好み情報については,例えば,属性1に関して属性値「5」の人が30人,属性値「4」の人が40人であることを示している。
まず,ユーザの好み情報に基づいて,各属性iの値の平均値を更に正規化したYi を計算し,これを上記ニーズ分布とする。また,初期状態では過去の放送実績がないため,各番組についてそれぞれ各属性iの値を正規化したXi を計算し,これを上記放送実績分布とする。そして,各番組毎に
D=ΣMax(0,Yi −Xi ) …(a)
を求め,上記Dが最小となる番組を次の放送番組とする。図8の例では番組29のDが0.46で最小となるため,まず番組29が最初の放送予定に組み込まれる。
次は,上記番組29を放送実績番組とし,これとその他の各番組とで上記放送実績分布Xi を計算し,これが最小となる番組を次の放送予定に組み込む。ここでは,上記番組29と番組15とで計算した場合のDが0.26で最小となったため,番組15が番組29に続いて放送予定に組み込まれる。
以後,所定時間内の放送予定が決定するまで上記処理が繰り返される。
尚,距離は,
D=Σ(Yi −Xi )2 …(b)
としてもよい。
図8の右下に示す番組予定計算結果に示すように,番組予定が進むほどユーザニーズと番組実績との距離が小さくなり,ユーザニーズが満たされていくことが分かる。即ち,この放送番組の決定方法によれば,連続して流される複数の番組によってユーザニーズが補完的に満足される。
以上のように,半径約50mという限られた無線通信エリア内に存在する携帯端末を認識し,それら携帯端末毎に予め設定された好み情報に基づいてコンテンツデータの配信スケジュールを生成するため,生成される配信スケジュールは従来の広域での放送型情報配信のものと比べて各携帯端末のユーザの嗜好に合ったものとなる。
また,通信エリア内にユーザが存在しない場合は,予め決められたコンテンツ(例えばニュース)を繰り返し配信するようにしてもよいし,エリア内に到達した端末がそのことを検知するための単なる搬送波を発信し続けていてもよい。
【0022】
(コンテンツ保存モジュール26による処理手順の具体例)
上述したように,基地局1から携帯端末2に送信されるコンテンツデータは,その基地局1の無線通信エリア内に存在する携帯端末2の好み情報に基づいて決定された配信スケジュールに沿って配信されるが,ユーザの個別配信要求によって特別に配信されるコンテンツデータ以外は,配信される全てのコンテンツデータが個々の携帯端末2のユーザの好みに合ったものであるとは限らない。一方,携帯端末2にセットされるデータ保存メディア23の記憶容量にも限りがある。そこで,上記コンテンツ保存モジュール26は,上記データ保存メディア23の記憶容量の範囲内で,ユーザの好み情報になるべく合致したコンテンツデータを優先的に保存する処理を行う。
また,コンテンツデータの配信は放送形式で複数の携帯端末に対して一斉に行われるため,個別配信要求によって特定の携帯端末向けに送信されるコンテンツデータについても他の携帯端末に受信されることとなる。そこで,特定の携帯端末向けに送信されるコンテンツデータが他の携帯端末で保存,再生されることがないよう,予めコンテンツ管理情報内に設定された識別IDを持つ携帯端末以外はそのコンテンツデータの保存を行えないようにする。
【0023】
図9及び図10を用いて,上記コンテンツ保存モジュール26の処理手順を具体的に説明する。
図9は,一時データ記憶部22の受信データバッファ内の送信データをフレーム単位で取り出し,全フレームが正常に受信されているコンテンツデータのコンテンツ管理情報を取り出す処理の手順を示している。尚,ステップS81〜S83は,上記送受信ユニット21による一時データ記憶部22の受信データバッファへの送信データの書込処理を示している。
まず,コンテンツ保存モジュール26は,一時データ記憶部22の受信データバッファから1フレームづつ読み出す処理を,送信データの先頭フレームが見つかるまで繰り返す(ステップS84〜S86)。途中でデータの末尾が検出されると,その時点で当該処理は終了する。尚,送信データの先頭フレームか否かの判断はヘッダ部のフレーム情報を参照することにより可能である。
送信データの先頭フレームが見つかると,コンテンツ保存モジュール26は受信データバッファから更に1フレーム読み出し(S87),その読み出しが成功すれば(データの末尾でなければ),そのフレームデータが正しいか否かを判断する(S88,S89)。ステップS88で読み出し失敗と判断されれば(即ちデータの末尾が検出されれば),当該処理はその時点で終了し,ステップS89でフレームデータに異常が発見されれば処理は上記ステップS84に進む。
上記ステップS87〜S89は,コンテンツデータの末尾フレームが検出されるまで繰り返される(S90)。S90においてコンテンツデータの末尾フレームが検出されると(この場合,そのコンテンツデータは全てのフレームが正常に受信されている),そのコンテンツデータのコンテンツ管理情報(コンテンツの属性情報や一時データ記憶部22内の開始/終了位置の情報など)を解読し,コンテンツテーブルデータバッファ(コンテンツの目次であり,どのようなコンテンツが一時データ記憶部22内のどの位置からどの位置まで格納されているかが記録される)に書き込んだ後,それをコンテンツテーブル(図10)に書き込む(S91)。ここで,自分自身の識別IDが,コンテンツ管理情報内に設定されている受け取り可能な携帯端末の識別IDに含まれていない場合には,そのコンテンツデータについてはコンテンツテーブルデータバッファ,及びコンテンツテーブルへの書き込みは行われない。その後,上記ステップS87以降の処理が繰り返される。
以上の処理により,コンテンツテーブルデータバッファには,当該携帯端末での受信が許されており,且つ全てのフレームが正常に受信されているコンテンツデータの格納位置が記録され,コンテンツテーブルにはそれらのコンテンツデータの属性情報等が格納される。
【0024】
図10は,上記のような処理によって生成されたコンテンツテーブルの一例である。図10に示すコンテンツテーブルの最初の行は好み情報記憶部27に記憶されているユーザの好み情報であり,その他は受信した各コンテンツデータの属性情報と一時データ記憶部22内の開始/終了位置の情報である。
上記コンテンツ保存モジュール26は,各コンテンツの属性情報とユーザの好み情報との距離をそれぞれ計算し,その距離が小さいコンテンツデータを優先的にデータ保存メディア23に保存する。距離が同一の場合には予め定められたルールに従えばよい。図10の例では,各コンテンツデータの優先順位は例えばコンテンツ1,3,2,4の順となる。但し,データ保存メディア23上に既に保存されているコンテンツデータについては改めて保存する必要はない。
本情報配信システムZ1では,上述したように基地局1の無線通信エリア内に存在する携帯端末2の好み情報に応じた配信スケジュールでコンテンツデータを配信するため,従来の放送形式の情報配信と比べて高いレベルでユーザのニーズを満足することができるが,無線通信エリア内に複数の携帯端末が存在する場合には,当然ながら配信されるコンテンツデータの中には自分の好みに合わないものも含まれることになる。しかしながら,上記のように携帯端末2側で自分の好み情報に合ったコンテンツデータのみを選択的に保存することにより,上記のような配信側の若干の欠点も完全に解決できる。また,限られた記憶容量の有効利用という面でも非常に効果的である。
【0025】
(課金処理の具体例)
コンテンツデータの配信に対して課金を行うにあたっては,コンテンツデータが正常に配信されたことを確認することが必要となる。配信側がコンテンツデータの配信を行っても,それが正常に受信側に受信されていなければ,課金を行うことは適切ではないからである。これは,伝送エラーが発生しやすい無線による情報配信においては特に重要な問題である。もちろん,無線による情報配信であっても1対1の通信による配信であれば,常に送信エラーをチェックすることが可能であるため特に問題はない。しかしながら,本実施の形態に係る情報配信システムZ1では,上述したように基地局1から各携帯端末2に対して放送形式でコンテンツデータを配信するため,基本的にコンテンツデータの配信が正常に行えたか否かをその時点で確認することはできない。そこで,本実施の形態に係る情報配信システムZ1では,次のような方法でこの問題を解決している。
上述したように,携帯端末2は,ある基地局1の無線通信エリア内に入ると,その存在を基地局1に知らせて自分の好みに合ったコンテンツデータを配信してもらうため,自身の認識IDを含む配信要求データを上記基地局1に送信する。そこで,この配信要求データに,過去に正常に受信し再生されたコンテンツデータのIDよりなる再生実績記録を含めることで,上記基地局1側に,過去に送信したコンテンツデータが正常に受信され,再生されたか否かを認識させる。
【0026】
携帯端末2から基地局1に送信される上記配信要求データは例えば図6に示すように構成される。基地局1は,上記配信要求データ1を受信すると,その中の再生実績記録を課金情報管理サーバ3cに送信する。課金情報管理サーバ3cは,過去のコンテンツデータの配信実績と上記再生実績記録とを照合し,それらが一致したものについて課金処理を行う。図11は,課金情報管理サーバ3cにおける配信コンテンツに関する管理情報の一例である。該管理情報には,認識ID毎にコンテンツの配信実績(コンテンツID,配信した基地局のID,配信日時)が記録されており,それに対応する再生実績記録(コンテンツID,この再生実績記録を受信した基地局のID,再生実績記録の受信日時)が後から記録される。図11の例では,携帯端末XYZ1に配信されたコンテンツデータJPOP111とJPOP123のうち,JPOP123については再生実績が確認されたが,JPOP111については再生実績が確認されていない(配信エラー,或いは未再生)。従って,この2つのコンテンツデータのうち,JPOP123のみ課金対象として処理される。
尚,好み情報に基づく通常の配信コンテンツの受信については定額料金とし,個別配信要求に基づく配信コンテンツについて追加料金を加算する場合には,この再生実績記録による正常配信/再生の確認は個別配信要求に基づく配信コンテンツのみ行うようにしてもよい。
また,上記の例では携帯端末側でコンテンツデータの再生まで行ったことを示す再生実績記録に基づいて課金処理を行うようにしたが,例えば,正常に受信を行ったことを示す受信実績記録に基づいて課金処理を行うようにしてもよい。
以上説明したように,携帯端末2から基地局1に対して過去の再生実績記録等を送信することにより,送信したデータが受信側で正常に受信されたか否かを確認できないという従来の放送形式の情報配信の欠点を解消し,正しく課金処理を行うことが可能となる。
【0027】
続いて,図3に示すフローチャートを参照しつつ,本実施の形態に係る情報配信システムZ1における一連のデータ配信手順について説明する。
サーバ3のユーザ情報管理サーバ3aには,例えばインターネットなどを介して予め全登録ユーザの好み情報が設定される。また,特定のコンテンツデータの配信を特に希望するユーザからの個別配信要求情報も必要に応じて設定される(S30)。
携帯端末2に配信するためのコンテンツデータ及びその属性情報は,サーバ3のコンテンツサーバ3bに蓄積,管理されており,それらの一部が例えば定期的に基地局1に対して送信される(S31→S11)。上記コンテンツサーバ3bから基地局1に転送されるコンテンツデータは,例えば基地局毎の配信実績等を考慮して選択される。コンテンツサーバ3bから送信されたコンテンツデータ及びその属性情報は,基地局1のコンテンツデータ記憶部12に記憶される。
携帯端末2は,コンテンツデータの再生等の処理が行われていない時には,その送受信ユニット21が電波待ち受け状態となっている(S21)。この待ち受け状態で基地局1からの電波を受信すると(即ち,当該携帯端末2が基地局1の無線通信エリア内に入ったことを検知すると),上記送受信ユニット21は基地局1に対して配信要求データ(図6参照)を発信する(S22)。
基地局1では,携帯端末2からの配信要求データを受信すると(S12),その中の再生実績記録を課金情報管理サーバ3cへ送信する(S13)。再生実績記録を受信した課金情報管理サーバ3cは,過去のコンテンツデータの配信実績と上記再生実績記録とを照合し,それらが一致したものについて上述したような課金処理を行う(S32)。
【0028】
また基地局1は,上記配信要求データ中の識別IDに対応する好み情報の送信をユーザ情報管理サーバ3aに要求し(S14),ユーザ情報管理サーバ3aからそれを受信する(S33→S14)。そして,配信スケジュール生成部13において,コンテンツデータ記憶部12内に格納されている各コンテンツデータの属性情報と上記ユーザの好み情報とに基づいてコンテンツデータの配信スケジュールを生成し(S15),その配信スケジュールに従ってコンテンツデータとそのコンテンツの管理情報とで構成される送信データ(図4)を生成する(S16)。ここで,上記コンテンツ管理情報には,そのコンテンツデータの属性情報以外に,個別配信要求によって特定の携帯端末宛に送信されるコンテンツデータについてはその携帯端末の識別IDが,その他のコンテンツデータについては全ての携帯端末で受信可能であることを示す特別な識別ID,例えば"XX0000"がそれぞれ格納される。生成された送信データは,固定長のフレームに分割され,それぞれフレーム情報(全何フレームの何番目か)やCRCなどの誤り検出符号等よりなるヘッダ部が付加されて送出される(S17)。そして,その配信実績(例えば配信相手の携帯端末ID,配信したコンテンツデータのID,配信日時等)が上記課金情報管理サーバ3cに配信実績記憶として格納され,上記課金処理に用いられる(S34)。
携帯端末2は,上記送信データを受信すると,それを一旦一時データ記憶部22に格納する(S23)。そして,コンテンツ保存モジュール26は,上記一時データ記憶部22に順次格納される送信データから各コンテンツデータを取り出し,予め上記好み情報記憶部27に設定されているユーザの好み情報と上記各コンテンツデータの属性情報とに基づいて決定される優先順位に従って上記コンテンツデータをデータ保存メディア23に保存する(S24)。この時,ID記憶部25に記憶されている自分自身の識別IDが,コンテンツ管理情報内に設定された受け取り可能な携帯端末の識別IDに含まれていない場合には,そのコンテンツデータは保存されず,破棄される。
その後,ユーザから再生要求が入力されると,再生モジュール24により,データ保存メディア23内に保存されているコンテンツデータの復元と再生が行われる(S25)。コンテンツデータの再生が終了すると,上記再生モジュール24は,そのコンテンツデータのIDを再生実績記録として再生実績記録記憶部28に書き込む(S26)。この再生実績記録は,次回の配信要求データの送信(S22)において上記配信要求データに組み込まれて基地局1に送信される。
【0029】
以上説明したように,本実施の形態に係る情報配信システムZ1によれば,無線を用いた放送形式の情報配信を行うことによって従来の1対1の情報配信のような待ち行列を伴うことなく大量の情報を同時に複数のユーザに配信することが可能であると共に,基地局1の無線通信エリア内に存在する携帯端末を認識し,それらの携帯端末2の好み情報に基づいて編成された配信スケジュールに従って情報を配信するため,放送形式の情報配信でありながら個々のユーザのニーズに合った情報配信を行うことが可能である。また,通信手段として無線を用いており,携帯端末2は基地局1の無線通信エリアに入ったことを検知して自動的に情報の受信を行うため,ユーザはコネクタによる機器の接続など煩わしい操作を行う必要がない。
更に,携帯端末2では,予め設定された好み情報と受信したコンテンツデータの属性情報とに基づいて保存の優先順位を決定し,その優先順位に従ってデータ保存メディア23の記憶容量の範囲内で保存を行うため,ユーザの好み情報に合致しないコンテンツデータを排除することができ,また限りある記憶容量を有効に利用することが可能である。
また,基地局1から送信される各コンテンツデータの管理情報には,そのコンテンツデータの受け取りを許可する携帯端末の識別IDが格納されており,携帯端末2では,受信したコンテンツデータの管理情報内に格納されている受け取り可能な携帯端末の識別IDに自分自身の識別IDが格納されていない場合には,そのコンテンツデータは破棄されるため,個別配信要求に基づいて特定の携帯端末に向けて配信されるコンテンツデータが,その他の携帯端末に保存され,再生されることを防止できる。即ちこれにより,放送型の情報配信の形をとりながら,1対1の情報配信と同様の機能も同時に達成することができる。
更に,携帯端末2が基地局1の無線通信エリア内に入ったとき,上記携帯端末2から基地局1に対して過去の再生実績記録等が送信されるため,基地局1から送信されたコンテンツデータが携帯端末2側で正常に受信されたか否かを確認できないという従来の放送形式の情報配信の欠点を解消し,正しく課金処理を行うことが可能となる。
【0030】
(変形例)
上記の例では,ユーザの好み情報をユーザ情報管理サーバ3a内に予め登録しておき,基地局1は携帯端末2から識別IDを受信すると,その識別IDに対応する好み情報を上記ユーザ情報管理サーバ3aから取り出すように構成したが,上記好み情報を,上記識別IDや再生実績記録と共に配信要求データ内に格納して携帯端末2から基地局1に対してその都度送信するようにしてもよい。これにより,基地局1とサーバ3との間の通信負荷を軽減することが可能である。
また,個別配信要求については,上述したように例えばインターネット等を用いて予め設定しておけば,次に基地局1と通信可能となった時に自動的にそのコンテンツデータを受信することが可能であるが,例えば基地局1に個別配信要求の入力手段を設けておき,携帯端末2を携帯したユーザによってこの入力手段から個別配信要求が入力された時点でそのコンテンツデータを送信することも可能である。尚,上記好み情報も上記基地局1の入力手段から登録できるようにすることも可能である。
また,特に限られた1つのエリア内でのみ情報配信を行うような場合には,複数の基地局1と1つのサーバ3という構成ではなく,1つの基地局1内にサーバ3の機能を一体化させた構成も可能である。
また,上記実施の形態では,配信されるコンテンツとして静止画,動画などの画像コンテンツ,音楽コンテンツ,ニュース等の文字/音声コンテンツなどを例に挙げたが,例えば,文字や画像から構成されるWEBコンテンツ(HTML文書)を配信し,携帯端末2には再生モジュール24のかわりに液晶などのWEB文書表示モジュールを搭載してもよい。或いは,ゲームその他のアプリケーションプログラム(JAVAのアプレットなど)をコンテンツとして配信し,携帯端末2には再生モジュール24のかわりにプログラム実行モジュールを搭載してもよい。これにより,例えば携帯端末2をパソコンやゲーム機などと同様の機能を持ったパーソナル携帯情報ツールとして利用できる。
【0031】
(具体的応用例)
上記情報配信システムZ1は,例えば具体的には次のような応用例が考えられる。
(1)レストランでの情報配信システム
レストランの利用客の携帯端末より,「本日のお勧め料理」「ワインの案内」「BGM」など,食事が出るまでの待ち時間や食事中に聞きたい情報を好み情報としてレストラン内の基地局に送信し,それに合致したコンテンツを基地局から利用客の携帯端末に配信する。この場合,携帯端末は利用客の個人所有のものを用いてもよいが,例えば利用客がレストランに入店する際にレストラン側から貸与するようにしてもよい。これは以下の例についても同様である。
(2)新譜CD,ビデオ案内システム
CDショップやレンタル店で,利用客の携帯端末より,好みのジャンル(POPS,Classicなど)を好み情報として店内の基地局に送信し,そのジャンルの新譜情報や注目情報を基地局から利用客の携帯端末に配信する。
(3)チケット案内システム
チケット購買客の携帯端末より,「演劇」,「コンサート」などのジャンルを好み情報として基地局に送信し,それらのジャンルに関する最新情報を基地局から購買客の携帯端末に配信する。
(4)大型ショッピングモール
買い物客の携帯端末より,「食料品」,「書籍」など商品ジャンルを好み情報として店内の基地局に送信し,それらの商品ジャンルに関するお買い得情報を基地局から買い物客の携帯端末に配信する。
(5)音楽教室や塾など
生徒の携帯端末より,生徒の識別IDを基地局に送信し,その生徒にあった情報(模範演奏,補習講義など)を基地局から生徒の携帯端末に配信する。
(6)レース情報配信システム
客の携帯端末より,ユーザー識別ID,好み情報(レースNo.,好きな予想屋)を基地局に送信し,該当するレース,予想屋の予想情報を基地局から客の携帯端末に配信する。
(7)講話配信システム
ユーザの携帯端末より,「人生について」,「ビジネスについて」などの話題を好み情報として送信し,それに合致した説教,講和を基地局からユーザの携帯端末に配信する。
(8)占い配信システム
ユーザの携帯端末より,ユーザの識別ID及び占いのジャンル(「高島暦」,「星占い」など)を基地局に送信し,ユーザの個人情報を参照した上で,好みに合致した占い情報(今日の星座占いなど)を基地局からユーザの携帯端末に配信する。
(9)観光・物産ガイドシステム
ユーザの携帯端末より,好み情報として,欲しいガイド情報の分野(「歴史」,「グルメ」など)を基地局に送信し,それに合致したコンテンツを基地局からユーザの携帯端末に配信する。
(10)スポーツ情報配信システム
ユーザの携帯端末より,好み情報として,スポーツチームやプレーヤーなどを特定する情報(「巨人情報」「長島情報」など)を送信し,それに合致したコンテンツを基地局からユーザの携帯端末に配信する。
(11)道路情報ガイドシステム
ガソリンスタンドやサービスエリア内に基地局を設置し,ユーザの携帯端末からユーザが情報を得たい地域などを送信する。基地局はユーザが希望する地域の道路状況や観光案内などのコンテンツをユーザの携帯端末に送信する。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明に係る情報配信システムは,無線を用いた放送形式の情報配信を行うことによって従来の1対1の情報配信のような待ち行列を伴うことなく情報を同時に複数のユーザに配信することが可能であると共に,基地局の無線通信エリア内に存在する携帯端末の好み情報に基づいて編成された配信スケジュールに従って情報を配信するため,放送形式の情報配信でありながら個々のユーザのニーズに合った情報配信を行うことが可能となる。また,通信手段として無線を用いており,携帯端末は基地局の無線通信エリアに入ったことを検知して自動的に情報の受信を行うため,ユーザは情報の受信に先立ってコネクタによる機器の接続など煩わしい操作を行う必要がない。
【0033】
なお,上記好み情報の登録は,例えば上記携帯端末,インターネット,公衆回線等を介して行うことが可能である。
【0034】
また,上記基地局は,特定の携帯端末若しくはその所有者からの要求に基づいて,特定の情報を上記特定の携帯端末の識別情報を付加して送信し,上記携帯端末は,自分自身の識別情報と上記特定の情報に付加された上記識別情報とが一致した場合にのみ上記特定の情報を再生可能に構成すれば,特定の携帯端末に向けて配信される特定の情報が,その他の携帯端末に再生されることを防止できる。これにより,放送型の情報配信の形をとりながら,1対1の情報配信と同様の機能も同時に達成することができる。この時,上記携帯端末は,上記特定の情報に付加された上記識別情報と自分自身の識別情報とが一致しない場合には,例えば受信した上記特定の情報を破棄するように構成すればよい。
ここで,上記特定の情報の要求を,予めインターネット若しくは公衆回線を介して入力可能とし,上記基地局は,上記特定の情報の要求が入力された状態でその要求の対象である携帯端末が無線通信エリア内に入った時,上記特定の情報の送信を行うようにすれば,ユーザは予め上記特定の情報の要求を設定しておくことで,次に基地局の無線通信エリア内に入った時には特に何の操作も行うことなく自動的にその情報が取得でき,便利である。
また,上記基地局に上記特定の情報の要求を入力する入力手段を搭載し,上記基地局は,上記入力手段から上記特定の情報の要求が入力された時点で上記特定の情報の送信を行うように構成するか,或いは上記特定の情報の要求を上記携帯端末を介して入力可能とし,上記基地局は上記携帯端末を介して上記特定の情報の要求が入力された時点で上記特定の情報の送信を行うように構成すれば,ユーザは基地局或いは携帯端末から欲しい情報を入力すればその時点ですぐにその欲しい情報を受信することができ,従来の自動販売機を用いた情報配信と同様の機能も実現できる。但し,無線を用いて情報を受信するため,従来のようにコネクタによる機器の接続などの煩わしい操作を行う必要はない。
【0035】
また,各携帯端末への課金情報については,上記基地局が上記携帯端末から受信した上記所定の情報と,該所定の情報に対応して送信した情報の送信実績とに基づいて生成することが考えられるが,正確な課金を行うためには送信した情報が携帯端末で正常に受信されていることを確認する必要がある。
そこで,上記携帯端末が,上記基地局から受信した情報を再生した実績を表す再生実績情報を記憶する再生実績情報記憶手段を具備し,上記携帯端末における上記情報送信手段が,上記所定の情報に上記再生実績情報を含めて送信してなり,上記基地局若しくは該基地局と通信可能なサーバが,上記情報送信手段を通じた上記携帯端末への情報送信の実績に応じた送信実績情報を記憶する送信実績情報記憶手段と,上記送信実績情報記憶手段に記憶された上記送信実績情報と上記携帯端末から受信した上記所定の情報に含まれる上記再生実績情報との照合に基づいて,上記携帯端末若しくはその所有者に対する課金情報を生成する課金情報生成手段と,を具備することが考えられる。これにより,基地局から送信された情報が携帯端末側で正常に受信されたか否かを確認できないという従来の放送形式の情報配信の欠点を解消し,正しく課金処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る情報配信システムZ1の概略構成図。
【図2】 上記情報配信システムZ1を構成する基地局1と携帯端末2の概略構成を示すブロック図。
【図3】 上記情報配信システムZ1における情報配信処理手順を示すフローチャート。
【図4】 送信データの構成図。
【図5】 上記送信データのフレーム構成図。
【図6】 配信要求データの構成図。
【図7】 配信スケジュール生成部13による配信スケジュールの決定処理手順を示すフロー図。
【図8】 配信スケジュール生成部13による配信スケジュールの決定処理の具体例の説明図。
【図9】 一時データ記憶部22内の送信データからコンテンツデータのコンテンツ管理情報を取り出す際の処理手順を示すフローチャート。
【図10】 図9に示す処理によって生成されたコンテンツテーブルの一例。
【図11】 課金情報管理サーバ3cにおける配信コンテンツに関する管理情報の一例。
【符号の説明】
1…基地局
2…携帯端末
3…サーバ
3a…ユーザ情報管理サーバ
3b…コンテンツサーバ
3c…課金情報管理サーバ
4…公衆回線
11…通信制御部
12…コンテンツデータ記憶部
13…配信スケジュール生成部
14…送受信ユニット
21…送受信ユニット
22…一時データ記憶部
23…データ保存メディア
24…再生モジュール
25…ID記憶部
26…コンテンツ保存モジュール
27…好み情報記憶部
28…再生実績記録記憶部
Claims (2)
- 1つの基地局から複数の携帯端末に対して無線により情報を配信する情報配信システムであって,
上記携帯端末が,上記基地局の無線通信エリア内に入ったことを検知したときに自動的に上記基地局に対して当該携帯端末若しくはその所有者の識別情報を含む所定の情報を無線送信する情報送信手段を具備し,
上記基地局若しくは該基地局と通信可能なサーバが,上記携帯端末毎若しくはその所有者毎の好み情報を予め記憶する好み情報記憶手段を具備し,
上記基地局が,
上記携帯端末から受信した上記識別情報に基づいて上記無線通信エリア内に入った上記携帯端末を認識し,それら認識された携帯端末若しくはその所有者に対応する上記好み情報に基づいて情報の配信スケジュールを編成する配信スケジュール編成手段と,
上記配信スケジュール編成手段により編成された上記配信スケジュールに従って,上記無線通信エリア内の各携帯端末に対して一斉に情報を無線送信する一斉送信手段と,
を具備してなることを特徴とする情報配信システム。 - 上記携帯端末が,上記基地局から受信した情報を再生した実績を表す再生実績情報を記憶する再生実績情報記憶手段を具備し,
上記携帯端末における上記情報送信手段が,上記所定の情報に上記再生実績情報を含めて送信してなり,
上記基地局若しくは該基地局と通信可能なサーバが,
上記情報送信手段を通じた上記携帯端末への情報送信の実績に応じた送信実績情報を記憶する送信実績情報記憶手段と,
上記送信実績情報記憶手段に記憶された上記送信実績情報と上記携帯端末から受信した上記所定の情報に含まれる上記再生実績情報との照合に基づいて,上記携帯端末若しくはその所有者に対する課金情報を生成する課金情報生成手段と,を具備してなる請求項1に記載の情報配信システム。
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