JP3963404B2 - 積層体及びその成膜方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信システムや光応用計測装置等に使用される光導波路デバイスに係り、特に、電気光学効果を有する光学材料として鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜を用いた光導波路デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
電気光学効果を有する光学材料(光学基板)を用いた光導波路デバイスとしては、例えば、電気光学効果を有するニオブ酸リチュウム(LiNbO3)基板を用いた光変調器が知られている。(O plus E No.140 104-112 (1991))
この光変調器は、例えば、図4に示したように結晶のZ軸が基板の厚み方向となるようにカットされたニオブ酸リチウム基板3の主面上にチタン(Ti)を熱拡散によってMach-Zehnder型光導波路1を作製し、その上に所望の変調特性が得られるように誘電体層と制御用の電極2を設けたものである。
【0003】
又、National Technical Report Vol.33 No.6 Dec. p27-34(1987)には、スパッタ法によるPLZT薄膜を用いた光スイッチが示されている。この光スイッチは、サファイア基板上にプレーナマグネトロンスパッタ法でPLZT薄膜を成膜し、次にクラッド層及びストリップ層であるTa2O5薄膜を形成し、さらにバッファー層とアルミニウム電極を設けたものである。
【0004】
ところで、光変調器に於いて、変調することができる帯域幅Δfとその変調の際に進行波電極(以下、電極という)に印可される変調信号の電力P(以下、駆動電力という)
の関係は次式で与えられる。
【0005】
【数1】
Figure 0003963404
【0006】
上記式からもわかるように、変調効率を高くするため(同一の帯域幅Δfを変調することができる駆動電力Pを小さくするため、又は、同一の駆動電力Pで変調することができる帯域幅Δfを大きくするため)には、以下のようにする必要があった。
【0007】
(1)電極間距離dを小さくする。
【0008】
(2)電極長(相互作用長)Lを長くする。
【0009】
(3)光導波路に屈折率nと電気工学係数r33の大きな材料(以下、電気光学効果の大きい材料という)を用いる。
【0010】
しかし、電極間距離dを小さくすることには、加工上限界があり、電極長Lを長くすることは、信号波(変調波)と光との速度非整合の増大や装置の大型化を招くため好ましくなかった。
【0011】
従って、光変調器の駆動電力の低減し、装置を小型化するためには、光導波路に電気光学効果の大きい材料を用いる必要があった。又、光導波路に電気光学効果の大きい材料を用いれば電極長Lを短くすることができるので、信号波と光との速度整合をとることも容易となる。
【0012】
しかし、ニオブ酸リチウムに変わる電気光学効果の大きな単結晶材料を得ることが困難であった。
【0013】
そこで、本発明は、電気光学効果を有する光学材料として、鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜を用いた小型で低駆動電力の光導波路デバイスを提供することを目的とする。
【0014】
尚、上記強誘電体単結晶膜は、鉛を含有し、化学式ABO3(Aの部分(以下、Aサイトという)に鉛を含有)で示さるペロブスカイト型結晶構造の単結晶膜であり、顕著な誘電性、圧電性、光物性等を示すことが知られている(セラミストのための電気物性入門、内田老鶴圃、P.84(1990)・強誘電性と高温超伝導、P.52〜67、裳華房(1993))。上記誘電体としては、PbTiO3、(PbLa)TiO3、Pb(TiZr)O3、(PbLa)(TiZr)O3等に代表される強誘電体がある。これらの強誘電体は、その多くが、正方晶の結晶構造を有し、c軸方向に自発分極するものであり、優れた誘電性、圧電性、光物性等を示す。
【0015】
これらの優れた特性を利用したデバイスとしては、上述の光導波路デバイスの他、誘電性を利用したコンデンサ、圧電性を利用した圧電素子や振動子、光物性を利用した光変調器や光スイッチ等が挙げられる。更に、近年では誘電体メモリー素子への応用も検討されている。又、この単結晶膜は、材料学的にも数々の利点を有している(薄膜材料工学、P.4〜5、海文堂(1989))。
【0016】
しかし、これらのデバイスに於いて、良好な特性を得るためには、膜質の良い強誘電体の単結晶膜を形成する必要があるが、それには以下の問題があった。
【0017】
上記強誘電体からなる膜の製造方法としては、スパッタ法などの気相法やゾル・ゲル法などの液相法が一般的であるが、これにより製造された膜は一般に多結晶状態であるため、強誘電体にみられる自発分極の方向は個々の結晶粒毎に異なり、全体として分極方向がランダムとなり、強誘電性をほとんど示さない。従って、スパッタ法などの気相法やゾル・ゲル法などの液相法で強誘電単結晶膜を形成した場合には、上記デバイスに応用しても十分な特性を発揮することができなかった。
【0018】
又、この改善策として、膜に垂直な方向に電界印加等を行い、結晶粒のc軸方向を強制的に揃えること(以後これを分極操作と記す)がある。しかし、この分極操作により結晶粒のc軸方向を強制的に揃えた場合、結晶格子の変形による応力が発生し、膜内部にクラックが発生したり、基板と膜とが剥離することがあり、薄膜材料として上記デバイスに用いることができなかった。
【0019】
又、J.J.A.P、vol.30、No.9B、P.2145〜2148(1991)に於いては、MgO基板等を用いてスパッタ法等によりPbTiO3膜を成膜する場合に、成膜時の基板温度と成膜された膜のキュリー点との温度差や、基板と膜との格子定数差によって、膜面に平行に働く圧縮応力が発生し、この圧縮応力によって膜面に垂直な方向に大部分のc軸成分が向いている多結晶膜が得られることが示されている。
【0020】
そして、J.Mat.Sci.Lett.、No.14、P.629〜632(1995)に於いては、上記圧縮応力が、成膜時の基板温度と成膜された膜のキュリー点との温度差△Tが大きい程強くなり、c軸配向度が大きくなることが示されている。
【0021】
しかし、上記デバイスに応用して良好な特性を得るには、ほぼ100%のc軸配向度(以下、膜面に垂直な方向にほぼ100%のc軸成分が向いている膜をc軸配向膜という)が要求されるが、上記文献の記載に従ってc軸配向膜を得るには、△Tを500℃程度にする必要があり、この条件下で品質の良い膜を得ることは困難である。
【0022】
例えば、PbTiO3からなるc軸配向膜を成膜する場合には、成膜時の基板温度を990℃という高温にしなければならないが、この基板温度で成膜を行った場合、成膜された膜からのPbOの再蒸発が著しくなり、結晶完全性の高い膜を得ることができない。一方、結晶完全性の高い、品質の良い膜が得られる基板温度は600℃程度とされるが、この基板温度ではc軸配向度がほぼ100%のc軸配向膜を得ることができない。
【0023】
以上述べたように鉛を含有するペロブスカイト型強誘電体で、完全なc軸配向膜を得ることは困難であった。
【0024】
又、c軸配向度がほぼ100%のc軸配向膜が得られたとしても、そのc軸配向膜が多結晶膜であれば、単結晶の場合ような高い特性が得られない(単結晶(製造と展望)、内田老鶴圃、P.37〜40(1990))。例えば、多結晶膜を光デバイスに用いた場合、この多結晶膜中を光が透過する際に、その結晶粒界における損失が大きくなり、良好な特性が得られない。
【0025】
又、一般に誘電体薄膜を基板上に形成する場合に用いられるCVD、蒸着等の気相法、ゾル・ゲル法、水熱合成法、液相エピタキシャル法、電着等の液相法、スピンコート、ドクターブレード、スクリーン印刷等の塗布法(固相法)についても以下に述べる問題があった。
【0026】
気相法(表面科学、vol.16、No.7、P.410〜414(1995))によるものは、そのほとんどが結晶粒界をもち、単結晶ではなく、又、約1μm以上の膜厚の場合には、十分なc軸配向性をもったc軸配向膜が得られない。
【0027】
ゾル・ゲル法では、得られる膜は多結晶状になり、水熱合成法(J.J.A.P、vol.30、No.9B、P.2174〜2177、(1991))では、微細な結晶の集合体しか得られていない。
【0028】
塗布法(日本セラミックス協会学術論文誌103巻No.7、P.660〜663(1995))の場合も、得られる膜は多結晶状になる。
【0029】
ところで、液相エピタキシャル法による成膜については液相−固相平衡に近い状態で成長がおこなわれるため、一般に高品質の単結晶膜が得られるとされている(ELEMENTARY CRYSTAL GROWTH、Saan Publishers、P.489〜520、(1994))。
【0030】
この方法による酸化物単結晶膜の作製例としては、GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)基板上のガーネットフェライト、LiNbO3又はLiTaO3基板上のLiNbO3、LiTaO3(日本結晶学会誌第31巻、P.105(1989))や、高温超伝導材料(Appl.Phys.Lett.、vol.66(11)、No.13、P.1421、1995)等が知られている。
【0031】
しかし、この方法によってc軸配向膜である鉛含有ペロブスカイト強誘電体単結晶膜を形成するには、以下の条件を満たす必要となるが、これら全ての条件を満たすことは容易でなかった。
【0032】
まず、得られる鉛ペロブスカイト強誘電体のキュリー点以下の温度で成膜が可能なメルト(溶液又は溶融液)を作製する(メルト組成を見いだす)必要がある。つまり、メルトの過冷却温度、つまり液相エピタキシャル法により成膜(エピタキシャル成長)を行うときの温度が、膜のキュリー点より低い温度でなければならない。
【0033】
しかし、一般に液相エピタキシャル法では、500℃以下での成膜が可能なメルト(溶液又は溶融液)を作製すること(メルト組成を見いだすこと)が困難である。それは、目的組成が生成するメルト組成や、低温でエピタキシャル成長可能な範囲を示した状態図はほとんどないため、この条件を満たすメルト組成の検討することが困難なためである(日本結晶学会誌第20巻、No.4、P.389(1993))。
【0034】
尚、鉛ペロブスカイト強誘電体のキュリー点以上の温度で成膜した場合、成膜後の冷却過程において膜の結晶構造変化が起こり、その結果、大きな内部応力によるクラックが発生する。又、基板に垂直な方向にc軸成分とa軸成分の混在する90°ドメイン構造となり、完全なc軸配向とはならない。
【0035】
次に、液相エピタキシャル法による成膜(エピタキシャル成長)に於いては、メルトと基板が高温状態で接触するが、メルトはこの際に基板と反応しないものでなければならない(日本結晶学会誌 第31巻、P.105(1989))。
【0036】
しかし、一般的なフラックスを用いたメルトでは、このフラックス成分により基板がメルト中で溶解作用を受けるため(Journal of Crystal Growth、vol.3 No.4、P.443〜444(1968))、フラックス成分についても慎重に検討する必要がある。
【0037】
又、本発明にかかる強誘電体のように鉛を含有する化合物を必須の主成分とするものは、PbO、PbF2、PbCl2等の自己フラックスを用いることが望ましいが、これらは高温では蒸気圧が高いため、メルト組成が変化してしまい、液相の過冷却状態を維持することが困難である。更に、鉛を含有するフラックスは基板に対する浸食性が特に高いため、メルト中の基板の溶解現象が顕著に現れてしまう。
【0038】
以上に述べたように、優れた誘電性、圧電性、光物性等を示す鉛含有ペロブスカイト強誘電体単結晶膜を上記デバイスに利用するために、上記の問題を解決する必要がある。この解決策として、本発明に於いては、鉛ペロブスカイト強誘電体のキュリー点以下の温度で成膜が可能なメルト(溶液又は溶融液)組成を見いだし、そのメルトを用い液相エピタキシャル法により成膜をおこなっている。
【0039】
尚、この液相エピタキシャル法による成膜は、成膜速度がMO-CVD法やスパッタ法に比して、成膜速度が速い(10〜100倍程度)ため、工業化に適している。
【0040】
又、鉛ペロブスカイト強誘電体の圧電定数(d33)は、セラミック材料の2〜3倍程度である。更に、セラミック材料のように粒界やポアがないため加工性にもすぐれている。
【0041】
又、鉛ペロブスカイト強誘電体の電気光学定数は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)の4から7倍程度である。
【0042】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の積層体は、電気光学効果を有する材料を用いた積層体において、基板は、鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶の格子定数に整合する特定の材料であり、前記材料は、c軸が基板表面に垂直な方向に配向している鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜であることを特徴とするものである。
【0043】
請求項2に記載の積層体は、請求項1記載の積層体おいて、上記強誘電体単結晶膜の組成式が、(Pbx-aM1a)M2yzであり、該組成式のM1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ビスマス又はランタンの少なくとも1種以上を表し、M2は、チタン、ジルコン又はチタンとジルコンの双方を主成分とする元素を表すことを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、上記請求項1又は2に記載の積層体を光導波路に応用することを特徴とするものである。
【0044】
請求項4から8に記載の成膜方法の発明は、請求項1から3に記載の積層体の製造方法に関する発明である。
【0045】
【発明の実施の態様】
本発明にかかる光導波路デバイスは、帯状の導波路を形成する部分に鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜を用いたものである。前記導波路としては、例えば、鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜にエッチング処理を施し、膜の表面に帯状の凸部を形成したリッジ型の光導波路が挙げられる。
【0046】
そして、この光導波路の両側に電極を設け、この電極に電圧を印加することにより、前記光導波路を伝搬する光の位相を制御している。この光の位相変化を利用したものとしては、光変調器や光スイッチがあげられる。
【0047】
ところで、上記光の位相変化は、上記電極間に生じた電界により光導波路の屈折率が変化することによるものであり、この現象(電界に比例して屈折率が変化する現象)をポッケルス効果(電気光学効果)という。又、電気光学係数の大きい材料ほど、電界を印加したときの屈折率変化がきくなる。
【0048】
上記電気光学効果を利用した光変調器では、分岐した2つの導波路を伝搬する光に位相差を生じさせ、この位相差を制御することにより合波した光の強度を変調している。ここで、前記位相差は、電界を印加した側の導波路を伝搬する光の位相変化によって生じたものである。
【0049】
尚、本発明に於いて、光導波路の材料として用いた鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜は、その電気光学係数がニオブ酸リチウムの4〜7倍程度あり、導波路を伝搬する光により大きな位相変化を生じさせることができる。
【0050】
次に、上記鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜及びその製造方法について説明する。
【0051】
[鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜について]
上記鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜は、c軸配向度が高い、鉛を含有するペロブスカイト型構造の単結晶膜である。ここで、ペロブスカイト型構造とは、一般式ABOzで示される化合物のとる結晶構造の1形式であって、代表的化合物として灰チタン石(CaTiO3)が知られている。上記一般式において、A及びBは陽イオンを表し、結晶が化学量論比を構成する場合は、A/Bモル比は1であり、zは3である。
【0052】
しかし、通常は、正確にこのような組成比となることは稀であるが、A/Bモル比が0.8〜1.1の範囲から逸脱すると結晶品質が低下すると共に、絶縁性の確保が困難となる。尚、zはA/Bモル比が決定すれば、上記一般式で示される結晶中の総電荷量が0になるように決定される。
【0053】
又、上記強誘電体単結晶膜は、鉛含有ペロブスカイト型化合物であるため、その組成式は下記のように表わすことができる。
【0054】
(Pbx-aM1a)M2yz・・・(1)
この組成式(1)に於いて、a、xは0≦a<xの関係を、x、yはx/y=0.8〜1.1の関係を満たす。zは2.8〜3.2の範囲に含まれ、酸素原子の一部が塩素原子やふっ素原子などのハロゲン原子で置換されていても良い。
【0055】
又、M1は通常一価、二価、又は三価の元素を表し、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、ビスマス、ランタン等又はこれらの組合せが挙げられるが、これらの中でリチウム、ナトリウム、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ビスマス、ランタンが好適である。
【0056】
又、M2は、通常チタンであるが、その一部がジルコニウム、スズ、ニオブ等で置換されていても良い。
【0057】
又、上記強誘電体単結晶膜は、自発分極方位(c軸)が基板に垂直な方向に膜成長したものであって、その膜厚は少なくとも2μm以上であり、成膜した状態で後加工(表面加工)することなく平滑な表面を有するものである。
【0058】
尚、膜厚については、実用性、経済性及び膜形成の容易さなどの面から、膜厚は2〜100μmの範囲が好ましく、特に5〜70μmの範囲が好適である。ここで、前記膜厚は、膜形成後に膜の断面を顕微鏡で観察し、0.1mm間隔で10点を測定して得た数値の平均値である。
【0059】
[鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の製造方法について]
次に、液相エピタキシャル法による上記鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の製造方法について説明する。ここで、液相エピタキシャル法とは、過冷却状態もしくは過飽和状態にあるメルト(溶液又は溶融液)中に単結晶種基板を浸漬し、この基板上にエピタキシャルな結晶を成長させる方法である。
【0060】
上記単結晶種基板としては、エピタキシャル成長温度における膜の格子定数との整合性が良く、かつ熱膨張曲線も膜のそれに近いものであって、鉛含有原料溶融液により損傷を受けにくいものが用いられる。尚、膜の格子定数との整合性が良くない基板を用いると、膜が多結晶状になったり、全く成長しない場合があり、又、熱膨張曲線の差異が大きいと、熱膨脹の違いによる応力によって、膜クラックや剥離が生じることがある。
【0061】
上記単結晶基板と膜の格子定数の整合をとるためには、単位結晶格子a、b、cの少なくとも2辺の長さが3.50〜4.30Aである単結晶種基板、又は、その値に約20.5(2の平方根に近い値)をかけた、5.00〜6.00Aの範囲に
ある単結晶基板を用いる必要がある。ここで、5.00〜6.00Aの範囲にある単結晶基板を用いた場合には、膜の単位格子の対角線との整合がとれ、エピタキシャル成長が可能になる。
【0062】
ところで、結晶軸の方向を揃える場合、基板に平行な方向にa軸を揃えるか、又はc軸を揃えればよいが、c軸が基板面に垂直な方向に配向しているものの方が、圧電素子等のデバイスに用いたときに、高い特性が得られるため、上記単結晶種基板として、強誘電体単結晶膜のa軸及びb軸と格子定数の近い基板を用いている。かかる格子定数を有する基板を用いることによって、強誘電体単結晶膜のc軸を、基板面に垂直な方向に揃えることができる。
【0063】
具体的には、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO3)、アルミン酸イットリウム(YAlO3)、アルミン酸ネオジウム(NdAlO3)、ガリウム酸ランタン(LaGaO3)、ガリウム酸ネオジウム(NdGaO3)、ガリウム酸プラセオジウム(PrGaO3)、ガリウム酸ストロンチウムランタン(LaSrGaO4)、サファイア(Al2O3)等の単結晶種基板、又は、その構成元素の一部を他の元素で置換したものを用いることができるが、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO3)の単結晶種基板は、鉛原料溶融液による損傷を受けにくいため、鉛を含有する強誘電体単結晶膜を成膜する単結晶種基板として好適である。
【0064】
次に、上記溶液又は溶融液(メルト)の作製方法について説明する。
【0065】
まず、液相エピタキシャル法により形成される強誘電体単結晶膜が、上記組成式(1)で示される組成になるように、原料混合物を調製する方法について説明する。この原料混合物は、通常、鉛供給成分とチタン供給成分を基本成分とする。
【0066】
上記鉛供給成分としては、例えば酸化鉛(PbO、PbO2、Pb3O4等)とフッ化鉛(PbF2)の割合をPbのモル比に換算して、(酸化鉛:フッ化鉛=)8:2から4:6の範囲で含有するものを用いることができる。
【0067】
上記チタン供給成分としては、例えば酸化チタン(TiO2)を用いることができ、Ti原子の割合が鉛供給成分に含まれるPbの総モル数に対して0.02から0.15のモル比の範囲で含有されるように調製する。この割合が0.02未満では膜品質が低下し、実用に供することが困難となり、0.15より大きい場合には、成膜時の温度(膜育成温度)が一般的な鉛系強誘電体のキュリー点の上限である500℃を越え、c軸配向膜が得られない。
【0068】
又、上記鉛供給成分とチタン供給成分とから成る基本組成に対し、所望により結晶育成を向上させるための成分や、結晶育成温度を制御(過冷却状態を制御)するための成分(以下、結晶育成を向上させるためや、結晶育成温度を制御するための成分を、結晶育成にかかる成分という)を加えてもよい。
【0069】
上記結晶育成にかかる成分としては、酸化ホウ素(B2O3)等を用いたホウ素供給成分、
又は酸化ビスマス(Bi2O3)等を用いたビスマス供給成分が好適であるが、酸化カリウム(K2O)、フッ化カリウム(KF)(カリウム供給成分)等のアルカリ金属化合物を用いたアルカリ金属供給成分、酸化カルシウム(CaO)(カルシウム供給成分)等のアルカリ土類金属化合物を用いたアルカリ土類金属供給成分を用いてもよい。又、これらの結晶育成にかかる成分は、2種以上用いてもよい。
【0070】
上記結晶育成にかかる成分には、次に挙げるような作用効果がある。
【0071】
上記ホウ素供給成分については、溶融液の粘性を高める作用、鉛供給成分の蒸発を抑える作用、結晶育成温度を低下させる作用、過冷却状態を安定化する作用を有する。しかし、ホウ素供給成分を加える量によっては、メルトの粘性が過度に増大し、基板への溶質の供給が妨げられ、好ましくない。
【0072】
このような場合に、ビスマス供給成分、アルカリ金属供給成分、アルカリ土類供給成分は、粘性を低下させる作用があるため、これらの成分を加えることにより過度に増大した粘性を、好ましい粘性に制御することができる。
【0073】
尚、上記結晶育成にかかる成分のうち、膜中に取り込まれる成分については、その強誘電体単結晶膜を用いる用途に応じて選択する必要がある。又、膜中に結晶育成にかかる成分を含ませたくない場合には、膜中に取り込まれない成分であるホウ素やカリウムからなる成分用いればよい。ここで、ホウ素やカリウムが形成された単結晶膜中には含まれないのは、ホウ素についてはイオン半径が極めて小さいためであり、又、カリウムについてはPbに比べイオン半径が極めて大きいためと考えられる。
【0074】
又、これらの結晶育成にかかる成分が、その作用効果を有効に発揮するために、鉛供給成分に含まれるPbの総モル数に対するモル比が、(鉛供給成分に含まれるPbの総モル数:結晶育成にかかる成分=)80:1から1:1の範囲であることが好ましく、より好ましくは15:1から2:1の範囲である。
【0075】
尚、上記に於いては、結晶育成を向上させるためや、結晶育成温度を制御(過冷却状態を制御)するために、ホウ素供給成分、ビスマス供給成分、アルカリ金属供給成分、アルカリ土類供給成分をメルトに加えたが、ペロブスカイト型結晶構造を有する強誘電体単結晶膜のAサイト(Pb)やBサイト(Ti)の元素の一部を、他の金属元素で置換するためにかかる金属元素の化合物をメルトに加えてもよい。
【0076】
上記金属元素としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ジルコニウム、ランタン、希土類元素等が挙げられ、化合物としては、LiCO3、SrCO3、MgCO3等の炭酸化合物、Bi2O3、ZrO2、La2O3、Y2O3等の酸素化合物、LiF、NaF、NaCl等のハロゲン化物が挙げられ、これらは一種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。又、これら化合物は、原料混合物中のPb供給成分1モルに対し、0.01〜0.6モルの範囲で加えることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.4モルの範囲である。
【0077】
上記金属元素で、強誘電体単結晶膜のAサイト(Pb)やBサイト(Ti)の元素の一部を置換したものの代表例としては、PZT即ちPb(ZrTi)O3や、PLT即ち(PbLa)TiO3や、PLZT即ち(PbLa)(ZrTi)O3がある。
【0078】
【実施例】
次に、後述する液相エピタキシャル法により成膜したPZT単結晶膜を用いた光変調器の実施例について説明する。
【0079】
まず、サファイア基板上に成膜されているPZT単結晶膜にイオンビームエッチング法によるエッチング処理を施し、導波路となる帯状の凸部を形成しリッジ型構造のMach-Zehnder型の導波路とした。ここで、前記導波路の相互作用長は25mmとした。
【0080】
続いて、この上にマグネトロンスパッタ法により、層厚0.2μmの誘電体層(例えば、Ta25等の誘電体を用いる)を設け、更に、電解メッキ法により、厚さ15μmのAu電極を形成し、光変調素子とした。尚、この光変調素子の挿入損失を測定したところ5dB以下であった。
【0081】
次に、この光変調素子を筺体に設置し、駆動回路等を接続し、光変調器とした。
【0082】
この光変調器を、駆動電圧5Vで動作させたところ、その変調帯域幅は15GHz以上であった。一方、ニオブ酸リチウム基板を用いて同一仕様の光導波路を作製し、駆動電圧5Vで動作させたところ、その変調帯域幅は8GHzであった。これらの結果から、鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜を用いた光導波路デバイスは、特性が優れたものであることがわかる。又、鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜を用いた場合には、駆動電圧を4Vとして動作させることもできる。
【0083】
次に、後述する液相エピタキシャル法により成膜したPLZT単結晶膜を用いて、上記と同様の光変調器を作製し、駆動電圧5Vで動作させたところ、その変調帯域幅は20GHz以上であった。
【0084】
上記鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の成膜方法について、以下の実施例で説明する。
【0085】
[実施例1]
結晶育成にかかる成分としてホウ素供給成分を用いた場合の実施例について説明する。
【0086】
まず、鉛供給成分であるPbO、PbF2、チタン供給成分であるTiO2及びホウ素供給成分であるB23からなる原料を、
PbO:PbF2=5.5:4.5
TiO2:(PbO+PbF2+TiO2+B23)=5:100
(PbO+PbF2):B2O3=7:1
のモル比で十分混合した。
【0087】
次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、電気炉を用いて毎時200〜400℃にて700℃に昇温し、700℃で1時間保持し、更に700℃で保持した状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃にて降温し、450℃で保持した。
【0088】
次に、この溶液に(100)面のSrTiO3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転させ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあげ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振り切った。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗いした後に乾燥した。
【0089】
このようにして形成された膜は透明であり、うすい黄色を呈し、表面には光沢があり、平滑であった。又、膜厚は全体に均一で、4μmであった。又、蛍光X線分析により膜組成を調べたところ、PbOとTiO2の比が1:1のPbTiO3であることが確認できた。ここで、図1に膜表面の微分干渉顕微鏡写真を示した。
【0090】
更に、背面ラウエ法により膜の結晶性を調べたところ、図2に示すようなきれいな4回対称性のスポットがみられ、単結晶であることが確認できた。
【0091】
又、X線回折で膜の結晶構造を測定したところ、図3に示す様に膜の(00n)面のみのピークがみられ、c軸配向した膜であることが確認できた。
【0092】
又、偏光顕微鏡を用いて観察したときに、基板面に垂直な方向にa軸を持つ領域の存在、つまり90°ドメインの存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向にc軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0093】
尚、上記X線回折により求めたc軸長さは4.113Aであり、熱分析により求めたキュリー温度は、481℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下でおこなわれたことがわかる。
【0094】
次に膜の結晶性を評価するために、膜表面をHF+希硝酸で化学エッチングしたところ、転位等の結晶欠陥に起因するエッチピットがみられた。しかし、欠陥密度は10〜102個/cm2と少なく、この欠陥密度は市販の単結晶基板に匹敵する値であり、このことから膜の品質は非常に良いことが確認できた。
【0095】
[実施例2]
結晶育成にかかる成分としてホウ素供給成分及びカルシウム供給成分(アルカリ土類金属供給成分)を用いた場合の実施例について説明する。
【0096】
まず、鉛供給成分であるPbO、PbF2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分であるB23及びカルシウム供給成分であるCaCO3からなる原料を、
PbO:PbF2=5.5:4.5
(PbO+PbF2):TiO2:CaCO3=500:20:1
(PbO+PbF2):B23=6:1
のモル比で十分混合した。
【0097】
次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持した状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃にて降温し、400℃で保持した。
【0098】
次に、この溶液に(100)面のMgO単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転させ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあげ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振り切った。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗いした後に乾燥した。
【0099】
このようにして形成された膜を顕微鏡により測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状であった。
【0100】
又、この膜を蛍光X線で組成分析したところ、およその組成はPb0.96Ca0.04TiO3であった(但し、Caは、そのイオン半径より、すべてAサイトに含まれるとして計算した)。
【0101】
又、X線回折で膜の結晶構造を測定したところ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向にc軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0102】
尚、X線回折により求めたc軸長さは4.130Aであり、熱分析により求めたキュリー温度は、447℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下でおこなわれたことがわかる。
【0103】
[実施例3]
Aサイトの一部をランタンで置換した場合の実施例について説明する。
【0104】
まず、鉛供給成分であるPbO、PbF2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分であるB23及び置換成分であるLa23からなる原料を、
PbO:PbF2=5.5:4.5
(PbO+PbF2):TiO2:La23=1000:50:1
(PbO+PbF2):B23=6:1
のモル比で十分混合した。
【0105】
次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持した状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃にて降温し、380℃で保持した。
【0106】
次に、この溶液に(100)面のSrTiO3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転させ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあげ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振り切った。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗いした後に乾燥した。
【0107】
このようにして形成された膜を顕微鏡により測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状であった。
【0108】
又、この膜を蛍光X線で組成分析したところ、およその組成はPb0.96La0.04TiO3であった(但し、Laは、そのイオン半径より、すべてAサイトに含まれるとして計算した)。
【0109】
又、X線回折で膜の結晶構造を測定したところ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向にc軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0110】
尚、X線回折により求めたc軸長さは4.082Aであり、熱分析により求めたキュリー温度は、417℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下でおこなわれたことがわかる。
【0111】
[実施例4]
Bサイト(化学式ABO3で示されるペロブスカイト型結晶構造を有する膜のBの部分)の一部をジルコニウムで置換した場合の実施例について説明する。
【0112】
まず、鉛供給成分であるPbO、PbF2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分であるB23及び置換成分であるZrO2からなる原料を、
PbO:PbF2=5.5:4.5
(PbO+PbF2):TiO2:ZrO2=100:3:2
(PbO+PbF2):B23=7:1
のモル比で十分混合した。
【0113】
次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持した状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃にて降温し、420℃で保持した。
【0114】
次に、この溶液に(100)面のSrTiO3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転させ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあげ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振り切った。次に、この基板を毎分10℃〜200℃で室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗いした後に乾燥した。
【0115】
このようにして形成された膜を顕微鏡により測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状であった。
【0116】
又、この膜を蛍光X線で組成分析したところ、およその組成はPb(Ti0.88Zr0.12)O3であった(但し、Zrは、そのイオン半径より、すべてBサイトに含まれるとして計算した)。
【0117】
又、X線回折で膜の結晶構造を測定したところ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向にc軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0118】
尚、X線回折により求めたc軸長さは4.095Aであり、熱分析により求めたキュリー温度は、455℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下でおこなわれたことがわかる。
【0119】
尚、この結晶は一般にPZTといわれ、工業的に広く使用される重要な圧電材料である。
【0120】
[実施例5]
Aサイトの一部をランタンで置換し、Bサイトの一部をジルコニウムで置換した場合の実施例について説明する。
【0121】
まず、鉛供給成分であるPbO、PbF2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分であるB23及び置換成分であるZrO2からなる原料を、
PbO:PbF2=5.5:4.5
(PbO+PbF2):TiO2:La23:ZrO2
=1000:25:0.5:25
(PbO+PbF2):B23=5:1
のモル比で十分混合した。
【0122】
次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持した状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃にて降温し、420℃で保持した。
【0123】
次に、この溶液に(100)面のSrTiO3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転させ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあげ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振り切った。次に、この基板を毎分10℃〜200℃で室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗いした後に乾燥した。
【0124】
このようにして形成された膜を顕微鏡により測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状であった。
【0125】
又、この膜を蛍光X線で組成分析したところ、およその組成は(Pb0.98La0.02)(Ti0.88Zr0.15)O3であった(但し、Laは、すべてAサイトに、Zrは、すべてBサイトに含まれるとして計算した)。
【0126】
又、X線回折で膜の結晶構造を測定したところ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向にC軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0127】
尚、X線回折により求めたc軸長さは4.108Aであり、熱分析により求めたキュリー温度は、436℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下でおこなわれたことがわかる。
【0128】
[実施例6]
Aサイトの一部をナトリウムで置換した場合の実施例について説明する。
【0129】
まず、鉛供給成分であるPbO、PbF2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分であるB23及び置換成分であるNa2Oからなる原料を、
PbO:PbF2=5.5:4.5
(PbO+PbF2):TiO2:Na2
=1000:25:2
(PbO+PbF2):B23=5:1
のモル比で十分混合した。
【0130】
次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持した状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃にて降温し、400℃で保持した。
【0131】
次に、この溶液に(100)面のLaAlO3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転させ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあげ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振り切った。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗いした後に乾燥した。
【0132】
このようにして形成された膜を顕微鏡により測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状であった。
【0133】
又、この膜を蛍光X線で組成分析したところ、およその組成は(Pb0.99Na0.01)TiO3であった(但し、Naは、すべてAサイトに含まれるとして計算した)。
【0134】
又、X線回折で膜の結晶構造を測定したところ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向にc軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0135】
尚、X線回折により求めたC軸長さは4.114Aであり、熱分析により求めたキュリー温度は、451℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下でおこなわれたことがわかる。
【0136】
[実施例7]
Aサイトの一部をビスマスで置換した場合の実施例について説明する。
【0137】
まず、鉛供給成分であるPbO、PbF2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分であるB23及び置換成分であるBi23からなる原料を、
PbO:PbF2=5.5:4.5
(PbO+PbF2):TiO2:Bi23
=1000:25:3
(PbO+PbF2):B23=5:1
のモル比で十分混合した。
【0138】
次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持した状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃にて降温し、400℃で保持した。
【0139】
次に、この溶液に(100)面のSrTiO3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転させ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあげ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振り切った。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗いした後に乾燥した。
【0140】
このようにして形成された膜を顕微鏡により測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状であった。
【0141】
又、この膜を蛍光X線で組成分析したところ、およその組成は(Pb0.97Bi0.03)TiO3であった(但し、Naは、すべてAサイトに含まれるとして計算した)。
【0142】
又、X線回折で膜の結晶構造を測定したところ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向にc軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0143】
尚、X線回折により求めたc軸長さは4.117Aであり、熱分析により求めたキュリー温度は、462℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下でおこなわれたことがわかる。
【0144】
【発明の効果】
本発明によれば、電気光学効果を有する光学材料として、電気光学定数が大きい鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜を用いたことにより、以下の作用効果がえられる。
【0145】
(1)駆動電力と変調帯域幅が同一の光導波路デバイスを、より小型にすることができる。又、電極長(相互作用長)を短くすることができるので、信号波と光との速度整合をとることも容易となる。
【0146】
(2)変調帯域幅と形状が同一の光導波路デバイスを、より小さい駆動電力で動作させることができる。
【0147】
(3)駆動電力と形状がが同一の光導波路デバイスで、より広い変調帯域を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】膜表面の顕微鏡写真(微分干渉顕微鏡写真)を示す。
【図2】背面ラウエ法により測定したX線写真である。
【図3】X線回折で膜の結晶構造を測定したX線回折図を示す。
【図4】光変調器の1例を示した斜視図である。
【符号の説明】
1 光導波路
2 電極
3 基板

Claims (8)

  1. 基板上に電気光学効果を有する材料を成膜した積層体において、該基板は、SrTiO 、MgO又はLaAlO の単結晶であり、該材料は、基板に対してエピタキシャルに形成され、c軸が基板表面に垂直な方向に配向している鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶であることを特徴とする積層体。
  2. 請求項1記載の積層体において、上記強誘電体単結晶の組成式が、(Pbx-aM1a)M2yzであり、該組成式におけるM1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ビスマス又はランタンの少なくとも1種以上を表し、M2は、チタン、ジルコン又はチタン及びジルコンの双方を主成分とする元素を表すことを特徴とする積層体。
  3. 光導波路であって、上記請求項1又は2に記載の積層体により形成されていることを特徴とする光導波路。
  4. 鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の成膜方法であって、SrTiO 、MgO又はLaAlO の単結晶基板上に、c軸が基板表面に垂直な方向に配向している鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜を液相エピタキシャル法により成膜することを特徴とする鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の成膜方法。
  5. 上記成膜方法において、上記強誘電体単結晶膜の組成式が、(Pbx-aM1a)M2yzであり、該組成式のM1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ビスマス又はランタンの少なくとも1種以上を表し、M2は、チタン、ジルコン又はチタン及びジルコンの双方を主成分とする元素を表すことを特徴とする請求項4に記載の鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の成膜方法。
  6. 上記成膜方法において、成膜する温度は、380〜450℃であることを特徴とする請求項4又は5に記載の鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の成膜方法。
  7. 上記成膜方法において、鉛供給成分に含まれるPbの総モル数対メルトに含まれる結晶育成にかかる成分のモル数は、80:1から1:1の範囲であることを特徴とする請求項4〜6のうちの一つに記載された鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の成膜方法。
  8. 上記成膜方法において、ペロブスカイト型結晶構造を有する鉛含有強誘電体単結晶膜の元素の一部を他の金属元素で置換する際の該金属元素は、鉛1モルに対して、0.01〜0.6モルである請求項4〜7のうちの一つに記載された鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の成膜方法。
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