JPH09221393A - 鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜及びその製造方法 - Google Patents

鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜及びその製造方法

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JPH09221393A
JPH09221393A JP2565196A JP2565196A JPH09221393A JP H09221393 A JPH09221393 A JP H09221393A JP 2565196 A JP2565196 A JP 2565196A JP 2565196 A JP2565196 A JP 2565196A JP H09221393 A JPH09221393 A JP H09221393A
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crystal film
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Hiroki Morikoshi
広樹 守越
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 c軸配向度が高い、鉛含有ペロブスカイト強
誘電体単結晶膜の製造方法を提供すると共に、優れた誘
電性、圧電性、光物性等を示す鉛含有ペロブスカイト強
誘電体単結晶膜を提供することを目的とする。 【解決手段】 c軸が基板表面に垂直な方向に配向して
いることを特徴とする鉛含有ペロブスカイト型強誘電体
単結晶膜、及びメルトの過冷却温度が、強誘電体単結晶
膜のキュリー点以下であって、該過冷却温度でエピタキ
シャル成長を行うことにより、形成したことを特徴とす
る前記鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】ペロブスカイト型結晶構造を
有する強誘電体単結晶膜に係り、特に鉛を含有する強誘
電体単結晶膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】化学式
ABO3で示され、ペロブスカイト型結晶構造を有する
誘電体は、そのAの部分(以下、Aサイトという)に鉛
を含有した場合、顕著な誘電性、圧電性、光物性等を示
すことが知られている(セラミストのための電気物性入門、内
田老鶴圃、P.84(1990)・強誘電性と高温超伝導、P.52〜6
7、裳華房(1993))。上記誘電体の中には、PbTiO3、(PbL
a)TiO3、Pb(TiZr)O3、(PbLa)(TiZr)O3等に代表される強
誘電体がある。これらの強誘電体は、その多くが、正方
晶の結晶構造を有し、c軸方向に自発分極するものであ
り、優れた誘電性、圧電性、光物性等を示す。
【0003】これら強誘電体の優れた特性を利用したデ
バイス、例えば、誘電性を利用したコンデンサ、圧電性
を利用した圧電素子や振動子、光物性を利用した光変調
器や光スイッチ等が検討されている。更に、近年では誘
電体メモリー素子への応用も検討されている。しかし、
これらのデバイスに於いて、良好な特性を得るために
は、膜質の良い強誘電体の単結晶膜を、形成する必要が
ある。又、強誘電体を薄膜状に形成することは、材料学
的にも数々の利点を有している(薄膜材料工学、P.4〜5、
海文堂(1989))。
【0004】上記強誘電体からなる膜の製造方法として
は、スパッタ法などの気相法やゾル・ゲル法などの液相
法が一般的であるが、これにより製造された膜は一般に
多結晶状態であるため、強誘電体にみられる自発分極の
方向は個々の結晶粒毎に異なり、全体として分極方向が
ランダムとなり、強誘電性をほとんど示さない。従っ
て、上記デバイスに応用しても十分な特性を発揮できな
かった。
【0005】この改善策として、膜に垂直な方向に電界
印加等を行い、結晶粒のc軸方向を強制的に揃えること
(以後これを分極操作と記す)がある。しかし、この分極
操作により結晶粒のc軸方向を強制的に揃えた場合、結
晶格子の変形による応力が発生し、膜内部にクラックが
発生したり、基板と膜とが剥離することがあり、薄膜材
料として上記デバイスに用いることが困難であった。
【0006】又、MgO等を用いスパッタ法などでPbTiO3
膜を形成すると、高いc軸配向性をもつ多結晶膜(膜面
に垂直な方向に大部分のc軸成分が向いている多結晶
膜)であるc軸配向膜が得られることが示されている
(J.J.A.P、vol.30、No.9B、P.2145〜2148(1991))。本文献
によれば、c軸配向性の原因として、成膜時の基板温度
と成膜された膜のキュリー点との温度差や、基板と膜と
の格子定数差によって、膜面に平行に働く圧縮応力が挙
げられている。
【0007】又、別の文献(J.Mat.Sci.Lett.、No.14、P.6
29〜632(1995))に於いては、成膜時の基板温度とキュリ
ー点の温度差△Tが大きい程、この圧縮応力が強くな
り、c軸配向度が大きくなることが示されている。
【0008】尚、上記デバイスに応用して良好な特性を
得るには、ほぼ100%のc軸配向度が要求され、上記
文献の記載に従って100%の配向を得るためには、△T
を500℃程度にする必要がある。従って、例えばPbTi
O3からなるc軸配向膜を成膜する場合には、成膜時の基
板温度を990℃という高温にしなければならない。
【0009】しかし、この基板温度で成膜を行った場
合、成膜された膜からのPbOの再蒸発が著しくなり、結
晶完全性の高い膜を得ることができない。
【0010】一方、結晶完全性の高い、品質の良い膜が
得られる基板温度は600℃程度とされるが、この基板
温度ではc軸配向度がほぼ100%のc軸配向膜を得る
ことができない。
【0011】以上述べたように鉛を含有するペロブスカ
イト型強誘電体で、完全なc軸配向膜を得ることは困難
であった。
【0012】又、c軸配向度がほぼ100%のC軸配向
膜が得られたとしても、そのc軸配向膜が多結晶膜であ
れば、単結晶の場合ような高い特性が得られない(単結
晶(製造と展望)、内田老鶴圃、P.37〜40(1990))。例え
ば、多結晶膜を光デバイスに用いた場合、この多結晶膜
中を光が透過する際に、その結晶粒界における損失が大
きくなり、良好な特性が得られない。
【0013】尚、一般に誘電体薄膜を基板上に形成する
場合に用いられる成膜法としては、上記以外にもCV
D、蒸着等の気相法、ゾル・ゲル法、水熱合成法、液相
エピタキシャル法、電着等の液相法、スピンコート、ド
クターブレード、スクリーン印刷等の塗布法(固相法)
が知られている。
【0014】しかし、気相法(表面科学、vol.16、No.7、P.
410〜414(1995))によるものは、そのほとんどが結晶粒
界をもつもので、単結晶ではなく、又、約1μm以上の
膜厚の場合には、十分なc軸配向性をもったc軸配向膜
も得られていない。
【0015】又、ゾル・ゲル法では、得られる膜は多結
晶状になり、水熱合成法(J.J.A.P、vol.30、No.9B、P.2174
〜2177、(1991))では、微細な結晶の集合体しか得られ
ていない。
【0016】又、塗布法(日本セラミックス協会学術論文誌103
巻No.7、P.660〜663(1995))の場合も、得られる膜は多結
晶状になる。
【0017】一方、液相エピタキシャル法による成膜に
ついては液相−固相平衡に近い状態で成長がおこなわれ
るため、一般に高品質の単結晶膜が得られるとされてい
る(ELEMENTARY CRYSTAL GROWTH、Saan Publishers、P.489
〜520、(1994))。
【0018】この方法による酸化物単結晶膜の作製例と
しては、GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネッ
ト)基板上のガーネットフェライト、LiNbO3又は
LiTaO3基板上のLiNbO3、LiTaO3(日本結
晶学会誌第31巻、P.105(1989))や、高温超伝導材料(App
l.Phys.Lett.、vol.66(11)、No.13、P.1421、1995)等が知ら
れている。
【0019】しかし、この方法によってc軸配向膜であ
る鉛含有ペロブスカイト強誘電体単結晶膜を形成するに
は、以下の条件を満たす必要となるが、これら全ての条
件を満たすことは容易でなかった。
【0020】一般に液相エピタキシャル法では、500
℃以下での成膜が可能なメルト(溶液又は溶融液)を作
製すること(メルト組成を見いだすこと)が困難なた
め、成膜は500℃以上で行われる。しかし、これは鉛
ペロブスカイト強誘電体のキュリー点以上の温度である
ため、製膜後の冷却過程において膜の結晶構造変化が起
こる。その結果、大きな内部応力によるクラックが発生
する。又、基板に垂直な方向にc軸成分とa軸成分の混
在する90°ドメイン構造となり、完全なc軸配向とは
ならない。
【0021】従って、メルトの過冷却温度、つまり液相
エピタキシャル法により成膜(エピタキシャル成長)を
行うときの温度が、膜のキュリー点より低い温度でなけ
ればならない。
【0022】しかし、目的組成が生成するメルト組成
や、低温でエピタキシャル成長可能な範囲を示した状態
図はほとんどないため、この条件を満たすメルト組成の
検討は、非常に時間のかかる困難な作業である(日本結
晶学会誌第20巻、No.4、P.389(1993))。
【0023】又、液相エピタキシャル法による成膜(エ
ピタキシャル成長)に於いては、メルトと基板が高温状
態で接触するが、メルトはこの際に基板と反応しないも
のでなければならない(日本結晶学会誌 第31巻、P.105(1
989))。
【0024】尚、一般的なフラックスを用いたメルトで
は、このフラックス成分により基板がメルト中で溶解作
用を受けるため(Journal of Crystal Growth、vol.3 N
o.4、P.443〜444(1968))、フラックスについても検討す
る必要がある。
【0025】又、本発明にかかる強誘電体のように鉛を
含有する化合物を必須の主成分とするものは、PbO、
PbF2、PbCl2等の自己フラックスを用いることが
望ましいが、これらは高温では蒸気圧が高いため、メル
ト組成が変化してしまい、液相の過冷却状態を維持する
ことが困難である。また鉛を含有するフラックスは基板
に対する浸食性が特に高いため、メルト中の基板の溶解
現象が顕著に現れてしまう。
【0026】そこで、本発明は、c軸配向度が高い、鉛
含有ペロブスカイト強誘電体単結晶膜の製造方法を提供
すると共に、優れた誘電性、圧電性、光物性等を示す鉛
含有ペロブスカイト強誘電体単結晶膜を提供することを
目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の鉛含有ペ
ロブスカイト型強誘電体単結晶膜は、c軸が基板表面に
垂直な方向に配向していることを特徴とするものであ
る。
【0028】請求項2記載の鉛含有ペロブスカイト型強
誘電体単結晶膜の製造方法は、メルトの過冷却温度が、
強誘電体単結晶膜のキュリー点以下であって、該過冷却
温度でエピタキシャル成長を行うことにより、基板表面
に垂直な方向に強誘電体単結晶膜のc軸を配向させるこ
とを特徴とするものである。
【0029】つまり、上記製造方法は、メルト(溶液又
は溶融液)の過冷却温度又は過飽和温度が、かかるメル
トを用いて成膜する強誘電体単結晶膜のキュリー点より
低いことを特徴とするものである。
【0030】請求項3記載の鉛含有ペロブスカイト型強
誘電体単結晶膜の製造方法は、請求項2に於いて、上記
メルトが、酸化鉛とフッ化鉛を8:2〜4:6の範囲で
混合した鉛供給成分とチタン供給成分からなり、かつ前
記チタン供給成分を、前記鉛供給成分の鉛成分総モル数
に対して0.02〜0.15のモル比で含有することを
特徴とするものである。
【0031】請求項4記載の鉛含有ペロブスカイト型強
誘電体単結晶膜の製造方法は、請求項3において、上記
メルトが、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合
物、ジルコニウム化合物、ランタン化合物、希土類元素
化合物のうちの少なくとも1種類を、鉛供給成分の鉛成
分総モル数に対して0.01〜0.6のモル比で含有す
ることを特徴とするものである。
【0032】つまり、上記製造方法で用いるメルトは、
ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜のAサイト又はBサ
イトの元素の一部を置換するために、アルカリ金属化合
物、アルカリ土類金属化合物、ジルコニウム化合物、ラ
ンタン化合物、希土類元素化合物のうちの少なくとも1
種類を、鉛供給成分の鉛成分総モル数に対して0.01
〜0.6のモル比で加えたものである。
【0033】請求項5記載の鉛含有ペロブスカイト型強
誘電体単結晶膜の製造方法は、請求項3において、上記
メルトが、ホウ素化合物、ビスマス化合物、アルカリ金
属化合物、アルカリ土類金属化合物のうちの少なくとも
1種類を、鉛供給成分の鉛成分総モル数に対して0.0
125〜1.00のモル比で含有することを特徴とする
ものである。
【0034】つまり、上記製造方法で用いるメルトは、
結晶育成にかかる成分である、ホウ素化合物、ビスマス
化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物
のうちの少なくとも1種類を、鉛供給成分の鉛成分総モ
ル数に対して0.0125〜1.00のモル比で加えた
ものである。
【0035】請求項6記載の鉛含有ペロブスカイト型強
誘電体単結晶膜の製造方法は、請求項2乃至請求項5の
いずれかに於いて、単結晶基板として、単位結晶格子の
少なくとも1辺の長さが、3.50〜4.30Å又は
5.00〜6.00Åの範囲にあるものを用いることを
特徴とするものである。
【0036】請求項7記載の鉛含有ペロブスカイト型強
誘電体単結晶膜の製造方法は、請求項2乃至請求項5の
いずれかに於いて、単結晶基板として、チタン酸ストロ
ンチウム(SrTiO3)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン
酸ランタン(LaAlO3)、アルミン酸イットリウム(YAl
O3)、アルミン酸ネオジウム(NdAlO3)、ガリウム酸ラン
タン(LaGaO3)、ガリウム酸ネオジウム(NdGaO3)、ガリウ
ム酸プラセオジウム(PrGaO3)、ガリウム酸ストロンチウ
ムランタン(LaSrGaO4)、サファイア(Al2O3)等の単結晶
基板、又は、その構成元素の一部を他の元素で置換した
ものを用いることを特徴とするものである。
【0037】
【発明の実施の態様】[本発明にかかる強誘電体膜につ
いて]本発明にかかる強誘電体膜は、c軸配向度が高
い、鉛を含有するペロブスカイト型構造の単結晶膜であ
る。ここで、ペロブスカイト型構造とは、一般式ABOz
示される化合物のとる結晶構造の1形式であって、代表
的化合物として灰チタン石(CaTiO3)が知られている。上
記一般式において、A及びBは陽イオンを表し、結晶が
化学量論比を構成する場合は、A/Bモル比は1であり、
zは3である。
【0038】しかし、通常は、正確にこのような組成比
となることは稀であるが、A/Bモル比が0.8〜1.1の
範囲から逸脱すると結晶品質が低下すると共に、絶縁性
の確保が困難となる。尚、zはA/Bモル比が決定すれ
ば、上記一般式で示される結晶中の総電荷量が0になる
ように決定される。
【0039】本発明の場合、鉛含有ペロブスカイト型化
合物であるため、下記の一般式で表わすことができる。
【0040】(Pbx-aM1a)M2yz・・・(1)こ
の一般式(1)に於いて、a、xは0≦a<xの関係を、
x、yはx/y=0.8〜1.1の関係を満たす。zは
2.8〜3.2の範囲に含まれ、酸素原子の一部が塩素
原子やふっ素原子などのハロゲン原子で置換されていて
も良い。M1は通常一価、二価、又は三価の金属で、例
えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、ビスマス・ラン
タン(ビスマスとランタンの双方)等が挙げられるが、
これらの中でリチウム、ナトリウム、バリウム、ストロ
ンチウム、カルシウム、マグネシウム、ビスマス・ラン
タンが好適である。M2は、通常チタンであるが、その
一部がジルコニウム、 、 等
で置換されていても良い。
【0041】又、本発明にかかる強誘電体単結晶膜は、
自発分極方位(c軸)が基板に垂直な方向に膜成長したも
のであって、その膜厚は少なくとも2μm以上であり、
成膜した状態で後加工(表面加工)することなく平滑な
表面を有するものである。
【0042】ここで、膜厚については、実用性、経済性
及び膜形成の容易さなどの面から、膜厚は2〜100μ
mの範囲が好ましく、特に5〜70μmの範囲が好適であ
る。尚、前記膜厚は、膜形成後に膜の断面を顕微鏡で観
察し、0.1mm間隔で10点を測定して得た数値の平均
値である。
【0043】[本発明にかかる強誘電体膜の製造方法]
次に、液相エピタキシャル法により、本発明にかかる強
誘電体膜を製造する方法について説明する。ここで、液
相エピタキシャル法とは、過冷却状態もしくは過飽和状
態にあるメルト(溶液又は溶融液)中に単結晶基板を浸
漬し、この基板上にエピタキシャルな結晶を成長させる
方法である。
【0044】上記単結晶基板としては、エピタキシャル
成長温度における膜の格子定数との整合性が良く、かつ
熱膨張曲線も膜のそれに近いものであって、鉛含有原料
溶融液により損傷を受けにくいものが用いられる。ここ
で、膜の格子定数との整合性が良くない基板を用いる
と、膜が多結晶状になったり、全く成長しない場合があ
り、熱膨張曲線の差異が大きいと、熱膨脹の違いによる
応力によって、膜クラックや剥離が生じることがある。
【0045】上記単結晶基板と膜の格子定数の整合をと
るためには、単位結晶格子a、b、cの少なくとも2辺の
長さが3.50〜4.30Åである単結晶基板、又は、
その値に約20.5(2の平方根に近い値)をかけた、
5.00〜6.00Åの範囲にある単結晶基板を用いる
必要がある。ここで、5.00〜6.00Åの範囲にあ
る単結晶基板を用いた場合には、膜の単位格子の対角線
との整合がとれ、エピタキシャル成長が可能になる。
【0046】尚、結晶軸の方向を揃えるには、基板に平
行な方向にa軸を揃えるか、又はc軸を揃えればよい
が、c軸が基板面に垂直な方向に配向しているものの方
が、圧電素子等のデバイスに用いたときに、高い特性が
得られるため、上記単結晶基板として、強誘電体単結晶
膜のa軸及びb軸と格子定数の近い基板を用いている。
かかる格子定数を有する基板を用いることによって、強
誘電体単結晶膜のc軸を、基板面に垂直な方向に揃える
ことができる。
【0047】具体的には、チタン酸ストロンチウム(SrT
iO3)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(La
AlO3)、アルミン酸イットリウム(YAlO3)、アルミン酸ネ
オジウム(NdAlO3)、ガリウム酸ランタン(LaGaO3)、ガリ
ウム酸ネオジウム(NdGaO3)、ガリウム酸プラセオジウム
(PrGaO3)、ガリウム酸ストロンチウムランタン(LaSrGaO
4)、サファイア(Al2O3)等の単結晶基板、又は、その構
成元素の一部を他の元素で置換したものを用いることが
できる。特に、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化
マグネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO3)の単
結晶基板は、鉛原料溶融液による損傷を受けにくいた
め、本発明にかかる鉛を含有する強誘電体膜を成膜する
単結晶基板として好適である。
【0048】次に、上記溶液又は溶融液の作製方法につ
いて説明する。
【0049】まず、液相エピタキシャル法により形成さ
れる単結晶膜が、前記一般式(1)で示される組成にな
るように、酸化鉛を含む原料混合物を調製する方法につ
いて説明する。この原料混合物は、通常、鉛供給成分と
チタン供給成分を基本成分とする。
【0050】ここで、鉛供給成分としては、例えば酸化
鉛(PbO、PbO2、Pb3O4等)とフッ化鉛(PbF2)の割合をPb
のモル比に換算して、(酸化鉛:フッ化鉛=)8:2か
ら4:6の範囲で含有するものを用いることができる。
【0051】又、チタン供給成分としては、例えば酸化
チタン(TiO2)を用いることができ、Ti原子の割合が鉛
供給成分に含まれるPbの総モル数に対して0.02か
ら0.15のモル比の範囲で含有されるように調製す
る。この割合が0.02未満では膜品質が低下し、実用
に供することが困難となり、0.15より大きい場合に
は、成膜時の温度(膜育成温度)が一般的な鉛系強誘電
体のキュリー点の上限である500℃を越え、c軸配向
膜が得られない。
【0052】本発明においては、上記鉛供給成分とチタ
ン供給成分とから成る基本組成に対し、所望により結晶
育成を向上させるためや、結晶育成温度を制御(過冷却
状態を制御)するための成分を加えてもよい。
【0053】上記結晶育成にかかる成分(結晶育成を向
上させるためや、結晶育成温度を制御するための成分)
としては、酸化ホウ素(B2O3)等を用いたホウ素供給成
分、又は酸化ビスマス(Bi2O3)等を用いたビスマス供給
成分が好適であるが、酸化カリウム(K2O)、フッ化カリ
ウム(KF)(カリウム供給成分)等のアルカリ金属化合物
を用いたアルカリ金属供給成分、酸化カルシウム(CaO)
(カルシウム供給成分)等のアルカリ土類金属化合物を
用いたアルカリ土類金属供給成分を用いてもよい。又、
これらの結晶育成にかかる成分は、2種以上用いてもよ
い。
【0054】上記結晶育成にかかる成分の具体的な作用
効果を挙げると、ホウ素供給成分は、溶融液の粘性を高
める作用、鉛供給成分の蒸発を抑える作用、結晶育成温
度を低下させる作用、過冷却状態を安定化する作用を有
する。しかし、ホウ素供給成分を加える量によっては、
粘性の過度の増大を招き、基板への溶質の供給が妨げら
れ、好ましくない。
【0055】このような場合に、ビスマス供給成分、ア
ルカリ金属供給成分、アルカリ土類供給成分は、粘性を
低下させる作用があるため、これらの成分を加えること
により過度に増大した粘性を、好ましい粘性に制御する
ことが可能になる。
【0056】尚、上記結晶育成にかかる成分のうち、単
結晶膜中に取り込まれる成分については、単結晶膜を用
いる用途に応じて選択する必要がある。又、単結晶膜中
に結晶育成にかかる成分を含ませたくない場合には、単
結晶膜中に取り込まれない成分であるホウ素やカリウム
からなる成分が好適である。ここで、ホウ素やカリウム
が形成された単結晶膜中には含まれないのは、ホウ素に
ついてはイオン半径が極めて小さいためであり、又、カ
リウムについてはPbに比べイオン半径が極めて大きい
ためと考えられる。
【0057】又、これらの結晶育成にかかる成分が、そ
の作用効果を有効に発揮するために、鉛供給成分に含ま
れるPbの総モル数に対するモル比が、(鉛供給成分に
含まれるPbの総モル数:結晶育成にかかる成分=)8
0:1から1:1の範囲であることが好ましく、より好
ましくは15:1から2:1の範囲である。
【0058】尚、上記に於いては、結晶育成を向上させ
るためや、結晶育成温度を制御(過冷却状態を制御)す
るために、ホウ素供給成分、ビスマス供給成分、アルカ
リ金属供給成分、アルカリ土類供給成分をメルトに加え
たが、ペロブスカイト型結晶構造を有する強誘電体単結
晶膜のAサイト(Pb)やBサイト(Ti)の元素の一
部を、金属元素で置換するためにかかる金属元素の化合
物をメルトに加えてもよい。
【0059】上記金属元素としては、アルカリ金属、ア
ルカリ土類金属、ジルコニウム、ランタン、希土類元素
等が挙げられ、化合物としては、LiCO3、SrCO3、MgCO3
等の炭酸化合物、Bi2O3、ZrO2、La2O3、Y2O3等の酸素化
合物、LiF、NaF、NaCl等のハロゲン化物が挙げられ、こ
れらは一種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよ
い。また、これら化合物は、原料混合物中のPb供給成
分1モルに対し、0.01〜0.6モルの範囲で加える
ことが好ましく、より好ましくは0.01〜0.4モル
の範囲である。
【0060】上記金属元素で、強誘電体単結晶膜のAサ
イト(Pb)やBサイト(Ti)の元素の一部を置換し
たものの代表例としては、PZT即ちPb(ZrTi)
3や、PLT即ち(PbLa)TiO3や、PLZT即
ち(PbLa)(ZrTi)O3がある。
【0061】
【実施例】本発明にかかる強誘電体単結晶膜の製造方法
について、以下の実施例で説明する。
【0062】[実施例1]結晶育成にかかる成分として
ホウ素供給成分を用いた場合の実施例について説明す
る。
【0063】まず、鉛供給成分であるPbO、Pb
2、チタン供給成分であるTiO2及びホウ素供給成分
であるB23からなる原料を、PbO:PbF2=5.
5:4.5TiO2:(PbO+PbF2+TiO2+B2
3)=5:100(PbO+PbF2):B2O3=
7:1のモル比で十分混合した。
【0064】次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、
電気炉を用いて毎時200〜400℃にて700℃に昇
温し、700℃で1時間保持し、更に700℃で保持し
た状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を
用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃
にて降温し、450℃で保持した。
【0065】次に、この溶液に(100)方位SrTi
3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転さ
せ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあ
げ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振
り切った。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で
室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表
面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗い
した後に乾燥した。
【0066】このようにして形成された膜は透明であ
り、うすい黄色を呈し、表面には光沢があり、平滑であ
った。又、膜厚は全体に均一で、4μmであった。又、
蛍光X線分析により膜組成を調べたところ、PbOとT
iO2の比が1:1のPbTiO3であることが確認でき
た。ここで、図1に膜表面の微分干渉顕微鏡写真を示し
た。
【0067】更に、背面ラウエ法により膜の結晶性を調
べたところ、図2に示すようなきれいな4回対称性のス
ポットがみられ、単結晶であることが確認できた。
【0068】又、X線回折で膜の結晶構造を測定したと
ころ、図3に示す様に膜の(00n)面のみのヒ゜ークがみ
られ、c軸配向した膜であることが確認できた。
【0069】又、偏光顕微鏡を用いて観察したときに、
基板面に垂直な方向にa軸を持つ領域の存在、つまり9
0°ドメインの存在は認められなかった。従って、基板
に垂直な方向にC軸が完全配向した膜であることが確認
できた。
【0070】尚、上記X線回折により求めたC軸長さは
4.113Åであり、熱分析により求めたキュリー温度
は、481℃であった。従って、膜成長はキュリー温度
以下でおこなわれたことがわかる。
【0071】次に膜の結晶性を評価するために、膜表面
をHF+希硝酸で化学エッチングしたところ、転位等の
結晶欠陥に起因するエッチピットがみられた。しかし、
欠陥密度は10〜102個/cm2と少なく、この欠陥密
度は市販の単結晶基板に匹敵する値であり、このことか
ら膜の品質は非常に良いことが確認できた。
【0072】[実施例2]結晶育成にかかる成分として
ホウ素供給成分及びカルシウム供給成分(アルカリ土類
金属供給成分)を用いた場合の実施例について説明す
る。
【0073】まず、鉛供給成分であるPbO、Pb
2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分で
あるB23及びカルシウム供給成分であるCaCO3
らなる原料を、PbO:PbF2=5.5:4.5(P
bO+PbF2):TiO2:CaCO3=500:2
0:1(PbO+PbF2):B23=6:1のモル比
で十分混合した。
【0074】次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、
電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇
温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持し
た状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を
用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃
にて降温し、400℃で保持した。
【0075】次に、この溶液に(100)方位MgO単
結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転させ、1
0分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあげ、そ
の基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振り切っ
た。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で室温ま
で冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表面に付
着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗いした後
に乾燥した。
【0076】このようにして形成された膜を顕微鏡によ
り測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成
されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状で
あった。
【0077】又、この膜を蛍光X線で組成分析したとこ
ろ、およその組成はPb0.96Ca0.04TiO3であった
(但し、Caは、そのイオン半径より、すべてAサイト
に含まれるとして計算した)。
【0078】又、X線回折で膜の結晶構造を測定したと
ころ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの
存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向に
C軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0079】尚、X線回折により求めたC軸長さは4.
130Åであり、熱分析により求めたキュリー温度は、
447℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下
でおこなわれたことがわかる。
【0080】[実施例3]Aサイトの一部をランタンで
置換した場合の実施例について説明する。
【0081】まず、鉛供給成分であるPbO、Pb
2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分で
あるB23及び置換成分であるLa23からなる原料
を、PbO:PbF2=5.5:4.5(PbO+Pb
2):TiO2:La23=1000:50:1(Pb
O+PbF2):B23=6:1のモル比で十分混合し
た。
【0082】次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、
電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇
温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持し
た状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を
用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃
にて降温し、380℃で保持した。
【0083】次に、この溶液に(100)方位SrTi
3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転さ
せ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあ
げ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振
り切った。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で
室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表
面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗い
した後に乾燥した。
【0084】このようにして形成された膜を顕微鏡によ
り測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成
されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状で
あった。
【0085】又、この膜を蛍光X線で組成分析したとこ
ろ、およその組成はPb0.96La0.04TiO3であった
(但し、Laは、そのイオン半径より、すべてAサイト
に含まれるとして計算した)。
【0086】又、X線回折で膜の結晶構造を測定したと
ころ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの
存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向に
C軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0087】尚、X線回折により求めたC軸長さは4.
082Åであり、熱分析により求めたキュリー温度は、
417℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下
でおこなわれたことがわかる。
【0088】[実施例4]Bサイト(化学式ABO3
示されるペロブスカイト型結晶構造を有する膜のBの部
分)の一部をジルコニウムで置換した場合の実施例につ
いて説明する。
【0089】まず、鉛供給成分であるPbO、Pb
2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分で
あるB23及び置換成分であるZrO2からなる原料
を、PbO:PbF2=5.5:4.5(PbO+Pb
2):TiO2:ZrO2=100:3:2(PbO+
PbF2):B23=7:1のモル比で十分混合した。
【0090】次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、
電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇
温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持し
た状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を
用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃
にて降温し、420℃で保持した。
【0091】次に、この溶液に(100)方位SrTi
3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転さ
せ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあ
げ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振
り切った。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で
室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表
面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗い
した後に乾燥した。
【0092】このようにして形成された膜を顕微鏡によ
り測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成
されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状で
あった。
【0093】又、この膜を蛍光X線で組成分析したとこ
ろ、およその組成はPb(Ti0.88Zr0.12)O3であ
った(但し、Zrは、そのイオン半径より、すべてBサ
イトに含まれるとして計算した)。
【0094】又、X線回折で膜の結晶構造を測定したと
ころ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの
存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向に
C軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0095】尚、X線回折により求めたC軸長さは4.
095Åであり、熱分析により求めたキュリー温度は、
455℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下
でおこなわれたことがわかる。
【0096】尚、この結晶は一般にPZTといわれ、工
業的に広く使用される重要な圧電材料である。
【0097】[実施例5]Aサイトの一部をランタンで
置換し、Bサイトの一部をジルコニウムで置換した場合
の実施例について説明する。
【0098】まず、鉛供給成分であるPbO、Pb
2、チタン供給成分であるTiO2、ホウ素供給成分で
あるB23及び置換成分であるZrO2からなる原料
を、PbO:PbF2=5.5:4.5(PbO+Pb
2):TiO2:La23:ZrO2=1000:2
5:0.5:25(PbO+PbF2):B23=5:
1のモル比で十分混合した。
【0099】次に、この混合物を白金製ルツボに入れ、
電気炉を用いて毎時200〜400℃にて800℃に昇
温し、800℃で1時間保持し、更に800℃で保持し
た状態で、溶融した溶液を1時間攪拌(白金製の羽根を
用いて200r.p.mで攪拌)した。その後毎時100℃
にて降温し、420℃で保持した。
【0100】次に、この溶液に(100)方位SrTi
3単結晶基板を浸漬し、100r.p.mで基板を回転さ
せ、10分間の結晶育成後、基板を液面より上にひきあ
げ、その基板を500r.p.mで1分間回転し、溶液を振
り切った。 次に、この基板を毎分10℃〜200℃で
室温まで冷却した後、これを希硝酸中に浸漬し、その表
面に付着している原料溶液の固化物を取り除き、水洗い
した後に乾燥した。
【0101】このようにして形成された膜を顕微鏡によ
り測定したところ、基板上に約5μmの厚さで膜が形成
されていることが確認できた。又、膜は平滑な鏡面状で
あった。
【0102】又、この膜を蛍光X線で組成分析したとこ
ろ、およその組成は(Pb0.98La0.02)(Ti0.88
0.15)O3であった(但し、Laは、すべてAサイト
に、Zrは、すべてBサイトに含まれるとして計算し
た)。
【0103】又、X線回折で膜の結晶構造を測定したと
ころ、(00n)面のみで構成され、90゜ドメインの
存在は認められなかった。従って、基板に垂直な方向に
C軸が完全配向した膜であることが確認できた。
【0104】尚、X線回折により求めたC軸長さは4.
108Åであり、熱分析により求めたキュリー温度は、
436℃であった。従って、膜成長はキュリー温度以下
でおこなわれたことがわかる。
【0105】
【発明の効果】本発明によれば、以上説明したように、
基板面に垂直な方向にc軸が配向した強誘電体単結晶膜
を提供することができ、かかる単結晶膜を、コンデン
サ、圧電素子、振動子、光変調器、光スイッチ等のデバ
イスに利用した場合には優れた特性を得ることができ
る。
【0106】又、本発明にかかるメルト(溶液又は溶融
液)を用いた液相エピタキシャル法により、かかるペロ
ブスカイト型結晶構造を有する強誘電体単結晶膜を、簡
便な方法で安定的に得ることができる。又、この方法を
用いれば、10μm以上の膜厚を有する単結晶膜を形成
することができるので、光学デバイスや振動子デバイス
への応用が可能になる。又、低コストで、かかる強誘電
体単結晶膜を形成することができるので、この強誘電体
単結晶膜を用いたデバイスを安価で提供することができ
る。
【0107】又、上記メルトに金属元素の化合物を加え
ることにより、簡単にペロブスカイト型結晶構造を有す
る強誘電体単結晶膜のAサイト(Pb)やBサイト(T
i)の元素の一部を、かかる金属元素で置換することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】膜表面の顕微鏡写真(微分干渉顕微鏡写真)を
示す。
【図2】背面ラウエ法により測定したX線写真である。
【図3】X線回折で膜の結晶構造を測定したX線回折図
を示す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 c軸が基板表面に垂直な方向に配向して
    いることを特徴とする鉛含有ペロブスカイト型強誘電体
    単結晶膜。
  2. 【請求項2】 メルトの過冷却温度が、強誘電体単結晶
    膜のキュリー点以下であって、該過冷却温度でエピタキ
    シャル成長を行うことにより、基板表面に垂直な方向に
    強誘電体単結晶膜のc軸を配向させることを特徴とする
    鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に於いて、上記メルトが、酸化
    鉛とフッ化鉛を8:2〜4:6の範囲で混合した鉛供給
    成分とチタン供給成分からなり、かつ前記チタン供給成
    分を、前記鉛供給成分の鉛成分総モル数に対して0.0
    2〜0.15のモル比で含有することを特徴とする鉛含
    有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3において、上記メルトが、アル
    カリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、ジルコニウ
    ム化合物、ランタン化合物、希土類元素化合物のうちの
    少なくとも1種類を、鉛供給成分の鉛成分総モル数に対
    して0.01〜0.6のモル比で含有することを特徴と
    する鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項3において、上記メルトが、ホウ
    素化合物、ビスマス化合物、アルカリ金属化合物、アル
    カリ土類金属化合物のうちの少なくとも1種類を、鉛供
    給成分の鉛成分総モル数に対して0.0125〜1.0
    0のモル比で含有することを特徴とする鉛含有ペロブス
    カイト型強誘電体単結晶膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項2乃至請求項5に於いて、単結晶
    基板として、単位結晶格子の少なくとも1辺の長さが、
    3.50〜4.30Å又は5.00〜6.00Åの範囲
    にあるものを用いることを特徴とする請求項2乃至請求
    項4のいずれかの鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結
    晶膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項2乃至請求項5に於いて、単結晶
    基板として、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化マ
    グネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO3)、アル
    ミン酸イットリウム(YAlO3)、アルミン酸ネオジウム(Nd
    AlO3)、ガリウム酸ランタン(LaGaO3)、ガリウム酸ネオ
    ジウム(NdGaO3)、ガリウム酸プラセオジウム(PrGaO3)、
    ガリウム酸ストロンチウムランタン(LaSrGaO4)、サファ
    イア(Al2O3)等の単結晶基板、又は、その構成元素の一
    部を他の元素で置換したものを用いることを特徴とする
    請求項2乃至請求項4のいずれかの鉛含有ペロブスカイ
    ト型強誘電体単結晶膜の製造方法。
JP2565196A 1996-02-13 1996-02-13 鉛含有ペロブスカイト型強誘電体単結晶膜及びその製造方法 Withdrawn JPH09221393A (ja)

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