JPH0987092A - 鉛含有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜及びその製造方法 - Google Patents

鉛含有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜及びその製造方法

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JPH0987092A
JPH0987092A JP27512695A JP27512695A JPH0987092A JP H0987092 A JPH0987092 A JP H0987092A JP 27512695 A JP27512695 A JP 27512695A JP 27512695 A JP27512695 A JP 27512695A JP H0987092 A JPH0987092 A JP H0987092A
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広樹 守越
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機能材料として各種用途に有用な平滑表面を
もつ膜厚2μm以上の高品質の鉛含有ペロブスカイト型
誘電体単結晶膜、及びこのものを液相エピタキシャル法
により、簡便で再現性良く、かつ安価に製造する方法を
提供する。 【解決手段】 液相エピタキシャル法により形成された
膜厚少なくとも2μmの表面平滑な鉛含有ペロブスカイ
ト型誘電体単結晶膜であり、これは鉛供給成分例えば酸
化鉛を含む原料混合物を溶融し、十分に混合したのち、
単結晶基板を浸せきし、エピタキシャル成長を行わせ、
基板表面に膜厚少なくとも2μmの鉛含有ペロブスカイ
ト型単結晶膜を形成させることにより製造することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高品質の鉛含有ペロ
ブスカイト型誘電体単結晶膜及びその製造方法に関する
ものである。さらに詳しくいえば、本発明は、機能材料
として各種用途に有用な優れた平滑表面をもつ膜厚2μ
m以上の高品質の鉛含有ペロブスカイト型誘電体単結晶
膜、及びこのものを液相エピタキシャル法により、簡便
で再現性良く、かつ安価に製造する方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】結晶構造の一形式として、CaTiO3
(灰チタン石)で代表されるABO3の組成をもつ化合
物にみられるペロブスカイト型結晶構造が知られてお
り、そして、このようなペロブスカイト型結晶構造を有
する誘電体は、特に、前記ABO3において、そのAサ
イトに鉛を有する場合、顕著な誘電性や圧電性及び光物
性,を示すことも知られている[「セラミストのための
電気物性入門」第84ページ,内田老鶴園刊行(199
0年)、「強誘電性と高温超伝導」第52〜67ペー
ジ,裳華房刊行(1993年)]。このような組成を有
する材料を薄膜状に成形した場合、様々な利点が得られ
ることから[「薄膜材料工学」第4〜5ページ,海文堂
刊行(1989年)]、その薄膜の実用面での応用とし
て、種々の薄膜デバイス、例えば超音波トランスデュー
サ、赤外線検出素子、各種センサー、振動子、キャパシ
タ、電気光学素子などが検討されている。さらに、最近
では、誘電体メモリー素子への応用も検討されている。
このように、鉛含有ペロブスカイト型誘電体薄膜は工業
的価値の高い重要な材料である。
【0003】ところで、前記のデバイス材料の多くは多
結晶状であるので、高品質の単結晶薄膜を形成できれ
ば、大幅な諸物性の向上が期待できる[「単結晶(製造
と展望)」第37〜40ページ,内田老鶴園刊行(19
90年)]。また、単結晶薄膜は、透光性を有している
ため、光学分野におけるデバイスへの応用に有用であ
り、さらに物性研究分野においても基本材料として重要
である。しかしながら、従来の成膜法では、以下に述べ
るような課題があるため、安価で品質のよい単結晶薄膜
を作製する技術が求められている。
【0004】従来、基板上に誘電体薄膜を形成する場
合、成膜法として、例えば(1)スパッタリング法、化
学蒸着(CVD)法、真空蒸着法などの気相法、(2)
スピンコート、ドクターブレード、スクリーン印刷など
による塗布法などの固相法、(3)ゾル・ゲル法、水熱
合成法、液相エピタキシャル法、電着法などの液相法、
が用いられている。
【0005】前記(1)の気相法により薄膜を作製する
場合、真空容器及び高度な制御機能を必要とし、装置
が高価である、原料もターゲット状あるいはガス状に
加工したものであるので、高価である、一般に成膜速
度が遅く、得られる膜厚はせいぜい1〜2μm程度であ
る(なお、光通信で使用される波長1.3μm、1.5
5μmに対しては、光導波に5μm以上の膜厚が必要と
され、また表面波やバルク波を利用する圧電材料では、
数μm以上の膜厚が必要とされる)、蒸気圧の高い材
料、例えば本発明のように鉛を含む材料は、基板加熱に
よる再蒸発により、組成ずれを起こすおそれがあり、こ
のため組成制御が困難であって、再現性に欠け、膜品質
についても結晶欠陥を多く含むものとなる、形成され
た膜は一般に多結晶状になり、単結晶膜の形成が困難で
あって、層状の単結晶膜の成膜については、数少ない報
告例があるにすぎない[「Appl.Phys.Let
t.」第65巻,第1106〜1108ページ(199
4年)]、膜厚が薄いので、基板と膜界面で発生する
応力などの影響を受け、その結果膜内部で結晶歪やディ
スロケーションのような結晶欠陥を生じ、バルク結晶の
物性に満たない場合がほとんどである、上記と関連
するが、複雑な組成系では、所望の組成比の膜形成が困
難であるため、高度な組成制御法を用いなければなら
ず、装置がさらに高価になり、かつ膜品質の再現性に欠
けるなどの不都合が生じる、などの欠点がある。
【0006】また、前記(2)の固相法(塗布法)によ
る成膜では、製造コストは比較的安価であるものの、得
られる膜は多結晶状であるため[「日本セラミックス協
会学術論文誌」第103巻,第660〜663ページ
(1995年)に、スピンコート法の例が報告されてい
る]、単結晶のもつ高い特性が達成できず、また、例え
ば光を導波した場合、結晶粒界での散乱が大きいため、
損失が著しく実用に供しない、などの欠点がある。
【0007】さらに、前記(3)の液相法においては、
例えばゾル・ゲル法では、得られる膜はやはり多結晶状
となり、また、水熱合成法では、微細な結晶の集合体し
か得られていない[「Jpn.J.Appl.Phy
s.」第30巻,第2174〜2177ページ(199
1年)]。このように、液相法による成膜の場合、次に
述べる液相エピタキシャル法を除き、多結晶状の薄膜し
か得られていない。
【0008】一方、これらに対し、液相エピタキシャル
法による成膜においては、液相−固相平衡に近い状態で
成長が行われるために、一般に高品質の単結晶膜が得ら
れる[「ELEMENTARY CRYSTAL GR
OWTH」第489〜520ページ,Saan刊行(1
994年)]。また、この方法は、原料混合物中に所望
の成分を加えるだけで、比較的簡単に所望組成の複合化
合物を形成しうるので、諸特性も容易に制御することが
でき、材料、デバイス設計上極めて有利である。
【0009】液相エピタキシャル法による酸化物単結晶
膜の作製例としては、例えばGGG(Gd3Ga512
基板上のガーネットフェライトやLiNbO3膜、ある
いはLiTaO3基板上のLiNbO3やLiTaO3
[「日本結晶学会誌」第31巻,第105ページ(19
89年)]などが知られており、また高温超伝導材料が
知られている[「Appl.Phys.Lett.」第
66巻,第1421ページ(1995年)]。
【0010】このように、液相エピタキシャル法は単結
晶薄膜の形成法として適しているが、これまで、この方
法により、鉛含有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜を作
製した例は報告されていない。これは、以下に示す理由
によるものと思われる。すなわち、(イ)エピタキシャ
ル成長のために、基板は膜との格子整合性を有し、かつ
熱膨張曲線も膜のそれに近いことが必要であるが、市販
のエピタキシャル成長用単結晶基板の種類はわずかであ
り、したがって、基板と膜の格子定数及び熱膨張曲線は
一致しにくい。その結果、膜が多結晶状になったり、全
く成長しない場合が多く、また、熱膨張の違いにより発
生する応力によって、膜のクラックや剥離が起こりやす
い。(ロ)高温状態で基板と原料溶融液とを接触させる
ため、この溶融液と反応しない基板が必要となるが
[「日本結晶学会誌」第31巻,第105ページ(19
89年)]、「ジャーナル・オブ・クリスタル・グロー
ス(Journal of Crystal Grow
th)」第3巻,第443〜444ページ(1968
年)に記載されているように、一般に基板は原料溶融液
により、溶解作用を受ける。(ハ)所望の結晶を得るた
めに、原料溶融液の組成の検討が必要であるが、液相か
ら固化した場合の固相の組成を示す詳細な状態図がない
ため、適切な組成の原料溶融液を調製しにくい。したが
って、多くの場合、全く試行錯誤で結晶育成実験を行う
必要があり、極めて時間のかかる困難な作業となる
[「日本結晶学会誌」第20巻,第389ページ(19
93年)]。(ニ)鉛含有単結晶膜を作製する場合、鉛
源としてPbO、PbF2、PbCl2などを用いるのが
好ましいが、これらの化合物は高温では蒸気圧が高いた
め、短時間で原料溶融液から蒸散し、その結果溶融液の
組成が変化し、液相の過冷却状態が維持できなくなるお
それがある。また、鉛含有原料溶融液は基板に対する浸
食性が特に高く、前記(ロ)で述べた溶解現象が顕著に
現われる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、優れた平滑表面をもつ膜厚2μm以上の
高品質の鉛含有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜、及び
このものを簡便で再現性良く、かつ安価に効率よく製造
する方法を提供することを目的としてなされたものであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、酸化鉛を含む
原料混合物を溶融し、これに単結晶基板を浸せきし、エ
ピタキシャル成長を行わせて、基板表面に膜厚2μm以
上の単結晶膜を形成させることにより、特に基板として
特定の単結晶基板を、原料混合物として酸化鉛、酸化チ
タン、酸化ホウ素及び場合により他の特定の金属化合物
を含有するものを用い、上記操作を行うことにより、所
望の高品質鉛含有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜が、
再現性よく、かつ安価に効率よく得られ、その目的を達
成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完
成するに至った。
【0013】すなわち、本発明は、(1)液相エピタキ
シャル法により形成された膜厚少なくとも2μmの表面
平滑な鉛含有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜、又はこ
の単結晶膜において表面粗さRmaxが前記膜厚に対して
1%以下の平滑平面をもつもの、(2)鉛供給成分を含
む原料混合物を溶融し、十分に混合したのち、単結晶基
板を浸せきし、エピタキシャル成長を行わせ、基板表面
に膜厚少なくとも2μmの鉛含有ペロブスカイト型単結
晶膜を形成させることを特徴とする表面平滑な鉛含有ペ
ロブスカイト型誘電体単結晶膜の製造方法、前記原料混
合物に、さらにビスマス供給成分及びホウ素供給成分の
少なくとも一方を含ませたものを用いる製造方法、前記
単結晶基板としてチタン酸ストロンチウム、酸化マグネ
シウム又はアルミン酸ランタンの中のいずれか、特にチ
タン酸ストロンチウムを用いる製造方法及び前記単結晶
基板としてバッファー層を有するものを用いる製造方法
を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の誘電体単結晶膜は、液相
エピタキシャル法により形成された鉛含有ペロブスカイ
ト型構造を有するものである。ここで、液相エピタキシ
ャル法とは、過冷却ないしは過飽和状態にある溶液ある
いは溶融液中に基板を浸せきし、この基板上にエピタキ
シャル結晶を成長させる方法である。また、ペロブスカ
イト型構造とは、一般式ABOzで示される化合物のと
る結晶構造の一形式であって、代表的化合物として灰チ
タン石(CaTiO3)が知られている。上記一般式に
おいて、A及びBは陽イオンを表わす。結晶が化学量論
比を構成する場合は、A/Bモル比は1であり、zは3
であるが、通常このような組成比をとらない場合が多
い。その場合、A/Bモル比は、0.8〜1.1の範囲
で選ぶのが好ましい。このモル比が上記範囲を逸脱する
と結晶品質が低下し、かつ絶縁性の確保が困難となる。
この場合、zはA/Bモル比が決定すれば組成式から、
結晶中の総荷電量がゼロになるように決定される。
【0015】本発明の場合、鉛含有ペロブスカイト型化
合物であるため、一般式 (Pbx-a1 a)M2 yz (I) で表わすことができる。この一般式(I)において、a
は0≦a<xの関係を満たす数であり、x/y=0.8
〜1.1である。またzは2.8〜3.2の範囲の数で
あり、酸素原子の一部が塩素原子やフッ素原子などのハ
ロゲン原子で置換されていてもよい。M1は通常一価、
二価、又は三価の金属で、例えばアルカリ金属、アルカ
リ土類金属、ビスマス・ランタンなどが挙げられるが、
これらの中でリチウム、ストロンチウム、マグネシウ
ム、ビスマス及びランタンが好適である。M2は、通常
チタンであり、その一部がジルコニウムなどで置換され
ていてもよい。
【0016】本発明の誘電体単結晶膜は、膜厚が2μm
以上であり、かつ平滑表面を有することが必要である。
膜厚が2μm未満では光学素子、あるいは表面波やバル
ク波を利用する圧電材料などには利用しにくく、用途が
制限されるのを免れない。実用性、経済性及び膜形成の
容易さなどの面から、膜厚は2〜100μmの範囲が好
ましく、特に5〜70μmの範囲が好適である。また、
平滑表面については、表面粗さRmaxが膜厚の1%以下
であるのが望ましい。ここでいう膜厚は、膜形成後に基
板とともに断面を顕微鏡で観察し、0.1mm間隔で1
0点測定して得た数値の平均値を意味する。
【0017】このような性状を有する鉛含有ペロブスカ
イト型誘電体単結晶膜は、本発明方法に従えば、酸化鉛
を含む原料混合物の溶融液中に、単結晶基板を浸せき
し、エピタキシャル成長を行わせ、基板表面に膜厚2μ
m以上の単結晶膜を形成させることにより、製造するこ
とができる。
【0018】前記単結晶基板としては、形成される膜と
の格子整合性が良く、かつ熱膨張曲線も膜のそれに近い
上、鉛含有原料溶融液により損傷を受けにくいものが用
いられる。このような単結晶基板としては、例えばチタ
ン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化マグネシウ
ム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO3)な
どの単結晶基板が挙げられるが、これらの中で、特に鉛
含有原料溶融液による損傷を受けにくい点から、チタン
酸ストロンチウム単結晶基板が好適である。
【0019】本発明においては、鉛含有原料溶融液によ
る基板の損傷を抑制するとともに、形成される単結晶膜
の基板に対する密着性を高めるために、所望により、前
記単結晶基板上にバッファー層を設けてもよい。このバ
ッファー層としては、例えばスパッタリング法などによ
り、厚さ0.05〜0.5μm程度のPbTiO3薄膜
などを形成させるのが好ましい。このPbTiO3薄膜
をスパッタリング法で形成させた場合、通常得られる膜
は多結晶状であるが、基板として前記チタン酸ストロン
チウム、酸化マグネシウム又はアルミン酸ランタンの単
結晶基板を用いた場合、エピタキシャル成長時の膜の選
択配向によって、方位が次第に揃い、単結晶となる。し
かし、サファイア単結晶基板を用いた場合、バッファー
層の上にエピタキシャル成長を行わせても、単結晶膜と
はならない。これは、サファイア基板では、成長方位が
(111)面に垂直であり、選択成長が起こりにくい方
位であるためと考えられる。
【0020】酸化マグネシウム単結晶基板やアルミン酸
ランタン単結晶基板は、チタン酸ストロンチウム単結晶
基板に比べて、鉛含有原料溶融液により損傷を受けやす
いので、これらの基板を用いる場合は、前記のようにバ
ッファー層を設け、その上にエピタキシャル成長を行わ
せるのが有利である。また、サファイア単結晶基板も、
チタン酸ストロンチウム単結晶基板に比べて、鉛含有原
料溶融液により損傷を受けやすいが、バッファー層を設
け、その上にエピタキシャル成長を行わせても、前記し
たように単結晶膜が形成されにくいため、このサファイ
ア単結晶基板は、本発明で用いる基板としては、好まし
いものではない。
【0021】このように、単結晶基板上にバッファー層
を設けることにより、使用する単結晶基板の選択範囲が
拡大するとともに、エピタキシャル成長で形成される単
結晶膜の基板に対する密着性がより強固になるなどの効
果が発揮される。
【0022】本発明方法においては、まず、エピタキシ
ャル法により形成される単結晶膜が、前記一般式(I)
で示される組成になるように、酸化鉛を含む原料混合物
を調製する。この原料混合物は、基本組成として、通常
鉛供給成分例えば酸化鉛(PbO、PbO2又はPb3
4)とチタン供給成分例えば酸化チタン(TiO2)と
を、PbとTiに基づくモル比75:1ないし3:1の
割合で含有するものである。このモル比が上記範囲を逸
脱すると所望の鉛含有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜
が得られにくい。効率よく所望の単結晶膜を形成させる
には、このモル比は、特に60:1ないし4:1の範囲
が好ましい。
【0023】本発明においては、鉛供給成分として、酸
化鉛のほかにPbCl2やPbF2などのハロゲン化鉛を
用いることもできる。酸化鉛は結晶成分であるととも
に、効果的な結晶育成向上剤でもある。例えばPbO:
TiO2モル比が30:1の場合と50:1の場合の結
晶育成温度を比べると、後者の方は約100℃低くする
ことができる。このような結晶育成向上効果は、前記P
bCl2やPbF2などのハロゲン化鉛にもみられる。
【0024】本発明においては、前記鉛供給成分とチタ
ン供給成分とから成る基本組成に対し、所望により結晶
育成向上剤として、ホウ素供給成分例えば酸化ホウ素
(B23)及びビスマス供給成分例えば酸化ビスマス
(Bi23)の中の少なくとも一方を添加するのが好ま
しい。これらの成分の添加により、結晶育成温度を低下
させることができ、かつ、過冷却状態を安定化させるこ
とができる。また、このうちホウ素供給成分は、形成さ
れた単結晶膜中には含まれないため、結晶の組成には影
響を与えない。これは、ホウ素はイオン半径が極く小さ
いため、ペロブスカイト結晶格子中に取り込まれないた
めと考えられる。
【0025】このホウ素供給成分又はビスマス供給成分
の添加割合は、その効果を有効に発揮させるために、P
b又はBiとBに基づくモル比が、通常80:1ないし
1:1、好ましくは15:1ないし2:1になるように
選ばれる。さらに、本発明においては、鉛の一部やチタ
ンの一部を他の金属元素に置き換えたり、結晶育成を向
上させるなどのために、所望により、例えばアルカリ金
属、アルカリ土類金属、ジルコニウム、ランタンなどの
中から選ばれた少なくとも1種の金属の供給成分例えば
酸化物、ハロゲン化物などを、鉛を含む原料混合物中に
添加することができる。ここで、アルカリ金属として
は、リチウムが好ましく、アルカリ土類金属としては、
ストロンチウム及びマグネシウムが好ましい。
【0026】前記化合物の例としては、Li2CO3、N
2CO3、K2CO3、SrCO3、MgCO3、Bi
23、ZrO2、La23やLiF、KFのようなハロ
ゲン化物が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、
2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加
量は、酸化鉛1モルに対し、通常0.01〜0.6モ
ル、好ましくは0.01〜0.4モルの範囲で選ばれ
る。
【0027】これらの化合物の中で、Li2CO3、Na
2CO3、K2CO3、Bi23などは結晶育成向上効果を
有している。また、Bi23は結晶中に取り込まれるも
のの、ペロブスカイト構造において重要な能動イオンで
あるため、強誘電性の発現には好ましい効果を発揮す
る。さらに、前記化合物における金属の中でカリウム
は、結晶中にほとんど取り込まれない。なお、アルカリ
金属の塩化物やフッ化物も結晶育成向上効果を有するの
で、本発明の目的が損なわれない範囲で、原料混合物中
に添加することができる。
【0028】本発明においては、前記各成分を所定の割
合で含有する原料混合物を十分に均質になるように混合
したのち、加熱して溶融し、この溶融液中に前記したバ
ッファー層を有する又は有しない単結晶基板を浸せきす
ることにより、エピタキシャル成長を行わせる。この際
の溶融液の温度は、原料混合物の組成などにより異なる
が、通常は600〜1000℃の範囲で選ばれる。ま
た、基板は溶融液中に静置してエピタキシャル成長させ
てもよいし、適当に回転させながらエピタキシャル成長
させてもよい。回転させる場合、その回転数は10〜2
00rpm程度が有利である。また成膜速度は、通常
0.3〜3μm/分程度である。浸せき時間は、成膜速
度及び所望の膜厚などにより異なり、一概に定めること
はできないが、膜厚が少なくとも2μmになる時間が必
要であり、通常は1〜15分間程度である。
【0029】エピタキシャル成長終了後、基板を溶融液
から引上げ、付着している溶融液を十分に振り切ったの
ち、室温まで冷却する。次いで、希硝酸などの鉱酸水溶
液中に浸せきして、形成した単結晶膜表面に付着してい
る原料溶融液の固化物を取り除いたのち、水洗、乾燥す
る。
【0030】このようにして、基板上に形成された鉛含
有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜は、膜厚が2μm以
上で、かつ表面粗さRmaxが膜厚の1%以下程度の平滑
表面を有している。この膜の結晶構造及び組成は、それ
ぞれX線回折及び蛍光X線による組成分析などにより測
定することができる。また、膜の性状は、熱分析、分光
特性の測定、化学エッチング処理テスト、ロッキングカ
ーブの半値幅の測定などにより、求めることができる。
【0031】
【発明の効果】本発明によると、高品質の鉛含有ペロブ
スカイト型誘電体単結晶膜を、液層エピタキシャル法に
より、簡便な操作で、安価にかつ再現性よく製造するこ
とができる。さらに従来得られなかった10μm以上の
膜厚をもつ単結晶膜の形成が可能となり、それによっ
て、光学デバイスや振動子デバイスへ応用することが可
能となった。
【0032】また、原料混合物に、所定の元素を含む化
合物を添加するのみで、鉛含有ペロブスカイト型化合物
を簡単に合成することができる。したがって、新規な特
性を有する材料やデバイスの作製が可能であり、多方面
の応用が期待できる。さらに、基板上に、予め形成され
る単結晶膜と格子整合性のよいバッファー層を設けるこ
とにより、これまで成膜が困難であった基板にも、単結
晶膜を形成させることが可能となる。
【0033】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定さ
れるものではない。
【0034】実施例1 (1)液相エピタキシャル法による単結晶膜の形成 PbO、TiO2及びB23を、PbO:TiO2:B2
3モル比が30:1:7.5になるように十分混合し
たのち、白金製ルツボに入れ、これを電気炉にセットし
た。毎時200〜400℃の速度で900℃まで昇温
し、この温度で1時間保持したのち、白金製の羽根で2
00rpmにてさらに1時間溶融液をかきまぜた。その
後、炉の降温を開始し、660〜730℃に保持した。
次いで、この溶融液中に(100)SrTiO3単結晶
基板を浸せきし、100rpmで基板を回転させた。3
0分間結晶育成後、基板を液面より上に引き上げ、毎分
約500回転で1分間溶融液を振り切った。その後、基
板を毎分10〜200℃の速度で室温まで冷却した。次
に、これを希硝酸中に浸せきして、その表面に付着して
いる原料溶融液の固化物を取り除いたのち、水洗後乾燥
した。
【0035】このようにして形成された膜は透明であ
り、うすい黄色を呈していた。図1に、結晶育成時の基
板回転数が100rpmの場合の育成温度と膜厚との関
係をグラフで示す。このグラフから分かるように、育成
温度660〜730℃の範囲で、育成温度と膜厚は、ほ
ぼ直線関係にある(育成温度が低いほど、膜厚が大きく
なる)。以下、膜の評価は、育成温度約700℃で形成
された膜について行った。
【0036】(2)膜の表面及び断面の観察 図2は、形成された膜表面の顕微鏡写真であり、ドメイ
ン構造を示していた。図3は、形成された膜及び基板断
面の顕微鏡写真であり、SrTiO3基板上に約40μ
m程度の厚みの膜が成長しており、表面が平坦であるこ
とが分かる。また、この膜の表面粗さRmaxは0.2μ
mであった。
【0037】(3)膜の結晶構造 膜の結晶構造をX線回折により測定した。図4に膜面の
X線回折スペクトルを示す。図4で示されるように(n
00)面と(00n)面とから成り、正方晶であった。
これより求めた結晶格子間隔は、a軸が3.902Å、
c軸が4.148Åであった。これは、フラックス法に
より作製されたPbTiO3バルク単結晶で報告されて
いる値a=3.905Å、c=4.164Å[「ジャー
ナル・オブ・クリスタル・グロース(Journal
of Crystal Growth)」第128巻,
第869ページ(1993年)]にほぼ一致した。ま
た、背面ラウエ法により膜の結晶状態を調べたところ、
図5で示されるX線回折写真のように4回対称性のスポ
ットが観測された。また、各スポットは90°ドメイン
構造によりややスプリットしていた。これより、この膜
がPbTiO3単結晶膜であると結論できた。
【0038】(4)膜の組成分析 蛍光X線による組成分析を行ったところ、PbO74.
06重量%(50.54モル%)、TiO225.94
重量%(49.46モル%)であり、PbとTiのモル
比は、ほぼ1:1であった。また、白金ルツボから混入
した0.5重量%以下のPtが検出された(液相エピタ
キシャル法では高温で溶融液を形成させるため、白金ル
ツボを侵食し、微量のPtが結晶へ混入することは不可
避である)。しかし、Ptの混入量は極く微量であり、
またPtは四価のイオンであるため、四価のTiと置換
しても、他の原子のイオン価を変動させることがなく、
材料特性上の弊害にはならない。なお、この測定におい
て、原料成分として用いたB23は検出されなかった。
これは、ホウ素はイオン半径が極く小さいため、ペロブ
スカイト結晶格子中に取り込まれないためと考えられ
る。
【0039】(5)B23及びPbOの結晶育成に及ぼ
す影響 B23は原料混合物中に添加することにより、添加しな
い場合に比べて、結晶育成温度を下げる効果があり、効
果的な結晶育成向上剤である。
【0040】次にPbOの割合を増加し、PbO:Ti
2モル比を50:1にして、結晶育成を行ったとこ
ろ、育成温度を約100℃低下させることができた。し
たがってPbOは結晶構成成分であるとともに、効果的
な結晶育成向上剤である。このような結晶育成向上効果
は、PbOのみならず、PbCl2やPbF2などのPb
を含む低融点化合物についても認められた。
【0041】(6)膜の熱分析、分光特性の測定 膜の熱分析により、キュリー温度を求めたところ、48
5℃であり、従来のバルク結晶の報告値490℃[「ジ
ャーナル・オブ・クリスタル・グロース(Journa
l of Crystal Growth)」第128
巻,第869ページ(1993年)]とほぼ同じであっ
た。
【0042】また、膜の分光特性を測定したところ、図
6の分光特性図で示されるように、SrTiO3の吸収
端の0.4μmに比べ、吸収端は0.5μm付近にシフ
トしていた。これは、バルクPbTiO3単結晶で報告
されている吸収端[「ジャーナル・オブ・アメリカン・
セラミック・ソサエティ(Journal of Am
erican Ceramic Society)」第
51巻,第367ページ(1968年)]に一致してい
た。
【0043】(7)膜の結晶性の評価 膜表面をフッ化水素−希硝酸混合液で化学エッチング処
理したところ、ディスロケーションなどの結晶欠陥に起
因するエッチピットがみられた。しかし、欠陥密度は1
0〜102個/cm2と少なく、市販の単結晶基板に匹敵
する値が得られた。また、ロッキングカーブの半値幅を
(100)面で測定したところ、基板が13secであ
り、膜は15secと良好な値を示した。このことか
ら、この膜の品質は極めて良いことが判明した。
【0044】(8)単結晶膜形成の再現性 前記と同じ条件で、結晶育成実験を複数回行ったとこ
ろ、同じ厚みの単結晶膜が再現性良く得られ、ロッキン
グカーブの半値幅も安定していた。
【0045】実施例2 PbO、TiO2、B23及びSrCO3を、PbO:T
iO2:B23:SrCO3モル比が30:1:7.5:
3になるように十分混合したのち、白金製ルツボに入
れ、これを電気炉にセットした。毎時200〜400℃
の速度で1000℃まで昇温し、この温度で1時間保持
したのち、白金製の羽根で200rpmにてさらに1時
間溶融液をかきまぜた。その後、炉の降温を開始し、8
40℃に保持した。次いで、この溶融液中に(100)
SrTiO3単結晶基板を浸せきし、100rpmで基
板を回転させた。30分間結晶育成後、基板を液面より
上に引上げ、毎分約500回転で1分間溶融液を振り切
った。その後、基板を毎分10〜200℃の速度で室温
まで冷却した。次に、これを希硝酸中に浸せきして、そ
の表面に付着している原料溶融液の固化物を取り除いた
のち、水洗後乾燥した。
【0046】このようにして形成された膜は平坦な鏡面
状であり、膜厚45μm及び表面粗さRmax0.2μm
であった。また、この膜を蛍光X線で組成分析したとこ
ろ、およその組成はPb0.63Sr0.37TiO3であった
(ただし、イオン半径からSrはすべてAサイトに含ま
れるとして計算した)。次に、X線回折により膜の結晶
構造を測定したところ、正方晶であり、結晶格子間隔は
a軸が3.905Å、c軸が3.979Åであった。さ
らに、熱分析によりキュリー温度を求めたところ、21
8℃であった。
【0047】実施例3 PbO、TiO2、B23、SrCO3及びBi23を、
PbO:TiO2:B23:SrCO3:Bi23モル比
が30:1:10:3:10になるように十分混合した
のち、白金製ルツボに入れ、これを電気炉にセットし
た。毎時200〜400℃の速度で900℃まで昇温
し、この温度で1時間保持したのち、白金製の羽根で2
00rpmにてさらに1時間溶融液をかきまぜた。その
後、炉の降温を開始し、735℃に保持した。次いで、
この溶融液中に(100)SrTiO3単結晶基板を浸
せきし、100rpmで基板を回転させた。30分間結
晶育成後、基板を液面より上に引上げ、毎分約500回
転で1分間溶融液を振り切った。その後、基板を毎分1
0〜200℃の速度で室温まで冷却した。次に、これを
希硝酸中に浸せきして、その表面に付着している原料溶
融液の固化物を取り除いたのち、水洗後乾燥した。
【0048】このようにして形成された膜は透明で平坦
な鏡面状であり、膜厚33μm及び表面粗さRmax0.
2μmであった。また、この膜を蛍光X線で組成分析し
たところ、およその組成はPb0.62Bi0.02Sr0.35
iO3であった(Biは三価でAサイトに取り込まれる
として計算した)。Bi23は結晶中に取り込まれるも
のの、ペロブスカイト構造において重要な能動イオンで
あるため、強誘電性の発現には好ましい効果を発揮する
[「セラミストのための電気物性入門」第84ページ、
内田老鶴園刊行(1990年)]。また、Bi23を配
合することにより、これを配合しない場合に比べて、結
晶育成温度を低下させることができる。したがって、B
23は効果的な結晶育成向上剤でもある。
【0049】X線回折により、膜の結晶構造を測定した
ところ、正方晶であり、結晶格子間隔はa軸が3.90
1Å、c軸が3.983Åであった。また、熱分析によ
りキュリー温度を求めたところ、235℃であった。
【0050】実施例4 PbO、TiO2、B23及びZrO2を、PbO:Ti
2:B23:ZrO2モル比が30:1:7.5:1に
なるように十分混合したのち、白金製ルツボに入れ、こ
れを電気炉にセットした。毎時200〜400℃の速度
で1000℃まで昇温し、この温度で1時間保持したの
ち、白金製の羽根で200rpmにてさらに1時間溶融
液をかきまぜた。その後、炉の降温を開始し、885℃
に保持した。次いで、この溶融液中に(100)SrT
iO3単結晶基板を浸せきし、100rpmで基板を回
転させた。30分間結晶育成後、基板を液面より上に引
上げ、毎分約500回転で1分間溶融液を振り切った。
その後、基板を毎分10〜200℃の速度で室温まで冷
却した。次に、これを希硝酸中に浸せきして、その表面
に付着している原料溶融液の固化物を取り除いたのち、
水洗後乾燥した。
【0051】このようにして形成された膜は平坦な鏡面
状であり、膜厚21μm及び表面粗さRmax0.1μm
であった。また、この膜を蛍光X線で組成分析したとこ
ろ、およその組成はPb(Ti0.87Zr0.13)O3であ
った。次に、X線回折により結晶構造を測定したとこ
ろ、正方晶であり、結晶格子間隔はa軸が0.392
Å、c軸が0.414Åであった。さらに、熱分析によ
りキュリー温度を求めたところ、442℃であった。な
お、この結晶は一般にPZTといわれ、工業上広く使用
されている重要な圧電材料である。
【0052】実施例5 PbO、TiO2、B23、Li2CO3及びBi2
3を、PbO:TiO2:B23:Li2CO3:Bi23
モル比が30:1:7.5:4:4になるように十分混
合したのち、白金製ルツボに入れ、これを電気炉にセッ
トした。毎時200〜400℃の速度で900℃まで昇
温し、この温度で1時間保持したのち、白金製の羽根で
200rpmにてさらに1時間溶融液をかきまぜた。そ
の後、炉の降温を開始し、760℃に保持した。次い
で、この溶融液中に(100)SrTiO3単結晶基板
を浸せきし、100rpmで基板を回転させた。30分
間結晶育成後、基板を液面より上に引上げ、毎分約50
0回転で1分間溶融液を振り切った。その後、基板を毎
分10〜200℃の速度で室温まで冷却した。次に、こ
れを希硝酸中に浸せきして、その表面に付着している原
料溶融液の固化物を取り除いたのち、水洗後乾燥した。
【0053】このようにして形成された膜は透明で、平
坦であり、膜厚54μm及び表面粗さRmax0.3μm
であった。また、この膜を蛍光X線で組成分析したとこ
ろ、およその組成は(Bi0.11Li0.11Pb0.78)Ti
3であった(Li及びBiはイオン半径からAサイト
に取り込まれるとして計算した)。また、熱分析により
キュリー温度を測定したところ、531℃であった。L
iは結晶中に混入するが、純粋なPbTiO3と比べ、
このようにキュリー点の上昇効果がみられた。さらに、
Li2CO3を配合することにより、配合しない場合に比
べて、結晶育成温度を低下させることができた。また、
LiCO3の代わりにNa2CO3やK2CO3を加えた場
合、あるいはこれらアルカリ金属の塩化物やフッ化物を
加えた場合も、結晶育成温度を低下することができた。
なお、この場合、Naは結晶中にかなり混入したが、K
は結晶中にほとんど取り込まれなかった。X線回折でこ
れらの膜の結晶構造を測定したところ、正方晶であり、
ペロブスカイト構造を有していた。
【0054】実施例6 鏡面研磨された市販のSrTiO3、MgO、LaAl
3(100)及びサファイア(0001)基板表面
に、それぞれスパッタリング法により、厚さ0.2μm
のPbTiO3膜を形成した。この膜を蛍光X線で調べ
たところ、PbO:TiO2モル比がほぼ1:1であっ
た。また、X線回折で調べたところ、SrTiO3基板
及びLaAlO3基板の場合、膜は(n00)と(00
n)面から成っていた。一方、MgO基板では、膜はほ
ぼ(00n)面から、サファイア基板ではほぼ(nn
n)面から成っていた。
【0055】次に、これらの膜を形成した基板それぞれ
を用いて、実施例1と同様の結晶育成条件で、厚さ10
μm程度の膜を形成した。結晶育成後、サファイア基板
以外では膜は透明であって、薄い黄色を呈していた。サ
ファイア基板ではやや曇っていたが、平滑な表面であっ
た。
【0056】このようにして形成された膜は、背面ラウ
エ法で調べたところ、サファイア基板上の膜を除き、単
結晶であった。スパッタリング膜自体は多結晶状である
にもかかわらず、単結晶膜が得られる原因を断面TEM
(透過型電子顕微鏡)で調べた。その結果、膜成長時の
選択配向によって、方位が次第に揃い単結晶になること
が分かった。サファイア基板では、成長方位が(11
1)面に垂直であり、選択成長が起こりにくい方位と考
えられる。これらのことから、バッファー層が多結晶状
(アモルファスでない)であれば、選択配向により単結
晶化する可能性が示された。
【0057】また、実施例1と同様な条件で、MgO、
LaAlO3及びサファイア基板上に直接PbTiO3
成膜した場合、基板は原料溶融液による損傷が大きく、
膜成長がみられない場合がほとんどであった。しかし、
バッファー層の形成により損傷を防止することができ、
結晶成長が可能であった。さらに、バッファー層を安価
に基板上に成膜できれば、より低コストに単結晶膜を製
造することが可能になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 結晶育成温度と膜厚との関係の1例を示すグ
ラフ。
【図2】 本発明の単結晶膜の1例の表面顕微鏡写真。
【図3】 本発明の単結晶膜の1例の断面顕微鏡写真。
【図4】 本発明の単結晶膜の1例のX線回折スペクト
ル。
【図5】 本発明の単結晶膜の1例の背面ラウエ法によ
るX線回折写真。
【図6】 本発明の単結晶膜の1例の分光特性図。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液相エピタキシャル法により形成された
    膜厚少なくとも2μmの表面平滑な鉛含有ペロブスカイ
    ト型誘電体単結晶膜。
  2. 【請求項2】 表面粗さRmaxが単結晶の膜厚の1%以
    下の平滑表面をもつ請求項1記載の鉛含有ペロブスカイ
    ト型誘電体単結晶膜。
  3. 【請求項3】 鉛供給成分を含む原料混合物を溶融し、
    十分に混合したのち、単結晶基板を浸せきし、エピタキ
    シャル成長を行わせ、基板表面に膜厚少なくとも2μm
    の鉛含有ペロブスカイト型単結晶膜を形成させることを
    特徴とする表面平滑な鉛含有ペロブスカイト型誘電体単
    結晶膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 鉛供給成分を含む原料混合物が、さらに
    ビスマス供給成分及びホウ素供給成分の少なくとも一方
    を含む請求項3記載の鉛含有ペロブスカイト型誘電体単
    結晶膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 単結晶基板としてチタン酸ストロンチウ
    ム、酸化マグネシウム及びアルミン酸ランタンの中のい
    ずれかを用いる請求項3又は4記載の鉛含有ペロブスカ
    イト型誘電体単結晶膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 単結晶基板としてチタン酸ストロンチウ
    ムを用いる請求項5記載の鉛含有ペロブスカイト型誘電
    体単結晶膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 単結晶基板としてバッファー層を有する
    ものを用いる請求項3ないし6のいずれかに記載の鉛含
    有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜の製造方法。
JP27512695A 1995-09-29 1995-09-29 鉛含有ペロブスカイト型誘電体単結晶膜及びその製造方法 Withdrawn JPH0987092A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107400918A (zh) * 2017-08-02 2017-11-28 石家庄铁道大学 一种原位生长有机无机钙钛矿单晶薄膜装置

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CN107400918A (zh) * 2017-08-02 2017-11-28 石家庄铁道大学 一种原位生长有机无机钙钛矿单晶薄膜装置
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