JP3963090B2 - 二次電池用負極、二次電池用電解液およびそれらを用いた二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池用負極、二次電池用電解液およびそれらを用いた二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
負極に炭素材料、酸化物、リチウム合金またはリチウム金属を用いた非水電解液リチウムイオンまたはリチウム二次電池は、その高いエネルギー密度を実現できることから携帯電話、ノートパソコン用などの電源として注目されている。この二次電池において、負極の表面には表面膜または保護膜またはSEIまたは皮膜(以下、表面膜)と呼ばれる膜が生成することが知られている。この表面膜は、充放電効率、サイクル寿命、安全性に大きな影響を及ぼすことから負極の高性能化には表面膜の制御が不可欠であることが知られている。炭素材料、酸化物材料についてはその不可逆容量の低減が必要であり、リチウム金属、合金負極においては充放電効率の低下とデンドライト生成による安全性の問題を解決する必要がある。
【0003】
これらの課題を解決する手法として様々な手法が提案されてきている。例えば、リチウム金属またはリチウム合金の表面に、化学反応を利用してフッ化リチウム等からなる皮膜層を設けることによってデンドライトの生成を抑制することが提案されている。
【0004】
特開平7−302617号公報には、フッ化水素酸を含有する電解液にリチウム負極を曝し、負極をフッ化水素酸と反応させることによりその表面をフッ化リチウムの膜で覆う技術が開示されている。フッ化水素酸は、LiPF6および微量の水の反応により生成する。一方、リチウム負極表面には、空気中での自然酸化により水酸化リチウムや酸化リチウムの表面膜が形成されている。これらが反応することにより、負極表面にフッ化リチウムの表面膜が生成するのである。しかしながら、このフッ化リチウム膜は、電極界面と液との反応を利用した形成されるものであり、副反応成分が表面膜中に混入しやすく、均一な膜が得られにくい。また、水酸化リチウムや酸化リチウムの表面膜が均一に形成されていない場合や一部リチウムがむきだしになっている部分が存在する場合もあり、これらの場合には均一な薄膜の形成ができないばかりか、水やフッ化水素等とリチウムが反応することによる安全性の問題が生じる。また、反応が不十分であった場合には、フッ化物以外の不要な化合物成分が残り、イオン伝導性の低下を招く等の悪影響が考えられる。更に、このような界面での化学反応を利用してフッ化物層を形成する方法では、利用できるフッ化物や電解液の選択幅が限定され、安定な表面膜を歩留まり良く形成することは困難であった。
【0005】
特開平8−250108号公報では、アルゴンとフッ化水素の混合ガスとアルミニウム−リチウム合金とを反応させ、負極表面にフッ化リチウムの表面膜を得ている。しかしながら、リチウム金属表面にあらかじめ表面膜が存在する場合、特に複数種の化合物が存在する場合には反応が不均一になり易く、フッ化リチウムの膜を均一に形成することが困難である。このため、十分なサイクル特性のリチウム二次電池を得ることが困難となる。
【0006】
特開平11−288706号公報には、均一な結晶構造すなわち(100)結晶面が優先的に配向しているリチウムシートの表面に、岩塩型結晶構造を持つ物質を主成分とする表面皮膜構造を形成する技術が開示されている。こうすることにより、均一な析出溶解反応すなわち電池の充放電を行うことができ、リチウム金属のデンドライト析出を抑え、電池のサイクル寿命が向上できるとされている。表面膜に用いる物質としては、リチウムのハロゲン化物を有していることが好ましく、LiCl、LiBr、LiIより選ばれる少なくとも一種と、LiFとの固溶体を用いることが好ましいと述べられている。具体的には、LiCl、LiBr、LiIの少なくとも一種と、LiFとの固溶体皮膜を形成するために、押圧処理(圧延)により作成した(100)結晶面が優先的に配向しているリチウムシートを、塩素分子もしくは塩素イオン、臭素分子もしくは臭素イオン、ヨウ素分子もしくはヨウ素イオンのうち少なくとも一種とフッ素分子もしくはフッ素イオンを含有している電解液に浸すことにより非水電解質電池用負極を作成している。この技術の場合、圧延のリチウム金属シートを用いており、リチウムシートが大気中に曝され易いため表面に水分などに由来する皮膜が形成され易く、活性点の存在が不均一となり、目的とした安定な表面膜を作ることが困難となり、デントライトの抑制効果は必ずしも充分に得られなかった。
【0007】
また、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る黒鉛やハードカーボン等の炭素材料を負極として用いた場合、容量および充放電効率の向上に係る技術が報告されている。
【0008】
特開平5−234583号公報では、アルミニュウムで炭素材料を被覆した負極が提案されている。これにより、リチウムイオンと溶媒和した溶媒分子の炭素表面での還元分解が抑制され、サイクル寿命の劣化を抑えられるとされている。ただし、アルミニュウムが微量の水と反応してしまうため、サイクルを繰り返すと急速に容量が低下するという課題を有している。
【0009】
また、特開平5−275077号公報では、炭素材料の表面をリチウムイオン伝導性固体電解質の薄膜を被覆した負極が提示されている。これにより、炭素材料を使用した際に生じる溶媒の分解を抑制し、特に炭酸プロピレンを使用できるリチウムイオン二次電池を提供できるとしている。しかしながら、リチウムイオンの挿入、脱離時の応力変化により固体電解質中に生じるクラックが特性劣化を導く。また、固体電解質の結晶欠陥等の不均一性により、負極表面において均一な反応が得られずサイクル寿命の劣化につながる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来技術は、次のような共通する課題を有していた。
【0011】
負極表面に生成する表面膜は、その性質によって充放電効率、サイクル寿命、安全性に深く関わっているが、その膜の制御を長期にわたって行える手法はまだ存在していない。例えば、リチウムやその合金からなる層の上にリチウムハロゲン化物またはガラス状酸化物からなる表面膜を形成した場合、初期使用時にはデントライトの抑制効果が一定程度得られるものの、繰り返し使用していると、特願2001−232716で述べているように、表面膜が劣化して保護膜としての機能が低下する。これは、リチウムやその合金からなる層は、リチウムを吸蔵・放出することにより体積変化する一方、その上部に位置するリチウムハロゲン化物等からなる被膜は体積変化がほとんどないため、これらの層およびこれらの界面に内部応力が発生することが原因と考えられる。このような内部応力が発生することにより、特にリチウムハロゲン化物等からなる表面膜の一部が破損し、デンドライトの抑制機能が低下するものと考えられる。
【0012】
黒鉛等の炭素材料に関しては、溶媒分子またはアニオンの分解による電荷が不可逆容量成分として現れ、初回充放電効率の低下を導く。また、このとき生じた膜の組成、結晶状態、安定性等がその後の効率、サイクル寿命に大きな影響を及ぼす。
【0013】
こうした状況に鑑み、本発明は、リチウムイオン二次電池およびリチウム二次電池の負極の表面膜を改質し、安定かつ優れたサイクル寿命と高い充放電効率を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明によれば、以下に示す二次電池用負極、二次電池用電解液およびそれらを用いた二次電池が提供される。
【0015】
すなわち、本発明によれば、リチウム金属、リチウム合金、または、リチウムを吸蔵、放出できる材料を含み、表面に皮膜が形成された二次電池用負極であって、前記皮膜は、ヨウ化リチウムおよび遷移金属を含有し、前記遷移金属がランタノイド系金属であることを特徴とする二次電池用負極が提供される。
【0016】
この二次電池用負極において、上記ランタノイド系金属は、ユウロピウム、ネオジウム、エルビウムまたはホルミウムとすることができる。
【0017】
上記二次電池用負極において、上記皮膜は、さらにイミド化合物を含有する構成とすることができる。
【0019】
さらに本発明によれば、遷移金属のヨウ化物を含有し、前記遷移金属がランタノイド系金属であることを特徴とする二次電池用電解液が提供される。
【0020】
この二次電池用電解液において、ランタノイド系金属は、ユウロピウム、ネオジウム、エルビウムまたはホルミウムとすることができる。
【0021】
この二次電池用電解液において、さらにリチウムイミド塩を含有する構成とすることができる。リチウムイミド塩の具体例としては、LiN(CnF2n+1SO2)2、LiN(CnF2n+1SO2)(CmF2m+1SO2)等が挙げられる。
【0022】
本発明によれば、上記した負極または電解液を有する二次電池が提供される。
【0023】
本発明の負極は、電解液中に安定な表面膜を与える元素をあらかじめ添加することによりもたらされる。リチウムとヨウ素の反応により、薄く安定で良好なイオン伝導体であるヨウ化リチウムが生成する。
【0024】
遷移金属は、リチウム充電前に負極表面に析出することにより、リチウムイオンが均一で安定な負極表面を導く。特に、リチウムの酸化還元電位に近いユウロピウム、ネオジウム、エルビウム、ホルミウム等のランタノイド系遷移金属において、この効果が大きい。
【0025】
電解液中に含まれるリチウム塩として、リチウムイミド塩LiN(CnF2n+1SO2)2を含んでいると、電極表面に−N(CnF2n+1SO2)2アニオンの吸着が観察される。この吸着分子が表面膜が機械的に壊れた際に反応し、表面膜を修復する。このため、イミドアニオンを含むことにより、長期にわたるサイクル寿命が実現される。
【0026】
さらに、ランタノイド系遷移金属がイミドアニオンの酸素部位と配位結合し、より安定な状態になる。このため、ランタノイド系金属とイミドアニオンが配位した状態で負極表面に存在することによって、より顕著な皮膜の修復効果が得られる。
【0027】
本発明における電解液組成は、特にリチウムイオンを吸蔵放出する炭素などの負極材料、リチウム金属、リチウム合金、酸化物負極の表面に生成する表面膜を物理的、化学的に安定にし、かつ良好なイオン伝導性を与える効果を有している。長期にわたるサイクル寿命に関しては特にリチウムイミド塩を含有していることがより好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1に本発明に係る電池の一例について概略構造を示す。正極集電体11と、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る酸化物またはイオウ化合物、導電性高分子、安定化ラジカル化合物のいずれかまたは混合物からなる正極活物質を含有する層12と、リチウムイオンを吸蔵、放出する炭素材料または酸化物、リチウムと合金を形成する金属、リチウム金属自身のいずれかもしくはこれらの混合物からなる負極活物質を含有する層13と、負極集電体14と、遷移金属のヨウ化物塩を含む非水電解質溶液15、およびこれを含む多孔質セパレータ16から構成されている。
【0029】
本発明における電解液は、水系でも非水系でもよいが、通常は非水系を用いる。
【0030】
本発明における電解液中には、負極表面上に安定な表面膜を形成させる遷移金属のヨウ化物塩が含有されている。遷移金属のヨウ化物塩の含有量は、電解液全体に対して0.5〜10mmolL−1が好ましく、特に、5mmolL−1程度含まれていることが好ましい。ヨウ素とリチウムの反応によって生成する薄いヨウ化リチウム(LiI)の層は、イオン伝導度が高く、化学的にも安定に存在する。遷移金属はリチウムと合金を形成することにより、電解液とリチウムの化学反応を抑える働きと、デンドライト等の局所的なリチウムの析出を抑制する働きを有している。特に、ランタノイド系遷移金属が好ましく、ヨウ化ユウロピウム(Eu3I)、ヨウ化ネオジウム(Nd3I)、ヨウ化エルビウム(Er3I)、ヨウ化ホルミウム(Ho3I)のいずれかもしくは混合物がよい。これは、Eu、Nd、Er、Hoの酸化還元電位が黒鉛、合金、リチウム金属のそれと同じもしくは近いことによる。
【0031】
また、電解液中にリチウムイミド塩が含まれた構成を採用すると、負極表面にランタノイド系金属が配位したイミドアニオンが吸着した安定な構造が得られる一方、ランタノイド系金属がデンドライトの発生を抑制するため、サイクル寿命が顕著に向上する。特に、LiN(CnF2n+1SO2)2、LiN(CnF2n+1SO2)(CmF2m+1SO2)のようなフッ素含有イミドアニオンを用いた場合、負極表面に安定なフッ化リチウムが生成するため、より一層、サイクル寿命が向上する。特に、高いイオン伝導性、アルミ腐食抑制の点からLiN(C2F5SO2)2が好ましく、濃度としては0.2molL−1以上含んでいることが好ましい。
【0032】
以上のように、イミドアニオンは表面膜が破壊された後にも安定な表面化合物の生成を導く効果を有している。
【0033】
電解液中のリチウムイミド塩の含有量は、特に制限がないが、電解液全体に対して20mmolL−1〜1.2molL−1であることが好ましい。
【0034】
本発明に係る負極は、リチウム金属、リチウム合金、または、リチウムを吸蔵、放出できる材料を含んでいる。リチウムを吸蔵、放出できる材料としては、炭素材料や酸化物等が挙げられる。
【0035】
炭素材料としては、リチウムを吸蔵する黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブなど、あるいはこれらの複合物を用いることができるが、このうち、特に黒鉛材料が好ましい。黒鉛材料は、電子伝導性が高く、銅などの金属からなる集電体との接着性と電圧平坦性が優れている上、非晶質材料等よりも高い処理温度によって形成されるため含有不純物が少なく、負極性能の向上に有利に働くからである。
【0036】
酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジュウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、リン酸、ホウ酸のいずれか、あるいはこれらの複合物を用いてもよく、特に酸化シリコンを含むことが好ましい。構造としてはアモルファス状態であることが好ましい。これは、酸化シリコンが安定で他の化合物との反応を引き起こさないため、またアモルファス構造が結晶粒界、欠陥といった不均一性に起因する劣化を導かないためである。成膜方法としては、蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの方法を用いることができる。
【0037】
リチウム合金とは、リチウムおよびリチウムと合金形成可能な金属により構成される。例えばAl、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元または3元以上の合金により構成される。リチウム金属乃至リチウム合金としては、特にアモルファス状合金が好ましい。これは、アモルファス構造により結晶粒界、欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくいためである。
【0038】
リチウム金属またはリチウム合金は、融液冷却方式、液体急冷方式、アトマイズ方式、真空蒸着方式、スパッタリング方式、プラズマCVD方式、光CVD方式、熱CVD方式、ゾルーゲル方式、などの適宜な方式で形成することができる。
【0039】
本発明に係る負極は、電解質溶液との界面に生成する表面膜を制御することによって、金属、合金相の体積変化に対する柔軟性、イオン分布の均一性、物理的・化学的安定性に優れたものとなる。その結果、デンドライト生成やリチウムの微粉化を効果的に防止することができ、サイクル効率と寿命が向上する。また、炭素材料、酸化物材料に含まれる不可逆容量サイトは表面の制御によって大きく減少されるため、充放電効率が減少しない。
【0040】
本発明のリチウム二次電池において用いることのできる正極としては、LixMO2(ただしMは、少なくとも1つの遷移金属を表す。)である複合酸化物、例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMn2O4、LixMnO3、LixNiyC1−yO2など、または有機イオウ化合物、導電性高分子などをカーボンブラック等の導電性物質、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等の結着剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤と分散混練したものをアルミニウム箔等の基体上に塗布したものを用いることができる。
【0041】
本発明に係るリチウム二次電池は、乾燥空気または不活性ガス雰囲気において、負極および正極を、セパレータを介して積層、あるいは積層したものを捲回した後に、電池缶に収容したり、合成樹脂と金属箔との積層体からなる可とう性フィルム等によって封口することによって電池を製造することができる。なお、セパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、フッ素樹脂等の多孔性フィルムが用いられる。
【0042】
本発明における電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステルなどの非プロトン性有機溶媒を一種又は二種以上を混合して使用し、これらの有機溶媒に溶解するリチウム塩を溶解させる。リチウム塩としては、リチウムイミド塩以外に、例えばLiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC4F9CO3、LiC(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl、イミド類などがあげられる。
【0043】
本発明に係る二次電池の形状としては、特に制限はないが、例えば、円筒型、角型、コイン型などがあげられる。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
(電池の作製)
本実施例1の電池の作製について説明する。正極集電体11に20μmのアルミニュウム箔、正極12中の正極活物質にLiMn2O4、負極13に負極集電体14の10μmの銅箔上に蒸着した20μmのリチウム金属、電解質溶液15は、溶媒としてECとDEC混合溶媒(体積比:30/70)を用い、この溶媒中に1molL−1のLiN(C2F5SO2)2を溶解させた。添加剤として、5mmolL−1のEu3Iを加えた。そして、負極と正極とをポリエチレンとポリプロピレンからなるセパレーター16を介して積層し、コイン型二次電池を作製した。
【0045】
(充放電サイクル試験)
温度20℃において、充電レート0.05C、放電レート0.1C、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0V、リチウム金属負極の利用率(放電深度)は33%とした。容量維持率(%)は100サイクル後および300サイクル後の放電容量(mAh)を、10サイクル目の放電容量(mAh)で割った値である。サイクル試験で得られた結果を下記表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例2〜4)
実施例1に示したEu3Iの代わりに、上記表に示す添加剤で電池を構成した。これ以外は、実施例1と同様にして電池を作製し評価した。実施例1と同様にサイクル特性を調べた結果を表1に示す。
【0048】
(比較例1)
電解液中に、遷移金属のヨウ化物を添加しないこと以外、実施例1と同様の電池を作製し、実施例1と同様にサイクル特性を調べた結果を表1に示す。
【0049】
(実施例5)
電解液中のリチウム塩として、1molL−1のLiPF6を用いること以外、実施例1と同様の電池を作製し、実施例1と同様にサイクル特性を調べた結果を表1に示す。
【0050】
実施例1における容量維持率は、比較例1のそれらよりも大きく上回っている。これは、負極表面と電解質との界面に存在する表面膜の安定化と、その膜の高いイオン伝導性によって、不可逆反応およびデンドライト生成が抑制されたためと考えられる。
【0051】
また、各実施例に示した電池は、比較例1と比較して、サイクル試験後の容量維持率が向上していること、すなわちサイクル特性の改善していることが確認された。4種類の添加剤を比較すると、Eu3Iを添加した系で最も大きな効果が得られた。
【0052】
実際に、各実施例に示した電池について、サイクル後の負極表面をX線光電子分光法(XPS)とエネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて調べたところ、LiI,LiF,ランタノイド系金属、イミドアニオン分子の存在が示された。
【0053】
(実施例6〜10)
負極活物質を表2中に示す材料で構成し、かつ電解液中のリチウム塩として、0.8molL−1のLiPF6と0.2molL−1のLiN(C2F5SO2)2の混合物を用いること以外、実施例1と同様の電池を作製し、実施例1と同様にサイクル特性を調べた結果を表2に示す。なお、各実施例に示した電池について、サイクル後の負極表面をX線光電子分光法(XPS)とエネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて調べたところ、LiI,LiF,ランタノイド系金属、イミドアニオン分子の存在が示された。
【0054】
(比較例2〜6)
添加剤を加えないこと以外は実施例6と同様にして比較例2の電池を作製した。同様に、添加剤を加えないこと以外は実施例7〜10と同様にして比較例3〜6の電池を作製した。各電池について実施例1と同様の評価を行った。
【0055】
表2に示した各実施例と表3に示した各比較例を比較すると、実施例1〜5と同様、Eu3Iを添加した場合、無添加の系と比べてサイクル時における容量維持率が高いことがわかる。この結果から、リチウム金属のみだけでなく、リチウム合金、黒鉛、酸化物、黒鉛とシリコンの複合物のいずれかまたは複合物を負極活物質として用いた場合にも、実施例1と同様の効果が現れると考えられる。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、リチウム金属またはリチウム合金を負極とした場合に得られる優れたエネルギー密度、起電力等の特性を有するとともに、サイクル寿命、安全性に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る二次電池の概略構成図である。
【符号の説明】
11 正極集電体
12 正極活物質を含有する層
13 負極活物質を含有する層
14 負極集電体
15 非水電解質溶液
16 多孔質セパレータ
Claims (9)
- リチウム金属、リチウム合金、または、リチウムを吸蔵、放出できる材料を含み、表面に皮膜が形成された二次電池用負極であって、前記皮膜は、ヨウ化リチウムおよび遷移金属を含有し、前記遷移金属がランタノイド系金属であることを特徴とする二次電池用負極。
- 請求項1に記載の二次電池用負極において、前記ランタノイド系金属が、ユウロピウム、ネオジウム、エルビウムまたはホルミウムであることを特徴とする二次電池用負極。
- 請求項1または2に記載の二次電池用負極において、前記皮膜は、さらにイミド化合物を含有することを特徴とする二次電池用負極。
- 請求項1乃至3いずれかに記載の二次電池用負極を有することを特徴とする二次電池。
- 遷移金属のヨウ化物を含有し、前記遷移金属がランタノイド系金属であることを特徴とする二次電池用電解液。
- 請求項5に記載の二次電池用電解液において、前記ランタノイド系金属が、ユウロピウム、ネオジウム、エルビウムまたはホルミウムであることを特徴とする二次電池用電解液。
- 請求項5または6に記載の二次電池用電解液において、さらにリチウムイミド塩を含有することを特徴とする二次電池用電解液。
- 請求項7に記載の二次電池用電解液において、前記リチウムイミド塩が、LiN(CnF2n+1SO2)2またはLiN(CnF2n+1SO2)(CmF2m+1SO2)であることを特徴とする二次電池用電解液。
- 請求項5乃至8いずれかに記載の二次電池用電解液を有することを特徴とする二次電池。
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