JP3962707B2 - シルバー調クリア塗装ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、厨房用機器,家電製品の表装材,内装材,外装材等に適し、環境調和性に優れたシルバー調クリア塗装ステンレス鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼板は、優れた耐光性,意匠性,加工性等を活用し、外装材,内装材,表装材等として広範な分野で使用されている。なかでも、研磨目により独特の表面模様をつけた研磨仕上げ材は、意匠性が重視される部材として重宝されている。
建材用では、線状の研磨目を一定方向に長く付けたヘアライン仕上げやランダムな研磨目を付けたNo.4仕上げ材がビルフロントの建具やモニュメントの表層に使用されている。研磨目を付けた後で光輝焼鈍することによって汚れ除去性が改善されることも報告されている(特許文献1)。
【特許文献1】
特開平10−259418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ステンレス鋼研磨仕上げ材は、耐発銹性に優れていることから、長期間にわたって美麗な外観を呈する外装材,内装材,表装材等として使用できる。しかし、表面の金属光沢が強く、冷たい印象を与えがちなことから嗜好やニーズによっては敬遠される場合がある。美観を重視したインテリア等では、金属光沢が周辺部材との調和を損ねることにもなりかねない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、金属光沢が醸し出す印象をクリア塗膜で和らげることにより、周辺部材に対する調和性を改善すると共に、審美性の高いシルバー調表面を呈するクリア塗装ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のシルバー調クリア塗装ステンレス鋼板は、その目的を達成するため、ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目が付けられ、研磨後の光輝焼鈍によってSiが50原子%以上に濃化した酸化皮膜が形成されたステンレス鋼板を基材とし、エポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗膜が基材表面に形成されていることを特徴とする。
ステンレス鋼板にランダムな研磨目又はヘアライン研磨目を付けた後、水素濃度:75体積%以上,露点:−40℃以下の還元雰囲気中800℃以上で焼鈍(光輝焼鈍)し、次いでエポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗料を塗布・焼成して膜厚:2〜20μmのクリア塗膜を形成することにより製造される。
【発明の効果】
【0005】
ステンレス鋼研磨仕上げ材を還元雰囲気中で焼鈍(光輝焼鈍)すると、研磨時に生成した酸化皮膜が還元除去され、基材・ステンレス鋼の新生面にSiリッチの不動態皮膜が生成する。また、還元焼鈍による表面改質であるため、焼鈍後の基材・ステンレス鋼板に研磨目が残る。生成した不動態皮膜は、研磨後の酸化皮膜に比較して緻密な構造をもち、Si,Crリッチであることと相俟って優れた環境遮断能を呈し、基材・ステンレス鋼板の腐食を抑制する。
【0006】
表面改質されたステンレス鋼研磨仕上げ材にクリア塗膜を形成すると、研磨仕上げ材の冷たい金属光沢が和らげられ、明度を損なうことなくマイルドな色調の表面になる。マイルドな色調は、基材・ステンレス鋼板にランダムな研磨目又はヘアライン研磨目を付けることにより一層強調される。ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目は、金属光沢を抑え、一種の艶消し感を付与する上でも有効である。
【0007】
ランダムな研磨目とクリア塗膜との組合せによって特異な意匠が付与される理由は、次のように推察される。
外部からの入射光は、透明度の高いクリア塗膜を透過するが、ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目をつけた基材・ステンレス鋼板の表面で拡散反射し、外部に放出される。ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目で反射光が拡散されるため、クリア塗装ステンレス鋼板が本来呈するメタリック感が弱められ、白色度の高いマイルドな色調になる。しかも、反射光全体の光量が入射光とほぼ同じであることから、塗膜形成に起因する明度低下も抑えられる。
【0008】
透明度の高いクリア塗膜を形成する上では、基材表面に対して優れた密着力を呈するエポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗料が使用される。エポキシ成分が基材表面の極性基と反応するため、基材表面にある研磨目に起因する凹凸がクリア塗料で十分に充填され、透明度の高いクリア塗膜が形成される。
これに対し、密着力の低いクリア塗料では、基材表面の凹凸が十分には埋められず、基材/クリア塗膜の界面に空隙が生じる場合がある。界面の空隙は、クリア塗膜を透過して基材表面に達する入射光を不規則に反射・屈折させ、塗膜の色調に濁りを発生させる原因になると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
基材に使用されるステンレス鋼板は、鋼種に関する特段の制約はなくフェライト系,オーステナイト系,二相系等、各種ステンレス鋼を使用できる。研磨時の摩擦熱で発生するスケール(酸化皮膜)はオーステナイト系の方が強固で除去困難であり、フェライト系の方が研磨仕上げ後の光輝焼鈍が容易で、50原子%以上にSiが濃化した酸化皮膜が安定して形成される。
【0010】
ステンレス鋼板に研磨目を付ける方法にはバフ研磨を始めとして各種方法を採用可能であるが、コイルフォームのステンレス鋼板に対してはベルト研磨が最も効率のよい方法である。研磨仕上げ材のメタリック感に表面の凹凸が大きな影響を与える。凹凸形状が小さすぎると正反射光成分が大きすぎてメタリック感が強くなりすぎるが、逆に大きすぎる凹凸形状では個々の溝幅が大きくなるため単位面積当りの光拡散効果が増加して正反射光成分が少なくなり、メタリック感が損なわれる。
メタリック感を支配する表面の凹凸形状を決める最大の要因が研磨材の粗さであり、研磨材の番手で表すことができる。研磨材の番手が大きいと凹凸形状が小さくなり、番手が小さいと凹凸形状が大きくなる。
【0011】
研磨仕上げ後の表面肌とメタリック感の関係を調査した結果、面粗度(十点平均粗さRz)が1〜10μmの範囲にあるとメタリック感が抑制されることが判った。Rz:1〜10μmは、研磨材の番手が400番以下で得られる。好ましくはRz:5μmの近傍が好ましく、その表面をJIS G4305に規定される表面仕上げで表すとNo.4仕上げになる。
No.4仕上げと同様に研磨機で研磨した後、最終研磨工程で研磨ベルトをステンレス鋼板に押し付け、ステンレス鋼板の進行方向と反対方向にゆっくりとした速度で研磨することにより、髪の毛のように長く連続したRz:1〜10μmの研磨目がステンレス鋼板表面につけられる。研磨後の表面をJIS G4305に規定される表面仕上げで表すとHL仕上げになり、メタリック感が抑制された表面に改質される。
【0012】
光輝焼鈍は、研磨時に発生した酸化皮膜を除去し、焼鈍時に発生しがちなテンパーカラーを抑制するため還元性雰囲気で実施される。光輝焼鈍では、酸化皮膜を十分に還元除去するため水素濃度75体積%以上,露点−40℃以下の雰囲気中で研磨後のステンレス鋼板を800℃以上に加熱することが好ましい。
光輝焼鈍は、再結晶化によってステンレス鋼板の加工性を改善する場合、再結晶温度以上に焼鈍温度が設定される。基材温度が低いほど処理コストが低下するが、再結晶温度より低い基材温度では加工性の改善に至らない。Cr系はフェライト域の軟化焼鈍,Cr−Ni系は溶体化焼鈍であることから、好ましくはCr系で850〜1000℃,Cr−Ni系で1000〜1100℃の温度域に焼鈍温度を設定する。
【0013】
光輝焼鈍によってステンレス鋼板の表面に形成される皮膜は、研磨時に生成した酸化皮膜に比較して、Fe濃度が60〜75原子%から20〜30原子%に低下し、Si濃度が20〜35原子%から50〜70原子%に上昇している。なお、皮膜中の金属元素濃度は、X線光電子分光分析(XPS)装置で分析し、検出した金属元素のみを抽出することにより原子濃度比で表される。
光輝焼鈍されたステンレス鋼板は、研磨時に生成した酸化皮膜の色調(黄味)がなくなり、JIS Z8729で規定される色の表示方法に準拠したb*値が5.8から0.3まで減少し、Siの酸化物を主体とする白色系の緻密な皮膜が表面に形成されている。
【0014】
研磨,光輝焼鈍を経たステンレス鋼板は、クリア塗膜形成後に種々の形態に加工されることから、脱脂,リン酸塩処理,クロメート処理,Crフリー処理等の塗装前処理によって塗膜密着性を改善することが好ましい。具体的には、アルカリ脱脂,酸洗等でステンレス鋼板の表面を清浄化した後、必要に応じてリン酸塩処理で表面の濡れ性を高め、クロメート処理,Crフリー処理で塗膜密着性,耐食性を向上させる。リン酸塩処理を施す際の処理剤には、たとえば塗装前処理に使用されるリン酸亜鉛系処理剤がある。
【0015】
クロメート処理では、Cr換算付着量:5〜40mg/m2のクロメート皮膜が形成される。Cr換算付着量5mg/m2未満では塗膜密着性,耐食性の向上が十分でなく、逆に40mg/m2を超える付着量では六価Crの黄色に着色したクロメート皮膜の色調が透明なクリア塗膜を透かして観察され、外観が損なわれる。クロメート処理には、全Cr量で40mg/m2のクロメート皮膜を形成しても着色の少ないリン酸−クロム酸系の処理液が好ましく、なかでもシリカを配合した処理液(特開平5−106057号公報)が好ましい。
【0016】
Crフリー処理には、シリカ系,ジルコニア系,チタン系,フルオロアシッド系等がある。
ロールコータ,カーテンフローコータ,浸漬法等でステンレス鋼板に処理液を塗布し、ローラ等で絞った後、水洗することなく80〜200℃で乾燥することによりステンレス鋼板がクロメート処理される。
【0017】
クリア塗料には、基材表面に対して優れた密着力を呈するエポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗料が使用される。エポキシ成分を含まないポリエステル系クリア塗料では、基材・ステンレス鋼板の最表層に形成された50原子%以上のSiのため密着性が低く、基材表面に凹凸が十分に埋められないため基材/クリア塗膜の界面に空隙が生じやすくなり密着性が低下する。更に、界面の空隙は、クリア塗膜を透過して基材表面に達する入射光を不規則に反射・屈折させ、クリア塗膜の色調に濁りを発生させる原因にもなる。
【0018】
エポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗料は、プレコート鋼板の製造に通常使用されているロールコート,フローコート,カーテンフロー,スプレー等の方法で乾燥塗膜が1〜20μmとなる塗布量で基材・ステンレス鋼板に塗布され、到達板温200〜250℃×0.5〜2分で焼き付けられる。乾燥膜厚1μm未満ではクリア塗膜にピンホール等の欠陥が発生しやすく、耐水蒸気性,耐洗剤性,耐薬品性,耐食品汚染性等が不足する。逆に20μmを超える厚膜のクリア塗膜を形成すると、塗膜表面が柚子肌状になり外観が劣化する。
【0019】
ポリエステル系クリア塗料には、透明性を損なわない範囲で防錆顔料,着色顔料,染料,透明又は半透明の発色顔料等を添加しても良い。
クリア塗膜の上に、必要に応じて膜厚5〜20μmのトップクリア塗膜を設けると、耐疵付き性,耐薬品性,耐食品汚染性等の機能を付与できる。
【実施例】
【0020】
板厚0.5mm,板幅1000mmのコイル状SUS430ステンレス鋼板を原板に使用した。コンタクトホイール方式のベルト研磨(No.4)によりステンレス鋼板の表面にランダムな研磨目をつけた。研磨条件は、研磨番手:160番,ラインスピード:10m/分,ベルトスピード:1000m/分を採用した。研磨されたステンレス鋼板は、表面粗さがRz:5μmであった。
【0021】
研磨後のステンレス鋼板を焼鈍炉に通板し、露点:−58℃,基材温度:870℃の条件下で光輝焼鈍した。光輝焼鈍されたステンレス鋼板を観察したところ、テンパーカラーのない表面をもち、光輝焼鈍前に見られた黄色系の酸化スケールが除去されていた。また、鋼板表面のb*値が研磨時:5.3から焼鈍後:0.3に低下しており、白色系の緻密な皮膜が鋼板表面に形成されていた。
【0022】
焼鈍後のステンレス鋼板にアルカリ脱脂,水洗,Ni置換析出型表面調整,水洗,乾燥の工程を経て塗布型クロメート処理を施し、100℃で乾燥した。塗布型クロメート処理では、Cr換算付着量20mg/m2のクロメート皮膜を形成した。
クロメート処理されたステンレス鋼板の表面に表1のクリア塗料を塗布し、220℃×45秒で焼き付けた。
【0023】
【0024】
得られた各クリア塗装ステンレス鋼板から試験片を切り出し、加工試験,塗膜密着試験,耐水蒸気試験,耐洗剤性試験に供した。
加工試験では、「JIS K5400 8.1 耐屈曲性」試験に準拠し、試験片を180度密着折り曲げ試験した後、折り曲げ部の塗膜を観察し、割れが検出されなかった試験片を○,塗膜に割れが発生した試験片を×として加工性を評価した。
【0025】
塗膜密着試験では、加工試験と同様に試験片を180度密着折り曲げ試験した後、曲げ部外側の塗膜に粘着テープを貼り付け、瞬間的に引き剥がした。テープ剥離後に塗膜の付着状態を観察し、塗膜剥離が検出されなかった試験片を○,塗膜が部分的に剥離した試験片を△,塗膜が全面剥離した試験片を×として塗膜密着性を評価した。
【0026】
耐水蒸気試験では、水蒸気発生面から10cm離れた位置に試験片をセットし、水蒸気曝露8時間後にクリア塗膜の外観を観察した。クリア塗膜にフクレ,白濁,剥離等の異常が生じなかった試験片を○,異常が検出された試験片を×として耐水蒸気性を評価した。
耐洗剤性試験では、油汚れ用洗剤(マジックリン:花王株式会社製)に試験片を浸漬し、60℃×100時間後にクリア塗膜を観察し、クリア塗膜にフクレ,白濁,剥離等の異常が生じなかった試験片を○,異常が検出された試験片を×として耐洗剤性を評価した。
【0027】
表2の調査結果にみられるように、エポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗料から成膜されたクリア塗膜では、加工性,塗膜密着性,耐水蒸気性,耐洗剤性の何れにも優れた特性を示した。ただし、クリア塗料のベース樹脂であるポリエステルの分子量が小さいと、クリア塗膜の密着性が低下する傾向がみられた。エポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗料を使用する限り、No.4仕上げしたステンレス鋼板に対し良好な密着性でクリア塗膜を形成できる(試験No.10)。しかし、研磨目を付けずに光輝焼鈍したステンレス鋼板に対しては、クリア塗膜の密着性が若干低下する傾向が伺われる(試験No.11)。
【0028】
塗膜密着性に関する限りではエポキシ系のクリア塗膜が優れているが、エポキシ系クリア塗膜は伸びが低いため、加工性,加工後密着性に劣っている(試験No.5)。伸び率の高いポリエステル系クリア塗膜では、加工性を満足するものの密着性,耐洗剤性に劣っている(試験No.6)。更に伸び率を改善した高分子量のポリエステル系クリア塗膜では、加工性,塗膜密着性を満足するものの、高分子化による橋掛け間分子量の増大に伴い水分透過率が上昇するため耐水蒸気性、耐洗剤性に劣っている(試験No.7)。アクリル系のクリア塗膜では、伸び率,基材表面に対する結合力が低いため全ての特性に劣っている(試験No.8)。熱可塑性で分子量の大きなポリフッ化ビニリデンのクリア塗膜は、加工性,耐洗剤性を満足するものの密着性,耐水蒸気性に劣っている(試験No.9)。
【0029】
【0030】
次いで、各クリア塗装鋼板の光沢,色調,鮮明度を調査した。
光沢の調査には光沢計(VG2000:日本電色工業株式会社製)を用い、JIS Z8741に規定する鏡面光沢度測定方法に従ってクリア塗装鋼板の60度鏡面光沢を測定した。
色調に関しては、分光測色計(CM-3700d:ミノルタ株式会社製)を用い、JIS Z8741に規定する色差表示法に従ったL値,a値,b値を測定した。
鮮明度の調査では、像鮮明光沢計(DISTINCTNESS-OF-IMAGE GLOSSMETER DGM-30型:株式会社村上色彩技術研究所製)を用い、ASTM E430に準拠して像鮮明度D/I値を測定した。
【0031】
表3の調査結果にみられるように、密着性が悪い試験No.5〜9のクリア塗膜では、塗膜に濁りが生じ光沢度が30低下しており、ステンレス特有の高級感が損なわれていた。塗膜の濁り,光沢度低下は、入射光を不規則に反射・屈折させる空隙が基材/塗膜の界面に空隙が存在することが原因と考えられる。なかでも、試験No.9は、塗膜自体に濁りがあるため光沢度が極端に低下し、L値が若干上昇している。蛍光灯等の写り込みが鮮明に観察されるか否かの指標である像鮮明度D/Iも、入射光の拡散反射によって低い値であった。
【0032】
光輝焼鈍することなく研磨目を付けたステンレス鋼板上にクリア塗膜を形成した試験No.10では、表層酸化皮膜の黄味が強く現れ、明度が低く暗く冷たい外観を呈した。研磨目を付けずに光輝焼鈍したステンレス鋼にクリア塗膜を形成した試験No.11では、金属光沢が強く現れ、白色度を表す指標L値が低く、冷たい外観を呈した。
【0033】
これに対し、エポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗料から成膜されたクリア塗膜を形成した試験No.1〜4のクリア塗装ステンレス鋼板では、クリア塗膜によって研磨仕上げ材の冷たい金属光沢が和らげられ、透明度が高く高級感のあるシルバー調のメタリック外観が発現している。かかる外観は、基材/塗膜の界面密着性が優れているので入射光が不規則に反射/屈折することがなく、濁りのないマイルドな反射光が発せられることに由来するものと考えられる。
光沢度は、No.5〜8より高く、研磨目のないNo.11に比較して約50%高い値を示した。不規則な反射/屈折が抑制されていることは、No.5〜9との比較で像鮮明度D/I値が15%以上高くなっていることからも窺われる。また、No.10との比較から明らかなように、研磨時に生成した酸化皮膜に由来する黄色の色調が光輝焼鈍後に消失していた。
【0034】
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上に説明したように、ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目をつけた基材・ステンレス鋼板にエポキシ成分含有ポリエステル系クリア塗料を塗布し透明度の高いクリア塗膜を設けると、明度低下を伴うことなくマイルドな色調を呈し白色度の高いシルバー調を付与できる。シルバー調表面は、冷たい印象を与えがちな金属光沢とは明らかに異なり、環境調和性に優れている。そのため、違和感のない外装材,内装材,表装材等として重宝される。しかも、基材・ステンレス鋼板の表面改質によって耐発銹性も改善されているので、審美性の高いシルバー調表面が長期にわたって維持される。
Claims (2)
- ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目が付けられ、研磨後の光輝焼鈍によってSiが50原子%以上に濃化した酸化皮膜が形成されたステンレス鋼板を基材とし、エポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗膜が基材表面に形成されていることを特徴とするシルバー調クリア塗装ステンレス鋼板。
- ステンレス鋼板にランダムな研磨目又はヘアライン研磨目を付けた後、水素濃度:75体積%以上,露点:−40℃以下の還元雰囲気中800℃以上で焼鈍し、次いでエポキシ成分を含むポリエステル系クリア塗料を塗布・焼成して膜厚:2〜20μmのクリア塗膜を形成することを特徴とするシルバー調クリア塗装ステンレス鋼板の製造方法。
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