JP2006103269A - シルバー調クリア塗装ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

シルバー調クリア塗装ステンレス鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract


【課題】 周辺部材に対する調和性を改善すると共に、審美性の高いシルバー調表面を呈し、さらに、加工性、二次密着性に優れたクリア塗装ステンレス鋼板を得る。
【解決手段】 ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目が付けられ、研磨後の光輝焼鈍によってSiが50原子%以上に濃化した酸化皮膜が形成されたステンレス鋼板を基材とし、ポリエステル樹脂100質量部にビスフェノール型エポキシ樹脂:5〜50質量部を配合した下塗りクリア塗膜が基材表面に形成されていることを特徴とする。
ステンレス鋼板にランダムな研磨目又はヘアライン研磨目を付けた後、水素濃度:75体積%以上、露点:−40℃以下の還元雰囲気中800℃以上で焼鈍(光輝焼鈍)し、次いでポリエステル樹脂100質量部にビスフェノール型エポキシ樹脂:5〜50質量部を配合した塗料を塗布・焼成して膜厚:2〜20μmの下塗りクリア塗膜を基材表面に形成することにより製造される。

Description

本発明は、厨房用機器、家電製品の表装材、内装材、外装材等に適し、環境調和性に優れたシルバー調クリア塗装ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
ステンレス鋼板は、優れた耐光性、意匠性、加工性等を活用し、外装材、内装材、表装材等として広範な分野で使用されている。なかでも、研磨目により独特の表面模様をつけた研磨仕上げ材は、意匠性が重視される部材として重宝されている。
建材用では、線状の研磨目を一定方向に長く付けたヘアライン仕上げやランダムな研磨目を付けたNo.4仕上げ材がビルフロントの建具やモニュメントの表層に使用されている。研磨目を付けた後で光輝焼鈍することによって汚れ除去性が改善されることも報告されている(特許文献1)。
特開平10−259418号公報
ステンレス鋼研磨仕上げ材は、耐発銹性に優れていることから、長期間にわたって美麗な外観を呈する外装材,内装材,表装材等として使用できる。しかし、表面の金属光沢が強く、冷たい印象を与えがちなことから嗜好やニーズによっては敬遠される場合がある。美観を重視したインテリア等では、金属光沢が周辺部材との調和を損ねることにもなりかねない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、金属光沢が醸し出す印象をクリア塗膜で和らげることにより、周辺部材に対する調和性を改善すると共に、審美性の高いシルバー調表面を呈し、さらに、加工性、二次密着性に優れたクリア塗装ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
本発明のシルバー調クリア塗装ステンレス鋼板は、その目的を達成するため、ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目が付けられ、研磨後の光輝焼鈍によってSiが50原子%以上に濃化した酸化皮膜が形成されたステンレス鋼板を基材とし、ポリエステル樹脂100質量部にビスフェノール型エポキシ樹脂:5〜50質量部を配合した下塗りクリア塗膜が基材表面に形成されていることを特徴とする。
ステンレス鋼板にランダムな研磨目又はヘアライン研磨目を付けた後、水素濃度:75体積%以上、露点:−40℃以下の還元雰囲気中800℃以上で焼鈍(光輝焼鈍)し、次いでポリエステル樹脂100質量部にビスフェノール型エポキシ樹脂:5〜50質量部を配合した塗料を塗布・焼成して膜厚:2〜20μmの下塗りクリア塗膜を基材表面に形成することにより製造される。
ステンレス鋼研磨仕上げ材を還元雰囲気中で焼鈍(光輝焼鈍)すると、研磨時に生成した酸化皮膜が還元除去され、基材・ステンレス鋼の新生面にSiリッチの不動態皮膜が生成する。また、還元焼鈍による表面改質であるため、焼鈍後の基材・ステンレス鋼板に研磨目が残る。生成した不動態皮膜は、研磨後の酸化皮膜に比較して級密な構造をもち、Si、Crリッチであることと相侯って優れた環境遮断能を呈し、基材・ステンレス鋼板の腐食を抑制する。
表面改質されたステンレス鋼研磨仕上げ材にクリア塗膜を形成すると、研磨仕上げ材の冷たい金属光沢が和らげられ、明度を損なうことなくマイルドな色調の表面になる。
マイルドな色調は、基材・ステンレス鋼板にランダムな研磨目又はヘアライン研磨目を付けることにより一層強調される。ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目は、金属光沢を抑え、一種の艶消し感を付与する上でも有効である。
ランダムな研磨目とクリア塗膜との組合せによって特異な意匠が付与される理由は、次のように推察される。
外部からの入射光は、透明度の高いクリア塗膜を透過するが、ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目をつけた基材・ステンレス鋼板の表面で拡散反射し、外部に放出される。ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目で反射光が拡散されるため、クリア塗装ステンレス鋼板が本来呈するメタリック感が弱められ、白色度の高いマイルドな色調になる。しかも、反射光全体の光量が入射光とほぼ同じであることから、塗膜形成に起因する明度低下も抑えられる。
透明度の高いクリア塗膜を形成する上では、基材表面に対して優れた密着力を呈するビスフェノール型エポキシ樹脂を配合したポリエステル系クリア塗料が使用される。
水酸基を多く含むビスフェノール型エポキシ樹脂は、基材・ステンレス鋼板の極性基と反応し基材表面にエポキシ成分の濃化層を形成するため、基材表面にある研磨目に起因する凹凸がクリア塗料で十分に充填され、透明度の高いクリア塗膜が形成される。
これに対し、密着力の低いクリア塗料では、基材表面の凹凸が十分には埋められず、基材/クリア塗膜の界面に空隙が生じる場合がある。界面の空隙は、クリア塗膜を透過して基材表面に達する入射光を不規則に反射・屈折させ、塗膜の色調に濁りを発生させる原因になると考えられる。
基材に使用されるステンレス鋼板は、鋼種に関する特段の制約はなくフェライト系、オーステナイト系、二相系等、各種ステンレス鋼を使用できる。
研磨時の摩擦熱で発生するスケール(酸化皮膜)はオーステナイト系の方が強固で除去困難であり、フェライト系の方が研磨仕上げ後の光輝焼鈍が容易で、50原子%以上にSiが濃化した酸化皮膜が安定して形成される。
ステンレス鋼板に研磨目を付ける方法にはバフ研磨を始めとして各種方法を採用可能であるが、コイルフォームのステンレス鋼板に対してはベルト研磨が最も効率のよい方法である。
研磨仕上げ材のメタリック感に表面の凹凸が大きな影響を与える。凹凸形状が小さすぎると正反射光成分が大きすぎてメタリック感が強くなりすぎるが、逆に大きすぎる凹凸形状では個々の溝幅が大きくなるため単位面積当りの光拡散効果が増加して正反射光成分が少なくなり、メタリック感が損なわれる。
メタリック感を支配する表面の凹凸形状を決める最大の要因が研磨材の粗さであり、研磨材の番手で表すことができる。研磨材の番手が大きいと凹凸形状が小さくなり、番手が小さいと凹凸形状が大きくなる。
研磨仕上げ後の表面肌とメタリック感の関係を調査した結果、面粗度(十点平均粗さRz)が1〜10μmの範囲にあるとメタリック感が抑制されることが判った。Rz:1〜10μmは、研磨材の番手が400番以下で得られる。好ましくはRz:5μmの近傍が好ましく、その表面をJIS G4305に規定される表面仕上げで表すとNo.4仕上げになる。
No.4仕上げと同様に研磨機で研磨した後、最終研磨工程で研磨ベルトをステンレス鋼板に押し付け、ステンレス鋼板の進行方向と反対方向にゆっくりとした速度で研磨することにより、髪の毛のように長く連続したRz:1〜10μmの研磨目がステンレス鋼板表面につけられる。
研磨後の表面をJIS G4305に規定される表面仕上げで表すとHL仕上げになり、メタリック感が抑制された表面に改質される。
光輝焼鈍は、研磨時に発生した酸化皮膜を除去し、焼鈍時に発生しがちなテンパーカラーを抑制するため還元性雰囲気で実施される。光輝焼鈍では、酸化皮膜を十分に還元除去するため水素濃度75体積%以上、露点−40℃以下の雰囲気中で研磨後のステンレス鋼板を800℃以上に加熱することが好ましい。
光輝焼鈍は、再結晶化によってステンレス鋼板の加工性を改善する場合、再結晶温度以上に焼鈍温度が設定される。基材温度が低いほど処理コストが低下するが、再結晶温度より低い基材温度では加工性の改善に至らない。Cr系はフェライト域の軟化焼鈍,Cr−Ni系は溶体化焼鈍であることから、好ましくはCr系で850〜1000℃、Cr−Ni系で1000〜1100℃の温度域に焼鈍温度を設定する。
光輝焼鈍によってステンレス鋼板の表面に形成される皮膜は、研磨時に生成した酸化皮膜に比較して、Fe濃度が60〜75原子%から20〜30原子%に低下し、Si濃度が20〜35原子%から50〜70原子%に上昇している。なお、皮膜中の金属元素濃度は、X線光電子分光分析(XPS)装置で分析し、検出した金属元素のみを抽出することにより原子濃度比で表される。光輝焼鈍されたステンレス鋼板は、研磨時に生成した酸化皮膜の色調(黄味)がなくなり、JIS Z8729で規定される色の表示方法に準拠したb値が5.8から0.3まで減少し、Siの酸化物を主体とする白色系の繊密な皮膜が表面に形成されている。
研磨,光輝焼鈍を経たステンレス鋼板は、クリア塗膜形成後に種々の形態に加工されることから、脱脂、リン酸塩処理、クロメート処理、Crフリー処理等の塗装前処理によって塗膜密着性を改善することが好ましい。具体的には、アルカリ脱脂、酸洗等でステンレス鋼板の表面を清浄化した後、必要に応じてリン酸塩処理で表面の濡れ性を高め、クロメート処理、Crフリー処理で塗膜密着性,耐食性を向上させる。
リン酸塩処理を施す際の処理剤には、たとえば塗装前処理に使用されるリン酸亜鉛系処理剤がある。
クロメート処理では、Cr換算付着量:5〜40mg/mのクロメート皮膜が形成される。Cr換算付着量5mg/m未満では塗膜密着性、耐食性の向上が十分でなく、逆に40mg/mを超える付着量では六価Crの黄色に着色したクロメート皮膜の色調が透明なクリア塗膜を透かして観察され、外観が損なわれる。
クロメート処理には、全Cr量で40mg/mのクロメート皮膜を形成しても着色の少ないリン酸−クロム酸系の処理液が好ましく、なかでもシリカを配合した処理液(特開平5−106057号公報)が好ましい。
Crフリー処理には、シリカ系,ジルコニア系,チタン系,フルオロアシッド系等がある。ロールコータ,カーテンフローコータ,浸漬法等でステンレス鋼板に処理液を塗布し、ローラ等で絞った後、水洗することなく80〜200℃で乾燥することによりステンレス鋼板がクロメート処理される。
クリア塗料には、基材表面に対して優れた密着力を呈するビスフェノール型エポキシ樹脂を配合したポリエステル系クリア塗料が使用される。一般に透明度の高いクリア塗膜を形成する上では、伸び、密着性の良好なエポキシ変性ポリエステル樹脂をベースとした下塗り塗膜を形成する場合が多い。しかし、吸水性が比較的高いエポキシ成分が塗膜中に満遍なく存在するため、塗膜に進入した水分がエポキシ成分と反応しやすくなり、その結果、耐湿性が低下し、塗膜白化等の欠陥を生じることがある。
エポキシ変性ポリエステル樹脂に替えてノボラック型エポキシ樹脂をベース塗料にした塗料組成物(特開2000−7984号公報)も提案されているが、加工性、塗膜密着性が不十分である。特に、塗布型クロメートに比較して塗膜密着性に劣るタンニン酸処理、リン酸塩処理、シリカ、チタン、ジルコニウム等の金属酸化物を始めとするクロムを含まない塗装前処理を施した場合に、塗膜の密着不良が顕在化する。
ビスフェノール型又はノボラック型エポキシ樹脂をポリエステル樹脂と配合した塗料組成物から成膜された塗膜では、エポキシ樹脂が基材・金属板の表面に配向し、基材・金属板/塗膜の界面にエポキシ成分が濃化されることがエポキシ変性ポリエステル樹脂塗膜と異なる。界面に濃化したエポキシ成分は、基材・金属板に対して強い結合力を発現し塗膜密着性、耐水蒸気性、耐洗剤性、耐スクラッチ性等を向上させる。
エポキシ変性エポキシ樹脂であっても、基材・金属板に対するエポキシ成分の結合力はビスフェノール型、ノボラック型で異なる。結合力の相違は、分子構造に由来するものと推察される。すなわち、大半のエポキシ樹脂が開環しているビスフェノール型では樹脂骨格中に水酸基が豊富に含まれるのに対し、エポキシ樹脂がほとんど開環していないノボラック型では骨格に含まれる水酸基が極僅かでありエポキシ樹脂が残ったままである。残存するエポキシ樹脂は、極性を有するものの水酸基ほど強くない。
他方、塗装前処理された基材・ステンレス鋼板の表面には、塗膜密着性の向上に有効な水酸基を始めとする多量の極性基が存在する。したがって、水酸基を多く含むビスフェノール型エポキシ樹脂は、塗料が塗布・焼付けされる過程で極性の高い基材・ステンレス鋼板の表面に吸着されやすく、基材表面側にエポキシ成分の濃化層を形成する。
濃化したエポキシ成分は、焼付け時の熱で強固に基材表面に吸着され、或いは脱水縮合することにより強い密着性を呈する。
他方、ノボラック型エポキシ樹脂の基材表面に対する吸着力は弱く、濃化層の形成も緩やかであるため、ビスフェノール型ほど高い密着力を発現しない。また、単に加熱しただけでは所定の化学結合が生じないと考えられる。しかも、ビスフェノール型は、ほぼ直線状の樹脂骨格をもっており、塗料組成物中での自由度が高く、塗料を基材・ステンレス鋼板の表面に塗布した後で基材表面に移行しやすいことも密着性向上の一因と考えられる。
この点、ノボラック型エポキシ樹脂は、ビスフェノール型に比較して側鎖が多く、側鎖が抵抗(立体障害)となって塗料組成物中におけるエポキシ樹脂の自由な移動が妨げられ、基材表面にエポキシ樹脂が濃化しがたい。ビスフェノール型エポキシ樹脂では、基材表面側にエポキシ樹脂が濃化する傾向が強いためバルク中のエポキシ成分量を低位に抑えることができる。低いエポキシ成分量は、耐湿性の低下を防止する上でも有利である。これに対し、ノボラック型エポキシ樹脂では、ビスフェノール型に比較して密着性が低いことからエポキシ成分を多量添加して密着性を確保する必要があり、結果として耐湿性の低下を招く。さらに、密着力に優れたエポキシ成分が基材表面の極性基と反応するため、基材表面にある研磨目に起因する凹凸がクリア塗料で十分に充填され、透明度の高いクリア塗膜が形成される。
これに対し、密着力の低いクリア塗料では、基材表面の凹凸が十分には埋められず、基材/クリア塗膜の界面に空隙が生じる場合がある。界面の空隙は、クリア塗膜を透過して基材表面に達する入射光を不規則に反射・屈折させ、塗膜の色調に濁りを発生させるばかりでなく、塗膜密着性、耐水蒸気性、耐洗剤性、耐スクラッチ性低下の原因になる。
下塗りクリア塗料は、メインの樹脂であるポリエステル樹脂にも耐湿性が要求されることから、好ましくはガラス転位温度Tg:10℃以上,数平均分子量:3000〜25000のポリエステル樹脂が使用される。硬化剤には、メラミン,イソシアネート等がある。ポリエステル樹脂:100質量部に対し5〜50質量部の割合でビスフェノール型エポキシ樹脂を配合することにより下塗り塗膜形成用の塗料組成物を調製する。
塗料組成物におけるエポキシ成分の移動自由度を確保する上で、好ましくは数平均分子量6000以下のビスフェノール型エポキシ樹脂が使用される。ビスフェノール型エポキシ樹脂の配合割合が5質量部に満たないとエポキシ成分による密着性向上効果が不十分であり、逆に50質量部を超える配合割合では耐湿性が低下しやすくなる。
ビスフェノール型エポキシ成分を含むポリエステル系下塗りクリア塗料は、プレコート鋼板の製造に通常使用されているロールコート、フローコート、カーテンフロー、スプレー等の方法で乾燥塗膜が2〜20μmとなる塗布量で基材・ステンレス鋼板に塗布され、到達板温180〜250℃×0.5〜2分で焼き付けられる。
180℃未満の焼付け温度では硬化が不十分となり、250℃を超える高温焼付けでは塗膜が劣化しやすくなる。また、乾燥膜厚2μm未満ではクリア塗膜にピンホール等の欠陥が発生しやすく、塗膜密着性、耐水蒸気性、耐洗剤性、耐薬品性、耐食品汚染性等が不足する。逆に20μmを超える厚膜のクリア塗膜を形成すると、塗膜表面が柚子肌状になり外観が劣化する。
ビスフェノール型エポキシ成分を含むポリエステル系下塗りクリア塗料の焼成で形成された下塗り塗膜は、エポキシ成分が下層(基材表面側)に濃化しているため基材・金属板に対する密着性に優れている。
基材/下塗り塗膜の界面に濃化したエポキシ成分は、濃化層が比較的薄いことから加工性を低下させることなく、上塗り塗膜への悪影響もない。下塗り塗膜の上に形成される上塗り塗膜は、樹脂種に制約が加わることなく、膜厚5〜20μmで成膜され、必要に応じて、耐疵付き性,耐薬品性,耐食品汚染性等の機能を付与できる。
ビスフェノール型エポキシ成分を含むポリエステル系下塗りクリア塗料から成膜された下塗り塗膜を設けているので、塗膜密着性,耐食性,耐湿性,耐スクラッチ性に優れ、製品形状への加工が予定されるプレコートステンレス鋼板として広範な分野で使用される。
板厚0.5mm、板幅1000mmのコイル状SUS430ステンレス鋼板を原板に使用した。コンタクトホイール方式のベルト研磨(No.4)によりステンレス鋼板の表面にランダムな研磨目をつけた。研磨条件は、研磨番手:160番、ラインスピード:10m/分、ベルトスピード:1000m/分を採用した。
研磨されたステンレス鋼板は、表面粗さがRz:5μmであった。研磨後のステンレス鋼板を焼鈍炉に通板し、露点:−58℃、基材温度:870℃の条件下で光輝焼鈍した。光輝焼鈍されたステンレス鋼板を観察したところ、テンパーカラーのない表面をもち、光輝焼鈍前に見られた黄色系の酸化スケールが除去されていた。また、鋼板表面のb値が研磨時:5.3から焼鈍後:0.3に低下しており、白色系の級密な皮膜が鋼板表面に形成されていた。
焼鈍後のステンレス鋼板にアルカリ脱脂、水洗、Ni置換析出型表面調整、水洗、乾燥の工程を経て塗布型クロメート処理を施し、100℃で乾燥した。塗布型クロメート処理では、Cr換算付着量20mg/mのクロメート皮膜を形成した。
クロメート処理されたステンレス鋼板の表面に、数平均分子量:15000、ガラス転移温度Tg:65℃のポリエステル樹脂にエポキシ樹脂を配合して下塗りクリア塗料を調整した(表1)。なお、硬化剤にはイソシアネートを使用した。
塗装前処理したステンレス原板に下塗りクリア塗料をバーコータで塗布し、215℃×50秒の焼き付けにより乾燥膜厚5μmの下塗り塗膜を形成した。次いで、高分子ポリエステル樹脂塗料を塗布し、230℃×50秒の焼き付けにより乾燥膜厚10μmの上塗り塗膜を形成した。
Figure 2006103269
得られた各クリア塗装ステンレス鋼板から試験片を切り出し、塗膜密着試験,耐水蒸気試験,耐洗剤性試験,耐スクラッチ性試験に供した。
塗膜密着試験では、試験片を沸騰水に24時間浸漬した後、沸騰水から引き上げて24時間放置した。次いで、試験片を0T曲げ加工し、加工部に感圧接着テープを貼り付けて引き剥がした後、加工部に残存する塗膜を観察した。塗膜剥離が検出されなかった試験片を○,塗膜が部分的に剥離した試験片を△,塗膜が全面剥離した試験片を×として塗膜密着性を評価した。
耐水蒸気試験では、水蒸気発生面から10cm離れた位置に試験片をセットし、水蒸気に100時間暴露した後、試験片を室内に24時間放置した。次いで、塗膜密着性試験と同様に、平坦部に感圧接着テープを貼り付けて引き剥がした後、平坦部に残存する塗膜を観察した。塗膜剥離が検出されなかった試験片を○,塗膜が部分的に剥離した試験片を△,塗膜が全面剥離した試験片を×として耐水蒸気性を評価した。
耐洗剤性試験では、油汚れ用洗剤(マジックリン:花王株式会社製)に試験片を40℃×100時間浸漬後水洗し、試験片を室内に24時間放置した。次いで、塗膜密着性試験と同様に、平坦部に感圧接着テープを貼り付けて引き剥がした後、平坦部に残存する塗膜を観察した。塗膜剥離が検出されなかった試験片を○,塗膜が部分的に剥離した試験片を△,塗膜が全面剥離した試験片を×として耐洗剤性を評価した。
スクラッチ試験では、試験片の塗膜面に10円硬貨を45度の角度で押し当てて2kgの荷重を加え、塗膜面を硬貨で引っ掻いた後、スクラッチ疵をつけた塗膜の外観を評価した。塗膜面が残った試験片を○,基材・ステンレス鋼板が露出した試験片を×として耐スクラッチ性を評価した。
Figure 2006103269
表2の調査結果にみられるように、ビスフェノール型エポキシ樹脂を配合したポリエステル系クリア塗料から下塗り塗膜を成膜したクリア塗装ステンレス鋼板では、塗膜密着性、耐水蒸気性、耐洗剤、耐スクラッチ性の何れにおいても優れた特性を示した。エポキシ成分の効果は、エポキシ成分が未配合(試験番号6)、少なすぎる塗膜(試験番号7)で塗膜密着性が劣り、多すぎる塗膜(試験番号8)で耐湿性に劣ることから判るように、5〜50質量部の適性範囲で得られていた。
他方、ノボラック型エポキシ樹脂を配合したポリエステル系クリア塗料から下塗り塗膜を成膜したクリア塗装ステンレス鋼板(試験番号9〜11)では、塗膜密着性,耐水蒸気性,耐洗剤,耐スクラッチ性の少なくとも一つ又は複数の点で本発明のクリア塗装ステンレス鋼板より劣っていた。この対比結果は、ノボラック型との比較でビスフェノール型エポキシ樹脂との優位を示している。
以上に説明したように、ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目をつけた基材・ステンレス鋼板にビスフェノール型エポキシ樹脂を配合したポリエステル系クリア塗料を塗布し透明度の高い下塗りクリア塗膜を設けると、塗膜密着性に優れた白色度の高いシルバー調外観を付与できる。
シルバー調表面は、冷たい印象を与えがちな金属光沢とは明らかに異なり、環境調和性に優れている。そのため、違和感のない外装材,内装材,表装材等として重宝される。しかも、基材・ステンレス鋼板の表面改質によって耐発錺性も改善されているので、審美性の高いシルバー調表面が長期にわたって維持される。

Claims (2)

  1. ランダムな研磨目又はヘアライン研磨目が付けられ、研磨後の光輝焼鈍によってSiが50%原子以上に濃化した酸化皮膜が形成されたステンレス鋼板を基材とし、ポリエステル樹脂100質量部にビスフェノール型エポキシ樹脂:5〜50質量部を配合した下塗りクリア塗膜が基材表面に形成されていることを特徴とするシルバー調クリア塗装ステンレス鋼板。
  2. ステンレス鋼板にランダムな研磨目又はヘアライン研磨目を付けた後、水素濃度:75体積%以上、露点:−40℃以下の還元雰囲気中800℃以上で焼鈍し、次いでポリエステル樹脂100質量部にビスフェノール型エポキシ樹脂:5〜50質量部を配合した塗料を塗布・焼成して膜厚:2〜20μmの下塗りクリア塗膜が基材表面に形成されていることを特徴とするシルバー調クリア塗装ステンレス鋼板の製造方法。






















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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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