JP3960777B2 - 水性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水性樹脂組成物に関し、詳しくは、優れた塗膜形成性を有し、物性に優れた塗膜を与えることのできる水性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、合成樹脂系の塗料、接着剤等は、合成樹脂を各種の低沸点溶媒に溶解した溶剤タイプのものが塗料安定性、速乾性に優れ、一般的であったが、火災や爆発等の危険性、人体への有害性、地球環境への悪影響等の問題から、低沸点溶媒の使用が制限されるようになり、近年、合成樹脂を各種変性して水溶性又は乳化性を付与したり、乳化剤を使用して水中に分散させた水性合成樹脂塗料あるいは接着剤等が開発され実用化されている。
【0003】
一方、溶剤性エポキシ樹脂被覆用組成物は種々の塗料に応用できる優れた性質を有するものであり、これまでにエポキシ樹脂から誘導される水性樹脂組成物の開発検討が行われている。
【0004】
ところが、これらのエポキシ樹脂に由来する水性樹脂組成物では、未だ耐水性、耐溶剤性、耐食性等の諸性能が満足できるものが得られていない。
【0005】
一方、エポキシ樹脂に各種の変性を施すことが試みられており、例えば、特開昭48−25099号公報には、アセト酢酸エステル基によって変性されたエポキシ樹脂が提案されている。また、特開2000−345022号公報には、アセト酢酸エステル化合物及び分子量50〜500のポリアミン系硬化剤からなる水性樹脂組成物が提案されている。
【0006】
また、特開平4−351628号公報には、ポリアルキレンポリエーテルポリオール化合物、ラクトン類及びポリエポキシ化合物をルイス酸を触媒として反応させて得られるエポキシ基含有化合物とポリアミン類とから得られる自己乳化型活性有機アミン硬化剤を使用してなる水性エポキシ樹脂組成物が提案されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法によっても耐食性等の硬化物物性を満足しながら、しかも常温で塗膜形成が可能な水性樹脂組成物は得られていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、耐食性を始めとして耐水性、耐溶剤性等の硬化物物性に優れ、しかも常温で塗膜形成が可能な水性樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定のアセト酢酸エステル化合物と特定の硬化剤とを組み合わせてなる水性樹脂組成物が、耐食性等の硬化物物性に優れた塗膜あるいは成形品を常温で形成し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、(A)下記式(I)で表される基を有する化合物、及び(B)(1)ポリアルキレンポリエーテル構造を有するエポキシ基含有化合物と(2)ポリアミン化合物とを反応させて得られる自己乳化型アミン系硬化剤を含有してなり、上記(A)成分が下記〔化4〕の一般式( II )で表される化合物である水性樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
【化3】
Figure 0003960777
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の水性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0013】
本発明の水性樹脂組成物に使用される(A)上記式(I)で表される基を有する化合物(アセト酢酸エステル化合物)としては、下記一般式(II)で表される化合物を用いる
【0014】
【化4】
Figure 0003960777
【0015】
上記一般式(II)中、Aで表わされる炭素原子数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン等の直鎖又は分岐の基が挙げられる。Bで表される炭素原子数1〜20のアルキレン基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル等の基が挙げられ、これらは直鎖でも分岐でもよく、さらに不飽和結合を有することもできる。Bで表される炭素原子数1〜10のアルカントリイル基としては、メタントリイル、エタントリイル、プロパントリイル、ブタントリイル、ヘプタントリイル、ヘキサントリイル、ヘプタントリイル、オクタントリイル等の基が挙げられ、これらは直鎖でも分岐でもよい。B1及びB2で表される炭素原子数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン等の直鎖又は分岐の基が挙げられる。R1、R2及びR3で表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の基が挙げられる。
【0016】
上記一般式(II)で表される化合物のうち、特に好ましい化合物としては、上記一般式(II)のX1及びX2が直接結合であり、rが0であり、且つ、m及びqを合わせた数が2以上である化合物;上記一般式(II)のX1が上記式(a−2)で表される基、且つ、X2が上記式(b−2)で表される基である化合物;上記一般式(II)のX1が上記式(a−3)で表される基、且つ、X2が上記式(b−3)で表される基である化合物等が挙げられる。
【0017】
本発明に使用される上記一般式(I)で表される基を有する化合物をその製造方法から分類すると、例えば、(a)ビスフェノール化合物のポリグリシジルエーテルのグリシジル基にアセト酢酸を直接付加して得られる化合物、(b)ビスフェノール化合物のポリグリシジルエーテルのグリシジル基にアルコール性水酸基含有カルボン酸、アルコール性水酸基含有アミンを付加して得られるポリヒドロキシ化合物のヒドロキシ基にアセト酢酸エステル基を導入する方法により得られる化合物、(c)ビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物のヒドロキシル基にアセト酢酸エステル基を導入する方法により得られる化合物等が挙げられる。
【0018】
ここで上記ビスフェノール化合物としては、メチリデンビスフェノール(ビスフェノールF)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、ブチリデンビスフェノール等が挙げられる。
【0019】
上記(a)の化合物において、ビスフェノール化合物のポリグリシジルエーテルのグリシジル基にアセト酢酸を直接付加する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムブロミドの如きエステル化触媒を用いて100〜200℃で数時間反応させることによって容易に実施することができる。
【0020】
上記(b)の化合物において、アルコール性水酸基含有カルボン酸としては、例えば、乳酸、ひまし油脂肪酸等のモノヒドロキシカルボン酸;ジメチロールプロピオン酸、ジエチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸等のジヒドロキシカルボン酸等が挙げられ、アルコール性水酸基含有アミンとしては、例えば、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン等のモノアルカノールアミン;ジメタノールアミン、ジエタノールアミン等のジアルカノールアミン等が挙げられる。
【0021】
ここでビスフェノール化合物のポリグリシジルエーテルにモノ又はジヒドロキシカルボン酸、あるいはモノ又はジアルカノールアミンを付加する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、溶媒中、無触媒で100℃以上に加熱することで容易に付加することができる。
【0022】
上記(b)及び(c)の化合物において、ポリヒドロキシ化合物にアセト酢酸エステル基を導入する方法としては、例えば、アセト酢酸の低級エステルを用いたエステル交換法により製造する方法、ジケテンを反応させる方法等によって容易に製造することができる。
【0023】
ここで使用されるアセト酢酸低級エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸第三ブチル等が挙げられる。
【0024】
本発明の水性樹脂組成物の好ましい実施形態においては、上記式(I)で表される基を有する化合物〔(A)成分〕はエマルジョンとして用いられる。上記エマルジョンの形成においては、(A)成分100重量部に対し、水10〜500重量部が使用される。
【0025】
また、(A)成分を水に分散させる際には、必要に応じて、乳化剤及び有機溶剤を使用することができる。
【0026】
ここで使用することのできる乳化剤としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、液体脂肪油の硫酸エステル塩、脂肪族アミン及び脂肪族アマイドの硫酸塩、脂肪族アルコールのリン酸エステル、二塩基性酸性脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸、ホルマリン縮合ナフタリン酸塩等のアニオン系界面活性剤;第一アミン塩、第二アミン塩、第三アミン塩、第四級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体、エチレンオキサイドの脂肪酸アミン、アミド又は酸との縮合生成物等のノニオン系界面活性剤;ベタイン型、硫酸エステル型、スルホン酸型等の両性界面活性剤;高分子界面活性剤;分子中にエポキシ基を有する反応性界面活性剤等が挙げられる。反応性界面活性剤を用いることで硬化物の物性等に悪影響がないため好ましい。反応性界面活性剤としては、例えばアルキレンフェノールポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール等のエーテルアルコールと遊離の水酸基を有するポリエポキシ化合物をポリイソシアネートで架橋して得られるもの等が挙げられる。
【0027】
これら乳化剤の使用量は、上記式(I)で表される基を有する化合物に対して、好ましくは0.1〜20重量%である。該使用量が0.1重量%未満の場合には乳化安定性が不十分であり、また、20重量%を超えると、得られる水系樹脂組成物から形成される皮膜の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0028】
ここで上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;イソ−又はn−ブタノール、イソ−又はn−プロパノール、アミルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いることも、また任意に2種以上の混合溶剤として用いることも可能である。
【0029】
これらの有機溶媒は、エマルジョンの形成に用いた水100重量部に対し、0〜100重量部の範囲で適宜使用される。
【0030】
本発明の水性樹脂組成物は、上記(A)成分とエポキシエマルジョンとを混合して主剤成分とする。該エポキシエマルジョンとしては、通常のエポキシ樹脂を乳化剤を用いて強制乳化して得られるもの、あるいは分子中に水溶性基を持った自己乳化型のものであってもよい。
【0031】
本発明の水性樹脂組成物に使用される硬化剤成分としての(B)自己乳化型アミン系硬化剤は、(1)ポリアルキレンポリエーテル構造を有するエポキシ基含有化合物と(2)ポリアミン化合物とを反応させて得られる。
【0032】
ここで上記(1)ポリアルキレンポリエーテル構造を有するエポキシ基含有化合物としては、▲1▼平均分子量200〜4500のポリアルキレンポリエーテルポリオール化合物と、▲2▼ポリエポキシ化合物と、▲3▼ラクトン類とを反応させて得られるエポキシ基含有化合物が好ましい。
【0033】
ここで上記▲1▼平均分子量200〜4500のポリアルキレンポリエーテルポリオール化合物としては、下記一般式(III)で表される化合物である。
【0034】
【化5】
Figure 0003960777
【0035】
上記一般式(III)中、R1を提供する多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブチレングリコール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ヘプタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、エリトリット、ペンタエリトリット、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,3,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、アドニット、アラビット、キシリット、ソルビット、マンニット、イジット等が挙げられる。
【0036】
これらの多価アルコールの中でも特に好ましいのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンである。
【0037】
上記一般式(III)で表される化合物は、かかる多価アルコールに、常法により、好ましくは炭素数2〜4個のアルキレンオキサイドを、所望の分子量となるように付加せしめることによって製造することができる。
【0038】
ここで、炭素数2〜4個のアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらのアルキレンオキサイドの中でも特に好ましいのは、エチレンオキサイドである。
【0039】
上記▲2▼ポリエポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールFノボラック、テルペンジフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;上記単核多価フェノール化合物あるいは多核多価フェノール化合物にエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテル化合物;上記単核多価フェノール化合物の水添物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物、ジシクロペンタジエンジメタノール等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0040】
これらポリグリシジルエーテル化合物の中でも、芳香族ポリグリシジルエーテル化合物を使用することによって、より硬化物物性に優れたものが得られるため好ましい。
【0041】
上記▲3▼ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0042】
ここで、▲1▼ポリアルキレンポリエーテルポリオール化合物、▲2▼ポリエポキシ化合物及び▲3▼ラクトン類の好ましい反応比は、▲1▼ポリアルキレンポリエーテルポリオール化合物1.0モルに対して、▲2▼ポリエポキシ化合物1.2〜10モル、▲3▼ラクトン類0.1〜5モルである。
【0043】
上記(2)ポリアミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン化合物;1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−3,6−ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メチレンビス(p−アミノシクロヘキサン)等の脂環式ポリアミン化合物;メタキシレンジアミン等の芳香脂肪族ポリアミン化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン化合物等が挙げられる。
【0044】
また、これらポリアミン化合物の変性品(変性ポリアミン)も使用することができ、これらポリアミン化合物とポリエポキシ化合物から得られるエポキシアダクト変性品、これらポリアミン化合物とカルボン酸化合物から得られるアミド変性品、これらポリアミン化合物、フェノール類及びホルムアルデヒドより得られるマンニッヒ変性品等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、脂環式ポリアミン化合物、とりわけイソホロンジアミン、メチレンビス(p−アミノシクロヘキサン)、芳香脂肪族ポリアミン化合物、とりわけメタキシレンジアミン、あるいは芳香脂肪族ポリアミン化合物、フェノール類及びホルムアルデヒドより得られるマンニッヒ変性品が好適に使用される。
【0046】
本発明の水性樹脂組成物に使用される(B)自己乳化型アミン系硬化剤を製造する方法は、特に制限されるものではないが、溶媒中あるいは無溶媒で、(1)エポキシ基含有化合物及び(2)ポリアミン化合物を反応させて得られるものであり、反応温度は40〜150℃、好ましくは60〜110℃、反応時間は1〜10時間、好ましくは3〜5時間程度で行う。
【0047】
反応比率は、(1)エポキシ基含有化合物のエポキシ基と(2)ポリアミン化合物のアミノ基の当量比が、アミノ基過剰、好ましくはエポキシ基1.0当量に対してアミノ基1.8〜5.0当量である。
【0048】
また、(B)自己乳化型アミン系硬化剤は、(1)エポキシ基含有化合物及び(2)ポリアミン化合物ともに、さらに(3)エポキシ化合物(例えば、上記▲2▼で例示されたもの)を反応させる方法によっても製造し得る。反応温度は40〜150℃、好ましくは60〜110℃、反応時間は1〜10時間、好ましくは3〜5時間程度で行う。
【0049】
反応比率は、(1)/(3)が重量比で、1/10〜10/1、好ましくは1/5〜5/1の範囲とし、(1)及び(3)のエポキシ基と(2)のアミノ基の当量比は、アミノ基過剰、好ましくはエポキシ基1.0当量に対してアミノ基1.8〜5.0である。
【0050】
これら(B)自己乳化型アミン系硬化剤は、予め水と混合しておくこともでき、この場合の水の使用量は(B)自己乳化型アミン系硬化剤100重量部に対し、10〜100重量部である。
【0051】
これら(B)自己乳化型アミン系硬化剤は、キシレン樹脂、テルペン樹脂、ベンジルアルコール、フェニルキシリルエタン等の芳香族系の希釈剤を併用することもできる。
【0052】
また、これら(B)自己乳化型アミン系硬化剤は、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、テルペンフェノール、カルダノール等の保存安定剤を併用することもできる。
【0053】
本発明の水性樹脂組成物において、(B)自己乳化型硬化剤の使用量は、その活性水素当量が、主剤成分における上記式(1)で表される基を有する化合物〔(A)成分〕のアセト酢酸エチルエステル当量とエポキシ当量との総量と等しくなるように使用され、場合によって多少上下してもよい。
【0054】
また、上記(A)成分を含む主剤成分と上記(B)自己乳化型硬化剤を用いる硬化剤成分とからなる本発明の水性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化触媒;モノグリシジルエーテル類、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の反応性又は非反応性の希釈剤(可塑剤);ガラス繊維、炭素繊維、セルロース、ケイ砂、セメント、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、ベントナイト、タルク、シリカ、微粉末シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、瀝青物質等の充填剤もしくは顔料;増粘剤;チキソトロピック剤;難燃剤;消泡剤;防錆剤;コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の常用の添加物を含有してもよく、さらに、キシレン樹脂、石油樹脂等の粘着性の樹脂類を併用することもできる。
【0055】
本発明の水性樹脂組成物は、例えば、コンクリート、セメントモルタル、各種金属、皮革、ガラス、ゴム、プラスチック、木、布、紙等に対する塗料あるいは接着剤;包装用粘着テープ、粘着ラベル、冷凍食品ラベル、リムーバルラベル、POSラベル、粘着壁紙、粘着床材の粘着剤;アート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、塗工板紙、カーボンレス複写機、含浸紙等の加工紙;天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の収束剤、ほつれ防止剤、加工剤等の繊維処理剤;シーリング材、セメント混和剤、防水材等の建築材料等の広範な用途に使用することができる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明の水性樹脂組成物を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、参考製造例1は反応性乳化剤の製造例を示し、製造例1〜5は(A)成分を含有するエポキシエマルジョンの製造例を示し、比較製造例1は(A)成分を含有しないエポキシエマルジョンの製造例を示す。また、参考製造例2〜4は(1)エポキシ基含有化合物の製造例を示す。また、製造例6〜13は(B)自己乳化型アミン系硬化剤の製造例を示す。
【0057】
〔参考製造例1〕
(反応性乳化剤の製造例)
アデカノールNP−1000(旭電化工業(株)製;ノニルフェノールEO付加物分子量は約2000)37g、エポキシ当量250のビスフェノールA型エポキシ樹脂151g、エポキシ当量190のビスフェノールA型エポキシ樹脂32g及び分子量6000のポリエチレングリコール264gを仕込んだ後、120℃で減圧脱気を2時間行い、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート156gを添加し、均一になったところで、ディスモジュールWS(住化バイエルウレタン(株)製;水添MDI)25gを添加し、120℃で1時間反応させた。さらにアデカスタブBT−11(旭電化工業(株)製;ジブチル錫ラウレート)5gを添加して、125℃で2時間反応させた。IRでNCOの吸収(2200〜2400cm-1)が消滅したことを確認した。
反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテル235gを添加して、エポキシ当量1320、固形分50質量%の反応性乳化剤(E−1)を得た。
【0058】
〔製造例1〕
(エポキシエマルジョンEM−1の製造例)
アデカレジンEP−4100(旭電化工業(株)製;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)380重量部及びジメチロールプロピオン酸268重量部を混合して130℃まで加熱して、酸価が1以下となるまで反応させた。そこへアセト酢酸エチル624重量部を添加後、常圧にて揮発成分を溜去した後、さらに減圧下にて揮発成分を溜去した。残さ物をフェニルキシリルエタン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル〔重量比2/1〕で固形分90重量%となるように希釈した。これにより、アセトアセテート含有率33重量%、カルボニル基当量257の黄褐色液状樹脂を製造した。
【0059】
ここで得られた黄褐色液状樹脂200重量部と反応性乳化剤(E−1)50重量部とを40℃以下で三軸ミキサーを用いて30分攪拌後、水306重量部を徐々に加えて、さらにアデカレジンEM−101−50(旭電化工業(株)製;エポキシエマルジョン)400重量部を加えて攪拌し、固形分45重量%、官能基当量484の乳白色のエマルジョン(EM−1)を得た。
【0060】
〔製造例2〕
(エポキシエマルジョンEM−2の製造例)
エピコート#1002(油化シェルエポキシ(株)製;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量650)1300重量部及びジメチロールプロピオン酸268重量部を混合して130℃まで加熱して、酸価が1以下となるまで反応させた。そこへアセト酢酸エチル624重量部を添加後、常圧にて揮発成分を溜去した後、さらに減圧下にて揮発成分を溜去した。残さ物をフェニルキシリルエタン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル〔重量比2/1〕で固形分90重量%となるように希釈した。これにより、アセトアセテート含有率16重量%、カルボニル基当量530の黄褐色液状樹脂を製造した。
【0061】
ここで得られた黄褐色液状樹脂200重量部と反応性乳化剤(E−1)50重量部とを40℃以下で三軸ミキサーを用いて30分攪拌後、水306重量部を徐々に加えて、さらにアデカレジンEM−101−50 400重量部を加えて攪拌し、固形分45重量%、官能基当量800の乳白色のエマルジョン(EM−2)を得た。
【0062】
〔製造例3〕
(エポキシエマルジョンEM−3の製造例)
ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物404重量部にアセト酢酸エチル312重量部を添加後、120℃に昇温し、常圧にて揮発成分を溜去した後、さらに減圧下にて揮発成分を溜去した。残さ物をフェニルキシリルエタン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル〔重量比2/1〕で固形分90重量%となるように希釈した。これにより、アセトアセテート含有率26重量%、カルボニル基当量320の黄褐色液状樹脂を製造した。
【0063】
ここで得られた黄褐色液状樹脂200重量部と反応性乳化剤(E−1)50重量部とを40℃以下で三軸ミキサーを用いて30分攪拌後、水306重量部を徐々に加えて、さらにアデカレジンEM−101−50 400重量部を加えて攪拌し、固形分45重量%、官能基当量567の乳白色のエマルジョン(EM−3)を得た。
【0064】
〔製造例4〕
(エポキシエマルジョンEM−4の製造例)
アデカレジンEP−4100 380重量部にアセト酢酸204重量部を添加後、120℃まで昇温し、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.1重量部を添加し、120〜130℃で2時間反応させ、酸価が5以下になることを確認した。残さ物をフェニルキシリルエタン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル〔重量比2/1〕で固形分90重量%となるように希釈した。これにより、アセトアセテート含有率27重量%、カルボニル基当量310の黄褐色液状樹脂を製造した。
【0065】
ここで得られた黄褐色液状樹脂200重量部と反応性乳化剤(E−1)50重量部とを40℃以下で三軸ミキサーを用いて30分攪拌後、水306重量部を徐々に加えて、さらにアデカレジンEM−101−50 400重量部を加えて攪拌し、固形分45重量%、官能基当量554の乳白色のエマルジョン(EM−4)を得た。
【0066】
〔製造例5〕
(エポキシエマルジョンEM−5の製造例)
エピコート#1002 1300重量部を100℃で溶解し、ここにジエタノールアミン210重量部を混合して100℃で2時間反応し、エポキシ当量が無限大になっていることを確認した。そこへアセト酢酸エチル624重量部を添加後、常圧にて揮発成分を溜去した後、さらに減圧下にて揮発成分を溜去した。残さ物をフェニルキシリルエタン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル〔重量比2/1〕で固形分90重量%となるように希釈した。これにより、アセトアセテート含有率16重量%、カルボニル基当量510の黄褐色液状樹脂を製造した。
【0067】
ここで得られた黄褐色液状樹脂200重量部と反応性乳化剤(E−1)50重量部とを40℃以下で三軸ミキサーを用いて30分攪拌後、水306重量部を徐々に加えて、さらにアデカレジンEM−101−50 400重量部を加えて攪拌し、固形分45重量%、官能基当量784の乳白色のエマルジョン(EM−5)を得た。
【0068】
〔比較製造例1〕
(エポキシエマルジョンEM−Xの製造例)
エピコート#1002 140重量部、反応性乳化剤(E−1)50重量部、フェニルキシリルエタン40重量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル20重量部とを40℃以下で三軸ミキサーを用いて30分攪拌後、水261重量部を徐々に加えて、固形分45重量%、官能基当量2035の乳白色のエマルジョン(EM−X)を得た。
【0069】
〔参考製造例2〕
((1)エポキシ基含有化合物MF1の製造例)
温度計、撹拌機、冷却管を備えたガラス製三口フラスコに、分子量2000のポリエチレングリコール2000gとε−カプロラクトン228gとを加え、80℃、2時間反応させた後、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯塩(橋本化成工業(株)製)とアデカレジンEP−4100(旭電化工業(株)製;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)3040gとを加え、140℃、4時間反応させてエポキシ当量480のエポキシ基含有化合物(MF−1)を得た。
【0070】
〔参考製造例3〕
((1)エポキシ基含有化合物MF2の製造例)
温度計、撹拌機、冷却管を備えたガラス製三口フラスコに、分子量1000のポリエチレングリコール2000gとε−カプロラクトン228gとを加え、80℃、2時間反応させた後、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯塩とアデカレジンEP−4100 3040gとを加え、140℃、4時間反応させてエポキシ当量385のエポキシ基含有化合物(MF−2)を得た。
【0071】
〔参考製造例4〕
((1)エポキシ基含有化合物MF3の製造例)
温度計、撹拌機、冷却管を備えたガラス製三口フラスコに、分子量4000のポリエチレングリコール4000gとε−カプロラクトン228gとを加え、80℃、2時間反応させた後、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯塩とアデカレジンEP−4100 3040gとを加え、140℃、4時間反応させてエポキシ当量515のエポキシ基含有化合物(MF−3)を得た。
【0072】
〔製造例6〜8、10、12及び13〕
((B)自己乳化型アミン系硬化剤の製造例E−1〜3、5、7及び8)
下記の表1に示した組成にて配合し、ホモミキサーを用いて強制乳化した。
【0073】
〔製造例9及び11〕
((B)自己乳化型アミン系硬化剤の製造例E−4及び6)
それぞれ下記表1の重量比にて、メタキシレンジアミン及びYP−90LLを常温で混合し、80℃以下で37%ホルムアルデヒドを滴下した後、130℃まで昇温して常圧脱水し、50mmHgで30分減圧脱水をしてメタキシレンジアミンのマンニッヒ変性品を得た。これと下記表1の他の組成を配合し、ホモミキサーを用いて強制乳化した。
【0074】
【表1】
Figure 0003960777
【0075】
〔実施例1−1〜1−12及び比較例1−1〜1−4〕
上記製造例により得られたエポキシエマルジョン(主剤成分)及び硬化剤(硬化剤成分)を下記表2及び3に示した如き比率で混ぜ合わせて水性樹脂組成物(塗料)を製造し、以下の試験を行った。試験結果を下記表2及び3に示す。
【0076】
<ポットライフ>
塗料を50gスケール、23℃、相対湿度65%の条件下でゲル状になるまでの時間(ポットライフ、時間)を測定した。
【0077】
<タックフリー>
塗料を軟鋼板(#240研磨)に100ミクロンの厚さで塗布し、25℃、相対湿度65%での指触乾燥時間(タックフリー、時間)を測定した。
【0078】
<鉛筆硬度>
JIS K 5400に従い、鉛筆硬度を測定した。
【0079】
<耐食性>
JIS K 5400に従い、500時間SSTにかけて耐食性試験を行なった。耐食性の評価は、塗膜表面状態のふくれの観察、クロスカット部のふくれ及びさびの観察、ナイフカットによる剥離(平面及び屈曲面〔φ10mm、∠180〕)の観察を下記評価基準に従って行った。
【0080】
<評価基準>
◎:さび、ふくれ、剥離なし。
○:さび、ふくれ、剥離わずかにみられる。
△:さび、ふくれ、剥離みられる。
×:さび、ふくれ、剥離多くみられる。
【0081】
【表2】
Figure 0003960777
【0082】
【表3】
Figure 0003960777
【0083】
実施例と比較例との対比より明らかなように、通常のエポキシ樹脂と汎用の水溶性硬化剤を組み合わせて使用した場合には、耐食性の劣るものしか得られず(比較例1−4)、また通常のエポキシ樹脂と本発明で用いる特定の硬化剤を組み合わせても耐食性に劣るものしか得られない(比較例1−1)。一方で、本発明で用いるアセト酢酸エステル化合物を含むエポキシエマルジョンに汎用の水溶性硬化剤を組み合わせた場合でも耐食性に劣るものしか得られない(比較例1−2及び1−3)。
【0084】
これに対し、本発明で用いるアセト酢酸エステル化合物を含むエポキシエマルジョンに本発明で用いる特定の硬化剤を組み合わせて使用することによって、硬化塗膜の耐食性が著しく優れたものとなる(実施例1−1〜1−12)。
【0085】
【発明の効果】
本発明は、常温での硬化速度が速く、耐食性等の硬化物物性に優れた、塗料、接着剤等への利用が可能な水性樹脂組成物を提供するものである。

Claims (9)

  1. (A)下記式(I)で表される基を有する化合物、及び(B)(1)ポリアルキレンポリエーテル構造を有するエポキシ基含有化合物と(2)ポリアミン化合物とを反応させて得られる自己乳化型アミン系硬化剤を含有してなり、上記(A)成分が下記一般式( II )で表される化合物である水性樹脂組成物。
    Figure 0003960777
    Figure 0003960777
  2. 上記一般式(II)のX1及びX2が直接結合であり、rが0であり、且つ、m及びqを合わせた数が2以上である請求項記載の水性樹脂組成物。
  3. 上記一般式(II)のX1が上記式(a−2)で表される基、且つ、X2が上記式(b−2)で表される基である請求項記載の水性樹脂組成物。
  4. 上記一般式(II)のX1が上記式(a−3)で表される基、且つ、X2が上記式(b−3)で表される基である請求項記載の水性樹脂組成物。
  5. 上記(1)ポリアルキレンポリエーテル構造を有するエポキシ基含有化合物が、[1]平均分子量200〜4500のポリアルキレンポリエーテルポリオール化合物と、[2]ポリエポキシ化合物と、[3]ラクトン類とを反応させて得られるエポキシ基含有化合物である請求項1〜のいずれかに記載の水性樹脂組成物。
  6. 上記(1)ポリアルキレンポリエーテル構造を有するエポキシ基含有化合物が、上記[1]平均分子量200〜4500のポリアルキレンポリエーテルポリオール化合物1.0モルに対し、上記[2]ポリエポキシ化合物1.2〜10モル、上記[3]ラクトン類0.1〜5モルとを反応させて得られるエポキシ基含有化合物である請求項記載の水性樹脂組成物。
  7. 上記(2)ポリアミン化合物が、芳香脂肪族ポリアミン化合物、脂環式ポリアミン化合物、あるいは芳香脂肪族ポリアミン化合物、フェノール類及びホルマリンから得られる変性ポリアミン化合物である請求項1〜のいずれかに記載の水性樹脂組成物。
  8. 上記芳香脂肪族ポリアミン化合物が、メタキシレンジアミンである請求項記載の水性樹脂組成物。
  9. 上記脂環式ポリアミン化合物が、イソホロンジアミン又はメチレンビス(p−アミノシクロヘキサン)の中から選ばれる少なくとも一種である請求項記載の水性樹脂組成物。
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