JP3960726B2 - アルカリ蓄電池用ニッケル極及びアルカリ蓄電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、多孔性のニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されたアルカリ蓄電池用ニッケル極及びこのようなアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用したアルカリ蓄電池に関するものであり、アルカリ蓄電池用ニッケル極を改善し、アルカリ蓄電池を充電状態で高温下において保存した場合に、酸素が発生して自己放電が生じるのを抑制し、高温下における保存特性を向上させると共に、高電流での放電容量を高めるようにした点に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池等のアルカリ蓄電池においては、その正極として焼結式のニッケル極又は非焼結式のニッケル極が使用されてきた。
【0003】
ここで、非焼結式のニッケル極は、発泡ニッケル等の導電性の多孔体に水酸化ニッケルを主体とする活物質のペーストを直接充填して製造するものであり、このためその製造が簡単であるが、高電流での充放電特性が悪いという問題があった。
【0004】
一方、焼結式のニッケル極は、焼結によって得られた多孔性のニッケル焼結基板を用い、この多孔性のニッケル焼結基板に活物質塩を化学的に含浸させて活物質を充填させたものであり、ニッケル焼結基板の導電性が高く、また活物質がこの多孔性のニッケル焼結基板に密着していることから、高電流での充放電特性に優れている。このため、このような焼結式のニッケル極を使用したアルカリ蓄電池は、高電流で放電を行う電動工具等に好適に使用されている。
【0005】
しかし、この焼結式のニッケル極は、非焼結式のニッケル極に比べて活物質の充填率が低いため、その活物質の利用率を高める必要があった。また、このような焼結式のニッケル極を使用したアルカリ蓄電池において、充放電を繰り返して行うと、上記のニッケル焼結基板が脆くなり、充放電サイクル特性に改良の余地を残していた。
【0006】
そこで、従来においては、特開平1−200555号公報に示されるように、多孔性のニッケル焼結基板に充填させた活物質の表面に水酸化コバルトの層を形成し、これを酸素とアルカリ溶液の存在下で加熱処理して、水酸化コバルトを酸化させ、これにより活物質における導電性を高めて利用率を向上させるようにしたものや、特開昭63−216268号公報に示されるように、多孔性のニッケル焼結基板の表面に水酸化コバルトの層を形成し、これを酸素とアルカリ溶液の存在下で加熱処理した後、水酸化ニッケルを主体とする活物質を上記のニッケル焼結基板に充填させるようにし、活物質を充填させる際におけるニッケル焼結基板の腐食を抑制し、アルカリ蓄電池における充放電サイクル特性を改善するようにしたものが提案されている。
【0007】
しかし、上記の特開平1−200555号公報に示されるようにして作製した焼結式のニッケル極をアルカリ蓄電池の正極に使用した場合においても、このアルカリ蓄電池を充電した状態で50℃程度の高温で長く保存すると、焼結式のニッケル極において酸素が発生して自己放電が生じ、アルカリ蓄電池における容量が低下するという問題があった。
【0008】
また、特開昭63−216268号(特公平5−50099号)公報に示されるようにして作製した焼結式のニッケル極をアルカリ蓄電池の正極に使用した場合においても、このアルカリ蓄電池を50℃程度の高温で充電させた場合、上記の正極が十分に充電される前に酸素が発生して、充電効率が低下するという問題があった。
【0009】
さらに、特開昭48−50233号公報に示されるように、正極活物質中に水酸化イットリウムを含有させて、高温下での正極活物質の利用率を高めるようにしたものや、特開平5−28992号公報に示されるように、ニッケル酸化物を主体とする活物質にイットリウム,インジウム,アンチモン等の化合物を添加させて、高温雰囲気下における活物質の利用率を向上させるようにしたものが提案されている。
【0010】
しかし、これらの公報に示されるものにおいては、イットリウムの化合物等を単に活物質中に添加させるだけであるため、活物質やニッケル焼結基板がイットリウムの化合物等で十分に被覆されず、電解液が活物質やニッケル焼結基板と接触し、依然として、高温雰囲気下においてニッケル極から酸素が発生し、活物質の利用率を十分に向上させることができないという問題があった。
【0011】
また、本出願人は、先のPCT出願(PCT/JP99/00720)において、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質の表面部に、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマスから選択される少なくとも1種の元素の水酸化物を主成分とする被覆層を設けたアルカリ蓄電池用ニッケル極や、ニッケル焼結基板と上記の活物質との間に、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマスから選択される少なくとも1種の元素の水酸化物を主成分とする中間層を設けたアルカリ蓄電池用ニッケル極を提案した。
【0012】
そして、このようなアルカリ蓄電池用ニッケル極をアルカリ蓄電池の正極に使用した場合、このアルカリ蓄電池を充電した状態で高温下において長く保存しても、上記のニッケル極から酸素が発生して自己放電することが抑制され、高温下における保存特性に優れたアルカリ蓄電池が得られるようになった。
【0013】
しかし、近年においては、アルカリ蓄電池を前記のように電動工具等に好適に使用するため、さらに高電流での放電容量を高めることが要望されるようになった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、多孔性のニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されたアルカリ蓄電池用ニッケル極及びこのようなアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用したアルカリ蓄電池における上記のような様々な問題や要望を解決することを課題とするものであり、上記のアルカリ蓄電池用ニッケル極を改善して、このアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用したアルカリ蓄電池を高温下において保存した場合に、自己放電が生じるのを抑制し、高温での保存特性を向上させると共に、高電流での放電容量を高めることを課題とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1における第1のアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、上記のような課題を解決するため、多孔性のニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されてなるアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記のニッケル焼結基板に充填された活物質の表面部に、コバルト、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される少なくとも1種の元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする被覆層を設けるようにしたのである。
【0016】
そして、この第1のアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いてアルカリ蓄電池を作製した場合、多孔性のニッケル焼結基板に充填された活物質の表面部に形成された上記の被覆層によって活物質やニッケル焼結基板が電解液と接触するのが抑制され、このアルカリ蓄電池を充電させた状態で高温下において保存した場合においても、電解液と活物質等とが反応して自己放電するのが抑制され、高温下における保存特性が向上する。
【0017】
また、この第1のアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、上記のような元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする被覆層を設けているため、この被覆層に含有させたニッケルの化合物によって充放電反応がスムーズに行われるようになり、この第1のアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池における高電流での放電容量も向上する。
【0018】
ここで、上記の被覆層に用いるランタニドとしては、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウムから選択される少なくとも1種の元素を用いることができる。
【0019】
また、上記の第1のアルカリ蓄電池用ニッケル極において、被覆層に用いる上記の複合化合物は、アルカリ蓄電池中において比較的安定に存在できるものであることが好ましく、このため、請求項2に示すように、上記の複合化合物が水酸化物又は酸化物或いはこれらの混合物であることが好ましい。
【0020】
また、ニッケル焼結基板に充填された活物質の表面部に、上記のような元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする被覆層を設けるにあたり、この被覆層における上記の複合化合物の量が少ないと、電解液と活物質等とが反応するのを十分に抑制することができなくなる一方、この複合化合物の量が多くなりすぎると、アルカリ蓄電池用ニッケル極に充填される活物質の比率が低下して十分な電池容量が得られなくなるため、請求項3に示すように、被覆層における上記の複合化合物の量を水酸化ニッケルを主体とする活物質を含めた全充填量の0.5〜5重量%の範囲にすることが好ましい。また、請求項4に示すように、上記の被覆層におけるコバルト、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される元素の化合物の総重量を、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質を含めた全充填量の0.3〜3重量%の範囲にすることが好ましい。
【0021】
また、この発明の請求項5における第2のアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、上記のような課題を解決するため、多孔性のニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されてなるアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記のニッケル焼結基板と活物質との間に、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される少なくとも1種の元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする中間層を設けるようにしたのである。
【0022】
そして、この第2のアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いてアルカリ蓄電池を作製した場合、このアルカリ蓄電池用ニッケル極において酸素が発生する電位が温度の上昇に伴って低下するのが、上記の複合化合物を含む中間層により抑制され、このアルカリ蓄電池を充電させた状態で高温下において保存した場合に、このアルカリ蓄電池用ニッケル極において酸素が発生するのが抑制され、高温下における保存特性が向上する。
【0023】
また、この第2のアルカリ蓄電池用ニッケル極においても、上記のような元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする中間層を設けているため、この中間層に含有させたニッケルの化合物によって充放電反応がスムーズに行われるようになり、この第2のアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池における高電流での放電容量も向上する。
【0024】
ここで、上記の中間層に用いるランタニドとしては、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウムから選択される少なくとも1種の元素を用いることができる。
【0025】
また、上記の第2のアルカリ蓄電池用ニッケル極においても、中間層に用いる上記の複合化合物は、アルカリ蓄電池中において比較的安定に存在できるものであることが好ましく、このため、請求項6に示すように、上記の複合化合物が水酸化物又は酸化物或いはこれらの混合物であることが好ましい。
【0026】
また、第2のアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記のようにニッケル焼結基板と活物質との間に、上記のような元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする中間層を設けるにあたり、この中間層における上記の複合化合物の量が少ないと、このアルカリ蓄電池用ニッケル極において酸素が発生する電位が温度の上昇に伴って低下するのを十分に抑制することができなくなる一方、この複合化合物の量が多くなりすぎると、アルカリ蓄電池用ニッケル極における活物質の比率が低下して十分な電池容量が得られなくなるため、請求項7に示すように、中間層における上記の複合化合物の量を水酸化ニッケルを主体とする活物質を含めた全充填量の0.5〜5重量%の範囲にすることが好ましい。また、請求項8に示すように、上記の中間層におけるカルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される元素の化合物の総重量を、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質を含めた全充填量の0.3〜3重量%の範囲にすることが好ましい。
【0027】
さらに、上記の第1及び第2の各アルカリ蓄電池用ニッケル極をアルカリ蓄電池に使用して充放電を行った場合に、このアルカリ蓄電池用ニッケル極が膨化するのを抑制するため、上記の水酸化ニッケルを主体とする活物質に、亜鉛,カドミウム,マグネシウム,コバルト,マンガン等を固溶させることが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、この発明の実施例に係るアルカリ蓄電池用ニッケル極及びこのアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたアルカリ蓄電池について具体的に説明すると共に、比較例を挙げ、この発明の実施例におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極及びこのアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたアルカリ蓄電池が優れている点を明らかにする。なお、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極及びアルカリ蓄電池は、下記の実施例に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0029】
(実施例A1〜A14)
実施例A1〜A14においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を製造するにあたって、下記のようにして作製した多孔性のニッケル焼結基板を用いた。
【0030】
ここで、多孔性のニッケル焼結基板を作製するにあたっては、カルボニルニッケル粉末と結着剤とを混練してニッケルスラリーを調製し、このスラリーを厚さ50μmのパンチングメタルに塗着し、これを乾燥させた後、還元雰囲気中において焼結して多孔性のニッケル焼結基板を得た。なお、このようにして得た多孔性のニッケル焼結基板は、多孔度が約85%、厚みが0.65mmであった。
【0031】
そして、この多孔性のニッケル焼結基板を硝酸ニッケルと硝酸コバルトとの混合水溶液(比重1.75、ニッケルとコバルトの原子比は10:1)に浸漬させて、このニッケル焼結基板に硝酸ニッケルと硝酸コバルトとの混合水溶液を含浸させた後、このニッケル焼結基板を25%のNaOH水溶液中に浸漬させて、このニッケル焼結基板にニッケルとコバルトの水酸化物を析出させ、このような操作を6回繰り返して、上記のニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させた。
【0032】
次いで、図1に示すように、ニッケル焼結基板1に充填された水酸化ニッケルを主成分とする活物質2の上に、下記の表1に示すように、ニッケルと他の元素との複合水酸化物からなる被覆層3を設けるようにした。なお、上記の図1においては、水酸化ニッケルを主成分とする活物質2の上に、ニッケルと他の元素との複合水酸化物からなる被覆層3が均一に設けられた場合を示しているが、水酸化ニッケルを主成分とする活物質2及び水酸化物からなる被覆層3はその一部が切れているか又は完全な独立層として観察されない可能性もある。
【0033】
ここで、ニッケル焼結基板に充填された上記の活物質の上に、ニッケルNiと他の元素との複合水酸化物からなる被覆層を設けるにあたっては、ニッケルNiの硝酸塩と他の元素の硝酸塩との混合溶液を用いるようにし、他の元素の硝酸塩として、実施例A1ではコバルトCoの硝酸塩を、実施例A2ではカルシウムCaの硝酸塩を、実施例A3ではストロンチウムSrの硝酸塩を、実施例A4ではスカンジウムScの硝酸塩を、実施例A5ではイットリウムYの硝酸塩を、実施例A6ではランタンLaの硝酸塩を、実施例A7ではセリウムCeの硝酸塩を、実施例A8ではプラセオジウムPrの硝酸塩を、実施例A9ではネオジムNdの硝酸塩を、実施例A10ではユーロピウムEuの硝酸塩を、実施例A11ではイッテルビウムYbの硝酸塩を、実施例A12ではビスマスBiの硝酸塩を、実施例A13ではマグネシウムMgの硝酸塩を、実施例A14ではバリウムBaの硝酸塩を用いるようにした。
【0034】
そして、ニッケルの硝酸塩と他の元素の硝酸塩とが1:1の重量比になるようにして調製した3重量%の各硝酸塩水溶液に、それぞれ上記のように水酸化ニッケルを主成分とする活物質が充填されたニッケル焼結基板を浸漬させた後、これを80℃の25%NaOH水溶液中に浸漬させて、ニッケル焼結基板に充填された活物質の上に、ニッケルと他の元素との複合水酸化物からなる各被覆層を形成して、実施例A1〜A14の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。なお、このようにして活物質の上に、上記の複合水酸化物からなる各被覆層を形成した場合、各被覆層における複合水酸化物の単位面積当たりの重量は5〜6mg/cm2 とほぼ一定しており、これらの各被覆層における複合水酸化物の量は、活物質と合わせた全充填量に対して約3重量%になっていた。
【0035】
(比較例a1)
比較例a1においては、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして、ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させただけのアルカリ蓄電池用ニッケル極を用い、ニッケル焼結基板に充填された活物質の上に被覆層を設けないようにした。
【0036】
(比較例a2)
比較例a2においては、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして、ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させた後、このニッケル焼結基板を3重量%の硝酸コバルト水溶液に浸漬させ、その後、これをNaOH水溶液中に浸漬させて、ニッケル焼結基板に充填された活物質の上に水酸化コバルトを析出させ、これをそのまま乾燥させて活物質の上に水酸化コバルトの層が形成されたアルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0037】
(比較例a3)
比較例a3においては、上記の比較例a2の場合と同様にして、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主成分とする活物質の上に水酸化コバルトを析出させた後、NaOH水溶液が含まれた湿潤状態で、これを空気中すなわち酸素の存在下において80℃の温度で加熱処理し、上記の水酸化コバルトを酸化させ、活物質の上にコバルトの水酸化物の層が形成されたアルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。なお、このようにして作製したアルカリ蓄電池用ニッケル極は、前記の特開平1−200555号公報に示されたアルカリ蓄電池用ニッケル極に相当するものである。
【0038】
(比較例a4〜a16)
比較例a4〜a16においては、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして、ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させた後、この活物質の上に下記の表2に示す各元素の水酸化物からなる被覆層を設けるようにした。
【0039】
ここで、活物質の上に下記の表2に示す各元素の水酸化物からなる被覆層を設けるにあたっては、それぞれ3重量%になった各元素の硝酸塩水溶液を用い、上記の実施例A1〜A14の場合と同様に、各元素の硝酸塩水溶液中に水酸化ニッケルを主成分とする活物質が充填されたニッケル焼結基板をそれぞれ浸漬させた後、これを80℃の25%NaOH水溶液中に浸漬させ、ニッケル焼結基板に充填された活物質の上に各元素の水酸化物からなる被覆層を形成して、比較例a4〜a16の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0040】
次に、上記のようにして作製した実施例A1〜A14及び比較例a1〜a16の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用する一方、負極に水素吸蔵合金電極を用い、電解液に6規定の水酸化カリウム水溶液を使用して、電池容量が約1.0Ahになった各アルカリ蓄電池を作製した。
【0041】
そして、このようにして作製した各アルカリ蓄電池をそれぞれ充電電流100mAで16時間充電させた後、放電電流200mAで1.0Vに達するまで放電させ、これを1サイクルとして、室温下において10サイクルの充放電を行い、11サイクル目の充電を行った後、各アルカリ蓄電池を50℃で2週間保存させた。その後、上記の各アルカリ蓄電池を室温に戻して1.0Vに達するまで放電させて11サイクル目の放電容量Q11を求め、保存前における10サイクル目の放電容量Q10と比較し、下記の式に基づいて高温保存特性を求め、その結果を下記の表1及び表2に示した。
高温保存特性(%)=(Q11/Q10)×100
【0042】
また、上記のようにして室温下において10サイクルの充放電を行った各アルカリ蓄電池を用い、今度は、充電電流1000mAの高い電流で1.2時間充電させた後、放電電流1000mAの高い電流で1.0Vに達するまで放電させ、このように高い電流で充放電を行った場合における放電容量を測定し、その結果を高率放電容量として下記の表1及び表2に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1に示す結果から明らかなように、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主成分とする活物質の上に、NiとCo,Ca,Sr,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Eu,Yb,Bi,Mg,Baから選択される元素との複合水酸化物からなる各被覆層が形成された実施例A1〜A14の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたアルカリ蓄電池においては、被覆層を形成していない比較例a1のアルカリ蓄電池用ニッケル極や、加熱処理していない水酸化コバルトの被覆層を設けた比較例a2のアルカリ蓄電池用ニッケル極や、加熱処理した水酸化コバルトの被覆層を設けた比較例a3のアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたアルカリ蓄電池に比べて、高温下における保存特性が著しく向上すると共に、高率放電容量も大きくなっていた。
【0046】
また、表1及び表2に示す結果から明らかなように、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主成分とする活物質の上に、Ca,Sr,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Eu,Yb,Bi,Mg,Baから選択される元素の水酸化物からなる被覆層を形成した比較例a4〜a16の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたアルカリ蓄電池と、上記の実施例A1〜A14の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたアルカリ蓄電池とを比較した場合、高温下における保存特性の差は少なかったが、高率放電容量は実施例A1〜A14の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたアルカリ蓄電池の方が大きくなっていた。
【0047】
(実施例A5.1〜A5.9)
実施例A5.1〜A5.9においては、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして、ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させた後、この活物質の上に被覆層を設けるにあたり、上記の実施例A5の場合と同様に、ニッケルNiの硝酸塩とイットリウムYの硝酸塩とを1:1の重量比になった硝酸塩溶液を用いる一方、これらの硝酸塩の合計量を0.1〜7重量%の範囲で変更させた各硝酸塩溶液を使用して、活物質の上にニッケルNiとイットリウムYとの複合水酸化物からなる被覆層を形成するようにした。なお、このようにして形成した各被覆層においては、活物質を合わせた全充填量に対するニッケルNiとイットリウムYとの複合水酸化物の重量比率W(重量%)が下記の表3に示すようになっていた。
【0048】
次に、上記のようにして作製した実施例A5.1〜A5.9の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用し、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして各アルカリ蓄電池を作製すると共に、これらの各アルカリ蓄電池についても、上記の場合と同様にして高温保存特性及び高率放電容量を求め、これらの結果を上記の実施例A5のものと合わせて下記の表3に示した。
【0049】
【表3】
【0050】
この結果から明らかなように、ニッケル焼結基板に充填された活物質の上に、ニッケルとイットリウムとの複合水酸化物からなる被覆層を形成するにあたり、この被覆層と活物質とを合わせた全充填量に対する上記の複合水酸化物の重量比率を0.5〜5重量%の範囲にすると、高温下における保存特性が向上すると共に高い高率放電容量が得られた。なお、上記の実施例A5,A5.1〜A5.9においては、ニッケル焼結基板に充填された活物質の上にニッケルとイットリウムの複合水酸化物からなる被覆層を形成する場合について示したが、ニッケルとコバルト、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される元素との複合水酸化物からなる被覆層を形成する場合においても同様の結果が得られる。
【0051】
(実施例A5.11〜A5.19)
実施例A5.11〜A5.19においては、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして、ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させた後、この活物質の上に被覆層を設けるにあたり、上記の実施例A5の場合と同様に、ニッケルNiの硝酸塩とイットリウムYの硝酸塩とを用い、このニッケルNiの硝酸塩とイットリウムYの硝酸塩との重量比が下記の表4に示すようになった硝酸塩溶液で、これらの硝酸塩の合計量が5重量%になった各硝酸塩溶液を使用し、活物質の上にニッケルNiとイットリウムYとの複合水酸化物からなる被覆層を形成するようにした。なお、このようにして形成した各被覆層においては、活物質を合わせた全充填量に対するイットリウムYの水酸化物の重量比率W1(重量%)が下記の表4に示すようになっていた。
【0052】
次に、上記のようにして作製した実施例A5.11〜A5.19の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用し、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして各アルカリ蓄電池を作製すると共に、これらの各アルカリ蓄電池についても、上記の場合と同様にして高温保存特性及び高率放電容量を求め、これらの結果を上記の実施例A5.7のものと合わせて下記の表4に示した。
【0053】
【表4】
【0054】
この結果から明らかなように、ニッケル焼結基板に充填された活物質の上に、ニッケルとイットリウムとの複合水酸化物からなる被覆層を形成するにあたり、この被覆層と活物質とを合わせた全充填量に対するイットリウムの水酸化物の重量比率を0.3〜3重量%の範囲にすると、高温下における保存特性が向上すると共に高い高率放電容量が得られた。なお、上記の実施例A5.7,A5.11〜A5.19においては、ニッケル焼結基板に充填された活物質の上にニッケルとイットリウムの複合水酸化物からなる被覆層を形成する場合について示したが、ニッケルとコバルト、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される元素との複合水酸化物からなる被覆層を形成する場合においても同様の結果が得られる。
【0055】
(実施例B1〜B13)
実施例B1〜B13においては、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして作製した多孔性のニッケル焼結基板を用いるようにした。
【0056】
そして、実施例B1〜B13においては、図2に示すように、上記のニッケル焼結基板1の上に、下記の表5に示すニッケルと他の元素との複合水酸化物からなる中間層4を形成し、このように中間層4が形成されたニッケル焼結基板1に水酸化ニッケルを主成分とする活物質3を充填させるようにした。なお、図2においては、ニッケル焼結基板1の上に上記の中間層4と活物質3の層とが均一に設けられた場合を示しているが、この中間層4や活物質3の層はその一部が切れているか又は完全な独立層として観察されない可能性もある。
【0057】
ここで、上記のようにニッケル焼結基板上に、下記の表5に示すニッケルと他の元素との複合水酸化物からなる中間層を形成するにあたっては、ニッケルNiの硝酸塩と他の元素の硝酸塩との混合溶液を用いるようにし、他の元素の硝酸塩として、実施例B1ではバリウムBaの硝酸塩を、実施例B2ではカルシウムCaの硝酸塩を、実施例B3ではストロンチウムSrの硝酸塩を、実施例B4ではスカンジウムScの硝酸塩を、実施例B5ではイットリウムYの硝酸塩を、実施例B6ではランタンLaの硝酸塩を、実施例B7ではセリウムCeの硝酸塩を、実施例B8ではプラセオジウムPrの硝酸塩を、実施例B9ではネオジムNdの硝酸塩を、実施例B10ではユーロピウムEuの硝酸塩を、実施例B11ではイッテルビウムYbの硝酸塩を、実施例B12ではビスマスBiの硝酸塩を、実施例B13ではマグネシウムMgの硝酸塩を用いるようにした。
【0058】
そして、ニッケルの硝酸塩と他の元素の硝酸塩とが1:1の重量比になるように調製した10重量%の各硝酸塩水溶液に、それぞれ上記のニッケル焼結基板を浸漬させた後、これを80℃の25%NaOH水溶液中に浸漬させて、ニッケル焼結基板の上に、それぞれ表5に示すニッケルと他の元素との複合水酸化物からなる中間層を形成した。ここで、上記の各中間層については、それぞれX線回折によってその存在を確認した。また、このようにしてニッケル焼結基板の上に各複合水酸化物の中間層を形成した場合、各中間層の単位面積当たりの重量は8〜10mg/cm2 とほぼ一定していた。
【0059】
次いで、上記のようにして中間層が形成された各ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させるにあたっては、中間層が形成された各ニッケル焼結基板を硝酸ニッケルと硝酸コバルトとの混合水溶液(比重1.75、ニッケルとコバルトの原子比が10:1)に浸漬させて、各ニッケル焼結基板に硝酸ニッケルと硝酸コバルトとの混合水溶液を含浸させた後、各ニッケル焼結基板を25%のNaOH水溶液中に浸漬させて、中間層が形成された各ニッケル焼結基板にこれらの水酸化物を析出させ、このような操作を6回繰り返し、各ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させて、実施例B1〜B13の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。なお、上記の各中間層における複合水酸化物の量は活物質と合わせた全充填量に対して約5重量%になっていた。
【0060】
(比較例b1)
比較例b1においては、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして作製した多孔性のニッケル焼結基板を用い、このニッケル焼結基板を3重量%の硝酸コバルト水溶液に浸漬させた後、これをNaOH水溶液中に浸漬させて、ニッケル焼結基板の上に水酸化コバルトを析出させ、上記のNaOH水溶液が含まれた湿潤状態で、これを空気中すなわち酸素の存在下において80℃の温度で加熱処理し、上記の水酸化コバルトを酸化させて中間層を形成し、その後は、上記の実施例B1〜B13の場合と同様にして、中間層が形成されたニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させてアルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。なお、このようにして作製したアルカリ蓄電池用ニッケル極は、前記の特開昭63−216268号(特公平5−50099号)公報に示されたアルカリ蓄電池用ニッケル極に相当するものである。
【0061】
そして、上記のようにして作製した実施例B1〜B13及び比較例b1の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用し、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして各アルカリ蓄電池を作製すると共に、これらの各アルカリ蓄電池についても、上記の場合と同様にして高温保存特性及び高率放電容量を求め、これらの結果を下記の表5に示した。
【0062】
【表5】
【0063】
この結果から明らかなように、ニッケル焼結基板の上にNiとBa,Ca,Sr,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Eu,Yb,Bi,Mgから選択される元素との複合水酸化物からなる中間層を形成し、このように中間層が形成されたニッケル焼結基板に対して水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させた実施例B1〜B14の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたアルカリ蓄電池においては、中間層を形成していない前記の比較例a1のアルカリ蓄電池用ニッケル極や、加熱処理した水酸化コバルトの中間層を設けた比較例b1のアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたアルカリ蓄電池に比べて、高温下における保存特性が著しく向上すると共に、高率放電容量も大きくなっていた。
【0064】
(実施例B5.1〜B5.9)
実施例B5.1〜B5.9においても、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして作製した多孔性のニッケル焼結基板を用いるようにした。
【0065】
そして、実施例B5.1〜B5.9においては、上記のニッケル焼結基板の上に中間層を形成するにあたり、上記の実施例B5の場合と同様に、ニッケルNiの硝酸塩とイットリウムYの硝酸塩とを1:1の重量比になった硝酸塩溶液を用いる一方、これらの硝酸塩の合計量を0.2〜14重量%の範囲で変更させた各硝酸塩溶液を使用して、ニッケル焼結基板の上にニッケルNiとイットリウムYとの複合水酸化物からなる中間層を形成し、その後は、上記の実施例B1〜B13の場合と同様にして、上記の各中間層が形成された各ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させて、各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。なお、上記のようにして形成した各中間層においては、活物質を合わせた全充填量に対するニッケルNiとイットリウムYとの複合水酸化物の重量比率W(重量%)が下記の表6に示すようになっていた。
【0066】
そして、このようにして作製した実施例B5.1〜B5.9の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用し、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして各アルカリ蓄電池を作製すると共に、これらの各アルカリ蓄電池についても、上記の場合と同様にして高温保存特性及び高率放電容量を求め、これらの結果を上記の実施例B5のものと合わせて下記の表6に示した。
【0067】
【表6】
【0068】
この結果から明らかなように、ニッケル焼結基板と活物質との間に、ニッケルとイットリウムの複合水酸化物からなる中間層を形成するにあたり、この中間層と活物質とを合わせた全充填量に対する上記の複合水酸化物の重量比を0.5〜5重量%の範囲にすると、高温下における保存特性が向上すると共に高い高率放電容量が得られた。なお、上記の実施例B5,B5.1〜B5.9においては、ニッケル焼結基板と活物質との間にニッケルとイットリウムとの複合水酸化物からなる中間層を形成する場合について示したが、ニッケルとカルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される元素との複合水酸化物からなる中間層を形成する場合においても同様の結果が得られる。
【0069】
(実施例B5.11〜B5.19)
実施例B5.11〜B5.19においても、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして作製した多孔性のニッケル焼結基板を用いるようにした。
【0070】
そして、実施例B5.11〜B5.19においては、上記のニッケル焼結基板の上に中間層を形成するにあたり、上記の実施例B5の場合と同様に、ニッケルNiの硝酸塩とイットリウムYの硝酸塩とを用い、このニッケルNiの硝酸塩とイットリウムYの硝酸塩との重量比が下記の表7に示すようになった硝酸塩溶液で、これらの硝酸塩の合計量が10重量%になった各硝酸塩溶液を使用し、ニッケル焼結基板の上にそれぞれニッケルNiとイットリウムYとの複合水酸化物からなる中間層を形成し、その後は、上記の実施例B1〜B14の場合と同様にして、上記の各中間層が形成された各ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填させて、各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。なお、このようにして形成した各中間層においては、活物質を合わせた全充填量に対するイットリウムYの水酸化物の重量比率W1(重量%)が下記の表7に示すようになっていた。
【0071】
次に、上記のようにして作製した実施例B5.11〜B5.19の各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用し、上記の実施例A1〜A14の場合と同様にして各アルカリ蓄電池を作製すると共に、これらの各アルカリ蓄電池についても、上記の場合と同様にして高温保存特性及び高率放電容量を求め、これらの結果を上記の実施例B5のものと合わせて下記の表7に示した。
【0072】
【表7】
【0073】
この結果から明らかなように、ニッケル焼結基板と活物質との間に、ニッケルとイットリウムの複合水酸化物からなる中間層を形成するにあたり、この中間層と活物質とを合わせた全充填量に対するイットリウムの水酸化物の重量比率を0.3〜3重量%の範囲にすると、高温下における保存特性が向上すると共に高い高率放電容量が得られた。なお、上記の実施例B5,B5.11〜B5.19においては、ニッケル焼結基板と活物質との間に、ニッケルとイットリウムの複合水酸化物からなる中間層を形成する場合について示したが、ニッケルとカルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される元素との複合水酸化物からなる中間層を形成する場合においても同様の結果が得られる。
【0074】
なお、以上の実施例においては、多孔性のニッケル焼結基板に形成された活物質の表面部にニッケルとコバルト等との複合水酸化物を含む被覆層を形成した実施例と、多孔性のニッケル焼結基板と活物質との間にニッケルとイットリウム等との複合水酸化物を含む中間層を形成した実施例とについて説明したが、多孔性のニッケル焼結基板と活物質との間にニッケルとイットリウム等との複合水酸化物を含む中間層を形成すると共に、このニッケル焼結基板に形成された活物質の表面部にニッケルとコバルト等との複合水酸化物を含む被覆層を形成することも可能である。
【0075】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明における第1のアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、多孔性のニッケル焼結基板に充填された活物質の表面部に、コバルト、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される少なくとも1種の元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする被覆層を形成したため、このアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いてアルカリ蓄電池を作製した場合、上記の被覆層により活物質やニッケル焼結基板が電解液と接触するのが抑制されると共に、この被覆層に含有させたニッケルの化合物によって充放電反応がスムーズに行われるようになった。
【0076】
この結果、この第1のアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池を充電させた状態で高温下において保存した場合においても、電解液と活物質等とが反応して自己放電するのが抑制され、高温下における保存特性が向上すると共に、このアルカリ蓄電池において充放電反応がスムーズに行われ、高電流での放電容量も向上した。
【0077】
また、この発明における第2のアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、多孔性のニッケル焼結基板と活物質との間に、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される少なくとも1種の元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする中間層を形成したため、このアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いてアルカリ蓄電池を作製した場合、上記の複合化合物を含む中間層により、温度の上昇に伴ってこのアルカリ蓄電池用ニッケル極において酸素が発生する電位が低下するのが抑制されると共に、この中間層に含有させたニッケルの化合物によって充放電反応がスムーズに行われるようになった。
【0078】
この結果、この第2のアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池を充電させた状態で高温下において保存した場合においても、このアルカリ蓄電池用ニッケル極において酸素が発生するのが抑制されて高温下における保存特性が向上すると共に、このアルカリ蓄電池において充放電反応がスムーズに行われ、高電流での放電容量も向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例において、多孔性のニッケル焼結基板に充填された活物質の表面部に各種の複合化合物からなる被覆層を設けた状態を示した模式断面図である。
【図2】この発明の実施例において、多孔性のニッケル焼結基板の上に各種の複合化合物からなる中間層を形成し、この中間層が形成されたニッケル焼結基板に活物質を充填させた状態を示した模式断面図である。
【符号の説明】
1 ニッケル焼結基板
2 活物質
3 被覆層
4 中間層
Claims (9)
- 多孔性のニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されてなるアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記のニッケル焼結基板に充填された活物質の表面部に、コバルト、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される少なくとも1種の元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする被覆層を設けたことを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 請求項1に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の複合化合物が、水酸化物又は酸化物或いはこれらの混合物であることを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 請求項1又は2に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の被覆層における複合化合物の重量が、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質を含めた全充填量の0.5〜5重量%の範囲であることを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の被覆層におけるコバルト、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される元素の化合物の総重量が、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質を含めた全充填量の0.3〜3重量%の範囲であることを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 多孔性のニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されてなるアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記のニッケル焼結基板と活物質との間に、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される少なくとも1種の元素とニッケルとの複合化合物を主成分とする中間層を設けたことを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 請求項5に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の複合化合物が、水酸化物又は酸化物或いはこれらの混合物であることを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 請求項5又は6に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の中間層における複合化合物の重量が、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質を含めた全充填量の0.5〜5重量%の範囲であることを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 請求項5〜7の何れか1項に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の中間層におけるカルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、ビスマス、マグネシウム、バリウムから選択される元素の化合物の総重量が、ニッケル焼結基板に充填された水酸化ニッケルを主体とする活物質を含めた全充填量の0.3〜3重量%の範囲であることを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 請求項1〜8の何れか1項に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用したことを特徴とするアルカリ蓄電池。
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