JP3960209B2 - 帯電制御樹脂の製造方法及びこれにより製造された帯電制御樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定した摩擦帯電性を有する静電荷像現像用トナー用の帯電制御樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスを利用した静電潜像を現像するために使用される静電荷像現像用トナーは、カブリなどのない鮮明な現像画像を得るために、適正な摩擦帯電量を有し、また、摩擦帯電量に経時変化がなく、例えば湿度変化などの環境変化によっても著しい摩擦帯電量の減衰が起きないことが要求されている。摩擦帯電量が減衰すると、トナー飛散が多くなりカブリや現像装置周辺にトナー汚れが発生するなどの問題が生じる。
【0003】
静電荷像現像用トナーは、トナー中に含まれる結着樹脂のみでも或る程度の摩擦帯電性が付与されるが、多くの場合不十分であるので、充分な摩擦帯電性を付与するために、通常、帯電制御剤や帯電制御樹脂を用いる。
【0004】
従来、トナー粒子に電荷を付与させるための帯電制御剤としては種々のものが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭45−26478号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開昭63−184762号公報(第4頁)
【特許文献3】
特開平3−56974号公報(第5頁)
【特許文献4】
特開平5−127425号公報(第5頁)
【0006】
従来、トナー粒子に電荷を付与させるための帯電制御剤としては、特許文献1に記載されているような含金属錯塩染料が一般的に用いられている。しかし、含金属錯塩染料は構造が複雑で不安定なので、トナー製造時の溶融混練、粉砕工程において、熱的、機械的影響を受けて分解または変質されやすく、その結果、トナーの摩擦帯電量が安定せず、トナーの特性を著しく低下させることになる。
【0007】
また、含金属錯塩染料は、トナー中の結着樹脂との相溶性に乏しく、トナー中での分散性が悪いため、トナーに均一な摩擦帯電性を付与することができない。さらに、含金属錯塩染料は、有色で透明性が低いため、カラートナー用に任意に着色した場合、鮮明な色調のカラーコピーを得られない。特に近年は、電子複写機はカラー化が進み、色調への要求は非常に高く、トナー原料の変性や変質、トナーの色調の変化は大きな問題となる。加えて、含金属錯塩染料は、クロムやセレンのような重金属を使用するものが多く、環境面からも問題が提起されている。
【0008】
そこで、前述の各問題に対応するため、含金属錯塩染料と比べ、トナー中での分散性も良く、透明性も優れており、また環境面からも有利である帯電制御樹脂の開発が進み、上市されるようになった。
【0009】
現在、帯電制御樹脂としては、例えば、上記特許文献2や上記特許文献3のように、親水性エチレン系不飽和単量体を含む重合性単量体を溶液重合後に昇温、脱溶剤して樹脂化するものが開示されているが、これらの方法では、重合して得られる樹脂の粘度が高いため、完全に脱溶剤するためにはかなりの熱をかける必要があり、その結果、樹脂が熱により変質や変色しやすくなる。逆に樹脂が変色、変質しない程度の低温で脱溶剤を行うと、粘度の高い樹脂に溶剤が囲い込まれるような形になり、完全に溶剤を除去することができず、樹脂中に多くの溶剤が残存してしまう。このような、変質または変色した帯電制御樹脂や、脱溶剤が完全でない帯電制御樹脂を用いたトナーを使用すると、摩擦帯電量が安定しないばかりではなく、電子写真機で長期間使用した場合、定着ロールが汚染され、汚れやカブリが生じるいわゆるオフセット現象を引き起こす原因となったり、また、トナー同士が融着するいわゆるブロッキングを起こす原因ともなる。
【0010】
また、上記特許文献4には、ジメチルスルホキシドのごとき溶剤中で溶液重合を行い、得られた溶液重合体を常温下で貧溶媒に添加して帯電制御樹脂を得る方法について記載されているが、この場合、溶剤を完全に除去することができず、得られる樹脂中に溶剤が残存するので、摩擦帯電性が安定せず、帯電制御樹脂の性能としては不十分であった。また、この方法では、貧溶媒として多量の有機溶剤を使用する必要があり、環境への負荷も懸念される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の各問題を解決するため、重金属や多量の有機溶剤を使用せず、熱に安定で、耐湿性があり、トナーに用いた場合には、色調に悪影響を及ぼさず、安定した摩擦帯電性を付与する静電荷像現像用トナー用の帯電制御樹脂の製造方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の構成からなるものである。
本発明は、親水性エチレン系不飽和単量体と親油性エチレン系不飽和単量体とを沸点30〜100℃の溶剤中で溶液重合して得られた重合溶液を、水と混合しながら、または水と混合した後に、溶剤を加熱留去し、その後、水を除去することによって帯電制御樹脂を製造することを特徴とする帯電制御樹脂の製造方法という構成からなる。
重合溶液を水と混合しながら、または水と混合した後に(すなわち、重合溶液と水との混合時又は重合溶液と水とを混合した後に)、重合開始剤を添加することにより、未反応の残存単量体を重合させてもよい。
重合溶液を水と混合しながら、または水と混合した後に(すなわち、重合溶液と水との混合時又は重合溶液と水とを混合した後に)、分散剤を添加してもよい。
重合溶液と混合する水が、アルカリ物質を含むことも可能である。
減圧雰囲気下で溶剤を加熱留去してもよい。
不活性ガスを導入しながら溶剤を加熱留去してもよい。
好ましくは、親水性エチレン系不飽和単量体と親油性エチレン系不飽和単量体とが、0.01〜50モル%:50〜99.9モル%の比率で使用される。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を以下に詳しく説明する。
本発明の帯電制御樹脂は、特定の比率(詳細は後述)の親水性エチレン系不飽和単量体と親油性エチレン系不飽和単量体とを溶液重合して得られた重合溶液を水と混合しながら、あるいは、水と混合した後に溶剤を加熱留去し、その後、水を除去して得ることができる。
【0014】
親水性エチレン系不飽和単量体としては、ラジカル重合可能な親水性の単量体を使用することができ、例えば、(メタ)アクリル酸(塩);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;エチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(塩)、プロピル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(塩)、t−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(塩)などのアルキル(メタ)アクリルアミドスルホン酸;スチレンスルホン酸(塩)、メタリルスルホン酸(塩)、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸イソブチル、イタコン酸、フマル酸などがあげられ、これらの単量体を単独でもしくは二種類以上併用して使用することができる。これらの単量体のうち、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸(塩)、スチレンスルホン酸(塩)、アクリロイルモルホリンなどが好ましい。
【0015】
親油性エチレン系不飽和単量体としては、ラジカル重合可能な親油性の単量体を使用することができ、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロルスチレンなどのスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸3−(メチル)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルトルエンなどの1官能ビニル系単量体;ジビニルベンゼン、ジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの2官能ビニル系単量体;3個以上の反応性ビニル基を有する単量体などがあげられ、これらの単量体を単独でもしくは二種類以上併用して使用することができる。
【0016】
親水性エチレン系不飽和単量体と親油性エチレン系不飽和単量体の使用比率は、帯電制御樹脂を構成する全単量体成分に対しモル量で、親水性エチレン系不飽和単量体:親油性エチレン系不飽和単量体=0.01〜50モル%:50〜99.9モル%であり、好ましくは0.5〜20モル%:80〜99.5モル%である。親水性エチレン系不飽和単量体の量が0.01モル%に満たないと、得られる樹脂の摩擦帯電量が不足する傾向にあり、50モル%を超えると、摩擦帯電量が不均一となる傾向にある。
【0017】
親水性エチレン系不飽和単量体と親油性エチレン系不飽和単量体との溶液重合には、重合開始剤が使用される。使用する重合開始剤は、特に限定するものではなく、一般的なラジカル重合に用いる開始剤が使用でき、例えば、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカンペート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシ2−エチルヘイサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレイックアシッド−n−ブチルエステル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などの過酸化物系開始剤;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)などのアゾ系開始剤;などを用いることができ、好ましくは2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が使用できる。これらは一種のみの使用でもよく、二種類以上を併用しても良い。重合開始剤の使用量は、使用する単量体の種類や目的とする重合度によって決定されるが、一般に、重合する全単量体成分に対して0.3〜10重量部が好ましい。
【0018】
親水性エチレン系不飽和単量体と親油性エチレン系不飽和単量体との溶液重合に使用する溶剤は、使用する単量体成分および生成する重合体成分を溶解するもので、沸点が30℃〜100℃であるものが必須であり、沸点が50℃〜95℃であれば好ましい。具体的には、例えば、アセトン(沸点56.1℃)、1,1−ジクロロエタン(沸点57.3℃)、クロロホルム(沸点61.1℃)、テトラヒロドフラン(沸点66.0℃)、メタノール(沸点64.5℃)、ヘキサン(沸点68.7℃)、酢酸エチル(沸点77.1℃)、エタノール(沸点78.3℃)、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)、ベンゼン(沸点80.1℃)、アセトニトリル(沸点81.6℃)、n−プロパノール(沸点97.2℃)、2−プロパノ−ル(沸点82.4℃)などがあげられ、これらを単独でまたは二種以上混合して用いることができ、これらのうち、メチルエチルケトン、アセトン、2―プロパノールなどが好ましい。使用する溶剤の沸点が100℃を超えると、溶剤を加熱留去する際に、完全に溶剤が系外へ排出されず、樹脂中に溶剤が残存してしまい、帯電制御樹脂の摩擦帯電性に悪影響を及ぼす。また沸点が30℃に満たない溶剤では重合時などでの取り扱いが困難となる。
溶液重合の方法は、特に限定されず、公知の重合方法を用いることが可能である。
【0019】
本発明では、特定の単量体成分を溶液重合して得られた重合溶液を水と混合しながら、もしくは混合した後に、加熱して溶剤を留去もしくは水と共沸させることによって、重合溶液中に含まれる、溶剤、残存単量体成分、重合開始剤の分解生成物などの化合物を重合溶液中から取り除く。溶剤などの化合物が加熱留去された重合溶液は、水中に樹脂成分が析出し、重合溶液中に含まれる残存親水性エチレン系不飽和単量体成分や親水性基を比較的多く含む成分のうち低分子量であるところの親水性低分子量成分などの親水性の化合物は、水に移行・溶解した状態になっているので、水を濾過またはデカンテーションなどによって、樹脂成分から除去・乾燥することにより、これら親水性の化合物を含まない帯電制御樹脂が得られる。
【0020】
前述の、溶剤、残存単量体成分、重合開始剤の分解生成物、残存親水性エチレン系不飽和単量体成分や親水性低分子量成分などの親水性の化合物が、帯電制御樹脂中に残存すると、最終的にトナーの帯電特性や耐ブロッキング性に悪影響を及ぼす。
加熱温度は、重合溶液中の樹脂成分や使用される溶剤の種類によって異なるが、一般に75〜95℃が好ましい。
【0021】
重合溶液を、水と混合する際に、重合溶液中もしくは水中に重合開始剤を添加してもよく、重合開始剤としては、前述の溶液重合に使用できる重合開始剤から選択することができる。なお、ここで使用する重合開始剤は、溶液重合で使用する重合開始剤と共通のものを使用してもよいし、異なっていても良い。重合開始剤を添加することにより、樹脂同士が融着する現象(ブロッキング現象)を引き起こす原因となる未反応の残存単量体成分を重合させることができる。重合開始剤の使用量は、重合溶液中の残存単量体成分が重合できる量であれば良く、具体的には、重合溶液中に含まれる残存単量体成分に対して0.01〜10重量%使用することにより、残存単量体を効果的に減少させることができる。
【0022】
本発明では、重合溶液と水とを混合する際に、水中に分散剤を添加してもよく、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルフェニルエーテルエチレンオキサイド付加物などの乳化剤;ポリビニールアルコール、アニオン性スチレン−(メタ)アクリル共重合体、でんぷんなどの高分子系分散剤;リン酸カルシウム(塩)などの無機塩分散安定剤;などが使用でき、好ましくはポリビニルアルコール分散剤が使用できる。分散剤の使用量は、重合溶液中の樹脂成分が水に分散できる程度の量であればよく、具体的には重合溶液の樹脂成分に対して20重量%以下であり、好ましくは0.1〜5.0重量%である。分散剤を併用することにより、重合溶液に含まれる重合体がより微分散状態となり、脱溶剤効率や、残存単量体などの親水性夾雑物の水への移行性が向上し、結果として本発明の帯電制御樹脂の性能を大きく向上させる。ただし、前記分散剤を重合溶液中の樹脂成分に対して20重量%を超えて使用すると、得られる粒子が微細になりすぎるために樹脂の回収率が低下するだけでなく、トナーに用いた場合、高温高湿下の条件では、吸湿性を有する前記分散剤がトナー物性に悪影響を及ぼす。
【0023】
本発明では、重合溶液と混合する水には、アルカリ物質を添加したものを使用することができる。アルカリ物質としては、特に限定されないが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性無機塩などがあげられ、その使用量は水に対して8.0重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5.0重量%である。アルカリ物質を用いることにより、アニオン性極性基を有する残存単量体や親水性低分子量成分が効果的に水へ移行する。これらが残存すると、樹脂同士が融着する現象(ブロッキング現象)を引き起こす原因となるだけでなく、摩擦帯電量安定性が悪化し電荷をリークしやすくなるので、これらをできるだけ除去することが好ましい。ただし、アルカリ物質を水に対して8.0重量%を越えて使用すると、得られる樹脂中のアルカリ物質量が増加し、最終的にトナーの帯電特性や低温定着性に悪影響を及ぼす。
【0024】
本発明では、重合溶液を水と混合しながら、もしくは、水と混合した後に、加熱して溶剤を留去する。具体的には、前述の溶液重合により得られた重合溶液を、水に添加して重合溶液中の樹脂成分を水中に分散させた後、加熱して溶剤を留去する方法や、水の入った容器を加熱状態にし、そこに得られた重合溶液を、滴下して重合溶液中の樹脂成分を水中に分散させながら溶剤を留去する、といった方法を採用することができる。上述のように、加熱する温度は、重合溶液中の樹脂成分や使用される溶剤の種類によって異なるが、一般に75〜95℃が好ましい。溶剤を留去する行程において、水も系内から一部留去されるが、水を完全には留去してしまわず、水溶性の残存単量体や低分子量成分が完全に溶解する量の水を系内に残しておく必要がある。
【0025】
本発明では、溶剤を加熱留去する際に、減圧雰囲気下で行うことができる。このことにより、摩擦帯電性に悪影響を及ぼす溶剤や残存単量体成分などを、比較的短時間で効率的に系外に留去できる。
【0026】
本発明では、溶剤を加熱留去する際に、不活性ガス雰囲気下で行うことができる。具体的には、重合溶液中または水中、またはその両方に不活性ガスをバブリングしながら、あるいは窒素気流下で行うといった方法が採用できる。この工程は、溶剤だけでなく残存単量体などの摩擦帯電性に悪影響を及ぼす成分を比較的短時間で効率的に系外に留去するのに大変有効であり、また、単量体や開始剤の酸化によって発生する、樹脂の性状に悪影響を与える可能性のある、例えば、ベンズアルデヒドといった副生成物の生成を抑制することができる。使用する不活性ガスは特に限定されるものではないが、窒素を使用するのが好ましい。
本発明では、溶剤を加熱留去した後、水溶性の残存する単量体成分や低分子重合体成分を含む水を除去して帯電制御樹脂を得る。水分の除去方法としては、特に限定するものではないが、例えば吸引濾過により固液分離した後、得られた樹脂湿体を樹脂分が98.0%以上、好ましくは99.5%以上になるまで加熱乾燥すればよい。加熱乾燥する時の温度は帯電制御樹脂が着色・劣化しない程度の温度で行うとよい。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例に記載される数値は特に断りのない限り重量基準で表す。
【0028】
実施例1
<重合溶液の製造方法>
攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、溶剤としてメタノール(沸点64.5℃)100g及びメチルエチルケトン(沸点79.6℃)200gを仕込み、さらにスチレン(親油性エチレン系不飽和単量体)85部、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸(親水性エチレン系不飽和単量体)5部、アクリル酸n−ブチル(親油性エチレン系不飽和単量体)10部からなる単量体混合物500gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)10gとを仕込み、攪拌、窒素導入下、65℃の条件下において12時間溶液重合反応行い、重合溶液S1を得た。
【0029】
<帯電制御樹脂の製造方法>
攪拌機、リービッヒ冷却管、温度計を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gを仕込み、これに重合溶液S1を100g仕込み、95℃下の条件下において10時間加熱攪拌しながら脱溶剤を行い、得られた樹脂分散液を濾別して濾液F1と樹脂成分を得、樹脂成分は樹脂分を99.5%以上になるまで50℃で乾燥し、帯電制御樹脂C1を得た。帯電制御樹脂C1の重量平均分子量は17000であった。
尚、実施例1は、請求項1及び7に含まれるものである。
【0030】
<トナーの製造方法>
上述の実施例1により得られた帯電制御樹脂C1を5重量部、スチレン−アクリル酸エステル共重合体{スチレン/アクリル酸n−ブチル/マレイン酸モノブチル=75/15/10(重量比)、重量平均分子量=85000、Tg=65℃、酸価32mg/KOH}100重量部、カーボンブラック(製品名:MA−100、三菱化学(株)製 )10重量部、ワックス(製品名:ビスコール550P、三洋化成工業(株)製 )4重量部を溶融混練した。得られた樹脂塊をミルにて粉砕後、ふるいにかけ330mesh〜390mesh(目開き45〜38μm)の粉体を得た。さらに、ここで得た粉体5gと酸化鉄粉95gとを、シェーカーにて200rpmで一定時間振とう(2分、5分、10分)させ、トナーT1を得た。
【0031】
<帯電制御樹脂の測定方法>
帯電制御樹脂C1を以下の方法で測定した。その結果を表1に示す。
・色調:150℃の条件下において電気乾燥機により1時間加熱溶融し、色調を目視で確認した。
・残存単量体量:キャピラリー電気泳動装置(機種名:CAPI−3300、大塚電子(株)製)およびガスクロマトグラフィー(機種名:GC−2010、(株)島津製作所製)により測定した。
・ガラス転移点:DSC(機種名:TAS−100、理学電機(株)製)により測定した。
・残存溶剤量:ガスクロマトグラフィー(機種名:GC−2010:(株)島津製作所製)にて測定した。
・樹脂酸価:JIS規格:K0070法に基づいて測定した。
・平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(機種名:HLC−8120GPC、東ソー(株)製)で測定した。
【0032】
<濾液の測定方法>
帯電制御樹脂の製造工程中に得られた濾液F1を、ロータリーエバポレータにて樹脂分が95%以上になるまで濃縮し、得られた固形成分を前記の帯電制御樹脂の測定方法と同様の測定方法で、ガラス転移点、樹脂酸価、平均分子量を測定した。その結果を表2に示す。
【0033】
<トナーの評価方法>
トナーT1の性能を以下の方法で評価した。その結果を表3に示す。
・摩擦帯電量:吸引分離式摩擦帯電量測定器(機器名:STC−1、三協パイオテク(株)製)を用いて、吸引圧5.0kPa、吸引時間2分の条件下において摩擦帯電量(−μC/g)を測定した。
・環境安定性:上記手法により調製されたトナー類で振とう時間が10分のサンプルを高温高湿下(37℃、Rh=85%)の条件下において2時間放置した。得られたサンプルの摩擦帯電量を測定し、放置前のサンプルの摩擦帯電量との差(減少率)を求めた。摩擦帯電量の差が8%未満であるものをA、8〜16%であるものをB、16%より大きいものをCと評価した。
【0034】
実施例2
2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gを仕込み、これに重合溶液S1を100gと、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.1gの混合物を仕込んだ以外は、実施例1の帯電制御樹脂の製造方法および、上述のトナーの製造方法と同様に行った。得られた、帯電制御樹脂C2、濾液F2、トナーT2はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、帯電制御樹脂C2の重量平均分子量は17500であった。
尚、実施例2は、請求項1、2及び7に含まれるものである。
【0035】
実施例3
2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gを仕込み、これに重合溶液S1を100gと、分散剤としてポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールNK−05:日本合成化学工業(株)製)5gとを仕込んだ以外は、実施例1の帯電制御樹脂の製造方法および、上述のトナーの製造方法と同様に行った。得られた、帯電制御樹脂C3、濾液F3、トナーT3はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、帯電制御樹脂C3の重量平均分子量は17000であった。
尚、実施例3は、請求項1、3及び7に含まれるものである。
【0036】
実施例4
2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gと、アルカリ物質として炭酸カルシウム1gとを仕込み、これに重合溶液S1を100g仕込んだ以外は、実施例1の帯電制御樹脂の製造方法および、上述のトナーの製造方法と同様に行った。得られた、帯電制御樹脂C4、濾液F4、トナーT4はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、帯電制御樹脂C4の重量平均分子量は17700であった。
尚、実施例4は、請求項1、4及び7に含まれるものである。
【0037】
実施例5
脱溶剤を、アスピレータによる減圧下(70kPa)、80℃の条件下において、7時間加熱攪拌しながら行う以外は、実施例1の帯電制御樹脂の製造方法および、上述のトナーの製造方法と同様に行った。得られた、帯電制御樹脂C5、濾液F5、トナーT5はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、帯電制御樹脂C5の重量平均分子量は16800であった。
尚、実施例5は、請求項1、5及び7に含まれるものである。
【0038】
実施例6
攪拌機、リービッヒ冷却管、バブリング管、温度計を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gを仕込み、これに重合溶液S1を100g仕込み、95℃の条件下においてバブリング管より窒素を導入しつつ8時間加熱攪拌しながら脱溶剤を行い、脱溶剤以降は、実施例1の帯電制御樹脂の製造方法および、上述のトナーの製造方法と同様に行った。得られた、帯電制御樹脂C6、濾液F6、トナーT6はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、帯電制御樹脂C6の重量平均分子量は17000であった。
尚、実施例6は、請求項1、6及び7に含まれるものである。
【0039】
実施例7
脱溶剤を、アスピレータによる減圧下(70kPa)、80℃の条件下において、8時間加熱攪拌しながら行う以外は、実施例2と同様に行った。得られた、帯電制御樹脂C7、濾液F7、トナーT7はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、帯電制御樹脂C7の重量平均分子量は16800であった。
尚、実施例7は、請求項1、2、5及び7に含まれるものである。
【0040】
実施例8
攪拌機、リービッヒ冷却管、バブリング管、温度計を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gと、分散剤としてポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールNK−05:日本合成化学工業(株)製)5gとを仕込み、これに重合溶液S1を100gと、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.1gとを仕込み、95℃の条件下においてバブリング管より窒素を導入しながら5時間加熱攪拌して脱溶剤を行った後、そこへアルカリ物質として炭酸カルシウム1.0gを仕込み、窒素導入を止め、アスピレータによる減圧下(70kPa)、80℃の条件下において1時間加熱攪拌しながらさらに脱溶剤を行なった。脱溶剤以降は、実施例1の帯電制御樹脂の製造方法および、上述のトナーの製造方法と同様に行った。得られた、帯電制御樹脂C8、濾液F8、トナーT8はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、帯電制御樹脂C8の重量平均分子量は16800であった。
尚、実施例8は、請求項1〜7に含まれるものである。
【0041】
実施例9
使用する単量体成分として、スチレン(親油性エチレン系不飽和単量体)84部、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸(親水性エチレン系不飽和単量体)5部、アクリル酸n−ブチル(親油性エチレン系不飽和単量体)10部、ジビニルベンゼン(親油性エチレン系不飽和単量体)1部からなる単量体混合物500gを重合させた以外は、実施例1の重合溶液の製造方法と同様に行い、重合溶液S2を得た。
重合溶液にS2を使用すること以外は実施例8と同様の操作をした。得られた、帯電制御樹脂C9、濾液F9、トナーT9はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、帯電制御樹脂C9の重量平均分子量は35000であった。
尚、実施例9は、請求項1〜7に含まれるものである。
【0042】
実施例10
攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコにメタノール(沸点64.5℃)100g、アセトン(沸点56.1℃)200gを仕込み、さらにスチレン(親油性エチレン系不飽和単量体)85部、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸(親水性エチレン系不飽和単量体)5部、アクリル酸n−ブチル(親油性エチレン系不飽和単量体)10部からなるモノマー混合物500gと重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)10gとを仕込み、攪拌、窒素導入下、60℃の条件下において12時間溶液重合反応を行い、重合溶液S3を得た。
続いて、攪拌機、リービッヒ冷却管、温度計を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gを仕込み、これに重合溶液S3を100g仕込み、95℃下において10時間加熱攪拌しながら脱溶剤を行った後は、実施例1の帯電制御樹脂の製造方法及び上述のトナーの製造方法と同様に行った。得られた帯電制御樹脂C10、濾液F10、トナーT10はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。尚、帯電制御樹脂C10の重量平均分子量は18300であった。
なお、実施例10は、請求項1及び7に含まれるものである。
【0043】
実施例11
攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコにメタノール(沸点64.5℃)100g、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)200g、2−プロパノール(沸点82.4℃)100gを仕込み、さらにスチレン(親油性エチレン系不飽和単量体)85部、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸(親水性エチレン系不飽和単量体)5部、アクリル酸n−ブチル(親油性エチレン系不飽和単量体)10部からなるモノマー混合物500gと重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)10gとを仕込み、攪拌、窒素導入下、65℃の条件下において12時間溶液重合反応を行い、重合溶液S4を得た。
続いて、攪拌機、リービッヒ冷却管、温度計を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gを仕込み、これに重合溶液S4を100g仕込み、95℃下において10時間加熱攪拌しながら脱溶剤を行ったあとは、実施例1の帯電制御樹脂の製造方法及び上述のトナーの製造方法と同様に行った。得られたC11、F11、T11はそれぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。尚、帯電制御樹脂C11の重量平均分子量は16300であった。
なお、実施例11は、請求項1及び7に含まれるものである。
【0044】
比較例1
攪拌機を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、メタノール500gを仕込み、これに重合溶液S1を100g仕込み、室温において4時間攪拌し、得られた樹脂分散液を濾別により固液分離後し液体HF1と樹脂成分を得、樹脂成分が99.5%になるように、50℃で乾燥して帯電制御樹脂HC1を得た。この樹脂の重量平均分子量は17700であった。この後、C1にかえてHC1を用いた以外は上述と同様に操作してトナーHT1を得た。得られた、HC1、HF1、HT1は、それぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。
【0045】
比較例2
攪拌機、リービッヒ冷却管、温度計を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、重合溶液S1を500g仕込み、180℃になるまで加熱しながら常圧で脱溶剤した後、その温度を保ったまま減圧下(10kPa)でさらに1時間脱溶剤を行い、樹脂HC2を得た。この樹脂の重量平均分子量は16500であった。この後、C1にかえてHC2を用いた以外は上述と同様に操作してトナーHT2を得た。得られた、HC2、HT2は、それぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。
【0046】
比較例3
攪拌機、リービッヒ冷却管、温度計を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、重合溶液S2を500g仕込み、180℃になるまで加熱しながら常圧で脱溶剤した後、その温度を保ったまま減圧下(10kPa)でさらに1時間脱溶剤を行い、樹脂HC3を得た。この樹脂の重量平均分子量は37500であった。この後、C1にかえてHC3を用いた以外は上述と同様に操作してトナーHT3を得た。得られた、HC3、HT3は、それぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。
【0047】
比較例4
攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、溶剤としてメタノール100g及びトルエン(沸点110.6℃)200gを仕込み、さらにスチレン(親油性エチレン系不飽和単量体)85部、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸(親水性エチレン系不飽和単量体)5部、アクリル酸n−ブチル(親油性エチレン系不飽和単量体)10部からなるモノマー混合物500gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)10gとを仕込み、攪拌、窒素導入下、65℃の条件下において12時間溶液重合反応行い、重合溶液S5を得た。
続いて、攪拌機、リービッヒ冷却管、温度計を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gを仕込み、これに重合体S5を100g仕込み、95℃下において10時間加熱攪拌しながら脱溶剤を行った後は、実施例1の帯電制御樹脂の製造方法および上述のトナーの製造方法と同様に行った。得られた、HC4、HF4,HT4は、それぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。尚、帯電制御樹脂HC4の重量平均分子量は16800であった。
【0048】
比較例5
攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、溶剤としてメタノール100g及びジメチルスルホキシド(沸点189.0℃)200gを仕込み、さらにスチレン(親油性エチレン系不飽和単量体)85部、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸(親水性エチレン系不飽和単量体)5部、アクリル酸n−ブチル(親油性エチレン系不飽和単量体)10部からなるモノマー混合物500gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)10gとを仕込み、攪拌、窒素導入下、65℃の条件下において12時間溶液重合反応行い、重合溶液S6を得た。
続いて、攪拌機を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水500gを仕込み、これに重合体S6を100g仕込み、室温下において10時間攪拌し、得られた樹脂分散液を濾別により固液分離して液体HF5と樹脂成分を得、樹脂成分が99.5%になるように、50℃で乾燥して帯電制御樹脂HC5を得た。この樹脂の重量平均分子量は17200であった。この後、C1にかえてHC5を用いた以外は上述と同様に操作してトナーHT5を得た。得られた、HC5、HF5,HT5は、それぞれ上述と同様に測定・評価した。その結果を表1〜3に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
表1より明らかなように、本発明に係る実施例1〜11は、比較例1〜5に比して、残存溶剤量および残存単量体量が少ない。また、表1より明らかなように、残存溶剤量および残存単量体量が少ないことに加えて、実施例1〜11は、収率が高く、また色調も無色透明である。即ち、本発明によれば、帯電制御樹脂中の溶剤、未反応の単量体を効率良く排出することができるとともに、効率良くそして高品質の帯電制御樹脂を製造するできることがわかった。
【0053】
実施例及び比較例により得られた帯電制御樹脂のガラス転移点を測定したが、表1に示したように、比較例2〜5の帯電制御樹脂と比較して実施例のものは高かった。これは、本発明において水を用いたことによって、未反応の単量体成分や低分子量成分が樹脂中より除去されたため、実施例の樹脂のガラス転移点が高くなったと思われる。即ち、ガラス転移点を測定することにより、本発明が優れていることがわかった。
【0054】
また、帯電制御樹脂の酸価をも測定した。樹脂の酸価は、樹脂の組成により決まるものであって、理論酸価があり、上記実施例及び比較例において用いた樹脂の場合、13.3KOH/mgである。この理論酸価よりも高い酸価の場合には樹脂が熱分解したこと、低い酸価の場合には、比較的酸価の高い有用な樹脂成分までも系外に排出されてしまったことが考えられる。表1に示したように、比較例1および5は酸価が低くまた収率が悪いことから、比較的酸価の高い樹脂成分が過剰に系外に排出されてしまったことがわかった。また、比較例2及び3の酸価は高く、これら比較例では樹脂が加熱分解してしまったことが分かった。さらに、比較例4では酸価が比較的高く、収率が低いことから、比較的酸価の低い成分が比較的多量に系外に排出されてしまったことが考えられる。
【0055】
表2より明らかなように、本発明に係る実施例1〜11は、比較例1〜4に比して、濾液中に含まれる成分は、酸価が高く、重量平均分子量が低く、ガラス転移点が低い。ガラス転移点が低く低分子量で高酸価の成分は、摩擦帯電量の安定性に悪影響を及ぼすものであるが、本発明によれば、このような成分を効率良く排出することができることがわかった。
【0056】
また、表2には、濾液の重量平均分子量を示した。これは、濾液を乾燥して得られた固形成分の重量平均分子量である。比較例1の場合、この分子量が大きく、帯電制御樹脂として十分に能力を発揮できる程度の高い分子量を有する成分までが濾液中に排出されてしまっている。一方、各実施例においては、そのようなことはなく、摩擦帯電性に悪影響を及ぼす低分子量成分が効率良く排出されたものと思われる。
【0057】
表3より明らかなように、本発明に係わる帯電制御樹脂は電子写真用トナーの摩擦帯電量としても充分であり、なおかつ環境安定性は、従来のものと同等以上である。
【0058】
溶剤及び未反応単量体(低沸点のもの)の加熱留去において、重合開始剤を用いた実施例2、分散剤を用いた実施例3、アルカリ物質を用いた実施例4は、実施例1に比較して更に残存溶剤量及び残存単量体量が減少しており、溶剤や未反応の単量体成分の排出に関してこれらによって更に優れた効果を得ることが分かった。
また、実施例5〜9より、減圧雰囲気下又は不活性ガス下で溶剤の加熱留去を行うことにより優れた効果を得ることが分かった。
【0059】
実施例1〜8、10及び11で得られた帯電制御樹脂C1〜C8、C10及びC11の重量平均分子量は16300〜18300であり、実施例9で得られた帯電制御樹脂C9の重量平均分子量は35000であったが、表1から明らかなように、実施例9の残存溶剤や残存単量体は効率的に除去できた。すなわち、本発明では、帯電制御樹脂の分子量が高くても、効率良く精製されることがわかった。
【0060】
溶剤の留去方法において、メタノールを使用した比較例1は、表1より、完全に溶剤を除去できず、また、水を用いずに加熱によって溶剤を留去した比較例2及び3でも、完全に溶剤を留去することができなかったので、水を用いた本発明が優れていることがわかった。
さらに、表1より、比較例1は樹脂の収率も悪く、コスト面からも本発明が優れていることがわかった。水を使用せずに溶剤を加熱留去する比較例2及び3は、表3より、帯電量が小さいと共に環境安定性も悪く、水と混合して溶剤を加熱留去する本発明の方法によれば帯電制御樹脂の製造過程で、効率的に溶剤や未反応の単量体成分や低分子量成分が排出されたことが示唆された。
【0061】
比較例4および5は、沸点100℃以上の溶剤を使用して溶液重合を行ったものであるが、表1に示したように、残存溶剤量も高く、表3に示したように帯電量も低く、環境安定性も非常に悪くなっており、沸点が100℃以上の溶剤を用いるのは好ましくないことが優れていることが分かった。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、残存溶剤、残存親水性エチレン系不飽和単量体並びに親水性低分子量成分が少ないだけでなく、樹脂の着色が少なく、摩擦帯電量安定性に優れた帯電制御樹脂を提供することができる。
請求項1の発明によれば、親水性エチレン系不飽和単量体と親油性エチレン系不飽和単量体とを、沸点30〜100℃の溶剤中で溶液重合することとしたので、溶剤が完全に系外に排出されることとなり、摩擦帯電量が安定し、耐オフセット性や耐ブロッキング性が向上した帯電制御樹脂が得られる。
また、請求項1の発明によれば、重合溶液を水と混合するので、残存親水性エチレン系不飽和単量体成分や親水性低分子量成分などの親水性の化合物を水に移行させることとなり、最終的にトナーの帯電特性や耐ブロッキング性を向上させる。更に、熱分解がおこらない比較的低い温度(75〜95℃)で製造するので、変色、異臭の原因となる帯電制御樹脂の熱分解物が生成されない。また、溶剤、残存単量体、親水性低分子量成分など帯電性に悪影響を及ぼす成分を除去することができるので、これらの成分の存在による樹脂帯電量の経時的低下を防ぐことができ、すなわち、環境安定性、耐湿性を有する帯電制御樹脂が得られる。
【0063】
請求項2の発明によれば、重合溶液と水との混合時に、または重合溶液と水とを混合した後に重合開始剤を添加することとしたので、溶液重合終了後に残存する未反応の単量体を完全に重合させることができることとなり、最終的にトナーの帯電特性や耐ブロッキング性を向上する。
請求項3の発明によれば、重合溶液と水との混合時に、または重合溶液と水とを混合した後に分散剤を添加することとしたので、重合溶液に含まれる重合体がより微分散状態となり、脱溶剤効率や、残存単量体などの親水性夾雑物の水への移行性が向上することとなるので、結果として帯電制御樹脂の性能が大きく向上する。
請求項4の発明によれば、重合溶液と混合する水がアルカリ物質を含むので、アニオン性極性基を有する残存単量体や親水性低分子量成分が効果的に水に溶解、移行することとなり、最終的にトナーの帯電特性や耐ブロッキング性を向上する。
【0064】
請求項5の発明によれば、減圧雰囲気下で溶剤を加熱留去することとしたので、溶剤や残存単量体などの摩擦帯電性に悪影響を及ぼす成分を比較的短時間で効率的に系外に留去することができる。
請求項6の発明によれば、不活性ガスを導入しながら溶剤を加熱留去することとしたので、溶剤や残存単量体などの摩擦帯電性に悪影響を及ぼす成分を比較的短時間で効率的に系外に留去するのに大変有効である。
請求項7の発明によれば、親水性エチレン系不飽和単量体:親油性エチレン系不飽和単量体とが0.01〜50モル%:50〜99.9モル%の比率で使用されることとしたので、摩擦帯電量を十分に有するとともに均一である帯電制御樹脂が提供される。
Claims (8)
- 親水性エチレン系不飽和単量体と親油性エチレン系不飽和単量体とを沸点30〜100℃の溶剤中で溶液重合して得られた重合溶液を、水と混合しながら、または水と混合した後に、溶剤を加熱留去し、その後、水を除去することによって帯電制御樹脂を製造することを特徴とする帯電制御樹脂の製造方法。
- 重合溶液を水と混合しながら、または水と混合する際に、重合開始剤を添加することにより、未反応の残存単量体を重合させることを特徴とする請求項1の帯電制御樹脂の製造方法。
- 重合溶液を水と混合しながら、または水と混合する際に、分散剤を添加することを特徴とする請求項1または請求項2の帯電制御樹脂の製造方法。
- 重合溶液と混合する水が、アルカリ物質を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれかの帯電制御樹脂の製造方法。
- 減圧雰囲気下で溶剤を加熱留去することを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれかの帯電制御樹脂の製造方法。
- 不活性ガスを導入しながら溶剤を加熱留去することを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれかの帯電制御樹脂の製造方法。
- 親水性エチレン系不飽和単量体と親油性エチレン系不飽和単量体とが、0.01〜50モル%:50〜99.9モル%の比率で使用される、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の帯電制御樹脂の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法を用いて製造した帯電制御樹脂。
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