JP3959677B2 - 回路遮断器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、低圧電路の保護や開閉に用いられる回路遮断器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、従来のこの種の3極回路遮断器(配線用遮断器)の一例を示す縦断面図である。図9において、回路遮断器はケース1とカバー2とからなる箱形の絶縁容器(モールドケース)により一体構成され、各相電路は、電源側端子3、電源側端子3と一体の固定接触子4、固定接触子4の固定接点4aと可動接点5aを介して接触する可動接触子5、一端が可動接触子5に接続された可撓導体6、一端が可撓導体6の他端に接続された過電流引外し装置7のコイル7a、コイル7aの他端に接続された負荷側端子8の経路で形成されている。
【0003】
この回路遮断器のトリップ動作を簡単に説明すると、次の通りである。図示ON状態で電路に過電流が流れると、過電流引外し装置7はアーマチュア7bを吸引し、トリップクロスバー9を時計方向に回動させる。これにより、ラッチ受け10が時計方向に回動し、ラッチ11の鎖錠を外す。その結果、遮断スプリング12の蓄勢力によりラッチ11が反時計方向に跳ね上げられ、トグルリンク13を介してラッチ11に連結された可動接触子5が固定接触子4から開離して、電流遮断が行われる。
【0004】
上記した電流遮断において、可動接触子5が開離すると、接点4a,5a間にアークが発生し、このアークは消弧装置14により消弧される。ここで、消弧装置14は、可動接触子5の開離軌跡に沿って間隔を介して配置された複数枚の磁性板15と、この磁性板15の左右端部を保持する絶縁物の支持板16とからなっている。アークが発生すると、磁性板15によりアーク柱の周りに偏った磁束分布が生じ、アークは磁性板15の切欠きの奥の方に駆動される。このため、アークは引き伸ばされるとともに磁性板15により分断され、アーク電圧が急激に高められて消弧される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、アークはきわめて高温であり、アーク周辺のモールド樹脂は数百度の高熱に曝される。そのため、絶縁容器(モールドケース)には、従来は耐熱性の熱硬化性樹脂が一般に用いられている。一方、近時において省資源・環境保護の観点から、種々の場面で資源の再利用が求められている。ところが、これを回路遮断器の絶縁容器について見ると、熱硬化性樹脂は溶解、再成形に馴染まず、従来は破砕して埋め立てるなどして廃却されている。
【0006】
そこで、この発明の課題は、使用済み後の回路遮断器における絶縁容器材の再利用を図ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は、ケースとカバーとからなる絶縁容器内に接触子及び消弧装置が収容された回路遮断器において、前記絶縁容器を熱可塑性樹脂で形成する一方、前記消弧装置の外側面と絶縁容器の内壁面との間に断熱板を挿入し、前記絶縁容器をアーク熱から保護するようにするものである(請求項1)。すなわち、この発明は、絶縁容器の樹脂材料として、溶解・再成形可能な熱可塑性樹脂を用いるものとし、しかして熱可塑性樹脂は耐熱性において劣り、アーク熱に直には耐えられないため、消弧装置と絶縁容器との間に断熱板を挿入し、絶縁容器をアーク熱から保護して耐熱性を補うものである。
【0008】
請求項1において、前記消弧装置が複数枚の磁性板と、この磁性板の左右端部を保持する絶縁物の支持板とからなる場合には、前記断熱板をU字状に折り曲げ形成し、この断熱板を前記消弧装置の外側に底面側から被せるようにして設けることができる(請求項2)。
【0009】
また、請求項1において、前記消弧装置が複数枚の磁性板と、この磁性板の左右端部を保持する絶縁物の支持板とからなる場合に、前記断熱板を前記磁性板の端部と前記支持板との間に挟み込んで固定するとともに、この断熱板の下半部を前記支持板の外側に折り返して、前記支持板から露出する前記磁性板の端部を覆うようにすれば、断熱板と消弧装置とが一体化されるため、これらのケースへの組み込みが容易になる(請求項3)。
【0010】
更に、請求項1において、前記消弧装置が複数枚の磁性板と、この磁性板の左右端部を保持する絶縁物の支持板とからなる場合に、前記支持板の下半部を前記断熱板として用い、この下半部を外側に折り返して、前記支持板から露出する前記磁性板の端部を覆うようにすれば、支持板の一部を断熱板に兼用し、組立を簡単にすることができる(請求項4)。請求項1〜請求項4のいずれにおいても、前記断熱板はバルカナイズドファイバ板で形成するのがよい(請求項5)。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1〜図4はこの発明の実施の形態を示すもので、図1は回路遮断器の縦断面図、図2は図1の回路遮断器の一部を破断して示した電源側正面図、図3は図1における消弧装置の3面図(平面図、正面図及び側面図)、図4は同じく断熱板の3面図である。なお、従来例と対応する部分には同一の符号を用いるものとする。図1の回路遮断器は、細部の形状は図9の従来例と相違しているが、実質的な構成・動作は従来例と同じである。図示ON状態で電路に過電流が流れると、過電流引外し装置7はアーマチュア7bを吸引し、トリップクロスバー9を介してラッチ受け10を回動させ、ラッチ11の鎖錠を外す。これにより、図示しない遮断スプリングの蓄勢力によりラッチ11が時計方向に回動し、可動接触子5が固定接触子4から開離して電流遮断が行われる。可動接触子5の開離により接点4a,5a間に発生したアークは、消弧装置14に引き込まれて消弧される。ここで、ケース1は熱可塑性樹脂で形成され、このケース1をアークから保護するために消弧装置14とケース1との間には、図1及び図2に示すように、断熱板17が挿入されている。
【0012】
図3及び図4に基づいて、消弧装置14及び断熱板17の構成を説明する。まず、図3において、消弧装置14は、複数枚の磁性板15と、その左右端部を保持する支持板16とからなっている。鋼鈑からなる磁性板15は、開離動作をする可動接触子5を通過させる部分がU字状に切り欠かれ、可動接触子5の開離軌跡に沿うように、ケース1の略前後方向に間隔を介して配列されている。ファイバ板からなる支持板16は、左右の側板とそれらを連結する底板とからなるU字状に形成され、側板には磁性板15の左右端部を保持する穴があけられている。各磁性板15は、左右端部にそれぞれ突出する上下2個の突起15aが支持板16の穴に嵌め込まれ、それぞれの先端がかしめ加工されることにより、支持板16に固定支持されている。
【0013】
次に、図4において、断熱板17は支持板16より薄いバルカナイズドファイバ板からなり、左右の側板とそれらを連結する底板とからなるU字状に形成されている。この断熱板17は図3に鎖線で示すように、消弧装置14の外側に底面側から被せられ、側板で支持板16の側面に露出する突起15aを覆うとともに、底板で支持板16の底部の開放面を閉塞する。
【0014】
消弧装置14及び断熱板17は上述したように組み合された状態で、ケース1に図1及び図2に示すように組み込まれる。しかして、電流遮断により接点4a,5a間に発生したアークは、消弧装置14に引き込まれて消弧される。その際、磁性板15はアークとの接触により加熱され、支持板16の側面に露出する突起15aは高温になる。そこで、断熱板17は突起15aをケース1から隔て、高温の突起15aからケース1の内壁面を保護するとともに、消弧装置14の底部を覆い、ケース1の底面をアーク熱から保護する。
【0015】
図5は、この発明の異なる実施の形態を示す消弧装置部分の分解斜視図、図6はその組立状態の斜視図である。図5及び図6において、消弧装置14は複数枚の磁性板15の左右端部が左右一対の側板からなる支持板16に支持されて構成されている。各磁性板15は、左右端部にそれぞれ突出する上下2個の突起15aが支持板16の穴16aに嵌め込まれ、それぞれの先端がかしめ加工されて支持板16に固定支持されているが、この実施の形態においては、左右一対の断熱板17は上端部が磁性板15の端部と支持板16との間に挟み込まれて固定されている。
【0016】
すなわち、図5において、断熱板17の上端部には前後一対の穴17aがあけられ、図5の右から1番目及び4番目の磁性板15の下側の突起15aが支持板16に嵌め込まれる前に、矢印で示すように断熱板17の穴17aに挿入され、その後に突起15aが支持板16にかしめ付けされている。しかして、断熱板17の下半部17bは、図5の状態で支持板16の下方まで突出してL字状を形成し、この下半部17bは磁性板15の固定後に、図6に矢印で示すように支持板16の外側に折り返され、支持板16から露出する磁性板15の端部(突起)15aを覆い、ケース1を高温になる突起15aから保護している。ケース1への組み込みは図6の状態で行われるが、その際、消弧装置14と一体化された断熱板17は位置ずれせず、組み込み作業が容易になる。
【0017】
図7は、この発明の更に異なる実施の形態を示す消弧装置部分の分解斜視図、図8はその組立状態の斜視図である。図7及び図8において、消弧装置14の構成は図6と実質的に同じであるが、この実施の形態においては支持板16の下半部16bが磁性板15の下方まで突出し、この下半部16bは断熱板として用いられている。しかして、支持板16の下半部16bは、図8に矢印で示すように外側に折り返され、支持板16から露出する磁性板15の端部(突起)15aを覆い、ケース1を高温になる突起15aから保護している。この実施の形態においては、断熱板16bが消弧装置14と一体化され、ケース1への組み込みが容易である他、支持板16が断熱板16bに兼用されるので、部品点数が減り組立が簡単になる。
【0018】
【発明の効果】
以上の通り、この発明によれば、消弧装置と絶縁容器との間に断熱板を挿入し、絶縁容器をアーク熱から保護するようにすることにより、耐熱性の低い熱可塑性樹脂を絶縁容器の樹脂材料として用い、使用済み絶縁容器の樹脂材をリサイクル使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示す回路遮断器の縦断面図である。
【図2】図1の電源側から見た正面図である。
【図3】図1における消弧装置を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図4】図1におけるを断熱板を示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は正面図である。
【図5】この発明の異なる実施の形態を示す消弧装置部分の分解斜視図である。
【図6】図5の消弧装置部分の組立状態の斜視図である。
【図7】この発明の更に異なる実施の形態を示す消弧装置部分の分解斜視図である。
【図8】図7の消弧装置部分の組立状態の斜視図である。
【図9】従来の回路遮断器を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ケース
2 カバー
4 固定接触子
5 可動接触子
14 消弧装置
15 磁性板
16 支持板
17 断熱板
Claims (5)
- ケースとカバーとからなる絶縁容器内に接触子及び消弧装置が収容された回路遮断器において、
前記絶縁容器を熱可塑性樹脂で形成する一方、前記消弧装置の外側面と絶縁容器の内壁面との間に断熱板を挿入し、前記絶縁容器をアーク熱から保護するようにしたことを特徴とする回路遮断器。 - 前記消弧装置が複数枚の磁性板と、この磁性板の左右端部を保持する絶縁物の支持板とからなる請求項1記載の回路遮断器において、
前記断熱板をU字状に折り曲げ形成し、この断熱板を前記消弧装置の外側に底面側から被せるようにしたことを特徴とする回路遮断器。 - 前記消弧装置が複数枚の磁性板と、この磁性板の左右端部を保持する絶縁物の支持板とからなる請求項1記載の回路遮断器において、
前記断熱板を前記磁性板の端部と前記支持板との間に挟み込んで固定するとともに、この断熱板の下半部を前記支持板の外側に折り返して、前記支持板から露出する前記磁性板の端部を覆うようにしたことを特徴とする回路遮断器。 - 前記消弧装置は、複数枚の磁性板と、この磁性板の左右端部を保持する絶縁物の支持板とからなる請求項1記載の回路遮断器において、
前記支持板の下半部を前記断熱板として用い、この下半部を外側に折り返して、前記支持板から露出する前記磁性板の端部を覆うようにしたことを特徴とする回路遮断器。 - 前記断熱板をバルカナイズドファイバ板で形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の回路遮断器。
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