JP3959278B2 - 超音波探査装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、水中の魚体などの物体の二次元または三次元位置を検知可能な超音波探査装置に関するものであり、特に、簡易・安価な構成を保ったまま、検出角度と精度の向上を図った超音波探査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の簡易な魚群探知機は、船底などに取り付けた超音波トランスジューサから水中に超音波を放射し、魚体など水中の物体で生じた反射波を受信し、送信から受信までに要した時間、すなわち超音波の往復の伝播所要時間から物体までの距離を検出している。この簡易な魚群探知機では、物体の方位を検出できないため、物体がすべて船舶の真下にあるかのように取り扱っている。
【0003】
物体までの距離だけでなくその方位も検出するには、多数の超音波トランスジューサを配列しておき配列順に順次動作させるという電子走査を行うか、単一の超音波トランスジューサの向きを変化させる機械走査を行うことが必要になる。上記電子走査の構成では多数の超音波トランスジューサが必要になり、装置が複雑・高価になる。また、上記機械走査の構成では機械的な走査機構が必要になるので、やはり装置が複雑・高価になる。
【0004】
本出願人の先願(特開平2001−99931号公報)には、少数の超音波トランスジューサを用いて海中の魚体などの物体の二次元または三次元位置を検知できるようにした超音波探査装置が開示されている。この超音波探査装置は、送信された超音波の反射波を受信素子で受信し、各受信素子の形状と配置で決まる方位関数と、各受信素子の受信信号の位相差とから反射波を発生させた物体の方位を検出する方位検出部を備えている。また、この装置は、超音波を送信してから反射波を受信するまでの所要時間と受信した反射波の振幅とから物体までの距離と反射強度を検出する距離検出部と、上記各検出部で検出済みの方位と距離とを組合わせて二次元または三次元表示する表示部とを備えている。このように従来の物体までの距離と大きさに加えて、物体の方位を検出することにより、物体の多次元位置が検知される。
【0005】
上記先行技術の超音波探査装置では、例えば、図6に示すように、x軸方向(船舶の舷側)に矩形上の超音波トランスジューサTD1、TD2が距離Lだけ離して船底などに配置される。各超音波トランスジューサから同時に同一の信号が放射される。一方のトランスジューサTD1の中心からR離れた方位角θxの方向に物体Wが存在するものとする。他方のトランスジューサTD2と物体Wとの距離をR+δRとすれば、δR=Lsinθxで与えられる。物体Wで発生した超音波の伝搬速度をcとする。一方のトランスジューサTD1が反射波を受信してから他方のトランスジューサTD2が反射波を受信するまでの時間差δt=δR/c=Lsinθx/cを得る。
【0006】
上記時間差δtが超音波受信信号の半周期よりも小さくなるように超音波信号の周波数を設定しておくことにより、上記受信時点の時間差をそれぞれの超音波トランスジューサの受信信号の位相差から検出できる。送信信号としては、数十kHz乃至数百kHzの超音波帯域の正弦波の搬送波が数十サイクルにたって持続するバースト状の波形などが使用される。物体の多次元表示は、例えば船舶の場合、舷側方向をx軸、深度方向をy軸、船舶の進行方向をz軸(時間軸t)とすると、x−y断面、t−y断面、一定深度のt−x断面などによって表示される。
【0007】
上記先行技術の超音波探査装置によれば、最小限2個の超音波トランスジューサを用いて舷側方向などのある角度範囲にわたって物体の二次元あるいは三次元的な位置を検出することができる。この結果、多数の超音波トランスジューサを舷側方向に配置したり、1個の超音波トランスジューサを機械的に走査したりすることなく、簡易かつ安価な構成のもとで物体の多次元的な位置が検出可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記先行技術の超音波探査装置では、超音波信号を送信し、物体で生じた反射信号を2個の超音波トランスジューサで受信するという超音波信号の送受信動作を1回だけ行なうことにより、ある角度範囲にわたる広い空間から多次元の位置データが取得される。この結果、ある角度範囲を電子的あるいは機械的に走査するという従来の構成に比べて、構成が簡易・安価になるという利点を有する。また、水中の様子を種々の断面によって表示することも可能になる。
【0009】
その反面、先行技術の装置では、1回の送受信で限られた量の物体の位置と反射強度とを含む表示用データを取得しているため、次のような問題がある。すなわち、探査対象の空間が広がるにつれて、取得可能な表示用データの空間的な密度が減少し、描画に必要な十分なデータが得られなくなる。特に、x−y断面中に連続的な線で表示されなければならない水底の線が描画対象データの不足のため不連続となり、この種の超音波探査装置に慣れ親しんできたユーザに違和感を与えかねないという問題がある。
【0010】
【問題を解決するための手段】
本発明の超音波探査装置は、超音波信号を送信する送信部と、この送信された超音波信号の物体による反射波を受信し受信信号を出力する複数の受信素子を備えた受信部と、前記複数の受信素子の配置と各受信素子から出力される受信信号の位相差とから前記物体の方位を検出する方位検出部と、前記受信信号の出現時点および振幅から物体の距離および反射強度を検出する距離・反射強度検出部と、前記検出された方位、距離および反射強度を表示用データとして前記物体を画面表示する表示処理部とを備え、移動体に搭載される超音波探査装置である。
【0011】
そして、表示処理部は、表示用データから作成される水底線の候補となる複数の画像を所定の倍率、または、最隣接の画像どうしが重なりあう大きさとなる倍率で拡大する処理と、この拡大によって重なり合った大きな画像からその輪郭線を抽出する処理と、この抽出された輪郭線から最浅線を抽出する処理とを行うことによって、水底線を描画する補完描画手段を備えている。
そして、表示処理部は、表示用データに対して補完処理を行うことにより断面中に水底線を描画する補完描画手段を備えている。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施の形態によれば、補完描画手段は、反射強度が所定値以上で、所定の水平成分を有し、かつ所定の長さにわたって配列されている画像を、前記水底線の候補として選択する。
【0013】
【実施例】
図1は、本発明の一実施例の超音波探査装置の構成を示すブロック図である。この超音波探査装置は、制御部CNT、送信部TX、単行回路IS1,IS2、超音波トランスジューサTD1,TD2、増幅回路AMP1,AMP2、サンプリング回路SPL1,SPL2,遅延回路DLY、複素合成回路CMPX1,CMPX2、位相差検出回路ARG、加算回路ADD、絶対値回路ABS、ディジタル・シグナル・プロセッサDSP、表示装置DISを備えている。
【0014】
制御部CNTの制御のもとに送信部TXで超音波の送信信号が発生される。この送信信号は、前述した従来装置の場合と同様に、数十kHz 乃至数百kHz の超音波帯域の正弦波の搬送波が数十サイクルにわたって持続するバースト状の波形を有する。この超音波送信信号は、信号を一方向にだけ伝達する単行回路IS1,IS2を通過して2個の超音波トランスジューサTD1,TD2のそれぞれに供給され、それぞれから同時に外部の海中などに放射される。海中に放射されて海中の魚体などで生じた反射波は、送受共用の超音波トランスジューサTD1,TD2のそれぞれに受信され、増幅器AMP1,AMP2で増幅される。
【0015】
増幅器AMP1,AMP2で増幅された受信反射波は、サンプリング回路SPL1,SPL2において、第1,第2のサンプリング信号spi ,spq によってサンプリングされ、ディジタル信号に変換される。第1のサンプリング回路SPL1から出力されるディジタル受信信号p1 ,q1 は後段の複素信号合成回路CMPX1においてディジタル複素信号r1 =p1 +jq1 に変換され、位相差検出回路ARGと加算回路ADDとに供給される。同様に、第2のサンプリング回路SPL2から出力されるディジタル受信信号p2 ,q2 は後段の複素信号合成回路CMPX2においてディジタル複素信号r2 =p2 +jq2 に変換され、位相差検出回路ARGと加算回路ADDとに供給される。
【0016】
位相差検出回路ARGでは、ディジタル複素信号r1 とr2 との複素共役積r1 ・r2 * から受信反射信号a1 ,a2 の偏角gが算定され、ディジタル・シグナル・プロセッサDSPに供給される。ディジタル加算回路ADDでは、ディジタル複素信号r1 とr2 が加算され、この加算値hの絶対値sが絶対値回路ABSで算定され、ディジタル・シグナル・プロセッサDSPに供給される。ディジタル・シグナル・プロセッサDSPは、絶対値sとその出現時点と、偏角gとから二次元の表示データを作成し、表示部DISに供給し、表示させる。
【0017】
受信信号a1 ,a2 の包絡線振幅をA(t)、搬送波の角周波数をω、位相をそれぞれφ1 ,φ2 とおくと、
a1 =A(t) cos (ωt+φ1 )
a2 =A(t) cos (ωt+φ2 )
となる。
【0018】
受信信号a1 を、標本化回路SPL1 において、標本化信号spi と、遅延回路DLYにより標本化信号spi よりもτだけ遅延させた標本化信号spq とによって標本化する。時刻tに出現する標本化信号spi による標本化受信信号p1 (t) と、時刻t=t+τに出現する標本化信号による標本化受信信号q1 (t) は、
となる。ここで、τを、
ωτ=π/2
とすると、
となる。
【0019】
複素合成器CMPX1において、p1 (t) を実部とし、q1 (t) を虚部とする複素数r1 が合成される。すなわち、この複素数r1 は、
である。r1 は受信信号a1 の位相角( ωt+φ1 ) を偏角とする複素数となっている。
【0020】
同様に、
となる。r2 は受信信号a2 の位相角( ωt+φ2 ) を偏角とする複素数となっている。
【0021】
従って、位相角計算部ARGにより、この複素数r1 とr2 の複素共役積を計算し、その偏角gを計算すると、ARGの出力gは、
となる。このように、受信信号a1 ,a2 間の位相差Δφが求まると、トランスジューサからみた魚体の方位角θx が判明する。
【0022】
加算回路ADDによる加算結果は、
となる。絶対値算定部ABSで算定されるhの絶対値をsとすれば、
となる。
【0023】
図2は、図1のディジタル・シグナル・プロセッサDSPの一部の構成を示す機能ブロック図である。このディジタル・シグナル・プロセッサDSPは、表示用データ記憶回路D1、画面表示データ生成部D2、画面メモリD3、同期信号読出アドレス発生部D4、画面表示条件設定部D5を備えている。表示用データ記憶回路D1は、図1の位相差検出回路ARGから供給される偏角gと、同じく図1の絶対値回路ABSから供給される加算された受信信号の振幅の絶対値sとを、その出現時点とから図4に示すように、表示用データをその送信が行なわれた時点毎に、送信時点からの所定時間毎にサンプリングされることにより決まる深度の順に配列して記憶する。
【0024】
画面表示データ生成部D2は、表示用データ記憶回路D1に記憶された表示用データから画面表示データを生成する。この画面表示データの生成は、画面表示条件設定部D5から設定される画面表示条件にしたがって、同期信号読出アドレス発生部D4から供給される同期信号読出アドレスに基づいて、表示用データ記憶回路D1から表示用データを読み出して行なわれる。この生成された画面表示データは、画面メモリD3に書き込まれ、同期信号読出アドレス発生部D4から供給される同期信号と読み出しアドレスに基づいて読み出され、図1の表示装置DISに供給される。
【0025】
画面表示条件設定部D5からは図示しない操作パネル上に設置されたツマミなどの操作によって表示条件が入力される。この表示条件は、切断面の切断位置や切断範囲、表示の着色と強度との関係、水底線の表示条件などである。画面表示データ生成部D2は、画面表示条件設定部D5から設定される表示条件の変更に伴い、表示用データ記憶回路D1に保持中の表示用データを読み出して表示条件に従った画面表示データを生成する。
【0026】
図3は、図1の超音波探査装置を船舶に搭載したときの、角度を含む物体位置の三次元表示画面の一例である。直交三軸として船舶の舷側方向にx軸、深度方向にy軸、船舶の進行方向にz軸または時間軸tがそれぞれ設定される。左上の表示画面a)は船舶のt−y断面、右上の表示画面b)はx−y断面、左下の表示画面c)はa)のt−y断面を任意の深度y1で水平に切断して示すt−y断面である。各断面中のa1、b1、c1は、現時点で検出された同一の物体である。例示した3種類の断面は一つの画面上に一緒に表示されてもよいし、指令に応じて一つずつあるいは二つずつ選択的に表示される構成であってもよい。
【0027】
図3の表示画面では、船舶がz軸方向に進行しているため、z軸方向への走査が船舶自体の移動に基づいて行われる。このため、方位角の検出は舷側方向のx軸方向についてだけ行われ、z軸方向の方位角の検出は行われない。しかしながら、船舶が停止している場合など、必要に応じてz方向についての方位角の検出を行うこともできる。この場合、他の1対の超音波トランスジューサをz方向に離間して配置し、各超音波トランスジューサによる受信信号の位相差を検出すればよい。
【0028】
図4は、表示用データ記憶回路D1に、表示用データを保持する方法の一例を示す概念図である。表示用データ記憶回路D1を構成する仮想的な二次元データメモリの一方のメモリアドレスは、送信時点から所定時間毎にサンプリングされることにより決まる反射物体までの距離Rである。この仮想的な二次元データメモリの他方のメモリアドレスは、超音波信号の送受信回数である。この超音波の送受信は通常一定周期で行なわれるので、メモリアドレスの送受信回数は、時刻や時間と等価である。
【0029】
送信回数アドレスへのデータの書き込みは、最新の送受信によって取得された最新の表示用データが、最も先行する送受信によって取得された最古の表示用データを保持する送受信アドレスの領域に上書きされるという具合に、一定の送受信回数アドレス範囲内で循環的に行なわれる。各送受信回数アドレスの各深度アドレス領域に、表示用データの反射強度sと偏角gが記憶される。
【0030】
図2の画面表示データ生成部D2は、表示用データ記憶回路D1に保持中の表示用データを読み出し、画面表示条件設定部D5から指定されている表示条件に従って、表示画面を作成し、画面メモリD3に書き込む。この表示データの書き込みは、同期信号読出アドレス発生部D4から供給される同期信号によって示されるブランキング期間に行われる。この画面メモリD3からの表示データの読み出しは、上記ブランキング期間におけるデータの書き込みの終了後に開始される。
【0031】
図5は、図2の表示処理部DSPの画面表示データ生成部D2によるx−y断面に水底線を補完しながら描画する補完描画処理を説明するための概念図である。
【0032】
まず、左上のx−y断面a)に例示するように、物体の表示用データに対応した4個の画像a1、a2、a3、a4が内蔵のワークメモリ内に描画される。この例では、各画像の大きさは表示用データに含まれる反射強度の大きさとは無関係に、超音波送受信による物体の検出に際しての空間的な分解能で定まる一定値に設定される。また各画像に付される着色も各表示用データに含まれる反射強度の大きさとは無関係に、適宜な色彩に固定される。4個の画像は、前述した本発明に固有の性質、すなわち、取得される表示用データの空間密度の低さのため、相互に離間して表示されている。この不連続という点で、連続しているはずの水底線とは異なっている。
【0033】
画面表示データ生成部D2は、水底線の補完描画処理を開始すると、まず、水底線の候補となる画像群の探索を開始する。この候補となる画像群は、各画像の特徴や、配列の特徴などに基づいて探索される。そのような画像の特徴としては、従来から知られているように、表示用データに含まれる反射強度が大きいことなどである。また、各画像の配列に関する特徴としては、魚体などの他の画像よりも深度が深いことや、複数個の画像がある程度の水平成分を有して、かつある程度の長さにわたって配列されていることなどである。この例では、左上のx−y断面a)に例示する離間して配列される4個の画像とその配列の特徴から、これが水底線の候補画像群として抽出される。
【0034】
次に、x−y断面b)に例示するように、抽出された候補画像群を構成する各画像の寸法が拡大せしめられる。この拡大の倍率として、予め設定されている所定の値、あるいは、最隣接の画像どうしが重なり合う大きさとなる値のいずれかに設定される。この結果、拡大された4個の画像b1、b2、b3、b4が重なり合った大きな画像が作成される。
【0035】
続いて、x−y断面c)に例示するように、大きな画像について輪郭線c1の抽出が行われる。この輪郭線c1の抽出は、画像処理に関する公知の適宜な手法によって行うことができる。最後に、x−y断面d)に例示するように、抽出された輪郭線の上半分のみを最浅線として残し、下半分を消去することにより曲線d1が作成される。画面表示データ生成部D2は、このようにして作成した曲線d1の長さを、予め設定されている所定値と比較する。曲線d1が所定値以上であれば、これが水底線と見做され、x−y断面中に描画すべき水底線として画面メモリD3中に書き込まれる。描画された水底線の下方の部分には、地中であることを表示するための土色などの一様な色彩が付される。一方、曲線d1が所定値未満であれば、水底線でないと見做され、廃棄される。
【0036】
上記補完処理対象の水底線の画像が図5のx−y断面e)に示すようなものとする。この場合、上述したような候補画像群を抽出できないことが起こり得る。次に、かろうじて候補画像群が抽出できて補完描画を行ったものの、曲線d1の長さが所定値に満たないなどの理由で、水底線がうまく描画できないことも起こり得る。このように水底線がうまく描画できない場合には、深度が最小の画像e1を通る水平線Lが描画され、この水平線が水底線と見做される。
【0037】
以上、水底線の補完描画処理を、画面表示データ生成部D2内のワークメモリ上で行う構成を例示したが、装置全体のメモリ容量の節減などを目的として、この水底線の補完描画処理を、画面メモリD3上で行う構成とすることもできる。
【0038】
本発明の超音波探査装置では、超音波信号を送信し、物体で生じた反射信号を2個の超音波トランスジューサで受信するという超音波信号の送受信動作を1回だけ行うことにより、所定角度範囲の広い空間から多次元の位置データが取得される。この結果、所定角度範囲を電子的あるいは機械的に走査するという従来の構成に比べて、簡易・安価という利点がある。その反面、1回の送受信で限られた量の物体の位置データを取得しているため、1回の送受信で取得可能な位置データの空間密度が低下し、角度や精度の低下を招くおそれがある。しかし、水底線については、上述のような補完描画処理で対処できる。
【0039】
以上、船舶が移動しながら反射物体の舷側方向の方位角を検出して行く場合を例示した。しかしながら、船舶が停止した状態で前後についても物体の方位角を検出する場合にも本発明を適用できる。
【0040】
また、魚群探知機への応用を例にとって本発明の超音波探査装置を説明した。しかしながら、本発明は魚群探知機への応用に限定されず、空中に超音波を送信してその反射波を受信する適宜な種類の超音波探査装置についても適用できる。
【0041】
さらに、超音波信号の送受信の周期Tや搬送波の周波数を固定する場合を例示した。しかしながら、これらについては、船速や探査対象の反射物体の大きさや種類、あるいは水底の変化の様子に応じて、自動的にあるいは操作者の指令に基づき変化させる構成とすることができる。
【0042】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の水中用超音波探査装置は、表示用データから作成される水底線の候補となる複数の画像を拡大して隣接データどうしを重なりあわせ、この重なりをった大きな画像から輪郭線を抽出し、最浅線を抽出するという補完処理を行うことにより、断面中に水底線を描画する補完描画処理手段を備える構成であるから、本発明に固有の少ないデータ量のもとでも、ユーザが従来から慣れ親しんだ連続的な水底線が描画できるという効果が奏せられる。
【0043】
本発明の好適な実施の形態によれば、補完描画手段は、反射強度が所定値以上で、所定の水平成分を有し、かつ所定の長さにわたって配列されている画像を、前記水底線の候補として選択する。
【0044】
さらに、水底線より深い部分を同一色で描画することにより、水底とその他の部分との判別が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の超音波探査装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のディジタル・シグナル・プロセッサDSPの構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図3】図1の超音波探査装置による多次元的な表示画面の一例を示す概念図である。
【図4】図2の表示用データ記憶回路D1に、表示用データを保持する方法の一例を示す概念図である。
【図5】上記実施例における海底線の補完描画処理の内容を説明するためのx−y断面である。
【図6】2個の受信信号の位相差に基づく反射物体の方位角の検出の原理を説明するための概念図である。
【符号の説明】
CNT コントローラ
TX 送信回路
TD1,TD2 超音波トランスジューサ
SPL1,SPL2 サンプリング回路
CPMX1,CMPX2 複素合成回路
ARG 位相差検出回路
ADD 加算回路
ABS 絶対値回路
DSP ディジタル・シグナル・プロセッサ
DIS 表示装置
DLY 遅延回路
D1 表示用データ記憶回路
D2 画像表示データ生成部
D5 画面表示条件設定部
Claims (3)
- 超音波信号を送信する送信部と、この送信された超音波信号の物体による反射波を受信し受信信号を出力する複数の受信素子を備えた受信部と、前記複数の受信素子の配置と各受信素子から出力される受信信号の位相差とから前記物体の方位を検出する方位検出部と、前記受信信号の出現時点および振幅から物体の距離および反射強度を検出する距離・反射強度検出部と、前記検出された方位、距離および反射強度を表示用データとして前記物体を画面表示する表示処理部とを備え、移動体に搭載される超音波探査装置において、
前記表示処理部は、前記表示用データから作成される水底線の候補となる複数の画像を所定の倍率、または、最隣接の画像どうしが重なりあう大きさとなる倍率で拡大する処理と、この拡大によって重なり合った大きな画像からその輪郭線を抽出する処理と、この抽出された輪郭線から最浅線を抽出する処理とを行うことによって、水底線を描画する補完描画手段を備えたことを特徴とする超音波探査装置。 - 請求項1において、
前記補完描画手段は、反射強度が所定値以上で、所定の水平成分を有し、かつ所定の長さにわたって配列されている画像を、前記水底線の候補として選択することを特徴とする超音波探査装置。 - 請求項2において、
前記補完描画手段は、前記水底線の候補となる画像が存在しない場合には、深度が最小の画像を通る水平線を前記水底線として描画することを特徴とする超音波探査装置。
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