JP3958155B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関し、詳しくは、支持体上に、中間層、感光層をこの順に有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機光導電性物質を用いた有機電子写真感光体の感光層には、アゾ顔料やフタロシアニン顔料などの電荷発生物質を分散した電荷発生層と、ヒドラゾン化合物、トリアリールアミン化合物、スチルベン化合物などの正孔輸送物質を含有する電荷輸送層とを支持体上に設ける積層型感光層と、これら電荷発生物質と正孔輸送物質とをともに単一の層に含有する単層型感光層とがある。
【0003】
しかし、支持体上にこれらの感光層を設けるだけでは、感光層の剥がれが生じたり、支持体表面の欠陥(傷などの形状的欠陥、不純物などの材質的欠陥)が画像にそのまま反映し、黒点状画像欠陥や白抜けといった問題が発生したりする原因となる場合が多い。
【0004】
これらの問題点を補うため、多くの電子写真感光体では、中間層と呼ばれる層が感光層と支持体との間に設けられている。
【0005】
中間層の多くは、絶縁性有機高分子が薄膜状に設けられていたり、アルマイトの様な絶縁性酸化物膜が設けられていたりしているが、絶縁性であるため、感度の低下を引き起こしたり、中間層/感光層界面に蓄積される空間電荷によって残留電位の上昇などの電子写真感光体疲労の原因ともなる。
【0006】
これらを防ぐため、中間層中に無機の導電性粒子を分散させる方法、イオン伝導性高分子を用いる方法、中間層中に電子輸送物質を含ませる方法などが知られている。
【0007】
無機粒子としては、酸化チタンや酸化スズが用いられるが、分散液の調製や、液安定性に問題があり、また分散不良の際の画像欠陥も問題になる。
【0008】
可溶性ポリアミドなどのイオン伝導性高分子を含有する中間層の場合、環境による特性の不安定さが問題になる。
【0009】
電子輸送物質としては、トリニトロフルオレノン、TCNQなどが知られているが、これらは安全性、安定性、相溶性に問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
これらの特性改良を目的として、多環キノン顔料などの有機顔料(特開平9−015889号公報、特開平9−258468号公報、特開平9−211879号公報、特開平9−197702号公報、特開平9−127716号公報など)や、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物(特開平5−27469号公報)を中間層に含有する電子写真感光体も提案されているが、このような中間層を設けた場合にも、感度の低下、耐久後の電気特性劣化という重大な問題点が残されている。
【0011】
本発明の目的は、支持体上に、中間層、感光層をこの順に有する電子写真感光体において、上記課題を解決することができる、優れた中間層を有する電子写真感光体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持体上に、中間層、感光層をこの順に有する電子写真感光体において、該中間層が上記式(1)及び(2−1)で示される化合物から選ばれる有機電子輸送物質を含有し、該感光層が高分子量正孔輸送物質を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0013】
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の電子写真感光体の中間層は、有機の電子輸送物質を含有しているが、この電子輸送物質は一般に低分子量であり、また、比較的分子量が高いものでも結着樹脂に混合して使用するために、この中間層の上に感光層を積層する際に、感光層用塗料に含有される有機溶剤が中間層に浸み込みやすくなる。
【0015】
特に、負帯電の電子写真感光体の場合、電荷輸送層を塗布する際に、電荷輸送層塗料に含有される正孔輸送物質が、有機溶剤とともに中間層に浸み込み、支持体の表面まで達するため、感光層の表面を帯電したときに、支持体から正孔が感光層の方に入りやすくなり、電子写真感光体表面のマイナス電荷と打ち消しあうようになるために帯電能が低下する。
【0016】
本発明の電子写真感光体は、中間層に電子輸送物質を含有しているが、さらにこの中間層上の感光層にも特徴を持っている。
【0017】
本発明の電子写真感光体の感光層は、これに含有される正孔輸送物質が高分子量であるため、感光層を中間層の上に塗工する際に、正孔輸送物質が中間層あるいは中間層のさらに下の支持体表面まで浸み込む現象を防止している。
【0018】
以下、本発明の電子写真感光体についてより詳細に説明する。
【0019】
本発明の電子写真感光体に用いられる支持体としては、導電性を有していればよく、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄などの金属または合金、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラスなどの絶縁性支持体上にアルミニウム、銀、金などの金属あるいは酸化インジウム、酸化スズなどの導電材料の薄膜を形成したものなどを用いることができる。
【0020】
支持体表面は、電気的特性改善あるいは半導体レーザーなどコヒーレント光照射時に問題となる干渉縞などの防止のため、陽極酸化などの電気化学的な処理やブラスト、切削などの処理が行われていてもよい。
【0021】
また、導電性粒子(例えば、カーボンブラック、銀粒子、酸化錫含有無機粒子など)を適当な結着樹脂とともに上に挙げたようなプラスチック、金属または合金支持体上に被覆した支持体を用いることもできる。
【0022】
支持体の形状は特に制約はなく、必要に応じて、板状、ドラム状、ベルト状のものが用いられる。
【0023】
本発明の電子写真感光体は、支持体上に、膜厚が0.3〜5μmであり、かつ、有機電子輸送物質を含有する中間層を有している。
【0024】
中間層に含有される有機電子輸送物質としては、下記式(1)で示される構造を有するナフタレンアミジンイミド化合物が好ましい。
【化6】
【0025】
(式(1)中、R11は、置換または無置換のアルキル基、または、置換または無置換のアリール基を示す。R12〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボン酸エステル基、置換基を有してもよいアルキル基を示す。A11は、置換または無置換のシクロアルキレン基、置換または無置換のアリーレン基、下記式(101)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(102)で示される構造を有する2価の基を示す。
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
(式(101)、(102)中、R1011〜R1014、R1021、R1022は、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、または、置換または無置換のアリール基を示し、nは、0または1を示す。)
【0029】
上記表現のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられ、ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子が挙げられ、カルボン酸エステル基としては、カルボキシエチル基、カルボキシt−ブチル基が挙げられ、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基が挙げられ、シクロアルキレン基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられ、アリーレン基としては、エチレニル基、ブチレニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
【0030】
上記各基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、t−ブチル基などのアルキル基やカルボキシメチル基や、カルボキシエチル基、カルボキシブチル基などのカルボン酸アルキル基や、ニトロ基や、−CF3基などが挙げられる。
【0031】
上記式(1)で示される構造を有するナフタレンアミジンイミド化合物の好適な化合物例を以下に挙げる。
【0032】
【化9】
【0033】
【化10】
【0034】
【化11】
【0035】
【化12】
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】
【化15】
【0039】
【化16】
【0040】
【化17】
【0041】
【化18】
【0042】
【化19】
【0043】
【化20】
【0044】
これらの中でも(1−1)、(1−35)が特に好ましい。
【0045】
また、中間層に含有される有機電子輸送物質としては、下記式(2−1)で示される構造を有するペリレンアミジンイミド化合物も好ましい。
【0046】
【化21】
【0047】
上記物質に代表されるようなこれら電子輸送物質は、製膜性を有する結着樹脂に分散した状態で使用されるのが一般的である。
【0048】
本発明においては、中間層が電子輸送性を有しており、中間層の抵抗を下げた状態で使用する必要がないため、結着樹脂として抵抗の低い樹脂を使う必要はなく、抵抗の高い樹脂でも使用できる。
【0049】
本発明の電子写真感光体の中間層に使用される結着樹脂としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、およびフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステルおよびポリアリレートなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0050】
従来、イオン電導性の樹脂を使用して比較的抵抗の低い中間層を使用してきた場合などには、高温高湿環境下においてはさらに抵抗が低下し、中間層が電荷阻止層としての役割を果たさなくなることがほとんどであった。
【0051】
本発明においては、電子輸送物質の効果によって、高温高湿環境における体積抵抗率を1×1012Ω・cm以上になるように結着樹脂を選択できるため、高温高湿下における使用でも、中間層は電荷阻止層としての機能を失うことがない。
【0052】
また、本発明の電子写真感光体の中間層の膜厚は、0.3〜5μmである。0.3μm未満であると、電荷阻止層としての効果が不十分となり帯電能の低下などが生じ、5μmを超えると残留電位の増加などが生じ電位変動量の増加などの原因となる。
【0053】
本発明の電子写真感光体は、中間層上に高分子量正孔輸送物質を含有する感光層を有している。
【0054】
本発明の感光層の構成は、電荷発生物質と電荷輸送物質(正孔輸送物質)の両方を同一の層に含有する単層型、および、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質(正孔輸送物質)を含有する電荷輸送層を有する積層型に大別される。
【0055】
以下、積層型の感光層を有する電子写真感光体について説明する。
【0056】
積層型感光層の構成としては、支持体上に電荷発生層および電荷輸送層をこの順に積層したものと、逆に電荷輸送層および電荷発生層の順に積層したものがある。
【0057】
電荷発生層は、スーダンレッドおよびダイアンブルーなどのアゾ顔料や、ピレン、キノンおよびアントアントロンなどのキノン顔料や、キノシアニン顔料や、ペリレン顔料や、インディゴおよびチオインディゴなどのインディゴ顔料およびオキシチタニウムフタロシアニン、ガリウムフタロシアニン、シリコーンフタロシアニンなどのフタロシアニン顔料などの電荷発生物質を、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などの結着樹脂に分散した分散液を塗布し、乾燥するか、上記顔料を真空蒸着することによって形成する。
【0058】
電荷発生物質としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンやクロロガリウムフタロシアニンなどのガリウムフタロシアニンや、オキシチタニウムフタロシアニンが、感度、電位安定性の観点から好ましい。
【0059】
電荷発生層の膜厚は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.01〜3μmである。
【0060】
電荷輸送層は、一般的に、電荷輸送物質と結着樹脂とを溶媒に均一に溶解した溶液を塗布した後に、これを乾燥して形成する。
【0061】
本発明においては、電荷輸送物質として、重量平均分子量が800以上の高分子量正孔輸送物質が使用される。
【0062】
高分子量正孔輸送物質としては、下記式(A)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0063】
【化22】
【0064】
上記式(A)中、RA1〜RA5は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいはそれらの誘導体、または、ハロゲン原子を示す。a1、b1、c1は、それぞれ独立に、0〜5の整数を示し、d1、e1は、それぞれ独立に、0〜4の整数を示す。n1は、1以上の整数を示す。
【0065】
アルキル基としては、メチル基、エチル基などが挙げられ、アルキル基の誘導体としては、イソプロピル基、t−ブチル基などが挙げられ、アリール基としてはフェニル基などが挙げられ、アリール基の誘導体としては、トリル基などが挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が挙げられる。
【0066】
上記各基が有してもよい置換基としては、ニトロ基、メトキシ基などのアルコキシ基や、カルボキシメチル基などのカルボキシアルキル基などが挙げられる。
【0067】
上記式(A)で示される構造を有する化合物の好適な化合物例を以下に挙げる。
【0068】
【化23】
【0069】
【化24】
【0070】
【化25】
【0071】
【化26】
【0072】
また、高分子量正孔輸送物質としては、下記式(C)で示される構造を有する化合物も好ましい。
【0073】
【化27】
【0074】
上記式(C)中、RC1〜RC5は、それぞれ独立に、水素原子、または、1価の炭化水素基を示す。a3は、0〜4の整数を示す。炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましい。ArC1、ArC2は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基である。k3は、0以上の整数を示し、m3は、1以上の整数を示し、n2は、2以上の整数を示す。
【0075】
上記式(C)で示される構造を有する化合物の好適な化合物例を以下に挙げる。
【0076】
【化28】
【0077】
上に例示したような正孔輸送物質は、必要に応じて、単独で成膜された状態で使用されるか、あるいは、成膜性を有する他の結着樹脂と混合して使用される。
【0078】
成膜性を有する結着樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステルおよびポリアリレートなどが挙げられる。
【0079】
電荷輸送層の膜厚は、好ましくは5〜40μm、より好ましくは8〜30μmである。
【0080】
単層型の感光層は、上記電荷発生物質および電荷輸送物質(正孔輸送物質)を上記結着樹脂に分散および溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成する。
【0081】
単層型の感光層の膜厚は、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜30μmである。
【0082】
本発明の電子写真感光体の感光層は、上に挙げたような電子輸送物質を含有することが好ましい。
【0083】
感光層に電子輸送物質を添加することによって、感光層と中間層の界面における感光層から中間層への電子の移動が円滑に行われると考えられる。
【0084】
したがって、感光層に電子輸送物質を添加する場合には中間層と界面で接触している層に添加することが好ましい。例えば、支持体側から中間層、電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した場合は、電荷発生層に電子輸送物質を添加することが好ましい。
【0085】
感光層に添加する電子輸送物質は、中間層に使用した電子輸送物質と同一の物質である事が、感光層と中間層の界面における感光層から中間層への電子の移動が円滑に行われる点で、より好ましい。
【0086】
また、本発明においては、感光層上に感光層を保護することを目的として保護層を設けてもよい。
【0087】
保護層を構成する材料としては、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリアクリルエーテル、ポリアセタール、フェノール、アクリル、シリコーン、エポキシ、ユリア、アリル、アルキッド、ブチラール、フェノキシ、ホスファゼン、アクリル変性エポキシ、アクリル変性ウレタンおよびアクリル変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0088】
保護層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましい。
【0089】
以上の各層には、クリーニング性や耐摩耗性などの改善のために、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系グラフトポリマー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系ブロックポリマー、シリコーン系ブロックポリマーおよびシリコーン系オイルなどの潤滑剤を含有させてもよい。
【0090】
さらに、耐候性を向上させる目的で、酸化防止剤などの添加物を加えてもよい。
【0091】
また、保護層には、抵抗制御の目的で、導電性酸化スズおよび導電性酸化チタニウムなどの導電性粉体を分散してもよい。
【0092】
図1に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の1例を示す。
【0093】
図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0094】
電子写真感光体1は、回転過程において、(一次)帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0095】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0096】
像転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0097】
像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。
【0098】
帯電手段3は、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器でもよく、ローラ形状、ブレード形状、ブラシ形状など公知の形態が使用される接触型帯電器(接触帯電手段)を用いてもよい。接触型帯電器の部材の材料としては、導電性を付与した弾性体が一般的である。
【0099】
接触帯電部材に印加される電圧としては、直流電圧のみでもよく、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧でもよい。
【0100】
ここでいう振動電圧とは、時間とともに周期的に電圧値が変化する電圧であり、交流電圧は、直流電圧のみ印加時における電子写真感光体の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有することが好ましい。
【0101】
接触帯電手段を用いる場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0102】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。
【0103】
例えば、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0104】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号にしたがって行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【0105】
【実施例】
以下、実施例にしたがって、本発明をより一層詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
なお、「部」は「質量部」を意味する。
【0107】
(実施例1)
まず、導電層用の塗料を以下の手順で調整した。
【0108】
10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部およびシリコーン化合物(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調整した。
【0109】
この塗料を直径30mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、150℃で30分乾燥して、膜厚15μmの導電層を形成した。
【0110】
次に、フェノール樹脂4部、有機電子輸送物質として化合物例(1−1)2部、メトキシプロパノール50部、ベンジルアルコール50部、メタノール10部からなる中間層用塗料を調整した。
【0111】
この塗料を、上記導電層上に浸漬コーティング法によって塗布し、145℃で20分間乾燥して、膜厚1.0μmの中間層を形成した。
【0112】
次に、CuKαのX線回折におけるブラック角2θ±0.2°の7.4°および28.2の位置に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンを2.0部、ポリビニルブチラール(商品名エスレックBX−1、積水化学(株)製)1.0部およびシクロヘキサノン35部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、その後にテトラヒドロフラン50部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。
【0113】
この塗料を、上記中間層の上に浸漬塗布方法で塗布して100℃で15分間乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0114】
次に、電荷輸送物質(正孔輸送物質)として、n=4であり、重量平均分子量(Mw)が1210の化合物例(A−1)3部、および、ビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量25,000)7部を、モノクロロベンゼン35gに溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。
【0115】
この塗料を、上記電荷発生層の上に浸漬塗布方法で塗布して120℃で45分間乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0116】
(実施例2〜5)
実施例1において有機電子輸送物質と正孔輸送物質をそれぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
【0117】
(比較例1〜3)
実施例1において、それぞれ、正孔輸送物質を下記式(D)、(E)、(F)で示される構造を有する化合物に変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
【0118】
【化29】
【0119】
(比較例4および実施例6〜8)
実施例5において、正孔輸送物質(A−5)(n:12、Mw:3914)のnの値を1から4まで変化させた以外は、実施例5と同様に電子写真感光体を作製した。
【0120】
nが1のものを比較例4、nが2〜4のものをそれぞれ実施例6〜8とする。
【0121】
実施例1〜8および比較例1〜4の電子写真感光体を、市販のレーザービームプリンター(商品名:LaserJet4000,日本ヒューレット・パッカード(株)社製)の改造機(レーザー光量および帯電電位可変)に取り付け、暗部電位(VD)が−700Vになるように帯電し、これに波長780nmのレーザー光を照射して、明部電位(VL)が−150Vになるのに必要な光量を測定し感度とした。
【0122】
さらに、1μJ/cm2の光量を照射した場合の電位を残留電位(Vr)として測定した。
【0123】
さらに、−150Vの明部電位で20サイクル繰り返し、その後−700Vの暗部電位の設定で10サイクル繰り返した際の暗部電位の1枚目(VD1)から10枚目(VD10)までの電位変動量(ΔVD1→10)の値を測定した。
【0124】
評価結果を表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
本発明の電子写真感光体は、暗部電位の変動量が少なく電位が安定しているが、比較例は電位の変動が大きくまた電位自体も実施例と比較して低めとなっているのがわかる。
【0127】
また、実施例6〜8と比較例4とを対比すれば、正孔輸送物質の分子量が800より大きいものを用いた場合には、帯電能が良く、暗部電位の変動の小さい電子写真感光体が得られるが、この分子量が小さい場合には、暗部電位の帯電能および電位変動の状態のよくないものが得られることがわかる。
【0128】
(実施例9〜13、比較例5、6)
実施例1において、中間層の膜厚を、1.0μmから0.1、0.3、0.6、2.0、3.0、5.0、8.0μmに変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。膜厚が0.1、0.3、0.6、1.0、2.0、3.0、5.0、8.0μmのものは、それぞれ、比較例5、実施例9、実施例10、実施例1、実施例11、実施例12、実施例13、比較例6である。
【0129】
実施例1、9〜13、比較例5、6について、感度、残留電位の評価の他に、5000枚の連続通紙耐久後の明部・暗部電位変動(ΔVD、ΔVL)、および、高温高湿(30℃、80%RH)下におけるベタ白画像の評価を次のとおり行った。
【0130】
評価結果を表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
実施例1、9〜13と、比較例5、6とを対比すると、中間層の膜厚が0.3μmから3μmの間では良好な特性が得られるが、0.3μm未満のものでは、ベタ白画像において画像欠陥が発生し、帯電能の低下も見られ、また、5.0μmを超えるものでは、耐久後の明部電位と残留電位の上昇が起きることがわかる。
【0133】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、支持体上に、中間層、感光層をこの順に有する電子写真感光体においても、高感度で、耐久後の電気特性劣化のない、優れた電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子写真感光体を有するプロセスカ−トリッジを有する電子写真装置の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 レール
Claims (7)
- 支持体上に、中間層、感光層をこの順に有する電子写真感光体において、
該中間層の膜厚が0.3〜5μmであり、
該中間層が下記式(1)及び(2−1)で示される化合物から選ばれる有機電子輸送物質を含有し、
該感光層が高分子量正孔輸送物質を含有する
ことを特徴とする電子写真感光体:
- 前記感光層が電荷発生層および電荷輸送層を有し、該電荷輸送層が前記高分子量正孔輸送物質を含有し、該高分子量正孔輸送物質の重量平均分子量若しくは分子量が800以上である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を含有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記フタロシアニン顔料がガリウムフタロシアニンである請求項3に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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