JP2023069379A - 電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】感光層中のシリカ粒子の分散状態及び感光層の表面状態を制御することでストレスクラックの発生を抑制し、長期にわたり安定した画像特性を得ることができる電子写真感光体及び画像形成装置を提供する。【解決手段】電子写真感光体は、導電性支持体と、導電性支持体上に形成された感光層とを備える。感光層は1層以上で構成される。感光層の表面層はバインダ樹脂、シリカ粒子及び電荷輸送物質を含有する。表面層表面の十点平均粗さRzは0.08μm以上0.80μm以下であり、表面層表面の凹凸の平均間隔Smは15μm超120μm以下であり、十点平均粗さRzに対する平均間隔Smの比Sm/Rzは30以上500以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、電子写真感光体及び画像形成装置に関する。
近年、電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう)には、有機光導電性材料を用いた有機感光体が広く用いられている。しかし、有機感光体には、有機系材料の性質上、クリーニングブレード等との接触により、その表面が摩耗しやすいという欠点がある。
加えて、近年のローラ帯電による接触帯電方式の増加や、デジタル複写機、プリンタ等の画像形成装置のロングライフ化、小型化及び高速化に伴って、有機感光体はその表面がより摩耗されやすい、厳しい条件下に曝されている。
このような感光体表面の摩耗という課題に対して、感光体の表面層に、フィラーとしてシリカ粒子やアルミナ粒子のような無機化合物微粒子を加えることが検討されている。
例えば、特許文献1には、電荷発生剤(「電荷発生物質」ともいう)を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤(「電荷輸送物質」ともいう)、バインダ樹脂、フタロシアニン顔料及びシリカ粒子を含有する電荷輸送層とを備えた感光層を備え、電荷輸送層が一層でありかつ最表面層として配置され、シリカ粒子の含有量がバインダ樹脂100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下であり、かつシリカ粒子の平均一次粒子径が50nm以上150nm以下である積層型電子写真感光体が開示されている。
また特許文献2には、電子写真感光体に対する帯電手段、露光手段、トナーを含む液体現像剤により現像する現像手段、現像手段により形成した電子写真感光体上のトナー像を中間転写体上に一次転写する一次転写手段、及び中間転写体上のトナー像を記録媒体に転写する二次転写手段を有する画像形成装置に用いる電子写真感光体において、その表面層に少なくとも無機化合物微粒子と有機化合物微粒子とを含有している電子写真感光体が開示され、無機化合物微粒子としては、少なくとも粒子径1~200nmのシリカ粒子、アルミナ粒子、二酸化チタン粒子、チタン酸ストロンチウム粒子のいずれかが好ましいことや、電子写真感光体の表面粗さ(Rz)は0.2~1.5μmであるのが好ましいことが開示されている。
特許文献3には、導電性支持体上に、少なくとも感光層を有する電子写真感光体であり、その表面層が、特定の繰り返し単位と、シロキサン構造の繰り返し単位とを含む変性ポリカーボネート共重合樹脂を含有し、かつ体積平均粒子径が0.005μm以上0.05μm未満であるシリカ粒子を含有する電子写真感光体が開示されている。
さらに、電荷輸送層上に硬化型保護層(「表面保護層」ともいう)を形成し、表面層である硬化型保護層にフィラーとしてシリカ粒子のような無機化合物微粒子を加えることも検討されている。
例えば、特許文献4には、導電性支持体上に感光層、硬化型保護層が順次設けられ、硬化型保護層が3官能以上のラジカル重合性化合物の硬化物とその表面から露出した部分を有するフィラーとを含み、硬化型保護層の表面がフィラーの表面に沿って隆起した隆起部を有し、硬化型保護層に含まれるフィラーの半径をr、硬化型保護層の膜厚をTとしたとき、T>2rであり、式(a):100×(硬化型保護層自由表面からT/2までの深さにあるフィラー数/硬化型保護層中の全フィラー数)≧70%が成立する電子写真感光体が開示されている。
感光層内にフィラーを分散させることで耐刷性が向上しロングライフを達成できるものの、クリーニング不良等の周辺部材との接触による不具合が足枷となっていることから、実用面での課題が大きいのが現状である。このような課題は小粒径フィラーを用いた場合に顕著に表れる傾向にあり、繰り返しの電気的な疲労に加えて、クリーニング工程による機械的な疲労が蓄積することで小粒径フィラーの凝集構造が発生し、この凝集構造を起点としたストレスクラックが発生する。特許文献5では感光層表面に線状傷を形成することで、特許文献6ではアモルファスシリコンを用いた高耐刷感光体の表面性を制御することで、感光体表面と周辺部材(接触部材)との摩擦を最適化する試みがなされている。
特開2017-49519号公報 特開2007-86131号公報 特開2001-66800号公報 特開2012-108487号公報 特開2010-134459号公報 国際公開2016/121231号
しかしながら、上記の先行技術では、感光層の表面層に無機化合物微粒子を含有させた場合において、耐摩耗性の向上と長期にわたる安定した画像形成との両立は困難であった。
感光層の表面層に無機化合物微粒子を含有させると、無機化合物微粒子の分散性が不十分であることに起因して感光層内部に無機化合物微粒子の凝集体が存在する。ローラ帯電による電気疲労やクリーニングブレードの滑刷(感光体の外周面に残留するトナーをクリーニングブレードにより剥離させる工程)により、感光体表面の滑り性が損なわれると、感光体表面とクリーニングブレードとの摩擦抵抗が大きくなる。
感光層に無機化合物微粒子を含有させた場合、無機化合物微粒子と比較してバインダ樹脂の熱膨張係数が大きいことから無機化合物微粒子とバインダ樹脂との界面でずり応力が発生し、無機化合物微粒子の凝集体周辺に応力が集中してストレスクラックが発生しやすいことが問題となっていた。この現象は、無機化合物微粒子の分散性が不十分なとき、長期の使用により感光体表面とクリーニングブレードとの摩擦抵抗が大きくなると、より深刻となる。よって、感光層中の無機化合物微粒子の分散性、感光層表面の平滑性、及び感光層の機械的強度の向上が課題となっていた。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、感光層中のシリカ粒子の分散状態及び感光層の表面状態を制御することでストレスクラックの発生を抑制し、長期にわたり安定した画像特性を得ることができる電子写真感光体及び画像形成装置を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研鑽した結果、感光層の機械的強度を向上させ、感光層中におけるシリカ粒子の分散均一性を向上させ、かつ感光層表面の形状を制御するために、感光体の表面層形成用塗布液中のシリカ粒子の分散状態を最適化することで、感光体の耐ストレスクラック性(以下、単に「耐クラック性」ともいう)を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による電子写真感光体は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された感光層とを備え、前記感光層が1層以上で構成され、前記感光層の表面層がバインダ樹脂、シリカ粒子及び電荷輸送物質を含有し、前記表面層表面の十点平均粗さRzが0.08μm以上0.80μm以下であり、前記表面層表面の凹凸の平均間隔Smが15μm超120μm以下であり、前記十点平均粗さRzに対する前記平均間隔Smの比Sm/Rzが、30以上500以下である。
上記の電子写真感光体によれば、長期の使用においても感光体にストレスクラックが発生することない。したがって、感光体のロングライフ化が可能となる。
上記の電子写真感光体にあっては、前記表面層における前記シリカ粒子の含有量が、前記表面層の全固形分に対して8質量%以上25質量%以下であることが好ましい。この場合、表面層にシリカ粒子を添加することによる耐摩耗性の効果を十分に得られ、クリーニング性にも優れる電子写真感光体を実現できる。
上記の電子写真感光体にあっては、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、前記表面層表面に押込み最大荷重30mNを5秒間負荷して測定される、前記感光層の弾性仕事率が41%以上48%以下であることが好ましい。この場合、感光層中に発生するずり応力を緩和できる。
上記の電子写真感光体にあっては、前記感光層が電荷発生層と電荷輸送層とで構成され、前記感光層の膜厚が25μm以上であることが好ましい。この場合、より長期にわたり安定した画像特性を得られる電子写真感光体を実現できる。
上記の電子写真感光体にあっては、前記シリカ粒子の数平均一次粒子径が10nm以上30nm以下であることが好ましい。この場合、前記表面層表面の凹凸の平均間隔Smを小さく制御しやすくなる。
上記の電子写真感光体にあっては、前記十点平均粗さRzが0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましい。この場合、前記感光層の表面層中のシリカ粒子の分散性をより向上できる。
上記の電子写真感光体にあっては、前記平均間隔Smが20μm以上50μm以下であることが好ましい。この場合、クリーニングブレードによる前記表面層に対する外部ストレスをより低減できる。
上記の電子写真感光体にあっては、前記十点平均粗さRzに対する前記平均間隔Smの比Sm/Rzが、100以上200以下であることが好ましい。この場合、耐クラック性やクリーニング性により優れる電子写真感光体を実現できる。
上記の電子写真感光体にあっては、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、前記表面層表面に押込み最大荷重30mNを5秒間負荷して測定される、前記感光層のビッカース硬さ(HV)が26以上であることが好ましい。この場合、より長期にわたり安定した画像特性を得られる電子写真感光体を実現できる。
なお、上記の電子写真感光体にあっては、前記導電性支持体と前記感光層(積層型感光層)との間に下引き層を備えることで、ライフを通じて帯電性等の電子写真特性を良好に維持できる。
本発明による画像形成装置は、前記電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光により形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像により形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段と、を備える。
上記の画像形成装置は、本発明の電子写真感光体を備えるため、長期にわたり安定した画像特性を得ることができる。
本発明によると、ストレスクラックの発生を抑制し、長期にわたり安定した画像特性を得ることができる電子写真感光体及び画像形成装置を提供することができる。
電子写真感光体とクリーニングブレードとの接点にかかる負荷と、表面層表面の凹凸の平均間隔Smとの関係を模式的に示す図である。 本発明の実施形態に係る電子写真感光体の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を模式的に示す側面図である。
本発明は電子写真感光体及び画像形成装置を含む。以下、これらについて詳細に説明する。
(1)電子写真感光体
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された感光層とを備え、前記感光層が1層以上で構成され、前記感光層の表面層がバインダ樹脂、シリカ及び電荷輸送物質を含有し、前記表面層表面の十点平均粗さRzが0.08μm以上0.80μm以下であり、前記表面層表面の凹凸の平均間隔Smが15μm超120μm以下であり、前記十点平均粗さRzに対する前記平均間隔Smの比Sm/Rzが、30以上500以下である。
図2は、本発明の一実施形態に係る電子写真感光体の構成を模式的に示す断面図である。電子写真感光体1は、導電性支持体11上に下引き層18が積層され、その上に電荷発生層15及び電荷輸送層16がこの順序で積層されてなる積層構造の感光層14(「積層型感光層」、「機能分離型感光層」ともいう)が設けられた積層型感光体(「機能分離型感光体」ともいう)である。本発明の電子写真感光体は、電荷輸送層16の上にさらに表面保護層が設けられたタイプの積層型感光体であってもよい。
本発明における感光層の表面層とは、感光層の最も表面側に位置する層を意味する。つまり、本発明の電子写真感光体が、図2に示すように表面保護層を有しない場合には電荷輸送層が表面層に該当し、本発明の電子写真感光体が表面保護層を有する場合には表面保護層が表面層に該当する。
<電子写真感光体、感光層の表面層>
本発明の電子写真感光体においては、表面層中にシリカ粒子が均一に分散されている。表面層中のシリカ粒子の含有量は、表面層の全固形分に対して8質量%以上25質量%以下であることが好ましく、8質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。シリカ粒子の含有量が上記下限未満の場合、表面層にシリカ粒子を添加することによる耐摩耗性の効果が十分に得られないことがある。シリカ粒子の含有量が上記上限を超える場合、シリカ粒子の分散性が十分ではなく凝集物が多くなり、クリーニング性が悪化することがある。
本発明の電子写真感光体においては、表面層表面の十点平均粗さRzが0.08μm以上0.80μm以下であって、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。これは、粒子径が小さい無機化合物微粒子(シリカ粒子)が適度にかつ均一に凝集していることで達成される。一般的に無機化合物微粒子の粒子径は、大きいほど耐摩耗性が上がるが、クリーニングブレードのエッジ部の欠けを引き起こす。本発明では、粒子径が小さい無機化合物微粒子を適度に凝集させることで大きな粒子を作り、耐摩耗性を高めることができる。また粒子径の小さい無機化合物微粒子は、クリーニングブレードの滑刷により剥がれていくことから、クリーニングブレードの部分的な破損の発生を抑制できる。
Rzが上記下限未満の場合、無機化合物微粒子間の相互作用が十分ではなく耐摩耗性の効果が得られにくい。Rzが上記上限を超える場合、無機化合物微粒子の凝集が大きすぎるため、低温低湿環境等においてクリーニングブレードのエッジ部分の弾性が低下したときに、クリーニングブレードの一部が欠ける状態を引き起こしやすい。そして、この状態では残留したトナーを十分クリーニングすることができなくなるため、形成した画像に筋状の欠陥が発生することがある。
なお、十点平均粗さRzは、感光体の表面層における無機化合物微粒子による凝集の状態の指標である。本明細書における十点平均粗さRzは、JIS-B-0601(1994)で定義されるものを示し、感光体の表面層の断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分において、平均線に平行かつ断面曲線を横切らない直線から、平均線に垂直な方向に測定した最高から5番目までの山頂の標高の平均値と、最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差をμmで表した値を意味する。
本発明における表面層表面の十点平均粗さRz、及び表面層表面の凹凸の平均間隔Smは、後掲の実施例の欄に記載の方法にて測定する。
本発明の電子写真感光体においては、表面層表面の凹凸の平均間隔Smが15μm超120μm以下であって、好ましくは20μm以上50μm以下であり、より好ましくは25μm以上50μm以下である。Smが上記範囲内であることにより、クリーニングブレードによる表面層に対する外部ストレスを低減でき、ストレスクラックの発生を抑制できる。図1に、電子写真感光体とクリーニングブレードとの接点にかかる負荷と、表面層表面の凹凸の平均間隔Smとの関係の概略を示す。Smが上記範囲より大きくても小さくてもストレスクラックは悪化する傾向にある。Smが上記範囲内である場合、表面層表面の凹凸が適度な間隔を維持できており、表面層表面とクリーニングブレードとの摩擦を低減できているものと推察される。
本発明の電子写真感光体においては、Rzに対するSmの比であるSm/Rzが、30以上500以下であって、好ましくは100以上200以下である。Sm/Rzを上記範囲内に制御することで、クリーニングブレードによる表面層に対する外部ストレスを低減でき、ストレスクラックの発生を抑制できる。
上記のRz、Sm及びSm/Rzの条件を満たすように電子写真感光体の表面状態を制御するには、感光層の表面層中のシリカ粒子の分散性を最適化する必要があり、延いては表面層形成用塗布液(以下、単に「塗布液」ともいう)中のシリカ粒子の分散性を最適化する必要がある。本発明者が鋭意研鑽した結果、一例として、表面層形成用塗布液を作成する工程において、塗布液中のシリカ粒子をソーダ石灰ガラス素材と接触させることにより、表面層中におけるシリカ粒子の分散均一性を向上できることが分かった。ソーダ石灰ガラス素材は、構成成分として酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムを含む接触帯電性の高い金属酸化物が含まれている。そのため塗布液作成工程において、塗布液中のシリカ粒子をソーダ石灰ガラスと接触させることでシリカ粒子が帯電し、シリカ粒子間で電荷斥力が発生することより分散性を向上させることが可能となる。この塗布液作成スキームをコントロールすることで、塗布液中のシリカ粒子の分散性を制御し、感光体の表面性を制御することが可能となることを見出した。なお、本発明の電子写真感光体は上記の手法で製造したものに限定されず、上記のRz、Sm及びSm/Rzの条件を満たす表面状態を実現できれば、上記以外の手法で製造したものであってもよい。
本発明の電子写真感光体においては、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、表面層表面に押込み最大荷重30mNを5秒間負荷して測定される、感光層の弾性仕事率が41%以上48%以下であることが好ましく、44%以上47%以下であることがより好ましい。感光層中のシリカ粒子の分散状態を上記のように制御し、かつ感光層全体の弾性仕事率を上記の範囲内とすることで、感光層中に発生する、ずり応力を緩和できていると推察される。
本発明の電子写真感光体において、感光層が電荷発生層と電荷輸送層とで構成される場合、感光層の膜厚は25μm以上45μm以下であることが好ましく、30μm以上42μm以下であることがより好ましい。膜厚が上記範囲内である場合、より長期にわたり安定した画像特性を得られる電子写真感光体を実現できる。
本発明の電子写真感光体においては、感光層の表面層が含有するシリカ粒子の数平均一次粒子径が10nm以上30nm以下であることが好ましく、10nm以上20nm以下であることがより好ましい。シリカ粒子の数平均一次粒子径が上記範囲内であることで表面層表面の凹凸の平均間隔Smを小さく制御しやすくなる。上記下限未満の場合、シリカ粒子による感光層のアンカー効果が不十分となり、十分な耐摩耗性を維持できないおそれがある。また上記上限を超える場合、感光層中に生じるシリカ粒子の凝集構造が大きくなることにより、クリーニング不良等の問題が発生しやすくなるおそれがある。
なお、シリカ粒子の数平均一次粒子径は、シリカ粒子を走査型電子顕微鏡観察によって30000~300000倍、例えば100000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径を求めることで測定する。
本発明の電子写真感光体においては、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、表面層表面に押込み最大荷重30mNを5秒間負荷して測定される、感光層のビッカース硬さ(HV)が26以上であることが好ましく、26.5以上であることがより好ましく、26.5以上28以下であることが特に好ましい。ビッカース硬さが上記範囲内であることで、より長期にわたり安定した画像特性を得られる電子写真感光体を実現できる。
<導電性支持体>
導電性支持体は、感光体の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、その構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタン等の金属材料;高分子材料(ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリスチレン等)、ガラス、硬質紙等の表面に金属箔をラミネートしたもの;これらの表面に金属材料を蒸着したもの;これらの表面に導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性化合物の層を蒸着又は塗布したものが挙げられる。これらの中でも、加工の容易性の点からアルミニウムが好ましく、JIS3003系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金がより好ましい。
導電性支持体の形状は、図3に示すような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状等であってもよい。
また、導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、レーザ光による干渉縞防止のために、陽極酸化皮膜処理や、薬品や熱水等による表面処理や、着色処理や、表面を粗面化する等の乱反射処理が施されていてもよい。
<下引き層>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と感光層との間に下引き層(「中間層」ともいう)を備えるのが好ましい。
下引き層は、一般に、導電性支持体の表面の凸凹を被覆し均一にして、感光層(図2では電荷発生層)の成膜性を高め、感光層の導電性支持体からの剥離を抑え、導電性支持体と感光層との接着性を向上させる。具体的には、導電性支持体から感光層への電荷の注入が防止され、感光層の帯電性の低下を防ぎ、画像のかぶり(いわゆる黒ポチ)を防止することができる。
下引き層は、例えば、バインダ樹脂を適当な溶剤に溶解させて下引き層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成することができる。
バインダ樹脂としては、後述する感光層に含まれるものと同様のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース等の天然高分子材料等が挙げられ、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
バインダ樹脂は、下引き層上に感光層を形成する際に用いられる溶剤に対して溶解や膨潤等が起こらないこと、導電性支持体との接着性に優れること、可撓性を有すること等の特性が要求されることから、上記のバインダ樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が好ましい。
アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば、6-ナイロン、66-ナイロン、610-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン等の単独重合又は共重合ナイロン、N-アルコキシメチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂等が挙げられる。
樹脂材料を溶解又は分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;メチルカルビトール、ブチルカルビトール等のグライム類;ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエタン等の塩素系溶剤;アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤等が挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる

また、下引き層用塗布液は、無機化合物微粒子を含んでいてもよい。この下引き層の無機化合物微粒子は、感光層の表面層が含有する無機化合物微粒子とは配合目的が異なり、同一化合物であっても異なっていてもよい。
無機化合物微粒子は、下引き層の体積抵抗値を容易に調節でき、感光層への電荷の注入をさらに抑制できるとともに、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
無機化合物微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズ等が挙げられる。
下引き層用塗布液におけるバインダ樹脂と無機化合物微粒子との合計重量Cと溶剤の重量Dとの比率(C/D)は、1/99~40/60が好ましく、2/98~30/70が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の重量Eと無機化合物微粒子の重量Fとの比率E/Fは、90/10~1/99が好ましく、70/30~5/95が特に好ましい。
無機化合物微粒子を下引き層用塗布液に分散させるために、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機、ペイントシェーカ等の公知の装置を用いてもよい。
下引き層用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性や生産性等を考慮に入れて最適な方法を適宜選択すればよく、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等が挙げられる。
これらの中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗布槽に基体を浸漬した後、一定速度又は逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性及び原価の点で優れているので、電子写真感光体の製造に好適に用いることができる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置が設けられていてもよい。
形成した下引き層の乾燥工程においては、塗膜中の溶剤を自然乾燥により除去してもよく、加熱により強制的に除去してもよい。
乾燥工程における温度は、使用した溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50℃~140℃程度が適当であり、80℃~130℃程度が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがあり、また溶剤が充分に蒸発せず感光層中に残ることがある。また、乾燥温度が140℃を超えると、感光体を繰り返し使用した場合に電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化することがある。
このような温度条件は、下引き層のみならず後述する感光層等の層形成や他の処理においても共通する。
下引き層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上20μm以下、より好ましくは0.05μm以上10μm以下である。下引き層の膜厚が0.01μm未満では、下引き層として実質的に機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体から感光層への電荷の注入を防止することができなくなるおそれがある。一方、下引き層の膜厚が20μmを超えると、均一な下引き層を形成し難く、また感光体の感度も低下するおそれがある。
なお、導電性支持体の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、下引き層とすることができる。
電荷発生層は、画像形成装置等において半導体レーザ光等の照射された光を吸収することによって電荷を発生する機能を有し、電荷発生物質を主成分とし、必要に応じてバインダ樹脂や添加剤を含有する。
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用でき、具体的には、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料等のアゾ系顔料;インジゴ、チオインジゴ等のインジゴ系顔料;ペリレンイミド、ペリレン酸無水物等のペリレン系顔料;アントラキノン、ピレンキノン等の多環キノン系顔料;チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素等の有機光導電性材料;セレン、非晶質シリコン等の無機光導電性材料等が挙げられ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択して用いることができる。これらの電荷発生物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの電荷発生物質の中でも、下記一般式(A):
Figure 2023069379000002

(式中、X、X、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基である。X、X、X及びXは同一であっても異なっていてもよい。r、s、y及びzは、それぞれ独立して、0~4の整数である。r、s、y及びzは同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるチタニルフタロシアニンを用いることが好ましい。
チタニルフタロシアニンは、現在一般的に用いられているレーザ光及びLED光の発信波長域(近赤外光)で高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であり、光を吸収することにより多量の電荷を発生させるとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質に効率よく注入することができる。
一般式(A)で表されるチタニルフタロシアニンは、例えば、Moser, Frank H及びArthur L. ThomasによるPhthalocyanine Compounds、Reinhold Publishing Corp.、New York、1963に記載されている方法等の公知の製造方法によって製造することができる。
例えば、一般式(A)で表されるチタニルフタロシアニン化合物のうち、r、s、y及びzが0である無置換のチタニルフタロシアニンの場合は、フタロニトリルと四塩化チタンとを、加熱融解するか又はα-クロロナフタレン等の適当な溶剤中で加熱反応させることによってジクロロチタニルフタロシアニンを合成した後、塩基又は水で加水分解することによって得られる。
また、イソインドリンと、テトラブトキシチタン等のチタニウムテトラアルコキシドとを、N-メチルピロリドン等の適当な溶剤中で加熱反応させることによっても、チタニルフタロシアニン組成物を製造することができる。
電荷発生層の形成方法としては、電荷発生物質を導電性支持体上に真空蒸着する方法や、溶剤中に電荷発生物質を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法等がある。これらの中でも、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質を従来公知の方法によって分散させ、電荷発生層用塗布液を導電性支持体上(下引き層上)に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該分野で公知の樹脂をいずれも使用でき、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェノキシ、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等の樹脂や、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等を挙げることができる。
共重合体樹脂としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;1,2-ジメトキシエタン等のエチレングリコールのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷発生物質とバインダ樹脂との配合比率は、電荷発生物質の割合が10~99質量%の範囲にあることが好ましい。
電荷発生物質の割合が10質量%未満であると、感度が低下することがある。一方、電荷発生物質の割合が99質量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多く発生することがある。
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質を分散させる前に、予め電荷発生物質を粉砕機によって粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機等が挙げられる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミル等が挙げられる。このときの分散条件としては、用いる容器及び分散機を構成する部材の摩耗等による不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択すればよい。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、下引き層用塗布液の塗布方法と同様の方法が挙げられ、浸漬塗布法が特に好ましい。
電荷発生層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.05μm以上5μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感光体の感度が低下することがある。一方、電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体の感度が低下することがある。
<電荷輸送層>
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受け入れ、感光体表面まで輸送する機能を有し、電荷輸送物質、バインダ樹脂を含有し、必要に応じて添加剤を含有する。図2に示すように電荷輸送層が感光層の表面層に該当する場合、本発明における電荷輸送層は、項目<電子写真感光体、感光層の表面層>にて記載した表面層の構成を備える。
電荷輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。具体的には、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖又は側鎖に有するポリマー(ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン、エチルカルバゾール-ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ-9-ビニルアントラセン等)、ポリシラン等が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
電荷輸送層の形成方法としては、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷輸送物質及び無機化合物微粒子を公知の方法によって分散させ、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該分野で公知の樹脂をいずれも使用でき、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体樹脂及びそれらの共重合体樹脂;ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリフェノキシ、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリアリレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂などの樹脂;これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらのバインダ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
これらの中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性等にも優れるので特に好ましい。
電荷輸送物質(A)とバインダ樹脂(B)との比率A/Bは、10/12~10/30が好ましい。比率A/Bが10/30未満でありバインダ樹脂の比率が高くなると、浸漬塗布法によって電荷輸送層を形成する場合、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層に白濁が発生することがある。一方、比率A/Bが10/12を超えてバインダ樹脂の比率が低くなると、バインダ樹脂の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり、感光層の摩耗量が増加することがある。
電荷輸送層は、機械的強度の増強や電気的特性の向上を図るために、無機化合物微粒子や有機化合物微粒子を含有してもよい。
電荷輸送層が感光層の表面層に該当する場合、無機化合物微粒子としてのシリカ粒子の含有量は、項目<電子写真感光体、感光層の表面層>にて記載のとおりである。また感光層が表面保護層を備える場合における電荷輸送層中の無機化合物微粒子の含有量は、電荷輸送層の全固形分に対して10質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
電荷輸送層は、成膜性、可撓性及び表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル等の二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤等が挙げられる。レベリング剤としては、例えば、シリコン系レベリング剤等が挙げられる。
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;THF、ジオキサン、ジメトキシメチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。また必要に応じてアルコール類、アセトニトリル、メチルエチルケトン等の溶剤をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
電荷輸送層は、例えば、前述の電荷発生層を形成する場合と同様に、適当な溶剤中に、電荷輸送物質、バインダ樹脂、及び必要に応じて前述の添加剤を、溶解又は分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液をスプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法又は浸漬塗布法等によって、電荷発生層上に塗布することによって形成される。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層を形成する場合にも好適である。
電荷輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下することがある。一方、電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下することがある。
<表面保護層>
前述のとおり、本発明の電子写真感光体は電荷輸送層の上にさらに表面保護層が設けられていてもよい。このように表面保護層が設けられている場合、表面保護層が表面層に該当し、本発明における表面保護層は項目<電子写真感光体、感光層の表面層>にて記載した表面層の構成を備える。
表面保護層は、感光体の耐久性を向上させる機能を有し、バインダ樹脂及び無機化合物微粒子を含有し、必要に応じて添加剤を含有する。また、表面保護層は、電気特性安定化のために、電荷輸送層と同一の1種又は2種以上の電荷輸送物質を含有してもよい。
バインダ樹脂としては、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用でき、例えばポリスチレン、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂が挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
これらの中でも、摩耗特性、電気的特性を考慮した場合、ポリカーボネート、ポリアリレートが特に好ましい。
表面保護層は、例えば、前述の電荷発生層及び電荷輸送層を形成する場合と同様に、適当な溶剤中にバインダ樹脂及び無機化合物微粒子、並びに必要な場合には前述の添加剤を溶解又は分散させて表面保護層用塗布液を調製し、この塗布液をスプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等によって、電荷輸送層上に塗布することによって形成される。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、表面保護層を形成する場合にも好適である。
表面保護層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1.0μm以上8.0μm以下である。
長期的に繰り返し使用される感光体は、機械的に耐久性が高く、摩耗しにくいように設計される。しかし実機内では、帯電部材等から、オゾンやNOxガス等が発生して感光体の表面に付着し、画像流れを発生させる。この画像流れを防止するために、感光層をある一定速度以上に摩耗させる必要があり、長期的な繰り返し使用を考慮した場合、表面保護層は少なくとも1.0μm以上の膜厚が好ましい。また、表面保護層の膜厚が8.0μmを超えると、残留電位上昇や微細ドット再現性の低下の問題が発生することがある。
(2)画像形成装置
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する(可視像化する)現像手段と、現像によって形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写されたトナー像を記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段と、を少なくとも備えることを特徴とする。以下、図面を用いて本発明の画像形成装置について説明するが、本発明の画像形成装置はこれにより限定されるものではない。
図3は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を模式的に示す側面図である。図3の画像形成装置(レーザプリンタ)100は、本発明の感光体1と、露光手段(半導体レーザ)31と、帯電手段(帯電器)32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35と、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。符号51は記録媒体(記録紙又は転写紙)を示す。
感光体1は、画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電手段(帯電器)32、露光手段(半導体レーザ)31、現像手段(現像器)33、転写手段(転写帯電器)34及びクリーニング手段(クリーナ)36は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
帯電器32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
露光手段31は、半導体レーザを光源として備え、光源から出力されるレーザビーム光を、帯電器32と現像器33との間の感光体1の表面に照射することによって、帯電された感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザビームの照射及び非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
現像器33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、感光体1を臨んで設けられ、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
転写帯電器34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる接触式の転写手段である。
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
また、画像形成装置100には、感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
符号37は、転写紙と感光体を分離する分離手段、符号38は、画像形成装置が備える上記各手段を収容するケーシングを示す。
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
次いで、露光手段31から、感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱及び加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰り返されて連続的に画像が形成される。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
(下引き層の形成)
酸化チタン(石原産業株式会社製、製品名:タイベークTTO-D-1)3質量部及び共重合ポリアミド(ナイロン)(東レ株式会社製、製品名:アミラン(登録商標)、グレード:CM8000)2質量部を、メチルアルコール25質量部に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して下引き層用塗布液3リットルを調製した。
得られた下引き層用塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体11として直径30mm、長さ255mmのアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後に引き上げ、得られた塗膜を自然乾燥させて、導電性支持体11上に膜厚1μmの下引き層18を形成した。
(電荷発生層の形成)
予め、電荷発生物質として使用する、下記式で表されるチタニルフタロシアニンを調製した。
Figure 2023069379000003
ジイミノイソインドリン29.2g及びスルホラン200mlを混合し、さらにチタニウムテトライソプロポキシド17.0gを加え、窒素雰囲気下、140℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を放冷した後、析出物を濾取し、クロロホルム及び2%の塩酸水溶液で順次洗浄し、さらに水及びメタノールで順次洗浄し、乾燥させて青紫色の結晶物25.5gを得た。
得られた結晶物の化学分析の結果、上記構造式で表されるチタニルフタロシアニンであることを確認した(収率88.5%)。
得られたチタニルフタロシアニン1質量部及びブチラール樹脂(積水化学株式会社製、製品名:エスレックBM-2)1質量部を、メチルエチルケトン98質量部に加え、ペイントシェーカにて2時間分散処理して電荷発生層用塗布液3リットルを調製した。
得られた電荷発生層用塗布液を、下引き層形成の場合と同様の浸漬法で、下引き層18上に塗布し、得られた塗膜を自然乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層15を形成した。
(電荷輸送層の形成)
次いで、ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL NX130、数平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)を4g、テトラヒドロフラン14.2gに懸濁させ、撹拌羽にて30時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として下記式で表される化合物(1)11.0g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)21.4g、テトラヒドロフラン122.6gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で1日静置した。
Figure 2023069379000004
得られた電荷輸送層用塗布液を、下引き層形成の場合と同様の浸漬法で、電荷発生層15上に塗布し、得られた塗膜を115℃で1.5時間乾燥させて、膜厚35μmの表面層(電荷輸送層)16を形成し、図2に模式的に示す実施例1の電子写真感光体を得た。
なお、上記化合物(1)(スチルベン化合物)は、特許第3272257号公報に記載の方法に基づいて予め調製したものを使用した。
[実施例2]
実施例1のシリカフィラー懸濁液の調製において用いるシリカ粒子を、AEROSIL R974(商品名、日本アエロジル株式会社製、数平均一次粒子径12nm、ジメチルジクロロシラン表面処理)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の電子写真感光体を作製した。
[実施例3]
実施例1のシリカフィラー懸濁液の調製において用いるシリカ粒子を、AEROSIL R976(商品名、日本アエロジル株式会社製、数平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン表面処理)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の電子写真感光体を作製した。
[実施例4]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL RX50、数平均一次粒子径40nm、嵩密度0.17g/cm、真密度2.65g/cm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)4g、電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)11.0g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)21.4g、テトラヒドロフラン136.8gを加え、混合し、さらに30時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして実施例4の電子写真感光体を作製した。
[実施例5]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL R976、数平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン表面処理)を4g、テトラヒドロフラン18.2gに懸濁させ、撹拌羽にて40時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)11.0g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)21.4g、テトラヒドロフラン118.6gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて5分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で1週間静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして実施例5の電子写真感光体を作製した。
[実施例6]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL 9200、数平均一次粒子径12nm、ジメチルジクロロシラン表面処理後構造改質)4g、電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)11.0g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)21.4g、テトラヒドロフラン136.8gを加え、混合すること以外は、実施例4と同様にして実施例6の電子写真感光体を作製した。
[実施例7]
電荷輸送層用塗布液の調製において、ポリプロピレン容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL R974、数平均一次粒子径12nm、ジメチルジクロロシラン表面処理)4g、テトラヒドロフラン36gを加え、直径2mmのソーダ石灰ガラスビーズを入れ、ボールミルでさらに15時間撹拌を行い、その後ガラスビーズを取り除いてから、電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)9.1g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2040)17.7g、テトラヒドロフラン79.8gを加え、混合し、30時間撹拌処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の電子写真感光体を作製した。
[実施例8]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL RX50、数平均一次粒子径40nm、嵩密度0.17g/cm、真密度2.65g/cm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)を4g、テトラヒドロフラン18.2gに懸濁させ、撹拌羽にて40時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)8.3g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)16.2g、テトラヒドロフラン103.6gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて5分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして実施例8の電子写真感光体を作製した。
[実施例9]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL NX130、数平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)4g、電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)11.0g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)21.4g、テトラヒドロフラン136.8gを加え、混合すること以外は、実施例4と同様にして実施例9の電子写真感光体を作製した。
[実施例10]
電荷輸送層用塗布液の調製において、ポリプロピレン容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL NX130、数平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)4g、テトラヒドロフラン36gを加え、直径2mmのソーダ石灰ガラスビーズを入れ、ボールミルでさらに15時間撹拌を行い、その後ガラスビーズを取り除いてから、電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)11.0g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)21.4g、テトラヒドロフラン100.8gを加え、混合し、30時間撹拌処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例10の電子写真感光体を作製した。
[実施例11]
実施例2の電荷輸送層作製において、膜厚20μmの電荷輸送層を作製した。次いで、実施例7の電荷輸送層用塗布液を表面保護層用塗布液とし、スプレー塗工により電荷輸送層16上に塗布し、得られた塗膜を120℃で0.5時間乾燥させて、膜厚15μmの表面保護層を形成し、表面層として表面保護層を有する実施例11の電子写真感光体を作製した。
[実施例12]
実施例1のシリカフィラー懸濁液の調製において用いるシリカ粒子を、AEROSIL R972(商品名、日本アエロジル株式会社製、数平均一次粒子径16nm、ジメチルジクロロシラン表面処理)に変更した以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層用塗布液を調製した。電荷輸送層の形成工程においても、膜厚28μmの電荷輸送層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例12の電子写真感光体を作製した。
[実施例13]
電荷輸送層の形成工程において、膜厚24μmの電荷輸送層を形成したこと以外は実施例12と同様にして、実施例13の電子写真感光体を作製した。
[実施例14]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
実施例1のシリカフィラー懸濁液の調製において、シリカ粒子をAEROSIL R976(商品名、日本アエロジル株式会社製、数平均一次粒子径16nm、ジメチルジクロロシラン表面処理)に変更し、シリカフィラー懸濁液を得た。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)11.0g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2040)21.4g、テトラヒドロフラン122.6gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて5分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして実施例14の電子写真感光体を作製した。
[実施例15]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL NX130、数平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)を8g、テトラヒドロフラン36.4gに懸濁させ、撹拌羽にて30時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)11.2g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2040)15.6g、テトラヒドロフラン111.8gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして実施例15の電子写真感光体を作製した。
[実施例16]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL NX130、数平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)を3g、テトラヒドロフラン13.7gに懸濁させ、撹拌羽にて30時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)11.1g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)23.4g、テトラヒドロフラン127.4gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして実施例16の電子写真感光体を作製した。
[実施例17]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL NX130、数平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)を2g、テトラヒドロフラン9.1gに懸濁させ、撹拌羽にて16時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)12.6g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)25.4g、テトラヒドロフラン141.4gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして実施例17の電子写真感光体を作製した。
[実施例18]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL R976、数平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン表面処理)を6g、テトラヒドロフラン27.3gに懸濁させ、撹拌羽にて30時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)6.6g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)10.5g、テトラヒドロフラン77.8gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして実施例18の電子写真感光体を作製した。
[比較例1]
電荷輸送層用塗布液の調製において、ポリプロピレン容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL R976、数平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン表面処理)4g、テトラヒドロフラン36gを加え、直径2mmのソーダ石灰ガラスビーズを入れ、ボールミルでさらに15時間撹拌を行い、その後ガラスビーズを取り除いてから、電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)18.0g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2040)35.1g、テトラヒドロフラン179.0gを加え、混合し、30時間撹拌処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の電子写真感光体を作製した。
[比較例2]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL NX130、数平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)を4g、テトラヒドロフラン16gに懸濁させ、撹拌羽にて10時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)5.1g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)9.9g、テトラヒドロフラン55.7gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて5分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして比較例2の電子写真感光体を作製した。
[比較例3]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL NX130、数平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)4g、電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)6.2g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)12.0g、テトラヒドロフラン83.6gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして比較例3の電子写真感光体を作製した。
[比較例4]
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL RX50、数平均一次粒子径40nm、嵩密度0.17g/cm、真密度2.65g/cm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)6g、電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)6.8g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)13.3g、テトラヒドロフラン87.3gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして比較例4の電子写真感光体を作製した。
[比較例5]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL NX130、数平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理)を2g、テトラヒドロフラン9.1gに懸濁させ、撹拌羽にて30時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)12.6g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)25.4g、テトラヒドロフラン141.4gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして比較例5の電子写真感光体を作製した。
[比較例6]
電荷輸送層用塗布液の調製工程を実施例1から以下のように変更した。
ソーダ石灰ガラス容器に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL R976、数平均一次粒子径7nm、ジメチルジクロロシラン表面処理)を6g、テトラヒドロフラン27.3gに懸濁させ、撹拌羽にて20時間撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して電荷輸送物質として上記式で表される化合物(1)6.6g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)10.5g、テトラヒドロフラン77.8gを加え、混合し、さらに15時間撹拌処理を行った。得られた混合物を、泡とり錬太郎ARE-310(シンキー株式会社製)にて3分間脱泡処理を行った。粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液を調製し、20℃の条件下で静置した。以上の操作以外は実施例1と同様にして比較例6の電子写真感光体を作製した。
[測定方法、評価方法及び結果]
<表面層表面の十点平均粗さRz及び表面層表面の凹凸の平均間隔Smの測定方法>
Rz及びSmは、表面粗さ測定装置(株式会社ミツトヨ製、表面粗さ測定器1400D)を用いて、基準長さ0.8mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.1mm/sec、カットオフ種類ガウシアンの条件で測定を行った。測定位置は、電子写真感光体の軸方向の中央部とした。
<感光層の弾性仕事率及びビッカース硬さの測定方法>
感光層の弾性仕事率及びビッカース硬さは、微小硬度計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製、フィッシャースコープH100V)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、電子写真感光体の表面層表面に押込み最大荷重30mNを5秒間負荷して測定した。ビッカース硬さはJIS-Z-2244に準じて求めた。
<評価方法>
作製した実施例1~14及び比較例1~8の各電子写真感光体を、試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-B455W)のユニットに装着し、現像器を取り付け、クリーニング器のクリーニングブレードが電子写真感光体に接する圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を21gf/cm(2.05×10-1N/cm:初期線圧)に調整した。温度25℃、相対湿度8%の環境下で、文字テストチャート(ISO19752)を記録紙35万枚に印刷することで、耐刷試験を行なった。
(耐刷性の評価方法)
耐刷試験開始時及び35万枚画像形成後の感光層の厚みを、膜厚測定装置(フィルメトリクス株式会社製、型式:F-20-EXR)を用いて測定した。耐刷試験開始時の膜厚と35万枚画像形成後の膜厚との差から、感光体ドラム10万回転あたりの膜減り量を求め、得られた膜減り量から以下の基準で耐刷性を評価した。なお、膜減り量が多いほど、耐刷性が悪いと評価した。
-判定基準-
VG:10万回転あたりの膜減り量が、0.50μm未満
ロングライフを要求される複合機やプリンタにおいても問題なく使用することができる。
G:10万回転あたりの膜減り量が、0.50μm以上0.70μm未満
膜減り量がやや多いものの、ロングライフを要求される複合機やプリンタ以外に対してであれば、問題なく使用することができる。
NB:10万回転あたりの膜減り量が、0.70μm以上0.85μm未満
膜減り量が多いものの、安価な複合機やプリンタに対してであれば、問題なく使用することができる。
B:10万回転あたりの膜減り量が、0.85μm以上
膜減り量が多く、実使用性上問題となる。
(耐クラック性の評価方法)
電子写真感光体のクラック不良発生レベルを確認するために、耐刷試験中の出力画像の確認を行い、画像上にクラックの発生がないか確認を行った。クラックの発生の有無に基づき、以下の基準で耐クラック性を評価した。
-判定基準-
VG:クラックの発生なし。
G:画像上ではクラックが確認できないが、耐刷試験終了後に電子写真感光体表面上にクラックが確認できる。
B:35万枚の印刷が完了するまでに、クラックが起因となる画像不良が確認できる。
(クリーニング性の評価方法)
耐刷試験後の電子写真感光体のクリーニング不良発生レベルを確認するために、35万枚画像形成後の電子写真感光体を、試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-B455W)のユニットに装着し、A4用紙に100%濃度未転写画像を1枚出力し、その直後に当該複写機を強制的に停止させ、電子写真感光体の表面を目視にて観察し、以下の基準でクリーニング性を評価した。
-判定基準-
VG:クリーニング不良の発生なし。
G:1本又は2本のクリーニング不良が見られる。
高画質を要求される複合機やプリンタ以外に対してであれば、問題なく使用することができる。
NB:3本~5本のクリーニング不良が見られる。
安価な複合機やプリンタに対してであれば、問題なく使用することができる。
B:多数(6本以上)のクリーニング不良が見られ、実使用性上問題となる。
(総合評価の方法)
上記の評価項目(耐刷性、耐クラック性及びクリーニング性)の評価結果から、以下の基準で総合評価を行った。
-判定基準-
VG:全ての項目でVG判定であり、非常に良好。
G:いずれかの項目でG判定を含むものの、全ての項目でG判定以上であり、ロングライフや高画質を要求される複合機やプリンタ以外に対してであれば、問題なく使用することができる。
NB:いずれかの項目でNB判定を含むものの、全ての項目でNB判定以上であり、安価な複合機やプリンタに対してであれば、問題なく使用することができる。
B:いずれかの項目にB判定があり、実使用不可。
<測定・評価結果>
作製した実施例1~14及び比較例1~8の電子写真感光体における測定・評価結果の一覧を、以下の表1に示す。なお、表中の「シリカの含有量」は表面層における全固形分に対するシリカ粒子の含有量を、「塗液固形分」は塗液中におけるバインダ樹脂、電荷輸送物質、添加剤等の合計の比率を、「OCLの有無」は表面保護層の有無を、「CL性」はクリーニング性を示す。
Figure 2023069379000005
表1から明らかなように、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された感光層とを備え、前記感光層が1層以上で構成され、前記感光層の表面層がバインダ樹脂、シリカ粒子及び電荷輸送物質を含有し、前記表面層表面の十点平均粗さRzが0.08μm以上0.80μm以下であり、前記表面層表面の凹凸の平均間隔Smが15μm超120μm以下であり、前記十点平均粗さRzに対する前記平均間隔Smの比Sm/Rzが、30以上500以下である実施例1~18の電子写真感光体は、耐刷性、耐クラック性及びクリーニング性の評価のいずれにおいても、優れるものであった。これに対して、これらの要件を満たさない比較例1~4は、耐刷性や耐クラック性が、実施例に対して劣っていた。これは、電子写真感光体中のシリカ粒子の分散性が不十分であることや、表面性が制御できていないことに起因して、周辺部材の滑刷による感光層へのダメージが大きくなっているものと推察される。
実施例1、2と実施例3とを比較すると、感光層の表面層に含有されるシリカ粒子の数平均一次粒子径が10nm以上である実施例1、2は、シリカ粒子の数平均一次粒子径が10nm未満である実施例3よりも耐刷性に優れることがわかる。これは、シリカ粒子の数平均一次粒子径が10nm未満ではシリカ粒子の粒子径が小さすぎるため、アンカー効果が不足しているものと推察される。また、実施例1、2と実施例4とを比較すると、シリカ粒子の数平均一次粒子径が30nmを超える場合はSmやSm/Rzが大きい傾向になり、クリーニングブレードから電子写真感光体表面への外部ストレスが大きくなり、電子写真感光体のストレスクラックやクリーニングブレードの破損等につながるおそれがあり耐刷性との両立が困難になる。またSmやSm/Rzが小さすぎた場合も、クリーニングブレードと電子写真感光体表面との接触面積が増えると考えられ、電子写真感光体表面への外部ストレスが大きくなり、ストレスクラックやクリーニングブレードの破損等につながるリスクが増える。実施例1、2に代表される適度なSmやSm/Rzに制御することで、電子写真感光体全体への外部からの負荷を最適化できていると考えられる。
実施例1、2と実施例5とを比較すると、Rzが0.1μm以上である実施例1、2は、Rzが0.1μm未満である実施例5よりも特にクリーニング性に優れることがわかる。実施例5は感光層の表面層にシリカ粒子を含有することで耐刷性が向上しているもののRzが小さすぎるため、クリーニングブレードとの摩擦が大きく、クリーニングブレードの欠け等につながり、クリーニング不良を誘発しているものと思われる。また実施例1、2と実施例6とを比較すると、Rzが0.5μm以下である実施例1、2は、Rzが0.5μmを超える実施例6よりも特に耐クラック性に優れることがわかる。Rzが0.5μmを超えると、電子写真感光体への局所的なストレスがかかりやすい状態にありストレスクラックの原因となる場合がある。Rzを0.1μm以上0.5μm以下の範囲内に制御することにより、電子写真感光体やクリーニングブレードへのダメージを低減することができる。
実施例1、2と実施例7、8とを比較すると、Smが25μm以上50μm以下である実施例1、2は、Smが25μm未満の実施例7や、Smが50μmを超える実施例8よりも耐クラック性やクリーニング性に優れることがわかる。また実施例1、2と実施例9、10とを比較すると、Sm/Rzが100以上200以下である実施例1、2は、Sm/Rzが100未満の実施例9や、Sm/Rzが200を超える実施例10よりも耐クラック性やクリーニング性に優れることがわかる。電子写真感光体の表面性について、Smが25μm以上50μm以下、Sm/Rzが100以上200以下という範囲内に制御することで、クリーニングブレード及び電子写真感光体が互いに与えるストレスを抑制でき、特性のバランスがとれているものと考えられる。
実施例7と実施例11とを比較すると、実施例11のように表面保護層を設け、感光層が電荷発生層、電荷輸送層、及び表面保護層を備える構造にしても、表面層である表面保護層中のシリカ粒子の分散状態を制御することで、同様の効果が得られることがわかる。しかしながら、このような感光層の構造にすることで生産上の負荷が増すことから、感光層は電荷発生層及び電荷輸送層で構成される方がコスト面で有利である。
実施例1、12と実施例13との比較より、感光層の膜厚が25μm以上である実施例1、12は、膜厚が25μm未満である実施例13よりも耐刷性、耐クラック性及びクリーニング性に優れることがわかる。感光層は繰り返しの疲労により膜厚が薄くなるが、膜厚が薄くなると電気疲労が強くかかる傾向があり、電子写真感光体表面の化学的な劣化が進み、耐刷性低下やクリーニング不良等の弊害を発生しやすい傾向にある。この傾向を考慮すると、より長期にわたり安定した画像を提供するには感光層の膜厚は30μm以上であるのがより好ましい。
実施例1、2と実施例14との比較より、感光層のビッカース硬さ(HV)が26以上である実施例1、2は、感光層のビッカース硬さが26未満である実施例14よりも各種評価に優れることがわかる。感光層のビッカース硬さの値が低下すると、繰り返しの電気疲労に対する機械的強度が低下する傾向にあるが、ビッカース硬さを26より大きくすることで、クラック耐性やクリーニング不良の抑制が可能となる。
実施例1と実施例15、16との比較より、感光層の弾性仕事率が41%以上48%以下である実施例1は、弾性仕事率が41%未満である実施例15や、弾性仕事率が48%を超える実施例16よりも各種評価に優れることがわかる。感光層の構成材料の選定により弾性仕事率が小さくなるとSm/Rzが小さくなり、耐刷性は良好である反面、耐クラック性及びクリーニング性は悪化するため、これらの特性のバランスを取れないことがわかる。一方、感光層の構成材料の選定により弾性仕事率が高くなるとSm/Rzが大きくなる傾向がみられ、耐刷性が低下することがわかる。
実施例1と実施例17、18との比較より、感光層の表面層におけるシリカ粒子の含有量が、表面層の全固形分に対して8質量%以上25質量%以下である実施例1は、シリカ粒子の含有量が8質量%未満である実施例17や、シリカ粒子の含有量が25質量%を超える実施例18よりも各種評価に優れることがわかる。感光層の表面層におけるシリカ粒子の含有量を増やすとSm/Rzが小さくなる傾向があり、耐刷性は良好である反面、耐クラック性及びクリーニング性は悪化するため、これらの特性のバランスが取れないことがわかる。一方、感光層の表面層におけるシリカ粒子の含有量を減らすと、耐刷性が低下するとともに、Sm/Rzが大きくなる傾向がみられクラック発生のリスクが高まることがわかる。
[その他の実施形態]
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
1 電子写真感光体
11 導電性支持体
14 感光層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層(表面層)
18 下引き層
19 シリカ粒子(無機化合物微粒子)
31 露光手段(半導体レーザ)
32 帯電手段(帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写手段(転写帯電器)
35 定着手段(定着器)
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーニング手段(クリーナ)
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 分離手段
38 ケーシング
51 記録媒体(記録紙又は転写紙)
100 画像形成装置(レーザプリンタ)

Claims (10)

  1. 導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された感光層とを備え、
    前記感光層が1層以上で構成され、
    前記感光層の表面層がバインダ樹脂、シリカ粒子及び電荷輸送物質を含有し、
    前記表面層表面の十点平均粗さRzが0.08μm以上0.80μm以下であり、
    前記表面層表面の凹凸の平均間隔Smが15μm超120μm以下であり、
    前記十点平均粗さRzに対する前記平均間隔Smの比Sm/Rzが、30以上500以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 請求項1に記載の電子写真感光体であって、
    前記表面層における前記シリカ粒子の含有量が、前記表面層の全固形分に対して8質量%以上25質量%以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体であって、
    温度25℃、相対湿度50%の環境下で、前記表面層表面に押込み最大荷重30mNを5秒間負荷して測定される、前記感光層の弾性仕事率が41%以上48%以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の電子写真感光体であって、
    前記感光層が電荷発生層と電荷輸送層とで構成され、
    前記感光層の膜厚が25μm以上であることを特徴とする電子写真感光体。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の電子写真感光体であって、
    前記シリカ粒子の数平均一次粒子径が10nm以上30nm以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の電子写真感光体であって、
    前記十点平均粗さRzが0.1μm以上0.5μm以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の電子写真感光体であって、
    前記平均間隔Smが20μm以上50μm以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の電子写真感光体であって、
    前記十点平均粗さRzに対する前記平均間隔Smの比Sm/Rzが、100以上200以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の電子写真感光体であって、
    温度25℃、相対湿度50%の環境下で、前記表面層表面に押込み最大荷重30mNを5秒間負荷して測定される、前記感光層のビッカース硬さ(HV)が26以上であることを特徴とする電子写真感光体。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
    帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
    露光により形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
    現像により形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
    転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、
    前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、
    前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段と、
    を備えることを特徴とする画像形成装置。
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