JP2022072264A - 電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】耐刷性に優れ、高い機械的強度を有し、かつクリーニングブレードのエッジ部分の欠けに伴う画像不良や摩耗バラツキに伴う画像濃淡ムラを起こさない電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。【解決手段】導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが順次積層された感光層が積層されてなり、前記電荷輸送層が、電荷輸送物質、フィラーおよびバインダ樹脂を含有し、前記フィラーが、12~30nmの数平均一次粒子径を有する金属酸化物粒子であり、前記電荷輸送層が、0.7~1.5μmの表面粗さRzおよび2.3~3.0の表面粗さRkuの表面層を有することを特徴とする電子写真感光体により、上記の課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、耐刷性に優れ、高い機械的強度を有し、かつクリーニングブレードのエッジ部分の欠けに伴う画像不良や摩耗バラツキに伴う画像濃淡ムラを起こさない電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。
近年、電子写真感光体には、有機光導電性材料を用いた有機感光体(本明細書においては「電子写真感光体」、単に「感光体」ともいう)が広く用いられている。
しかし、有機感光体には、有機系材料の性質上、感光体周りのクリーニングブレードなどの摺刷により、その表面が摩耗し易いという欠点がある。
他方、近年のローラ帯電による接触帯電方式の増加やデジタル複写機およびプリンタなどの電子写真装置のロングライフ化、小型化および高速化に伴って、有機感光体は、その表面がより摩耗され易い、さらに厳しい条件下に曝されている。
そこで、上記の欠点を克服する手段として、感光体の材料表面の機械的特性(耐摩耗性、耐刷性)を向上させる取り組みが現在までなされている。
具体的には、感光体の表面層に、フィラーとして無機微粒子(単に「無機粒子」ともいう)を加えることが検討され、例えば、特開2017-086131号公報(特許文献1)には、電子写真感光体上に、帯電手段、露光手段、トナーを含む液体現像剤により現像する現像手段、現像手段により形成した電子写真感光体上のトナー像を中間転写体上に一次転写する一次転写手段、中間転写体上のトナー像を記録媒体に転写する二次転写手段とを有する画像形成装置に用いる電子写真感光体において、その表面層に少なくとも無機微粒子と有機微粒子を含有している電子写真感光体が開示され、無機微粒子としては、少なくとも粒径1~200nmのシリカ粒子、アルミナ粒子、二酸化チタン粒子、チタン酸ストロンチウム粒子のいずれかが好ましいこと、電子写真感光体表面粗さ(Rz)は0.2~1.5μmが好ましいことが開示されている。
特開2017-086131号公報
しかしながら、上記の先行技術では、感光体表面の耐摩耗性の向上と良好なクリーニング性との両立は困難である。
すなわち、電荷輸送層のような電子写真感光体の最表面層が無機粒子を含有することにより、画像形成装置のクリーニングブレードのエッジ部分の欠けに伴うクリーニング不良が起こり、画像不良や摩耗バラツキに伴う画像濃淡ムラが発生し易い。そこで、クリーニング不良を抑制するために、無機粒子の粒子径を小さくすると、耐摩耗性が悪化することになる。
そこで、本発明は、耐刷性に優れ、高い機械的強度を有し、かつクリーニングブレードのエッジ部分の欠けに伴う画像不良や摩耗バラツキに伴う画像濃淡ムラを起こさない電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、感光体の最表面層である電荷輸送層が電荷輸送物質、フィラーおよびバインダ樹脂を含有し、フィラーが特定の数平均一次粒子径を有する金属酸化物粒子であり、電荷輸送層が特定の表面粗さRzおよび表面粗さRkuの表面層を有することで、感光体の耐刷性の向上とクリーニング性とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが順次積層された感光層が積層されてなり、
前記電荷輸送層が、電荷輸送物質、フィラーおよびバインダ樹脂を含有し、
前記フィラーが、12~30nmの数平均一次粒子径を有する金属酸化物粒子であり、
前記電荷輸送層が、0.7~1.5μmの表面粗さRzおよび2.3~3.0の表面粗さRkuの表面層を有する
ことを特徴とする電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
本発明によれば、耐刷性に優れ、高い機械的強度を有し、かつクリーニングブレードのエッジ部分の欠けに伴う画像不良や摩耗バラツキに伴う画像濃淡ムラを起こさない電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
このような本発明の効果は、比較的小さな特定の粒子径を有する金属酸化物粒子が適度にかつ均一に凝集して電荷輸送層に含有することにより発揮されるものと考えられ、電荷輸送層の特定の表面粗さRzおよび表面粗さRkuが、適度にかつ均一に凝集した形態を表しているものと考えられ、このような技術は上記の特許文献1には開示されていない。
本発明の感光体は、次の条件(1)~(4)のいずれか1つを満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(1)金属酸化物粒子が、バインダ樹脂100質量部に対して20~40質量部含有されている。
(2)金属酸化物粒子が、シリカ粒子である。
(3)金属酸化物粒子が、ジメチルジクロロシランもしくはヘキサメチルジシラザンで表面処理されたシリカ粒子である。
(4)前記電荷輸送物質が、一般式(I):
Figure 2022072264000002
(式中、R1、R2、R5およびR6は、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアラルキル基であり、m、n、pおよびqは、同一または異なって、0~3の整数であり、R3およびR4は、同一または異なって、水素原子またはアルキル基である。)
で表されるスチルベン化合物である。
本発明の感光体の要部の構成を示す概略断面図である。 本発明の画像形成装置の要部の構成を示す模式側面図である。
(1)電子写真感光体
本発明の感光体は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが順次積層された感光層が積層されてなり、
前記電荷輸送層が、電荷輸送物質、フィラーおよびバインダ樹脂を含有し、
前記フィラーが、12~30nmの数平均一次粒子径を有する金属酸化物粒子であり、
前記電荷輸送層が、0.7~1.5μmの表面粗さRzおよび2.3~3.0の表面粗さRkuの表面層を有する
ことを特徴とする。
まず、フィラーとしての金属酸化物粒子および感光体の最表面層になる電荷輸送層の表面粗さについて説明し、その後で感光体の各構成について説明する。
<金属酸化物粒子>
本発明の感光体は、その最表面層である電荷輸送層に、フィラーとして金属酸化物を含有する。
金属酸化物としては、シリカ(二酸化珪素:SiO2)、アルミナ(Al23)、セリア(CeO2)、酸化モリブデン(MoO3)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)、磁鉄鉱(Fe34)および種々の形態のFe23を含む酸化鉄、酸化ニオブ(Nb25)、酸化バナジウム(VO)、酸化タングステン(WO2)および酸化スズ(SnO)が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上の混合物または混合酸化物として用いることができる。なお、括弧内の化学式は、代表的な酸化物形態であり、金属原子の原子価により異なる酸化物形態もあり、本発明ではこれらを含む。
上記の酸化物の中でも、耐摩耗性の点で、シリカ、アルミナおよびチタニアが好ましく、電気特性の点で、シリカが特に好ましい。
本発明において好適に用いられるシリカ粒子は、上記の数平均粒子径を有するものであれば、製法由来に限定されない。シリカ粒子としては、四塩化ケイ素を燃焼して得られるヒュームドシリカ、プラズマなどの高エネルギーによりシリカを気相中で微粒子化するアーク法シリカなどの乾式法シリカ粒子;ケイ酸ナトリウム水溶液を原料としてアルカリ条件で合成した沈降法シリカ、酸性条件で合成したゲル法シリカなどの湿式法シリカ粒子;酸性ケイ酸をアルカリ性にして重合することで得られるコロイダルシリカ粒子;有機シラン化合物の加水分解によって得られるゾルゲル法シリカ粒子などが挙げられる。
本発明のフィラーである金属酸化物粒子は、12~30nmの数平均一次粒子径を有する。
金属酸化物粒子の数平均一次粒子径が12nm未満では、金属酸化物粒子の凝集体が脆く、感光体の耐摩耗性に対しての効果が十分に得られないことがある。一方、金属酸化物粒子の数平均一次粒子径が30nmを超えると、クリーニングブレードのエッジ部分の一部が欠ける状態を引き起こし易く、残留したトナーを十分クリーニングすることができなくなり、印字画像にスジ状の欠陥を発生させることがある。
好ましい金属酸化物粒子の数平均一次粒子径は、16~20nmである。
数平均一次粒子径とは、微粒子を走査型電子顕微鏡観察によって30000~300000倍、例えば10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値であり、その測定方法については、実施例で説明する。
<電荷輸送層の表面粗さ>
本発明の感光体の最表面層である電荷輸送層は、0.7~1.5μmの表面粗さRzおよび2.3~3.0の表面粗さRkuの表面層を、より好ましくは0.9~1.2μmの表面粗さRzおよび2.5~2.8の表面粗さRkuの表面層を有する。
これは、粒子径が小さい金属酸化物粒子が適度にかつ均一に凝集していることで達成される。一般的に金属酸化物粒子の粒子径は、大きいほど耐摩耗性が上がるが、クリーニングブレードのエッジ部の欠けを引き起こす。本発明では、小さい金属酸化物粒子を適度に凝集させることで、大きな粒子を作り、耐摩耗性を向上させ、クリーニングブレードの欠けに対しては、小さい粒子が剥がれていくことから、エッジ部分の欠けを発生させ難くすることができる。
表面粗さRzおよびRkuは、感光体の最表面層である電荷輸送層における金属酸化物による凝集の状態の指標であり、それぞれJIS-B-0601(1994)で定義される十点平均粗さRzおよびJIS-B-0601(2001)で定義されるクルトシスRkuに基づいて測定することができ、その測定方法については、実施例で説明する。
表面粗さRzが0.7μm未満では、金属酸化物粒子の凝集が十分ではなく耐摩耗性に対しての効果が得られ難い。一方、表面粗さRzが1.5μを超えると、金属酸化物粒子の凝集が大き過ぎるため、クリーニングブレードのエッジ部分の一部が欠ける状態を引き起こし易く、残留したトナーを十分クリーニングすることができなくなり、印字画像にスジ状の欠陥を発生させることがある。
表面粗さRkuが2.3未満では、表面凹凸のばらつきが大きいことを表しており、金属酸化物粒子の凝集体の大きさにばらつきが大きいことが考えられ、このため均一に表面層が削れないため、印字画像に濃淡を発生させ易くなる。一方、表面粗さRkuが3.0を超えると、表面が凸上に尖っていることを表しており、非常に大きい金属酸化物粒子の凝集体が存在すると考えられる。このため、クリーニングブレードのエッジ部分の一部が欠ける状態を引き起こし易く、残留したトナーを十分クリーニングすることができなくなり、印字画像にスジ状の欠陥を発生させることがある。
本発明の金属酸化物粒子は、感光体の電気特性を向上させるために、表面処理剤で表面処理されているのが好ましい。
金属酸化物粒子がシリカ粒子である場合、その表面処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、N-メチル-ヘキサメチルジシラザン、N-エチル-ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチル-N-プロピルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、又はポリジメチルシロキサンが挙げられる。
これらの表面処理剤の中でも、シリカ粒子表面の水酸基との反応性が良好で、シリカ粒子表面の水酸基が少なさせ、その結果、水分(湿度)による感光体の電気特性の低下を抑制することができることから、ジメチルジクロロシランおよびヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
本発明においては、上記の表面処理剤で処理したシリカ粒子を用いることができるが、表面処理剤で処理された市販のシリカ微粒子を用いることもできる。市販のシリカ微粒としては、例えば、日本アエロジル株式会社の製品名:R972、R974、RX200、NX130、NX90G、NX90S、NAX-50;キャボットジャパン株式会社の製品名:TS610、TG709F、TG6110G、株式会社アドマテックスの製品名:YA010Cが挙げられる。
金属酸化物粒子の含有量については、電荷輸送層の項で説明する。
<感光体>
本発明の感光体は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが順次積層された感光層が積層されてなる。
以下に図面を用いて、本発明の感光体を説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。
本発明の感光体は、以下に説明するように、導電性支持体と感光層との間に下引き層を備えていてもよく、また感光層、すなわち電荷輸送層上に表面保護層を備えていてもよい。但し、感光体が表面保護層を備える場合、表面保護層が感光体の最表面層になるため、表面保護層が、特定のフィラーを含有し、かつ特定の表面粗さを有する電荷輸送層の条件を満足することにより、感光体が本発明の優れた効果を発揮する。
図1は、本発明の感光体の要部の構成を示す概略断面図である。
感光体1は、導電性支持体11上に、下引き層18が設けられ、その上に電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13およびそれを結着させるバインダ樹脂17を含有する電荷輸送層16とがこの順序で積層されてなる積層構造の感光層(「積層型感光層」、「機能分離型感光層」ともいう)14が設けられた積層型感光体(「機能分離型感光体」ともいう)である。
以下、各構成について説明する。
<導電性支持体11>
導電性支持体は、感光体の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、その構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼およびチタンなどの金属材料、ならびに表面に金属箔ラミネート、金属蒸着処理または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布した、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンおよびポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙ならびにガラスなどが挙げられる。これらの中でも、加工の容易性の点からアルミニウムが好ましく、JIS3003系、JIS5000系およびJIS6000系などのアルミニウム合金が特に好ましい。
導電性支持体の形状は、図5に示すような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
また、導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、レーザ光による干渉縞防止のために、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
<下引き層(「中間層」ともいう)18>
本発明の感光体は、導電性支持体11と感光層14との間に下引き層18を備えるのが好ましい。
下引き層は、一般に、導電性支持体の表面の凸凹を被覆し均一にして、感光層、ここでは電荷発生層の成膜性を高め、感光層の導電性支持体からの剥離を抑え、導電性支持体と感光層との接着性を向上させる。具体的には、導電性支持体からの感光層への電荷の注入が防止され、感光層の帯電性の低下を防ぎ、画像のかぶり(いわゆる黒ぽち)を防止することができる。
下引き層は、例えば、バインダ樹脂を適当な溶剤に溶解させて下引き層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成することができる。
バインダ樹脂としては、後述する感光層に含まれるものと同様のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。
バインダ樹脂は、下引き層上に感光体層を形成する際に用いられる溶剤に対して溶解や膨潤などが起こらないこと、導電性支持体との接着性に優れること、可撓性を有することなどの特性が要求されることから、上記のバインダ樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が好ましい。
アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば、6-ナイロン、66-ナイロン、610-ナイロン、11-ナイロンおよび12-ナイロンなどの単独重合または共重合ナイロン、N-アルコキシメチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などが挙げられる。
樹脂材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤、アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
また、下引き層用塗布液は、金属酸化物粒子19を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、下引き層の体積抵抗値を容易に調節でき、感光層への電荷の注入をさらに抑制できると共に、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどが挙げられる。
下引き層用塗布液におけるバインダ樹脂と金属酸化物粒子との合計重量Cと溶剤の重量Dとの比率(C/D)は、1/99~40/60が好ましく、2/98~30/70が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の重量Eと金属酸化物粒子の重量Fとの比率E/Fは、90/10~1/99が好ましく、70/30~5/95が特に好ましい。
金属酸化物粒子を下引き層用塗布液に分散させるために、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機およびペイントシェーカなどの公知の装置を用いてもよい。
下引き層用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択すればよく、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。
これらの中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体の製造に好適に用いることができる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置が設けられていてもよい。
自然乾燥により塗膜中の溶剤を除去してもよいが、加熱により強制的に塗膜中の溶剤を除去してもよい。
このような乾燥工程における温度は、使用した溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50~140℃程度が適当であり、80~130℃程度が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがあり、また溶剤が充分に蒸発せず感光体層中に残ることがある。また、乾燥温度が約140℃を超えると、感光体の繰り返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化することがある。
このような温度条件は、下引き層のみならず後述する感光層などの層形成や他の処理においても共通する。
下引き層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.05~10μmである。
下引き層の膜厚が0.01μm未満では、下引き層として実質的に機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体からの感光層への電荷の注入を防止することができなくなるおそれがある。一方、下引き層の膜厚が20μmを超えると、均一な下引き層を形成し難く、また感光体の感度も低下するおそれがある。
なお、導電性支持体の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、下引き層とすることができる。
<電荷発生層15>
電荷発生層は、画像形成装置などにおいて半導体レーザ光などの照射された光を吸収することによって電荷を発生する機能を有し、電荷発生物質を主成分とし、必要に応じてバインダ樹脂や添加剤を含有する。
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用でき、具体的には、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料;インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料;ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料;アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料;チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料;スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料;ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などが挙げられ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択して用いることができる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの電荷発生物質の中でも、下記一般式(A):
Figure 2022072264000003
(式中、X1、X2、X3およびX4は、同一または異なって、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、r、s、yおよびzは、同一または異なって0~4の整数である)
で表されるチタニルフタロシアニンを用いることが好ましい。
チタニルフタロシアニンは、現在一般的に用いられているレーザ光およびLED光の発信波長域(近赤外光)で高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であり、光を吸収することにより多量の電荷を発生させると共に、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質13に効率よく注入することができる。
一般式(A)で表されるチタニルフタロシアニンは、例えばMoser, Frank HおよびArthur L. ThomasによるPhthalocyanine Compounds、Reinhold Publishing Corp.、New York、1963に記載されている方法などの公知の製造方法によって製造することができる。
例えば、一般式(A)で表されるチタニルフタロシアニン化合物のうち、r、s、yおよびzが0である無置換のチタニルフタロシアニンの場合は、フタロニトリルと四塩化チタンとを、加熱融解するかまたはα-クロロナフタレンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによってジクロロチタニルフタロシアニンを合成した後、塩基または水で加水分解することによって得られる。
また、イソインドリンとテトラブトキシチタンなどのチタニウムテトラアルコキシドとを、N-メチルピロリドンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによっても、チタニルフタロシアニン組成物を製造することができる。
電荷発生層の形成方法としては、電荷発生物質を導電性支持体上に真空蒸着する方法、および溶剤中に電荷発生物質を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法などがある。これらの中でも、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質を従来公知の方法によって分散させ、電荷発生層用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該分野で公知の樹脂をいずれも使用でき、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェノキシ、ポリビニルブチラールおよびポリビニルホルマールなどの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。
共重合体樹脂としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶剤としては、例えば、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル類、1,2-ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、またはN,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
電荷発生物質とバインダ樹脂との配合比率は、電荷発生物質の割合が10~99質量%の範囲にあることが好ましい。
電荷発生物質の割合が10質量%未満であると、感度が低下することがある。一方、電荷発生物質の割合が99質量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多く発生することがある。
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質を分散させる前に、予め電荷発生物質を粉砕機によって粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などを挙げることができる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルまたはサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択すればよい。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、下引き層用塗布液の塗付方法と同様の方法が挙げられ、浸漬塗布法が特に好ましい。
電荷発生層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.05~5μmであり、より好ましくは0.1~1μmである。
電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感光体の感度が低下することがある。一方、電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり感光体の感度が低下することがある。
<電荷輸送層16>
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ感光体表面まで輸送する機能を有し、電荷輸送物質、フィラーおよびバインダ樹脂、必要に応じて添加剤を含有する。
電荷輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマー(ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン、エチルカルバゾール-ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ-9-ビニルアントラセンなど)、ポリシランなどが挙げられる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
これらの種々の電荷輸送物質の中でも、電気特性、耐久性および化学的安定性において、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体およびこれらの化合物が複数種結合したものが好ましく、スチルベン誘導体がより好ましく、下記の一般式(I):
Figure 2022072264000004
(式中、R1、R2、R5およびR6は、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアラルキル基であり、m、n、pおよびqは、同一または異なって、0~3の整数であり、R3およびR4は、同一または異なって、水素原子またはアルキル基である。)
で表されるスチルベン化合物が特に好ましい。
一般式(I)における置換基R1、R2、R5およびR6について説明する。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシなどの炭素数が1~6のアルコキシ基が挙げられる。
アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ビフェニリル、o-テルフェニルなどが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、トリチルなどが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
置換基R1、R2、R5およびR6の指数を示すm、n、pおよびqは、同一または異なって、0~3の整数であり、この指数が2以上のとき、各置換基は互いに異なっていてもよい。
また、一般式(I)における置換基R3およびR4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルなどの炭素数1~3のアルキル基が挙げられる。
一般式(I)で表されるスチルベン化合物は、例えば、特許第3272257号公報に記載の方法により合成することができる。
一般式(I)で表されるスチルベン化合物としては、例えば、下記の化合物(1)~(3)が挙げられ、電気特性および溶解性の点で化合物(1)が特に好ましい。
Figure 2022072264000005
電荷輸送層の形成方法としては、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷輸送物質およびフィラーを従来公知の方法によって分散させ、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該分野で公知の樹脂をいずれも使用でき、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリフェノキシ、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂などの樹脂、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
電荷輸送物質(A)とバインダ樹脂(B)との比率A/Bは、好ましくは10/12~10/30で用いられる。
比率A/Bが10/30未満でありバインダ樹脂の比率が高くなると、浸漬塗布法によって電荷輸送層を形成する場合、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層に白濁が発生することがある。一方、比率A/Bが10/12を超えてバインダ樹脂の比率が低くなると、バインダ樹脂の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり、感光層の摩耗量が増加することがある。
フィラーとしての金属酸化物粒子は、バインダ樹脂100質量部に対して20~40質量部含有されているのが好ましい。
金属酸化物粒子の含有量が20質量部未満では、耐摩耗性に対する効果が十分に得られないことがある。一方、金属酸化物粒子の含有量が40質量部を超えると、分散性が十分ではなく凝集物が多くなりクリーニング性が悪化することがある。
好ましい金属酸化物粒子の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して25~35質量部である。
電荷輸送層は、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤またはレベリング剤などの添加剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
また、電荷輸送層は、機械的強度の増強や電気的特性の向上を図るために、無機化合物または有機化合物の微粒子を含有してもよい。
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。また必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
電荷輸送層は、例えば、前述の電荷発生層15を形成する場合と同様に、適当な溶剤中に電荷輸送物質13およびバインダ樹脂17、ならびに必要な場合には前述の添加剤を溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液をスプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法または浸漬塗布法などによって、電荷発生層15上に塗布することによって形成される。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層を形成する場合にも多く利用されている。
電荷輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5~50μm、より好ましくは10~40μmである。
電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下することがある。一方、電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下することがある。
(2)画像形成装置100
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する(可視像化する)現像手段と、現像によって形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写されたトナー像を記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする。
図面を用いて、本発明の画像形成装置およびその動作について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
図2は、本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
図2の画像形成装置(レーザプリンタ)100は、本発明の感光体1と、露光手段(半導体レーザ)31と、帯電手段(帯電器)32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35と、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。符号51は記録媒体(記録紙または転写紙)を示す。
感光体1は、画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電手段(帯電器)32、露光手段31、現像手段(現像器)33、転写手段(転写帯電器)34およびクリーニング手段(クリーナ)36は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
帯電器32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
露光手段31は、半導体レーザを光源として備え、光源から出力されるレーザビーム光を、帯電器32と現像器33との間の感光体1の表面に照射することによって、帯電された感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザビームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
現像器33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、感光体1を臨んで設けられ、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
転写帯電器34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる接触式の転写手段である。
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
また、画像形成装置100には、感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
符号37は、転写紙と感光体を分離する分離手段、符号38は、画像形成装置の前記の各手段を収容するケーシングを示す。
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
次いで、露光手段31から、感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
以下に、図面に基づき実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で用いたフィラーとしての金属酸化物粒子の数平均一次粒子径、感光体の最表面層である電荷輸送層の表面粗さRzおよびRkuを次のようにして測定した。
[金属酸化物粒子の数平均一次粒子径]
金属酸化物粒子を走査型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値を数平均一次粒子径(nm)とした。
具体的には、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所社製、型式:S-4800)の透過電子検出器を用いて、加速電圧:30kV無常着、倍率10000倍で観察した。画像上ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、フェレ方向径を測定し平均値を算出し、これを数平均一次粒径とした。
[感光体の最表面層である電荷輸送層の表面粗さRzおよびRku]
感光体の最表面層である電荷輸送層におけるフィラーとしての金属酸化物粒子による凝集の状態を、感光体の電荷輸送層の表面粗さにより確認した。その表面粗さを表す指標として、JIS-B-0601(1994)で定義される十点平均粗さRzおよびJIS-B-0601(2001)で定義されるクルトシスRkuを用いた。
十点平均粗さRzは、感光体の断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分において、平均線に平行かつ断面曲線を横切らない直線から、平均線に垂直な方向に測定した最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差をμmで表した値を意味する。
クルトシスRkuは、下式に示すように、測定対象物表面の基準長さlrにおける、転がり円うねり曲線Z(x)の4乗平均を、断面曲線の2乗平均平方根Rqの4乗で割った値と定義され、表面の鋭さの尺度で高さ分布の広がりを表す。
Figure 2022072264000006
すなわち、Rkuが3に近ければ表面凹凸の高さ分布が正規分布に近づき、Rku>3のとき、表面凹凸の高さ分布が正規分布に比べて相対的に尖っていることを表し、Rku<3のとき、表面凹凸の高さ分布が正規分布に比べて相対的に平坦であることを表している。
具体的には、表面粗さ測定装置(株式会社東京精密製、型式:Surfcom1400D)を用いて、基準長さ0.8mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.1mm/sec、カットオフ種類ガウシアンの方法で、測定位置を感光体の軸方向の中央部として、表面粗さRz(μm)およびRkuを測定した。
(実施例1)
酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:タイベークTTO-D-1)3質量部および共重合ポリアミド(ナイロン)(東レ株式会社製、商品名:アミラン(登録商標)、グレード:CM8000)2質量部を、メチルアルコール25質量部に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して下引き層用塗布液3リットルを調製した。
得られた下引き層用塗布液を塗布層に満たし、導電性支持体11として直径30mm、長さ255mmのアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後に引き上げ、得られた塗膜を自然乾燥させて、導電性支持体11上に膜厚1μmの下引き層18を形成した。
予め、電荷発生物質として使用する、下記構造式で表されるチタニルフタロシアニンを調製した。
Figure 2022072264000007
ジイミノイソインドリン29.2gおよびスルホラン200mlを混合し、さらにチタニウムテトライソプロポキシド17.0gを加え、窒素雰囲気下、140℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を放冷した後、析出物を濾取し、クロロホルムおよび2%の塩酸水溶液で順次洗浄し、さらに水およびメタノールで順次洗浄し、乾燥させて青紫色の結晶物25.5gを得た。
得られた化合物の化学分析の結果、上記構造式で表されるチタニルフタロシアニンであることを確認した(収率88.5%)。
得られたチタニルフタロシアニン1質量部およびブチラール樹脂(積水化学株式会社製、商品名:エスレックBM-2)1質量部を、メチルエチルケトン98質量部に加え、ペイントシェーカにて2時間分散処理して電荷発生層用塗布液3リットルを調製した。
得られた電荷発生層用塗布液を、下引き層形成の場合と同様の浸漬法で、下引き層上に塗布し、得られた塗膜を自然乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次いで、シリカ粒子(数平均一次粒径20nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)NX90G)120g、電荷輸送物質として化合物(1)250g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)375gを、テトラヒドロフラン2725gに加え、混合し、ボールミルにて15時間撹拌処理した。得られた混合物を、粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:マイクロフルイダイザーM110P)を用いて、5Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液3192gを調製した。
得られた電荷輸送層用塗布液を、下引き層形成の場合と同様の浸漬法で、電荷発生層上に塗布し、得られた塗膜を120℃で1時間乾燥させて、膜厚30μmの電荷輸送層を形成し、図1に示す感光体を得た。
特許第3272257号公報に記載の方法に基づいて予め調製しておいた化合物(1)(スチルベン化合物)を電荷輸送物質として使用した。
(実施例2)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径12nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RX200)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例3)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径30nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RAX50)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例4)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径12月nm、シリコーンオイル表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RY200)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例5)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径12nm、メタクリロキシシラン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)R711)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例6)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径12nm、ジメチルジクロロシラン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)R974)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例7)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径20nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)NX90G)75gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例8)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径20nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)NX90G)150gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例9)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径20nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)NX90G)65gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例10)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径20nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)NX90G)160gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例11)
電荷輸送層用塗布液の調製において、粒子分散装置による5Pass分散処理を10Pass分散処理にしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例12)
電荷輸送層用塗布液の調製において、粒子分散装置による5Pass分散処理を2Pass分散処理にしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例13)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径20nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)NX90G)60gおよびシリカ粒子(数平均一次粒径12nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RX200)60gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例14)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径12nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RX200)135gを用い、粒子分散装置による5Pass分散処理を10Pass分散処理にしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例15)
電荷輸送層用塗布液の調製において、電荷輸送物質として化合物(1)に代わりに、トリフェニルアミンダイマー(N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(m-トリル)ベンジジン、東京化成工業株式会社製、製品コード:D2448)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(実施例16)
電荷輸送層用塗布液の調製において、電荷輸送物質として化合物(1)に代わりに、スチルベン化合物(4-(2,2-ジフェニルエチル)-4',4''-ジメチル-トリフェニルアミン、高砂香料工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(比較例1)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子を用いないこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(比較例2)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径40nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RX50)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(比較例3)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径7nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RX300)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(比較例4)
電荷輸送層用塗布液の調製において、粒子分散装置による5Pass分散処理を20Pass分散処理にしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(比較例5)
電荷輸送層用塗布液の調製において、粒子分散装置による5Pass分散処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(比較例6)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径20nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)NX90G)60gおよびシリカ粒子(数平均一次粒径30nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RAX50)60gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
(比較例7)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子(数平均一次粒径20nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)NX90G)60gおよびシリカ粒子(数平均一次粒径40nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RX50)60gを用い、粒子分散装置による5Pass分散処理を10Pass分散処理にしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
[評価]
作製した実施例1~16および比較例1~7の感光体を、試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-B455W)のユニットに搭載して、30万枚画像形成することにより、以下のようにして、初期感度、耐刷性、クリーニング性および画像ムラ(画像上濃淡)を評価した。
[初期感度]
現像部での感光体表面電位、具体的には感度をみるために露光を行ったときの黒地部分の感光体表面電位VL(-V)を測定し、下記の基準に基づいて初期感度を評価した。
測定は、試験用デジタル複写機から現像器を取り外し、代わりに現像部位に表面電位計(トレック・ジャパン社製、型式:MODEL 344)を設けることで行った。
<判定基準>
A:VL(-V)<80
高感度を要求される高速の複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
B:80≦VL(-V)<110
中低速の複合機もしくはプリンタにおいては問題なく使用可
C:110≦VL(-V)<140
低速で安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば、やや濃度は薄いものの問題なく使用可
D:140≦VL(-V)
感度が悪いため、濃度が薄く、実使用上問題あり
[耐刷性]
デジタル複合機に備わるクリーニング器のクリーニングブレードが、感光体に接する圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を21gf/cm(2.06×10-1N/cm:初期線圧)に調整した。温度25℃/湿度50%の常温/常湿環境下で、文字テストチャート(ISO19752)を記録紙30万枚に印刷することで、耐刷試験を行なった。
耐刷試験開始時と30万枚画像形成後の感光層の厚みを、膜厚測定装置(フィルメトリックス社製、型式:F-20-EXR)を用いて測定した。
耐刷試験開始時の膜厚と30万枚画像形成後の膜厚との差から、感光体ドラム10万回転あたりの削れ量を求め、下記の判定基準に基づいて耐刷性を評価した。
なお、削れ量が多い程、耐刷性が悪いと評価した。
<判定基準>
A:削れ量<0.50μm/10万回転
ロングライフが要求される複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
B:0.50μm/10万回転≦削れ量<0.70μm/10万回転
削れ量がやや多いものの、ロングライフが要求される複合機もしくはプリンタ以外であれば問題なく使用可
C:0.70μm/10万回転≦削れ量<0.85μm/10万回転
削れ量が多いものの、安価な複合機もしくはプリンタであれば問題なく使用可
D:0.85μm/10万回転≦削れ量
削れ量が多く、実使用性上問題あり
[クリーニング性]
耐刷試験後の感光体のクリーニング不良発生レベルを確認するために、30万枚画像形成後の感光体を試験用デジタル複写機にセットし、A4用紙に100%濃度未転写画像を1枚出力し、その直後に画像形成装置を強制的に停止させ、感光体の表面を目視にて観察し、下記の基準に基づいてクリーニング性(不良の度合い)を評価した。
<判定基準>
A:クリーニング不良の発生なし
高画質が要求される複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
B:1~2本のクリーニング不良あり
高画質が要求される複合機もしくはプリンタ以外であれば問題なく使用可
C:3~5本のクリーニング不良あり
安価な複合機もしくはプリンタであれば問題なく使用可
D:多数のクリーニング不良あり
実使用上問題あり
[画像ムラ(画像上濃淡)]
耐刷試験後の感光体の画像ムラレベルを確認するために、30万枚画像形成後の感光体を試験用デジタル複写機にセットし、A4用紙にハーフトーン画像を1枚出力し、目視にて観察し、下記の基準に基づいて画像ムラ発生の度合いを評価した。
<判定基準>
A:画像上濃淡なし
高画質が要求される複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
B:画像上1~2か所に濃淡ムラあり
高画質が要求される複合機もしくはプリンタ以外の場合であれば問題なく使用可
C:画像上3~5か所に濃淡ムラあり
安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば問題なく使用可
D:画像上、至る所に濃淡ムラあり
実使用上問題あり。
<総合評価>
上記の評価の判定結果に基づいて、下記の基準で感光体を総合評価した。
A:全項目でA判定、非常に良好
ロングライフおよび高画質が要求される複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
B:耐刷性、クリーニング性のどちらにもCおよびD判定はなく、いずれかがB判定
ロングライフおよび高画質が要求される複合機もしくはプリンタ以外であれば問題なく使用可
C:耐刷性、クリーニング性のどちらにもD判定はなく、いずれかがC判定
安価な複合機もしくはプリンタであれば問題なく使用可
D:耐刷性、クリーニング性のいずれかがD判定
実使用不可
作製した感光体の電荷輸送層の主要構成材料および物性を表1に、および得られた測定および評価結果を表2に示す。
表1中の記号および略号はそれぞれ下記の意味を有する。
・シリカ粒子の材料および含有量の「A/B」:2種のシリカ粒子AおよびBを使用
・HMDS:ヘキサメチルジシラザン
・SIO:シリコーンオイル
・MOS:メタクリロキシシラン
・DMDCS:ジメチルジクロロシラン
・TPAD:トリフェニレンアミンダイマー
Figure 2022072264000008
Figure 2022072264000009
表1および表2の結果から、次のことがわかる。
(1)電荷輸送層が、フィラーの金属酸化物粒子として12~30nmの数平均一次粒子径を有するシリカ粒子を含有し、感光体の表面層である電荷輸送層が、0.7~1.5μmの表面粗さRzおよび2.3~3.0μmの表面粗さRkuの表面層を有する感光体(実施例1~16)は、シリカ粒子を含有していない感光体(比較例1)、数平均一次粒子径が上記範囲外のシリカ粒子を含有する感光体(比較例2および3)、表面粗さRzおよびRkuの少なくともいずれか一方が上記範囲外である感光体(比較例4~7)に比べて、耐刷性向上とクリーニング不良および画像上濃淡ムラの抑制とを達成できること
(2)シリカ粒子の含有量を変化させた感光体(実施例7~10)では、含有量が少ないと耐摩耗性が悪化傾向にあり、含有量が多いとクリーニング性が悪化傾向にあり、含有量がバインダ樹脂100質量部に対して20~40質量部であるとより良好であること
(3)表面処理剤の異なるシリカ粒子を用いた感光体(実施例2および4~6)では、ヘキサメチルジシラザンおよびジメチルジクロロシランで表面処理したシリカ粒子を用いた感光体が良好な感度を有すること
(4)異なる電荷輸送物質を用いた感光体(実施例1、15および16)では、一般式(1)の化合物(1)を用いた感光体が良好な感度を有すること
(5)数平均一次粒子径の差異を比較した感光体(実施例2および3、比較例2および3)では、数平均一次粒子径が小さい実施例2および比較例3の感光体が、クリーニング性が良好な傾向にあり、かつ耐刷性が悪化傾向にあり、一方、数平均一次粒子径が大きい実施例4および比較例2の感光体が、クリーニング性が悪化傾向にあり、かつ耐刷性が良化する傾向にあること
(7)感光体表面の表面粗さRzを比較した感光体(実施例11および12、比較例4および5)では、表面粗さRzが小さい実施例11および比較例4の感光体が、クリーニング性が良好な傾向にあり、かつ耐刷性が悪化傾向にあり、一方、表面粗さRzが大きい実施例12および比較例5の感光体が、クリーニング性が悪化傾向にあり、かつ耐刷性は良化傾向にあること
(8)また、表面粗さRzが0.7μmより小さい感光体(比較例3)は、耐刷性が著しく悪く、表面粗さRzが1.5μmより大きい比較例5の感光体は、クリーニング性が著しく悪く、実使用上問題となり、これは、表面粗さRzは小さいとシリカ粒子の凝集が少なく、感光体表面が比較的平らになりクリーニングブレードとの密着性が増すため、耐刷性が悪化し、表面粗さRzが大きいとシリカ粒子の凝集が大きいため、見掛け上大きな粒子を含有しているようになるため耐刷性が良化するものの、大きすぎるとクリーニングブレードの欠けを引き起こすと考えられること
(9)感光体表面の表面粗さRkuを比較した感光体(実施例13および14、比較例6および7)では、表面粗さRkuが小さい実施例13および比較例6の感光体が、画像濃淡ムラが悪化傾向にあり、表面粗さRkuが小さいと凹凸が均一ではなく、耐刷性にバラツキを生じたため起こったと考えられること
(10)また、表面粗さRkuが2.2より小さい感光体(比較例6)が、画像濃淡ムラが著しく悪く、実使用上問題となり、一方、表面粗さRkuが3.0より大きい感光体(比較例7)が、クリーニング性が悪く、実使用上問題となり、Rkuは、3.0より大きいと、感光体の表面形状に明らかな凸の部分が見られ、このことによりクリーニングブレードの欠けを引き起こすため、クリーニング性が悪化すると考えられ、実施例14の感光体は、Rkuが3.0以下であるため、凸形状は見られず、均一な凹凸のため、良好なクリーニング性が得られたと考えられること
1 電子写真感光体
11 導電性支持体
12 電荷発生物質
13 電荷輸送物質
14 感光層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 バインダ樹脂(結着樹脂)
18 下引き層(中間層)
19 金属酸化物粒子
31 露光手段(半導体レーザ)
32 帯電手段(帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写手段(転写帯電器)
35 定着手段(定着器)
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーニング手段(クリーナ)
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 分離手段
38 ハウジング
41、42 矢符
44 回転軸線
51 記録媒体(記録紙または転写紙)
100 画像形成装置(レーザプリンタ)

Claims (6)

  1. 導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが順次積層された感光層が積層されてなり、
    前記電荷輸送層が、電荷輸送物質、フィラーおよびバインダ樹脂を含有し、
    前記フィラーが、12~30nmの数平均一次粒子径を有する金属酸化物粒子であり、
    前記電荷輸送層が、0.7~1.5μmの表面粗さRzおよび2.3~3.0の表面粗さRkuの表面層を有する
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記金属酸化物粒子が、前記バインダ樹脂100質量部に対して20~40質量部含有されている請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記金属酸化物粒子が、ジメチルジクロロシランもしくはヘキサメチルジシラザンで表面処理されたシリカ粒子である請求項1~3のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  5. 前記電荷輸送物質が、一般式(I):
    Figure 2022072264000010
    (式中、R1、R2、R5およびR6は、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアラルキル基であり、m、n、pおよびqは、同一または異なって、0~3の整数であり、R3およびR4は、同一または異なって、水素原子またはアルキル基である。)
    で表されるスチルベン化合物である請求項1~4のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1~5のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
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