JP2019184879A - 電子写真感光体およびその製造方法ならびにそれを備えた画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体およびその製造方法ならびにそれを備えた画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高温高湿の環境下で黒ポチが発生せず、連続印字した際にも感度変化が少なく、良好な画像特性を実現できる電子写真感光体およびその製造方法ならびにそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。【解決手段】導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された感光層とを少なくとも備え、前記下引き層が、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選択される少なくとも1種の無機粒子を含有し、前記無機粒子が、有機化合物により表面処理されておらず、かつ温度35℃、相対湿度85%の環境下で24時間放置したときの無機粒子の重量をWL、温度105℃で3時間熱処理したときの無機粒子の重量をWHとしたときに、次式(1):0.005≦[(WL−WH)/WH]≦0.200を満足することを特徴とする電子写真感光体により、上記の課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)およびその製造方法ならびにそれを備えた画像形成装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、特定の下引き層を備えた、少なくとも導電性支持体、下引き層および感光層からなる感光体およびその製造方法ならびにそれを備えた画像形成装置に関する。
近年主流であるデジタル方式の画像形成では、デジタル電気信号に変換された画像情報を感光体上に静電潜像として書き込む際の光源としてレーザ、特に半導体レーザやLEDが用いられている。しかし、レーザ光による潜像画像の形成には基体表面での反射による干渉縞の発生という特有の画像問題が知られている。
また、デジタル方式の書き込みでは、露光ビーム径が小さく、書き込み速度が遅くなるため、露光部分の現像方法として反転現像との組み合わせが主に用いられている。しかし、反転現像を用いた画像形成では、本来白地部分として画像形成されるべき箇所に、トナーが付着してカブリを発生させる現象、すなわち感光体の局部的な欠陥による黒ポチの発生という特有の画像問題が知られている。
これらの問題を解決するため、感光体中に下引き層(「中間層」ともいう)を用いる技術が開発されている。
例えば、導電性支持体と感光層の間に、樹脂中に酸化チタン粒子のような金属酸化物粒子を分散させた下引き層を設けた構成を有する感光体が知られている。また、表面処理を施した金属酸化物粒子を用いる技術も知られている。
具体的には、特開平11−237750号公報(特許文献1)には、メチルハイドロジェンポリシロキサンで表面処理された酸化チタン粒子を用いる技術、特開2000−103620号公報(特許文献2)には、特定の有機珪素化合物で表面処理された金属酸化物粒子を用いる技術が開示されている。
これらの先行技術では、表面処理を施した金属酸化物粒子を下引き層に用いることにより、感光体の高温高湿の環境下において高い黒ポチ防止効果を得ている。
特開平11−237750号公報 特開2000−103620号公報
しかしながら、上記の先行技術では、高温高湿の環境下で連続印字した際の感度変化が大きく、画像濃度の変化が問題になる。特に、カラー印字においては、連続印字において1枚目と複数枚目で色目が変わるような問題が起こる。
そこで、本発明は、高温高湿の環境下で黒ポチが発生せず、連続印字した際にも感度変化が少なく、良好な画像特性を実現できる電子写真感光体およびその製造方法ならびにそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、導電性支持体上に下引き層および感光層がこの順で積層された感光体において、下引き層が、有機化合物により表面処理されておらず、かつ特定の特性を有する酸化チタンおよび酸化亜鉛の少なくとも1種を含有することにより、高温高湿のような厳しい環境においても画像安定性に優れた感光体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
かくして、本発明によれば、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された感光層とを少なくとも備え、
前記下引き層が、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選択される少なくとも1種の無機粒子を含有し、
前記無機粒子が、有機化合物により表面処理されておらず、かつ温度35℃、相対湿度85%の環境下で24時間放置したときの無機粒子の重量をWL、温度105℃で3時間熱処理したときの無機粒子の重量をWHとしたときに、次式(1):
0.005≦[(WL−WH)/WH]≦0.200 (1)
を満足することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された感光層とを少なくとも備えた電子写真感光体の製造方法であり、
バインダ樹脂と無機粒子を含む下引き層用塗布液を前記導電性支持体上に塗布し、自然乾燥して前記下引き層を形成する工程を含み、
前記無機粒子が、有機化合物により表面処理されておらず、かつ温度35℃、相対湿度85%の環境下で24時間放置したときの無機粒子の重量をWL、温度105℃で3時間熱処理したときの無機粒子の重量をWHとしたときに、次式(1):
0.005≦[(WL−WH)/WH]≦0.200 (1)
を満足することを特徴とする電子写真感光体の製造方法が提供される。
本発明によれば、高温高湿の環境下で黒ポチが発生せず、連続印字した際にも感度変化が少なく、良好な画像特性を実現できる電子写真感光体およびその製造方法ならびにそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
本発明の効果の発生機構は明らかではないが、下引き層に用いる酸化チタンおよび酸化亜鉛の吸湿性が低いことにより、高温高湿の環境下で黒ポチ発生を抑制しつつ、有機化合物による表面処理が施されてないことにより、遊離もしくは未反応の表面処理剤(有機化合物)が影響せず、高温高湿の環境下での繰り返し使用においても電気特性の安定化を実現できるものと、本発明者らは考えている。
なお、本発明の感光体の製造において用いる下引き層用塗布液は、所望の分散状態を長期間保持することができ、長期保存後においても、塗布ムラのない塗布膜(下引き層)を形成することができる。
本発明の感光体は、次の条件(1)〜(4)のいずれか1つを満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(1)無機粒子が、温度600〜1000℃で熱処理された無機粒子である。
(2)無機粒子が、5.0〜100nmの平均一次粒子径を有する。
(3)無機粒子が、アルミナおよびシリカから選択される少なくとも1種で表面処理された無機粒子である。
(4)感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層である。
本発明の感光体(感光体1)の要部の構成を示す概略断面図である。 本発明の感光体(感光体2)の要部の構成を示す概略断面図である。 本発明の感光体(感光体3)の要部の構成を示す概略断面図である。 本発明の感光体(感光体4)の要部の構成を示す概略断面図である。 本発明の画像形成装置の要部の構成を示す模式側面図である。
本発明の感光体は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された感光層とを少なくとも備え、
前記下引き層が、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選択される少なくとも1種の無機粒子を含有し、
前記無機粒子が、有機化合物により表面処理されておらず、かつ温度35℃、相対湿度85%の環境下で24時間放置したときの無機粒子の重量をWL、温度105℃で3時間熱処理したときの無機粒子の重量をWHとしたときに、次式(1):
0.005≦[(WL−WH)/WH]≦0.200 (1)
を満足することを特徴とする。
すなわち、本発明の感光体の特徴は、導電性支持体上に形成された下引き層に特定の酸化チタンおよび酸化亜鉛から選択される少なくとも1種の無機粒子を含有することにある。
まず、無機粒子について説明し、その後で感光体の各構成について説明する。
<無機粒子>
無機粒子は、有機化合物により表面処理されておらず、かつ式(1)を満足する。
式(1)を満足するということは、水分の吸着が少なく、吸湿性が低いことを意味し、このような吸湿性の低い無機粒子が感光体の下引き層に含有することで、感光体を画像形成装置に用いたときに、高温高湿の環境下での黒ポチ発生を抑制することができる。
また、無機粒子が有機化合物により表面処理されていないことで、遊離した表面処理剤や未反応の表面処理剤の影響を受けることがなく、高温高湿の環境下での繰り返し使用においても、電気特性の安定化を実現することができる。
式(1)中のWLおよびWHの測定方法については、実施例において具体的に説明する。
式(1)を満足する無機粒子は、例えば、温度600〜1000℃で熱処理することより得ることができる。
熱処理条件は、無機粒子の粒径や後述する無機化合物による表面処理の有無などにより適宜調整すればよい。
通常、酸化チタンなどの金属酸化物の表面には水酸基が存在し、その水酸基と水分子が水素結合によって吸着し、さらに水分子が物理吸着している。そのためシリコーンなどの有機化合物により撥水性の表面処理がされていない場合、温度35℃、相対湿度85%の環境下で24時間放置後の重量と、温度105℃で3時間熱処理した後の重量差は、後者の重量に対して通常2.0%以上ある。
金属酸化物を温度100〜600℃で熱処理した場合では、吸湿性に大きな変化は見られないが、温度600℃以上で熱処理することで、式(1)を満足する金属酸化物が得られる。これは、高温で熱処理することで吸着水が脱水して、安定な結晶格子O(酸素原子)と同質のものに変化し、表面水酸基が減少する(再水和しなくなる)ことにより吸湿性が減少するためと考えられる(清野学著、「酸化チタン−物性と応用技術」、第1版第5刷、技報堂出版株式会社、2003年6月20日、第53-55頁参照)
本発明者らは、このような金属酸化物の水和状態と感光体の電気特性との関係について検討を重ね、上記式(1)の関係を見出した。
すなわち、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選択される少なくとも1種の無機粒子の式(1)の値が0.020を超えると、吸湿性が大きいために、電気特性の環境依存性が悪化し、かつ黒ポチが発生することがある。一方、温度1000℃以上の熱処理などにより、式(1)の値が0.005未満では、無機粒子表面の水酸基が少な過ぎて、バインダが無機粒子に吸着し難くなり、下引き層用塗布液中での無機粒子の分散性および分散安定性が悪化し、無機粒子が沈降し易くなり、良好な下引き層が得られず、感光体の所望の電気特性が得られないことがある。
無機粒子は、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選択される少なくとも1種であり、高級脂肪酸やシリコーンのような有機化合物で表面処理されていないものが用いられる。
有機化合物で表面処理された無機粒子では、下引き層用塗布液の調製で分散処理した際に遊離した表面処理剤や未反応の表面処理剤が、感光体の高温高湿下での繰り返し使用の際に電気特性に悪影響を与える。
酸化チタンの結晶形としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3種類があるが、いずれを用いてもよく、またこれらの混合体であってもよい。

無機粒子の体積抵抗値は、プレス圧力100kg/cm2の圧粉体の体積抵抗値(「粉体抵抗値」ともいう)として、105Ω・cm以上1010Ω・cm以下の範囲の高抵抗であることが望ましい。
無機粒子の粉体抵抗値が105Ω・cm未満であると、下引き層としての抵抗値が低下し、電荷ブロッキング層として機能しないことがある。例えば、アンチモンドープした酸化錫導電層などの導電処理を施した場合には、100〜101Ω・cmと非常に粉体抵抗値が低く、これを用いた下引き層は感光体特性としての帯電性が悪化するので、使用することはできない。一方、無機粒子の粉体抵抗値が1010Ω・cmを超え、バインダ樹脂の体積抵抗値と同等あるいはそれ以上になると、下引き層としての抵抗値が高過ぎて、光照射時に生成したキャリアの輸送が抑制阻止され、残留電位が上昇することがある。
また、無機粒子は、その表面がアルミナ、シリカなどの無機化合物によって被覆(表面処理)されているのが好ましい。この表面処理により、感光体としての黒ポチの防止効果、下引き層用塗布液の分散性向上効果が期待できる。
無機粒子の無機化合物による表面処理方法としては、例えば、濃度50〜350g/Lで無機粒子を水中に分散させた水性スラリーを調製し、これに水溶性のケイ酸塩または水溶性のアルミニウム化合物のような無機化合物を添加し、アルカリまたは酸を添加して中和処理し、無機粒子の表面にシリカまたはアルミナを析出させ、濾過、洗浄、乾燥すればよい。
水溶性のケイ酸塩としてケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸などの酸で中和することができ、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いた場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリで中和することができる。
上記のように無機粒子が無機化合物で表面処理されていても、表面処理されていない無機粒子と同様に、熱処理により式(1)を満足する無機粒子を調製することができる。このメカニズムは、表面処理されていない無機粒子と同様、アルミナやシリカも酸化チタンと同様に高温熱処理することで脱水して結晶格子O(酸素原子)と同質のものに変化し、表面水酸基が減少することにより吸湿性が減少するものと考えられる。
無機粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5.0〜100nmであり、より好ましくは10〜70nmである。平均一次粒子径は、無機粒子をTEM(透過型電子顕微鏡)観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値を意味する。
平均一次粒子径が5.0nm未満であると、下引き層中で均一に分散し難く、凝集粒子を形成し易く、均一な下引き層の塗膜が形成されないことがある。一方、平均一次粒子径が100nmを超えると、下引き層の表面に大きな凹凸が形成され易く、これらの大きな凹凸を通して絶縁破壊や黒ポチが発生し易くなり、さらに下引き層用塗布液中で無機粒子が沈澱し易く、凝集物が発生し易くなり、下引き層の塗膜形成に支障をきたすことがある。
<感光体>
本発明の感光体は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された感光層とを少なくとも備える。
以下に図面を用いて、本発明の感光体を説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。
<感光体1:実施形態1>
図1は、発明の感光体(感光体1)の要部の構成を示す概略断面図である。
感光体1は、導電性支持体11上に、式(1)を満足する無機粒子19を含有する下引き層18が設けられ、その上に電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13およびそれを結着させるバインダ樹脂17を含有する電荷輸送層16とがこの順序で積層されてなる積層構造の感光層14が設けられた積層型感光体である。
以下、各構成について説明する。
<導電性支持体11>
導電性支持体は、感光体の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、その構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼およびチタンなどの金属材料、ならびに表面に金属箔ラミネート、金属蒸着処理または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布した、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンおよびポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙ならびにガラスなどが挙げられる。これらの中でも、加工の容易性の点からアルミニウムが好ましく、JIS3003系、JIS5000系およびJIS6000系などのアルミニウム合金が特に好ましい。
導電性支持体の形状は、図5に示すような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
また、導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、レーザ光による干渉縞防止のために、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
<下引き層(「中間層」ともいう)18>
下引き層は、一般に、導電性支持体の表面の凸凹を被覆し均一にして、感光層、ここでは電荷発生層の成膜性を高め、感光層の導電性支持体からの剥離を抑え、導電性支持体と感光層との接着性を向上させる。具体的には、導電性支持体からの感光層への電荷の注入が防止され、感光層の帯電性の低下を防ぎ、画像のかぶり(いわゆる黒ポチ)を防止することができる。
本発明では、下引き層が、有機化合物により表面処理されておらず、かつ式(1)を満足する無機粒子を含有することで、高温高湿の環境下で黒ポチが発生せず、連続印字した際にも感度変化が少なく、良好な画像特性を実現できる感光体が提供される。
下引き層は、例えば、バインダ樹脂を適当な溶剤に溶解させ、無機粒子を分散させて下引き層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成することができる。
無機粒子の含有量は、本発明の効果が得られる限り、特に限定されないが、通常50〜90重量%である。
無機粒子の含有量が50重量%未満であると、感光体の低温低湿下での感度が悪化し、画像濃度が薄くなることがある。一方、無機粒子の含有量が90重量%を超えると、下引き層用塗布液の調製時に、バインダ樹脂が無機粒子に十分に吸着できず、分散不良を起こし、下引き層の表面に大きな凹凸が形成され、絶縁破壊や黒ポチが発生し易くなる。さらに下引き層用塗布液の保存安定性も悪くなり、無機粒子が沈降することがある。
バインダ樹脂としては、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。バインダ樹脂は、下引き層上に感光体層を形成する際に用いられる溶剤に対して溶解や膨潤などが起こらないこと、導電性支持体との接着性に優れること、可撓性を有することなどの特性が要求されることから、上記のバインダ樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が好ましい。
アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロンおよび12−ナイロンなどの単独重合または共重合ナイロン、N−アルコキシメチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させたタイプなどが挙げられる。
また、バインダ樹脂を架橋する硬化剤を用いて、硬化膜としてもよい。硬化剤としては、塗液の保存安定性や電気特性の観点からブロック化イソシアネートが好ましい。ブロック化イソシアネートの市販品としては、例えば、Desmodur(登録商標)BL3175SN(Covestro社製)が挙げられる。
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらの溶剤は、バインダ樹脂の溶解性、下引き層の表面平滑性などから適切な溶媒を選択し、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機粒子を下引き層用塗布液に分散させるために、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機およびペイントシェーカなどの公知の装置を用いてもよい。
下引き層用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択すればよく、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。
これらの中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体の製造に好適に用いることができる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置が設けられていてもよい。
自然乾燥により塗膜中の溶剤を除去してもよいが、加熱により強制的に塗膜中の溶剤を除去してもよい。
このような乾燥工程における温度は、使用した溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50〜140℃程度が適当であり、80〜130℃程度が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがあり、また溶剤が充分に蒸発せず感光体層中に残ることがある。また、乾燥温度が約140℃を超えると、感光体の繰り返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化することがある。
このような温度条件は、下引き層のみならず後述する感光層などの層形成や他の処理においても共通する。
下引き層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。
下引き層の膜厚が0.5μm未満であると、高温高湿下での黒ポチ防止効果が十分に得られないことがある。一方、下引き層の膜厚が30μmを超えると、低温低湿下の連続印字した際の感度変化が大きくなり、ひいては画像濃度の変化が大きくなることがある。
<電荷発生層15>
電荷発生層は、画像形成装置などにおいて半導体レーザ光などの照射された光を吸収することによって電荷を発生する機能を有し、電荷発生物質を主成分とし、必要に応じてバインダ樹脂や添加剤を含有する。
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用でき、具体的には、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料;インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料;ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料;アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料;オキソチタニウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料;スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料;ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などが挙げられ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択して用いることができる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの電荷発生物質の中でも、下記一般式(A):
Figure 2019184879
(式中、X1、X2、X3およびX4は、同一または異なって、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、r、s、yおよびzは、同一または異なって0〜4の整数である)
で示されるオキソチタニルフタロシアニンを用いることが好ましい。
オキソチタニルフタロシアニンは、現在一般的に用いられているレーザ光およびLED光の発信波長域(近赤外光)で高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であり、光を吸収することにより多量の電荷を発生させると共に、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質13に効率よく注入することができる。
一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物は、例えばMoser, Frank HおよびArthur L. ThomasによるPhthalocyanine Compounds、Reinhold Publishing Corp.、New York、1963に記載されている方法などの公知の製造方法によって製造することができる。
例えば、一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物のうち、r、s、yおよびzが0である無置換のオキソチタニウムフタロシアニンの場合は、フタロニトリルと四塩化チタンとを、加熱融解するかまたはα−クロロナフタレンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによってジクロロチタニウムフタロシアニンを合成した後、塩基または水で加水分解することによって得られる。
また、イソインドリンとテトラブトキシチタンなどのチタニウムテトラアルコキシドとを、N−メチルピロリドンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによっても、オキソチタニウムフタロシアニンを製造することができる。
電荷発生層の形成方法としては、電荷発生物質を導電性支持体上に真空蒸着する方法、および溶剤中に電荷発生物質を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法などがある。これらの中でも、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質を従来公知の方法によって分散させ、電荷発生層用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該分野で公知の樹脂をいずれも使用でき、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。
共重合体樹脂としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶剤としては、例えば、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、またはN,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
電荷発生物質とバインダ樹脂との配合比率は、電荷発生物質の割合が10〜99重量%の範囲にあることが好ましい。
電荷発生物質の割合が10重量%未満であると、感度が低下することがある。一方、電荷発生物質の割合が99重量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多く発生することがある。
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質を分散させる前に、予め電荷発生物質を粉砕機によって粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などを挙げることができる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルまたはサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択すればよい。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、下引き層用塗布液の塗付方法と同様の方法が挙げられ、浸漬塗布法が特に好ましい。
電荷発生層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.05〜5μmであり、より好ましくは0.1〜1μmである。
電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感光体の感度が低下することがある。一方、電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり感光体の感度が低下することがある。
<電荷輸送層16>
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ感光体表面まで輸送する機能を有し、電荷輸送物質およびバインダ樹脂、必要に応じて添加剤を含有する。
電荷輸送物質13としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマー(ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ−9−ビニルアントラセンなど)、ポリシランなどが挙げられる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
これらの中でも、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体およびこれらの化合物が複数種結合したものが好ましい。
これらの種々の電荷輸送物質の中でも、電気特性、耐久性および化学的安定性において、特に好ましい化合物を以下に例示する。
Figure 2019184879
電荷輸送層の形成方法としては、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷輸送物質を従来公知の方法によって分散させ、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該分野で公知の樹脂をいずれも使用でき、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリフェノキシ、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂などの樹脂、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
電荷輸送物質(A)とバインダ樹脂(B)との比率A/Bは、好ましくは10/12〜10/30で用いられる。
比率A/Bが10/30未満でありバインダ樹脂の比率が高くなると、浸漬塗布法によって電荷輸送層を形成する場合、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層に白濁が発生することがある。一方、比率A/Bが10/12を超えてバインダ樹脂の比率が低くなると、バインダ樹脂の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり、感光層の摩耗量が増加することがある。
電荷輸送層は、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤またはレベリング剤などの添加剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
また、電荷輸送層は、機械的強度の増強や電気的特性の向上を図るために、無機化合物または有機化合物の微粒子を含有してもよい。
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。また必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
電荷輸送層は、例えば、前述の電荷発生層15を形成する場合と同様に、適当な溶剤中に電荷輸送物質13およびバインダ樹脂17、ならびに必要な場合には前述の添加剤を溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液をスプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法または浸漬塗布法などによって、電荷発生層15上に塗布することによって形成される。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層を形成する場合にも多く利用されている。
電荷輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。
電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下することがある。一方、電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下することがある。
<感光体2:実施形態2>
図2は、発明の感光体(感光体2)の要部の構成を示す概略断面図である。
感光体2は、導電性支持体11上に、式(1)を満足する無機粒子19を含有する下引き層18が設けられ、その上に電荷発生物質12、電荷輸送物質13およびそれを結着させるバインダ樹脂17を含有する、電荷発生層と電荷輸送層との機能を兼ね備えた単層型の感光層14が設けられた単層型感光体である。
単層型の感光層は、電荷輸送層を形成する場合と同様の方法で形成される。例えば、電荷発生物質と電荷輸送物質とバインダ樹脂とを、適当な溶剤に溶解または分散させて感光層用塗布液を調製し、この感光層用塗布液を浸漬塗布法などによって下引き層上に塗布することによって形成される。
単層型の感光層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて、電荷発生層に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
感光層中の電荷輸送物質13とバインダ樹脂17との比率は、前述の電荷輸送層16中の電荷輸送物質13とバインダ樹脂17との比率A/Bと同様に、重量比で10/12〜10/30である。
単層型の感光層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。
単層型の感光層の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下することがある。一方、単層型の感光層の膜厚が100μmを超えると、感光体の製造における生産性が低下することがある。
<感光体の製造方法>
本発明の感光体の製造方法は、バインダ樹脂と無機粒子を含む下引き層用塗布液を前記導電性支持体上に塗布し、自然乾燥して前記下引き層を形成する工程を含み、
前記無機粒子が、有機化合物により表面処理されておらず、かつ式(1)を満足することを特徴とする。
詳細については、前項<無機粒子>および<下引き層18>に記載のとおりである。
<表面保護層20>
本発明の感光体は、図3および4に示すように、感光層上に表面保護層を有していてもよい。
図3および4は、それぞれ本発明の感光体3および4(実施形態3および4)の要部の構成を示す概略断面図であり、それぞれ図1および2の本発明の感光体1および2の感光層14上(最外層)に表面保護層20を有する感光体である。
表面保護層は、感光体の耐久性を向上させる機能を有し、バインダ樹脂、必要に応じて添加剤を含有する。また、表面保護層は、電気特性安定化のために、電荷輸送層と同一の1種または2種以上の電荷輸送物質を含有してもよい。
バインダ樹脂としては、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用でき、例えばポリスチレン、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの樹脂が挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、摩耗特性、電気的特性を考慮した場合、ポリカーボネート、ポリアリレートが特に好ましい。
また、表面保護層は、耐摩耗性を向上させる目的でフィラー材料が添加されていてもよい。
有機系フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末などが挙げられ、無機系フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられ、フィラーの硬度の点から、無機系フィラー材料が特に好ましい。
フィラーの平均一次粒子径は、表面保護層の光透過率や耐摩耗性の点から、0.01〜0.5μmであるのが好ましい。
また、フィラー材料は、塗布形成のための塗布液中での分散性向上などの点から、無機物、有機物で表面処理されていてもよい。例えば、撥水性処理としてシランカップリング剤で処理したもの、フッ素系シランカップリング剤で処理したもの、高級脂肪酸で処理したもの、フィラー表面をアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカで処理したものが挙げられる。
表面保護層中のフィラー材料の含有割合は、高いほど耐摩耗性が向上し良好であるが、高すぎると残留電位の上昇、表面保護層の書き込み光透過率の低下などの悪影響を生じる場合がある。したがって、フィラー材料は、全固形分に対して概ね50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
表面保護層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは1.0〜8.0μmである。
長期的に繰り返し使用される感光体は、機械的に耐久性が高く、摩耗し難いように設計される。しかし実機内では、帯電部材などから、オゾンおよびNOxガスなどが発生して感光体の表面に付着し、画像流れを発生させる。この画像流れを防止するために、感光層をある一定速度以上に摩耗する必要があり、長期的な繰り返し使用を考慮した場合、表面保護層は少なくとも1.0μm以上の膜厚が好ましい。また、表面保護層の膜厚が8.0μmを超えると、残留電位上昇や微細ドット再現性の低下の問題が発生することがある。
<画像形成装置100>
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する(可視像化する)現像手段と、現像によって形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写されたトナー像を記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする。
図面を用いて、本発明の画像形成装置およびその動作について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
図5は、本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
図5の画像形成装置(レーザプリンタ)100は、本発明の感光体1と、露光手段(半導体レーザ)31と、帯電手段(帯電器)32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35と、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。符号51は記録媒体(記録紙または転写紙)を示す。
感光体1は、図示しない画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電手段(帯電器)32、露光手段31、現像手段(現像器)33、転写手段(転写帯電器)34およびクリーニング手段(クリーナ)36は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
帯電器32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
露光手段31は、半導体レーザを光源として備え、光源から出力されるレーザビーム光を、帯電器32と現像器33との間の感光体1の表面に照射することによって、帯電された感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザビームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
現像器33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、感光体1を臨んで設けられ、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
転写帯電器34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる接触式の転写手段である。
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
また、画像形成装置100には、感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
符号37は、転写紙と感光体を分離する分離手段、符号38は、画像形成装置の前記の各手段を収容するケーシングを示す。
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
次いで、露光手段32から、感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段33による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
以下に、図面に基づき実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
実施例および比較例では、機能分離型の感光層を有する構造の感光体を採用したが、単層型の感光層を有する構造の感光体を用いても同様の効果が得られる。
なお、本明細書において「A℃/B%」は、温度A℃、相対湿度B%を意味する。
(実施例1)
酸化チタン(表面未処理/平均一次粒子径35nm、テイカ株式会社製、銘柄:MT−500B)10.0重量部(実重量約1000g)を、容量1000mLのアルミナるつぼに入れ、これを電気炉(光洋サーモシステム株式会社製、型式:KBF728N1)に設置し、温度750℃で3時間熱処理した。
容量1000mLのビーカーに、熱処理した酸化チタンを移し替えて、35℃/85%に設定した恒温槽に24時間静置し、同条件の恒温槽中で酸化チタンの重量WL(g)を測定した。
次いで、酸化チタンを温度105℃に設定したオーブン(ヤマト科学株式会社製、型式:DE62)で3時間熱風乾燥し、取り出し直後にデシケータに入れて放冷し、重量WH(g)を測定した。
得られたデータから式(1)の値[(WL−WH)/WH]を求めた。
温度750℃で3時間熱処理した酸化チタン7.0重量部および共重合ナイロン(東レ株式会社製、商品名:アミラン(登録商標)、グレード:CM8000)3.0重量部を、メタノール40重量部と1,3−ジオキソラン27重量部との混合溶剤に加え、分散メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、ペイントシェーカにて5時間分散処理して下引き層用塗布液を調製した。
得られた塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体を浸漬した後に引き上げ、自然乾燥させて膜厚1.0μmの下引き層18を形成した。
導電性支持体には、切削加工(JIS B−0601に規定される十点表面粗さRz=0.80μmに加工)した後、表面洗浄した直径30mm、長さ372mmのアルミニウム製のドラム状の導電性基持体を用いた。
予め、電荷発生物質として用いるオキソチタニルフタロシアニンを調製した。
o−フタロジニトリル40gと四塩化チタン18g、α−クロロナフタレン500mLを窒素雰囲気下、温度200〜250℃で3時間加熱撹拌して反応させ、温度100〜130℃まで放冷後、濾過し、温度100℃に加熱したα−クロロナフタレン200mLで洗浄してジクロロチタニウムフタロシアニン粗生成物を得た。
得られた粗生成物を室温にてα−クロロナフタレン200mL、次いでメタノール200mLで洗浄後、さらにメタノール500mL中で1時間熱懸洗した。濾過後、得られた粗生成物を濃硫酸100mL中で撹拌、溶解させた後、不溶物を濾取した。得られた硫酸溶液を水3000mL中に注ぎ、析出した結晶を濾取し、水500mL中で、pHが6〜7になるまで、熱懸洗を繰り返した後、濾取し、得られたウェットケーキをジクロロメタンで処理し、メタノールで洗浄した後、乾燥することで、オキソチタニルフタロシアニンを得た。
得られたオキソチタニルフタロシアニン2重量部とブチラール樹脂(積水化学株式会社製、品種:エスレックBM−2)1重量部を、メチルエチルケトン97重量部に加え、ペイントシェーカにて4時間分散処理して、電荷発生層用塗付液を調製した。
得られた塗布液を、下引き層の場合と同様の浸漬塗布法で、下引き層上に塗布し、自然乾燥させて膜厚0.3μmの電荷発生層15を形成した。
次いで、電荷輸送物質としての化合物(1)(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン、東京化成工業株式会社製、製品コード:D2448)5.0重量部、バインダ樹脂17としてのポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製、グレード名:TS2050)7.5重量部を混合し、テトラヒドロフラン47重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調製した。
得られた塗布液を、下引き層の場合と同様の浸漬塗布法で、電荷発生層上に塗布し、温度120℃で1時間乾燥させて膜厚28μmの電荷輸送層を形成し、図1の感光体1を得た。
(実施例2)
酸化チタン(表面未処理/平均一次粒子径35nm、テイカ株式会社製、銘柄:MT−500B)に代えて、酸化チタン(アルミナ・シリカ表面処理/平均一次粒子径35nm、テイカ株式会社製、銘柄:MT−500SA)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体1を作製した。
(実施例3)
酸化チタン(表面未処理/平均一次粒子径35nm、テイカ株式会社製、銘柄:MT−500B)に代えて、酸化チタン(シリカ表面処理/平均一次粒子径15nm、テイカ株式会社製、銘柄:MT−100WP)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体1を作製した。
(実施例4)
酸化チタン(表面未処理/平均一次粒子径35nm、テイカ株式会社製、銘柄:MT−500B)に代えて、酸化亜鉛(表面未処理/平均一次粒子径35nm、テイカ株式会社製、銘柄:MZ−300)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体1を作製した。
(実施例5)
酸化チタン(表面未処理/平均一次粒子径35nm、テイカ株式会社製、銘柄:MT−500B)に代えて、酸化亜鉛(シリカ表面処理/平均一次粒子径35nm、堺化学工業株式会社製、グレード:FINEX−30W)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体1を作製した。
(実施例6)
酸化チタンの電気炉による熱処理条件の温度750℃で3時間を、温度600℃で3時間に変更したこと以外は、実施例1と同様に感光体を作製した。
(実施例7)
酸化チタンの電気炉による熱処理条件の温度750℃で3時間を、温度1000℃で3時間に変更したこと以外は、実施例1と同様に感光体を作製した。
(実施例8)
下引き層用塗布液の調製において、共重合ナイロン(東レ株式会社製、グレード:CM8000)に代えて、共重合ナイロン(アルケマ株式会社製、銘柄:Platamid(登録商標)M1276)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体1を作製した。
(実施例9)
酸化チタン(表面未処理/平均一次粒子径35nm、テイカ株式会社製、銘柄:MT−500B)に代えて、酸化亜鉛(表面未処理/平均一次粒子径65nm、ハクスイテック株式会社製、銘柄:Zincox Super F−2)を用い、下引き層用塗布液の調製において、共重合ナイロン(東レ株式会社製、グレード:CM8000)3.0重量部に代えて、ブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製、品種:エスレックBM−2)1.5重量部と、硬化剤としてのブロック化イソシアネート(Covestro社製、製品名:Desmodur(登録商標)BL3175SN)1.5重量部とを用い、メタノール40重量部と1,3−ジオキソラン27重量部との混合溶剤に代えて、メチルエチルケトン15重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体1を作製した。
(実施例10)
電荷輸送層用塗布液の調製において、電荷輸送物質としての化合物(1)(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン、東京化成工業株式会社製、製品コード:D2448)に代えて、化合物(7)(1,4-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ベンゼン、東京化成工業株式会社製、製品コード:B2080)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体1を作製した。
(比較例1)
酸化チタンを電気炉による熱処理に付さなかったこと以外は、実施例1と同様にして感光体1を作製した。
(比較例2)
酸化チタンを電気炉による熱処理に付さなかったこと以外は、実施例2と同様にして感光体1を作製した。
(比較例3)
酸化チタンを電気炉による熱処理に付さなかったこと以外は、実施例3と同様にして感光体1を作製した。
(比較例4)
酸化チタンを電気炉による熱処理に付さなかったこと以外は、実施例4と同様にして感光体1を作製した。
(比較例5)
酸化チタンの電気炉による熱処理条件の温度750℃で3時間を、温度500℃で3時間に変更したこと以外は、実施例1と同様に感光体1を作製した。
(比較例6)
酸化チタンの電気炉による熱処理条件の温度750℃で3時間を、温度1100℃で3時間に変更したこと以外は、実施例1と同様に感光体1を作製した。
(比較例7)
酸化チタン(表面未処理/平均一次粒子径35nm、テイカ株式会社製、銘柄:MT−500B)の電気炉による熱処理に代えて、以下の処理に付すこと以外は、実施例1と同様に感光体1を作製した。
酸化チタン10.0重量部(実重量約1000g)に対してメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、製品名:KF-99)0.5重量部および溶剤トルエン50重量部を混合して懸濁液とし、温度100℃に熱した状態で4時間撹拌処理した。処理後の懸濁液を減圧蒸留により溶媒を除去して、表面被覆処理された酸化チタンを得た。得られた酸化チタンを、さらに温度140℃で1時間熱処理して、メチルハイドロジェンポリシロキサンで表面処理された酸化チタンを得た。
[評価]
実施例1〜10および比較例1〜7において得られた感光体を、試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−5150FV)の黒位置(黒色用ユニット)に搭載して、高温高湿の環境下での電気特性(感度およびその安定性)、黒ポチおよび画像濃度を評価した。
[電気特性]
試験用のデジタル複写機から現像器を取り外し、代わりに現像部位に表面電位計(トレック・ジャパン社製、型式:MODEL 344)を取り付けた。温度35℃、相対湿度85%の高温高湿(H/H)の環境下において1000枚のコピー(露光)を行い、1枚目(初期)および1000枚目のコピー直後の黒地部分の感光体表面電位VL(−V)を測定した。
[画像濃度]
1枚目および1000枚目のコピーの画像濃度(黒ベタ画像の反射濃度)を、マクベス反射濃度計(サカタインクス株式会社製、型式:Machbes RD918)を用いて測定し、それらの結果を次の基準で評価した。
<評価基準>
◎:1枚目と1000枚目の画像濃度の差が0.2未満(良好)
○:1枚目と1000枚目の画像濃度の差が0.2以上0.5未満(実用上問題なし)
×:1枚目と1000枚目の画像濃度の差が0.5以上(実使用不可)
[黒ポチ(画像欠陥)]
1000枚目のコピー後に、無地画像を3枚プリントし、それらのハードコピー(A3版)1枚当たりの、黒ポチ発生の周期性が感光体の周期と一致し、かつ目視可能な黒ポチ(直径0.4mm以上)の個数を計測し、それらの結果を次の基準で評価した。
<評価基準>
◎:全てのハードコピーで、黒ポチの発生頻度が3個/枚以下(良好)
○:全てのハードコピーで、黒ポチの発生頻度が4個〜10個/枚(実用上問題なし)
×:黒ポチの発生頻度が11個/枚以上のハードコピーで1枚以上(実用上問題あり)
[下引き層用塗布液の安定性]
各感光体の作製において、下引き層用塗布液を容量100mLのサンプル瓶に入れ、温度20℃の恒温槽に1週間静置し、静置後の塗布液の状態(沈殿)を確認した。
以上の評価結果を、下引き層に用いた酸化チタンまたは酸化亜鉛および電荷輸送層に用いた電荷輸送物質と共に表1に示す。
Figure 2019184879
表1の結果から、次のことがわかる。
(イ)本発明の酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いた実施例1〜10による感光体は、従来の酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いた比較例1〜7による感光体に比べて、H/Hでの連続印字における感度/画像濃度変化と黒ポチの抑制の両立が可能であること
(ロ)式(1)に該当する酸化チタンまたは酸化亜鉛を含有していない比較例1〜6の感光体は、酸化チタンまたは酸化亜鉛の吸湿性が高いためか、H/Hにおける黒ポチが発生し、問題があること
(ハ)メチルハイドロジェンポリシロキサンで表面処理した酸化チタンを用いた比較例7の感光体は、H/Hにおける黒ポチは良好であるが、連続印字における感度変化が大きく、問題があること
(ニ)温度600〜1000℃で熱処理した酸化チタンは、式(1)の条件を満足し、それらを用いた実施例1、6および7の感光体は、黒ポチが良好であるが、熱処理なしや温度500℃で熱処理した酸化チタンは、式(1)の条件を満足せず、それらを用いた比較例1および5の感光体は、黒ポチの評価に劣ること
(ホ)温度1100℃で熱処理した酸化チタンは、式(1)の条件を満足せず、それを用いた比較例6の感光体は、黒ポチの評価に劣り、酸化チタン粒子表面の水酸基が少なすぎ、バインダ樹脂が吸着し難くなるためか、下引き層用塗布液は1週間静置後に沈殿が発生すること
(ヘ)アルミナおよびシリカの少なくとも1つで表面処理された酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いた実施例2、3および5の感光体は、表面未処理のものを用いた実施例1および4の感光体に比べて、黒ポチの抑制(防止)効果に優れていること
(ト)実施例1、10および11の感光体のように、下引き層に異なるバインダ樹脂を用いても、実施例1および12の感光体のように、異なる電荷輸送物質を用いても、H/Hでの連続印字における感度/画像濃度変化と黒ポチの抑制の両立が可能であること
1、2、3、4 電子写真感光体
11 導電性支持体
12 電荷発生物質
13 電荷輸送物質
14 感光層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 バインダ樹脂(結着樹脂)
18 下引き層(中間)
19 式(1)に該当する無機粒子(酸化チタンまたは酸化亜鉛)
20 表面保護層
31 露光手段(半導体レーザ)
32 帯電手段(帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写手段(転写帯電器)
35 定着手段(定着器)
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーニング手段(クリーナ)
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 分離手段
38 ハウジング
41、42 矢符
44 回転軸線
51 記録媒体(記録紙または転写紙)
100 画像形成装置(レーザプリンタ)

Claims (7)

  1. 導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された感光層とを少なくとも備え、
    前記下引き層が、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選択される少なくとも1種の無機粒子を含有し、
    前記無機粒子が、有機化合物により表面処理されておらず、かつ温度35℃、相対湿度85%の環境下で24時間放置したときの無機粒子の重量をWL、温度105℃で3時間熱処理したときの無機粒子の重量をWHとしたときに、次式(1):
    0.005≦[(WL−WH)/WH]≦0.200 (1)
    を満足することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記無機粒子が、温度600〜1000℃で熱処理された無機粒子である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記無機粒子が、5.0〜100nmの平均一次粒子径を有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記無機粒子が、アルミナおよびシリカから選択される少なくとも1種で表面処理された無機粒子である請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  5. 前記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層である請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
  7. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された感光層とを少なくとも備えた電子写真感光体の製造方法であり、
    バインダ樹脂と無機粒子を含む下引き層用塗布液を前記導電性支持体上に塗布し、自然乾燥して前記下引き層を形成する工程を含み、
    前記無機粒子が、有機化合物により表面処理されておらず、かつ温度35℃、相対湿度85%の環境下で24時間放置したときの無機粒子の重量をWL、温度105℃で3時間熱処理したときの無機粒子の重量をWHとしたときに、次式(1):
    0.005≦[(WL−WH)/WH]≦0.200 (1)
    を満足することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
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