JP3958040B2 - セラミック製ノズルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、流体を噴出させるための各種セラミック製ノズルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、圧力のある液体、気体等の流体を噴出させる流路を備えたノズルは、各種タービンの噴出口のような機械的ノズルと、流量測定に用いられるようなフローノズルに大別される。
【0003】
機械的ノズルとは、高圧の流体が管の中から放出するとき、放出断面積を小さくすると、ベルヌーイの定理により圧力水頭が速度水頭に変わり、流体が噴出するものである。このエネルギーを利用するものとして水力機械、内燃機関、蒸気タービン、高速気流の研究等各方面に広く用いられている。その形状は目的によって図4に示すように種々のものがあり、例えば、図4に示すように流路11と、該流路11に連続する細孔12を有し、ガス噴出には図4(a)の平行ノズルや、同図(b)の先細ノズルが用いられ、ガスの速度が音速以上になるものには同図(c)のような噴出口に向けて径が大きくなるテーパを有するラバルノズルが用いられている。
【0004】
また、フローノズルとは、ベンチュリ管、オリフィスと同様にパイプに取り付けて、その前後に生じる圧力差を利用する流量計で、ベンチュリ管とオリフィスの中間的な性質を有する。即ち、オリフィスに比較して圧力損失、管内面のあらさによる影響が少なく流量係数はベンチュリ管に近いものである。
【0005】
上記、各種ノズルの材質としては、金属、ガラス、プラスチックス、セラミックス等様々な材料が用いられる。
【0006】
これらの材料は、例えば図5に示すエキシマレーザ加工を施すことによって形成され、エキシマレーザ発振器21から出射したレーザ光22を分光器23により分岐し、分岐したレーザ光24a、24bをそれぞれ一対の光学マスク25a、25bにより整形する。整形されたレーザ光24a、24bをそれぞれ一対の光学レンズ26a、26bにより集光して加工部材27に照射し、一対の細孔を同時に穿孔するものである。このような製造方法は、インクジェットプリンタ用のインク噴出用のノズル等に用いられており、2液を混合吐出するための一対のノズルを高精度に形成できるとともに、加工速度が速く、レンズ26a、26bの性能によって加工寸法が決まるため再現性が高く、高精度の加工が可能である(特開2000−33704号公報参照)。
【0007】
また、図6に示すような研削加工を施すことによっても形成され、工具材料31を保持するマンドレル32を回転させながら焼結ダイヤモンドもしくは超硬合金等からなる工具材料31の先端を頂点とする回転体形状に放電加工して工具31aを形成した後、前記マンドレル32を加工部材33の表面上に相対移動させるとともに、加工部材33の表面を前記マンドレル32の回転軸に垂直となるように設置し、前記マンドレル32を回転させながら前記工具31aの先端部を加工部材33に送り込むことにより、工具劣化のほとんどない高精度な形状の細孔を有するノズルを得ることができる。このような製造方法は、様々な形状のノズルに対応でき、多数の細孔を高精度で均一に加工することができる(特開2001−54808号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
また、エキシマレーザ発振器21は、エキサイテッドダイマーの破壊による発光現象を利用して紫外線領域(126nm〜558nm)で発振する希ガス、ハロゲン化物又は希ガス、金属蒸気によるレーザ発振器であり、危険性の高いガスを使用しなければならないという欠点を有していた。
【0009】
また、図6に示すような研削加工は、焼結ダイヤモンドもしくは超硬合金等からなる工具材料31であっても、砥石加工のため上記エキシマレーザ加工と同様にセラミックス等の高硬度の材質に高精度な孔を加工することが困難であり、特に孔径が5mm未満の小さなものとなると、加工時に砥石の先端に欠けや折れが生じやすいという欠点を有していた。
【0010】
そのため、セラミックスからなる加工部材を用いる場合には、所定のセラミック原料を射出成形もしくはプレス成形して細孔を有する成形体を得た後、該成形体を焼成する方法や、その後、得られた焼結体の細孔を研磨にて仕上げる方法、または、得られた成形体に切削加工により所定の細孔を研削加工した後に、焼成する方法が用いられていた。
【0011】
しかし、細孔を有する成形体を焼成した場合、研磨加工を施さなければ、細孔の内壁表面の表面粗さが大きく、細孔を通過する流体の滑らかな流れを妨げる原因となるという欠点を有していた。
【0012】
また、複数の細孔を有する場合には、1つづつ研磨加工する必要があるため、歩留の低下や、コスト高を招き、さらに、細孔を有する成形体を焼成するため、細孔の間隔が精度の良く形成できないという欠点を有していた。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記に鑑みて本発明のセラミック製ノズルの製造方法は、流体の通過する流路と、該流路に連通する細孔を有するセラミック製ノズルの製造方法であって、セラミック原料を射出成形またはプレス成形することによって前記流路を有する成形体を得、該成形体を焼成した後、アシストガスにより酸素雰囲気にした状態でパルスレーザを照射して、内壁が熱によって溶融処理された表面からなるとともに、内壁表面における結晶粒子の平均粒径が他の部分の平均粒径に比べて大きい細孔を形成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法は、前記細孔の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が1μm以上であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法は、前記細孔の内壁表面から垂直方向に50μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm未満であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法は、前記細孔にエッチング処理を施すことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法は、前記成形体を加熱した状態で前記パルスレーザを照射することを特徴とする。
【0018】
本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、流体の通過する流路と、該流路に連通する細孔を有するセラミック製ノズルにおいて、少なくとも上記細孔の内壁が熱によって溶融処理された表面からなるとともに、細孔の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が他の部分の平均粒径に比べて大きくしたことから、細孔の内壁表面を滑らかな面とするとともに、セラミックスの気孔欠陥を減少させることができ、流体の流れを阻害することはなく流体を円滑に通過させることができる。また、アシストガスにより酸素雰囲気にした状態でパルスレーザを照射することから、レーザ照射による還元作用に伴うセラミックスの変色を抑えることができる。
【0019】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、上記細孔の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が1μm以上であることから、細孔の内壁表面の表面粗さを優れたものとし、流体の流れを阻害することはなく流体を円滑に通過させることができる。
【0020】
さらに、本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、上記細孔の内壁表面から垂直方向に50μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm以下であることから、セラミック製ノズル自体を緻密体とし、曲げ圧縮等の機械的強度の高いセラミック製ノズルを得ることができる。
【0021】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、上記細孔にエッチング処理を施すことから、細孔の内壁表面をより滑らかな面とすることができ、流体が滑らかに流れることができる。
【0022】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、成形体を加熱した状態でパルスレーザを照射することから、ヒートショックによりクラックが成形体に発生する可能性を低減することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態を図によって説明する。図1(a)は、本発明によって製造したセラミック製ノズルの一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は同図(a)の断面図である。
【0024】
本発明で製造したセラミック製ノズルは、流体の通過する流路1と、該流路1に連通する細孔2を有するものであり、ジルコニア、アルミナ、ムライト、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミなどの他、SiO2−Al2O3系、SiO2−B2O3系の結晶化ガラス等のガラスセラミックス、及びAl2O3を主成分としZrO2を混合したジルコニア分散アルミナセラミックス、アルミナの結晶粒界に粒径がナノレベルの非常に微細なジルコニア粒子を分散させ、粒界強度を飛躍的に向上させたジルコニア分散アルミナセラミックス、Al2O3を主成分としてAl2B2O9を混合したセラミックス等の各種複合セラミックス等から成り、これらの中でも耐候性、曲げ強度等がより優れた部分安定化ジルコニアがより好ましい。
【0025】
この部分安定化ジルコニアは、ZrO2を主成分とし、安定化剤としてY2O3、MgO、CeO2、Dy2O3、CaO等を含有するものであり、耐候性が優れ、高靭性、そして研磨しやすいため、長期間の使用に供する高精度なセラミック製ノズルを得ることができる。
【0026】
ここで、本発明のセラミック製ノズルは、上記細孔2の内壁が熱によって溶融処理された表面からなるとともに、細孔の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が他の部分の平均粒径に比べて大きいことが重要である。細孔2の内壁が熱による滑らかな溶融処理された表面から形成されるため、流体をスムーズに移動させるための滑らかな内壁表面を得ることができ、細孔2の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が他の部分の平均粒径に比べて大きいことから、細孔2の内壁表面を滑らかな面とするとともに、セラミック製ノズル自体の気孔欠陥を減少させることができ、流体の流れを阻害することはなく流体を円滑に通過させることができる。
【0027】
なお、細孔2の内壁表面を上述のようにするためには、詳細を後述するレーザ加工によって形成することで、レーザ光の熱による滑らかな溶融面を得ることができる。
【0028】
また、上記細孔2の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が1μm以上であることが好ましい。これは、レーザ加工時の熱によりセラミックスの一部が溶融除去され、この溶融時の熱によって細孔2の内壁表面における結晶粒子が粒成長をして平均粒径が1μm以上の大きなものとなり、細孔2の内壁表面の表面粗さをより優れたものとし、流体の流れを阻害することはなく流体を円滑に通過させることができる。
【0029】
なお、上記細孔2の内壁表面の結晶粒子を上述のような大きさにするためには、後述するように細孔2にパルスレーザ加工を施し、細孔2の内壁表面の結晶粒子を溶融させることによって得ることができる。
【0030】
さらに、上記細孔2の内壁表面から垂直方向に50μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm未満、さらには0.5μm以下であることが好ましい。上記細孔2の内壁表面より離れた内部が、小さな粒径の結晶粒子からなることで、セラミック製ノズル全体の機械的強度、耐候性を向上させ、流路1及び細孔2を通過する流体によって脱粒が発生することを有効に防止することができる。
【0031】
なお、上記細孔2の内壁表面から50μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径を1μm未満とするには、使用する原料の粒径を小さくし、焼成温度を低くすることによって、粒径を小さく保持して焼結させることができ、例えばジルコニアセラミックスによって形成する場合、原料の一次粒径を0.1μm以下とし、焼成温度を1450℃以下とすることで粒径が1μm未満の焼結体を得ることができ、さらに1400℃以下で焼成することによって粒径を0.4μm以下にすることができる。
【0032】
また、上述のように結晶粒子の平均粒径を有するセラミックスのうち、ジルコニアまたはアルミナを主成分とするセラミックスを用いることが好ましく、該ジルコニア及びアルミナは、機械的強度、耐熱性が優れ、また、成形、焼成が比較的簡単な装置で行えることから安価に製造することができるため、セラミック製ノズルとして好適に使用することができる。上記ジルコニアは細孔2の内壁表面が、熱によって粒成長し、平均粒径が1μm以上の大きなものとなり、アルミナは内壁表面の結晶粒子が熱によって気化しやすいため、ジルコニアのような大きな粒成長は生じ難く、内壁表面より50μm以上の点における平均粒径を1μmより若干小さくなるように調整して、内壁表面における結晶粒子の平均粒径を1μm以上のものとする必要がある。
【0033】
また、上記結晶粒子の平均粒径はインターセプト法によって測定することができる。
【0034】
ここで、本発明のセラミック製ノズルの製造方法を図3を用いて説明する。一例として、最も一般的に使用されているジルコニアセラミックスを用いて詳細に説明する。
【0035】
まず、出発原料として例えばジルコニアを主原料とした場合、ジルコニアの純度は95%以上、より好ましくは98%以上とし、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される一次平均粒径が0.01〜0.1μm、より好ましくは0.04〜0.07μm、二次凝集粒子の平均粒径が1〜4μmの粉末を選ぶとよい。
【0036】
このジルコニアに安定化剤として、純度99%以上、好ましくは99.5%以上のイットリア粉末をジルコニア粉末85〜99重量%、好ましくは90〜98重量%に対して、1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%の割合で混合する。
【0037】
そして、上記組成を満足するように配合された混合粉末をボールミル等により十分混合粉砕した後、バインダを添加し、混合後、必要に応じて造粒して成形用原料を得る。バインダは20〜50体積%含有することが好ましい。
【0038】
次いで、前記成形用原料を例えばプレス金型に充填してプレス成形することによって、流路1となる孔を有する成形体を得る。
【0039】
なお、前記プレス成形の他、射出成形を用いることにより、予め流路1となる孔を有する成形体を得ることができる。
【0040】
得られた成形体を脱脂後、酸化雰囲気柱にて1300〜1500℃の温度で、より好ましくは1350〜1450℃で0.5〜3時間焼成することにより、図3(a)に示すような焼結体を得ることができる。
【0041】
しかる後、図3(b)に示すように得られた焼結体を保持治具3に固定し、パルスレーザ4の照射軸が焼結体の中心軸と合致するように位置合わせを行った後、焼結体の流路2の開口部とは反対側よりパルスレーザを照射して細孔2を形成する。
【0042】
この時、焼結体の寸法のばらつきにより数μm程度は機械的に位置ズレを生じる可能性があるため、マイクロメータ制御機構等を用いて焼結体を固定した保持治具3の位置を調整し精密な位置合わせを行う。また、パルスレーザ4のスポット径は、予め真円にしておき、細孔2の最終仕上げ寸法になるように調整する必要がある。
【0043】
なお、細孔2の孔径が大きい場合には、パルスレーザ4の照射軸を焼結体の中心軸からいくらかずらしておき、保持治具3を回転させながらパルスレーザ加工を行うか、保持部材3を固定しておきパルスレーザ4をレーザ光出射中心からずれた位置を中心として回転させて加工を行う方法を用いるか、もしくは、焼結体の予め細孔2となる下穴を形成しておき、パルスレーザ4にて仕上げる方法を用いることができる。
【0044】
また、複数個の細孔2を加工する場合には、パルスレーザ4を上記マイクロメータ制御機構にて正確に一定寸法を移動させて加工することにより、精密な寸法精度の孔間距離を実現することができる。
【0045】
上記パルスレーザは、CO2ガスレーザ、YAGレーザ等の穿孔可能な出力を有し、パルス発振できるものであれば使用することができる。特に、波長の短さ、出力の高さ、コスト等からYAGレーザが好ましく、上記パルスレーザを細孔2に照射することで、細孔2の内壁近傍に溶融部が限定されテーパのつかない孔を開けることができ、パルスレーザ4の熱によりセラミックスの一部が溶融除去され、その結果として細孔2の表面が溶融面となり、溶融時の熱によりセラミックスの結晶が粒成長し平均粒径1μm以上で、その表面粗さRaが0.2μm以下の滑らかな曲面形状を得ることができる。
【0046】
また、上記レーザ加工の条件は、セラミックスの種類によって異なり、例えば、ジルコニア等のセラミックスやガラス等の無機物は、大出力のレーザ光を直接照射するとヒートショックによりクラックが発生する可能性があるため、レーザは間欠的に照射して円筒物本体が急激に温度上昇することを防いだり、レーザ照射前もしくは照射後、さらには前後に出力を弱めたり、照射スポットを広げたりして出力を弱めたレーザを照射することが好ましい。さらに、ヒートショックを和らげるためヒータ等の加熱手段により予め焼結体を加熱した状態でレーザ照射を行っても良い。
【0047】
なお、パルスレーザ4を照射する際は、アシストガスを溶融部が除去されない程度に微弱にすることが重要であり、レーザ照射時に内壁の溶融部が吹き飛ばされず残留し、これらが固化することで内壁近傍の結晶粒子が内壁に対して粒成長するため、上述のような平均粒径1μm以上の滑らかな面を得ることができる。
【0048】
また、アシストガスによりレーザ照射部の雰囲気が酸素雰囲気になっている。これによりレーザ照射による還元作用に伴うセラミックスの変色を抑えることができる。
【0049】
なお、上記パルスレーザによって細孔2を形成した後、細孔2の内壁表面をフッ酸を含有したエッチング液等を用いてエッチング処理を施すことが好ましい。これにより、内壁表面をより表面粗さの優れた面として流体が滑らかに流れることができる。
【0050】
以上のように得られたセラミック製ノズルは、細孔2の内壁表面が熱によって溶融処理された表面からなり、その結晶粒子の平均粒径が他の部分の平均粒径に比べて大きいことから、細孔2の内壁表面を滑らかな面とするとともに、セラミック製ノズル自体の気孔欠陥を減少させることができ、流体の流れを阻害することはなく流体を円滑に通過させることができる。
【0051】
なお、上述の実施形態では、図1に示すように流路1と、該流路1の連続する1つの細孔2を有し、多項目血液分析装置に用いられるフローノズルとして用いられる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば図3に示すような種々の形状のセラミック製ノズルに好適に用いることができる。
【0052】
例えば、同図(a)は、溶接又は切断用のトーチノズルであり、全体又は少なくとも細孔2を耐熱衝撃性△Tが700℃以上の窒化ケイ素系セラミックスで形成され、細孔2の表面粗さを算術平均粗さRaで0.2μm以下としてレーザを円運動させて細孔2を形成している。
【0053】
さらに、同図(b)は、燃料噴射ノズルであり、窒化ケイ素系セラミックスからなり、YAGレーザを用いて保持治具を高精度に制御することにより細孔2を下部に2箇所有するものである。
【0054】
またさらに、同図(c)は、洗浄用ノズルであり、金属製の本体にアルミナセラミックスからなり、4つの細孔を有するノズルが固定されている。これは予めセラミックスにYAGレーザを用いて細孔2を加工しておき、その後、圧入等によって本体に固定するものである。
【0055】
さらにまた、同図(d)は、サンドブラスト用ノズルであり、ノズル自体をアルミナセラミックスとして、レーザ光を円運動させて細孔2を形成している。
【0056】
以上図3(a)〜(d)に様々な実施形態を示したが、その他種々の形状のセラミック製ノズルとして使用でき、シャワーノズル、インクジェットプリンタ用ノズル、ウォータージェット用ノズル、バーナ用ノズル、薬液噴霧用ノズル、スプレーノズル、レーザ溶射用ノズル等様々なセラミック製ノズルとして好適に使用することができる。
【0057】
【実施例】
(実施例1)ここで、以下に示す方法で実験を行った。
【0058】
図1に示すようなジルコニアセラミックス、アルミナセラミックスからなる加工部材にYAGレーザ、CO2ガスレーザを用いて細孔を有するセラミック製ノズル試料を作製した。
【0059】
各セラミック製ノズル試料は、その形状が外径が5mm、長さが15mmとし、流路の直径が2mm、長さが10mmとし、細孔の直径が0.2mm、長さを5mmとした。
【0060】
また、同様に外径が14mm、長さが20mmとし、流路の直径が8mm、長さが15mmとし、細孔の直径が0.2mm、長さを5mmとした。
【0061】
比較例として、図6に示す焼結ダイヤモンドからなる工具61a用いた工具加工方法、図5に示す従来のエキシマレーザ発振器を用いた加工方法、及び一般的なセラミックスの加工方法である金型で細孔を有する成形体を得、焼成した後、細孔の内壁表面をダイヤモンド砥粒によって仕上げ研磨加工したものを作製した。
【0062】
各セラミック製ノズル試料を長手方向に中心部で切断し、1000倍の走査型電子顕微鏡を用いた微構造写真から細孔の内壁表面と、垂直方向に80μmの位置における結晶粒子をインターセプト法にて各40点で測定し、平均粒径の平均値を算出した。
【0063】
また、各セラミック製ノズル試料の細孔の内壁表面における各20ヶ所で、JISB0601に基づき算術平均粗さ(Ra)を触針式表面粗さ計にて測定し、その最低値を示した。これは、表面粗さの最低値を測定することにより、細孔の内壁表面の気孔欠損の有無を調べるためである。
【0064】
さらに、各セラミック製ノズル試料の細孔の孔精度を測定して基準値との差異を算出した。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1より明らかなように、細孔の内壁が熱によって溶融した表面からなるとともに、細孔の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が他の部分の平均粒径に比べて大きな試料(No.1〜16)は、表面粗さRaの最低値が0.18μm以下であり、位置精度も0.6μm以下と非常に優れたものとすることができた。
【0067】
これに対し、ダイヤモンド工具で加工した試料(No.17〜20)は、孔径が0.2mmのもので加工することができず、孔径が5mmのものは加工することができるものの位置精度が12〜20μmと低下していることが判った。
【0068】
また、エキシマレーザ加工の試料(No.21〜24)ではレーザ出力が小さいため、ジルコニア、アルミナともに加工をすることができない。
【0069】
さらに、細孔を有する成形体を焼成して作製した試料(No.25〜28)は、細孔の位置精度が15〜26μmと非常に低下していることが判った。
【0070】
【発明の効果】
本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、流体の通過する流路と、該流路に連通する細孔を有するセラミック製ノズルにおいて、少なくとも上記細孔の内壁が熱によって溶融処理された表面からなるとともに、細孔の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が他の部分の平均粒径に比べて大きくしたことから、細孔の内壁表面を滑らかな面とするとともに、セラミックスの気孔欠陥を減少させることができ、流体の流れを阻害することはなく流体を円滑に通過させることができる。また、アシストガスにより酸素雰囲気にした状態でパルスレーザを照射することから、レーザ照射による還元作用に伴うセラミックスの変色を抑えることができる。
【0071】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、上記細孔の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が1μm以上であることから、細孔の内壁表面の表面粗さを優れたものとし、流体の流れを阻害することはなく流体を円滑に通過させることができる。
【0072】
さらに、本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、上記細孔の内壁表面から垂直方向に50μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm以下であることから、セラミック製ノズル自体を緻密体とし、曲げ圧縮等の機械的強度の高いセラミック製ノズルを得ることができる。
【0073】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、上記細孔にエッチング処理を施すことから、細孔の内壁表面をより滑らかな面とすることができ、流体が滑らかに流れることができる。
【0074】
また、本発明のセラミック製ノズルの製造方法によれば、成形体を加熱した状態でパルスレーザを照射することから、ヒートショックによりクラックが成形体に発生する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明で製造したセラミック製ノズルの一実施形態を示す斜視図であり、(b)は同図(a)のX−X線における断面図である。
【図2】本発明のセラミック製ノズルの製造方法を示す説明図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明で製造したセラミック製ノズルの様々な形状を示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は一般的なノズルを示す断面図である。
【図5】従来のノズルの加工方法を示す断面図である。
【図6】従来のノズルの加工方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1:流路
2:細孔
3:保持治具
4:レーザ
21:エキシマレーザ発振器
22:レーザ光
23:分光器
24a、24b:レーザ光
25a、25b:光学マスク
26a、26b:レンズ
27:加工部材
31:工具材料
31a:工具
32:マンドレル
33:加工部材
Claims (5)
- 流体の通過する流路と、該流路に連通する細孔を有するセラミック製ノズルの製造方法であって、セラミック原料を射出成形またはプレス成形することによって前記流路を有する成形体を得、該成形体を焼成した後、アシストガスにより酸素雰囲気にした状態でパルスレーザを照射して、内壁が熱によって溶融処理された表面からなるとともに、内壁表面における結晶粒子の平均粒径が他の部分の平均粒径に比べて大きい細孔を形成することを特徴とするセラミック製ノズルの製造方法。
- 前記細孔の内壁表面における結晶粒子の平均粒径が1μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック製ノズルの製造方法。
- 前記細孔の内壁表面から垂直方向に50μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック製ノズルの製造方法。
- 前記細孔にエッチング処理を施すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセラミック製ノズルの製造方法。
- 前記成形体を加熱した状態で前記パルスレーザを照射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセラミック製ノズルの製造方法。
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JP2001383587A JP3958040B2 (ja) | 2001-12-17 | 2001-12-17 | セラミック製ノズルの製造方法 |
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