JP3956888B2 - 熱処理方法及び装置並びに熱処理方法に用いる熱処理炉 - Google Patents

熱処理方法及び装置並びに熱処理方法に用いる熱処理炉 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鋼材の焼入れ、焼戻し、焼鈍し、焼ならし等の熱処理や、セラミックス、磁性材、炭素材、複合材等の焼結、焼成のための熱処理を行うときに用いる熱処理方法及び装置並びに熱処理方法に用いる熱処理炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属や合金製の部材、製品等の鋼材は、硬度、強度、靭性やその他の機械的性質を変化させるために、焼入れ、焼戻し、焼鈍し等の各種熱処理を施すことがある。このような熱処理を行う場合は、通常、熱処理炉内にて、熱処理対象物を所要の高温条件、たとえば、700〜1400℃、更に材質によっては2000℃程度まで加熱した後、冷却するようにしてあり、上記加熱温度と、冷却時の冷却速度を制御することにより、各種の熱処理効果を得ることができるようにしてある。
【0003】
又、セラミックス、磁性材、炭素材、複合材等を焼結、焼成する場合にも、それぞれ高温での熱処理が必要とされることがある。
【0004】
上記のような各種の熱処理を実施する場合、真空中、不活性ガス雰囲気中等の制御した雰囲気下で行うこともある。
【0005】
図9(イ)(ロ)は、上記のような真空中あるいは不活性ガス雰囲気下にて熱処理を行う熱処理炉として従来より実施されているものの一例として、バッチ処理を行う一室式の熱処理炉(たとえば、非特許文献1参照)を示すもので、以下のような構成としてある。すなわち、前面部に開閉可能な扉1aを気密に備えて真空や不活性ガス雰囲気等の内部雰囲気を保持可能な本体容器1の中央部に、断熱壁により囲まれた箱型の加熱室2を設け、且つ該加熱室2の前側壁には、開閉扉4により開閉自在とした処理対象物の搬出入口3を設けると共に、天井壁と底板には、ガス流通用の開口部5,6を設けて、それぞれアクチュエータ5b,6bにより開閉作動される冷却扉5a,6aを備えた構成としてある。又、上部開口部5の上方となる本体容器1の頂部に内向きに設置してあるファンモータ8の出力軸に、冷却ファン7を取り付けると共に、本体容器1の内側上部位置に、外部より所要の冷媒を流通させることができるようにしてある冷却コイル9を設けて、上記各開口部5,6の冷却扉5a,6aを開放させた状態にて、ファンモータ8にて冷却ファン7を回転駆動させることにより、本体容器1内の雰囲気ガスを、冷却コイル9にて冷却しながら開口部5,6を通して加熱室2内に循環流通させることができるようにしてある。
【0006】
上記加熱室2の内の低部位置には炉床10が設けてあり、該炉床10上には、上記搬出入口3を通して加熱室2内へ装入されたトレイ状の熱処理用治具13や、バスケット状の熱処理用治具13が載置されるようにしてある(図ではトレイ状の熱処理用治具13を載置させた状態が示してある)。
【0007】
更に、加熱室2内には、上記炉床10上に載置される熱処理対象物を取り囲む少なくとも4面方向、すなわち、内底部における上記炉床10と干渉しない所要個所と、天井部と、前側壁部における搬出入口3と干渉する部分を除く前後左右の各側壁部の所要個所に、それぞれ下部ヒータ11a、上部ヒータ11b、側部ヒータ11cを設けてあり、真空中で熱処理を行う場合には、上記各ヒータ11a,11b,11cからの輻射により、又、不活性ガス雰囲気下で熱処理を行う場合には、上記各ヒータ11a,11b,11cからの輻射と、該各ヒータ11a,11b,11cにて加熱される雰囲気ガスの対流により、上記炉床10上に熱処理用治具13ごと載置してある熱処理対象物12を加熱することができるようにしてある。
【0008】
したがって、上記熱処理炉にて熱処理対象物12の熱処理を行う場合には、先ず、本体容器1の扉1aと、加熱室2の搬出入口3の開閉扉4を共に開放した状態にて、熱処理対象物12を、熱処理用治具13に保持させたまま加熱室2内に装入して炉床10上に載置させ、次いで、加熱室2の搬出入口3の開閉扉4を閉じ、且つ本体容器1の扉1aを閉じた後、本体容器1の所要位置に接続してある図示しない真空ポンプにて、本体容器1内を真空に引くようにする。その後、真空中で熱処理を行う場合には、このままの状態において、又、不活性ガス雰囲気下で熱処理を行う場合には、上記本体容器1に接続してある図示しない不活性ガス供給部から本体容器1内へ不活性ガスを供給して本体容器1内を不活性ガス雰囲気に置換した状態において、上記各ヒータ11a,11b,11cのヒータ出力により熱処理対象物12の加熱を行わせて、該熱処理対象物12を所望する熱処理温度まで昇温させている。
【0009】
その後、真空中で熱処理を行っていた場合には、本体容器1内に、上記と同様の不活性ガス供給部から供給される不活性ガス等、所要の雰囲気ガスを導入させた後、図9(イ)(ロ)に二点鎖線で示す如く、加熱室2の冷却扉5a,6aをそれぞれ対応するアクチュエータ5b,6bの作動により開放させてから、ファンモータ8により冷却ファン7を回転駆動させる。これにより、本体容器1内の雰囲気ガスを、冷却コイル9にて所要の冷媒と熱交換させて冷却させつつ加熱室2内に循環流通させて、該加熱室2の炉床10上に熱処理用治具13に保持された状態で載置されている熱処理対象物12を所要の冷却速度で冷却させるようにしている。
【0010】
なお、14は本体容器1の蓋1aに設けた覗窓、15は加熱室2の開閉扉4における上記覗窓14と対応する位置に設けた開口部、16は該開口部15の蓋であり、該蓋16を本体容器1の外部から所要の操作機構16aを介し手動操作して開放させることにより、作業者が、上記覗窓14と開口部15を通して、加熱室2内における熱処理対象物の処理状況を観察することができるようにしてある。又、上記熱処理用治具13は、通常、SUS製等の鋼材製とされている。
【0011】
一方、従来、熱処理時に用いる治具として、電子セラミック素子を焼結、焼成する焼成炉で使用するための焼成治具を、セラミック製の角材と丸棒を組み合わせてラック状に形成した棚板の構成とし、更に、該焼成治具としての棚板の熱容量を小さくし、これにより、焼成炉にて電子セラミック素子の焼結を行うときに、処理品自体の焼結に要する熱量以外に必要とされる焼成治具の加熱に要する熱量の削減を図ることができるようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0012】
又、粉末原料の加圧焼結を行うホットプレス装置においては、モールド内に充填した粉末原料の加熱を行う手法として、モールドの外周部に設けたヒータによる輻射及び該ヒータにて加熱される雰囲気ガスの対流によりモールドごと加熱する方式、モールドの外周部に巻いたコイルへ通電することにより、モールド内の粉末原料を誘導加熱する方式、モールド内の粉末原料に通電することにより該粉末原料自体を発熱させるようにする方式、更には、上記ヒータによる加熱と通電加熱を同時に行わせる方式が示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開平11−171655号公報
【特許文献2】
特開2000−73106号公報
【非特許文献1】
社団法人 日本工業炉協会 新版工業炉用語事典 編集委員会編,「新版 工業炉用語事典」,初版,社団法人 日本工業炉協会,平成15年3月25日,p.255
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来実施されている図9に示す如き、熱処理炉により熱処理対象物12の加熱を行わせる場合には、上述したように、熱処理対象物12を、該熱処理対象物12を保持する熱処理用治具13ごと加熱室2内に装入し炉床10上に載置させた状態で、各ヒータ11a,11b,11cによる加熱を行わせるようにしているが、この場合、上記熱処理用治具13は、熱処理対象物12のほぼ1/2から同等、あるいは熱処理対象物12が軽量の場合には、該熱処理対象物12以上の重量を占めることがあり、このために大きな熱容量を有していることとなる。
【0015】
したがって、熱処理用治具13が存在する側、すなわち、たとえば、トレイ状の熱処理用治具13の上に載置した熱処理対象物12を加熱する場合には、上記トレイ状の熱処理用治具13が存在する下面側では、熱処理対象物12と一緒に上記トレイ状の熱処理用治具13をも加熱する必要があり、更には、炉床10も加熱する必要がある。この場合、熱処理対象物12全体を均一に加熱するためには、上記トレイ状の熱処理用治具13や炉床10が存在するために熱容量が大きくなる下面側の加熱遅れを防止するために、加熱室2の底面部に配されている下部ヒータ11aの温度を高くする必要があり、このため該下部ヒータ11aのヒータ出力を、上部ヒータ11bや側部ヒータ11cに比して大きく設定しなければならないという問題がある。
【0016】
又、このように下部ヒータ11aの発熱量を大とすると、断熱材製としてある加熱室2の底板が、上部ヒータ11bにより加熱される天井壁や側部ヒータ11cにより加熱される側壁に比して温度が高くなり、このため、加熱室2の底板部分における放熱量が大となる。したがって、熱効率が低下するという問題も懸念される。
【0017】
なお、上記熱処理用治具13がバスケット状の場合、該バスケット状の熱処理用治具13の底板部の存在による熱処理対象物12の下面側の加熱遅れの防止のために、上記と同様に下部ヒータ11aのヒータ出力を高める必要があることに加えて、上記バスケット状の熱処理用治具13における側壁部の存在による熱処理対象物12の側面部の加熱遅れを防止するために、側部ヒータ11bのヒータ出力も高める必要が生じる。このため、加熱室2の底板及び側壁の温度が高くなって、これら底板及び側壁からの放熱量が大となり、熱効率がやはり低下することが懸念されるという問題がある。
【0018】
一方、特許文献1に示された焼成治具のように、上記トレイ状やバスケット状の熱処理用治具13を、セラミック製の軽量構造とすれば、熱処理用治具13自体の熱容量を低下させて、該熱処理用治具13を加熱する必要が生じることとなる下部ヒータ11aや側部ヒータ11cのヒータ出力を高める度合が多少緩和できると考えられるが、上記熱処理用治具13の存在する側、たとえば、底板部や側壁部に臨む下部ヒータ11aや側部ヒータ11cのヒータ出力を、熱処理用治具13に臨まない、たとえば、上部ヒータ11bと同等にすることはできず、上述した問題点を解消するには至らない。
【0019】
なお、特許文献2に示されたものは、モールドに充填されている粉末原料、すなわち、全周方向を上記モールドに囲まれている粉末原料を加熱対象とする加熱手法に関する技術であるため、上記熱処理炉における熱処理対象物12の加熱時のように、加熱対象となる熱処理対象物12の周囲にて熱処理用治具13の存在する側からの加熱に要する熱量と、熱処理用治具13が存在しない側からの加熱に要する熱量とで差があることに伴って生じる上述したような問題を解決するために適用できるものではない。
【0020】
そこで、本発明は、熱処理用治具に保持させた熱処理対象物を熱処理炉にて加熱するときに、該熱処理炉の複数個所にあるヒータの出力の均一化を図ることができると共に、熱効率を高めることができるようにするための熱処理方法及び装置並びに熱処理方法に用いる熱処理炉を提供しようとするものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、熱処理炉内で熱処理用治具に保持させた熱処理対象物を、ヒータで加熱する熱処理方法において、更に上記熱処理用治具に通電して、該熱処理用治具を、上記ヒータによって加熱される上記熱処理炉の炉内温度に追従させて加熱させ、上記熱処理対象物を加熱することを特徴とする熱処理方法とする。
【0022】
上記熱処理用治具に通電すると、該熱処理用治具自体は抵抗発熱により昇温させられる。したがって、上記ヒータのヒータ出力により熱処理用治具を加熱する必要がなくなるため、熱処理用治具に臨む側に配置されているヒータであっても、そのヒータ出力は、熱処理対象物の加熱に必要な熱量とすることができ、このために、配置場所の異なる各ヒータ間のヒータ出力差を低減することが可能となる。
【0023】
熱処理炉内で熱処理対象物を保持させるよう、少なくとも一対のコネクタ部と、該各コネクタ部の間に接続された各コネクタ部よりも電気抵抗値の大きい抵抗発熱部とからなる熱処理用治具を有し、且つ該抵抗発熱部は、ヒータ出力による上記熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させるように通電して抵抗発熱できるものであり、上記熱処理用治具の各コネクタ部に、熱処理炉側に設けてある電極材を側方位置から接触させて該各コネクタ部間に上記抵抗発熱部を経て通電させることができるようにした構成を有することを特徴とする熱処理用装置とすると、ヒータのヒータ出力差を低減することができ、加熱室の部分的な温度上昇を抑えることができて放熱量を抑えることができることから、熱効率を高めることができる。
【0024】
又、昇温する熱処理用治具により熱処理対象物を直接加熱することも可能になるため、従来の如く、ヒータからの輻射、あるいは、ヒータからの輻射とヒータにより加熱された雰囲気ガスの対流のみによって熱処理対象物を間接加熱していた場合に比して、熱処理対象物を加熱する際の熱効率を高めることができて、処理時間の短縮化を図ることも可能になる。
【0025】
上記熱処理用治具を、所要のトレイ形状の一対向辺部に沿うよう離隔配置してそれぞれの外側位置から熱処理炉側に設けてある電極材を接触できるようにした一対のコネクタ部と、上記トレイ形状の面部となる該各コネクタ部の間の領域に上記各コネクタ部の長手方向所要間隔で平行配置した抵抗発熱部とを一体に接続してなる構成とすると、トレイ形状の熱処理用治具を容易に構成することができる。
【0026】
又、上記において、熱処理用治具のコネクタ部を発熱させるために該コネクタ部の外側面を粗面加工した構成とすることにより、上記トレイ形状の熱処理用治具におけるコネクタ部も抵抗発熱させることができる。
【0027】
一方、熱処理用治具を、バスケット形状の外周部における対向する側面部に、少なくとも一対のコネクタ部を露出させて設けると共に、該各コネクタ部間に、上記バスケット形状の側壁部位置及び底板部位置に配置してある抵抗発熱部を一体に接続し、且つ該抵抗発熱部は、ヒータ出力による上記熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させるように通電して抵抗発熱できるものであり、上記対応する各コネクタ部間に、上記バスケット形状の側壁部位置と底板部位置に配置してある抵抗発熱部を経て通電可能な回路を形成できるようにした構成とすることにより、バスケット形状の熱処理用治具を容易に構成することができる。
【0028】
更に、熱処理用治具のヒータ出力による加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部における熱処理対象物との接触面部に、酸化性セラミックの溶射皮膜を形成させるようにした構成、又は、熱処理用治具のヒータ出力による加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部における熱処理対象物との接触面部に、絶縁性を備えた絶縁部材又は上記抵抗発熱部よりも電気抵抗値が大となる高抵抗部材を配置するようにした構成とすることにより、抵抗発熱部よりも電気抵抗が小さい熱処理対象物であっても、上記各熱処理用治具に保持させた状態にて、上記本発明の熱処理方法を実施することができる。
【0029】
コネクタ部と、ヒータ出力による熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部とからなる熱処理用治具の上記抵抗発熱部の素材として、グラファイト材、ニクロム材、タングステン材、モリブデン材、タンタル材のうちから選択される一つ又は複数の材質を用いるようにした構成とすることにより、耐熱製と良好な抵抗発熱性を備えた抵抗発熱部を容易に形成できる。
【0030】
更に又、熱処理炉内で熱処理用治具に保持させた熱処理対象物をヒータで加熱する熱処理方法において、上記熱処理対象物を、該熱処理対象物よりも電気抵抗値の小さい熱処理用治具の間に挟んで保持させて、該熱処理対象物を挟んで保持している上記各熱処理用治具より、その間に挟持された上記熱処理対象物を経て通電させて該熱処理対象物を加熱する熱処理方法、及び、目的とする熱処理対象物よりも電気抵抗値が小となる少なくとも1対のコネクタ部材と、対をなす上記各コネクタ部材同士を、熱処理対象物を挟持した状態にて着脱自在に連結する絶縁された連結機構とからなる熱処理用治具を有し、且つ上記熱処理対象物を熱処理炉内で熱処理するときに、上記熱処理対象物を挟持してなる上記対をなす各コネクタ部材に熱処理炉側に設けてある電極材を接触させて該各コネクタ部材間に上記熱処理対象物を経て通電させることができるようにした構成を有する熱処理用装置とすることにより、熱処理炉のヒータ出力により熱処理対象物の加熱を行うときに、熱処理対象物に通電して該熱処理対象物自体を直接昇温させることができるため、各ヒータと熱処理用治具の位置関係に拘らず、上記熱処理対象物をほぼ均一に加熱することができて、熱処理炉のヒータ出力をほぼ均等にすることができることから、上記と同様の効果を得ることができる。
【0031】
コネクタ部と、ヒータ出力による熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部とからなる熱処理用治具、又は、目的とする熱処理対象物よりも電気抵抗値が小となる少なくとも1対のコネクタ部材と、対をなす上記各コネクタ部材同士を、熱処理対象物を挟持した状態にて着脱自在に連結する絶縁された連結機構とからなる熱処理用治具の材質を、C/Cコンポジット製とした構成とすることにより、熱処理用治具自体の熱容量を小さくすることができて、該熱処理用治具の加熱に要するエネルギーを削減できると共に、耐クリープ性能を高いものとすることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0034】
図1(イ)(ロ)は本発明の熱処理方法に用いる熱処理用装置における熱処理用治具の実施の一形態としてトレイ状の熱処理用治具に適用した場合を示すものである。本発明で用いる熱処理用治具17は、耐熱性を有し且つ所要の比抵抗を有する導電性材料として、たとえば、C/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材料)製として断面形状縦長の板状に形成した部材を、熱処理対象物12を載置し保持させるためにトレイ状の熱処理用治具に所望される平面形状の一対向辺部に沿うよう配置して、後述する本発明の熱処理炉に設ける一対の電極材22を接触できるようにしてある1対のコネクタ部18と、相対向する該各コネクタ部18の間に、上記と同様のC/Cコンポジット製としてある断面形状縦長の板状部材をコネクタ部18の長手方向と直角方向に且つ所要間隔で平行に配置してなる抵抗発熱部19とを備え、更に、該各抵抗発熱部19の両端部を、それぞれ上記左右のコネクタ部18の内側面に一体に取り付け、又、上記抵抗発熱部19の所要位置に測温熱電対20を取り付けた構成としてある。この構成により、上記コネクタ部18の外側面に、熱処理炉側に設けてある一対の電極材22をそれぞれ接触させることにより、各コネクタ部18の間に、上記各抵抗発熱部19を経て電流を流すことができる回路を形成できるようにしてある。この際、上記コネクタ部18を板厚方向に流通した電流が、上記各抵抗発熱部19の長手方向に流れるようになるときに、電流流通方向の断面積が減少することで抵抗が生じるようにし、この抵抗の発生に伴い上記抵抗発熱部19が抵抗発熱できるようにする。なお、上記熱処理用治具17の強度を確保するために、図1(イ)(ロ)に示す如く上記各抵抗発熱部19の長手方向の中間部同士を、C/Cコンポジット製の補強部材21で一体に連結するようにしてもよい。
【0035】
次に、図2は本発明の熱処理方法に用いる熱処理炉の実施の一形態を示すもので、図9(イ)(ロ)に示した熱処理炉と同様の構成において、加熱室2内に、一対の電極材22を備え、且つ該各電極材22は、加熱室2内の炉床10上に、図1(イ)(ロ)に示した本発明の熱処理用装置における熱処理用治具17を、コネクタ部18が左右に位置するように載置するときに、該トレイ式の熱処理用治具17の両コネクタ部18に、着脱自在にそれぞれ接触できるようにしてなる構成としてある。
【0036】
詳述すると、加熱室2内の炉床10上に上記熱処理用治具17を各コネクタ部18が左右に位置するようにして載置したときに、該各コネクタ部18と対応する高さ位置となる加熱室2内の炉床10の左右両側位置に、上記コネクタ部18の長手方向寸法とほぼ対応して前後方向に延びる電極材22を配置し、該左右の電極材22の長手方向中央部の外側面に、それぞれ該電極材22と直角方向に延び且つ加熱室2の左右の側壁部を摺動自在に貫通するよう配置してある導体製の電極支持部材23の加熱室内側端部を一体に取り付ける。更に、本体容器1の左右両側部における上記電極支持部材23の軸心方向の延長線上と対応する所要個所に気密に設けた取付座24にそれぞれ内向きに取り付けてあるシリンダ25の作動ロッド25aの先端部に、上記各電極支持部材23の加熱室外側端部を、絶縁部材26を介在させて一体に連結して、上記各シリンダ25の作動ロッド25aの伸長作動により上記各電極支持部材23と一体に左右の電極材22をそれぞれ内向き(炉床10側)に移動させ、これにより、上記左右の各電極材22の先端面を、炉床10上に載置する上記熱処理用治具17のコネクタ部18の外側面に面接触させることができるようにしてある。
【0037】
更に、上記各電極支持部材23の加熱室外側端部に一端側を接続したフレキシブル電極27の他端部を、本体容器1の左右両側部における所要位置に気密に設けた取付座28にそれぞれ内外方向に貫通するよう設置してある各貫通電極材29の内側端部に接続させるようにする。又、上記各貫通電極材29の外側端部は、外部の図示しない電力供給部(トランス、サイリスタ等を含む)にそれぞれ接続した構成とする。これにより、上記のように左右のシリンダ25の伸長作動により各電極材22を炉床10上に載置した熱処理用治具17のコネクタ部18に接触させるときの各電極支持部材23と固定側の貫通電極材29との相対変位を、上記フレキシブル電極27の変形により吸収できるようにすると共に、上記電力供給部より供給される電力を、貫通電極材29、フレキシブル電極27、電極支持部材23、電極材22を経て上記熱処理用治具17のコネクタ部18に供給できるようにする。
【0038】
なお、上記各取付座24に対する対応するシリンダ25の取付部分や作動ロッド25aの貫通部分、及び、各取付座28に対する対応する貫通電極材29の貫通部分は、いずれもOリング等を用いたシール機構を設けて、本体容器1の気密性を保持できるようにしてある。その他の構成は図9(イ)(ロ)に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0039】
上記構成としてある本発明の熱処理用装置における熱処理用治具17及び熱処理炉を用いて熱処理対象物12の熱処理を行う場合は、上記熱処理炉における左右のシリンダ25の作動ロッド25aを収縮作動させて、左右の電極材22の間隔を、上記熱処理用治具17の幅よりも広くなるよう配置させておく。
【0040】
この状態において、上記熱処理用治具17の上に載置して保持させた該熱処理対象物12を、従来と同様に、上記熱処理用治具17ごと熱処理炉の加熱室2内に装入して炉床10上に載置させる。なお、この際上記熱処理用治具17は各コネクタ部18が左右に配されるようにし、且つ該熱処理用治具17の測温用熱電対20を、熱処理炉側に設けてある図示しない温度計測装置に接続しておく。次いで、上記各シリンダ25を伸長作動させて左右の電極材22を、上記熱処理用治具17の両コネクタ部18にそれぞれ接触させる。その後、加熱室2の開閉扉4を閉じると共に、本体容器1の扉を1a閉じた後、従来と同様に、必要に応じて本体容器1内を真空、又は、不活性ガス雰囲気に置換し、しかる後、ヒータ11a,11b,11cによる熱処理対象物12の加熱を行わせるようにし、同時に、上記電力供給部より、貫通電極材29、フレキシブル電極27、電極支持部材23、電極材22を経て熱処理用治具17のコネクタ部18に、電力を供給し、これにより、該各コネクタ部18より抵抗発熱部19に電流を流して該抵抗発熱部19を炉内温度付近の所定温度まで加熱させるようにする。
【0041】
上記熱処理用治具17に通電させて発熱させる場合の制御としては、たとえば、図3(イ)に示す如く、熱処理炉の各ヒータ11a,11b,11cによって徐々に加熱される炉内温度(線a)に対し、上記熱処理用治具17の測温用熱電対20により検出される抵抗発熱部温度(線b)がオーバーシュートを生じないように、図3(ロ)に示す如く通電のON−OFF制御を行うようにすればよい。
【0042】
すなわち、通電ON時に上記抵抗発熱部19が炉内温度(線a)の昇温速度を上回りそうになるときには、通電をOFFに切換える。このとき上記抵抗発熱部19が加熱され過ぎた場合には、他の部分よりも放熱量が増えるため、炉内の平均的な温度とみなされる炉内温度(線a)で上記抵抗発熱部19の昇温が停止する。又、上記通電ON時において、コネクタ部18は抵抗発熱部19に比べ抵抗が低いため加熱され難く、したがって、図3(イ)に線cで示すコネクタ部温度は、抵抗発熱部温度(線b)に比して低温となっている。したがって、通電OFF時には、高温側となる抵抗発熱部19より、低温側となるコネクタ部18への熱伝導による熱の移動が生じるため、上記抵抗発熱部19の過剰な昇温が抑えられると同時に、抵抗発熱部温度(線b)とコネクタ部温度(線c)との温度差が緩和される。
【0043】
その後、上記抵抗発熱部温度(線b)が炉内温度(線a)に比してある程度低くなった場合には、再び通電をONに切換えて抵抗発熱部19に通電して発熱させて昇温させるようすればよく、上記通電ONと通電OFFを適宜切替えることにより、熱処理用治具17全体の温度を、炉内温度(線a)に追従させて上昇させるようにすればよい。なお、炉内温度(線a)がある程度高温となると、各ヒータ11a,11b,11cからの輻射伝熱の効果が高まるので、上記熱処理用治具17への通電はOFFとしたままとしてもかまわない。
【0044】
このように、上記の方法によれば、熱処理炉の加熱室2内で熱処理対象物12を加熱するときに、該熱処理対象物12を保持する熱処理用治具17自体を抵抗発熱させて炉内温度とほぼ同等となるように加熱することができ、ヒータ出力による加熱と、熱処理用治具17の抵抗加熱とを併用するハイブリッド加熱を実施できることから、該熱処理用治具17に臨んで配置されている下部ヒータ11aのヒータ出力に関し、上記熱処理用治具17を加熱するための出力が不要となり、上記下部ヒータ11aのヒータ出力を、他のヒータ11b,11cのヒータ出力とほぼ同等とすることができるため、下部ヒータ11aの出力による加熱室2の底板の温度上昇を抑えて放熱量を抑えることができて、熱効率を高めることができる。
【0045】
なお、上記においては、各ヒータ11a,11b,11cによる熱処理対象物12の加熱を行うときに、本発明の熱処理用装置における熱処理用治具17に対する通電を、熱処理用治具温度が炉内温度を越えないように制御するものとしたが、炉床10上にセラミックスを置いてその上に熱処理用治具17を載置させるようにしてある構成において、上記熱処理対象物12の加熱初期に熱処理用治具温度が炉内温度を多少越えるようにして、この発熱した熱処理用治具17からの輻射により炉床10を加熱させるようにしてもよい。このようにすれば、下部ヒータ11aのヒータ出力より、従来、炉床10を加熱するために消費されていた分の熱量も削減できて、該下部ヒータ11aのヒータ出力を更に削減して、他のヒータ11b,11cのヒータ出力と同様に、熱処理対象物12のみの加熱に必要なヒータ出力とすることができる。
【0046】
更に、上記いずれの場合にも、熱処理用治具17に通電して該熱処理用治具17自体を発熱させると、熱処理用治具17上に載置し保持されている熱処理対象物12に対しては、上記発熱した熱処理用治具17より熱伝導による熱の移動が生じることから、該熱処理対象物12を直接加熱することも可能となり、したがって、従来の如きヒータ11a,11b,11cからの輻射、あるいは、該輻射及びヒータ11a,11b,11cにより加熱された雰囲気ガスの対流によって熱処理対象物12を間接加熱していた場合に比して、熱処理対象物12を加熱するための熱効率を高めることができて、処理時間の短縮化を図ることも可能になる。
【0047】
更に、上記熱処理用治具17は、C/Cコンポジット製としてあるので、従来のSUS等の鋼材製としてある熱処理用治具13と同等の強度を容易に得ることができ、又、上記従来の鋼材製のものに比して大幅な軽量化を図ることができることから、熱容量を小さくできて、該熱処理用治具17の加熱に要する熱量を削減できることから、省エネルギー化を図ることが可能になり、更には、上記従来の鋼材製のものに比して、クリープに対する耐性を高めることができることから、熱処理用治具としての寿命を延ばすことが可能になる。
【0048】
上記熱処理炉内にて、熱処理対象物12を所定温度まで加熱した後、冷却速度を制御しながら冷却することにより該熱処理対象物12に対する所望の熱処理を施した後は、上記熱処理炉の各シリンダ25をそれぞれ収縮作動させて、左右の電極材22を上記熱処理用治具17のコネクタ部18の外側面より離隔させた後、従来と同様に上記熱処理用治具17と一緒に、上記熱処理後の熱処理対象物12を取り出すようにすればよい。
【0049】
次に、図4(イ)(ロ)(ハ)は図1(イ)(ロ)に示した本発明の熱処理用治具17の応用例を示すもので、該熱処理用治具17では上述したようにコネクタ部18から抵抗発熱部19へ電流が流れるときに、該抵抗発熱部19にて抵抗が増加することで抵抗発熱が生じるようにしてあるため、熱処理用治具17上に、上記抵抗発熱部19よりも電気抵抗値が小さい熱処理対象物12を載置した状態にて、該熱処理用治具17のコネクタ部18に熱処理炉側に設けてある電極材22を接触させて通電させると、熱処理対象物12自体を経由した回路が形成されてしまい、抵抗発熱部19の通電量が減少して発熱が阻害される虞が懸念される。よって、このように抵抗発熱部19よりも電気抵抗値が小さい熱処理対象物12の熱処理を行う場合には、たとえば、図4(イ)に示す如く、上記熱処理用治具17の上面側に、耐熱性を有し且つ絶縁性を備えた素材、たとえば、ボロン材等で網状等の所要形状に形成した絶縁部材30を載置し、その上に熱処理対象物12を載置して保持させることにより、上記熱処理用治具17から熱処理対象物12への通電を上記絶縁部材30により阻止させるようにすればよい。又、図4(ロ)に示す如く、上記熱処理用治具17の表面部に露出されて熱処理対象物12との接触する抵抗発熱部19や補強部材20の上下両端面、更には、必要に応じてコネクタ部18の上下両端面等、熱処理炉側の電極材22と接触させるコネクタ部18の外側面を除く所要個所にアルミナ等の酸化性セラミックを溶射して絶縁性と耐熱性を有する溶射皮膜31を形成させるようにしてもよく、この場合にも、上記と同様に熱処理用治具17から熱処理対象物12へ電流が流れることを阻止できる。
【0050】
更に、熱処理用治具17から、抵抗発熱部19よりも電気抵抗値の小さい熱処理対象物12への通電を防止するための更に他の手法としては、図4(ハ)に示す如く、図4(イ)に示した如き絶縁性を備えた絶縁部材30に代えて、耐熱性を有し且つ抵抗発熱部19よりも抵抗値が大となる素材で網状等の所要形状に形成した高抵抗部材32を、上記熱処理用治具17と、その上に載置して保持すべき熱処理対象物12との間に介在させるようにしてもよく、この場合には、電流はより抵抗の少ない経路側へ多く流れる性質があるため、抵抗発熱部19より上記高抵抗部材32を経て熱処理対象物12自体に電流が流れるようになるとしてもその通電量を小さく抑えることができるため、上記抵抗発熱部19への通電を確保して、該抵抗発熱部19を抵抗発熱させることができる。
【0051】
次いで、図5は、本発明の熱処理用装置における熱処理用治具の実施の他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)に示した熱処理用治具17と同様の構成において、コネクタ部18の外側面、すなわち、熱処理炉側に設けてある電極材22との接触面を粗面加工したものである。
【0052】
その他の構成は図1(イ)(ロ)に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0053】
本実施の形態によれば、図1(イ)(ロ)に示した熱処理用治具17と同様に、熱処理用治具17の上側に熱処理対象物12を載置して保持させた状態にて、熱処理対象物12を該熱処理用治具17と一緒に熱処理炉の炉床10上に載置した後、熱処理炉側に設けてある各電極材22を、それぞれ対応するシリンダ25の伸長駆動により移動させて上記熱処理用治具17のコネクタ部18の外側面へ接触させると、該コネクタ部18の外側面が粗面加工してあるために、コネクタ部18の外側面と電極材22は面接触とはならずに多数の点で接触するようになる。このために、上記各電極材22より熱処理用治具17のコネクタ部18へ電力を供給すると、上記コネクタ部18の外側面と電極材22との接触部分では電気抵抗値が物性値よりも大きくなり、このため抵抗発熱が生じるようになることから、上記コネクタ部18を発熱させることができ、このため、上記本発明の熱処理用装置における熱処理用治具17を、抵抗発熱部19のみならずコネクタ部18をも含む全体に亘り発熱させることができる。
【0054】
なお、上記においては、熱処理用治具17のコネクタ部18の外側面を粗面加工するものとして示したが、図6(イ)に示す如く、上記熱処理用治具17のコネクタ部18の外側面は平面のままとしておく一方、熱処理炉側に設けてある電極材22の先端面に粗面加工を施すようにしたり、図6(ロ)に示す如く、熱処理用治具17のコネクタ部18の外側面と、熱処理炉側の電極材22の先端面の双方に粗面加工を施すようにしてもよく、この場合にも上記と同様の効果を得ることができることは明らかである。
【0055】
更に、図7は本発明の熱処理用装置の実施の更に他の形態として熱処理用治具をバスケット形式とした場合を示すものである。すなわち、バスケット形式とした熱処理用治具33は、図1(イ)(ロ)に示したトレイ形式の熱処理用治具17と同様の構成としてあるC/Cコンポジット製の2つのコネクタ部18と該各コネクタ部18間を一体に接続する抵抗発熱部19とを備えて全体形状を熱処理用治具状としてなる底板部材34を形成する。更に、上記底板部材34の形状と対応する四角いリング形状とし且つ各辺部が所要の断面積を備えていて、上下に所要間隔を隔てて平行配置した2つのC/Cコンポジット製のコネクタ部36,37と、該上下の各コネクタ部36,37の間に、周方向に所要間隔で多数配置したC/Cコンポジット製としてある上下方向に延びる板状の抵抗発熱部38とを有して、該各抵抗発熱部38の上端部と下端部を、上記上部コネクタ部36の下面と、下部コネクタ部37の上面にそれぞれ一体に取り付けることによって、全体形状が角筒型となる周壁部材35を形成した構成としてある。この構成により、上記上下の各コネクタ部36,37に、外部の電源より電力を供給することにより、上下のコネクタ部36,37間に上記各抵抗発熱部38を経て通電可能な回路を形成でき、且つ該回路に通電することにより上記コネクタ部36,37を流通した電流が、各抵抗発熱部38を通過するときに電流の流れる断面積が縮小されて抵抗が高まり、この抵抗により該各抵抗発熱部38が発熱できるようにしてある。
【0056】
更に、上記底板部材34の上側に、上記周壁部材35を一体に取り付けてバスケット形式の熱処理用治具33とする。この際、上記底板部材34の回路と、周壁部材35の回路をそれぞれ独立した回路とすることができるように、底板部材34と周壁部材35を、図示しない耐熱性の絶縁部材を介在させた状態で一体化するか、若しくは、周壁部材と対応する底板部材の外周縁部上面、周壁部材の下端面のいずれか一方又は双方にアルミナの溶射皮膜の如き耐熱性を供え且つ絶縁性を備えた酸化性セラミックの溶射皮膜(図示せず)を形成させた後、底板部材34と周壁部材35を一体化させるようにすればよい。
【0057】
なお、上記熱処理用治具33に収納して保持させるべき熱処理対象物12が、電気抵抗値の小さいものの場合には、底板部材34のコネクタ部18や抵抗発熱部19や補強部材20、周壁部材35の抵抗発熱部38やコネクタ部36,37の内側面側に、それぞれ図4(イ)(ロ)(ハ)に示したと同様に、絶縁部材30や高抵抗部材32を配置したり、絶縁性を備えた溶射皮膜31を形成させるようにすればよい。
【0058】
上記本発明の熱処理用装置における熱処理用治具33に収納して保持させた熱処理対象物12の熱処理に用いるための熱処理炉としては、図2に示した熱処理炉と同様の構成において、シリンダ25の伸縮作動により炉床10上に載置してある熱処理用治具に接触、離反でき且つ外部の電力供給部に接続してある電極材22を、図7に二点鎖線で示す如く、上記熱処理用治具33の底板部材34の各コネクタ部18に対応した高さ位置となる炉床10の左右両側位置と、上記周壁部材35の上部コネクタ部36に対応した高さにおける炉床10の一側方位置と、下部コネクタ部37に対応した高さにおける炉床10の他側方位置に、それぞれ配設してなる構成として、上記各電極材22を対応するコネクタ部18,36,37と接触させることにより、底板部材34と周壁部材35にそれぞれ抵抗発熱部19,38を経て電流を流すことができるようにしてある。
【0059】
上記図7に示した本発明の熱処理用装置における熱処理用治具33によれば、熱処理対象物12を収納、保持させた状態にて炉床10上に載置した後、図6に二点鎖線で示す如く底板部材34の各コネクタ部18と、周壁部材35の各コネクタ部36,37に、それぞれ熱処理炉側に設けてある電極材22を接触させて、該各電極材22より、上記底板部材34と周壁部材35にそれぞれ通電すると、上記底板部材34の抵抗発熱部19が発熱すると共に、周壁部材35の抵抗発熱部38が発熱する。したがって、対応する抵抗発熱部19,38がそれぞれ発熱することに伴って温度上昇する上記底板部材34と周壁部材35のそれぞれの昇温速度を、熱処理炉のヒータ11a,11b,11cによる熱処理対象物12の加熱時における炉内温度の昇温速度に対応できるように、底板部材34及び周壁部材35への通電を個別にON−OFF制御させるようにすれば、バスケット状の熱処理用治具33に保持させた熱処理対象物12を加熱する場合であっても、ヒータ出力による加熱と、熱処理用治具33自体の抵抗加熱によるハイブリッド加熱を実施でき、このため、上記熱処理用治具33の底面もしくは側面に臨む下部ヒータ11aや側部ヒータ11cのヒータ出力より、熱処理用治具33自体を加熱させるために従来要求されていた出力を含める必要がなくなるため、これら下部及び側部ヒータ11a,11cのヒータ出力を従来に比して削減できて、図1(イ)(ロ)に示した本発明の熱処理用装置における熱処理用治具17を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0060】
図8(イ)(ロ)(ハ)は本発明の熱処理用装置における熱処理用治具の更に実施の他の形態を示すもので、熱処理対象物として、たとえば、通電による抵抗発熱量等の条件が予め分っている一定(所定)の熱処理対象物12aを定常的に熱処理する場合に適したものを対象としたものである。すなわち、耐熱性を備え且つ目的とする熱処理対象物12aよりも電気抵抗が小さくなるよう形成した少なくとも2つのコネクタ部材39と、該各コネクタ部材39の間に熱処理対象物12aを挟んだ状態にて上記各コネクタ部材39同士を直接導通させることなく着脱自在に連結するための連結機構としてのボルト、ナット機構とを備えてなるものとし、上記各コネクタ部材39の間に熱処理対象物12aを挟持させた状態にて、熱処理炉の炉床10上に載置して該熱処理炉のヒータ11a,11b,11cにより上記熱処理対象物12aを加熱するときに、上記各コネクタ部材39に、熱処理炉側に設けてある電極材22を接続して、上記各コネクタ部材39より、その間に挟持された熱処理対象物12aを経て通電させることにより、上記熱処理対象物12a自体を抵抗発熱させることができるようにしたものである。
【0061】
詳述すると、上記各コネクタ部材39は、たとえば、C/Cコンポジット製の矩形の平板状とすると共に、点対称位置より左右方向の一側へややシフトさせた複数個所(図では6個所)に、ボルト孔40を設けて、左右を反転させたコネクタ部材39同士を、上記ボルト孔40位置を一致させて重ね合わせることにより、該各コネクタ部材39の位置を互いに左右方向にずらすことができるようにしてある。
【0062】
したがって、上記左右を反転させたコネクタ部材39同士の間に、たとえば、図8(イ)(ロ)に示す如く立方体状の熱処理対象物12aを多数配置し、これを複数段(図8(ロ)では3段)重ねた状態にて、図8(ハ)に示す如く、各コネクタ部材39のボルト孔40にC/Cコンポジット製のボルト41を挿通させると共に、該ボルト41の端部に、C/Cコンポジット製のナット42を螺着させることにより、上記左右方向に位置をずらした各コネクタ部材39の間にて熱処理対象物を挟持させることができるようにしてあり、この際、上記ボルト41、ナット42を介してコネクタ部材39同士に通電しないようにするために、上記各コネクタ部材39の各ボルト孔40の内側には、アルミナ製チューブ43を嵌挿してその内側に上記ボルト41を挿通させるようにすると共に、該ボルト41の先端部にはアルミナ製ワッシャ44を介してナット42を螺着させるようにしてある。
【0063】
本実施の形態の熱処理用治具に保持させた熱処理対象物12aを熱処理するための熱処理炉としては、図2に示したと同様の構成としてある熱処理炉において、炉床10上の熱処理用治具へ接触、離反できるようにしてある電極材22を、炉床10上に載置するトレイ状の熱処理用治具17と対応した高さ位置にて、該熱処理用治具17のコネクタ部18の沿って延びる形状とすることに代えて、図8(イ)(ロ)に示す如く、上下方向に延びる形状の電極材22を備えた構成として、上記した如く間に熱処理対象物12aを挟持させることにより対をなす各コネクタ部材39が互いに左右方向に位置がずれた配置となることに伴って、相対的に左右方向に突出するようになる各コネクタ部材39の突出端部に、上記電極材22を接触、離反できるように備えた構成とする。
【0064】
したがって、上記熱処理対象物12aを熱処理する場合は、上記熱処理対象物12aを熱処理用治具のコネクタ部材39に挟持させた状態にて、熱処理炉の炉床10上に載置した後、図8(イ)(ロ)に二点鎖線で示す如く、上記各コネクタ部材39に、熱処理炉に設けてある電極材22を左右方向の対応する側から接触させ、この状態にて、ヒータ11a,11b,11cによる上記熱処理対象物12aの加熱を行うときに、上記各コネクタ部材39に、熱処理炉側の電極材22を経て、外部の電力供給装置より電力を供給して、対をなす各コネクタ部材39の間に、熱処理対象物12aを経て通電させるようにし、これにより、各コネクタ部材39よりも電気抵抗値が大きくなるようにしてある各熱処理対象物12a自体を抵抗発熱させて昇温させるようにする。
【0065】
このように、本実施の形態によれば、熱処理対象物12a自体を直接昇温させることができるため、熱処理炉の各ヒータ11a,11b,11cと熱処理用治具の位置関係に拘らず、熱処理対象物12aをほぼ均一に加熱することができるため、熱処理炉の各ヒータ11a,11,11cのヒータ出力をほぼ均等にすると同時に削減できることができることから、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、図1(イ)(ロ)に示した熱処理用治具17は、トレイ形状の所要個所に設けて外側位置から熱処理炉側に設けてある電極材を接触できるようにした少なくとも一対のコネクタ部18と、該各コネクタ部18間に接続された抵抗発熱部19とからトレイ形状を強固に形成できれば、コネクタ部18及び抵抗発熱部19とからなる回路の配置は自在に設定してよいこと、図7に示した熱処理用治具33は、底板部材34と側壁部材35を、それぞれ1対のコネクタ部18,36,37と該各コネクタ部18,36,37間に接続された抵抗発熱部19,38を備えてなる別々の回路を備えた部材として示したが、底部と側壁部を一つの回路により形成したり、あるいは、各側壁部をそれぞれ別の回路として構成させる等、回路の配置は自在に設定してよいこと、図8(イ)(ロ)(ハ)に示した熱処理用治具では、矩形の平板状のコネクタ部材39同士の間に、立方体状の熱処理対象物12aを挟持させて熱処理を行わせるものとして示したが、目的とする熱処理対象物12aを2つのコネクタ部材39の間に挟持させた状態にて、該各コネクタ部材39に熱処理炉側に設けてある電極材22を接触させることにより、該各コネクタ部材39より熱処理対象物12aを経て通電できる回路が形成できるようにすれば、コネクタ部材39の形状は、上記目的とする熱処理対象物12aの形状に対応して自在に設定してよいこと、熱処理炉としては、図1(イ)(ロ)に示した熱処理用治具17及び図7に示した熱処理用治具33におけるコネクタ部18,36,37の配置や、図8(イ)(ロ)(ハ)に示した熱処理用治具におけるコネクタ部材39の配置に対応できるようにすれば、電極材22の配置は自在に設定してよいこと、又、一室式の熱処理炉以外にも連続処理を行う多室式の熱処理炉にも適用でき、更には、大気条件下にて熱処理を行う熱処理炉に適用してもよいこと、熱処理用治具の素材としてはいずれもC/Cコンポジット製として示したが、耐熱性を有し且つ所要の電気抵抗を備えた素材であれば、グラファイト材、ニクロム材、タングステン材、モリブデン材、タンタル材、セラミックス材(たとえば、SiC)、Fe−Cr−Al系材のうちから選択される一つ又は複数の材質により抵抗発熱部19,38を形成してもよく、この場合には、耐熱性と、良好な抵抗発熱性が期待できること、熱処理用治具への通電のON−OFFの切換えは、作業者が覗窓14より加熱室2内における熱処理用治具の加熱状態を目視により判断しながら行うようにしてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0067】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1) 熱処理炉内で熱処理用治具に保持させた熱処理対象物を、ヒータで加熱する熱処理方法において、更に上記熱処理用治具に通電して、該熱処理用治具を、上記ヒータによって加熱される上記熱処理炉の炉内温度に追従させて加熱させ、上記熱処理対象物を加熱する熱処理方法としてあるので、熱処理対象物を熱処理炉のヒータ出力により加熱するときに、熱処理用治具自体を抵抗発熱により昇温させて上記ヒータ出力と併用させるハイブリッド加熱を行うことができることから、ヒータのヒータ出力により熱処理用治具を加熱する必要をなくすことができて、熱処理用治具に臨む側に配置されているヒータのヒータ出力を削減して他のヒータのヒータ出力とほぼ同等とすることができる。このため、ヒータ出力の相違するヒータが存在することによる熱損失を削減できて、熱効率を高めることができる。
(2) 熱処理用治具の昇温により該熱処理用治具に保持されている熱処理対象物を伝熱により直接昇温させることができ、従来の如きヒータからの輻射、あるいは、該輻射及びヒータにより加熱された雰囲気ガスの対流によって熱処理対象物を間接加熱していた場合に比して、熱処理対象物を加熱するための熱効率を高めることができて、処理時間の短縮化を図ることも可能になる。
(3) よって、熱処理炉内で熱処理対象物を保持させるよう、少なくとも一対のコネクタ部と、該各コネクタ部の間に接続された各コネクタ部よりも電気抵抗値の大きい抵抗発熱部とからなる熱処理用治具を有し、且つ該抵抗発熱部は、ヒータ出力による上記熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させるように通電して抵抗発熱できるものであり、上記熱処理用治具の各コネクタ部に、熱処理炉側に設けてある電極材を側方位置から接触させて該各コネクタ部間に上記抵抗発熱部を経て通電させることができるようにした構成を有する熱処理用装置と、断熱壁で囲まれた加熱室内にて、該加熱室内底部に設けてある炉床上に熱処理用治具ごと載置した熱処理対象物を、上記加熱室の天井部、内底部及び側壁部にそれぞれ配設したヒータの出力により加熱できるようにしてある熱処理炉における上記加熱室内に、上記炉床上に載置した熱処理用治具に設けてある各コネクタ部に対して側方位置より接触、離反可能な電極材を備えて、上記各ヒータの出力により熱処理対象物を加熱するときに、上記電極材を上記熱処理用治具のコネクタ部の外側面に接触させて該熱処理用治具に通電できるようにした熱処理炉を用いることにより、上記方法を実施することができ、このため、ヒータのヒータ出力の均一化を図ることができることから、加熱室の部分的な温度上昇を抑えることができて放熱量を抑えることができることから、熱効率を高めることができる。
(4) 上記(3)のほかに、昇温する熱処理用治具により熱処理対象物を直接加熱することも可能になるため、従来の如く、ヒータからの輻射、あるいは、ヒータからの輻射とヒータにより加熱された雰囲気ガスの対流のみによって熱処理対象物を間接加熱していた場合に比して、熱処理対象物を加熱する際の熱効率を高めることができて、処理時間の短縮化を図ることも可能になる。
(5) 熱処理用治具を、所要のトレイ形状の一対向辺部に沿うよう離隔配置してそれぞれの外側位置から熱処理炉側に設けてある電極材を接触できるようにした一対のコネクタ部と、上記トレイ形状の面部となる該各コネクタ部の間の領域に上記各コネクタ部の長手方向所要間隔で平行配置した抵抗発熱部とを一体に接続してなる構成とすると、トレイ形状の熱処理用治具を容易に構成することができる。
(6) 又、熱処理用治具のコネクタ部を発熱させるために該コネクタ部の外側面を粗面加工した構成とすることにより、上記トレイ形状の熱処理用治具におけるコネクタ部も抵抗発熱させることができる。
(7) 熱処理用治具を、バスケット形状の外周部における対向する側面部に、少なくとも一対のコネクタ部を露出させて設けると共に、該各コネクタ部間に、上記バスケット形状の側壁部位置及び底板部位置に配置してある抵抗発熱部を一体に接続し、且つ該抵抗発熱部は、ヒータ出力による上記熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させるように通電して抵抗発熱できるものであり、上記対応する各コネクタ部間に、上記バスケット形状の側壁部位置と底板部位置に配置してある抵抗発熱部を経て通電可能な回路を形成できるようにした構成とすることにより、バスケット形状の熱処理用治具を容易に構成することができる。
(8) 更に、熱処理用治具のヒータ出力による加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させるように抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部における熱処理対象物との接触面部に、酸化性セラミックの溶射皮膜を形成させるようにした構成、又は、熱処理用治具のヒータ出力による加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させるように抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部における熱処理対象物との接触面部に、絶縁性を備えた絶縁部材又は上記抵抗発熱部よりも電気抵抗値が大となる高抵抗部材を配置するようにした構成とすることにより、抵抗発熱部よりも電気抵抗が小さい熱処理対象物であっても、上記各熱処理用治具に保持させた状態にて、上記本発明の熱処理方法を実施することができる。
(9) 上記において、コネクタ部と、ヒータ出力による熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させるように抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部とからなる熱処理用治具の上記抵抗発熱部の素材として、グラファイト材、ニクロム材、タングステン材、モリブデン材、タンタル材、セラミックス材(たとえば、SiC)、Fe−Cr−Al系材のうちから選択される一つ又は複数の材質を用いるようにした構成とすることにより、耐熱製と良好な抵抗発熱性を備えた抵抗発熱部を容易に形成できる。
(10)更に又、熱処理炉内で熱処理用治具に保持させた熱処理対象物をヒータで加熱する熱処理方法において、上記熱処理対象物を、該熱処理対象物よりも電気抵抗値の小さい熱処理用治具の間に挟んで保持させて、該熱処理対象物を挟んで保持している上記各熱処理用治具より、その間に挟持された上記熱処理対象物を経て通電させて該熱処理対象物を加熱することを特徴とする熱処理方法、及び、目的とする熱処理対象物よりも電気抵抗値が小となる少なくとも1対のコネクタ部材と、対をなす上記各コネクタ部材同士を、熱処理対象物を挟持した状態にて着脱自在に連結する絶縁された連結機構とからなる熱処理用治具を有し、且つ上記熱処理対象物を熱処理炉内で熱処理するときに、上記熱処理対象物を挟持してなる上記対をなす各コネクタ部材に熱処理炉側に設けてある電極材を接触させて該各コネクタ部材間に上記熱処理対象物を経て通電させることができるようにした構成を有する熱処理用装置とすることにより、熱処理炉のヒータ出力により熱処理対象物の加熱を行うときに、熱処理対象物に通電して該熱処理対象物自体を直接昇温させることができるため、各ヒータと熱処理用治具の位置関係に拘らず、上記熱処理対象物をほぼ均一に加熱することができて、熱処理炉のヒータ出力をほぼ均等にすることができることから、上記と同様の効果を得ることができる。
(11) コネクタ部と、ヒータ出力による熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部とからなる熱処理用治具、又は、目的とする熱処理対象物よりも電気抵抗値が小となる少なくとも1対のコネクタ部材と、対をなす上記各コネクタ部材同士を、熱処理対象物を挟持した状態にて着脱自在に連結する絶縁された連結機構とからなる熱処理用治具の材質を、C/Cコンポジット製とした構成とすることにより、熱処理用治具自体の熱容量を小さくすることができて、該熱処理用治具の加熱に要するエネルギーを削減できると共に、耐クリープ性能を高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱処理用装置の実施の一形態として熱処理用治具をトレイ形状としたものを示すもので、(イ)は概略正面図、(ロ)は概略平面図を示すものである。
【図2】本発明の熱処理炉の実施の一形態を示すもので、概略切断正面図を示すものである。
【図3】図2の熱処理炉における、図1に示した熱処理用治具への通電の制御方法を示すもので、(イ)は炉内温度と、熱処理用治具の抵抗発熱部温度及びコネクタ部温度の温度変化を示す図で、(ロ)は熱処理用治具への通電のON−OFFの切換え操作のタイミングを示す図である。
【図4】図1の熱処理用治具にて、該熱処理用治具の抵抗発熱部よりも電気抵抗値の小さい熱処理対象物への通電を防止するための対応策を示すもので、(イ)は熱処理用治具と熱処理対象物との間に絶縁部材を介在させるようにした状態を、(ロ)は熱処理用治具の表面部に絶縁性の溶射皮膜を形成した状態を、(ハ)は熱処理用治具と熱処理対象物との間に高抵抗部材を介在させるようにした状態をそれぞれ示す概略正面図である。
【図5】本発明の熱処理用装置の実施の他の形態を示すもので、コネクタ部を拡大して示す図である。
【図6】熱処理用治具のコネクタ部を発熱させるための手段を示すもので、(イ)は熱処理炉側の電極材の先端面を粗面加工した状態を、(ロ)は熱処理用治具のコネクタ部の外側面と、熱処理炉側の電極材の先端面を共に粗面加工した状態をそれぞれ示す要部拡大図である。
【図7】本発明の熱処理用装置の実施の更に他の形態として熱処理用治具をバスケット形状にしたものを示す概略斜視図である。
【図8】本発明の熱処理用装置の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は概略正面図、(ハ)はボルトの先端部付近を拡大して示す図である。
【図9】従来一般に用いられている熱処理炉の一例の概略を示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は切断正面図を示すものである。
【符号の説明】
2 加熱室
10 炉床
11a,11b,11c ヒータ
12 熱処理対象物
17 熱処理用治具
18 コネクタ部
19 抵抗発熱部
22 電極材
30 絶縁部材
31 溶射皮膜
32 高抵抗部材
33 熱処理用治具
34 底板部材(底板部)
35 周壁部材(側壁部)
36 上部コネクタ部(コネクタ部)
37 下部コネクタ部(コネクタ部)
38 抵抗発熱部
39 コネクタ部材
41 ボルト(連結機構)
42 ナット(連結機構)

Claims (11)

  1. 熱処理炉内で熱処理用治具に保持させた熱処理対象物を、ヒータで加熱する熱処理方法において、更に上記熱処理用治具に通電して、該熱処理用治具を、上記ヒータによって加熱される上記熱処理炉の炉内温度に追従させて加熱させ、上記熱処理対象物を加熱することを特徴とする熱処理方法。
  2. 熱処理炉内で熱処理用治具に保持させた熱処理対象物をヒータで加熱する熱処理方法において、上記熱処理対象物を、該熱処理対象物よりも電気抵抗値の小さい熱処理用治具の間に挟んで保持させて、該熱処理対象物を挟んで保持している上記各熱処理用治具より、その間に挟持された上記熱処理対象物を経て通電させて該熱処理対象物を加熱することを特徴とする熱処理方法。
  3. 熱処理炉内で熱処理対象物を保持させるよう、少なくとも一対のコネクタ部と、該各コネクタ部の間に接続された各コネクタ部よりも電気抵抗値の大きい抵抗発熱部とからなる熱処理用治具を有し、且つ該抵抗発熱部は、ヒータ出力による上記熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させるように通電して抵抗発熱できるものであり、上記熱処理用治具の各コネクタ部に、熱処理炉側に設けてある電極材を側方位置から接触させて該各コネクタ部間に上記抵抗発熱部を経て通電させることができるようにした構成を有することを特徴とする熱処理用装置。
  4. 熱処理用治具を、所要のトレイ形状の一対向辺部に沿うよう離隔配置してそれぞれの外側位置から熱処理炉側に設けてある電極材を接触できるようにした一対のコネクタ部と、上記トレイ形状の面部となる該各コネクタ部の間の領域に上記各コネクタ部の長手方向所要間隔で平行配置したヒータ出力による加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部とを一体に接続してなる構成とした請求項3記載の熱処理用装置。
  5. 熱処理用治具のコネクタ部を発熱させるために該コネクタ部の外側面を粗面加工した請求項4記載の熱処理用装置。
  6. 熱処理用治具を、バスケット形状の外周部における対向する側面部に、少なくとも一対のコネクタ部を露出させて設けると共に、該各コネクタ部間に、上記バスケット形状の側壁部位置及び底板部位置に配置してある抵抗発熱部を一体に接続し、且つ該抵抗発熱部は、ヒータ出力による上記熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させるように通電して抵抗発熱できるものであり、上記対応する各コネクタ部間に、上記バスケット形状の側壁部位置と底板部位置に配置してある抵抗発熱部を経て通電可能な回路を形成できるようにした請求項3記載の熱処理用装置。
  7. 熱処理用治具のヒータ出力による加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部における熱処理対象物との接触面部に、酸化性セラミックの溶射皮膜を形成させるようにした請求項3、4、5又は6記載の熱処理用装置。
  8. 熱処理用治具のヒータ出力による加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部における熱処理対象物との接触面部に、絶縁性を備えた絶縁部材又は上記抵抗発熱部よりも電気抵抗値が大となる高抵抗部材を配置するようにした請求項3、4、5又は6記載の熱処理用装置。
  9. 目的とする熱処理対象物よりも電気抵抗値が小となる少なくとも1対のコネクタ部材と、対をなす上記各コネクタ部材同士を、熱処理対象物を挟持した状態にて着脱自在に連結する絶縁された連結機構とからなる熱処理用治具を有し、且つ上記熱処理対象物を熱処理炉内で熱処理するときに、上記熱処理対象物を挟持してなる上記対をなす各コネクタ部材に熱処理炉側に設けてある電極材を接触させて該各コネクタ部材間に上記熱処理対象物を経て通電させることができるようにした構成を有することを特徴とする熱処理用装置。
  10. コネクタ部と、ヒータ出力による熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部とからなる熱処理用治具の上記抵抗発熱部の素材として、グラファイト材、ニクロム材、タングステン材、モリブデン材、タンタル材のうちから選択される一つ又は複数の材質を用いるようにした請求項3、4、5、6、7又は8記載の熱処理用装置。
  11. コネクタ部と、ヒータ出力による熱処理用治具の加熱を不要にできるよう該熱処理用治具を熱処理炉のヒータによって加熱される炉内温度に追従させて抵抗発熱できるようにするための抵抗発熱部とからなる熱処理用治具、又は、目的とする熱処理対象物よりも電気抵抗値が小となる少なくとも1対のコネクタ部材と、対をなす上記各コネクタ部材同士を、熱処理対象物を挟持した状態にて着脱自在に連結する絶縁された連結機構とからなる熱処理用治具の材質を、C/Cコンポジット製とした請求項3、4、5、6、7、8又は9記載の熱処理用装置。
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