JP3956536B2 - ハイブリッド車の駆動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関とモータやモータ・ジェネレータなどの電力によって動作してトルクを出力する電動機とを動力源として備えたハイブリッド車における駆動力を制御する装置に関し、特に遊星歯車機構などからなるトルク合成分配機構によって内燃機関の出力トルクと電動機の出力トルクとを合成して出力することのできるハイブリッド車の駆動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上述した内燃機関および電動機を動力源としたハイブリッド車の形式として、内燃機関を発電機を駆動するためのみに使用するシリーズハイブリッド形式や内燃機関を発電と走行とのための動力源として使用するパラレルハイブリッド形式などが知られている。後者のパラレルハイブリッド形式の駆動装置の例として、内燃機関の出力トルクと電動機の出力トルクとを、トルク合成分配機構で合成して出力するように構成した例が特開平9−193676号公報に記載されている。
【0003】
この公報に記載されたハイブリッド駆動装置におけるトルク合成分配機構は、1組のシングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成され、そのサンギヤにモータ・ジェネレータの回転軸が連結され、またリングギヤに入力クラッチを介してエンジンの出力軸(クランクシャフト)が接続され、さらにキャリヤが変速機の入力軸に連結されている。そしてトルク合成分配機構の全体を一体回転させるための一体化クラッチがキャリヤとサンギヤとの間に設けられている。
【0004】
したがって上記従来の駆動装置では、入力クラッチを解放しかつ一体化クラッチを係合させることにより、モータ・ジェネレータのみをトルク合成分配機構を介して変速機に連結してモータ・ジェネレータによって走行することができ、また入力クラッチを係合させるとともに一体化クラッチを解放させた状態では、トルク合成分配機構を構成している遊星歯車機構が差動作用をおこなうので、エンジントルクにモータ・ジェネレータの出力トルクを付加して走行でき、またその際に発電をおこなうこともできる。さらに一体化クラッチおよび入力クラッチを共に係合させれば、エンジンで走行しかつ発電をおこなうことができる。
【0005】
このようにトルク合成分配機構を備えたハイブリッド車では、エンジンとモータ・ジェネレータとのトルクの出力の仕方あるいは伝達の仕方によって様々な走行形態(走行モード)を設定することができる。例えば、エンジンをアイドリング状態に維持し、かつモータ・ジェネレータをエンジンとは反対方向に回転させつつ発電をおこなうと、モータ・ジェネレータを連結してあるサンギヤに反力トルクが入力されるので、出力要素であるキャリヤに正方向のトルクが発生する。その結果、アイドリング状態であっても駆動トルクが生じ、これが、トルクコンバータを搭載している車両におけるクリープトルクと同様に作用し、車両をゆっくり走行させることができる。このようにエンジンを連結してあるリングギヤに対して、モータ・ジェネレータを連結してサンギヤが反力要素となっているので、エンジンを駆動している状態でサンギヤに対してモータ・ジェネレータにより更に大きいトルクを入力すれば、出力要素であるキャリアから、エンジントルクを遊星歯車機構のギヤ比に応じて増幅したトルクが出力される。すなわちエンジントルクをモータ・ジェネレータのトルクで補助した駆動状態となり、いわゆるアシストモードとなる。また反対に、エンジンを所定回転数で運転している状態でモータ・ジェネレータをエンジンの回転方向とは反対の方向に大きく回転させると、それに伴ってエンジン回転数が増大する。なおその場合、キャリアに現れる出力トルクは低下する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したトルク合成分配機構を備えたハイブリット車では、アクセルペダルを完全に戻してエンジンをアイドリング状態としていても、モータ・ジェネレータによってトルク合成分配機構に反力トルクを入力することにより、いわゆるクリープトルクを出力させることができ、クリープ走行が可能である。このクリープ走行状態から加速のためにアクセルペダルを大きく踏み込むと、その駆動力の増大要求に応じてエンジン回転数を増大させることになる。その場合、上記のトルク合成分配機構においては、モータ・ジェネレータがエンジンとは反対方向に回転することによりエンジンの回転数が増大するので、駆動力の増大要求に基づいた目標回転数となるようにエンジン回転数を増大させるために、一時的に、モータ・ジェネレータをエンジンとは反対方向に回転させることになる。
【0007】
スロットル開度を制御することによるエンジン回転数の制御応答性に対してモータ・ジェネレータの回転数の制御応答性の方が優れているので、クリープ走行中の駆動力の増大要求に基づいてモータ・ジェネレータを上記のように制御すれば、エンジン回転数を迅速に目標回転数にまで増大させることができる。しかしながら、エンジンの制御応答性が相対的に遅いために、モータ・ジェネレータの逆回転方向への制御およびそれに伴う反力トルクの低下により、駆動装置からの出力トルクが一時的に低下する。すなわちアクセルペダルを踏み込んだ直後にエンジン回転数が増大するものの、駆動トルクが一時的に低下し、これが原因で失速感(あるいは引き込み感)が生じるおそれがあった。
【0008】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、内燃機関と電動機とをトルク合成分配機構を介して互いに連結したハイブリット車においてクリープ走行中からの加速の際に駆動トルクの一時的な低下を防止してドライバビリティを良好にする制御装置を提供することを目的とをするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、アイドリング状態でのクリープ走行から駆動力の増大要求に応じて内燃機関の回転数を増大させる場合に、内燃機関の出力トルクの増大およびそれに伴う回転数の増大を待って、内燃機関の回転数を増大させるための電動機のトルク制御をおこなうように構成したことを特徴とするものである。より具体的には、請求項1の発明は、内燃機関と電動機とがこれら内燃機関の出力トルクと電動機の出力トルクとを所定の割合で合成して出力するトルク合成分配機構を介して互いに連結されるとともに、そのトルク合成分配機構が、内燃機関の回転方向とは反対方向に電動機の回転数を増大させるように前記電動機の出力トルクを増大させることにより内燃機関の回転数が増大するように構成され、加速要求に基づいて前記内燃機関の目標回転数を求めるとともに、その内燃機関の目標回転数に基づいて前記電動機の目標回転数を求め、電動機をその目標回転数となるように制御するハイブリッド車の駆動制御装置であって、駆動力の要求量が予め定めた基準値以下であることを検出するクリープ走行検出手段と、駆動力の要求量が前記基準値以下の状態であることが前記クリープ走行検出手段で検出されている状態で駆動力の要求量が増大させられた場合に前記内燃機関の回転数を増大させるべく前記電動機の出力トルクを制御するトルク指令値を、駆動力の要求量が前記基準値以下の状態での走行中における前記電動機のトルク指令値より下回らないように規制する電動機トルク規制手段とを備えていることを特徴とする駆動制御装置である。
【0010】
したがって請求項1の発明では、アクセルペダルを完全に戻すなどのアイドリング状態で電動機からトルク合成分配機構にトルクを入力して走行するクリープ走行が実行されていると、これがクリープ走行検出手段によって検出される。またそのクリープ走行状態でアクセルペダルが踏み込まれるなどのことによって加速要求が生じると、その加速要求すなわち駆動力の増大要求に応じた内燃機関の目標回転数が求められ、その目標回転数に基づいて電動機の目標回転数が求められて電動機がその目標回転数となるように制御される。その場合、電動機を目標回転数に制御することに伴ってそのトルク指令値が、クリープ走行時におけるトルク指令値よりも小さい場合、内燃機関の回転数を目標回転数とするための電動機のトルク指令値が、クリープ走行時のトルク指令値に規制される。そのため、クリープ走行中に加速要求が生じて内燃機関の回転数を増大させる場合に、その制御開始時に電動機の出力トルクが低下しないので、ハイブリッド車全体としての駆動トルクの低下が生じない。
【0011】
また、請求項2の発明は、内燃機関と電動機とがこれら内燃機関の出力トルクと電動機の出力トルクとを所定の割合で合成して出力するトルク合成分配機構を介して互いに連結されるとともに、そのトルク合成分配機構が、内燃機関の回転方向とは反対方向に電動機の回転数を増大させるように前記電動機の出力トルクを増大させることにより内燃機関の回転数が増大するように構成され、加速要求に基づいて前記内燃機関の目標回転数を求めるとともに、その内燃機関の目標回転数に基づいて前記電動機の目標回転数を求め、電動機をその目標回転数となるように制御するハイブリッド車の駆動制御装置において、駆動力の要求量が予め定めた基準値以下であることを検出するクリープ走行検出手段と、駆動力の要求量が前記基準値以下の状態であることが前記クリープ走行検出手段で検出されている状態で駆動力の要求量が増大させられた場合に前記内燃機関の目標回転数を制御する前記電動機の出力トルクの制御開始を前記電動機の回転数を目標回転数に制御してもその出力トルクが前記クリープ走行時のトルクより小さくならない時点まで遅延させる遅延手段とを備えていることを特徴とする駆動制御装置である。
【0012】
したがって請求項2の発明では、クリープ走行中に加速要求すなわち駆動力の増大要求が生じ、それに伴って内燃機関の回転数を増大させるべく電動機のトルク制御を開始する場合、遅延手段によってその電動機のトルク制御の開始が電動機の回転数を目標回転数に制御してもその出力トルクが前記クリープ走行時のトルクより小さくならない時点まで遅延させられる。すなわち、加速要求に基づく内燃機関の制御によりその出力トルクおよび回転数がある程度増大した状態で、内燃機関の回転数を増大させるための電動機のトルク制御が開始される。その結果、その時点での電動機のトルク指令値は、クリープ走行中におけるトルク指令値よりも大きくなり、そのため駆動トルクの低下が生じない。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明を図面を参照してより具体的に説明する。この発明は、電動機と内燃機関とを動力源としたハイブリッド車を対象とする駆動制御装置である。ここで、内燃機関は、要は、燃料を燃焼させて動力を出力する動力源であり、具体的には、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは水素ガスなどの気体燃料を使用するガスエンジンなどであり、またその形式は、レシプロエンジンに限らずタービンエンジンなどであってもよい。なお、以下の説明では、内燃機関を「エンジン」と記す。
【0014】
また、電動機は、要は、電力によって動作してトルクを出力する機能を有する動力源であればよく、固定磁石式同期モータや直流モータなど各種のモータを使用することができ、さらには外力によって駆動されて発電する機能を併せ持ったモータ・ジェネレータを使用することができる。さらに電動機と発電機とを併用することができる。なお、以下に説明する例は、電動機としてモータ・ジェネレータを使用した例である。
【0015】
この発明で対象とするハイブリッド車は、電動機の出力によって内燃機関を回転させ、その内燃機関の回転数が所定の回転数に達した際に燃料を供給することにより、内燃機関を始動する形式のハイブリッド車である。すなわち内燃機関と電動機とをトルク合成分配機構に連結し、電動機の出力トルクによって内燃機関を駆動し、またこれら電動機と内燃機関との出力トルクをトルク合成分配機構によって合成して出力し、さらには内燃機関の出力トルクをトルク合成分配機構によって電動機と変速機とに分配することが可能である。したがってこのトルク合成分配機構は、遊星歯車機構によって構成することができる。またトルク合成分配機構の出力側に連結された変速機構は、車速およびエンジン負荷などの走行状態に応じて変速比が制御される自動変速機を使用することができる。
【0016】
図3は、この発明によるハイブリッド車における駆動装置の全体的な構成を示しており、動力源としてエンジン1およびモータ・ジェネレータ2とを備えている。エンジン1は図示しないアクセルペダルの踏み込み量に応じてスロットル開度が増減する電子スロットルバルブ3を備えており、その電子スロットルバルブ3の開度を主に制御するための電子スロットル用電子制御装置(電子スロットルECU)4が設けられている。この電子制御装置4には、アクセルペダルの踏み込み量すなわちエンジン1に対する出力要求量(もしくはハイブリッド車に対する駆動力の要求量)を示すアクセル開度信号が入力されており、そのアクセル開度信号に基づいたスロットル開度信号を電子スロットルバルブ3に出力するように構成されている。なお、そのアクセル開度とスロットル開度との関係を決定する特性値は、車両の状態に応じて、あるいは運転者の手動操作によって変更されるように構成されている。またエンジン1を制御するためのエンジン用電子制御装置(エンジンECU)5が設けられている。
【0017】
モータ・ジェネレータ2は、コイルに通電することによってロータが回転してロータと一体の回転軸6に出力トルクが生じ、また回転軸6を介してロータを外力によって回転させることによってコイルに起電力が生じる公知の構成のものである。このモータ・ジェネレータ2には、インバータ7を介してバッテリ8が接続されている。またモータ・ジェネレータ2の回転を制御するために、インバータ7にはモータ・ジェネレータ用電子制御装置(M/G−ECU)9が接続されている。
【0018】
上記のエンジン1およびモータ・ジェネレータ2が、トルク合成分配機構10に連結されている。そのトルク合成分配機構10は、一組のシングルピニオン型遊星歯車機構11と二つのクラッチCi ,Cd とを主体として構成されている。その遊星歯車機構11の第1の回転要素であるサンギヤ12がモータ・ジェネレータ2の回転軸6に連結されている。またこのサンギヤ12とサンギヤ12に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ(第2の回転要素に相当する)13との間に配置したピニオンギヤを保持しているキャリヤ(第3の回転要素に相当する)14もしくはそのキャリヤ14に一体化させてある軸などの部材(図示せず)が出力部材となっている。
【0019】
そのリングギヤ13とエンジン1の出力軸1Aとの間にこれらを選択的に連結する入力クラッチCi が配置されている。また遊星歯車機構11におけるいずれか二つの回転要素(具体的にはサンギヤ12とキャリヤ14)を連結して遊星歯車機構11の全体を一体化する一体化クラッチCd が設けられている。なお、これらのクラッチCi ,Cd は、油圧によって係合させられる摩擦クラッチによって構成されている。
【0020】
上記のキャリヤ14がトルク合成分配機構10における出力部材に相当し、このキャリヤ14が変速機15に連結されている。この変速機15は変速比を電気的に制御可能な自動変速機であって、その制御のための変速機用電子制御装置(T/M−ECU)16が設けられている。この電子制御装置16には、ブレーキ信号やシフトレンジ信号などの車両の状態を示す信号が入力されている。
【0021】
そして前述した各電子制御装置4,5,9,16がハイブリッド用電子制御装置17にデータ通信可能に接続されている。このハイブリッド用電子制御装置17には、ブレーキ信号などの車両の状態を示す信号が入力され、さらに他の電子制御装置4,5,9,16との間で相互にデータを通信するように構成されている。
【0022】
図4は図3に示す駆動装置によって設定することのできる走行モードを示し、この図4において○印は係合状態、×印は解放状態をそれぞれ示す。ここで各走行モードについて簡単に説明すると、モータ走行モードは、モータ・ジェネレータ2の出力のみによって走行するモードであって、入力クラッチCi が解放もしくは半係合状態とされ、あるいは一時的に係合させられ、かつ一体化クラッチCd が係合させられる。したがって遊星歯車機構11の全体が一体化されるので、モータ・ジェネレータ2が変速機15に直結された状態になり、モータトルクが変速機15に入力される。
【0023】
エンジン走行モードは、エンジン1の出力によって走行し、また必要に応じて発電をおこなうモードである。この場合は、入力クラッチCi と一体化クラッチCd とを共に係合状態とすることにより、エンジン1をリングギヤ13に連結するとともに遊星歯車機構11の全体を一体化する。したがって、エンジン1の出力トルクが、一体化されている遊星歯車機構11に伝達され、かつここから変速機15に伝達される。一方、モータ・ジェネレータ2が一体化されている遊星歯車機構11に連結されているから、エンジン1によってモータ・ジェネレータ2を回転させて、発電をおこなうことができる。また、モータ・ジェネレータ2の出力するトルクを、遊星歯車機構11から変速機15に伝達することができるので、エンジン1の出力トルクとモータ・ジェネレータ2の出力トルクとを合成して出力することができる。
【0024】
つぎに、アシストモードについて説明する。前述したトルク合成分配機構10が遊星歯車機構11によって構成されているから、遊星歯車機構11が差動作用をおこなうことにより、出力トルクを多様に変更することができる。したがって、このアシストモードにおいては、遊星歯車機構11に差動作用をおこなわせるために、一体化クラッチCd が解放され、これに対して入力クラッチCi が係合させられて、エンジン1がリングギヤ13に連結される。この場合、変速機15に連結されているキャリヤ14が出力要素となり、またリングギヤ13が入力要素となり、さらにサンギヤ12が反力要素となる。
【0025】
その状態で、エンジン1の出力トルクをリングギヤ13に伝達し、かつモータ・ジェネレータ2と共にサンギヤ12を逆回転させれば、キャリヤ14が停止状態となり、あるいはリングギヤ13よりも低速で回転する。すなわち、キャリヤ14が停止している状態となるように、モータ・ジェネレータ2を逆回転させれば、停止状態を維持することができるとともに、モータ・ジェネレータ2およびこれに連結したサンギヤ12の逆回転方向への回転数を次第に減じれば、キャリヤ14がエンジン1と同方向に回転し、その回転数が次第に増大する。したがって、キャリヤ14に生じるトルクは、エンジン1の出力トルクにモータ・ジェネレータ2の反力トルクを加えたトルク、あるいは遊星歯車機構11におけるギヤ比に応じて増大させたトルクとなり、結果的には、エンジントルクをモータトルクによって増大させた状態となる。
【0026】
さらに、ニュートラルモードは、変速機15にトルクが入力されない状態であって、入力クラッチCi および一体化クラッチCd が共に解放状態とされる。したがって、遊星歯車機構11においては、リングギヤ13が空転してここからトルクが抜けてしまうために、エンジン1あるいはモータ・ジェネレータ2が回転したとしても、その出力トルクは変速機15に入力されない。すなわち、駆動トルクが発生しないニュートラル状態となる。
【0027】
上述したハイブリッド駆動装置では、アクセルペダルが踏み込まれるなどのことによって出力の増大要求があった場合、エンジントルクにモータ・ジェネレータ2のトルクを付加するアシストモードを経てエンジン1で走行するエンジン走行モードに移行する。そのアシストモードでのトルクおよび回転数の状態を前記遊星歯車機構11についての共線図によって図5に示してある。図5において符号ρは、遊星歯車機構11のギヤ比すなわちサンギヤ12の歯数とリングギヤ13の歯数との比である。
【0028】
前記入力クラッチCi を係合させてエンジン1をリングギヤ13に連結し、その状態でエンジン1およびモータ・ジェネレータ2を動作させキャリヤ14から変速機15にトルクを伝達している場合のエンジン回転数Ne 、モータ・ジェネレータ2の回転数Nm ならびに変速機15の入力回転数Ntin (すなわちトルク合成分配機構10の出力回転数)は、下記の式で表される。
Nm =((1+ρ)・Ntin −Ne )/ρ
【0029】
またこの状態でのトルクの関係は、エンジン1の出力トルク(すなわちリングギヤ13に入力されているトルク)Te に対してモータ・ジェネレータ2に(ρ×Te )の反力トルクを生じており、その結果、出力部材であるキャリヤ14には((1+ρ)×Te )のトルクが発生している。すなわちアシストモードでは、エンジントルクTe にモータ・ジェネレータ2による反力トルク(ρ×Te )を加えたトルクが出力され、出力増大要求(加速要求)に沿った駆動力が生じる。
【0030】
その場合、モータ・ジェネレータ2の回転数Nm を次第に増大させて最終的にはエンジン回転数Ne と一致させてエンジン走行モードに移行するが、その過程では、モータ・ジェネレータ2の回転数Nm が以下に述べるように制御される。図6はその制御ルーチンの一例を示しており、先ず、アシストモードが設定されているか否かが判断される(ステップ001)。アシストモード以外の走行モードが設定されていることによりステップ001で否定判断された場合には特に制御をおこなうこなくこのルーチンから抜ける。また反対にステップ001で肯定判断された場合には、エンジン回転数Ne 、変速機入力回転数Ntin 、モータ・ジェネレータ2の回転数Nm の三者の偏差が所定値以下か否かが判断される(ステップ002)。このステップ002の判断で採用されている所定値(すなわちしきい値)はゼロに近い小さい値であり、したがってステップ002では、モータ・ジェネレータ2の回転数Nm がエンジン回転数Ne に達しているか否かを判断することになる。
【0031】
各回転数の関係が例えば図5に示す状態にあれば、ステップ002で否定判断され、この場合は、アクセル開度Va と変速機入力回転数Ntin とに基づいてエンジン目標回転数Netを求める(ステップ003)。そのエンジン目標回転数Netは、一例として、アクセル開度Va と変速機入力回転数Ntin とをパラメータとしたマップに基づいて求められ、これらのパラメータが大きいほど、エンジン目標回転数Netが大きい値に設定される。また変速機入力回転数Ntin が大きくなるほど偏差が小さくなるように設定され、前記一体化クラッチCd を係合させる程度の回転数すなわち遊星歯車機構11の全体が一体となって回転する程度の回転数では偏差がほぼゼロとなるように設定されている。ここで、アクセル開度Va がこの発明における駆動力の要求量に相当する。
【0032】
エンジン回転数Ne とモータ・ジェネレータ2の回転数Nm と変速機入力回転数Ntin との三者の間には前述した式で表される関係があるから、前記式におけるエンジン回転数にエンジン目標回転数Netを代入することにより、モータ・ジェネレータ2の目標回転数Nmtが求められる(ステップ004)。すなわち
Nmt=((1+ρ)・Ntin −Net)/ρ
となる。
【0033】
また一方、アクセル開度Va とエンジン目標回転数Netとに基づいてエンジントルク要求値Te が求められる(ステップ005)。このエンジントルク要求値Te は、一例として、予め用意したマップに基づいて算出することができる。ついで、エンジン目標回転数Netとエンジントルク要求値Te とに基づいて電子スロットルバルブ3で設定する電子スロットル目標開度θthが求められる(ステップ006)。この電子スロットル目標開度θthは、一例として、予め用意したマップに基づいて算出することができる。
【0034】
このようにして求められた電子スロットル目標開度θthを電子スロットルバルブ用電子制御装置4に指令し(ステップ007)、またモータ・ジェネレータ2の回転数Nm が、ステップ004で求めた目標回転数Nmtとなるようにフィードバック制御によるモータ・ジェネレータ2のトルク目標値Tmtを決定する(ステップ008)。そしてそのトルク目標値Tmtをモータ・ジェネレータ用電子制御装置9に指令する(ステップ009)。
【0035】
したがって上記の図6に示す制御によれば、エンジン目標回転数Netに基づいてモータ・ジェネレータ2の目標回転数Nmtを設定し、かつその目標回転数となるようにモータ・ジェネレータ2を制御するから、アクセルペダルの踏み込み量などの駆動力の要求量が変化した場合には、それに伴うエンジン目標回転数の変化によってモータ・ジェネレータ2の目標回転数(あるいは制御量)が変化する。言い換えれば、駆動力の要求量がモータ・ジェネレータ2の回転数制御に反映される。その結果、駆動力の要求量が増大後に低下した場合には、エンジン目標回転数Netが低下するために、モータ・ジェネレータ2の目標回転数が高くなり、また反対に駆動力の要求量が増大の後に更に増大した場合には、エンジン目標回転数Netが増大するために、モータ・ジェネレータ2の目標回転数が低くなるので、変速機入力回転数Ntin を強制的に変化させるトルクは発生せずに、エンジントルクとモータ・ジェネレータ2のトルクとの和として現れる変速機15の入力トルクが、駆動力の要求量に追従して滑らかに変化し、駆動力の意図しない変動を防止して乗り心地を良好に維持することができる。
【0036】
モータ・ジェネレータ2の回転数Nm を上記のように制御して次第に増大させると、モータ・ジェネレータ2の回転数Nm および変速機入力回転数Ntin (すなわちキャリヤ14の回転数)がエンジン回転数Ne に次第に近づく。そしてこれらの各回転数Ne ,Nm ,Ntin の偏差が所定値以下になると、すなわちほぼ等しくなると、ステップ002で肯定判断され、その場合は前記一体化クラッチCd が完全係合しているか否かが判断される(ステップ010)。この判断は、一体化クラッチCd を係合させる制御信号の出力の状態やその係合圧を調圧するバルブ(図示せず)の制御量、あるいはその制御信号の出力からの経過時間などによって判断することができる。
【0037】
一体化クラッチCd が未だ完全に係合していないことによりステップ010で否定判断された場合には、一体化クラッチCd を係合させるための油圧処理を実施する(ステップ011)。これは、一例として、係合制御開始当初はパッククリアランスを詰めるために高い油圧を供給し、その後に比較的に低い油圧に維持し、ついで係合油圧を次第に高くする(スィープアップ)ことにより実施される。このステップ011での油圧処理を開始した後、ステップ003に進み、前述したモータ・ジェネレータ2の回転数の上昇制御を継続する。
【0038】
ステップ011での油圧処理を継続することにより、一体化クラッチCd の係合油圧が次第に上昇し、ついには一体化クラッチCd が完全に係合する。その場合にはステップ010で肯定判断され、ステップ012に進む。このステップ012では、一体化クラッチCd が完全に係合してからの時間が、予め定めた所定値を超えたか否かが判断される。一体化クラッチCd が完全に係合してからの経過時間が予め定めた所定時間を経過していないことによりステップ012で否定判断された場合には、モータ・ジェネレータ2の出力トルクTm を次第に低下させる(ステップ013)。すなわちスィープダウンさせる。この制御は、駆動力の低下が体感されない程度の勾配でモータ・ジェネレータ2の出力トルクを次第に低下させる制御である。
【0039】
このステップ013の制御と並行してアクセル開度Va とエンジン回転数Ne とに基づいてエンジントルク要求値Te が求められ(ステップ014)、またエンジン目標回転数Netとエンジントルク要求値Te とに基づいて電子スロットル目標開度θthが求められる(ステップ015)。これらのステップ014,015の制御は、前述したステップ005,006と同様な制御である。そしてステップ015の後、ステップ007に進んで、電子スロットルバルブ3およびモータ・ジェネレータ2を前述したと同様に制御する。
【0040】
このようにしてエンジン1の出力を増大させつつモータ・ジェネレータ2の出力トルクを次第に低下させ、その結果、一体化クラッチCd を完全に係合させた後の経過時間が所定時間を超えると、ステップ012で肯定判断される。これと同時にアシストモードからエンジン走行モードに切り換える(ステップ016)。具体的には、エンジン1をトルク合成分配機構10を介して変速機15に直結した状態で、エンジン1のみを駆動して走行する。
【0041】
前述したようにエンジン1がアイドリング状態にあるときに、モータ・ジェネレータ2の回転数あるいはトルクを制御することにより、変速機15の入力回転数すなわち前記キャリヤ14の回転数をゼロにし、エンジン1を駆動したまま車両を停止状態に維持することができ、またその状態でモータ・ジェネレータ2の出力トルクを増大させることにより、キャリヤ14のトルクを生じさせて変速機15の入力回転数を高くし、走行することができる。その際の変速機15の入力トルクは、エンジン1のアイドリング状態での出力トルクとモータ・ジェネレータ2によって与える反力トルクとに応じたものとなるので、モータ・ジェネレータ2の出力トルクを制御することにより、車両がゆっくり走行する程度の駆動トルクに設定することができる。すなわち流体式トルクコンバータを備えた車両で発生するいわゆるクリープトルク程度の駆動トルクとすることができる。
【0042】
このようなクリープトルクで走行しているいわゆるクリープ走行の状態では、アクセルペダルが完全に戻されていてエンジン1がアイドリング状態にある。この状態から加速のためにアクセルペダルを踏み込むと、すなわち駆動力の要求量を増大させると、電子スロットルバルブ3の開度を駆動力の要求量に応じて増大させるとともに、エンジン回転数を増大させる。図5に示す共線図から知られるように、サンギヤ12に連結してあるモータ・ジェネレータ2の回転数を低下させると、リングギヤ13に連結してあるエンジン1の回転数が増大する。したがって駆動力の増大要求に応じてエンジン回転数を増大させる場合、モータ・ジェネレータ2の回転数もしくはトルクを制御することになる。これは、エンジン1の駆動状態を最適燃費線に即して変化させる制御となる場合もある。
【0043】
この発明の駆動制御装置は、駆動力の増大要求に基づいくエンジン回転数を増大させるためのモータ・ジェネレータ2の制御を以下のように実施する。図1はその制御例を説明するためのフローチャートであって、これは、前述したステップ008の制御の内容となる。図1において、先ず、クリープ走行中か否かが判断される(ステップ021)。クリープ走行とは、前述したようにスロットル開度を全閉に近い所定値以下に設定してエンジン1をアイドリング状態程度に駆動し、かつモータ・ジェネレータ2によってサンギヤ12に反力トルクを与えて出力トルクを生じさせる走行状態である。
【0044】
クリープ走行をおこなっていることによりこのステップ021で肯定判断された場合、その時点のモータ・ジェネレータ2の出力トルクTm を記憶値Tmmとしてメモリーする(ステップ022)。また、フラグF0 をオンにする(ステップ023)。したがってこのフラグF0 はモータ・ジェネレータ2をクリープ走行のための出力トルクもしくはこれと同等のトルクに制御している状態を示すフラグである。
【0045】
つぎに前述した図6に示すステップ004で求めたモータ・ジェネレータ2の目標回転数Nmtとモータ・ジェネレータ2の実際の回転数Nm との偏差ΔNm (=Nmt−Nm )を演算する(ステップ024)。なお、アシストモードにおいてはモータ・ジェネレータ2の目標回転数を設定し、実際の回転数がその目標回転数となるように制御するので、前記のステップ021で否定判断された場合には、直ちにそのステップ024に進み、目標回転数と実回転数との偏差を演算する。
【0046】
こうして求めたモータ・ジェネレータ2の目標回転数Nmtと実回転数Nm との偏差ΔNm に基づいてPID(比例積分微分)フィードバック制御によりモータ・ジェネレータ2の出力トルクTmfを決定する(ステップ025)。ついでフラグF0 がオンか否かが判断される(ステップ026)。このフラグF0 がオンであれば、クリープ走行中であってその走行状態でのモータ・ジェネレータ2のトルクが記憶されていることになるから、ステップ026で肯定判断された場合には、その記憶されたトルク値Tmmよりステップ024で決定され出力トルクTmfが大きいか否かが判断される(ステップ027)。
【0047】
PIDフィードバック制御によって決定された出力トルクTmfが、クリープ走行時のモータ・ジェネレータ2の出力トルクとして記憶されたトルク値Tmmより大きい場合、すなわちステップ027で肯定判断された場合には、そのPIDフィードバック制御によって決定されたトルク値Tmfをモータ・ジェネレータ2の目標トルクTmtとする(ステップ028)。そしてフラグF0 をオフにセットする(ステップ029)。
【0048】
これに対してPIDフィードバック制御で決定されたモータ・ジェネレータ2の出力トルクかTmfがクリープ走行時のモータ・ジェネレータ2の出力トルクとして記憶されたトルク値Tmm以下の場合、すなわちステップ027で否定判断された場合には、記憶されているトルク値Tmmをモータ・ジェネレータ2の目標トルクTmtとする(ステップ030)。この場合、フラグF0 をオンのままにしてリターンする。
【0049】
なお、フラグF0 がオフであることによりステップ026で否定判断された場合には、ステップ027を飛ばしてステップ028に進む。すなわちモータ・ジェネレータ2の目標トルクとしてクリープ走行時のトルクより大きいトルクが設定されている場合には、PIDフィードバック制御で決定されたトルク値Tmfが目標トルクTmtとして採用される。
【0050】
したがって上記の制御では、クリープ走行状態でアクセルペダルが踏み込まれるなどの加速要求あるいは駆動力の増大要求があり、それに基づいてエンジン回転数の増大制御をおこなう場合、モータ・ジェネレータ2の目標トルクがクリープ走行時のトルクより低下するとすれば、その目標値を採用せずに、クリープ走行時のトルク値を目標トルクとして採用する。言い換えれば、クリープ走行中の駆動力の増大要求に基づいてエンジン回転数を増大させる場合、その制御のためにモータ・ジェネレータ2の出力トルクをクリープ走行時より低下させることが判断されても、これを実行せずにモータ・ジェネレータ2の出力トルをクリープ走行時のトルクに維持する。
【0051】
この制御をおこなった場合のタイムチャートを図2に示してある。クリープ走行中のt0 時点にアクセルペダルが踏み込まれて駆動力の増大要求(加速要求)があると、スロットル開度を増大させるなどのエンジン1の出力を増大させる制御が開始され、またエンジン回転数を増大するためのモータ・ジェネレータ2の目標回転数が求められる。駆動力の増大要求のあったt0 時点から不可避的な遅れ時間の経過したt1 時点にエンジントルクが増大し始めるが、モータ・ジェネレータ2を目標回転数に制御するためにその出力トルクを低下させることになる場合には、モータ・ジェネレータ2についての制御が実行されずにその出力トルクがクリープ走行時のトルクに維持される。
【0052】
そしてエンジントルクがある程度増大し、それに伴ってエンジン回転数がある程度増大し、その結果、モータ・ジェネレータ2の回転数を目標回転数に制御するためにその出力トルクを低下させない状態になったt2 時点にモータ・ジェネレータ2についての制御が開始される。言い換えれば、加速要求に伴ってエンジン回転数をモータ・ジェネレータ2によって増大させる制御が、t2 時点まで遅延させられる。
【0053】
したがって駆動トルクは図2に実線で示すように、クリープ走行時のトルクに維持され、その後エンジントルクの増大およびモータ・ジェネレータ2の出力トルクの増大に応じて増大し、最終的には駆動力の増大要求に応じたトルクに設定される。このようにクリープ走行からの加速の際に、モータ・ジェネレータ2の出力トルクを低下させることがないので、駆動トルクの一時的な低下やそれに起因する失速感(引き込み感)などが生じない。これに対して、モータ・ジェネレータ2の出力トルクを、エンジン回転数を増大させるための目標回転数とするべく制御した場合には、すなわち図1に示すステップ030の制御を実行しなかった場合には、図2に破線で示すように、エンジン回転数の増大が早期に開始するものの、モータ・ジェネレータ2の出力トルクが一時的に低下し、それに伴って駆動トルクが低下し、これが原因で失速感(引き込み感)が生じてドライバビリティが悪化する。
【0054】
なお、上述した図1に示す制御では、クリープ走行からの加速要求(駆動力の増大要求)に伴うモータ・ジェネレータ2の出力トルクの制御を、PIDフィードバック制御で求められる値が、クリープ走行時のトルク値を超えるまで禁止し、その間はクリープ走行時のトルク値に維持するように構成したので、図1に示すステップ030を実行する機能的手段が、請求項1の発明における電動機トルク規制手段に相当する。また、ステップ021を実行する機能的手段が、請求項1の発明におけるクリープ走行検出手段に相当する。
【0055】
しかしながら上記のステップ027およびステップ030の制御は、モータ・ジェネレータ2の回転数を目標回転数に制御してもその出力トルクがクリープ走行時のトルクより小さくならない時点までモータ・ジェネレータ2の制御を遅延させる制御と大きな差異はない。したがって演算して求めたトルク値がクリープ走行時の記憶したトルク値より大きくなったことを確認してモータ・ジェネレータ2の出力トルクの制御を実行することに替えて、エンジン回転数を増大させるためのモータ・ジェネレータ2のトルク制御の開始を一定時間遅延させるように構成することもできる。そのような遅延制御を実行する手段が、請求項2の発明における遅延手段に相当する。なおその場合、遅延時間はアクセル開度(スロットル開度)やエンジンの温度などの車両の条件に応じて変えてもよい。
【0056】
また、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、図3に示す駆動系統の構成や制御系統以外の構成を有する車両を対象とした駆動制御装置に適用することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、アクセルペダルを完全に戻すなどのアイドリング状態で電動機からトルク合成分配機構にトルクを入力して走行するクリープ走行が実行されていると、これがクリープ走行検出手段によって検出され、またそのクリープ走行状態でアクセルペダルが踏み込まれるなどのことによって加速要求が生じると、その加速要求すなわち駆動力の増大要求に応じた内燃機関の目標回転数が求められ、その目標回転数に基づいて電動機の目標回転数が求められて電動機がその目標回転数となるように制御される。その場合、電動機を目標回転数に制御することに伴ってそのトルク指令値が、クリープ走行時におけるトルク指令値よりも小さい場合、内燃機関の回転数を目標回転数とするための電動機のトルク指令値が、クリープ走行時のトルク指令値に規制されるため、クリープ走行中に加速要求が生じて内燃機関の回転数を増大させる場合に、その制御開始時に電動機の出力トルクが低下しないので、ハイブリッド車全体としての駆動トルクの一時的な低下やそれに起因する失速感あるいは引き込み感を防止してドライバビリティを向上させることができる。
【0058】
また、請求項2の発明によれば、クリープ走行中に加速要求すなわち駆動力の増大要求が生じ、それに伴って内燃機関の回転数を増大させるべく電動機のトルク制御を開始する場合、その開始が電動機の回転数を目標回転数に制御してもその出力トルクが前記クリープ走行時のトルクより小さくならない時点まで遅延させられるので、加速要求に基づく内燃機関の制御によりその出力トルクおよび回転数がある程度増大した状態で、内燃機関の回転数を増大させるための電動機のトルク制御が開始されることになり、その結果、その時点での電動機のトルク指令値は、クリープ走行中におけるトルク指令値よりも大きくなり、そのため駆動トルクの一時的な低下やそれに起因する失速感あるいは引き込み感を防止してドライバビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置で実行される駆動力増大要求時におけるモータ・ジェネレータの回転数制御の一例を示すフローチャートである。
【図2】 図1に示す制御を実行した場合のタイムチャートである。
【図3】 この発明で対象とするハイブリッド車の駆動装置の一例を模式的に示す図である。
【図4】 その駆動装置で設定可能な走行モードをまとめて示す図表である。
【図5】 図3に示す駆動装置におけるトル合成分配機構について共線図である。
【図6】 この発明の駆動制御装置によって実施されるアシストモードでのエンジンおよびモータ・ジェネレータの出力制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…モータ・ジェネレータ、 10…トルク合成分配機構、
15…変速機。
Claims (2)
- 内燃機関と電動機とがこれら内燃機関の出力トルクと電動機の出力トルクとを所定の割合で合成して出力するトルク合成分配機構を介して互いに連結されるとともに、そのトルク合成分配機構が、内燃機関の回転方向とは反対方向に電動機の回転数を増大させるように前記電動機の出力トルクを増大させることにより内燃機関の回転数が増大するように構成され、加速要求に基づいて前記内燃機関の目標回転数を求めるとともに、その内燃機関の目標回転数に基づいて前記電動機の目標回転数を求め、電動機をその目標回転数となるように制御するハイブリッド車の駆動制御装置において、
駆動力の要求量が予め定めた基準値以下であることを検出するクリープ走行検出手段と、
駆動力の要求量が前記基準値以下の状態であることが前記クリープ走行検出手段で検出されている状態で駆動力の要求量が増大させられた場合に前記内燃機関の回転数を増大させるべく前記電動機の出力トルクを制御するトルク指令値を、駆動力の要求量が前記基準値以下の状態での走行中における前記電動機のトルク指令値より下回らないように規制する電動機トルク規制手段と
を備えていることを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。 - 内燃機関と電動機とがこれら内燃機関の出力トルクと電動機の出力トルクとを所定の割合で合成して出力するトルク合成分配機構を介して互いに連結されるとともに、そのトルク合成分配機構が、内燃機関の回転方向とは反対方向に電動機の回転数を増大させるように前記電動機の出力トルクを増大させることにより内燃機関の回転数が増大するように構成され、加速要求に基づいて前記内燃機関の目標回転数を求めるとともに、その内燃機関の目標回転数に基づいて前記電動機の目標回転数を求め、電動機をその目標回転数となるように制御するハイブリッド車の駆動制御装置において、
駆動力の要求量が予め定めた基準値以下であることを検出するクリープ走行検出手段と、
駆動力の要求量が前記基準値以下の状態であることが前記クリープ走行検出手段で検出されている状態で駆動力の要求量が増大させられた場合に前記内燃機関の目標回転数を制御する前記電動機の出力トルクの制御開始を前記電動機の回転数を目標回転数に制御してもその出力トルクが前記クリープ走行時のトルクより小さくならない時点まで遅延させる遅延手段と
を備えていることを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
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