JP3855510B2 - ハイブリッド車の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の動力源を備えているハイブリッド車の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃費改善を目的として、所定条件に基づいて、エンジンを一時的に自動停止させる制御装置が提案されている。このような制御装置の一例が、特開平8−193531号公報、特開平9−310629号公報に記載されている。特開平8−193531号公報には、エンジンおよび発電電動機と、変速機とを有するハイブリッド車が記載されている。この公報においては、車両が停止し、かつ、エンジンが停止している状態において、アクセルペダルの踏み込みによりアクセル開度が変化した場合は、そのアクセル開度の変化率に応じて車輪に付与するべきトルクを演算するとともに、エンジン始動直後の出力トルクの急増を防ぐためにスロットル開度の指令値を決定した後、エンジンを始動する制御がおこなわれている。
【0003】
一方、特開平9−310629号公報に記載された制御装置は、トルクコンバータなどの流体クラッチ付き自動変速機を搭載した車両のエンジンを、一時的に停止・始動するシステムに関するものである。この公報においては、車両が停止し、かつエンジンが停止している状態において、乗降用ドアが閉じられるとともに、アクセルペダルが解放され、かつ、ブレーキペダルが踏み込まれた場合にエンジンが始動して自動変速機の油圧が立ち上がり、車両の発進が可能になるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特開平8−193531号公報に記載されているようなハイブリッド車が坂道で停止し、かつ、エンジンが停止している状態から登坂発進する場合は、アクセルペダルおよびフットブレーキペダルが踏み込まれて、加速要求および制動要求が同時に発生する場合がある。このような場合は、車両の後退を抑制しつつ登坂を容易にするため、比較的大きなトルクが要求されるものと考えられる。
【0005】
しかしながら、上記公報の制御装置においては、加速要求および制動要求が同時に発生する場合については何ら考慮がなされておらず、前記条件下では発進性が低下する可能性があった。
【0006】
また、特開平9−310629号公報においても、加速要求および制動要求の両方が発生した場合は考慮されておらず、また、エンジン以外の動力源の記載がないために、ハイブリッド車にはそのまま適用しにくく、結局、上記問題点を解決することはできなかった。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためのもので、エンジンおよび電動機を有するハイブリッド車において、車両の発進時に加速要求および制動要求の両方が発生した場合に、各要求に対応するトルクを得ることの可能なハイブリッド車の制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、車両の走行負荷に基づいて、エンジンおよび電動機の少なくとも一方を駆動してそのトルクを車輪に伝達する制御がおこなわれ、前記車両の走行負荷が軽負荷である場合は前記エンジンが停止されて前記電動機の単独駆動となるハイブリッド車の制御装置において、前記電動機とは別に前記エンジンを始動させるスタータモータが設けられており、前記車両が停止し、かつ、前記電動機および前記エンジンが停止しているとともに、前記エンジンおよび電動機の少なくとも一方のトルクを前記車輪に伝達することの可能な駆動ポジションが選択されている状態で、加速装置が運転者により操作され、かつ、制動装置が運転者により操作された場合に、前記スタータモータにより前記エンジンを始動するエンジン制御手段を備えていることを特徴とするものである。ここで、所定条件には、車両の走行負荷、すなわち、車速およびスロットル開度(もしくはアクセル開度)が含まれる。
【0009】
請求項1の発明によれば、車両が停止し、かつ、電動機およびエンジンが停止しているとともに、エンジンおよび電動機の少なくとも一方のトルクを車輪に伝達することの可能な駆動ポジションが選択されている状態で加速要求および制動要求が発生した場合は、スタータモータによりエンジンが始動される。例えば、車両が坂道に停止した状態から登坂発進する場合は、登坂するための加速要求と、降坂を抑制するための制動要求とが同時に発生するが、電動機よりも高トルクを出力することの可能な特性を有するエンジンが始動されることにより、二つの要求に対応するトルクが得られる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記エンジン制御手段には、前記エンジンを始動した後は前記加速装置の操作により加速要求が減少した場合にも前記エンジンを停止しない機能が含まれていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の作用が生じるほか、エンジンが一旦始動された後は、加速装置の操作により加速要求の増加と加速要求の減少とが交互に繰り返された場合には、エンジンの停止が禁止される。
また、請求項3の発明は、車両の走行負荷に基づいて、エンジンおよび電動機の少なくとも一方を駆動してそのトルクを車輪に伝達する制御がおこなわれ、前記車両の走行負荷が軽負荷である場合は前記エンジンが停止されて前記電動機の単独駆動となるハイブリッド車の制御装置において、前記電動機とは別に前記エンジンを始動させるスタータモータが設けられており、前記電動機が駆動されてそのトルクが前記車輪に伝達されて前記車両が停止し、かつ、前記エンジンが停止しているとともに、前記エンジンおよび電動機の少なくとも一方のトルクを前記車輪に伝達することの可能な駆動ポジションが選択されている状態で、加速装置が運転者により操作され、かつ、制動装置が運転者により操作された場合に、前記スタータモータにより前記エンジンを始動するエンジン制御手段を備えていることを特徴とするものである。この請求項3の発明によれば、電動機が駆動されてそのトルクが車輪に伝達されて車両が停止し、かつ、エンジンが停止しているとともに、エンジンおよび電動機の少なくとも一方のトルクを車輪に伝達することの可能な駆動ポジションが選択されている状態で、加速要求および制動要求が発生した場合は、スタータモータによりエンジンが始動される。例えば、車両が登坂路に停止した状態から発進する場合は、登坂するための加速要求と、降坂を抑制するための制動要求が同時に発生するが、電動機よりも高トルクを出力することの可能な特性を有するエンジンが始動される。
さらに、請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、前記エンジン制御手段には、前記エンジンを始動した後は前記加速装置の操作により加速要求が減少した場合にも前記エンジンを停止しない機能が含まれていることを特徴とするものである。この請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の作用が生じる他に、エンジンが一旦始動された後は、加速装置の操作により加速要求の増加と加速要求の減少とが交互に繰り返された場合は、エンジンの停止が禁止される。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図面を参照して具体的に説明する。図2は、この発明を適用したハイブリッド車の基本的な構成を示している。ここに示す例は、エンジン1の出力側にモータ・ジェネレータ(MG)2が配置され、モータ・ジェネレータ2の出力側にトルクコンバータ(T/C)5を介して自動変速機6が配置されている。エンジン1は、燃料の燃焼によって動力を出力する形式の装置であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのほかに、液化石油ガスや天然ガスなどのガス燃料を燃焼させるエンジンなどがその例である。
【0013】
図3は、エンジン1からトルクコンバータ5に至るパワートレーンの構成を示すブロック図であり、図4はエンジン1から自動変速機6に至るパワートレーンのスケルトン図である。エンジン1のクランクシャフト13にフライホイール3が連結されているとともに、このフライホイール3に制振機構(ダンパ)4が連結されている。また、エンジン1とモータ・ジェネレータ2との間には、係合・解放可能なクラッチ100が設けられている。
【0014】
モータ・ジェネレータ2は、エンジン1とは異なる種類の動力源であり、電気的エネルギを回転運動などの運動エネルギに変換して出力することのできる電動機としての機能と、運動エネルギを電気的エネルギに変換する発電機としての機能(回生機能)とを有する。前記モータ・ジェネレータ2として、例えば永久磁石型同期モータが使用され、その出力側部材であるロータの回転角度を検出するためのレゾルバ7がモータ・ジェネレータ2と並列に配列されている。そして、レゾルバ7のロータもモータ・ジェネレータ2のロータと同様に、ダンパ4とトルクコンバータ5とを連結している部材もしくはトルクコンバータ5の入力側の部材に連結されている。
【0015】
さらに、モータ・ジェネレータ2にはインバータ101を介してバッテリ102が接続され、モータ・ジェネレータ2およびインバータ101ならびにバッテリ102を制御するコントローラ103が設けられている。前記インバータ101は、バッテリ102の直流電流を3相交流電流に変換してモータ・ジェネレータ2に供給する一方、モータ・ジェネレータ2で発電された3相交流電流を直流電流に変換してバッテリ102に供給する3相ブリッジ回路を備えている。
【0016】
この3相ブリッジ回路は、例えば6個のパワートランジスタを電気的に接続して構成され、これらのパワートランジスタのオン・オフを切り換えることにより、モータ・ジェネレータ2とバッテリ102との間の電流の向きを切り換える。このようにして、3相交流電流と直流電流との相互の変換と、モータ・ジェネレータ2に印可される3相交流電流の周波数の調整と、モータ・ジェネレータ2に印可される3相交流電流の大きさの調整と、モータ・ジェネレータ2の回生制動トルクの大きさの調整とがおこなわれる。
【0017】
そして、モータ・ジェネレータ2を電動機として機能させる場合は、バッテリ102からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ・ジェネレータ2に供給する。また、モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させる場合は、回転子の回転により発生した誘導電圧をインバータ101により直流電圧に変換してバッテリ102に充電する。さらに、コントローラ103は、バッテリ102からモータ・ジェネレータ2に供給される電流値、またはモータ・ジェネレータ2により発電される電流値を検出または制御する機能を備えている。また、コントローラ103は、モータ・ジェネレータ2の回転数を制御する機能と、バッテリ102の充電状態(SOC:state of charge)を検出および制御する機能とを備えている。
【0018】
上記のモータ・ジェネレータ2は、エンジン1を始動させる機能と、車輪104に伝達する動力を出力する機能と、車輪104から入力される運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有する。このモータ・ジェネレータ2によりエンジン1を始動させる場合はクラッチ100が係合される。さらに、エンジン1を始動させるためのスタータモータ1Cが別途設けられている。
【0019】
一方、前記トルクコンバータ5は、フロントカバー33、ポンプインペラ35、タービンランナ48、ステータ35A、一方向クラッチ43、ロックアップクラッチ49などを有する公知の構造のものである。また、前記自動変速機6は変速機入力軸44を有し、その先端部にハブ46が取り付けられている。そして、このハブ46に対して、タービンランナ48とロックアップクラッチ49とが連結されている。また、自動変速機6は、後述する歯車変速機構55と油圧制御装置39とを備えており、歯車変速機構55から後方側に延びた出力軸32を介して車輪32Aにトルクを出力するようになっている。
【0020】
さらに、油圧制御装置39は、前記ロックアップクラッチ49の係合・解放の制御および変速制御ならびに摩擦係合装置の係合圧の制御をおこなうためのものであって、複数の電磁バルブや切り換えバルブならびに調圧バルブを備え、電磁バルブを電気的に制御することにより、上記の各制御を実行するように構成されている。なお、この油圧制御装置39としては、従来知られている自動変速機用の油圧制御装置を採用することができる。また、この実施形態においては、モータ・ジェネレータ2の他にモータ・ジェネレータ1Fが設けられており、このモータ・ジェネレータ1Fにより駆動される電動オイルポンプ1Dが設けられている。そして、電動オイルポンプ1Dにより発生した油圧を、油圧制御装置39の油圧回路に供給することが可能である。
【0021】
図4に示す自動変速機6は、後進段を含む複数の変速段、具体的には前進5段・後進1段の変速段を設定することが可能である。すなわち、自動変速機6は、トルクコンバータ5に続けて副変速部61と、主変速部62とを備えている。その副変速部61は、いわゆるオーバードライブ部であって1組のシングルピニオン型遊星歯車機構63によって構成され、キャリヤ64が前記変速機入力軸44に連結され、またこのキャリヤ64とサンギヤ65との間に一方向クラッチF0 と一体化クラッチC0 とが並列に配置されている。
【0022】
なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ65がキャリヤ64に対して相対的に正回転(変速機入力軸44の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ65の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部61の出力要素であるリングギヤ66が、主変速部62の入力要素である中間軸67に接続されている。
【0023】
したがって副変速部61は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構63の全体が一体となって回転するため、中間軸67が変速機入力軸44と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ65の回転を止めた状態では、リングギヤ66が変速機入力軸44に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0024】
他方、主変速部62は三組の遊星歯車機構70,80,90を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構70のサンギヤ71と第2遊星歯車機構80のサンギヤ81とが互いに一体的に連結され、また第1遊星歯車機構70のリングギヤ73と第2遊星歯車機構80のキャリヤ82と第3遊星歯車機構90のキャリヤ92との三者が連結され、かつそのキャリヤ92に前記出力軸32が連結されている。さらに第2遊星歯車機構80のリングギヤ83が第3遊星歯車機構90のサンギヤ91に連結されている。
【0025】
この主変速部62の歯車列では後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されている第2遊星歯車機構80のリングギヤ83および第3遊星歯車機構90のサンギヤ91と中間軸67との間に第1クラッチC1 が設けられ、また互いに連結された第1遊星歯車機構70のサンギヤ71および第2遊星歯車機構80のサンギヤ81と中間軸67との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0026】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構70および第2遊星歯車機構80のサンギヤ71,81の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ71,81(すなわち共通サンギヤ軸)とトランスミッションハウジング10との間には、第1一方向クラッチF1 と多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されており、その第1一方向クラッチF1 はサンギヤ71,81が逆回転(変速機入力軸44の回転方向とは反対方向の回転)しようとする際に係合するようになっている。
【0027】
多板ブレーキである第3ブレーキB3 は第1遊星歯車機構70のキャリヤ72とトランスミッションハウジング10との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構90のリングギヤ93の回転を止めるブレーキとして多板ブレーキである第4ブレーキB4 と第2一方向クラッチF2 とがトランスミッションハウジング10との間に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ93が逆回転しようとする際に係合するようになっている。
【0028】
上述した各変速部61,62の回転部材のうち副変速部61のクラッチC0 の回転数を検出するタービン回転数センサ68と、自動変速機6の出力軸32の回転数を検出する出力軸回転数(車速)センサ69とが設けられている。そして、出力軸32にはプロペラシャフト(図示せず)などの動力伝達装置が接続され、この動力伝達装置を介して動力が車輪32Aに伝達されるように構成されている。
【0029】
上記の自動変速機6では、各クラッチやブレーキを図5の作動図表に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図5において○印は係合状態、空欄は解放状態、◎印はエンジンブレーキ時の係合状態、△印は係合するものの動力伝達に関係しないことをそれぞれ示す。
【0030】
また自動変速機6は、シフトレバー4Cをマニュアル操作することにより、例えばP(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションを選択することが可能である。
【0031】
ここで、Dポジションは車速やアクセル開度などの車両の走行状態に基づいて前進第1速ないし第5速を設定するためのポジションであり、また4ポジションは、第1速ないし第4速、3ポジションは第1速ないし第3速、2ポジションは第1速および第2速、Lポジションは第1速をそれぞれ設定するためのポジションである。そして、摩擦係合装置の係合・解放状態の制御により、エンジン1またはモータ・ジェネレータ2のトルクの少なくとも一方を出力軸32に伝達することの不可能な非駆動ポジションには、Pポジション、Nポジションが含まれる。これに対して入力トルクを出力軸32に伝達することの可能な駆動ポジションには、Rポジション、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションが含まれる。
【0032】
上記のエンジン1、モータ・ジェネレータ2、自動変速機6、クラッチ100などの各装置は、車両の状態を示す各種の検出信号や、予め設定されているデータならびに制御パターンに基づいて制御される。例えば図6に示すように、マイクロコンピュータを主体とする総合制御装置(ECU)60に各種の信号を入力し、その入力された信号に基づく演算結果を制御信号として出力するようになっている。
【0033】
この入力信号としては、ABS(アンチロックブレーキシステム)コンピュータからの信号、車両安定化制御(VSC:商標)コンピュータからの信号、エンジン回転数NE の信号、エンジン水温の信号、イグニッションスイッチからの信号、バッテリ102のSOCを示す信号、アクセルペダル1Aの操作量を示すアクセル開度の信号、エンジン1の吸気管に配置されているスロットルバルブ1Bの開度を示すスロットル開度信号、デフォッガのオン・オフ信号、エアコンのオン・オフ信号、車速信号、自動変速機6の作動油温の信号が例示される。
【0034】
さらにこの入力信号としては、シフトレバー4Cの操作を示すシフトポジション信号、サイドブレーキのオン・オフ信号、フットブレーキペダル1Eまたはサイドブレーキ1Gのオン・オフ信号、触媒(排気浄化触媒)温度信号、カム角センサからの信号、スポーツシフト信号、車両加速度センサからの信号、モータ・ジェネレータ2の回生制動トルクを調整するための動力源ブレーキ力スイッチからの信号、タービン回転数NT センサ68からの信号、レゾルバ7の信号などが例示される。
【0035】
また、出力信号の例を挙げると、クラッチ100への制御信号、点火装置への制御信号、燃料噴射装置への制御信号、コントローラ103への信号、スタータモータ1Cへの信号、油圧制御装置39の自動変速機(AT)ソレノイドへの信号、油圧制御装置39のATライン圧コントロールソレノイドへの信号、ABSアクチュエータへの信号、モータ・ジェネレータ1Fを制御する信号、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の駆動・停止をそれぞれ別個に表示する動力源インジケータへの信号、スポートモードインジケータへの信号、VSCアクチュエータへの信号、油圧制御装置39のATロックアップコントロールバルブへの信号などである。
【0036】
上記ハード構成を有するハイブリッド車においては、スロットル開度(もしくはアクセル開度)、シフトポジション、車速、フットブレーキペダル1Eのオン・オフなどの信号が総合制御装置60に入力されると、これらの信号に基づいて駆動力要求が演算され、その演算結果に基づいて車両の駆動力が制御される。図7には、スロットル開度および車速をパラメータとして、エンジン1の駆動領域と、モータ・ジェネレータ2の駆動領域とを設定したマップの一例が示されている。つまり、発進時のように比較的軽負荷領域では、モータ・ジェネレータ2の単独駆動になるように設定され、エンジン効率の良好な領域においては、エンジン1の単独駆動になるように設定されている。
【0037】
また、エンジン1の単独駆動中において、駆動力要求に対応するトルクの一部をモータ・ジェネレータ2の動力によりアシストすることも可能である。さらに、モータ・ジェネレータ2に電力を供給するバッテリ102のSOCが所定値以下になった場合は、図7に示すマップに関わりなく、エンジン1を駆動させるモードが選択される。
【0038】
さらに、総合制御装置60には、自動変速機6の変速段を制御するための変速線図(マップ)が記憶されている。この変速線図は、車速およびスロットル開度をパラメータとして設定されている。また、総合制御装置60にはロックアップクラッチ49の係合・解放を制御するためのロックアップクラッチ制御マップが記憶されている。このロックアップクラッチ制御マップは、車速およびスロットル開度をパラメータとして設定されている。ここで、実施形態の構成とこの発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、モータ・ジェネレータ2がこの発明の電動機に相当し、アクセルペダル1Aがこの発明の加速装置に相当し、フットブレーキペダル1Eまたはサイドブレーキ1Gがこの発明の制動装置に相当する。
【0039】
図1は、上記ハード構成を有するハイブリッド車の制御例を説明するためのフローチャートである。先ず、データの読み込みなどの入力信号の処理(ステップ201)をおこない、ついで、イグニッションスイッチの動作によらずにエンジン1が停止中であるか否かが判断される(ステップ202)。ここで、エンジン停止中の具体的な例としては、モータ・ジェネレータ2が駆動され、かつ、エンジンが停止している場合と、モータ・ジェネレータ2およびエンジン1が停止している場合とが挙げられる。
【0040】
ステップ202で否定判断された場合はリターンされ、ステップ202で肯定判断された場合は、シフトレバー4Cにより非駆動ポジション、つまり、NポジションまたはPポジションが選択されているか否かが判断される(ステップ203)。例えばDポジションが選択されていてステップ203で否定判断された場合は、車速≒零、つまり、車両停止中であるか否かが判断される(ステップ204)。ステップ204で肯定判断された場合は、制動要求が発生しているか否かが判断される(ステップ205)。フットブレーキペダル1Eまたはサイドブレーキ1Gがオンされている場合はステップ205で肯定判断され、加速要求が発生しているか否かが判断される(ステップ206)。
【0041】
アクセルペダル1Aがオンされている場合はステップ206で肯定判断され、図7に示すマップに関わりなく、スタータモータ1Cによりエンジン1を強制的に始動する(ステップ207)。このようにしてエンジン1が始動されると、その後は、所定条件が成立するまでは、アクセルペダル1Aの操作によるエンジン1の停止を禁止し(ステップ208)。リターンされる。
【0042】
すなわち、ステップ205,〜207の制御によりエンジン1が始動された後には、車両が停止したままの状態で、運転者の好みや道路状況により、アクセルペダル1Aのオン・オフが交互に繰り返される場合もある。このような場合に、アクセルペダル1Aのオン・オフ切り換えに対応して、その都度エンジン1の停止・駆動が繰り返されたとすれば、運転者に違和感を与える可能性がある。そこで、ステップ205,206を経由して一旦エンジンが始動された場合は、運転者による発進意図の継続を優先し、エンジン1の停止を禁止することにより、前述した違和感を回避することができる。
【0043】
なお、ステップ208の制御がおこなわれた後に、所定条件が成立した場合は、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の駆動・停止制御が、図7に示すマップに基づく内容に復帰する。この所定条件には、エンジン1が始動されて車両が発進し、車速が、予め総合制御装置60に設定されている所定車速以上になった場合、またはシフトレバー4Cの操作によりシフトポジションが切り換えられた場合が含まれる。
【0044】
一方、前記ステップ205で否定判断された場合、またはステップ206で否定判断された場合は、図7に示すマップによりエンジン1およびモータ・ジェネレータ2の駆動・停止を制御し(ステップ209)、リターンされる。また、ステップ203で否定判断された場合、またはステップ204で否定判断された場合も、図7に示すマップによりエンジン1およびモータ・ジェネレータ2の駆動・停止を制御し(ステップ210)、リターンされる。ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、ステップ202,〜208がこの発明のエンジン制御手段に相当する。
【0045】
図8は、図1のフローチャートに対応するタイムチャートの一例である。まず、アクセルペダル1Aがオフされ、かつ、フットブレーキペダル1Eがオンされている状態においては、エンジン始動指令がオフされ、かつ、エンジン回転数が零に制御されている。一方、モータ・ジェネレータ2が駆動され、正のトルクがほぼ一定に制御されている。
【0046】
そして、時刻t1において、フットブレーキペダル1Eがオンされたままの状態で、アクセルペダル1Aが踏み込まれることにより、モータ・ジェネレータ2の駆動を停止し、かつ、エンジン1を始動させる判断が成立している。ついで、時刻t2でエンジン1の始動指令がオンされてエンジン回転数が徐々に増加するとともに、モータ・ジェネレータ2のトルクが徐々に低下される。その後、時刻t3でモータ・ジェネレータ2のトルクが零に制御され、かつ、時刻t3以降はエンジン回転数がほぼ一定に制御されている。
【0047】
以上のように、図1および図8の制御例によれば、車両が停止し、かつ、エンジン1が停止している状態で、アクセルペダル1Aが踏み込まれ、かつ、フットブレーキペダル1Eが踏み込まれた場合は、エンジン1が始動される。例えば、車両が坂道に停止した状態から登坂発進する場合は、登坂するための加速要求と、降坂を抑制するための制動要求が同時に発生するが、モータ・ジェネレータ2よりも高トルクを出力することの可能な特性を有するエンジン1が始動されることにより、降坂を抑制し、かつ、登坂に必要なトルクを得られ、車両の発進性が向上する。また、モータ・ジェネレータ2に電力を供給するバッテリ102の充電量SOCが所定値よりも低く、モータ・ジェネレータ2により十分なトルクを出力することが困難な条件下においても、発進性を向上させることができる。
【0048】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明によれば、車両が停止し、かつ、電動機およびエンジンが停止しているとともに、エンジンおよび電動機の少なくとも一方のトルクを車輪に伝達することの可能な駆動ポジションが選択されている状態で、加速要求および制動要求が発生した場合は、スタータモータによりエンジンが始動される。例えば、車両が登坂路に停止した状態から発進する場合は、登坂するための加速要求と、降坂を抑制するための制動要求が同時に発生するが、電動機よりも高トルクを出力することの可能な特性を有するエンジンが始動されることにより、降坂を抑制し、かつ、登坂に必要なトルクを得られ、車両の発進性が向上する。
【0049】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られる他、エンジンが始動された後に、運転者の好みや道路状況により、加速装置の操作による加速要求の増大と加速要求の減少とが交互に繰り返された場合に、エンジンの停止を禁止することにより、エンジンの停止・復帰の頻繁な繰り返しが抑制され、違和感を回避することができる。また、請求項3の発明によれば、電動機が駆動されてそのトルクが車輪に伝達されて車両が停止し、かつ、エンジンが停止しているとともに、エンジンおよび電動機の少なくとも一方のトルクを車輪に伝達することの可能な駆動ポジションが選択されている状態で、加速要求および制動要求が発生した場合は、スタータモータによりエンジンが始動される。例えば、車両が登坂路に停止した状態から発進する場合は、登坂するための加速要求と、降坂を抑制するための制動要求が同時に発生するが、電動機よりも高トルクを出力することの可能な特性を有するエンジンが始動されることにより、降坂を抑制し、かつ、登坂に必要なトルクを得られ、車両の発進性が向上する。さらに、請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる他に、エンジンが始動された後に、運転者の好みや道路状況により、加速装置の操作による加速要求の増大と加速要求の減少とが交互に繰り返された場合に、エンジンの停止を禁止することにより、エンジンの停止・復帰の頻繁な繰り返しが抑制され、違和感を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一制御例を示すフローチャートである。
【図2】 この発明を適用したハイブリッド車の構成を原理的に示すブロック図である。
【図3】 図2に示すエンジンからトルクコンバータに至るパワートレーンの構成を示すブロック図である。
【図4】 この発明の一例における自動変速機のギヤトレーンを示すスケルトン図である。
【図5】 図4の自動変速機の各変速段を設定するためのクラッチおよびブレーキの係合・解放を示す図表である。
【図6】 この発明の一例における総合制御装置における入出力信号を示す図である。
【図7】 図2のハイブリッド車において、エンジンおよびモータ・ジェネレータの駆動・停止領域の一例を示すマップである。
【図8】 図1のフローチャートに対応するタイムチャートの一例である。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…モータ・ジェネレータ、 1A…アクセルペダル、 1E…フットブレーキペダル、 1G…サイドブレーキ、 60…総合制御装置。
Claims (4)
- 車両の走行負荷に基づいて、エンジンおよび電動機の少なくとも一方を駆動してそのトルクを車輪に伝達する制御がおこなわれ、前記車両の走行負荷が軽負荷である場合は前記エンジンが停止されて前記電動機の単独駆動となるハイブリッド車の制御装置において、
前記電動機とは別に前記エンジンを始動させるスタータモータが設けられており、前記車両が停止し、かつ、前記電動機および前記エンジンが停止しているとともに、前記エンジンおよび電動機の少なくとも一方のトルクを前記車輪に伝達することの可能な駆動ポジションが選択されている状態で、加速装置が運転者により操作され、かつ、制動装置が運転者により操作された場合に、前記スタータモータにより前記エンジンを始動するエンジン制御手段を備えていることを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 前記エンジン制御手段には、前記エンジンを始動した後は前記加速装置の操作により加速要求が減少した場合にも前記エンジンを停止しない機能が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置。
- 車両の走行負荷に基づいて、エンジンおよび電動機の少なくとも一方を駆動してそのトルクを車輪に伝達する制御がおこなわれ、前記車両の走行負荷が軽負荷である場合は前記エンジンが停止されて前記電動機の単独駆動となるハイブリッド車の制御装置において、
前記電動機とは別に前記エンジンを始動させるスタータモータが設けられており、前記電動機が駆動されてそのトルクが前記車輪に伝達されて前記車両が停止し、かつ、前記エンジンが停止しているとともに、前記エンジンおよび電動機の少なくとも一方のトルクを前記車輪に伝達することの可能な駆動ポジションが選択されている状態で、加速装置が運転者により操作され、かつ、制動装置が運転者により操作された場合に、前記スタータモータにより前記エンジンを始動するエンジン制御手段を備えていることを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 前記エンジン制御手段には、前記エンジンを始動した後は前記加速装置の操作により加速要求が減少した場合にも前記エンジンを停止しない機能が含まれていることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車の制御装置。
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