JP3956172B2 - データキャリア及びデータキャリア用アンテナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、親機との間で無線で信号の授受を行うデータキャリア及びこのデータキャリアに用いられるデータキャリア用アンテナに関連する。
【0002】
【従来の技術】
ICチップをクレジットカード大のプラスチック製カードに埋め込んだデータキャリア(子機)と、このデータキャリアに無線でアクセスしてデータのやり取りをする親機からなるデータキャリアシステムが普及しつつある。このようなシステムは、非接触型IDカードとして鉄道の定期券などでの利用が意図されているほか、物流分野において輸送すべき個々の貨物を的確に識別したり、また、各種メーカーが製品在庫を管理する場合などにも利用される。
【0003】
たとえば、製品の在庫管理に利用する場合であれば、識別したい個々の製品に、その製品に関する情報を書き込んだデータキャリアを貼り付けて倉庫の所定の棚などに格納する。各棚には親機が設置されており、製品が格納されると、親機は製品に貼り付けられたデータキャリアにアクセスしてその情報を読み取り、その情報をネットワークを介して中央のコンピュータなどに送る。中央のコンピュータにはデータベースが構築され、そこで一括して各製品の在庫管理が行われる。このようなシステムが導入されると、必要な製品の有無、格納場所、製造年月日を直ちに知ることができる、希望する製品を直ちに入手できる、不要な在庫を抑えることができる、製品の紛失が有効に防止できる、在庫管理に要する人員を削減できるなど、種々の利点が得られる。
【0004】
データキャリアと親機との間では信号の授受を無線で行うので、データキャリアには、電磁波の送信及び受信を行うためのアンテナが必要となる。このようなデータキャリア用のアンテナの一例が、特開平10−75113号公報(発明の名称「トランスポンダ用アンテナ及びトランスポンダ」)において開示されている。
【0005】
前記公開公報において開示されているデータキャリア用のアンテナは、金属薄板を積層した磁芯に導線を巻いた板状アンテナコイル二つと、渦巻き状に導線を巻いた空芯アンテナコイル一つの合計三つのアンテナコイルから構成されている。二つの板状アンテナコイルは、たとえば各アンテナコイルの軸方向がそれぞれx軸方向、y軸方向となるよう相互に直交して配置され、空芯アンテナコイルは、そのコイルの軸方向がz軸方向となるように配置されている。このような配置で各アンテナコイルが設けられていると、空芯コイルはデータキャリアの面と垂直な方向の磁界によってデータの送受信を行い、二つの板状アンテナコイルはデータキャリアの面と平行な方向の磁界によってデータの送受信を行う。このように、二つの板状アンテナコイルを設けることによって、例えば定期券などとして利用されているデータキャリアの板面に硬貨やアルミ箔などが平行に重なったとしても、データの送受信への影響は生じにくくなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記公開公報において開示されているデータキャリア用のアンテナは、x軸、y軸、z軸の三軸いずれの磁界によってもデータの送受信ができるように、三つのアンテナコイルを設ける必要がある。しかしながら、製造工程を少なく抑え、量産効果によって個々のデータキャリアの価格を引き下げてデータキャリアシステムの幅広い普及を図ろうとしている現状では、アンテナコイルを三つ必要とすることは、コスト的に不利となる。
【0007】
また、上記公開公報において開示されている二つの板状アンテナコイルは、積層されているとはいえ非常に薄い金属薄板に導線を巻くことが必要となるため、製造作業が困難となる。
本発明は、上記事情に基づいてなされたものであり、実用上必要とされる最低限の性能を維持しながらアンテナコイル数をより少なくすることができ、しかもそのアンテナコイルを容易に製造できるデータキャリア用アンテナ及びこれを用いたデータキャリアを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明に係るデータキャリア用アンテナは、平面状に巻回された空芯コイルと、前記空芯コイルの平面とほぼ平行となるように前記空芯コイルに挿入された単一の板状の磁芯とを具備することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明に係るデータキャリア用アンテナは、平面状に巻回された空芯コイルと、それぞれの軸が互いに所定の角度となるように前記空芯コイルに前記空芯コイルの平面とほぼ平行となるよう挿入された複数の板状の磁芯とを具備することを特徴とする。
請求項3記載の発明に係るデータキャリア用アンテナは、第一の基板に形成された第一の導線パターンと、第二の基板に形成された第二の導線パターンと、前記第一及び第二の基板の前記導線パターンが形成された面とは反対の面に接するようにして両基板の間に挟まれた板状の磁芯と、前記第一及び第二の基板に設けられたスルーホールを介して、前記第一及び第二の導線パターンの対応する電極同士を電気的に接続することによって前記磁芯を内部に含むコイルを形成する接続部と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明に係るデータキャリア用アンテナは、第一の基板に形成された第一の導線パターンと、第二の基板に形成された第二の導線パターンと、前記第一及び第二の基板の前記導線パターンが形成された面に接するようにして両基板の間に挟まれた板状の磁芯と、前記第一及び第二の導線パターンの対応する電極同士を電気的に接続することによって前記磁芯を内部に含むコイルを形成する接続部と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明に、請求項1,2,3又は4記載の発明において、前記磁芯はアモルファス金属製であることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1,2,3又は4記載の発明において、前記磁芯は一方向性珪素鋼製であり、前記磁芯のゴス方位が前記空芯コイルの軸芯方向を向くように配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明に係るデータキャリアは、請求項1,2,3,4,5又は6記載のデータキャリア用アンテナを内部に含むことを特徴とする。
請求項8記載の発明に係るデータキャリア用アンテナの製造方法は、平面状に巻回された空芯コイルに板状磁芯を挿入し、前記空芯コイルおよび前記板状磁芯を板状保持部材で挟持することを特徴とする。
【0013】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記板状保持部材は、ラミネート用プラスチックフィルムからなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明の第一実施形態について説明する。図1は、第一実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図、図2は、図1に示したデータキャリア用アンテナを長手方向に切った断面図である。
【0015】
図1において、コイル10は、電気抵抗の小さい銅などからなる導線を所定回数巻いて得られる空芯コイルである。このようなコイルは数多く市販されており、設計上の要求に応じて適当なものを選択することができる。磁芯11は、アモルファスシート11aを所定の寸法に裁断し、その回りに絶縁シート11bを巻回して得られる。RFIDモジュール12は、メモリ、送受信回路、その他の必要な電気回路がIC上に集積された1チップモジュールであり、電極12a,12bにおいてコイル10の両端と接続されている。なお、絶縁シート11bは本発明に必須のものではないが、これをアモルファスシート11aの周囲に巻いておけば、アモルファスシートの端部の鋭いエッジによってコイル11の導線の絶縁被覆が剥がされるのを防ぐことができ、導線同士の短絡、あるいは導線とアモルファスシートとの短絡を確実に防止できる。アモルファスシート11aとしては、例えば、前記公開公報に記載されているCo−Fe−Ni−B−Si系アモルファス磁性材料などを用いることができる。
【0016】
コイル10は、図1に示すように、その内径が磁芯11の幅よりも大きいものを選ぶことにより、磁芯11のコイル10への挿入が容易になる。したがって、簡単にデータキャリア用アンテナを製造することができる。前記公開公報に開示されているデータキャリア用のアンテナは、金属薄板を積層した磁芯に導線を巻いたものであるが、金属の薄い板に導線を巻回する作業は熟練を要し、また時間もかかり、このことがデータキャリアのコストを押し上げる。これに対し、本実施形態の場合、かかる作業が不要なため、作業性が向上し、コストも低く抑えることができる。
【0017】
磁芯11をコイル10に挿入すると、コイル10と磁芯11の厚みにより、図2に示すようにコイル面と磁芯の面とは平行にならない。この状態で、RFIDモジュール12をも含めて、全体を保護用プラスチックフィルムでラミネート加工する。こうしてデータキャリアが形成される。このラミネート加工の際、主としてコイル10と磁芯11が接する部分に加圧しながら加熱し、磁芯11を撓ませ、最終的にこの形状を固定させる。その結果、図3に示すように部分的に多少の凹凸があるものの、全体としては平面的な形状に整えられ、これによりアンテナを内部に備えたカード状のデータキャリア13が得られる。なお、図3では、保護用プラスチックフィルムを省略してある。
【0018】
コイル10と磁芯11が、図3に示すように配置されていると、アモルファスシート11aの長手方向が同図のx軸と一致するので、x軸方向の磁界はアモルファスシート11aに導かれ、コイル10を貫く。また、アモルファスシート11aは、z軸方向(図3の紙面に垂直な方向)においてある程度の厚みを有するため、コイル10の内側だけを考えると、磁界を導く磁芯が存在すると考えられる。したがって、コイル10の内側の磁芯部分においては、z軸方向の磁界もコイル10を貫いている。また、図1に示すように、コイル10は環状であるため、コイル10の内側の部分と磁芯11との間にはある程度の隙間があり、この部分においてもz軸方向の磁界がコイル10を貫く。以上より、x軸方向の磁界とz軸方向の磁界がコイル10を貫くことになり、これらの方向の成分を有する磁界によって、親機との間で信号の授受を行うことが可能となる。データキャリアは親機に対して様々な方向を向いている可能性があるが、このように、一つのコイルからなるデータキャリア用アンテナで、複数の方向の磁界に対応できるので、データキャリアからみると、親機と通信できる角度範囲が広がる。
【0019】
また、本実施形態のデータキャリア用アンテナは、磁芯の軸方向がデータキャリアの面と平行であるため、次のような利点がある。従来から最も一般的に用いられているアンテナが空芯コイルだけからなるデータキャリアの場合、図4に示すように、データキャリアを貼り付ける被検査物14が金属ケース15で覆われている場合や、少なくともデータキャリアを貼り付ける面が金属で覆われているような場合は、親機のアンテナコイル16から出る磁束がこの金属ケース15に捕捉されてデータキャリア内のコイルに十分に届かず、親機とデータキャリアとの間で通信できなくなる場合があった。これに対し本実施形態のデータキャリア13の場合は、図4に示すように、磁芯11が、貼り付け面と平行な面(データキャリアの面)内において一つの方向に強い磁気特性を持つため、親機のアンテナコイル16から出る磁束が金属ケース15に平行に磁芯11に入射し、データキャリア13のコイル10に十分な交番磁界を発生させることができる。したがって、金属製の電柱、マンホールの蓋、金属ケース、金属製のドア等の金属で覆われた部分に貼り付けても十分な情報伝達距離を持ったデータキャリアを提供することができる。
【0020】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。図5は、第二実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。同図において、図1に示したものと同一の部分については同一符号を付してある。本実施形態のデータキャリア用アンテナは、コイル20を正方形もしくは長方形にした点が、第一実施形態と異なる。本実施形態の場合も、x軸方向及びこれと垂直なz軸方向(図5の紙面に垂直な方向)の成分を有する磁界によって親機との間で信号の授受を行うことが可能である点は、第一実施形態と同様である。
【0021】
更に、本実施形態では、コイル20の形状を四角形としたことによって、次のような効果が得られる。第一実施形態では、コイルは環状であり、これに長方形の磁芯11を挿入したとき、ラミネート加工を行う前の段階ではコイルの内径と磁芯11はいくつかの「点」で接する。これに対し、本実施形態では、コイル20に長方形の磁芯11を挿入した後ラミネート加工を行う前の段階で、コイル20は、その内径を構成する二つの辺がその「直線」で磁芯11と接する。このため、第一実施形態の場合に比べ、アモルファスシート11aの端部のエッジによってコイル20の導線の絶縁被覆が剥がれる危険性はより低くなる。
【0022】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。図6は、第三実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。同図において、図1に示したものと同一の部分については同一符号を付してある。本実施形態では、一つのコイル10に二つの磁芯30,31を直交するように挿入する。各磁芯そのものもは、第一実施形態及び第二実施形態で用いた磁芯11と同じである。
【0023】
図6に示すように、二つの磁芯30,31を挿入すると、x軸方向の磁界、y軸方向の磁界、z軸方向(図6の紙面に垂直な方向)の磁界がコイル10を貫くことになるので、これらの方向の成分を有する磁界によって、親機との間で信号の授受を行うことが可能となる。第一実施形態(図1乃至図3)及び第二実施形態(図5)では、データキャリア面内の磁界については、x軸方向の成分を有する磁界のみがコイルを貫くことができたが、本実施形態では、x軸方向の磁界だけでなくy軸方向の成分を有する磁界もコイル10を貫くことができる。
【0024】
更に、本実施形態の場合、図6に矢印jで示した方向、すなわち図6の左右方向に生じる磁界についても、その多くがコイル10を貫くことができる。例えば、磁界が左から右に向かう磁界を考えると、その磁界のx軸方向の成分は磁芯30に沿って左上から右下に導かれ、また、その磁界のy軸方向の成分は磁芯31に沿って左下から右上に導かれる。これらの磁界はいずれも、コイル10を裏側から表側に向かって貫き、両者の成分は重ね合わされて強め合う。また、磁界が右から左に向かっているときは、同様に両者ともコイル10を表側から裏側に向かって貫くので、両成分の磁界は重ね合わされる。したがって、j方向の磁界によっても、高い強度で親機との間で信号の授受を行うことが可能となる。
【0025】
このように、多くの方向の磁界に基づいて親機と通信できると、例えば物流分野などで所定の容器に貼り付けておく場合などに、データキャリアが本来の正しい向きからある程度傾いて貼り付けられているような場合でも、支障なくとデータの授受を行うことが可能となる。
なお、図6に矢印iで示した方向、すなわち図6の上下方向に生じる磁界については、磁芯30に沿って導かれる磁界と磁芯31に沿って導かれる磁界が、ちょうどコイル10を貫くときに反対向きとなるので、相互に打ち消し合い、このため、i方向の磁界によっては信号の授受はできない。この場合には、データキャリアの外形を向きが分かり易くなるような長方形にしたり、あるいは貼り付け方向のマークを印刷するなどして、被認識物に貼り付ける場合の誤差をある程度の範囲内に抑え込むことができるので、実用上問題はない。
【0026】
次に、本発明の第四実施形態について説明する。図7は、第四実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。同図において、前記各実施形態と同一の部分については同一符号を付してある。本実施形態では、図7に示すように、コイル20に二つの磁芯30,31を互いに直交するように挿入する。各磁芯そのものもは、第一乃至第三実施形態で用いた磁芯11と同じである。
【0027】
本実施形態のデータキャリア用アンテナも、第三実施形態のデータキャリア用アンテナと同様に、x軸方向の磁界、y軸方向の磁界、z軸方向(図7の紙面に垂直な方向)の磁界、j方向の磁界がコイル20を貫くことになるので、これらの方向の成分を有する磁界に基づいて親機との間で信号の授受が可能となる。また、第二実施形態と同様にコイル20の形状を四角形としたことによって、第三実施形態の場合に比べ、磁芯30,31に含まれるアモルファスシート端部のエッジによってコイル20の導線の絶縁被覆が剥がれる可能性はより低く抑えられる。
【0028】
次に、本発明の第五実施形態について説明する。図8は、第五実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。同図において、前記各実施形態と同一の部分については同一符号を付してある。本実施形態では、図8に示すように、コイル10に三つの磁芯40,41,42が挿入されている。各磁芯そのものは、第一乃至第四実施形態で用いた磁芯と同じである。
【0029】
本実施形態のように、コイル10に三つの磁芯40,41,41を挿入すると、図8に示したk方向の磁界、l方向の磁界、m方向の磁界、およびz軸方向(図8の紙面に垂直な方向)の磁界はコイル10を貫くことになる。したがって、これらの方向の成分を有する磁界によって、親機との間で信号の授受を行うことが可能となる。このように三つの磁芯を設けると、一つ又は二つの磁芯を挿入しただけの場合に比べて、更に親機との間で信号の授受を行うことができる磁界の方向の範囲が広くなる。
【0030】
なお、更に多数の磁芯を挿入することも可能であるが、同様の趣旨であるので、説明を省略する。
次に、本発明の第六実施形態について説明する。図9は、第六実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図、図10は、図9に示したデータキャリア用アンテナを長手方向に切った断面図である。前述の各実施形態では、コイルとして空芯コイルを用意し、これにアモルファスシートを絶縁シートを巻いた磁芯を挿入することによってデータキャリア用アンテナが得られた。これに対して本実施形態のデータキャリア用アンテナでは、コイル50の導線が基板上に配線パターンとして形成されている。
【0031】
本実施形態のデータキャリア用アンテナは、以下のようして作成される。まず、二つの基板51,52上に、コイルの左右半分ずつの導線パターン50a,50bをそれぞれ形成する。各基板には、導線パターンの端部にスルーホール54a,54bが設けられている。次に、これらの基板を、間にアモルファスシート53を挟んで、基板の裏側同士が向かい合うように、かつ、両基板の対応するスルーホール同士が重なるよう位置合わせをして貼り合わせる。最後に、各スルーホール54a,54bを通して両基板に形成された対応する導線パターン同士を半田等で接続する。これによって、二つの基板51,52上に形成された各導線パターン50a,50bは単一のコイル50を形成し、同時にこのコイル50とその内側に挿入されているアモルファスシート53とによって、データキャリア用アンテナが形成される。最後に、RFIDモジュール12をも含めて、この全体を保護用プラスチックフィルムでラミネート加工することによって、カード状のデータキャリアが得られる。このような方法を用いると、データキャリアの厚さを0.5mm程度の薄さに抑えることができ、実用上非常に有益である。
【0032】
本実施形態のデータキャリア用アンテナは、そのアンテナとしての構成は、第二実施形態(図5)のデータキャリア用アンテナとほぼ同じである。すなわち、コイル50と磁芯となるアモルファスシート31を図9に示すように配置すると、アモルファスシート53の長手方向が同図のx軸と一致するので、x軸方向の磁界はアモルファスシート31に導かれ、コイル50を貫く。また、アモルファスシート53は、z軸方向(図9の紙面方向)においてある程度の厚みを有するため、コイル50の内側だけを考えると、磁界を導く磁芯が存在するとことになる。したがって、コイル50の内側の磁芯部分においては、z軸方向の磁界もコイル50を貫いている。以上より、x軸方向の磁界とz軸方向の磁界がコイル50を貫くことになり、これらの方向の成分を有する磁界によって、親機との間で信号の授受を行うことが可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、二つの基板51、52に、コイルの導線パターン50a,50bを形成したが、これらの基板に、RFIDモジュール12を実装するようにすると、作業性はより高まる。
次に、本発明の第七実施形態について説明する。図11は、第七実施形態のデータキャリア用アンテナを長手方向に切った断面図であり、第六実施形態の図10に対応する。本実施形態のデータキャリア用アンテナは、コイル60の導線パターン60a,60bそれぞれが二つの基板61,62に配線パターンとして形成されている点は、第六実施形態(図9、図10)と同じであるが、導線パターンが形成されている側の面同士を向かい合わせて貼り合わせる点が、第六実施形態と異なる。
【0034】
本実施形態のデータキャリア用アンテナは、以下のようにして作成される。まず、二つの基板61,62に、コイルの左右半分ずつの導線パターン60a,60bをそれぞれ形成する。次に、これらの基板を、間にアモルファスシート63を挟んで、基板の表側(導線パターンが形成された側)同士が向かい合うように、かつ、両基板に形成された導線パターン60a,60bの対応する端部同士が重なるよう位置合わせをして貼り合わせる。
【0035】
このとき、接合部64における導線パターン60a,60bの対応する端部同士の電気的接続には、例えば液晶表示板のITO電極などの接続に広く利用されている異方性導電膜(ACF:Anisotropic ConductiveFilm)を用いる。異方性導電膜は、二つの電極でこれを挟み、両側から圧力を加えて加熱すると、両電極を接着する際に、二つの電極を結ぶ方向(膜に垂直な方向)では導通するが、横方向については絶縁性を維持するという性質を持っている。このため、異方性導電膜を用いれば、簡単に対応する端部同士の電気的な接続を行うことができる。
【0036】
このようにして導線パターン60a,60bの対応する端部同士を電気的に接続すると、二つの基板61,62上に形成された各導線パターン60a,60bは一つのコイル60となり、同時にこのコイル60とその内側に挿入されているアモルファスシート63とによってデータキャリア用アンテナが形成される。最後に、RFIDモジュールをも含めて、この全体を保護用プラスチックフィルムでラミネート加工することによって、カード状のデータキャリアが得られる。
【0037】
本実施形態のデータキャリア用アンテナは、そのアンテナとしての構成は、第六実施形態(図9、図10)のデータキャリア用アンテナとほぼ同じであり、x軸方向の磁界とz軸方向の磁界がコイル60を貫くことになり、これらの方向の成分を有する磁界によって、親機との間で信号の授受を行うことが可能となる。以上の各実施形態では、磁芯11の材料としてアモルファス金属を例に説明した。しかしこれ以外にも、例えばトランスの鉄心として用いられている電磁鋼板(珪素鋼板)を用いることもできる。この場合、好ましくは、高周波トランス等に一般的に用いられている一方向性珪素鋼帯を用い、その磁束の通りやすい方向が前記空芯コイルの軸芯方向(図1乃至図9で示す場合には磁芯板の長手方向)を向くようにする。一方向性珪素鋼帯の磁束の通りやすい方向は、一般的に結晶粒の成長方向であるゴス方位で決定される。したがって、磁芯11のゴス方位が空芯コイル10の軸芯方向を向くように(ゴス方位が磁芯板の長手方向を向くように)配置すれば良い。
【0038】
一方向性珪素鋼帯としては、日金電磁工業株式会社から、GT050、GT100、GT150等の名称で販売されている鋼帯を用いることができる。このGTシリーズの電気・磁気特性を図12に示す。また、一方向性珪素鋼帯の製造方法には各種の方法があるが、例として、特開平6−2042号公報や特開平6−24864号公報に記載の製造方法がある。
【0039】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るデータキャリア用アンテナは、平面状に巻回された空芯コイルに、この空芯コイルのコイル面とほぼ平行となるように板状の磁芯を一つあるいは軸が所定角度となるように複数挿入するという簡単な構造でありながら、広い角度範囲の磁界に基づいて親機との通信が可能となり、このため例えば物流分野などにおいて必要とされるデータキャリア用アンテナとして十分な性能を付与することができる。
【0041】
また、本発明に係るデータキャリア用アンテナは、導線パターンが形成された二つの基板で板状の磁芯を挟み、二つの基板に形成された導線パターンの対応する電極同士を接続することによって磁芯を内部に含むコイルを形成するという簡単な構造で製造が容易でありながら、広い角度範囲の磁界に基づいて親機との通信が可能となり、このため例えば物流分野などにおいて必要とされるデータキャリア用アンテナとして十分な性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。
【図2】図1に示したデータキャリア用アンテナの断面図である。
【図3】第一実施形態のデータキャリア用アンテナの最終的な形状を示した断面図である。
【図4】金属で覆われた被検査物の表面に貼り付けられたデータキャリアのアンテナコイルと、親機側のアンテナコイルとの間に間に生じる磁束の様子を模式的に示した図である。
【図5】本発明の第二実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。
【図6】本発明の第三実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。
【図7】本発明の第四実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。
【図8】本発明の第五実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。
【図9】本発明の第六実施形態のデータキャリア用アンテナの平面図である。
【図10】図9に示したデータキャリア用アンテナの断面図である。
【図11】本発明の第七実施形態のデータキャリア用アンテナの断面図である。
【図12】ある一方向性珪素鋼帯の電気・磁気特性を表として示した図である。
【符号の説明】
10,20,50 コイル
11,30,31,40,41,42 磁芯
12 RFIDモジュール
11a,53,63 アモルファスシート
50a,50b,60a,60b 導線パターン
51,52,61,62 基板
54a,54b スルーホール
64 接合部
Claims (9)
- 平面状に巻回された空芯コイルと、前記空芯コイルの平面とほぼ平行となるように前記空芯コイルに挿入された単一の板状の磁芯とを具備することを特徴とするデータキャリア用アンテナ。
- 平面状に巻回された空芯コイルと、それぞれの軸が互いに所定の角度となるように前記空芯コイルに前記空芯コイルの平面とほぼ平行となるよう挿入された複数の板状の磁芯とを具備することを特徴とするデータキャリア用アンテナ。
- 第一の基板に形成された第一の導線パターンと、
第二の基板に形成された第二の導線パターンと、
前記第一及び第二の基板の前記導線パターンが形成された面とは反対の面に接するようにして両基板の間に挟まれた板状の磁芯と、
前記第一及び第二の基板に設けられたスルーホールを介して、前記第一及び第二の導線パターンの対応する電極同士を電気的に接続することによって前記磁芯を内部に含むコイルを形成する接続部と、
を有することを特徴とするデータキャリア用アンテナ。 - 第一の基板に形成された第一の導線パターンと、
第二の基板に形成された第二の導線パターンと、
前記第一及び第二の基板の前記導線パターンが形成された面に接するようにして両基板の間に挟まれた板状の磁芯と、
前記第一及び第二の導線パターンの対応する電極同士を電気的に接続することによって前記磁芯を内部に含むコイルを形成する接続部と、
を有することを特徴とするデータキャリア用アンテナ。 - 前記磁芯はアモルファス金属製であることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のデータキャリア用アンテナ。
- 前記磁芯は一方向性珪素鋼製であり、前記磁芯のゴス方位が前記空芯コイルの軸芯方向を向くように配置されていることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のデータキャリア用アンテナ。
- 請求項1,2,3,4,5又は6記載のデータキャリア用アンテナを内部に含むことを特徴とするデータキャリア。
- 平面状に巻回された空芯コイルに板状磁芯を挿入し、前記空芯コイルおよび前記板状磁芯を板状保持部材で挟持することを特徴とするデータキャリア用アンテナの製造方法。
- 前記板状保持部材は、ラミネート用プラスチックフィルムからなることを特徴とする請求項8記載のデータキャリア用アンテナの製造方法。
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